説明

脳内活動変化において使用するための植物抽出物

植物、例えばユーカリプツス属の植物から又は微生物から得ることができる化合物は、CNS活性調節物質として有用であることが示される。それは例えばうつ病の処置において、気分を上昇させるために及び/又は行動の自発性を高めるためなどに有用である。その使用とその態様が本発明の実施態様を構成する。また化合物自体も表される。有用な化合物は、式(I)で示され、式中の置換基が詳細な説明に定義されたものであるアシルフロログルシノール誘導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然化合物もしくはそれらの誘導体、それらを含有する組成物、及び/又はヒトもしくは他の動物における幾つかの脳機能における調節剤としてそれらを用いる使用に関する。
【0002】
ユーカリは、植物における幾つかの役割を担う多くの化学的化合物を含有する。その役割とは、昆虫と草食脊椎動物に対する防御及びUV線に対する保護と寒冷ストレスに対する保護を含む。最もよく知られた化合物はテルペノイド類であり、それらは殆どの精油を形成し、それがユーカリ群葉にその特徴的な芳香を与える。しかしながら、ユーカリは、タンニン類及びより単純なフェノール類などの豊富なフェノール性成分源でもある。これらの幾つかは、過去に産業の基礎を形成した。例えば、タンニン類は、ユーカリプツス・アストリンゲンス(Eucalyptus astringens)から抽出され、そして、ルチンは、ユーカリプツス・マクロリンチャ(E.macrorhyncha)から抽出された(Lassak EV及びMcCarthy T 1992 Australian Medicinal Plants.Mandarin,Port.Melbourne)。
【0003】
しかしながら、ユーカリ由来のフェノール性化合物における最も最近の興味の対象は、新たに同定された、ホルミル化されたフロログルシノール化合物(FPC類)と呼ばれるグループに焦点が絞られている(Lawler IR,Foley WJ,Eschler B.M 2000 Foliar Concentration of a single toxin creates habitat patchiness for a marsupial folivore.Ecology 81:1327−1338)。このグループには、略式で、オイグロバール類(euglobals)、マクロカルパール類(macrocarpals)及びシデロキシロナール類(sideroxylonals)として知られるサブタイプが含まれる。全てのFPC類は、同一の完全に置換されたホルミル化された芳香族部を有するが、その側鎖の構造において多様である。マクロカルパール類及びオイグロバール類において、側鎖は、ビシクロゲルマクレン、ピネンもしくはフェランドレンなどの通常の葉テルペン類から誘導されるC10単位もしくはC15単位であるが、シデロキシロナール類及び単純なFPC類(例えばジェンセノン)においては、側鎖は、C5単位である(Ghisalberti EL 1996 Bioactive acylphloroglucinol derivatives from Eucalyptus species,Phytochem,41:7−22)。
【0004】
ホルミル化されたフロログルシノール化合物は、広範囲の生物学的作用、例えば防汚特性(Singh I P,Umehara K,Etoh H.Macrocarpals in Eucalyptus SPP.as attachment−inhibitors against the blue mussel.Natural Product Letters(1999),14(1),11−15,Mytilus edulis galloprovincialis,from two species of Eucalyptus.Biosci Biotechnol Biochem 60:1522−1523;Terada Y,Saito J,Kawai T,Singh IP,Etoh H 1999 Structure−activity relationship of phloroglucinol compounds from Eucalyptus,as marine antifoulants.Biosci Biotechnol Biochem 63:276−280)、抗細菌活性(Yamakoshi Y,Murata M,Shimizu A,Homma S.Isolation and characterization of macrocarpals B−G antibacterial compounds from Eucalyptus macrocarpa.Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry(1992),56(10),1570−6;Osawa K,Yasuda H,Morita H,Takeya K,Itokawa H Macrocarpals H,I,and J from the leaves of Eucalyptus globulus.Journal of Natural Products(1996),59(9),823−827)、HIV−Rターゼの阻害活性(Nishizawan M,Emura M,Kan Y,Yamada H,Ogawa K,Hamanaka N 1992 Macrocarpals HIV−reverse transcriptase inhibitors of Eucalyptus globulus.Tetrahedron Lett 33:2983−6)、アンジオテンシン変換酵素の阻害活性(Saeki T,Ohsawa K,Yasuda H Angiotensin−converting enzyme inhibitors and foods and beverages containing them.JP11060498号A2)、アルドースレダクターゼの阻害活性(Murata M,Yamakoshi Y,Homm S,Arai K,Nakamura Y.1992 Macrocarpals,antibacterial compounds from Eucalyptus,inhibit aldose reductase.Biosci Biotechnol Biochem 56:2062−3)、腫瘍阻害(Takasaki M,Konoshima T,Kozuka M,Tokuda H 1995 Anti−tumor−promoting activities of euglobals from Eucalyptus plants.Biol Pharm Bull 18:435−438)、セラミド形成促進剤(Kusuoku H,Shibuya Y,Ohashi S,Takagi Y,Okubo K.Macrocarpals and ceramide formation promoters containing them JP2001055325号A2)及びグルコシルトランスフェラーゼの阻害活性(Osawa K,Saeki T,Yasuda H,Morita H,Takeya K,Itokawa H 1998 Antibacterial activity of Eucalyptus globulus on cariogenic bacteria and its inhibitory effect on glucosyltransferase.Nat Med(Tokyo)52:32−37)を有する。更に、それらの化合物は、オーストラリアの森林で主要な環境上の役割を担っている。それというのも、該化合物は、昆虫及び草食有袋類に対して強力な摂食阻害物質として作用するからである(Pass DM,Foley,WJ,Bowden B 1998 Vertebrate herbivory on Eucalyptus − identification of specific feeding deterrents for common ringtail possums(Pseudocheirus peregrinus) by bioassay−guided fractionation of Eucalyptus ovata foliage.J Chem Ecol 24:1513−1527,Lawler et al.2000は前記参照)。
【0005】
ホルミル化されたフロログルシノール化合物は、おそらく全てのユーカリ類に存在するわけではない。予備的な研究(Eschler BM,Pass DM,Willis R,Foley WJ(2000)Distribution of foliar formylated phloroglucinol derivatives amongst Eucalyptus species.Biochem Syst Ecol 28:813−824)によって、FPC類が略式の亜属であるシムフィオミルタス(Symphyomyrtus)で濃縮されることが示唆されている。それらは、略式の亜属であるモノカリプツス(Monocalyptus)と、単独種の略式の亜属であるイディオゲネス(Idiogenes)(E.クロエジアナ(cloeziana))には存在しないと思われる。
【0006】
精神的な疾病及び疾患に関連した新たな活性を見出すために植物抽出物を評価する出願人の研究では、抽出物をユーカリプツス種から調製して、これらを複雑なアッセイで試験することで、神経伝達物質レベルに作用する能力を実証している。
【0007】
ユーカリプツスのオイル由来の化合物は、既に、幾つかのポジティブな心理的作用との関連づけられている(例えばGB2374284号、DE4447336号A1及びGoebel et al.,Cephalalgia 14,228−234(1994)を参照)。
【0008】
本発明の課題は、様々な神経学的及び/又は精神的な疾病もしくは疾患の治療において有用な又は実質的に健康な人においても神経学的もしくは精神的な状態を改善する新たな化合物もしくは組成物を利用可能にすることである。
【0009】
驚くべきことに、ユーカリプツス・グロブルス(Eucalyptus globulus)の葉から得られる抽出物であってアシルフロログルシノール誘導体のクラスに属する化合物を含む抽出物並びに係る抽出物から取り出した前記クラスからの幾つかの精製された化合物は、未知のメカニズムによって神経伝達物質濃度に増強作用を示すことを明らかにすることができる。それを、以下により詳細に説明する。
【0010】
更に驚くべきことには、該化合物は、主にテルペノイド類を含有するユーカリ由来のオイルには見出すことができず、従って、動物、特にヒトの神経学的及び/又は精神的な状態の治療において新たなクラスの化合物を利用可能にする。
【0011】
従って、本発明は、第一の実施態様においては、個体の予防的及び/又は治療的な処置、特に係る処置を所望するもしくは必要とする個体の予防的及び/又は治療的な処置において中枢神経系(CNS)活性調節物質として使用するための、式I
【化1】

[式中、
1及びR2は、互いに無関係に、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
3及びR4は、互いに無関係に、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
5は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、かつ
6は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキルであってそれ自身が少なくとも1つの環式要素を有するC3〜C25−ヒドロカルビルで置換されており、前記環式要素は、飽和であるか又は1もしくは複数の孤立の(非共役もしくは累積)二重及び/又は三重の炭素−炭素結合を含み、かつ前記環式要素は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ、オキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキル及び3〜10個の炭素原子部を有するシクロアルキルからなる群から無関係に選択される1もしくは複数の置換基によって置換されており、前記シクロアルキル自身は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ及びオキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルから選択される1もしくは複数の置換基で置換されており、又は
3とR5の一方は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、他方は、R6についての前記定義の非置換もしくは置換されたC3〜C25−ヒドロカルビルで置換されたC1〜C12−アルキルのC3〜C25−ヒドロカルビル部に結合されており、こうしてそれらは、R3もしくはR5が結合されるOへの第一の結合を介して、かつR6のC1〜C12−アルキル部への第二の結合を介して結合されて、少なくとも1つの環式要素を有するC3〜C25−ヒドロカルボンジイルを形成し、前記環式要素は、飽和であるか又は1もしくは複数の孤立の(非共役もしくは累積)二重及び/又は三重の炭素−炭素結合を含み、その際、1〜3個の非末端CH2基がOによって交換されていてよく、かつ前記環式要素は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ、オキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキル及び3〜10個の炭素原子部を有するシクロアルキルからなる群から無関係に選択される1もしくは複数の置換基によって置換されており、前記シクロアルキル自身は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ及びオキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルから選択される1もしくは複数の置換基で置換されており、こうして前記のC3〜C25−ヒドロカルボンジイルは、式I中のR3もしくはR5を結合するO、そのOを結合する炭素及び式I中のR6を結合する炭素、これらの2つの炭素をつなげる結合及びR6の位置に結合されるC1〜C12−アルキルと一緒になって、更なる環を形成するが、但し、R6のカルボヒドリル及びアルキル部は、一緒になって少なくとも10個の炭素を有する]の化合物又は式Iの化合物の混合物及び/又は1もしくは複数の互変異性体、1もしくは複数の溶媒和物、1もしくは複数のエステル及び/又は1もしくは複数の塩に関する。
【0012】
本発明の他の実施態様と特に好ましい実施態様を以下と特許請求の範囲に示すが、それにより参照をもって発明の詳細な説明にその一部としても開示されたものとする。
【0013】
本願の開示の範囲内で、一般的な表現は、好ましくは以下の意味を有する。その際、各実施態様において、1つの、1つより多くの又は全てのより一般的な表現は、より特定の定義と置き換えることができ、こうして本発明の好ましい実施態様を成す:
アルキルは、直鎖状もしくは分枝鎖状であってよい、すなわち直線的な鎖を有するか又は1もしくは複数の分枝を有するものであってよい。好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチルもしくはイソペンチルである。
【0014】
ヒドロカルビルR6は、好ましくは、少なくとも1つの環式要素からなり、特に、単純な炭素環式部、例えばC3〜C12−シクロアルキル、縮合多環式部、例えば縮合された4〜25個の環炭素原子を有する二環式部、三環式部もしくは四環式部、例えばビシクロ部(好ましくは、1もしくは複数の橋かけ炭素原子を有することで、両方の環に共通する炭素原子(橋かけヘッド)の間に唯一の結合を有するビシクロ(二環式)系と区別される)、トリシクロ部、テトラシクロ部もしくはペンタシクロ部及びモノスピロもしくはポリスピロ−単環式部、例えばモノスピロもしくはポリスピロ−炭素環式部又は係る環式部の任意の組み合わせからなる群から選択される3つまでの環からなる。それは、1もしくは複数の前記置換基、特に5つまでの前記置換基によって置換されていてよい。
【0015】
ヒドロカルビルは、有利には、4〜20個の炭素原子を有する(置換基の炭素原子を含めない)。非末端CH2は、2つの炭素原子に結合された任意の係る基を意味する。
【0016】
好ましくは、R6中のヒドロカルビルは、以下の式を有する環系からなる群から選択され、その際、波線は、共にR6を形成する前記ヒドロカルビルによって置換された、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル(好ましくはメチルもしくはエチルであり、又はC1でヒドロカルビルによって置換されたイソペンチル、すなわちイソペンタン−1,1−ジイル)への好ましい結合位置での結合端部を印している:
【化2】

【0017】
孤立した二重結合は、これらの二重結合が共役していない(−CH=CH−CH=CH−でのように)もしくは累積している(−CH=C=CH−でのように)が、少なくとも、単結合によって互いに結合された3つの炭素原子によって隔たれていることを意味する。好ましくは、3つまで、より好ましくは、1もしくは2つの三重結合及び/又は(好ましくは)二重結合が、ヒドロカルビル中に存在する。
【0018】
3もしくはR5とR6が一緒になってC3〜C25−ヒドロカルボンジイルを形成するが、前記ヒドロカルボンジイルは、好ましくは、R6について定義されたヒドロカルビルであり、前記ヒドロカルビルは、一方で、R6を形成する直鎖状もしくは分枝鎖所のC1〜C10−アルキル部への一方の結合と結合されており、他方で、式I中のR3もしくはR5を結合する酸素への他方の結合と結合されている。より好ましくは、R6中のヒドロカルボンジイルは、以下の式を有する環系からなる群から選択され、その際、波線は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル(好ましくは、上述のヒドロカルビルR6についての好ましい式として定義された)への好ましい結合位置の結合端部を印しており、かつアスタリスクは、式I中のR3もしくはR5を結合するOが結合される好ましい結合端部を印している:
【化3】

【0019】
あらゆる二重結合(前記のヒドロカルビルとヒドロカルボンジイルについての式中の好ましい構成で示された場合も)は、シス形もしくはトランス形で又は両方の形で存在してよく、好ましくは示される形で存在してよい。
【0020】
本発明により有用な式Iの非常に好ましい化合物であって、そのそれぞれが単独でももしくはその2つ以上の組み合わせでも使用できるものは、以下のリスト(好ましくは、それらの化合物は、その式、名称及び/又は(特に)CAS番号に該当する化合物のいずれかを特徴としており、それらは参照をもって開示されたものとする)によって表されるグループから選択され、それらは以下を意味する:
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
【表7】

【0027】
【表8】

【0028】
【表9】

【0029】
極めて好ましいのは、ユーカリプトン(Eucalyptone)と呼ばれる化合物及び/又はマクロカルパールA(Macrocarpale A)と呼ばれる化合物であって、その遊離形でも、1もしくは複数の互変異性体としても、1もしくは複数の溶媒和物としても、1もしくは複数のエステルとしても及び/又は1もしくは複数の塩としても本発明の一実施態様自体であり、図1に示される1H−NMRスペクトルによって及び/又は実施例2に記載される単離方法によって特徴付けられる化合物又はその塩又はこれらの2つの化合物及び/又はそれらの塩の混合物の使用、又は式Iの化合物、有利には以下に記載されるようにして得られる化合物を含む抽出物であって、有利には式Iの化合物は、抽出物の乾燥質量の20〜100%、より有利には50〜100%である抽出物の使用である。
【0030】
これまで、前記の開示の範囲内で、式Iの化合物又は式Iの混合物が挙げられているが、このことは、遊離(濃縮されたもしくは実質的に純粋な)形及び/又は1もしくは複数の(特に製剤学的に認容性の)塩(フェノール性OH基などの塩形成性基が存在する場合)、溶媒和物、エステル及び/又は互変異性体(例えばオキソ/エノール型の互変異性が可能である場合)、又は2もしくは複数のこれらの特定の形の混合物を含むことが意図される。混合物は、式Iの2もしくは複数の化合物の抽出及び/又は混合によってもたらされることがある。
【0031】
互変異性体は、(他の可能な互変異性体もしくは互変異性体混合物を排除することなく)、例えば以下の式Iの中心部の互変異性形:
【化4】

によって表すことができる。
【0032】
溶媒和物は、例えば水和物もしくは他の溶媒、例えば抽出もしくは後処理の間に使用される溶媒との溶媒和物である。
【0033】
エステルは、1もしくは複数の(有利には)有機酸(例えばカルボン酸もしくはスルホン酸、例えばC1〜C10−アルカノイルもしくは)及び/又は1もしくは複数の無機酸(例えばハロハリック酸(halohalic acid)、例えばHClなど、それらはその後に相応のハロゲン化合物、例えばフルオロ化合物、クロロ化合物、ブロモ化合物もしくはヨード化合物)と1もしくは複数のヒドロキシル基を有する式Iの化合物とのエステルであって、これらのヒドロキシル基の1もしくは複数の基でエステル化されているものであってよい。
【0034】
本願で使用される用語"塩"は、無機及び/又は有機の酸及び塩基と形成される塩を示す。製剤学的にもしくは栄養補給的に(nutraceutically)認容性の(すなわち無毒で生理学的に認容性の)塩が好ましいが、他の塩も、例えば製造の間に使用できる単離工程もしくは精製工程においては有用である。式Iの化合物の塩は、例えば本発明のアシルフロログルシノール誘導体と、ある量の塩基、例えば当量の塩基を、ある媒体、例えば塩が沈殿する媒体中でもしくはある水性媒体中で反応させて形成させることができ、引き続き凍結乾燥されるか、又はイオン交換クロマトグラフィーもしくはイオン交換体とのバッチ反応を含む任意の他の慣用の方法によって形成させることができる。
【0035】
例えば、酸性部(特にフェノール性OH基)を含む本発明のアシルフロログルシノール誘導体は、様々な有機塩基及び無機塩基と塩を形成しうる。例示される塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩及びマグネシウム塩、有機塩基(例えば有機アミン)との塩、例えばベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミンとの塩並びにアミノ酸、例えばアルギニン、リジンなどとの塩が含まれる。また、混合塩(1つより多くの対イオンを有するか、又は対イオンが異なる基(例えばアミノ基とカルボキシル基)を有する場合)も含まれる。
【0036】
更に、式Iの化合物は、立体異性体の混合物としても又は純粋な立体異性体としても存在してよく、こうして、様々な置換基上の不斉炭素のため存在しうるものなど、例えば、エナンチオマー形(不斉炭素が不在であっても存在しうる)及びジアステレオマー形は式Iに含まれる。本発明のアシルフロログルシノール誘導体の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含まないか、又は例えばラセミ体として、又は全ての他の立体異性体もしくは他の選択された立体異性体と混合されていてもよい。
【0037】
"含む"もしくは"包含する"もしくは"有する"は、本願で使用される場合には、かかる語句に引き続き示される任意の要素に限定されることを意味せず、むしろ機能的な重要性を伴ってもしくは伴わずに特別に述べられていない1もしくは複数の他の要素を含む。すなわち列記された工程、要素もしくは任意選択事項は、網羅的である必要はない。反対に、"含有する"は、要素が、"含有する"の後のものに限定される場合に使用されるものである。
【0038】
"約"もしくは"実質的に"が使用される場合には、これは、好ましくは、示された数値が、"約"の後に示される値からある程度、例えば、好ましくは示された数値の±20%だけ、より有利には±10%だけ逸脱してよいことを意味している。
【0039】
"得られる"は、生成物(例えば化合物)を得ることができることを意味し、有利にはそれが特定の方法によって得られることを意味する。
【0040】
成分の比が%で示される場合に、これは、特に指摘がない限りは、質量%を意味する。
【0041】
用語CNS活性調節物質とは、特に、本発明による化合物もしくは混合物を、患者あるいは健康な人のいずれの処置(治療的もしくは予防的)のためにも使用できることを意味している。こうして特に、CNS活性調節物質としての使用は、CNS活性の調節、特に刺激のための使用を意味する。
【0042】
本発明の化合物は、齧歯類についての注意の試験(Robbins,J.Neuropsychiatry Clin.Neurosci.(2001)13,326−35)、すなわち5−選択反応時間試験(5−CSRTT)において注意を高めることを示すことができる。この試験において、該ラットは、5つの穴を含む壁を目にするはずである。それらの穴の1つに閃光が見られた場合に、そのラットは、反対側の壁にある供給装置に送達された食餌ペレットの報酬を受けるために、5秒以内に正しい穴に鼻を挿入して応答するはずである。
【0043】
本発明の化合物は、また、マウスとラットにおける社会的認識試験における学習/記憶の増強作用を示すこともできる(Ennaceur and Delacour,Behav.Brain Res.(1988)31,47−59)。
【0044】
しかしながら、最も重要なことには、本発明の化合物は、ラットのシナプトソームにおける神経伝達物質の輸送プロセスに影響することを示すことができる。これらは、単離された神経末端によって体外調製物中で形成されたベシクルである(Gray EG,Whittaker VP(1962)The isolation of nerve endings from brain:an electronmicroscopic study of cell fragments derived by homogenization and centrifugation.J.Anat.96:79−88)。その試験系は、全細胞系におけるその輸送にヴァリエーションを得るために構築される。結果として、その結果は、特異的な神経伝達物質結合のレベルに対して定量化されるが、作用様式のレベルに対して定量化されない。
【0045】
式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物は、実施例に特に示される活性の点で、幾つかの脳内機能を調節するにあたり有用である。
【0046】
その薬理学的プロフィール、例えば実施例に示されるプロフィールによれば、式Iの化合物は、CNS関連疾病のように様々な疾病もしくは状態(好ましくは)、また末梢神経(PNS)関連疾病、特にそれらが影響するかCNS活性によって影響される限りにおいて、例えば炎症、疼痛及び化学物質の乱用により引き起こされる禁断症状に関連した疾病;CNSに関連した疾病もしくは疾患、例えば一般的な不安障害、認知障害、学習及び記憶の不足及び機能不全、アルツハイマー病、ADHD、パーキンソン病、ハンチントン病、ALS、プリオン性の神経変性疾患、例えばクロイツフェルト・ヤコブ病及びクールー病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、精神病、うつ病及び抑うつ性疾患、躁病、躁鬱病、精神分裂病、精神分裂病における認知欠損、強迫障害、パニック障害、摂食障害、睡眠発作病、痛覚、AIDS痴呆、老人性痴呆、年齢に関連する軽い認知機能不全、自閉症、失読症、遅発性ジスキネジア、てんかん及び痙攣性疾患、心的外傷後ストレス障害、一過性無酸素症、偽性痴呆、月経前症候群、黄体期後期症候群、慢性疲労症候群及び時差ボケの処置のために有用であると予想される。更に、本発明の化合物は、内分泌疾患、例えば甲状腺中毒症、褐色細胞腫、高血圧症及び不整脈並びに狭心症、運動亢進症、早発射精及び勃起困難の処置のために有用であってよい。また更に、本発明の化合物は、炎症性疾患(Wang et al.,Nature 2003,421,384)、炎症性皮膚疾患、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢を含む疾患もしくは状態の処置において有用であってよい。本発明の化合物は、更に、タバコ、ニコチン、オピオイド、ベンゾジアゼピン及びアルコールなどの依存性物質の使用の中止により引き起こされる禁断症状の処置のために有用であってよい。また、本発明の化合物は、疼痛、例えば偏頭痛、術後疼痛、幻想肢痛又は癌関連疼痛によって引き起こされる疼痛の処置のために有用であってよい。疼痛は、炎症性もしくは神経障害性の疼痛、中枢性疼痛、慢性頭痛、糖尿病性神経障害に関連する疼痛、治療後神経痛に関連する疼痛もしくは末梢神経損傷に関連する疼痛を含んでよい。
【0047】
本発明による有用な化合物は、例えば有利には、うつ病、抑うつ障害、不安及び感情障害、例えば特に以下の症状もしくは疾患の1もしくは複数が存在し及び/又は予防的に回避されるべきである場合には:一般的な不安障害、恐怖、認知障害、学習及び記憶の不足及び機能不全、躁鬱病、強迫性障害、パニック障害、摂食障害、ナルコレプシー、睡眠障害、例えば慢性疲労症候群及び時差ボケ、決定能力の欠損、集中力の欠損、劣等感、レサジー、アネルギー、衝動の欠損、身体違和感、うつ病、感情的充実感の低下、抑うつ気分、憂鬱、内部情動不安、罪悪感、罪業妄想、堅苦しい思考、思考阻害、思考の堂々巡り(circular way of thinking)、無力感、絶望感、食欲不足、抑うつ気分による感染への感受性の高まり、認知能力の減少及び/又は他の症状の処置及び/又は予防において並びに健康な人での気分上昇のために及び/又はまた精神分裂病もしくは精神病の治療において使用することができる。
【0048】
特に、CNS活性調節物質という用語には、本発明による有用な化合物が、気分上昇活性を示し、認知性能を高め、記憶の獲得によい影響を及ぼし、作動記憶を高め、意欲によい影響を及ぼし、行動の自発性によい影響を及ぼし、こうして一般的な生活の質を高め、かつ従ってこれらの状態の如何なる欠損を回避しもしくは改善するために使用することができることが含まれる。
【0049】
これらの活性は、主に、脳内に顕在化する作用、例えば1もしくは複数の神経伝達物質、例えばセロトニン(例えばその再吸収の阻害によって又は生合成などの他の機構によって又は貯蔵部位からの放出によって)、ドパミン、ノルエピネフリンなどのレベルの上昇及び/又は一定の神経伝達物質受容体、例えばコリン作動性受容体、α−アドレナリン作動性受容体もしくはヒスタミン受容体の阻害によるものであると考えられるが、他の作用機構をここで排除しているわけではない。
【0050】
式Iの化合物の混合物は、例えば植物材料の抽出によって形成される混合物及び/又は2もしくは複数の濃縮されたもしくは単離された式Iの化合物を混合することによって形成される混合物又は1もしくは複数の式Iの化合物を抽出物に混加することによって形成される混合物などであってよい。好ましくは、1つの化合物もしくは複数の化合物は、その天然産生状態と比較して濃縮されたもしくは単離された形である。
【0051】
本発明により有用な化合物又は化合物混合物のCNS活性調節物質としての効果は、このようにインビトロで又は、特に前記の又は実施例で示した細胞アッセイもしくはセルベースアッセイにおいて示すことができる。
【0052】
更に、該効果は、インビボで、例えば動物アッセイもしくは臨床研究において実証することができる。
【0053】
動物アッセイの一例としては、マウスにおける高架式十字迷路試験が挙げられる。抗不安活性を検出するこの方法は、Handley及びMithaniによって記載される方法(Naunyn Schmiedbergs Arch.Pharmacol.327,1−5,1984)に従う。齧歯類は、開放空間(例えば高架式十字迷路の開放アーム)を避ける。抗不安薬は、開放アームにおける探索行動を高める。それは、開放アームで費やす時間の増加によって及び/又は開放アームへの侵入の%の増加によって示される。その迷路は、同じ長さと幅(14×5cm)の4本のアームがプラス文字(+)の形で配置されたものからなる。2本の対向アームは、12cmの高さの壁によって閉じられている(閉鎖アーム)。他の2本のアームは、壁を有さない(開放アーム)。その迷路は、床から56cm上方に上げられている。Elevage Janvier(53940 Le Genest−Saint−Isle,フランス)からの1匹のマウス(雄Rj:NMRIマウス、それぞれ20〜30g、実験あたりの最大範囲=5g)を、十字迷路の中央に置き、5分間にわたり探索させる。開放アームと閉鎖アームへの侵入回数と開放アームで費やした時間を記録する。開放アーム侵入率%(開放アーム侵入/全アーム侵入×100)を計算する。1グループあたり10匹のマウスを調査する。式Iの試験物質又は試験物質混合物(水中の溶液10ml/kgの溶液として、又は乳鉢と乳棒を使用したベヒクルとして0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)中での分散液として)を、3種の用量で評価する。例えば10、30及び100mg/kgを試験15分前に経口投与し、ベヒクル対照群と比較する。クロバザム(16mg/kgを経口で、0.2%HPMC中の分散液)は、試験の60分前に経口投与され、それは参照試験物質として使用される。試験化合物が処置について試験者に盲目的に保つとは期待されない場合には、全ての動物に、余分のベヒクル投与を与える。従って、式Iの化合物についての各実験は、5つのグループを含む。データは、処置されたグループとベヒクルグループとを対応のないスチューデントのt検定を用いて分析する。ここで、式Iの化合物、特に例えばマクロカルパールAの抗不安活性を見出すことができる。
【0054】
より好ましくは、向精神活性は、マウスにおいてガラス玉覆い隠し試験(Marble Burying Test)を使用して試験することができる。その方法は、抗不安/精神安定活性を検出するものであるが、それはBroekkamp他によって記載される方法(Eur.J.Pharmacol.,126,223−229,1986)に従う。その試験の原理は、真新しい物体(ガラス玉)に晒されたマウスがそれをおが屑床材中に埋めるであろうということである。抗不安薬は、非鎮静用量では埋められたガラス玉の数を減らす。その試験のために、マウス(雄Rj:NMRIマウス、試験開始時に体重20〜30g(試験あたりの最大範囲=5g)、Elevage Janvier(53940 Le Genest−Saint−Isle,フランス)から入手)を、個別に透明なプラスチック製のケージ(33×21×18cm)であってその床上に5cmのおが屑を有するものに個別に置く。25個のガラス玉をケージの中央に配置する。そのケージを、逆さにしたプラスチック製のケージで覆う。各々の試験ケージを、それらのガラス玉と一緒に、該ケージ内に10匹のマウスを15分間事前に放置することによってマウス臭で充満させる。これらのマウスは、その後、実験において更なる役割を担わない。それらのマウスを、試験30分前に試験物質で腹腔内(i.p.)で処置する。投与容量:10ml/kg、異なる用量を試験する(例えば1、3、10、30及び100mg/kgから選択される2もしくは複数の用量)。試験物質を、最高の意図された用量を10分間生理的食塩水中で冷間撹拌することによって可溶性について試験する。可溶性であれば、生理的食塩水は、ベヒクルとしてはたらく。不溶性であれば、試験物質は、乳鉢及び乳棒を使用して、生理食塩水中の0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)中で均質化させ、かつ分散させ、次いでベヒクルとしてはたらく。特に記載がない限り、用量は、溶液中の試験物質については、W/V(ストック)で調製され、次いでV/V(連続希釈)で調製され、そして懸濁液中の試験物質については、別々の秤量(W/V)によって調製される。調製は、各投与日について新たに行われ、投与の期間の間に(適宜)懸濁液の均質性を保つ注意を払う。対照として、ベヒクルが投与される。おが屑によって覆われたガラス玉の数(2/3もしくはそれより多く)を、次いで30分間の試験の終わりに数える。1グループあたり15匹のマウスを調査する。試験は盲目的に実施する。各試験物質は、3種類の用量で、試験30分前に腹腔内で投与して評価し、そしてベヒクル対照群と比較する。フルオキセチン(32mg/k腹腔内)は、同じ実験条件下で投与されるが、それは、参照物質として使用される。従って、各実験は、5つのグループを含む。データは、処置されたグループとベヒクル対照群とを対応のないスチューデントのt検定を用いて市販のソフトウェア(マイクロソフト社製のExcel(登録商標)、SAS(登録商標)ヴァージョン8.2、GB Stat(登録商標)ヴァージョン6.5)を使用して比較することによって分析する。この検定系で、式Iの化合物に関して、埋められたガラス玉の数の減少、ひいては抗不安作用を見出すことができる。有利には有意な効果(p<0.01)は、1〜100mg/kgの範囲での腹腔内投与によって見られる。
【0055】
本発明の化合物は、また、上述した疾病もしくは疾患又は活性についての実績のある動物モデルなどのための調査用化学物質として商業的にも有用である。
【0056】
式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物は、本発明によれば、例えば栄養補給的組成物の形で又は医薬組成物として使用でき、又はそれらは、そのままで、例えば食品、化粧製品(例えばリップスティック、メーキャップ、軟膏、オイル、ゲルなど)又は他の消耗品へと添加することができる。
【0057】
本発明による"栄養補給的"(時として、"機能性食品"、"機能的食品製品"、"フードシューティカル(Foodsceutical)"、"医薬用食品"もしくは"デザイナー食品")は、ヒトの消費のために適した食品製品(飲料を含む)として定義される。その表現は、補給する栄養の基本的な栄養的機能に対して健康促進特性及び/又は疾病抑制特性を有する任意の新鮮なもしくは加工された食品、例えば機能性食品成分から製造された又は健康促進添加剤、特に本願に上げられる1もしくは複数の疾患の予防もしくは処置において効果を有する添加剤、殊に気分上昇機能を許容する添加剤で強化された食品を含み、本発明による式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物が健康保険剤(health benefit agent)として一成分(特に添加剤)として、殊に有効量で添加される食品並びに任意の部分的にもしくは完全に人工的に構成された食品を含む。
【0058】
該栄養補給物は、任意の好適な方法であって、好ましくは
(a)1もしくは複数の混合物及び/又は化合物の混合物を上述及び以下に述べる1もしくは複数の生物学的材料から、殊に以下に記載される方法に従って抽出することと、
(b)得られた1もしくは複数の化合物及び/又は化合物の混合物を成分として機能性食品製品の製造において添加すること
を含む方法に従って製造できる。
【0059】
従って、この製造も本発明の一実施態様を構成する。
【0060】
更なる処理工程、例えば乾燥、凍結乾燥、殺菌、滅菌、凍結、溶解、分散、濾過、遠心分離、調合などが引き続いてよい。
【0061】
本発明による1もしくは複数の化合物及び/又は化合物混合物は、食用製品へと添加され、その結果として、本発明による機能性食用製品が得られる。
【0062】
好ましくは、該食用製品は、0.001〜50質量%、例えば0.001〜3質量%の式Iの化合物を含む。
【0063】
更なる添加剤には、例えばビタミン類、鉱物類、例えば無機塩の形の鉱物類、不飽和脂肪酸もしくはそれらを含むオイルもしくは脂肪、他の抽出物などが含まれてよい。
【0064】
本発明による機能性食用製品は、如何なる食品の種類であってよい。該機能性食用製品は、該食用製品の他の1もしくは複数の通常の食用成分、例えばフレーバー、糖類、果物、ミネラル類、ビタミン類、安定剤、増粘剤、食物繊維、タンパク質、アミノ酸などを、好適な量で含み、又はその食用製品の所望の種類によってはその2もしくは複数の混合物を含む。
【0065】
基本的な食品製品の例、ひいては本発明による機能性食品製品の例は、果物製品もしくは果汁製品、その濃縮物、レモネード;抽出物、例えばコーヒー、紅茶、緑茶;酪農製品、冷凍された製菓製品、焼き物、スプレッド、例えばマーガリン、バター、ピーナッツバター、蜂蜜;スナック、パスタ製品もしくは他の穀物製品、即席ディッシュ(ready−to−serve−dishes);冷凍食品、缶詰食品、シロップ、ソース、充填物(fillings)、ディップ、チューインガム、シャーベット、スパイス、食塩、即席飲料粉末もしくは他の即席粉末、例えばプリンもしくは他のデザート用の即席粉末などである。
【0066】
フレーバーもしくは他の添加剤、例えば安定剤、例えば増粘剤;着色剤、食用顔料もしくは食品色素;増量剤、ポリオール、例えばキシリトール、マンニトール、マルチトールなど;保存剤、例えば安息香酸ナトリウムもしくはカリウム、炭酸ナトリウムもしくはカルシウム又は他の食品等級保存剤;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、カロチノイド、トコフェロールもしくはポリフェノール;単糖、オリゴ糖もしくは多糖、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖;他の人工もしくは天然のノンカロリーもしくは低カロリーの甘味料、例えばアスパルテームもしくはアセスルファム;食用酸の形の酸性化剤、例えばクエン酸、酢酸、乳酸、アジピン酸;フレーバー、例えば人工もしくは天然(例えば植物フレーバー)の乳化剤;希釈剤、例えばマルトデキストロース;湿潤剤、例えばグリセロール;安定剤;コーティング;等張剤;吸収促進剤もしくは吸収遅延剤などから選択される1もしくは複数のものも存在してよい。
【0067】
本発明による栄養補給組成物は、選択的に、様々な形で、例えば顆粒、タブレット剤、ピル剤、坐剤、カプセル剤、懸濁液剤、軟膏剤、ローション剤、懸濁液剤などの形で製造することができる。
【0068】
本発明による1もしくは複数の化合物もしくは化合物混合物は、また、飲料を含む食品に添加されるべき、例えば粉末もしくは顆粒の形の、例えば凍結乾燥されたもしくは噴霧乾燥された濃縮物、溶液、分散液もしくは他の即席形などで製菓配合物(また、純粋な化合物もしくは化合物混合物を含む)中に含まれていてよい。
【0069】
医薬組成物(例えば薬物として又はビタミン製剤と同等の補助食品として使用することができる)で使用するためには、式Iの化合物及び/又はその製剤学的に認容性の塩は、単独の有効剤として又は1もしくは複数の式Iの他の有効剤及び/又はその製剤学的に認容性の塩又は特に他の通常本願に挙げられる疾患の処置のために特に使用される他の有効剤、例えば1もしくは複数の植物性治療薬及び/又は通常の(例えば化学的もしくは生物工学的な)医薬品と組み合わせて、任意の慣用の様式で、例えば腸内で、例えば直腸内で、例えば坐剤の形で、経口で、例えばタブレット剤、カプセル剤(例えば硬質ゼラチンもしくは軟質ゼラチンのカプセル剤)、ピル剤、サシェ剤、粉末剤、顆粒剤などの形で、又は鼻内製剤として、例えば点鼻薬、スプレーもしくは軟膏として、又は外部用(例えば局所用)適用のための製剤として、例えば溶液剤、懸濁液剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ヒドロゲル剤、リポゲル剤、微細粉末、スプレー、エアロゾル、プラスター(例えば経皮用治療システム)などとして、又は非経口で、例えば注射もしくは点滴用の溶液もしくは分散液(エマルジョンもしくは懸濁液を含む)の形で、例えば静脈内、筋内、皮下もしくは他の投与のために投与することができる。
【0070】
皮膚もしくは粘膜へと局所投与するためには、前記の化合物は、例えば軟膏剤、チンキ剤、クリーム剤、ゲル剤、溶液剤、ローション剤;鼻内スプレー;エアロゾル及び吸引用の乾燥粉末;懸濁液剤、シャンプー、毛髪用セッケン、香水などとして調製することができる。事実、任意の慣用の組成物は、本発明で利用することができる。これらの調製物は、該組成物の全質量に対して、0.1〜50.0質量%、有利には0.3〜20.0質量%の1もしくは複数の有効化合物を含む。
【0071】
前記の疾患もしくは他の疾患の処置のために、式Iの化合物(有効成分)もしくは係る化合物を含む混合物の好適な用量は、もちろん、例えば宿主、投与様式及び処置される状態の性質と重度並びに使用される本発明の特定の剤の相対的効力に依存して変化する。例えば、必要とされる有効剤の量は、公知のインビボ及びインビトロ技術に基づき、どの位の期間にわたり特定の有効剤濃度が血漿内で、治療効果に許容される濃度で残留するかを測定することで決定できる。一般に、動物における十分な結果は、約0.1〜約100000mg/kgの日用量で得られることが示される。例えば、ヒトにおいて、可能な指摘される日用量は、約1mg〜100g毎日、有利には5mg〜10g毎日、例えば1〜約8000mg/日、最も有利には10mg〜5g毎日(有利には経口で)の範囲であり(70kgの人)、適宜、一回でもしくは用量を一日四回まで分けて又は遅延放出形で投与される。投与形は、従って適宜、約0.1もしくは1.0〜約500もしくは2000mgの本発明の化合物もしくは化合物混合物であって好適な製剤学的に認容性の希釈剤もしくは担体と混合されたものを従って含有する。
【0072】
医薬組成物は、例えば約0.1%〜約100(例えば約99.9)%、有利には約20〜約60%の有効成分を含有する。
【0073】
本発明の化合物もしくは化合物混合物を含む液体組成物のための例には、例えば0.1〜1%、例えば0.5%の範囲の式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物の固体分散液、水溶液、例えば可溶化剤を含有する水溶液、マイクロエマルジョン及び懸濁液が含まれる。該組成物は、好適な緩衝液によって、例えば3.5〜9.5の範囲のpHに、例えば4.5のpHに緩衝させることができる。
【0074】
組合せの場合に、組み合わせ相手の別々の投与のための医薬組成物及び/又は固定組合せ物での投与のための医薬組成物、すなわち少なくとも2つの組み合わせ相手を含む本発明による単独のガレヌス組成物は、自体公知のようにして製造でき、かつ該組成物は、腸内で、例えば経口もしくは直腸内で、外的に及び/又は非経口でヒトを含む哺乳動物に投与するために適した組成物であって、殊に腸内もしくは非経口の適用に適した組成物である。
【0075】
腸内もしくは非経口の又は外的な投与のための組み合わせ両方のための医薬調剤は、例えば単位投与形、例えば糖衣錠、タブレット剤、カプセル剤、坐剤、アンプル剤、クリーム剤、ローション剤、プラスター剤もしくは軟膏剤である。特に記載がない限り、これらは、自体公知のようにして、例えば慣用の混合、造粒、糖被覆、溶解もしくは凍結乾燥の方法によって製造される。各投与形の個々の用量に含まれる組み合わせ相手の単位含有量は、それ自身において有効量を構成する必要はない。それというのも、必要な有効量は、単独の投与単位と代わって、2もしくは複数の投与単位の投与によって達成されることもあるからである。
【0076】
特に、組み合わせ相手のそれぞれの治療学的に有効な量は、同時にもしくは連続的に、かつ任意の順序で投与することができ、かつそれらの成分は、別々に(例えば固定された期間もしくは可変期間後に連続的に)又は固定組合せ物として投与されうる。例えば、本発明による疾患の処置方法(緩和を含む)は、(i)組み合わせ相手(a)(本発明の化合物)を遊離形もしくは製剤学的に認容性の塩形で投与することと、(ii)組み合わせ相手(b)(例えば本発明の異なる化合物又は異なる式の有効成分)を遊離形もしくは製剤学的に認容性の塩形で、同時にもしくは連続的に任意の順序で、一緒になって治療学的に有効量となる量で、好ましくは相乗的に有効な量で、例えば本願に記載される量に相当する日用量で投与することを含んでよい。個々の組み合わせ相手は、別々に異なる時間で治療の過程の間で又は同時に分けられた組み合わせ形もしくは単独の組み合わせ形で投与することができる。更に、用語"投与する"は、また、組み合わせ相手自体へとインビボで変換する組み合わせ相手のプロドラッグの使用を含む。従って、本発明は、同時の及び/又は交互の処置の全ての係る投与計画を含むものと解されるべきであり、かつ用語"投与する"は、それに従って解釈されるべきである。
【0077】
使用される組み合わせ相手の有効な投与量は、例えば使用される特定の化合物又は医薬組成物、投与様式、処置される疾患及び/又は処置される疾患の重度に依存して変化しうる。このように、投与計画は、様々な要因、例えば投与形路、代謝、患者の腎機能及び肝機能に応じて選択される。通常の能力を有する医師、臨床家もしくは獣医は、該疾患を抑制、緩和、対抗もしくは阻止するのに必要な単独の有効成分の有効量を容易に決定でき、かつ定めることができる。毒性無く効力が得られる範囲内の有効成分の達成する濃度における最適な精度は、標的部位への有効成分の到達性のキネティックに基づく投与計画を必要とする。
【0078】
前記のように、本発明は、また、"使用のための"化合物もしくは化合物混合物が述べられていれば挿入できる以下の実施態様をも含む:
(1)式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物であって、動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトの診断的もしくは特に治療的(予防的を含む)な処置で使用するための;特にCNS活性調節物質として使用するための、より特に気分上昇剤として使用するための、例えば1もしくは複数の、特に上述の及び以下に挙げる特定の疾患の任意の1もしくは複数の疾患の処置(緩和を含む)で使用するためのもの。
【0079】
(2)式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物を有効成分として製剤学的に認容性の希釈剤もしくは担体と一緒に含む医薬組成物もしくは栄養補給組成物であって、特に上述の疾病もしくは疾患の1もしくは複数の治療的及び/又は予防的な処置において使用するためのもの。
【0080】
(2′)CNS活性が減退されており、より特には脳内でもしくは極めて特にシナプス間隙で神経伝達物質のレベルが低すぎる疾患の処置もしくは抑制のための医薬組成物であって、式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物及び製剤学的に認容性の希釈剤もしくは担体を含むもの。
【0081】
(3)疾患、特に前記の特定の1もしくは複数の疾患を処置するにあたり、係る処置を必要とする被験体に処置する方法において、製剤学的に有効量の式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物を、特にそれを必要とする個体に投与することを含む方法。
【0082】
(3′)CNS活性が減退されており、より特には脳内でもしくは極めて特にシナプス間隙で神経伝達物質のレベルが低すぎる疾患の処置もしくは抑制のための方法において、それを必要とする哺乳動物に、製剤学的に有効量の式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物を、特にそれを必要とする個体に投与することを含む方法。
【0083】
(4)式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物を、前記の疾病もしくは疾患の処置もしくは抑制のための医薬品もしくは補助食品を製造するために用いる使用。
【0084】
(4′)式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物を、CNS活性が減退されており、より特には脳内でもしくは極めて特にシナプス間隙で神経伝達物質のレベルが低すぎる疾病もしくは疾患、特に前記の疾患の1もしくは複数のための医薬品もしくは補助食品の製造のために用いる使用。
【0085】
(5)式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物の治療学的に有効量及び異なる製剤学的に有効な化合物及び/又はその製剤学的に認容性の塩を、例えば併用してもしくは連続的に同時投与することを含む前記方法において、該異なる製剤学的に有効な化合物及び/又はそれらの塩が、特に、前記のもしくは以下に示される任意の1もしくは複数の疾患の処置で使用するためのものである方法。
【0086】
(6)式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物の治療学的に有効量及び異なる製剤学的に有効な化合物及び/又はその製剤学的に認容性の塩を含む組み合わせ製品であって、第二の製剤学的に有効な化合物及び/又はそれらの塩が、特に、前記の任意の1もしくは複数の特定の疾患の処置で使用するためのものであるもの。
【0087】
本願の"投与する"とは、特に式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物の治療学的な有効量を細胞に、細胞培養でも、又は特に患者のいずれかに投与することを意味する。"製剤学的に有効な用量"とは本願では、好ましくは、投与される効果をもたらす用量を意味する。
【0088】
医薬調剤もしくは栄養補助調剤は、滅菌されても、かつ/又はアジュバント、例えば保存剤、安定剤、バインダー、崩壊剤、湿潤剤、皮膚もしくは粘膜浸透促進物質、乳化剤、浸透圧を変更するための塩及び/又は緩衝液、又は当該技術分野で公知の他の成分、賦形剤もしくは担体材料を含有してよい。
【0089】
経口使用及び局所使用に適した医薬等級もしくは食品等級の有機もしくは無機の担体及び/又は希釈剤を使用して、式Iの治療学的に有効な化合物を含有する組成物を製剤化することができる。当該技術分野で知られる希釈剤には、水性媒体、植物油及び動物油及び脂肪が含まれる。安定剤、湿潤剤及び乳化剤、浸透圧を変更するための塩もしくは好適なpH値を保証するための緩衝液及び皮膚浸透促進物質は、助剤として使用することができる。該医薬組成物もしくは栄養補助組成物は、また、1もしくは複数の以下のもの:キャリヤータンパク質、例えば血清アルブミン;緩衝液;充填材、例えば微結晶セルロース、ラクトース、トウモロコシデンプン及び他のデンプン;結合剤;甘味料及び他のフレーバー剤;着色剤;及びポリエチレングリコールを含んでよい。これらの添加剤は当該技術分野でよく知られており、様々な製剤で使用される。
【0090】
本発明の目的のための"患者"、"個体"もしくは"被験体"には、ヒト及び他の動物の両方が含まれる。このように、式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物は、ヒトと動物の両方に適用できる。好ましい実施態様において、患者はヒトである。患者は、予防もしくは治療のいずれかを意図して処置される。しかし、また、"健康な"人は、例えば一般にその気分を高めるために又は前記の好ましい他の効果を示すために処置することができる。
【0091】
一般に、該医薬品及び/又は栄養補給物において、式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物の割合は、0.001〜100質量%の範囲、より好ましくは0.01〜30質量%の範囲であってよい。
【0092】
製造方法
1もしくは複数の式Iの化合物(また以下にアシルフロログルシノールと呼ぶ)は、公知の化学反応に従って製造でき、又は生物学的材料から、例えば以下に上げる生物から単離することができる。また、アシルフロログルシノール誘導体の前駆体を単離し、その誘導体を公知の化学反応に従って製造することも可能である。アシルフロログルシノール誘導体は、例えば不随の実施例に記載されるようにして単離することができる。検出のための方法は、逆相シリカゲル(C18)上で水/アセトニトリル−グラジエントを溶出溶剤として使用してUV(紫外線)を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)並びに生成物分析及び生産最適化のために使用されるMS(質量分光法)検出を含む。当業者には、本発明によるアシルフロログルシノール誘導体は、例えば以下の文献:March's Advanced Organic Chemistry:Reaction,Mechanisms and Structure,5th ed.by Michael B.Smith,Jerry March,Wiley−lnterscience;2001;Classics in Total Synthesis:Targets,Strategies,Methods by K.C.Nicolaou,E.J.Sorensen John Wiley & Son Ltd,1996及びThe Art and Science of Total Synthesis at the Dawn of the Twenty−First Century.Nicolaou KC Vour−loumis,D,Winssinger N,Baran PS.,AngewChem Int Ed Engl 2000,39(1):44−122から導き出せる標準的な方法に従って合成できることは明らかである。
【0093】
しかしながら、好ましくは、前記化合物もしくは該化合物を引き続き形成する前駆体は、生物学的材料、特にユーカリプツス属及び幾つかの微生物、例えばシュードモナス・アウランティアカ(Pseudomonas aurantiaca)及びシュードモナス・フルオレッセンス、より好ましくはユーカリプツス・アグレガタ(E.aggregata)、ユーカリプツス・アルベンス(E.albens)、ユーカリプツス・アルピナ(E.alpina)、ユーカリプツス・アンプリフォリア(E.amplifolia)、ユーカリプツス・アミグダリナ(E.amygdalina)、ユーカリプツス・アングスチシマ(E.angustissima)、ユーカリプツス・アポドフィラ(E.apodophylla)、ユーカリプツス・アプロキシマンス(E.approximans)、ユーカリプツス・アルチェリ(E.archeri)、ユーカリプツス・アルゴフロイア(E.argophloia)、ユーカリプツス・オーストラリアナ(E.australiana)、ユーカリプツス・バルベリ(E.barberi)、ユーカリプツス・ブラケリイ(E.blakelyi)、ユーカリプツス・ボトリョイデス(E.botryoides)、ユーカリプツス・ブロオケリアナ(E.brookeriana)、ユーカリプツス・カマルヅレンシス(E.camaldulensis)、ユーカリプツス・シネレア(E.cinerea)、ユーカリプツス・クラドカリクス(E.cladocalyx)、ユーカリプツス・クラークソニアナ(E.clarksoniana)、ユーカリプツス・シトリオドラ(E.citriodora)、ユーカリプツス・クロエジアナ(E.cloeziana)、ユーカリプツス・クネオリフォリア(E.cneorifolia)、ユーカリプツス・コッキフェラ(E.coccifera)、ユーカリプツス・コオラバア(E.coolabah)、ユーカリプツス・コルダタ(E.cordata)、ユーカリプツス・コロナタ(E.coronata)、ユーカリプツス・ダイリムプレア(E.dairympleana)、ユーカリプツス・デベウゼビレイ(E.debeuzevillei)、ユーカリプツス・ディヴェルシカラー(E.diversicolor)、ユーカリプツス・ダウソニイ(E.dawsonii)、ユーカリプツス・ドリゴエンシス(E.dorrigoensis)、ユーカリプツス・ドゥモサ(E.dumosa)、ユーカリプツス・ドゥンダシイ(E.dundasii)、ユーカリプツス・ファメリカ(E.famelica)、ユーカリプツス・フィシフォリア(E.ficifolia)、ユーカリプツス・グラウセッセンス(E.glaucescens)、ユーカリプツス・グロブルス(E.globulus)、ユーカリプツス・グランディス(E.grandis)、ユーカリプツス・グレグソニアナ(E.gregsoniana)、ユーカリプツス・グニイ(E.gunnii)、ユーカリプツス・ホリステス(E.horistes)、ユーカリプツス・インクラサタ(E.incrassata)、ユーカリプツス・ジェンセニイ(E.jensenii)、ユーカリプツス・ジョンストニイ(E.johnstonii)、ユーカリプツス・カルツォフィアナ(E.kartzoffiana)、ユーカリプツス・コキイ(E.kochii)、ユーカリプツス・キベアネンシス(E.kybeanensis)、ユーカリプツス・ラルギフロレンス(E.largiflorens)、ユーカリプツス・レプトポダ(E.leptopoda)、ユーカリプツス・ロイコキシロン(E.leucoxylon)、ユーカリプツス・ロキソフレバ(E.loxophleba)、ユーカリプツス・マカルトゥリイ(E.macarthurii)、ユーカリプツス・マクロカルパ(E.macrocarpa)、ユーカリプツス・マクラタ(E.maculata)、ユーカリプツス・マニフェラ(E.mannifera)、ユーカリプツス・メリオドラ(E.melliodora)、ユーカリプツス・ミクロカルパ(E.microcarpa)、ユーカリプツス・ミトチェリアナ(E.mitchelliana)、ユーカリプツス・モルカナ(E.moluccana)、ユーカリプツス・モオレイ(E.moorei)、ユーカリプツス・モリスビイ(E.morrisbyi)、ユーカリプツス・ミリアデナ(E.myriadena)、ユーカリプツス・ネグレクタ(E.neglecta)、ユーカリプツス・ニコリイ(E.nicholii)、ユーカリプツス・ニフォフィラ(E.niphophila)、ユーカリプツス・ニテンス(E.nitens)、ユーカリプツス・オシデンタリス(E.occidentalis)、ユーカリプツス・オバタ(E.ovata)、ユーカリプツス・パルビフォリア(E.parvifolia)、ユーカリプツス・パルブラ(E.parvula)、ユーカリプツス・ペリニアナ(E.perriniana)、ユーカリプツス・ペチオラリス(E.petiolaris)、ユーカリプツス・ピペリタ(E.piperita)、ユーカリプツス・プレニシマ(E.plenissima)、ユーカリプツス・ポリアンテモス(E.polyanthemos)、ユーカリプツス・ポリブラクテア(E.polybractea)、ユーカリプツス・ポロサ(E.porosa)、ユーカリプツス・プチェラ(E.pulchella)、ユーカリプツス・プルベルレンタ(E.pulverulenta)、ユーカリプツス・シデロキシロン(E.sideroxylon)、ユーカリプツス・リスドニイ(E.risdonii)、ユーカリプツス・ロブスタ(E.robusta)、ユーカリプツス・ロドワイ(E.rodwayi)、ユーカリプツス・ロストラタ(E.rostrata)、ユーカリプツス・ルビダ(E.rubida)、ユーカリプツス・シデロキシロン(E.sideroxylon)、ユーカリプツス・シエベリ(E.sieberi)、ユーカリプツス・スタイゲリアナ(E.staigeriana)、ユーカリプツス・スブクレヌラタ(E.subcrenulata)、ユーカリプツス・テヌイラミス(E.tenuiramis)、ユーカリプツス・テレチコルニス(E.tereticornis)、ユーカリプツス・テトラプテラ(E.tetraptera)、ユーカリプツス・トリカルパ(E.tricarpa)、ユーカリプツス・ウルニゲラ(E.urnigera)、ユーカリプツス・ベグランディス(E.vegrandis)、ユーカリプツス・ビミナリス(E.viminalis)、ユーカリプツス・ビリディス(E.viridis)、ユーカリプツス・ヨウマニイ(E.youmanii)及び、かかる化合物が存在する場合には、ユーカリプツス・デレガテンシス(E.delegatensis)、ユーカリプツス・ヘマストマ(E.haemastoma)、ユーカリプツス・ニチダ(E.nitida)、ユーカリプツス・オブリクア(E.obliqua)、ユーカリプツス・パウシフロラ(E.pauciflora)、ユーカリプツス・ラディアタ(E.radiata)、ユーカリプツス・レグナンス(E.regnans)又はユーカリプツス・ステルラタ(E.stellulata)又はユーカリプツス属とは他の植物から濃縮もしくは好ましくは単離される。もちろん、係る材料の混合物を使用することも可能である。
【0094】
これらの植物は、全世界に由来し、主に東アジア及びオーストラリアに由来する。これらは、例えば中国及びオーストラリアにおいて伝統的な医薬において使用される。
【0095】
式Iの化合物は、植物材料の抽出プラント、例えば植物材料としての植物の梳いた部分の抽出プラントによって、例えば葉、樹皮、果実もしくは更に幹、根もしくは植物の他の部分から得ることができる。その方法は、新鮮なもしくは乾燥させた植物材料を、有機溶剤、有利にはアルコールで、場合により水の存在下で徹底的に抽出し、濃縮することで、粗製抽出物を得ることを特徴としている。所望であれば、該粗製抽出物は、1もしくは複数の異なる有機溶剤(特にこの再抽出については実施例に挙げられる溶剤)で極性を高めて再抽出し、再び濃縮される。係る進めた抽出物は、場合により純粋な成分へと、通常の精製方法、例えばクロマトグラフィーもしくは結晶化によって分離される。
【0096】
これらの抽出物が公知の精油、すなわち:
グループ1、シネオール(もしくはユーカリプトール)を含有する油、そのグループのうち、ユーカリプツス・グロブルスが最も重要である;
グループ2、シトロネラールを含有する油、そのグループのうち、ユーカリプツス・マクラタが最も重要である;
グループ3、シトラールを含有する油、そのグループのうち、ユーカリプツス・スタイゲリアナ F.von Muellが典型的な例である;
グループ4、ペパーミント臭の油、そのうち、ユーカリプツス・ピペリタが一例である;及び
グループ5、殆ど知られていない様々な臭いの油
の組成とは異なる組成であることを示すことができる。
【0097】
これらの油は、水蒸気駆動法で調製される。これは、モノテルペン類、例えばピネン、ユーカリプトール及びカルボン及びセスキテルペン類、例えばアロマデンドレン、グリュネン及びグロブロールなどの低分子量化合物を濃縮する。式Iの化合物のいずれも、高性能液体クロマトグラフィー/質量分光法を接続したもの(HPLC−MS)によって、この油中には検出できない。
【0098】
従って、本発明の一実施態様は、医薬製品もしくは栄養補助製品の製造方法において、
a)式Iの化合物もしくは式Iの化合物の混合物を、生物学的材料から、特に植物もしくは植物部分から、有利には葉及び/又は樹皮から、ユーカリプツス属から抽出(特にまさに実施例に記載されるように、又は特に実施例に記載されるようにして)することと、
b)得ることができる抽出物、得ることができる抽出された式Iの化合物又は得ることができる抽出された式Iの化合物の混合物を、他の成分(特に前記の添加剤などのいずれか)とを混合して、栄養補助組成物及び/又は医薬組成物を得ることと
を含む方法に関する。
【0099】
本発明は、一実施態様において、また、まさに示される製造方法に記載されるようにして得ることができる栄養補助組成物もしくは医薬組成物を含む。
【0100】
式Iの化合物の立体異性混合物、例えばジアステレオマーもしくはシス/トランス異性体の混合物並びに出発材料の混合物は、その相応の異性体へと、自体公知の方法で好適な分離法によって分離することができる。ジアステレオマー混合物又はシス/トランス化合物の混合物は、例えば、それらの個別のジアステレオマーもしくはシス/トランス異性体へと、分別結晶化、クロマトグラフィー(例えばシリカゲル上で、例えば薄層クロマトグラフィーによって)、溶剤分配及び類似の方法によって分離することができる。エナンチオマーは、ジアステレオマー塩の形成を通じて、例えばエナンチオマー純粋なキラル酸との塩形成によって、又はクロマトグラフィーによって、例えばキラル配位子を有するクロマトグラフィー基質を用いたHPLCによって分離することができる。
【0101】
実施例
以下の実施例は本発明を説明するものであって、その範囲を限定するものではない。そこに示される実施態様は、本発明により包含されるが、特に開示されていない抽出物を生産するために変更に適合させてよい。更に、いくらか異なる様式で同じ抽出物を生産するための方法のヴァリエーションは、当業者には明らかである。
【0102】
一般的な実験方法
LC−MS分析は、Agilent HP1100(Agilent,Waldbronn,ドイツ)型の液体クロマトグラフィーとLCT質量分析器(Micromass,マンチェスター,英国)と接続したものを用いて、ポジティブ及びネガティブの電子スプレーイオン化(ESI)モードにおいて、従来に記載された方法[9]の僅かな変更を基礎として実施する。Wastersの対称カラムを固定相として使用する。移動相A:水中0.1%ギ酸、移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸;グラジエント:0〜1分に100%Aで、1〜6分に90%までのBで、6〜8分に100%までのBで、8〜10分に100%のBで。LC−MSスペクトルは、150〜1600Uの分子量の範囲で記録する。HPLC−UV/Vis分析は、HP1100シリーズの分析HPLCシステム(Agilent,Waldbronn,ドイツ)であってG1312A型バイナリポンプシステムと、G1315A型のダイオードアレイ検出器と、G1316A型のカラムコンパートメントと、G1322A型の脱ガス装置と、G1313A型の自動インジェクタとを含むもので実施する。移動相:A=水中0.1%トリフルオロ酢酸、B=アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸。(逆相の)Macherey&Nagel(Dueren,ドイツ)社のNucleodur RP18カラム(125×4mm、粒度5μm)は、固定相としてはたらく。サンプルのアリコート(主要な代謝物の濃度により、2〜10μgのメタノール可溶性物質を表す)を、40℃で1ml/分の流速で以下のグラジエント:20分で0%のBから100%のBへと線形で、その後に、定組成条件を100%のアセトニトリルで5分間;引き続き該カラムの再生を5分間で分析する。HPLC−UVクロマトグラムは、210nm及び254nmで記録する。ダイオードアレイ検出(DAD)を使用して、190〜600nmの範囲内のHPLC−UV/Visスペクトルを記録する。HP社のChemStationソフトウェアによって、粗製抽出物中の較正された標準化合物についての自動化された調査が可能となる。分取HPLCは、室温で、分取HPLCシステム(Gilson Abimed,Ratingen,ドイツ)であってGilson Unipointソフトウェアと、306バイナリポンプシステムと、204フラクションコレクタと、155UV−Vis検出器と、806圧力計モジュールと、811Cダイナミックミキサとを含むもので、以下に記載される種々のグラジエント及び固定相を使用して実施される。NMRスペクトルを、Bruker DMX500において、それを500.13MHzのプロトン周波数で稼働させて記録する。全てのスペクトルは、DMSO−d6溶液中で302Kで測定される。溶剤のピークは、プロトン及び炭素の両方のケミカルシフト(δH:2.50、δC:39.5)のための内部参照として使用される。
【0103】
実施例1A: メロテルペン類の混合物の抽出
2kgの乾燥させたユーカリプツス・グロブルスの乾燥葉(Mueggenburg Pflanzliche Rohstoffe GmbH&Co KG,ハンブルク,ドイツ)を梳いて、その後に10Lの95%(v/v)のメタノールで激しく撹拌しつつ室温でそれぞれ3時間にわたり3回抽出する。合した抽出物を濾過し、回転蒸発器内で真空下で減少させる。残りの水相(約900mL)の再抽出を、第一に500mLのペトロールエーテル(PE)で、第二に250mLのジクロロメタンで、第三に250mLの酢酸エチルで、最後に200mLのブタノールで実施し、それぞれの有機抽出を3回実施する。プールされた酢酸エチル抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で蒸発させることによって、36.7gの粗生成物が得られ、それを以下で抽出物と呼ぶ(PE:115g、CH2Cl2:102.1、ブタノール:34.3g、残りの水:72.5g)。
【0104】
実施例1B: メロテルペン類の混合物の抽出
2kgの乾燥させたユーカリプツス・グロブルスの乾燥葉もしくは乾燥果実(Alfred Gaike GmbH、Gittelde/Harz,ドイツ)を梳いて、粉末化し、引き続き3.6Lの95%(v/v)エタノールもしくは100%アセトンで激しく撹拌しつつそれぞれ30分間室温で3回抽出する。合した抽出物を濾過し、回転蒸発器内で真空下で減少させる。残りの水相(約1000mL)の再抽出は、2回、第一に1000mLのn−ヘプタンで、第二に1000mLの酢酸エチルで実施し、それぞれの有機抽出を4回実施する。プールされた酢酸エチル抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で蒸発させることによって、128gの粗生成物が得られ、それを以下で抽出物と呼ぶ(ヘプタン:36g、残りの水:78g)。
【0105】
実施例2: 式Iの化合物の精製
粗製抽出物の第一の精製工程を、(逆相)Chromabond P300−20C18カラム、370×90mm(Macherey&Nagel,Dueren,ドイツ)において、水(溶剤A)/アセトニトリル(溶剤B)/2−プロパノール(溶剤C)の混合物を溶出剤として使用して、50%のアセトニトリルで始めて以下の溶出スキームを使用して実施する:
【表10】

【0106】
各フラクションを、HPLC−UV/VISによって分析する。所望の生成物は、フラクション4〜9(ユーカリプトン)及びフラクション13〜23(マクロカルパールA+B)で溶出する。
【0107】
ユーカリプトン: 第二のHPLC精製工程の線形グラジエントは、Nucleodur Chromabond 100−5C18ecカラム、250×20mm(Macherey&Nagel,Dueren,ドイツ)を使用して、50%のBから70%のBまで30分で進み、100%まで5分で進み、かつ更に20分間継続する。所望の生成物は、保持時間(Rt)26〜30分で溶出する。最後のHPLC精製工程は、30%のBから100%のBまで30分で進み、かつ更に10分間継続する。所望の生成物は、保持時間(Rt)23〜25分で、かつ23mgの収量で溶出する。分光データは、報告されているデータ(Osawa,K他,Phytochemistry,1995,40,183−184)と適合する。
【0108】
マクロカルパールA: 第二のHPLC精製工程は、定組成条件(60%のアセトニトリルで125分間)で、Nucleodur Chromabond 100−20C18ecカラム、130×40mm(Macherey&Nagel,Dueren,ドイツ)を用いて実施する。所望の生成物は、保持時間(Rt)82〜92分で溶出する。
【0109】
最後のHPLC精製工程のために、以下の溶出スキームを使用する:
【表11】

【0110】
保持時間42〜48分で、所望の生成物が、収量125mgで溶出する。分光データは、報告されているデータ(Nishizawa,M他,Tet.Lett.,1992,33,2983)と適合する。
【0111】
実施例3: セルベースアッセイ
材料:
5−[1,2−3H(N)]−ヒドロキシトリプタミン−クレアチニン硫酸塩 (5−NET−498、ロット3499−250(リガンド)HT)
レボ−[リング−2,5,6−3H]−ノルエピネフリン(NA) NET−678、ロット3557477(リガンド)
3,4−[リング−2,5,6−3H]−ジヒドロキシフェニルエチルアミン(DA) NET−637、ロット3557411(リガンド)
フルボキサミン Sigma F2802、ロット71K4702
デシプラミン塩酸塩 Sigma D3900、ロット064K1370
ノミフェンシンマレイン酸塩 Sigma N1530、ロット095K4064
ドパミン塩酸塩 Fluka 56610、ロット361042/1 51597
酒石酸水素ノルエピネフリン Sigma A9512、ロット100K1484
HEPES Sigma H4034、ロット81K5418
Ultima Gold Packard 番号6013329、チャージ:77−060201
他の材料は、通常市販される好適な等級である。
【0112】
アッセイの説明(ラットシナプトソームにおける神経伝達物質の輸送プロセスについての一般的記載も参照のこと):
雄のウィスターラット(200〜300g、8〜12週齢)を、CO2麻酔下に断頭し、脳を素早く取り出す。新皮質組織を直ちに、10容量の氷冷の0.32Mのスクロースであって10mMのHEPES(pH7.4)で緩衝されたものに浸し、そしてPotter−Elvehjem型のガラス/テフロンホモジナイザを用いて500rpm(IKA,Mullheim,ドイツ)で均質化する。得られた調製物を4℃で900×gで10分間遠心分離する。ペレットを廃棄し、上清を、再び4℃で10000×gで遠心分離する(Biofuge 28RS,Heraeus,Hanau,ドイツ)。上清を廃棄し、ペレットを、必要とされるまで氷上で0.32Mのスクロース/HEPESで貯蔵する。
【0113】
アッセイは、ファルネボバッファー(Farnebo buffer)pH7.4(121mMのNaCl、1.8mMのKCl、1.3mMのCaCl2、1.2mMのMgSO4、25mMのNaHCO3、1.2mMのKH2PO4、11mMのグルコース、0.57mMのアスコルビン酸、95%O2/5%CO2で飽和)であってMAOインヒビターであるパルギリンを50μMの濃度で含有するもので実施する。シナプトソームを含有するペレットを、ファルネボバッファー中で約1mg/mlのタンパク質濃度で再懸濁した。
【0114】
実験は、96ウェルの濾過プレート(Multiscreen,Millipore,Eschborn,ドイツ)中で実施する。各プレートについて、対照の取り込みと非特異的な取り込み(10μMのフルボキサミン(5−HT)、10μMのデシプラミン(NA)もしくは10μMのノミフェンシン(DA)の存在下で)を測定する。各薬物濃度を、4つのウェルで測定する。1つのプレートについて、同じシナプトソーム調製物を使用する。
【0115】
10μlのDMSO中の薬物溶液、非特異的リガンドもしくはバッファー、180μlのファルネボバッファー及びファルネボバッファー中に再懸濁されたシナプトソーム調製物50μlを、ファルネボバッファーで予備湿潤された96ウェルの濾過プレートの各ウェルへと添加する。インキュベーションを室温で10分間行い、その後に10μlの[3H]−リガンド(最終濃度:5−HT:2nM、NA:20nM、DA:30nM)を添加して最終容量250μlとする。インキュベーションを室温で15分間(DA、NA)もしくは20分間(5−HT)行う。インキュベーションは、迅速な濾過とファルネボバッファーでの洗浄によって止める。フィルタ上に残った放射活性を、約50%の効率を有する液体シンチレーション計数器で見積もる。特異的な結合は、全結合から10μMのフルボキサミン(5−HT)、10μMのデシプラミン(NA)又は10μMのノミフェンシン(DA)の存在下での結合を差し引いたものとして定義される。
【0116】
EC50値[μg/ml]
化合物 ドパミン ノルエピネフリン セロトニン
GTG183−1−1 10 13 31
GTG184−1−1 4 4 17
GTG183−1−1: 実施例1により調製された抽出物
GTG184−1−1: 純粋なユーカリプトンとマクロカルパールAとの質量で1:1の混合物
実施例4: インビボ試験(ガラス玉覆い隠し)
その試験は、上述のように実施する。
【0117】
マウスでのガラス玉覆い隠し試験におけるマクロカルパールAとフルオキセチンの効果(1グループ当たり15匹のマウス)
【表12】

【0118】
スチューデントのt検定:NS=非有意;**=p<0.01;***=p<0.001
その結果は、腹腔内用量範囲3〜10mg/kgにわたって明確かつ用量依存性の抗不安様の活性の存在を示唆している。
【0119】
実施例5: 医薬組成物
以下の成分を、200mgの有効成分(実施例1による抽出物もしくは純粋なユーカリプトンとマクロカルパールAとの1:1混合物)をそれぞれ含有するタブレット剤5000錠の製造のために使用する:
有効成分 1000g
トウモロコシデンプン 680g
コロイダルシリカ 200g
ステアリン酸マグネシウム 20g
ステアリン酸 50g
ナトリウムカルボキシメチルデンプン 250g
水 適量
有効成分としての前出の実施例(例えば実施例1)で述べた式Iの化合物の1つと、50gのトウモロコシデンプンと、コロイダルシリカとの混合物を、250gのトウモロコシデンプンと2.2kgの脱塩水とから作製したデンプンペーストで加工して、湿った材料を形成する。これを、3mmのメッシュサイズを有する篩いに強制的に通し、流動床乾燥機内で45℃で30分間乾燥させる。乾燥した顆粒を、1mmのメッシュサイズを有する篩いに通し、予め篩別(1mmの篩)した330gのトウモロコシデンプンとステアリン酸マグネシウムとステアリン酸とナトリウムカルボキシメチルデンプンとの混合物と混合し、加圧することで、僅かに両凸のタブレット剤が形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の予防的及び/又は治療的な処置において中枢神経系(CNS)活性調節物質として使用するための、式I
【化1】

[式中、
1及びR2は、互いに無関係に、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
3及びR4は、互いに無関係に、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
5は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、かつ
6は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキルであってそれ自身が少なくとも1つの環式要素を有するC3〜C25−ヒドロカルビルで置換されており、前記環式要素は、飽和であるか又は1もしくは複数の孤立の(非共役もしくは累積)二重及び/又は三重の炭素−炭素結合を含み、かつ前記環式要素は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ、オキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキル及び3〜10個の炭素原子部を有するシクロアルキルからなる群から無関係に選択される1もしくは複数の置換基によって置換されており、前記シクロアルキル自身は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ及びオキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルから選択される1もしくは複数の置換基で置換されており、又は
3とR5の一方は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、他方は、R6についての前記定義の非置換もしくは置換されたC3〜C25−ヒドロカルビルで置換されたC1〜C12−アルキルのC3〜C25−ヒドロカルビル部に結合されており、こうしてそれらは、R3もしくはR5が結合されるOへの第一の結合を介して、かつR6のC1〜C12−アルキル部への第二の結合を介して結合されて、少なくとも1つの環式要素を有するC3〜C25−ヒドロカルボンジイルを形成し、前記環式要素は、飽和であるか又は1もしくは複数の孤立の(非共役もしくは累積)二重及び/又は三重の炭素−炭素結合を含み、かつ前記環式要素は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ、オキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキル及び3〜10個の炭素原子部を有するシクロアルキルからなる群から無関係に選択される1もしくは複数の置換基によって置換されており、前記シクロアルキル自身は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ及びオキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルから選択される1もしくは複数の置換基で置換されており、こうして前記のC3〜C25−ヒドロカルボンジイルは、式I中のR3もしくはR5を結合するO、そのOを結合する炭素及び式I中のR6を結合する炭素、これらの2つの炭素をつなげる結合及びR6の位置に結合されるC1〜C12−アルキルと一緒になって、更なる環を形成するが、但し、R6のカルボヒドリル及びアルキル部は、一緒になって少なくとも10個の炭素を有する]の化合物又は式Iの化合物の混合物及び/又は1もしくは複数の互変異性体、1もしくは複数の溶媒和物、1もしくは複数のエステル及び/又は1もしくは複数の塩。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のための1もしくは複数の化合物であって、前記1もしくは複数の化合物は、式中の置換基が以下の意味を有するものである化合物から選択される:
1及びR2は、互いに無関係に、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
3及びR4は、互いに無関係に、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
5は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、
6は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキルであってそれ自身が以下の式を有する環系からなる群から選択されるC3〜C25−ヒドロカルビルで置換されており、その際、波線は、共にR6を形成する前記ヒドロカルビルによって置換された、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、好ましくはメチルもしくはエチル、又はC1でヒドロカルビルによって置換されたイソペンチル、すなわちイソペンタン−1,1−ジイルへの好ましい結合位置での結合端部を印している:
【化2】

又は、R3とR5の一方は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルであり、他方は、R6についての前記定義のC3〜C25−ヒドロカルビルで置換されたC1〜C12−アルキルのC3〜C25−ヒドロカルビル部に結合されており、こうしてそれらは、R3もしくはR5が結合されるOへの第一の結合を介して、かつR6のC1〜C12−アルキル部への第二の結合を介して結合されて、C3〜C25−ヒドロカルボンジイルを形成し、前記のC3〜C25−ヒドロカルボンジイルは、式I中のR3もしくはR5を結合するO、そのOを結合する炭素及び式I中のR6を結合する炭素、これらの2つの炭素をつなげる結合及びR6の位置に結合されるC1〜C12−アルキルと一緒になって、更なる環を形成し、かつ前記のC3〜C25−ヒドロカルボンジイルは、以下の式を有する環系からなる群から選択され、その際、波線は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、好ましくは、上述のヒドロカルビルR6についての好ましい式として定義された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキルへの好ましい結合位置の結合端部を印しており、かつアスタリスクは、式I中のR3もしくはR5を結合するOが結合される好ましい結合端部を印している:
【化3】

その際、それぞれのC3〜C25−ヒドロカルビル及び/又はC3〜C25−ヒドロカルボンジイルは、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ、オキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキル及び3〜10個の炭素原子部を有するシクロアルキルからなる群から無関係に選択される1もしくは複数の、特に5つまでの置換基によって置換されており、前記シクロアルキル自身は、非置換であるか又はヒドロキシル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキリデン、(直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキル)オキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシル−C1〜C5−アルキル、オキソ及びオキソで置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C10−アルキルから選択される1もしくは複数の置換基で置換されているが、但し、R6のカルボヒドリル及びアルキル部は、一緒になって少なくとも10個の炭素を有する、
請求項1に記載の使用のための1もしくは複数の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の使用のための式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物であって、抽出物であり、有利には前記の1もしくは複数の化合物は、全体として20〜100%の純度で、より有利には50〜100質量%の純度で存在する、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物。
【請求項4】
請求項3に記載の使用のための式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物であって、ユーカリプツス属の植物もしくは植物材料からの及び/又はシュードモナス属の微生物からの抽出物である、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物。
【請求項5】
請求項1に記載の使用のための式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物であって請求項3又は4に記載の抽出物の形であり、ユーカリプツス属の植物からの植物材料、特に植物の梳いた部分、より特に樹皮、果実、幹、根又は特に葉を、有機溶剤で、有利にはアルコールで、水の不在下もしくは存在下で抽出することと、所望であれば、粗製抽出物を、1もしくは複数の異なる溶剤で極性を高めて再抽出することと、所望であれば、更に得られた抽出物を、特にクロマトグラフィー及び/又は結晶化によって精製することとを含む製造方法によって得ることができる、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の化合物又は化合物の混合物であって、前記1もしくは複数の化合物が、以下の名称:マクロカルパールB、マクロカルパールC、マクロカルパールA、抗生物質GR95647X、マクロカルパールG、ユービマル1、マクロカルパールD、ユーグロバールG1、ユーグロバールG2、ユーグロバールG8、ユーグロバールG9、ユーグロバールG10、ユーグロバールG11、ユーグロバールIa1、ユーグロバールIa2、ユーグロバールIIc、ユーグロバールIIcΔ7異性体、ユーグロバールT1、ユーグロバールT1Δ7異性体、ユーグロバールG4、ユーグロバールG3、ユーグロバールG12、ユーグロバールIIb、ロブスタジアールA、ユーグロバールAm1、ロブスタジアールA7エピマー、ユーグロバールAm2、ユーグロバールIc、ユーグロバールIIa、ユーグロバールBI1、ユーグロバールIb、ユーグロバールIn1、ユーグロバールIn2、ユーグロバールIn3、ユーグロバールIII、ユーグロバールIVb、ユーグロバールIVa、ユーグロバールVII、ユーグロバールV、ユーカリプトン、ユーグロバールG5、マクロカルパールI、マクロカルパールJ、マクロカルパールIのエピマー、マクロカルパールD、マクロカルパールE、マクロカルパールH及びマクロカルパールKを有する化合物及び/又はそれらの1もしくは複数の互変異性体、1もしくは複数の溶媒和物、1もしくは複数のエステル及び/又は1もしくは複数の塩の群から選択される、化合物又は化合物の混合物。
【請求項7】
請求項1に記載の使用のための式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物であって、前記1もしくは複数の化合物は、ユーカリプトン及びマクロカルパールA又はそれらの1もしくは複数のエステル、1もしくは複数の溶媒和物及び/又は1もしくは複数の塩から選択される、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物。
【請求項8】
請求項1に記載の式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物であって、その使用は、予防的に及び/又は治療的に、気分を上昇させ、認知性能を高め、記憶の獲得によい影響を及ぼし、作動記憶を高め、意欲によい影響を及ぼし、行動の自発性によい影響を及ぼし、及び/又は一般的な生活の質を高めることである、式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれかに定義されるものである式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物及び/又はそれらの1もしくは複数の互変異性体、1もしくは複数の溶媒和物、1もしくは複数のエステル及び/又は1もしくは複数の塩を、うつ病、抑うつ障害、不安及び感情障害、特に以下の症状もしくは疾患の1もしくは複数が存在し及び/又は予防的に回避されるべきである場合には:一般的な不安障害、恐怖、認知障害、学習及び記憶の不足及び機能不全、躁鬱病、強迫性障害、パニック障害、摂食障害、ナルコレプシー、睡眠障害、例えば慢性疲労症候群及び時差ボケ、決定能力の欠損、集中力の欠損、劣等感、レサジー、アネルギー、衝動の欠損、身体違和感、うつ病、感情的充実感の低下、抑うつ気分、憂鬱、内部情動不安、罪悪感、罪業妄想、堅苦しい思考、思考阻害、思考の堂々巡り、無力感、絶望感、食欲不足、抑うつ気分による感染への感受性の高まり、認知能力の減少及び/又は他の症状の処置及び/又は予防において並びに健康な人での気分上昇のために及び/又はまた精神分裂病もしくは精神病の治療のための医薬組成物もしくは栄養補給物を製造するにあたり用いる使用。
【請求項10】
請求項9に記載使用であって、医薬調剤の製造のために用いる使用。
【請求項11】
請求項9に記載使用であって、栄養補給調剤の製造のために用いる使用。
【請求項12】
請求項9に記載使用であって、補助食品の製造のために用いる使用。
【請求項13】
請求項9に記載使用であって、機能性食品の製造のために用いる使用。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の式Iの化合物又は式Iの化合物の混合物及び/又はそれらの1もしくは複数の互変異性体、1もしくは複数の溶媒和物、1もしくは複数のエステル及び/又は1もしくは複数の塩を有効成分として、製剤学的に認容性の希釈剤もしくは担体と一緒に含む医薬組成物もしくは栄養補給組成物であって、うつ病、抑うつ障害、不安及び感情障害、特に以下の症状もしくは疾患の1もしくは複数が存在し及び/又は予防的に回避されるべきである場合には:一般的な不安障害、恐怖、認知障害、学習及び記憶の不足及び機能不全、躁鬱病、強迫性障害、パニック障害、摂食障害、ナルコレプシー、睡眠障害、例えば慢性疲労症候群及び時差ボケ、決定能力の欠損、集中力の欠損、劣等感、レサジー、アネルギー、衝動の欠損、身体違和感、うつ病、感情的充実感の低下、抑うつ気分、憂鬱、内部情動不安、罪悪感、罪業妄想、堅苦しい思考、思考阻害、思考の堂々巡り、無力感、絶望感、食欲不足、抑うつ気分による感染への感受性の高まり、認知能力の減少及び/又は他の症状の処置及び/又は予防において並びに健康な人での気分上昇のために及び/又はまた精神分裂病もしくは精神病の治療において使用するための、医薬組成物もしくは栄養補給組成物。

【公表番号】特表2010−513344(P2010−513344A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541831(P2009−541831)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010808
【国際公開番号】WO2008/074420
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509152002)インターメッド ディスカヴァリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】InterMed Discovery GmbH
【住所又は居所原語表記】Otto−Hahn−Strasse 15, D−44227 Dortmund, Germany
【Fターム(参考)】