説明

脳損傷を診断または治療するための方法

対象体の神経状態を診断し、治療するための方法が提供され、前記方法は、1以上のバイオマーカーの存在に対して対象体の生体試料をアッセイする工程、サンプル中の1以上のバイオマーカーの比率に基づいて神経状態を診断する工程、及び1以上のバイオマーカーの比率を変更するために治療剤を対象体に投与する工程を含む。脳損傷または多臓器損傷などの多数の神経状態の診断が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2008年2月4日に出願された米国仮特許出願第61/063,515号;2008年5月23日に出願された米国仮特許出願第61/055,737号;及び2008年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/085,623号の優先権を主張する。それぞれの仮特許出願の内容は、各々が本明細書中に明示的、及び完全に表現されるかの如く、参考として本明細書で援用される
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、損傷の診断または治療のための方法に関する。本発明の方法は、損傷の同時診断と治療を同時に診断し治療することができる。外傷性脳損傷は、個体において、単独で或いは多臓器外傷を包括的に、診断及び治療される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
外傷性脳損傷(TBI)は、先進工業国の45才未満の人の主要な死因と障害である(非特許文献1)。毎年アメリカ合衆国で起こると推定される150万人の頭部外傷のうち、50万人は入院を必要とするようであり、そして、8万人は何らかの慢性障害となる(非特許文献2)。米国疾病予防管理センター(CDC)は、TBIの結果、少なくとも530万人のアメリカ人または人口の約2%が、現在、日常生活の活動の長期支援の必要性があると推定している(非特許文献2)。更にまた、TBIのための総保健医療費は、毎年およそ350億ドルに達する(非特許文献3)。この型の損傷の有病率と重症度にもかかわらず、効果的な治療法はまだ開発されていない。
【0004】
医師は、一般に軽度外傷性脳損傷(MTBI)とTBIを区別しようとする。MTBIは、「任意の期間の観察あるいは自己申告による一過性の錯乱、見当識障害、または意識障害;任意の期間の観察あるいは自己申告による障害時の記憶障害(記憶喪失);例えば、頭部損傷後の急性発作などの他の神経性または神経心因性機能障害の観察徴候;幼児と非常に若い年少児の場合:頭部損傷後の短気、無気力、または嘔吐;年長児と大人での例えば頭痛、めまい、短気、疲労、または集中力不足は、障害後すぐに確認される場合、軽度TBIの診断をサポートするのに用いることができるが、意識喪失または意識変容がないときには診断に使用することができない。観察あるいは自己申告された意識喪失の任意の期間が30分以下継続する。」などの徴候を含む臨床症状により一般的に定義される。(非特許文献4)。伝統的にTBIを含む徴候は、30分を超える無意識、24時間を超えて継続する頭部外傷後意識障害;及び穿通頭蓋脳損傷を含む。前掲文献参照。
【0005】
初期の障害を迅速に診断することができるならば、あるいは進行性の障害の場合、中枢神経系組織に対するストレスがあらかじめ選択された閾値に達する前に診断することができるならば、初期の障害に対する生理学的反応に関連する中枢神経系組織の二次的損傷を少なくすることができたであろうという認識により臨床神経学の分野は失望している。外傷性で、虚血性で、そして神経毒性の化学的傷害は、一般的な障害とともに、すべて脳障害の予測を提示する。脳障害のこれらの原因の各々の重度の型の診断は、臨床応答試験ならびにコンピュータ断層撮影(CT)検査及び磁気共鳴画像検査(MRI)により容易ではあるが、分光画像法は高くつき、時間がかかるという両方の点でこれらの診断法にはその限界があり、一方、無能力(incapacitate)な個体の臨床応答試験には限られた価値しかなく、しばしば微妙な違いのある診断を排除する。その上、既存の診断薬の限界のために、対象体は障害が起きたことにしばしば気づかないような神経状態に対するストレスを経験したり、または、微妙な兆候として治療を求めるような状況は、しばしばすぐに治まる。対象体の神経状態へのこれらの軽度から中度のチャレンジの治療がなされないことは、蓄積的作用を有することになるか、あるいはその後に重篤な脳障害事象をもたらし、いずれの場合も臨床的に予後不良である。
【0006】
神経状態の分光的及び臨床的応答診断に関連した限界を克服するために、対象体の分子または細胞レベルの健康状態に関する変化の内部指標としてのバイオマーカーの使用に関して注目が増している。バイオマーカーの検出は、対象体から得られる試料を使って、試料、典型的には脳脊髄液、血液、または血漿中のバイオマーカーを検出するので、バイオマーカーの検出は、神経状態の安価な、迅速な、客観的測定の展望を保持する。神経状態の迅速で客観的な指標の達成により、ある程度の客観性を有する尺度で非正常脳状態の重症度を決定し、結果を予測し、その状態の治療の誘導を可能とするだけでなく、同様にして、対象体の応答性と回復度のモニターを可能とする。更に、多数の対象体から得られるそのような情報は、脳損傷のメカニズムに関するある程度の洞察を獲得することを可能とする。
【0007】
中枢神経系(CNS)損傷のバイオマーカーは、損傷の重症度と細胞病理学を決定する助けとなる定量可能な神経化学的マーカーを医師及び実験室に供給することができたのみならず、治療的処置の代替マーカーをもまた提供する。TBIのための多くの潜在的生化学的マーカーが提案(非特許文献5)されてきたが、いくつかの研究は、齧歯動物(非特許文献6、非特許文献7)及びヒト(非特許文献5)でのCNS損傷のバイオマーカーとしてのαII−スペクトリンタンパク質分解の分解産物に焦点を当てている。多数のバイオマーカーが、車両衝突や戦闘で傷ついた対象でしばしば見られるように、重篤な外傷性脳損傷と関係しているものとして同定された。これらのバイオマーカーは、SBDP150、SBDP150i、SBDP145(カルパイン媒介急性神経性壊死)、SBDP120(カスパーゼ媒介遅延型神経アポトーシス)、UCH−L1(ニューロン細胞体損傷マーカー)、及びMAP−2樹状細胞の損傷関連マーカーなどのスペクトリン分解産物を含んだ。これらのバイオマーカーの性質は、特許文献1及び特許文献2に詳述されており、それの内容は参照として本明細書に援用される。
【0008】
1つの理論またはモデルに制限されることなく、MTBIとTBIとの間の1つの提案された概要説明は、損傷後の生物流体の分子バイオマーカーにおける認識可能な増加または減少である。分子マーカーの例示としては、非特許文献8によって記述されたものを含む。TBIについての提案された定義は、実験的なTBI(ヒトでの重篤なTBIに匹敵するへこみ深さ1.6mmの制御された皮質衝撃を有するラットの制御された皮質衝撃)後の48時間に皮質組織における少なくとも2倍に増加または減少したレベルを有する少なくとも1つの認識可能な分子バイオマーカーの存在である。
【0009】
アルファ−II−スペクトリン分解産物(SBDP)は、TBIの潜在的タンパク質バイオマーカーを示す。アルファ−II−スペクトリンは、主に脳に豊富であり、神経膠よりもむしろニューロンに局在する。更にまた、アルファ−II−スペクトリンは、軸索に局在しているように見える(非特許文献9、非特許文献10)。アルファ−II−スペクトリンは、2つのシステインプロテアーゼ:カルパインとカスパーゼによって切断される。休止細胞において静止状態で存在するカルパインは、細胞内カルシウムでの有意な上昇に応答して機能亢進状態に誘導され、TBIを伴う(非特許文献11)。この酵素は、アルファ−II−スペクトリンを150kDaと145kDaの断片に切断する。カルパインタンパク質分解は、主に壊死性腫瘍症を伴う(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。その活性化がアポトーシス細胞死を伴うカスパーゼは、スペクトリンを異なる150kDaと120kDaの断片に切断する(非特許文献15、非特許文献16)。この差次的な切断は、損傷に応じたスペクトリン切断酵素のCNS特異的機能亢進の指標のみならず、損傷病理の寄与因子としての壊死及び/またはアポトーシスの相対的な重要性の評価をもまた可能にする。従って、これらのSBDPsは、TBIに対するバイオマーカーと考えることができる(非特許文献17)。
【0010】
TBI病理学の興奮毒性メカニズムを調べた先の研究は、神経伝達物質グルタミン酸に焦点を合わせた。しかし、かなりの証拠は、アセチルコリン関連の毒性がCNS病理で同様に非常に重要であることを示す。脳外傷に関連するアセチルコリン(ACh)レベルの増加は、臨床現場だけでなく実験室で50年以上前に文書化された(非特許文献18、非特許文献19)。神経伝達物質の比較的に高いレベルは、損傷の重症度の増加を伴って注目された(非特許文献20)。より最近の研究は、実験的TBI(非特許文献21、非特許文献22)及び虚血(非特許文献23)の後での脳脊髄液(CSF)での高いAChを確認したのみならず、同様にコリン様物質の適用による高レベルのムスカリン性コリン受容体の活性化の有害な性質を確認した(非特許文献24、非特許文献25)。いくつかの研究も、ムスカリンアンタゴニストの急性投与は、実験的なTBIの後で行動の回復を改善することを証明した(非特許文献26、非特許文献27、非特許文献28、非特許文献29、非特許文献30)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,291,710号
【特許文献2】米国特許第7,396,654号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】McAllister, T. W. (1992). Neuropsychiatric sequelae of head injuries. The Psychiatric clinics of North America. 15, 395-413.
【非特許文献2】Langlois, J. A., Rutland-Brown, W., Thomas, K. E. (2006). Traumatic Brain Injury in the United States: Emergency Department Visits, Hospitalization, and Deaths, vol. Atlanta (GA) Centers for Disease Control and Prevention, National Center for Injury Prevention and Control
【非特許文献3】Max, W., MacKenzie, E. J., Rice, D. P. (1991). Head injuries: costs and consequences. J Head Trauma Rehabil 6, 76-91.
【非特許文献4】National Center for Injury Prevention and Control.Report to Congress on Mild Traumatic Brain Injury in the United States:Steps to Prevent a Serious Public Health Problem.Atlanta,GA:Centers for Disease Control and Prevention;2003)
【非特許文献5】Pineda, J. A., Lewis, S. B., Valadka, A. B., Papa, L., Hannay, H. J., Heaton, S. C., Demery, J. A., Liu, M. C., Aikman, J. M., Akle, V., Brophy, G. M., Tepas, J. J., Wang, K. K., Robertson, C. S., Hayes, R. L. (2007). Clinical significance of alphaII-spectrin breakdown products in cerebrospinal fluid after severe traumatic brain injury. J Neurotrauma. 24, 354-66.
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【非特許文献7】Ringger, N. C., O'Steen, B. E., Brabham, J. G., Silver, X., Pineda, J., Wang, K. K., Hayes, R. L., Papa, L. (2004). A novel marker for traumatic brain injury: CSF alphaII-spectrin breakdown product levels. J Neurotrauma. 21, 1443-56.
【非特許文献8】Kobeissy FH,et al.,Mol Cell Proteomics,2006;5:1887-1898
【非特許文献9】Czogalla and Sikorski,2005
【非特許文献10】Riederer, B. M., Zagon, I. S., Goodman, S. R. (1986). Brain spectrin(240/235) and brain spectrin(240/235E): two distinct spectrin subtypes with different locations within mammalian neural cells. J Cell Biol. 102, 2088-97.
【非特許文献11】Fineman, I., Hovda, D. A., Smith, M., Yoshino, A., Becker, D. P. (1993). Concussive brain injury is associated with a prolonged accumulation of calcium: a 45Ca autoradiographic study. Brain Res. 624, 94-102.
【非特許文献12】Kampfl, A., Posmantur, R. M., Zhao, X., Schmutzhard, E., Clifton, G. L., Hayes, R. L. (1997). Mechanisms of calpain proteolysis following traumatic brain injury: Implications for pathology and therapy: A review and update. J.Neurotrauma. 14, 121-134.
【非特許文献13】Liu, X., Van Vleet, T., Schnellmann, R. G. (2004). The role of calpain in oncotic cell death. Annu Rev Pharmacol Toxicol. 44, 349-70.
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【非特許文献17】Wang, K. K., Ottens, A. K., Liu, M. C., Lewis, S. B., Meegan, C., Oli, M. W., Tortella, F. C., Hayes, R. L. (2005). Proteomic identification of biomarkers of traumatic brain injury. Expert review of proteomics. 2, 603-14.
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【非特許文献25】Turski, W. A., Czuczwar, S. J., Kleinrok, Z., Turski, L. (1983). Cholinomimetics produce
【非特許文献26】Lyeth, B. G., Dixon, C. E., Hamm, R. J., Jenkins, L. W., Young, H. F., Stonnington, H. H., Hayes, R. L. (1988a). Effects of anticholinergic treatment on transient behavioral suppression and physiological responses following concussive brain injury to the rat. Brain Res. 448, 88-97.
【非特許文献27】Lyeth, B. G., Dixon, C. E., Jenkins, L. W., Hamm, R. J., Alberico, A., Young, H. F., Stonnington, H. H., Hayes, R. L. (1988b). Effects of scopolamine treatment on long-term behavioral deficits following concussive brain injury to the rat. Brain Res. 452, 39-48.
【非特許文献28】Lyeth, B. G., Hayes, R. L. (1992). Cholinergic and opioid mediation of traumatic brain injury. J Neurotrauma. 9 Suppl 2, S463-74.
【非特許文献29】Lyeth, B. G., Liu, S., Hamm, R. J. (1993b). Combined scopolamine and morphine treatment of traumatic brain injury in the rat. Brain Res. 617, 69-75.
【非特許文献30】Robinson, S. E., Foxx, S. D., Posner, M. G., Martin, R. M., Davis, T. R., Guo, H., Enters, E. K. (1990). The effect of M1 muscarinic blockade on behavior and physiological responses following traumatic brain injury in the rat. Brain Res. 511, 141-148.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
いくつかの潜在的マーカーが提案されてきているが、MTBIとTBIを診断して識別することができる、あるいは治療的適用の成功した、または治療的有用性を示すことのできる決定的なマーカーまたはプロセスは示されていない。この欠点はまた、個体が多臓器損傷を患っている場合は、さらに明らかである。更に、脳損傷は、一般的に効果的に治療するのが難しく、成功した結果は、一般的に個体が特定の損傷サブタイプであると如何に迅速に診断されるかによる。従って、患者の管理を改善し治療評価を容易にするために、脳振盪後頭蓋内病理を評価する診断能力を有する、TBIに対して高感度で特異的な生化学的マーカー(複数可)の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
対象体における神経状態を診断し、治療するための本発明の方法が提供され、これは、1以上のバイオマーカーの存在に対して、対象体の生体試料をアッセイする工程、前記試料中の1以上のバイオマーカーの比率に基づいて神経状態を診断する工程、及び、1以上のバイオマーカーの比率を変更するために治療を対象体に適用する工程、を含む。本発明は、脳損傷または多臓器損傷などの多数の神経状態を診断する。好ましくは、本発明の方法は、衝撃性脳損傷、虚血性脳卒中、及び多臓器損傷を診断するのに有用である。
【0015】
α−IIスペクトリン、スペクトリン分解産物、MAP2、ニューロン変性、ユビキチンカルボキシル末端エステラーゼ、ユビキチンカルボキシ末端加水分解酵素、ニューロン局在細胞内タンパク質、MAP−タウ(tau)、C−タウ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、コラプシン応答メディエータタンパク質、それらの分解産物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせが例示的に含む1以上のバイオマーカーが本発明において使用される。好ましい実施形態では、バイオマーカーは、ユビキチンカルボキシ末端加水分解酵素、スペクトリン分解産物、またはMAP2である。
【0016】
本発明の方法は、同じバイオマーカーの既知もしくは測定ベースラインレベルまたは異なるバイオマーカーのそれと比較したバイオマーカーの比率を検出する。重度損傷は、ベースラインレベルと比較してバイオマーカーの2以上の比率を示すという点で、軽度損傷とは区別され、そして、軽度損傷は、ベースラインレベルと比較してバイオマーカーの2倍未満の比率を示す。選択的に、損傷の重症度は、ベースラインレベルに対するバイオマーカーの比率が0.5未満であるならば、識別される。
【0017】
多数の治療剤が、本明細書で使用可能である。好ましくは、治療剤は、ムスカリン受容体アゴニストである。治療剤の例示的には、ジサイクロミン、スコポラミン、ミラメリン、N−メチル−4−ピペリジニルベンジラートNMP、ピロカルピン、ピレンゼピン、アセチルコリン、メタコリン、カルバコール、ベタネコール、ムスカリン、オキソトレモリンM、オキソトレモリン、タプシガルギン、カルシウムチャネルブロッカーまたはアゴニスト、ニコチン、キサノメリン、BuTAC、クロザピン、オランザピン、セビメリン、アセクリジン、アレコリン、トルテロジン、ロシベリン、IQNP、インドールアルカロイド類、ヒンバシン、シクロステレッタミン類、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0018】
生体試料は、好ましくは脳脊髄液または血清である。
【0019】
また、対象体の神経損傷の大きさを識別するための組成物が提供される。本発明の組成物は、損傷を受けた神経細胞を有するとして疑われた対象体から分離された生体試料、ここで、前記生体試料は、対象体から分離される前は、対象体の神経系と連通する流体である、ならびにαII−スペクトリン、αII−スペクトリン分解産物(SBDP)、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、及びMAP2タンパク質から選択される少なくとも2つのバイオマーカーと特異的、かつ独立して結合する少なくとも2つの添加された抗体を実例的に含む。
【0020】
本発明の組成物の対象体は、選択的に哺乳類である。好ましくは、対象体はヒトである。
【0021】
本発明の組成物は、選択的に、バイオマーカーが固定される基体を含む。本発明の組成物は、少なくとも2つの抗体と選択的にコンジュゲートしている少なくとも1つの検出可能な標識を選択的に含む。標識は、少なくとも2つの抗体に特異的に結合する物質と好ましくはコンジュゲートしている。
【0022】
また、対象体における細胞障害を分析するためのキットが提供される。本発明のキットは、損傷を受けた神経細胞を有するとして疑われた対象体から分離された生体試料中のバイオマーカーと結合するための基質、ここで、前記生体試料は、対象体から分離される前は、対象体の神経系と連通する流体であり、αII−スペクトリン、αII−スペクトリン分解産物(SBDP)、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、及びMAP2タンパク質から選択される少なくとも2つのバイオマーカーと特異的、かつ独立的に結合する少なくとも2つの抗体、及び生体試料中のマーカーの存在または量を検出するために抗体を生体試料または一部の生体試料と反応させるためのインストラクションを例示的に含む。
【0023】
本発明のキットの対象体は、選択的に哺乳類である。好ましくは、対象体はヒトである。
【0024】
本発明のキットは、少なくとも2つの抗体と選択的にコンジュゲートしている少なくとも1つの検出可能な標識を選択的に含む。標識は、好ましくは、少なくとも2つの抗体に特異的に結合する物質とコンジュゲートしている。
【0025】
対象体の神経状態を診断するための方法が提供される。本発明の方法は、対象体から得られる生体試料でのユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの量とを初回に測定する工程、及びユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの量を、対象の神経状態を診断するために、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーのベースラインレベルと比較する工程を含む。
【0026】
本発明の方法の測定は、好ましくは免疫測定による。好ましくは、試料は脳脊髄液または血清である。1つの更なる神経活性バイオマーカーは、好ましくは、スペクトリン分解産物、MAP−2、SBDP150、SBDP145、もしくはSBDP120、またはグリア線維性酸性タンパク質である。
【0027】
本発明の方法は、選択的に、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の第2の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの第2の量を、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーに対する動的プロファイルを得るために、第2回目に測定する工程を含む。選択的に、本発明の方法は、対象体の正常レベル間で、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの量を対象として同性の他の個体と比較することを更に含む。
【0028】
対象体の多臓器損傷を診断し、治療するための方法もまた提供される。本発明の方法は、対象体からの生体試料を複数のバイオマーカーに対してアッセイすること、前記生体試料中の前記複数のバイオマーカーの第1比率に基づいて、第1臓器損傷の第1サブタイプを決定すること、前記生体試料中の前記複数のバイオマーカーの第2比率に基づいて、第2臓器損傷の第2サブタイプを決定すること、第1臓器損傷の前記第1サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を阻害するのに有効な少なくとも1つの治療アンタゴニスト、または第1臓器損傷の前記第1サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を促進するのに有効な少なくとも1つの治療アゴニストを投与すること、及び第2臓器損傷の前記第2サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を阻害するのに有効な少なくとも1つの治療アンタゴニストまたは第2臓器損傷の前記第2サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を促進するのに有効な少なくとも1つの治療アゴニストを投与することを含む。
【0029】
本発明の方法のタンパク質は、選択的に、カスパーゼまたはカルパインである。好ましくは、タンパク質はカスパーゼ−3である。好ましくは、複数のバイオマーカーは、前記第1臓器及び前記第2臓器の少なくとも1つの損傷に関連する細胞分解産物である。
【0030】
本発明の方法における損傷は、好ましくは、衝撃性損傷または脳卒中である。治療剤は、好ましくは、ジサイクロミンである。
【0031】
1以上のスペクトリン分解産物について対象組織または流体をアッセイすること、及びジサイクロミンを投与することを含む対象体の外傷性脳損傷を診断及び治療するための方法もまた提供される。好ましくは、外傷性脳損傷は、脳卒中である。より好ましくは、損傷は虚血性脳卒中である。選択的に、損傷は、衝撃性脳損傷である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】CCI後のラットCSFでのUCHL1の定量的ウェスタンブロッティングを表す。
【図2】MCAO後のラットCSFでのUCHL1の定量的ウェスタンブロッティングを表す。
【図3】偽処置及びCCI処置対象体でのCSFのUCHL1レベルを表す。
【図4】偽処置、軽度MCAOチャレンジ、及び重度MCAOチャレンジの後のCSF中のUCHL1のレベルを表す。
【図5】いろいろな時点での偽処置またはCCI処置後の血清中のUCHL1のレベルを表す。
【図6】偽処置、軽度MCAOチャレンジ、及び重度MCAOチャレンジの後の血清中のUCHL1のレベルを表す。
【図7】偽処置、軽度MCAOチャレンジ、及び重度MCAOチャレンジの後のCSF中のSBDP145レベルを表す。
【図8】偽処置、軽度MCAOチャレンジ、及び重度MCAOチャレンジの後のCSF及び血清中のSBDP120レベルを表す。
【図9】偽処置、軽度MCAOチャレンジ、及び重度MCAOチャレンジの後のCSF及び血清中のMAP2の上昇を表す。
【図10】CCI後のCSF中のSBDP類に対するジサイクロミンの効果を表す。
【図11】ジサイクロミンの存在下または非存在下でのCCI後の神経細胞における細胞死を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、異常な神経状態の診断と管理において有用性を有する。具体的には、本発明は、病気または損傷のサブタイプ、特に外傷性脳損傷(TBI)のサブタイプを分類するための診断薬の使用において単独あるいは多臓器損傷と組み合わせて有用性を有し、そして、対象体が耐えた特定の外傷性脳損傷サブタイプに有効な潜在的治療剤を同定する際に有用である。本明細書で使用される本発明は、TBIの治療・診断方法として定義される。
【0034】
本治療及び診断(theranostic)方法は、例示的にMTBIとTBIを含む脳損傷のサブタイプを確認するために細胞プロテアーゼの活性の亢進もしくは低減またはその組み合わせに関してアッセイすることを含む。典型的なタンパク質またはタンパク質の組み合わせは、カルパイン、L1(UCHL1)などのユビキチンカルボキシル末端エステラーゼ、SBDP150、SBDP145、及びSBDP120などのスペクトリン分解産物をもたらす更なるプロテアーゼ、ニューロン局在細胞内タンパク質MAP−タウ、C−タウ、MAP2、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、タンパク質などのコラプシン応答メディエータタンパク質(CRMP−2);及びカスパーゼ−3などのカスパーゼを含む
【0035】
脳損傷は、損傷誘因におけるさまざまな重症度により起こり、障害及び臨床予後をもたらす。損傷の重症度を識別することができる分子マーカーの同定は、最大の回復を促進するために選ばれる治療剤または治療法のタイプと即時性を決定するのに必須である。乳酸脱水素酵素、グリア線維性酸性タンパク質、エノラーゼ、及びS−100Bを含むいくつかの潜在的マーカーが以前提案された。これらのマーカーのどれもが臨床的に成功する十分な特異性または頑強性を個々に有していない。
【0036】
物理的または化学的ストレス後の脳細胞に応答性の生化学プロモーターまたは阻害シグナルを解明することによって、1以上の一連の将来的に有効な化合物の効力が解明できる。例として、カルシウム活性化細胞質プロテアーゼであるカルパインは、プロネクローシス細胞損傷で活性化されることが知られているのに対して、カスパーゼは、プロアポトーシス細胞損傷で活性化されて脳細胞の重要な構造タンパク質を分解させてTBIカスケードの一部として組織自己消化に至ることが知られている。
【0037】
プロテアーゼに加えて、TBI曝露組織に対するプロテアーゼの作用により産生された分解産物(BDP)は、TBIのサブタイプを特徴付ける際のマーカーとしてもまた有効であることが理解される。この診断情報を用いて、次いで、所定のプロテアーゼのアゴニストもしくはアンタゴニストまたはTBIに応じて生化学的濃度を変える他の化合物はが投与される。カルパイン及びカスパーゼ−3のTBIカスケードの場合、TBI後のカルパイン及びカスパーゼプロテアーゼ阻害剤の投与は、急性及び遅延型脳細胞損傷の両方またはTBIに関連する死に対する神経保護を供する。
【0038】
プロテアーゼ活性は、所望のタンパク質活性の上流で起こる細胞活性を調節することによって、タンパク質の発現レベルまたは活性をコントロールするか、モニターするか、さもなければ変えることによって任意に制御される。例えば、M1ムスカリン受容体の活性化の制御は、多数の下流の細胞に効果を有すると思われる。これらの効果は、受容体リガンドの結合の後にβγサブユニット複合体から解離するM1ムスカリン受容体Gタンパク質のαq/11サブユニットから生じると信じられている。このαサブユニットは、ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスファート(PIP)のイノシトール1,4,5トリスホスファート(IP)とジアシルグリセロール(DG)への加水分解を引き起こすホスホリパーゼC(PLC)を活性化する。IPは、細胞内Ca2+の蓄積の放出を刺激する。DAGは、イオンチャネル及びNMDA受容体複合体を含む多くのタンパク質をリン酸化するPKCを活性化する。βγG−タンパク質サブユニットは、脱分極を増大させることにより細胞興奮性を増加させるムスカリン性(IK(M))及びカルシウム制御(IK(Ca))の両方のカリウム電流を阻害する(Lyeth,2001)。いくつかの研究は、PIPシグナル伝達経路がTBIの後で活性化されるという動かぬ証拠を提供している。Weiと共同研究者(Wei et al.,1982)は、猫での流体衝撃TBIの直後のPLC活性化を最初に報告した。ラット側脳の流体衝撃モデルでのその後の研究は、同側海馬での損傷後5分で、そして、同側皮質で損傷後20分間まで高濃度IPを見い出した(Prasad et al.,1994)。その後の研究によって、ラットでの流体衝撃TBIの後の膜PIPのリン酸ジエステル分解が測定され、組織PIP濃度が、DGが上昇した時に有意に減少したことが明らかとなった(Dhillon et al.,1995)。ムスカリン受容体とPLCシグナル伝達経路のTBI誘発活性化の関係を調べたその後の研究によって、損傷の時点のスコポラミンによるムスカリン受容体の薬理学的遮断が、PIP由来脂肪酸の急激な減少を有意に鈍化させることが分かった(Lyeth et al.,1996)。このように、細胞内Ca2+の上昇、NMDA受容体感度の増幅、及び神経細胞の興奮性の増加はあるけれども、M1受容体の活性化は、高められた興奮性変調を伴う。
【0039】
対象発明の目的のために、脳損傷は、2つのレベル、すなわち、軽度外傷性脳損傷(MTBI)と外傷性脳損傷(TBI)に分けられる。TBIは、分子マーカーレベルまたは活性で2倍以上の増加または2倍以上の減少と相関する損傷として定義される。MTBIは、分子マーカーレベルまたは活性で2倍未満の増加または2倍未満の減少と相関する損傷として定義される。
【0040】
本明細書で使用されるように、損傷は、細胞または分子の統合性、活性、濃度、頑強性、状態における変化、またはある事象に起因する他の変化である。損傷は、細胞または分子特性の物理的、機械的、化学的、生物学的、機能的、感染性、又は他のモジュレータを例示的に含む。事象は、例示的には、衝撃(衝撃性)などの物理的外傷または脳卒中などの生物学的異常で、これは血管の遮断または漏出から生じる。事象は、選択的に、感染物質による感染である。当業者は、損傷または事象という用語により包含される多くの等価な事象を認識する。
【0041】
損傷は、選択的に、衝撃性の衝撃などの物理的事象である。衝撃は、頭蓋構造を無傷のままにするか、またはその破裂をもたらす頭への強打となるなどの衝撃性損傷と同じである。ヒトでの重篤なTBIに等価な1.6mmのへこみ深さでの制御皮質衝撃(CCI)を実例的に含むいくつかの衝撃方法が実験的に使用されている。この方法は、Cox,CD,et al.,J.Neurotrauma,2008;25(11):1355−65により詳細に記述されている。衝撃外傷をもたらす他の実験方法が同じように使用可能であることが理解される。
【0042】
TBIは、また脳卒中から生じる場合がある。虚血性脳卒中は、齧歯動物での中大脳動脈閉塞(MCAO)によって、選択的にモデル化される。例えば、UCHL1タンパク質のレベルは、軽度MCAOの後で増加し、それは、重度MCAOチャレンジの後で更に増加する。軽度MCAOチャレンジは、2時間以内に一過性の、そして24時間以内に対照のレベルに復帰する、タンパク質濃度の増加をもたらし得る。対照的に、重度MCAOチャレンジは、損傷後2時間以内にタンパク質レベルの増加をもたらし、より持続的であることができ、72時間以上まで統計的に有意なレベルを示す。
【0043】
分子マーカーは、選択的にバイオマーカーと呼ばれ、その語句は、本明細書では互換的に使用される。バイオマーカーは、細胞、タンパク質、核酸、ステロイド、脂肪酸、代謝産物、または生物学的活性もしくは応答の測定に有用な他の識別因子である。MTBIとTBIを区別するために本明細書で使用され得るバイオマーカーとしては、ユビキチンカルボキシル末端エステラーゼ、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、スペクトリン分解産物類、ニューロン局在細胞内タンパク質、MAP−タウ、C−タウ、MAP2、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、コラプシン応答メディエータタンパク質、UCHL1、アネキシンA11、アルデヒドデヒドロゲナーゼファミリー7、コフィリン1、プロフィリン1、http://www.mcponline.org/cgi/external ref?access num=XP 227366&link type=GENα−エノラーゼ(非神経エノラーゼ)、エノラーゼタンパク質、グリセルアルデヒド―3―リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ1、アコニターゼ2、ミトコンドリア、アセチル−CoAシンセターゼ2、ニューロンタンパク質2、ホスホグリセリン酸キナーゼ2、ホスホグリセリン酸キナーゼ1、Hsc70−ps1、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ1、アルドラーゼA、アルドラーゼC、フルクトース−ビホスファート、ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ1、微小管結合タンパク質2、炭酸脱水酵素、ADP―リボシル化因子3、トランスフェリン、肝再生関連タンパク質、ヘモグロビンα−鎖、ヘモグロビンβ鎖、肝再生関連タンパク質、フェチュインβ、3−オキソ酸−CoAトランスフェラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ1、NAD(可溶性)、乳酸デヒドロゲナーゼB、リンゴ酸塩デヒドロゲナーゼ、ミトコンドリア、カルボキシルエステラーゼE1前駆体、セリンプロテアーゼ阻害剤α1、ハプトグロビン、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素L1、セリンプロテアーゼ阻害剤2a、T−キニノーゲン、α1主要急性血漿タンパク質、http://www.mcponline.org/cgi/external ref?access num=AAH85359&link type=GENアルブミン、http://www.mcponline.org/cgi/external ref?access num=NP 001009628&link type=GENα1 主要急性血漿タンパク質プレペプチド、ムリノグロブリン1ホモログ、グループ特異的コンポーネントタンパク質、グアノシン2リン酸解離阻害剤1、コラプシン応答メディエータタンパク質、ムリノグロブリン1ホモログ、フェロキシダーゼ、セルロプラスミン、スペクトリンα−鎖、脳、C反応性タンパク質、脳クレアチンキナーゼ、プロテアソームサブユニット、αタイプ7、14−3−3タンパク質、シナプトタグミン、それらのサブタイプ、それらの断片、それらの分解産物、またはそれらの組み合わせが例示的に挙げられる。他の潜在的なバイオマーカーとしては、Kobeissy,FH,et al,Molecular & Cellular Proteomics,2006;5:1887−1898により同定されたものが、例示的に挙げられ、その内容は参照として本明細書に援用されるか、他のものは当該分野で公知である。
【0044】
好ましくは、バイオマーカーは、脳損傷などの神経状態を検出または診断するために選択される。更に好ましくは、バイオマーカーは、TBIのレベルを検出し、識別するのに選択的で効果的でもある。そのようなバイオマーカーは、選択的に神経活性バイオマーカーと称される。好ましい実施形態において、本明細書で使用可能なバイオマーカーは、例えば、スペクトリン分解産物(SBDP)SBDP150、SBDP150i、SBDP145(カルパイン媒介急性神経性壊死)、SBDP120(カスパーゼ媒介遅延型神経アポトーシス)、UCHL1(ニューロン細胞体の損傷マーカー)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、及びMAP−2樹状細胞損傷関連マーカーである。
【0045】
バイオマーカーの存在または活性についての一時的な性質は、TBIサブタイプの指標または識別因子として使用可能であることが理解される。非限定的な例では、実験的な中大脳動脈閉塞(MCAO)の重症度は、CSFでのUCHL1の一時的な維持と相関する。30分のMCAOは、6時間で最大限に達し、急速に減少する一時的なUCHL1のレベルをもたらすのに対して、2時間のMCAOは、3日間の長い間、持続したUCHL1のレベルをもたらす。同様に、損傷後のいろいろな時点での他のバイオマーカーの有病率は、TBIサブタイプを区別するために使用可能である。
【0046】
バイオマーカー分析は、好ましくは、生物学的サンプルまたは流体を用いて実行される。ここに使用可能な実例的な生体試料は、細胞、組織、脳脊髄液(CSF)、人工CSF、全血、血清、血漿、細胞質液、尿、糞便、胃液、消化液、唾液、鼻もしくは他の気道の流体、膣液、精液、緩衝食塩水、食塩水、水、または当該分野で認められている他の生物学的流体を例示的に含む。
【0047】
増加した細胞発現に加えて、バイオマーカーは、また、損傷を受けた細胞と連通している生物学的流体中に出現する。脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、唾液、及び尿などの生物学的流体を対象体から得ることは、一般的に、固体組織生検試料を得ることに比べて、より侵襲性が少なく、また外傷性が少ない。従って、生物学的流体である試料は、本発明での使用のために好まれる。特に、CSFは、神経系と直接に接触しており、容易に入手可能であるので、対象体における神経損傷を検出するために好まれる。血清は、それがはるかに簡単に入手できて、供与する対象体に対して更なる損傷または副作用の危険性が非常により少ないことを提示しているので、好ましい生体試料であることが理解される。
【0048】
生体試料は、1人以上の対象体から好ましくは得られる。生体試料は、従来技術によって対象体から得られる。例えば、CSFは、腰椎穿刺によって採取される。血液は、静脈穿刺により得られるのに対して、血漿と血清は、既知の方法に従って全血を分画することによって得られる。固体の組織サンプルを得るための外科的技術は、当該分野で周知の技術である。例えば、神経系組織試料を得る方法は、Atlas of Neurosurgery:Basic Approaches to Cranial and Vascular Procedures,by F.Meyer,Churchill Livingstone,1999;Stereotactic and Image Directed Surgery of Brain Tumors,1st ed.,by David G.T.Thomas,WB Saunders Co.,1993;及びCranial Microsurgery:Approaches and Techniques,by L.N.Sekhar and E.De Oliveira,1st ed.,Thieme Medical Publishing,1999などの標準的な神経外科の教科書に記述されている。脳組織を入手し、分析するための方法は、また、Belay et al.,Arch.Neurol.58:1673−1678(2001);及びSeijo et al.,J.Clin.Microbiol.38:3892−3895(2000)に記述されている。
【0049】
外傷を受けた後、インビトロ培養物中または対象体のインサイチュでの神経細胞は、外傷を受けなかったそのような細胞よりも、変更されたレベルまたは活性の1以上のタンパク質を発現する。このように、神経細胞を含む試料、例えば、中枢神経系または末梢神経系組織の生検試料は、本発明に用いられる適切な生体試料である。しかし、神経細胞に加えて、例えば、心筋細胞、骨格筋中の筋細胞、肝細胞、腎臓細胞、及び精巣細胞を含む他の細胞は、例示的に、αII−スペクトリンを発現する。これらの細胞から分泌されるそのような細胞または流体を含む生体試料は、そのような非神経細胞の損傷を決定及び/または特徴づけるために、本発明の方法の適合に際しても使用することが可能である。
【0050】
本明細書で使用される対象体は、例示的に、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ヒト以外の霊長類、ヒト、ラット、モルモット、ハムスター、及びマウスを含む。本発明は、好ましくはヒトの対象体に関するので、本発明の方法に対する好ましい対象体は、ヒトである。
【0051】
本発明から最も利益を得る対象体は、異常な神経状態または損傷を有していることが疑われる、あるいはそれを発症している危険性が疑われる人々であり、例えば、外傷性傷害(例えば、銃弾による負傷、自動車事故、スポーツ事故、乳児揺さぶり症候群、他の衝撃性損傷)、虚血事象(例えば、脳卒中、脳溢血、心停止)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、ハンティングトン病、及びパーキンソン病;プリオン関連の病気;他の型の痴呆)、てんかん、物質濫用(例えば、アンフェタミン、エクスタシー/MDMA、またはエタノールから)、ならびに糖尿病性神経障害、化学療法誘発神経障害及び神経因性疼痛などの末梢神経系疾患に起因する脳損傷の犠牲者などである。
【0052】
神経状態と神経活性バイオマーカーの測定量との相関関係を提供するためには、CSFまたは血清は、好ましい生物学的流体である。例示的に、CSFまたは血清試料は、神経活性バイオマーカーの測定に付された試料で対象体から採取される。対象体は、神経状態が変動する。1以上のバイオマーカーの検出されたレベルは、それから、認識もしくは標準化されたベースラインレベルあるいは選択的にGCSスコアリングだけでなくCTスキャン結果のいずれかと相関される。これらの結果に基づいて、本発明のアッセイ法が、任意に開発されて、実証されている(Lee et al.,Pharmacological Research 23:312−328,2006)。神経活性バイオマーカーは、CSFと血清から得られることに加えて、血液、血漿、唾液、尿からも、固体組織生検と同様に、容易に得られることが理解される。CSFは、神経系と直接接触しているために、好ましいサンプリング流体であるが、他の生物学的流体は、他の目的のためにサンプリングされるという利点を有し、従って、血液、血漿、血清、唾液または尿などの単一検体に対して行われる一連の試験の一部として神経状態の発明的測定を可能にすると認められる。
【0053】
いくつかのバイオマーカーのベースラインレベルは、既知の神経状態がない場合の望ましい対象体の種での標的生体試料で得られるそれらのレベルである。これらのレベルは、厳密な濃度で表記する必要がなくて、その代わりに平行した対照実験から分かる場合があり、蛍光単位、密度単位などによって表記されてもよい。一般的に、神経状態がない場合、SBDP類は、無視し得る量で生体試料中に存在する。しかし、UCHL1は、ニューロン中の非常に豊富なタンパク質である。特定の種のニューロン中のUCHL1のベースラインレベルを測定することは、当該技術の十分に範囲内である。同様に、MAP2のベースラインレベルの濃度を測定することは、当該技術の十分に範囲内である。
【0054】
本明細書で使用されるように、「診断する」という用語は、損傷または病気などの神経性または他の状態の有無を認識することを意味する。「診断する」は、バイオマーカーの特定の比率またはレベルが検出される、または存在しない場合のアッセイの結果を選択的に指す。
【0055】
本明細書で使用されるように、「比率」は、標的のレベルが第2試料中の標的よりも大きいか、または同じ標的の既知もしくは認識されたベースラインレベルに相関する陽性率である。陰性率は、標的のレベルが第2試料中の標的よりも低いか、または同じ標的の既知もしくは認識されたベースラインレベルに相関するとして記述される。中立の比率は、標的バイオマーカー中で観察された変化がないことを記述する。
【0056】
本明細書で使用されるように、「投与する」という用語は、治療剤の対象体への送達である。治療剤は、当業者によって特定の対象体に適切であると決定されたルートにより投与される。例えば、治療剤は、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋内注射によって、腹腔内注射によって、腫瘍内に、吸入的に、または経皮的に投与される。必要とされる治療剤の正確な量は、対象体の年齢、重さ及び一般的な状態、処置される神経状態の重症度、使用される特定の治療剤、投与様式などに依存して、対象体毎に変動するであろう。適切な量は、本明細書に教示されたルーチンの実験だけを用いて当業者により、あるいは不当な実験をすることなく当該分野の知識によって決定することが可能である。
【0057】
生体試料中の1以上の神経活性バイオマーカーの有無を検出する典型的な方法は、ヒトなどの対象体から生体試料を得る工程、該生体試料を分析されるバイオマーカーを検出できる化合物または薬剤と接触させる工程、例示的に抗体またはアプタマーを含む工程、及び洗浄後の試料への化合物または薬剤の結合を分析する工程を含む。他の検出方法が同様に使用可能であり、例示的にタンパク質または核酸に特有の染色をして接触させる方法が認められる。抗体またはアプタマーの場合、特異的に結合した化合物または薬剤を有するそれらの試料は、分析されるマーカーを発現する。
【0058】
本発明は、選択的にUCHL1またはSBDPに関して記述される。これらのバイオマーカーは、実例目的のためにだけ提示され、本発明の範囲がUCHL1またはSBDPsに限られることを明白にまたは別に意味することを意味するものではないことが理解される。
【0059】
本発明の方法は、インビトロのみならずインビボでの生体試料におけるUCHL1と1以上の他の神経活性バイオマーカーを検出するために使用することができる。試料中のUCHL1及び1以上の他の神経活性バイオマーカーの発現量は、分析される検出可能なレベルのマーカーを発現することが知られている第1試料(陽性対照)及び分析される検出可能なレベルのマーカーを発現しないことが知られている第2試料(陰性対照)などの適切な対照と比較される。例えば、マーカーを検出するためのインビトロでの技術としては、酵素免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法、放射標識測定法、ウェスタンブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、免疫沈降法、免疫蛍光法、質量分析、RT−PCR、PCR、液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、酵素活性アッセイ、細胞アッセイ、ポジトロン断層法、質量分光、それらの組み合わせ、または当該分野で公知の他の技術が挙げられる。更にまた、マーカーを検出するためのインビボでの技術は、マーカーと特異的に結合する標識薬剤を生体試料または対象体に導入することを含む。例えば、薬剤は、生体試料または試験対象体中のその存在及び場所が、標準的な画像化技術によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0060】
UCHL1または他のバイオマーカーと特異的に結合することができる任意の適切な分子及び1以上の他の神経活性バイオマーカーと特異的に結合することができる任意の適切な分子が、本発明で使用可能である。UCHL1または1以上の他の神経活性バイオマーカーを検出するための好ましい薬剤は、分析されるバイオマーカーに結合することができる抗体であり、好ましくは、抗体は検出可能な標識でコンジュゲートされている。そのような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができる。完全な抗体、その断片(例えば、FabまたはF(ab’))、またはその組み換え変異体(例えば、sFv)もまた、使用することができる。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらの任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであり得る。ここに使用可能な抗体は、選択的に、モノクローナルであるか、またはポリクローナルである。
【0061】
抗体は、選択的に標識される。当業者は、ここに使用可能な多数の標識を認識する。標識と標識化キットは、選択的にInvitrogen Corp,Carlsbad,CAから市販されている。標識は、例示的に、蛍光標識、ビオチン、ペルオキシダーゼ、放射性ヌクレオチド、または当該分野で公知の他の標識を含む。
【0062】
抗体系のアッセイは、UCHL1と1以上の他の神経活性バイオマーカーの存在について生体試料を分析するために好まれる。適切なウェスタンブロッティング法は、実施例の部で後述される。より迅速な分析(緊急医療状況で重要であるように)のために、免疫吸着アッセイ(例えば、ELISAやRIA)及び免疫沈降アッセイが使われてもよい。1つの例として、生体試料またはその一部は、ニトロセルロースまたはPVDF製の膜などの基体、または、ポリスチレンやマイクロタイタープレートなどの他のプラスチックポリマーからできている堅い基体の上に固定され、前記基体は、分析されるバイオマーカーに抗体が結合するのを可能とする条件下で、UCHL1や他の神経活性バイオマーカーのうちの1つと特異的に結合する抗体に接触させる。洗浄後、基体上の抗体の存在は、試料が評価されるマーカーを含んだことを示す。抗体が酵素、蛍光団、または放射性同位元素などの検出可能な標識と直接コンジュゲートしている場合は、標識の存在は、検出可能な標識を調べることによって任意に検出される。あるいはまた、マーカー−特異的抗体に結合する検出可能な標識された二次抗体が、基体に添加される。洗浄後の基体上の検出可能な標識の存在は、試料がマーカーを含んだことを示す。
【0063】
これらの基本的な免疫アッセイの多数の変更もまた、本発明において有効である。これらは、基体上に固定されている試料と対照的に、バイオマーカー−特異的抗体を含み、そして、該基体は、標識マーカーに対して抗体が結合を引き起こす条件下で、UCHL1または検出可能な標識でコンジュゲートされた別の神経活性バイオマーカーと接触させられる。次いで、基体は、分析されるマーカーの抗体への結合が可能な条件下で試料と接触させられる。洗浄後の基体上の検出可能な標識の量の減少は、試料がマーカーを含んだことを示す。
【0064】
抗体は、それらの広範囲な特徴のため、本発明で使用するために好まれるが、UCHL1または別の神経活性バイオマーカーに特異的に結合する任意の他の適切な薬剤(例えば、ペプチド、アプタマー、または小さな有機分子)は、上記の免疫アッセイにおいて抗体の代わりに選択的に使用される。例えば、αIIスペクトリン及び/またはそのSBDP類の1以上に特異的に結合するアプタマーが使用されてもよい。アプタマーは、特定のリガンドを結合する核酸系分子である。特定の結合特異性を有するアプタマーを製造する方法は、米国特許第5,475,096号、同5,670,637号、同5,696,249号、同5,270,163号、同5,707,796号、同5,595,877号、同5,660,985号、同5,567,588号、同5,683,867号、同5,637,459号、及び同6,011,020号で詳述されているように公知である。
【0065】
バイオマーカー発現の診断アッセイにおいて効力のある無数の検出可能な標識は、当該分野で公知である。UCHL1または別の神経活性バイオマーカーを検出するための方法で使われる薬剤は、検出可能な標識、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートされる。ホースラディッシュペルオキシダーゼで標識された薬剤は、ホースラディッシュペルオキシダーゼの存在下で色の変化をもたらす適切な基質を加えることによって検出することができる。使用することが可能な他のいくつかの検出可能な標識は、公知である。これらの一般的な例は、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、蛍光化合物、発光化合物、コロイド金、磁性粒子、ビオチン、放射性同位元素、及び他の酵素を含む。一次/二次抗体系が、1以上のバイオマーカーを検出するために、選択的に、用いられることが理解される。1以上のバイオマーカーを特異的に認識する一次抗体は、所与のバイオマーカーを含むかもしれない生体試料に曝露される。そして、一次抗体の種またはアイソタイプを認識する適切な標識を有する二次抗体を、試料中の1以上のバイオマーカーの特定の検出が達成されるように試料と接触させる。
【0066】
本発明は、生体試料中のUCHL1と1以上の他の神経活性バイオマーカーの存在または量を神経細胞損傷の重症度及び/またはタイプと相関させる工程を使用する。生体試料中のUCHL1と1以上の他の神経活性バイオマーカーの量は、実施例で詳述されるように、外傷性脳損傷に対する神経状態と関係している。相乗作用的にUCHL1と1以上の他の神経活性バイオマーカーを測定する本発明のアッセイの結果は、傷つけられた細胞のタイプに関する示唆により、医師が損傷のタイプと重症度を決定するのに役立てることができる。これらの結果は、CTスキャンとGCS結果と一致し、定量的であり、より迅速にそしてはるかに低いコストで得られる。
【0067】
本発明は、対象体の神経状態を決定するためにUCHL1の量と選択的に少なくとも1つの他の神経活性バイオマーカーの量を、正常レベルまたは1つもしくは各々と比較する工程を提供する。付加的なバイオマーカーの選択は、軸索損傷マーカー、すなわち、SBDPの場合の細胞死の性質だけでなく、異常な神経状態に関係する神経細胞のタイプを同定することを可能とすることが理解される。本発明の方法の実施は、医師が対象体の最適利益のために投与する適切な治療剤類を決定するのに助けとなることができる試験を提供する。実施例で見られるその後提供されたデータは、外傷性脳損傷の全スペクトルに関して提供されるが、これらの結果が虚血事象、神経変性障害、プリオン関連疾患、てんかん、化学的病因及び末梢神経系病理に適用できることが認められる。性差は、異常な対象体の神経状態で存在する場合がある。
【0068】
対象体での細胞傷害を分析するためのアッセイもまた提供される。このアッセイは、(a)障害を受けた神経細胞を有することが疑われる対象体から分離された試料を保持するための基体、ここで、前記試料は、対象体から分離される前に、対象体の神経系と連通している流体である、(b)UCHL1特異的結合剤、(c)選択的に、別の神経活性バイオマーカーに特異的な結合剤、及び(d)反応のためのインストラクションを含み、ここで反応は、UCHL1の存在または量を検出するために、UCHL1薬剤を生体試料または一部の生体試料と反応させ、そして前記生体試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在または量を検出するために、別の神経活性バイオマーカーに特異的な薬剤を生体試料または一部の生体試料と反応させる。本発明アッセイは、財務報酬に対して神経状態を検出するために使用することができる。
【0069】
このアッセイは、選択的に、薬剤にコンジュゲートしたものなどの検出可能な標識、または薬剤に特異的に結合する物質にコンジュゲートしたもの、例えば、2次抗体などを含む。
【0070】
本発明の治療、診断方法は、選択的に、標的バイオマーカーの1以上の特性を変え得る1以上の治療剤の存在を含む。治療剤は、選択的に、標的バイオマーカーのアゴニストもしくはアンタゴニストとして、またはバイオマーカーの上流エフェクタとして利用できる。治療剤は、選択的に、バイオマーカーの下流機能に影響を及ぼす。例えば、アセチルコリン(Ach)は、病理学的ニューロン興奮における役割を果たし、そして、TBI−誘発ムスカリン性コリン受容体の活性化は、興奮毒性プロセスに関与する可能性がある。そのように、バイオマーカーは、選択的にAchまたはムスカリン受容体のレベルもしくは活性を含む。選択的に、使用可能なバイオマーカーは、ムスカリン受容体類の活性によってもたらされる分子、タンパク質、核酸または他のものである。そのように、対象発明において使用可能な治療剤は、例示的に、ムスカリン性コリン受容体の活性化のいろいろな態様を調節するものを含む。
【0071】
治療標的または治療標的のモジュレータとして使用可能な特定のムスカリン受容体は、M、M、M、M、及びMムスカリン受容体を含む。
【0072】
TBIを検出及び治療する際のムスカリン性コリン受容体経路の適合性は、実験的なTBI(Gorman et al.,1989;Lyeth et al.,1993a)及び虚血(Kumagae and Matsui,1991)の後の脳脊髄液(CSF)中の上昇したAChのみならず、コリン類似物質の適用(Olney et al.,1983;Turski et al.,1983)によるムスカリン性コリン受容体の活性化の高いレベルの障害性性質をも示した研究から生じる。更にまた、ムスカリン性アンタゴニストの急性投与は、実験的なTBIの後の行動回復を好転する(Lyeth et al.,1988a;Lyeth et al.,1988b;Lyeth and Hayes,1992;Lyeth et al.,1993b;Robinson et al.,1990)。
【0073】
対象発明で使用可能な治療剤は、例示的に、TBIもしくはMTBIなどのニューロン損傷による危険性のある対象体またはそれの犠牲者の治療結果を変えるために、望ましくは改善するために使用可能である任意の分子、化合物、ファミリー、抽出物、溶液、薬物、プロドラッグ、または他のメカニズムである。治療剤は、選択的に、アゴニストまたはアンタゴニストなどのムスカリン性コリン受容体モジュレータである。アゴニストまたはアンタゴニストは、直接的または間接的であってもよい。間接的アゴニストまたはアンタゴニストは、選択的に、アセチルコリン又は他のムスカリンレセプター関連分子を分解又は合成する分子であり、例示的には、アルツハイマー病の治療のために現在使用される分子である。コリン類似物質または類似分子が、本明細書で使用可能である。本明細書で使用可能な治療剤の典型的なリストは、ジサイクロミン、スコポラミン、ミラメリン、N−メチル−4−ピペリジニルベンジラート NMP、ピロカルピン、ピレンゼピン、アセチルコリン、メタコリン、カルバコール、ベタネコール、ムスカリン、オキソトレモリンM、オキソトレモリン、タプシガルギン、カルシウムチャネルブロッカーまたはアゴニスト、ニコチン、キサノメリン、BuTAC、クロザピン、オランザピン、セビメリン、アセクリジン、アレコリン、トルテロジン、ロシベリン、IQNP、インドールアルカロイド類、ヒンバシン、シクロステレッタミン類、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、及びそれらの組み合わせを含む。治療剤は、選択的に、カルパインまたはカスパーゼのレベルまたはそれの活性を変えるために使用可能な分子である。そのような分子とそれらの投与は、当該分野で公知である。
【0074】
本発明の治療、診断方法は、例示的に、対象体での神経状態を診断し、神経状態を有する対象体を治療する、または両方の方法を含む。好ましい実施形態では、本発明の方法は、例示的に対象体から生体試料を得ることを含む。生体試料は、生体試料中に存在する1以上のバイオマーカーの存在を検出または同定するために当該分野で公知のメカニズムによりアッセイされる。生体試料中の標的バイオマーカーの量または存在に基づいて、1以上のバイオマーカーの比率が、選択的に算出される。比率は、選択的に、同じまたは平行した試料の別のバイオマーカーのレベルと関連した1以上のバイオマーカーのレベルであるか、または病理学的神経状態でないことが知られている対象体の同じバイオマーカーの測定された、あるいは予め確立したベースラインレベルに対するバイオマーカーの量の比率である。比率は、対象体での神経状態の診断を可能にする。本発明の方法は、また、1以上のバイオマーカーの比率を直接的または間接的に変える対象体に対して治療剤を投与するものである。
【0075】
本発明の方法は、また、多臓器損傷を診断して、治療するために提供される。複数の臓器は、例示的に脳、脊髄などの神経性組織のサブセット、または皮質、海馬などの脳の特定領域を含む。複数の損傷は、例示的に、カスパーゼ誘発SBDP類の存在によって検出可能なアポトーシス細胞死、及びカルパイン誘発SBDP類の存在によって検出可能な腫脹細胞死を含む。本発明の方法は、例示的に、対象体から得られた生体試料の複数のバイオマーカーに対してアッセイすることを含み、ここで、生体試料は、選択的に、損傷を受けたと疑われる臓器と流体接触しているか、または生体試料が対象体から得られたときの対照臓器である。本発明の方法は、複数のバイオマーカーの第1比率に基づいて、臓器損傷の第1サブタイプを決定する。また、本発明の方法は、生体試料の複数のバイオマーカーの第2比率に基づいて、第2臓器損傷の第2サブタイプを決定する。比率は、例示的に、本明細書に記述された方法によって測定されるか、または当該分野で公知である。
【0076】
本発明の方法における多臓器損傷の治療は、その活性が初回の臓器損傷に応じて変わるタンパク質の活性を調節するのに有効な少なくとも1つの治療アンタゴニストまたはアゴニストを対象体に投与し、その活性が第2臓器損傷に応じて変わるタンパク質の活性を調節するのに有効な少なくとも1つの治療アゴニストまたはアンタゴニストを対象体に投与することにより例示的に達成される。
【0077】
対象発明は、例示的に対象体の神経状態の大きさを識別するための組成物を含む。本発明の組成物は、薬剤実体または複数の薬剤の混合物のどちらかである。好ましい実施形態において、組成物は、混合物である。混合物は、任意に、対象体由来の生体試料を含む。対象体は、選択的に、神経状態を有すると疑われる。生体試料は、対象体から分離される前に、対象体の神経系と連通している。また、本発明の組成物では、少なくとも2つの一次薬剤、好ましくは、生体試料に存在し得る少なくとも2つのバイオマーカーと特異的、かつ独立的に結合する抗体を含む。好ましい実施形態では、第1の一次薬剤は、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、好ましくはUCHL1に特異的に結合する抗体中に存在する。第2の一次薬剤は、好ましくは、スペクトリン分解産物に特異的に結合する抗体である。
【0078】
本発明の組成物の薬剤は、任意に固定化されているか、そうでなければ基体と接触している。本発明の教示では、また、少なくとも1つの検出可能な標識で好ましくは標識される。好ましい実施形態では、各々の薬剤上の検出可能な標識は、独特のものであって、独立して検出可能である。選択的に、一次薬剤の検出または結合に特異的な二次薬剤は、少なくとも1つの検出可能な標識で標識される。非限定的な例では、一次薬剤は、ウサギ由来抗体である。二次薬剤は、任意にウサギ由来主要抗体に特異的な抗体である。抗原への抗体結合を検出するメカニズムは、当該分野で周知であり、当業者は、生体試料中の抗原またはバイオマーカーを検出するのに適した多くの方法及び薬剤を容易に想起する。
【0079】
生体試料の標的バイオマーカーと結合するのに適した基体を含むキットもまた提供される。生体試料は、選択的に、キットとともに提供されるか、発明キットの使用のために開業医により入手される。発明キットは、また、少なくとも2つのバイオマーカーと特異的、かつ独立的に結合する少なくとも2つの抗体を含む。抗体は、好ましくは2つのバイオマーカーを区別する。好ましくは、第1抗体は、第1バイオマーカーと結合し検出するのに特異的で独立している。第2抗体は、第2バイオマーカーと結合し検出するのに特異的で独立している。このように、1つの生体試料での複数のバイオマーカーの有無を測定または識別することができる。好ましい実施形態では、生体試料中のバイオマーカーは、例示的にαII−スペクトリン、αII−スペクトリン分解産物(SBDP)、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、及びMAP2タンパク質を含む。本発明のキットも、生体試料中のバイオマーカーの存在またはそれの量を検出するために抗体を生体試料または一部の生体試料と反応させるためのインストラクションを含む。
【0080】
キットでは、生体試料はCSFまたは血液であり、そして、薬剤は抗体、アプタマー、またはαII−スペクトリン、αII−スペクトリン分解産物(SBDP)、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、及びMAP2タンパク質の少なくとも1つと特異的に結合する他の分子であり得る。適切な薬剤は、上記されている。キットは、また、薬剤にコンジュゲートされたもの、あるいは薬剤に特異的に結合する物質にコンジュゲートされたもの(例えば、二次抗体)などの検出可能な標識を含むこともできる。
【0081】
本発明は、生体試料中のバイオマーカーの存在または量を神経細胞(または他のバイオマーカー発現細胞)損傷の重症度及び/またはタイプと相関させる工程を使用する。より重症の損傷はより多くの神経細胞に傷害を与えて、それが、順番に、より大量のバイオマーカー類を生体試料(例えば、CSF、血清)中に蓄積させるので、生体試料中のバイオマーカー類の量は、神経組織損傷の重症度と直接関係する。神経細胞損傷がアポトーシス性及び/または壊死性タイプの細胞死を誘発するかどうかは、生体試料に存在するSBDP類を調べることで測定することもできる。壊死性細胞死は、優先してカルパインを活性化するのに対して、アポトーシス性細胞死は、優先してカスパーゼ−3を活性化する。カルパイン及びカスパーゼ−3 SBDP類は、識別されることができるので、これらのマーカーの測定は、対象体での細胞傷害のタイプを示す。例えば、壊死によって誘発されたカルパインの活性化は、SBDP150とSBDP145の産生をもたらし、アポトーシスによって誘発されたカスパーゼ−3の活性化は、SBDP150iとSBDP120の産生をもたらし、そして、両方の経路の活性化は、4つのマーカーの全ての産生をもたらす。また、生体試料に存在するUCHL1のレベルまたはそれの動的範囲は、軽度損傷とより重度損傷を選択的に区別し得る。典型例では、重度MCAO(2時間)は、軽度チャレンジ(30分)と比較してCSFと血清の両方でUCHL1の増加を生じるが、両方は無傷の対象体を上回るUCHL1レベルをもたらす。更に、生体試料中のマーカーの持続性または動的範囲は、損傷の重症度の指標であり、より大きな損傷は、損傷の後でいくつかの時点で採取された生体試料での発明方法で測定される対象体中のUCHL1またはSBDPの増加した持続性を示す。
【0082】
そのような試験の結果は、カルパイン及び/またはカスパーゼ阻害剤またはムスカリン性コリン受容体アンタゴニストなどの特定の治療剤の投与が患者にとって利益となるかどうかを医師が決定するのに役立つことができる。この出願は、細胞死メカニズムの年齢差と性差を検出する際に特に重要となる可能性がある。
【0083】
従来の生物学的技術を含む方法は、本明細書に記述される。そのような技術は、通常、当該分野で公知であり、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;and Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1992(with periodic updates)などの方法論の論文で詳細に記述される。免疫学的方法(例えば、抗原特異的抗体の調製、免疫沈降法、及びイムノブロッティング法)は、例えば、Current Protocols in Immunology,ed.Coligan et al.,John Wiley & Sons,New York,1991;及びMethods of Immunological Analysis,ed.Masseyeff et al.,John Wiley & Sons,New York,1992に記述されている。
【0084】
本発明のいろいろな態様は、以下の非限定的な実施例で説明される。実施例は、説明のためであり、本発明のいかなる実施に対する制限でもない。変形及び改変が、発明の精神と範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されるであろう。実施例は、一般に、哺乳類の組織、具体的にはラット組織の分析に向けられるが、当業者は、当該分野で公知の同様の技術と他の技術が、実施例をヒトなどの他の哺乳類に容易に転換することを認識している。本明細書に例証された試薬は、一般的に哺乳動物種の間で交差反応性であるか、あるいは、同様の特性を有する代替試薬は、商業的に入手可能であり、そして、当業者は、そのような試薬がどこで入手され得るかを容易に理解している。
【実施例】
【0085】
実施例1
バイオマーカー分析のための材料。炭酸水素ナトリウム、(Sigmaカタログ番号:C−3041)、ブロッキング緩衝液(Startingblock T20−TBS)(Pierceカタログ番号:37543)、Tween20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBST;Sigmaカタログ番号:T−9039)。リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Sigmaカタログ番号:P−3813);Tween20(Sigmaカタログ番号:P5927);Ultra TMB ELISA(Pierceカタログ番号:34028);及びNunc maxisorp ELISAプレート(Fisher)。モノクローナル及びポリクローナルUCHL1抗体は、インハウスで調製されるか、あるいはSanta Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CAから入手される。α−IIスペクトリン及び分解産物、ならびにMAP2に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CAから入手可能である。多数のサブタイプの抗体の標識は、Invitrogen,Corp.,Carlsbad,CAから入手可能である。生体試料のタンパク質濃度は、アルブミン規格でビシンコニン酸マイクロタンパク質アッセイ(Pierce Inc.,Rockford,IL,USA)を使って決定される。他の全ての必要な試薬と材料は、当業者に公知であり、容易に確認できる。
【0086】
実施例2
TBI損傷モデルのインビボモデル。制御皮質衝撃(controlled cortical impact:CCI)装置は、先に記述(Pike et al.,1998)されたようにラットでのTBIのモデル作成に使用される。成熟した雄(280〜300g)のSprague−Dawleyラット(Harlan:Indianapolis,IN)は、1:1のO/NO(4分)のキャリアガスの4%イソフルランで麻酔されて、そして、同じキャリアガスの2.5%イソフルランで維持される。深部体温は、直腸サーミスタプローブによって連続的にモニターされて、ラットの下に調節可能な温度に制御されたヒーティングパッドを置くことによって、37±1℃に維持される。動物は腹臥位において定位フレームに取り付けられて、耳棒と切歯棒で確保される。軟部組織の中央線頭蓋切り込みと反転の後で、十字縫合と人字縫合の中途に、片側(衝撃部位への同側の)開頭(7mmの直径)が、中心縫合に隣接して実行される。硬膜は、皮質の上に無傷に保たれる。脳外傷は、1.6mmの圧縮と150msの滞留時間で3.5m/sの速度で5mmの直径アルミニウムインパクタ先端(空気圧シリンダの中に収容される)により右(同側の)の皮質に衝撃を与えることによって発生する。偽(偽)損傷の対照動物は、同一の外科的手順を受けるが、衝撃損傷は受けない。適切なプレ−及びポスト−損傷管理は、フロリダ大学の所内動物実験委員会によって記述されるガイドライン及び実験動物の管理と使用に関する指針に詳述される国立衛生研究所のガイドラインへの遵守を保障するために前もって形成される。更に、研究は、動物福祉法及び動物と実験に関する他の連邦法規と規則に従って実施され、“Guide for the Care and Use of Laboratory Animals,NRC Publication,1996 edition”に述べられた原則を厳守する。
【0087】
実施例3
中大脳動脈閉塞(MCAO)損傷モデル。ラットはイソフルラン麻酔下(誘導チャンバーを介して5%のイソフルラン、続いてノーズコーンを介して2%のイソフルラン)で温置され、ラットの右の総頚動脈(CCA)は、中央線首切開で外部及び内部頸動脈(ECAとICA)二分岐レベルで露出させる。ICAは翼口蓋分枝の吻側方向へと続き、ECAは結紮され、舌枝と上顎枝の間で切断される。3−0ナイロン縫合は、それからECA断端(縫合の経路は目視により血管壁を通してモニターされた)の上に切り込みを通してICAにもたらされて、それが中央大脳動脈の起始点を妨げている前大脳動脈の狭いところにはまり込むまで、頸動脈分岐からおよそ20mmに頸動脈管を通して進められる。皮膚切開はそれから閉じられ、そして、血管内縫合は、30分または2時間そのままにした。その後、ラットを短時間、再麻酔し、そして、縫合フィラメントは、再潅流を可能とするために引っ込められる。偽MCAO手術のために、同じ手順が追従されるが、フィラメントは内−外頸動脈分岐を越えて10mmだけ進められて、ラットが屠殺にされるまでそのままにされる。すべての外科的手順の間、動物は恒温の暖房毛布(Harvard Apparatus,Holliston,MA,U.S.A.)で37±1℃に維持される。各々の実験の結論のときに、ラット脳が、検死によりくも膜下出血の病理学的所見を示すならば、それらは研究から除外される点に注意することは重要である。適切なプレ−及びポスト−損傷管理は、すべての動物の管理と使用のガイドラインのコンプライアンスを保証するために実行される。
【0088】
実施例4
組織と試料の調製。損傷後の適切な時点(2、6、24時間目と2、3、5日目)に、動物は麻酔されて、断頭により直ちに屠殺される。脳をすばやく取り除き、氷冷したPBSで濯ぎ、半分にする。右半球(衝撃領域と海馬のあたりの大脳皮質)を迅速に解剖して、氷冷PBSで濯ぎ、液体窒素で急速凍結して、使用するまで−80℃で保存する。免疫組織化学のために、脳は素早くドライアイススラリー中で凍結され、SUPERFROST PLUS GOLD(登録商標)(Fisher Scientific)スライド上へクリオスタット(20μm)を介して切断され、そして、使用されるまで−80℃に保存される。左半球に関しては、右側と同じ組織が回収される。ウェスタンブロット解析のために、脳サンプルは、乳鉢と乳棒セットを用いてドライアイス上で微粉末に粉砕される。続いて、粉砕された脳組織粉末は、50mMのトリス(pH 7.4)、5mMのEDTA、1%(v/v)のトリトンX−100、1mMのDTT、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Biochemicals)の緩衝液中、4℃で90分間溶解させる。次いで、脳溶解物は、不溶性破片を除くために4℃で5分間15,000×gで遠心分離し、急速凍結し、使用するまで−80℃で保存される。
【0089】
ゲル電気泳動と電気ブロッティングのために、明瞭なCSFサンプル(7μl)が、蒸留水中、0.25M Tris(pH 6.8)と、0.2M DTTと、8%SDSと、0.02%ブロモフェノールと、20%グリセロールを含む2×ローディング緩衝液を用いてドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)のために調製される。レーンにつき、20マイクログラム(20μg)のタンパク質が、2時間130Vで10〜20%のトリス/グリシンゲル(Invitrogen、カタログ番号EC61352)上でのSDS−PAGEによってルーチン的に分析される。電気泳動の後で、分離されたタンパク質は、半乾燥移動装置(Bio−Rad)上で周囲温度にて2時間20Vの定電圧で39mMのグリシン、48mMのトリス−HCl(pH 8.3)と5%のメタノールを含む移動バッファ中、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に側方に転写される。電気移動の後、膜はTBSと0.05%のTween−2(TBST)の5%脱脂ミルクで周囲温度において1時間ブロックされ、そして、一晩中4℃でメーカーによって推薦されるように、1:2000の希釈で5%脱脂ミルクを含むTBST中で第1ポリクローナルUCHL1抗体とともにインキュベーションされる。この後に、TBSTによる3回の洗浄、ビオチン結合第2抗体(Amersham、カタログ番号RPN1177vl)と周囲温度で2時間のインキュベーション、及びストレプトアビジン−コンジュゲートアルカリホスファターゼ(BCIP/NBT試薬:KPL、カタログ番号50−81−08)による30分のインキュベーションが続けられる。完全なUCHL1タンパク質の分子量は、虹色の分子量標準(Amersham、カタログ番号RPN800V)を使って評価される。完全なUCHL1タンパク質濃度の半定量評価は、コンピュータ支援濃度測定走査法(Epson XL3500スキャナ)及びImageJソフトウェア(NIH)での画像解析により実行される。
【0090】
実施例5
UCHL1発現は、神経組織に特有である。UCHL1の組織特異性は、組織特異的発現を確認するために、実施例4の場合のように分析される。UCHL1は、主に脳(図1A)で発現され、そして、精巣では低レベルで発現される。UCHL1は、調べられたすべての脳の領域にわたって存在し、小脳及び脳橋では減少したレベルである(図1B)。
【0091】
実施例6
UCHL1は、MCAOチャレンジの後のCSFで増大する。対象は、実施例3に記載されているようにMCAOチャレンジに付され、CSF試料は、定量的なウェスタンブロット法によって分析される。UCHL1タンパク質は、偽処置試料(図2A、B)のUCHL1の量より上の統計的に有意なレベルで、損傷後に容易に検出できる。これらのUCHL1レベルは、軽度虚血(30分MCAO)に続く再灌流の後に一時的に上昇する(6時間で)するのに対して、より重度(2時間MCAO)の虚血の後では、そのレベルは6時間〜72時間持続する(図2A、B)。
【0092】
実施例7
ELISAは、CSFと血清の両方でUCHL1レベルを同定する。ELISAは、生体試料のUCHL1をより迅速に、そしてより容易に検出及び定量するために使用される。UCHL1サンドイッチELISA(swELISA)のために、96穴プレートは、0.1M炭酸水素ナトリウム(pH9.2)中、100μl/ウェルの捕捉抗体(500ng/ウェルの精製ウサギ抗−UCHL1、自家製)でコーティングされる。プレートは、4℃で一晩インキュベーションし、空にして、300μl/ウェルのブロッキング緩衝液(Startingblock T20−TBS)を添加し、周囲温度で30分間、穏やかに振動させながらインキュベーションする。この後、標準曲線(0.05〜50ng/ウェル)のための抗原標準(組み換えUCHL1)を添加するか、あるいは試料希釈剤(全容量100μl/ウェル)中の試料(3〜10μlのCSF)を添加するかのいずれかを続ける。プレートは、室温で2時間インキュベーションし、それから自動プレート洗浄器(洗浄バッファ、TBST、付5×300μl/ウェル)で洗浄する。続いて、ブロッキング緩衝液中の検出抗体マウス抗−UCHL1−HRPコンジュゲート(自家製、50μg/ml)を、100μL/ウェルの複数ウェルに添加し、1.5時間室温でインキュベーションし、その後洗浄する。もし増幅が必要ならば、ビオチニル−チラミド溶液(Perkin Elmer Elast Amplification Kit)を室温で15分間にて添加し、洗浄し、0.02%Tween20と1%BSAを含むPBS中の100μl/ウェルのストレプトアビジンHRP(1:500)を30分間続け、そして、その後洗浄する。最後に、ウェルは、100μl/ウェルのTMB基質溶液(Ultra−TMB ELISA、Pierce# 34028)で5〜30分間、インキュベーションして展開する。シグナルは、652nmで96−ウェル分光測光器で読み取られる(Molecular Device Spectramax 190)。
【0093】
TBI群(衝撃性損傷)のUCH−Llレベルは、UCHLlがCSF(損傷後の2時間)中で早期に上昇し、次いで損傷後48時間で再び上昇する前に損傷後24時間頃に減少することを示すswELISAで測定されるように、偽対照(p<0.01、ANOVA分析)及び無処置対照よりも有意に高い(図3)。
【0094】
MCAOチャレンジの後で、CSF中のUCHLlのレベルの大きさは、より軽度チャレンジ(30分)と比較して、重度(2時間)チャレンジで、劇的に上昇する。(図4。)より重度の2時間MCAO群のUCHLlタンパク質レベルは、30分MCAO(p<0.01、ANOVA分析)より2〜5倍高い。偽処置に対するUCHL1タンパク質のレベルは、無処置対照と実質的に区別がつかない。
【0095】
類似した結果が、血清でのUCHL1について得られる。血液(3〜4ml)は、ポリプロピレンチューブに配置された21ゲージ針を備えた注射器を用いて各実験期間の終わりに心臓から直接回収され、45分から1時間室温で静置して血塊を形成する。チューブは、3、000×gで20分間、遠心分離して血清を除き、ELISAで分析する(図5、6)。
【0096】
TBI群のUCHL1のレベルは、偽処置群(p<0.001、ANOVA分析)より有意に高く、各時点について2〜24時間、同じ偽処置群の時点(p<0.005、スチューデントT−検定)に対して試験される。UCH−L1は、損傷後、2時間という早い時期に血清中で上昇する。重度MCAOチャレンジは、軽度チャレンジに比べて血清UCHL1の増加をもたらす。重度及び軽度チャレンジの両方は、偽処置動物よりも統計学的に高く、これは、UCHL1の血清検出が確固たる診断剤であり、そのレベルは、軽度損傷と重度損傷を十分に区別することができることを示す。
【0097】
実施例8
スペクトリン分解産物は、その内容が、参照として本明細書に援用される米国特許第7,291,710号に記述された手順と類似した手順により、ラットMCAOチャレンジの後に分析される。図7は、血清とCSFの両方でのSBDP145のレベルが、軽度(30分)チャレンジと比較した重度(2時間)MCAOチャレンジの後で試験された全ての時点で有意(p<0.05)に増加していることを説明している。同様に、SBDP120は、CSFで、損傷後の24時間と72時間の間で重度MCAOチャレンジの後で有意に上昇を示す(図8)。しかし、血清でのSBDP120のレベルは、2時間と120時間の間のすべての時点で、軽度チャレンジと比べて重度チャレンジの後で増加する。CSFと血清の両方で、軽度及び重度MCAOチャレンジの両方は、偽処置対照と比較して増加したSPBP120と140を産生する。
【0098】
実施例9
微小管結合タンパク質2(MAP2)は、対象での軽度(30分)チャレンジと重度(2時間)MCAOチャレンジの後で、実施例4と7に記載されているように、基本的にELISAまたはウェスタンブロッティング法によって、CSFと血清の両方でバイオマーカーとして分析される。MAP2(MAP−2(E−12))に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CAから入手される。これらの抗体は、ELISAとウェスタンブロッティング手順に対して適切であり、マウス及びヒトMAP2と交差反応性である。MAP2のレベルは、CSFと血清の両方での無処置動物と比較して軽度MCAOチャレンジ後の対象で有意(p<0.05)に増加する(図9)。UCHL1及びSBDPsと同様に、重度チャレンジ(2時間)は、軽度チャレンジ(30分)よりも、両方の試料でMAP2の更に高いレベルをもたらす。
【0099】
実施例10
ジサイクロミンは、TBIの後にCSFでのSBDP類の生産を阻害するが、神経細胞の生存率に影響を及ぼさない。治療剤ジサイクロミンは、その内容を参照として本明細書に援用されるCox,CD,et al.,J Neurotrauma,2008;25(11):1355〜65によって記述されるように、基本的にチャレンジの後で生体試料でのバイオマーカーのレベルを変えるその能力について分析される。
【0100】
薬物治療なしの8つのTBI対象が、SPDP免疫組織化学(n=2/TBI後3、12、24、48時間の時点)のために時間的経過研究で使用される。24の対象は、3つの処置群のうちの1つに割り当てられる(n=各8)。つまり、生理食塩水溶媒(薬物注射として等容量)投与損傷群、ジサイクロミン投与損傷群、及びそれからSBDPレベルでTBI誘発された変化を比較するための非損傷ベースラインとして用いられる第3目の偽損傷群。全ての手順は、UC Davis Institutional Animal Care and Use Committeeの承認を得たプロトコルに従って実行される。
【0101】
対象は基本的に実施例2に記載されたようにCCIを投与され、そして、CSFは実施例4に記載されているように調製される。ジサイクロミンは、等張食塩水に溶解され、TBI誘導の5分前に5mg/kgの用量(容量1.0ml/kg)で腹腔内投与(i.p.)される。溶媒処置群は、等張生理食塩水の等量の腹腔内注射を受ける。両群は、研究者に薬物または溶媒の正体を隠しながら、損傷に対して同じ時点で注射を受ける。
【0102】
手術(表1)の間に、TBIの大きさ、初期体重(手術時)、または手術中の体温については、群間には有意差がない。パーセント体重減少は、生理食塩水−処置群と比べてジサイクロミン−処置群では有意(p<0.01)に減少している(表1)。
【0103】
【表1】

【0104】
図10は、SBDPレベルがCCIの後で統計学的に増加することを証明する。CSF中で測定された平均α−II SBDPレベルは、偽動物群と比較してTBI後24時間で両方の損傷群において有意(p<0.001)に上昇する。145kDaのSBDPレベルは、溶媒処置群と比較してジサイクロミン処置群で有意(p=0.028)に減少する。
【0105】
Fluoro−Jadeは、ジサイクロミンの存在がCCI後の細胞死に影響を及ぼすかどうかを決定するのに用いられる。実験的手順は、Cox,CD et al.,2008によって記述されるように実行される。簡潔に言うと、灌流の後の24時間(±1時間)に、脳は、0.1MのPB(5分×2)で濯ぎ、0.1MのPB中のスクロースの10%と30%溶液で1時間と48時間それぞれ凍結保護し、−80℃で30%スクロース/PB溶液中に保存する。脳をブロッキングし、滑走式ミクロトーム(American Optical Corp.,モデルl860)を用いて、十字縫合−1.9mmから十字縫合−4.15mmから45μmインクレメントで後吻側に切断する。それから、組織切片は、蒸留水を使ってスライド上へ載せ、乾燥させる。Fluoro−Jade染色手順(Schmued et al.,1997)に関して、切片は100%、75%、50%と25%エタノールでの連続した5分の濯ぎ、続いてdHOを使って3分間の濯ぎにより再水和され、0.06%のKMNOに15分間、続いてdHOに2分間置き、そして、0.1%酢酸中0.0006%のFluoro−JadeB溶液で30分間染色する。スライドを一晩風乾し、キシレンに浸漬し、DPXで覆う。
【0106】
各々の対象についての背側海馬のCA2/CA3領域内のFluoro−Jade染色された細胞の総数は、コンピュータ系システム(Stereologer version 1.3、Systems Planning and Analysis,Inc.,Alexandria,VA)による光学的分別装置技術(West et al.,1991)を使用して推定される。各セクション内の背側CA2/3錐体細胞層の境界は、2×対物レンズを使って略述され、そして、細胞はそれから40×倍率において手動でカウントされる。皮質細胞数について、衝撃部位に隣接した皮質で観察される非常に限局性のFluoro−Jade陽性の部位は、ROIとして用いられる:その領域は、2×倍率で略述され、そして、細胞は海馬領域と同様に40×倍率で定量化される。各々の対象のための問題の各々の領域における細胞総数の数の推定は、以下の式を使用するソフトウェアによって算出される
【0107】
(数1)
式:
obj=(N)(1/SSF)(1/ASF)(1/TSF)
【0108】
式中、Nは、対象に対して算出されたすべての目的物の合計を表し、SSFはセクション・サンプリング・フラクションであり、ASFはエリア・サンプリング・フラクションであり、そして、TSFは厚みサンプリング・フラクションである。
【0109】
TBI後24時間に海馬ROIで観察されるFluoro−Jade陽性ニューロンの平均数は、溶媒及びジサイクロミン処置群に対してそれぞれ2982と2640であった(図11A)。皮質ROIに対する平均数は、溶媒及びジサイクロミン処置群に対してそれぞれ84392と84452であった(図11B)。T−検定は、どちらの領域でも処置群間の有意差を現さなかった。これらの結果は、ジサイクロミンが細胞死に影響を及ぼさない可能性があるが、バイオマーカーがかなりの治療結果を示し得る行動特性の改善と相関することが期待されることを示唆している。
【0110】
本明細書に記載の特許及び刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示す。これらの特許と刊行物は、あたかも、それぞれの個々の出願または刊行物が具体的かつ個別的に本明細書に詳細に明確に表現されるとして、参照として同程度に本明細書において援用される。
【0111】
以上の記述は、本発明の特定の実施形態を説明するものであが、本発明の実施を制限するものではない。その全ての均等物を含む以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを目的とする。以下のそのすべての等価物を含む特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを目的とする。
【0112】
以下の参照文献は、各参照文献の内容が完全、かつ明白に含まれるものとし参照として各々が本明細書を援用する。
【0113】
参照文献リスト
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経状態または神経状態の可能性を診断し、治療するための方法であって、
1以上のバイオマーカーの存在に対して対象体の生体試料をアッセイする工程、
前記生体試料中の1以上の前記バイオマーカーの比率に基づいて神経状態を診断する工程、及び、
1以上の前記バイオマーカーの比率を変更するために治療剤を前記対象体に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記神経状態が、脳損傷、もしくは多臓器損傷、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオマーカーが、スペクトリン、スペクトリン分解産物、MAP2、ニューロン変性、ユビキチンカルボキシル末端エステラーゼ、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、ニューロン局在細胞内タンパク質、MAP−タウ、C−タウ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、コラプシン応答メディエータタンパク質、それらの分解産物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマーカーが、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーの比率が、2より大きい請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオマーカーの比率が、0.5より小さい請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療剤が、直接的治療剤である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記治療剤が、間接的治療剤である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記治療剤が、ジサイクロミン、スコポラミン、ミラメリン、N−メチル−4−ピペリジニルベンジラートNMP、ピロカルピン、ピレンゼピン、アセチルコリン、メタコリン、カルバコール、ベタネコール、ムスカリン、オキソトレモリンM、オキソトレモリン、タプシガルギン、カルシウムチャネルブロッカーまたはアゴニスト、ニコチン、キサノメリン、BuTAC、クロザピン、オランザピン、セビメリン、アセクリジン、アレコリン、トルテロジン、ロシベリン、IQNP、インドールアルカロイド類、ヒンバシン、シクロステレッタミン類、それらの誘導体、それらのプロドラッグ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
神経状態または神経状態の可能性を診断し、治療するための方法であって、
ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、スペクトリン分解産物、及びMAP2からなる群から選択される1以上のバイオマーカーの存在に対して対象体の脳脊髄液または血清をアッセイする工程、
ベースラインレベルに対する前記バイオマーカーレベルの比率を算出する工程、
前記比率に基づいて神経状態を診断する工程、
1以上のバイオマーカーの前記比率を変更するためにムスカリン受容体アンタゴニストを前記対象体に投与する工程を含む、方法。
【請求項11】
前記ムスカリン受容体アンタゴニストが、ジサイクロミンである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記神経状態が、衝撃性脳損傷、脳卒中、及び多臓器損傷からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
神経損傷の大きさを識別するための組成物であって、
損傷を受けた神経細胞を有すると疑われた対象体から分離された生体試料であって、前記対象体から分離される前には前記対象体の神経系と連通する流体である前記生体試料、及び
αII−スペクトリン、αII−スペクトリン分解産物(SBDP)、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、及びMAP2タンパク質から選択される少なくとも2つのバイオマーカーと、特異的、かつ独立的に結合する少なくとも2つの付加抗体を含む、組成物。
【請求項14】
前記対象体が、哺乳動物である請求項13に記載の混合物。
【請求項15】
前記対象体が、ヒトである請求項13に記載の混合物。
【請求項16】
前記バイオマーカーが、基体に固定化されている請求項13に記載の混合物。
【請求項17】
少なくとも1つの検出可能な標識を含む請求項13に記載の混合物。
【請求項18】
前記検出可能な標識が、少なくとも2つの前記抗体とコンジュゲートしている請求項17に記載の混合物。
【請求項19】
前記検出可能な標識が、少なくとも2つの前記抗体に特異的に結合する物質とコンジュゲートしている請求項17に記載の混合物。
【請求項20】
対象体における細胞障害を分析するためのキットであって、
障害を受けた神経細胞を有すると疑われた対象体から分離された生体試料中のバイオマーカーと結合するための基質、ここで、前記生体試料は対象体から分離される前は対象体の神経系と連通する流体である、
αII−スペクトリン、αII−スペクトリン分解産物(SBDP)、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素、及びMAP2タンパク質から選択される少なくとも2つのバイオマーカーと特異的、かつ独立的に結合する少なくとも2つの抗体、及び
前記生体試料中の前記バイオマーカーの存在または量を検出するために、前記抗体を前記生体試料又は前記生体試料の一部と反応させるためのインストラクションを含む、キット。
【請求項21】
前記対象体が、ヒトである請求項20に記載の混合物。
【請求項22】
少なくとも1つの検出可能な標識を含む請求項20に記載の混合物。
【請求項23】
前記検出可能な標識が、少なくとも2つの前記抗体とコンジュゲートしている請求項22に記載の混合物。
【請求項24】
前記検出可能な標識が、少なくとも2つの前記抗体に特異的に結合する物質とコンジュゲートしている請求項22に記載の混合物。
【請求項25】
対象体の神経状態を診断する方法であって、
対象体から得られた生体試料のユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの量とを初回に測定する工程、及び、
前記対象体の神経状態を診断するために、前記ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の量と少なくとも1つの前記付加的な神経活性バイオマーカーの量を、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーのベースラインレベルと比較する工程を含む、方法。
【請求項26】
前記測定が、免疫測定による請求項26に記載の方法。
【請求項27】
前記生体試料が、脳脊髄液または血清である請求項25に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの前記付加的な神経活性バイオマーカーが、スペクトリン分解産物、MAP−2、SBDP150、SBDP145、もしくはSBDP120、またはグリア線維性酸性タンパク質を含む請求項25に記載の方法。
【請求項29】
ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の第2の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの第2の量を、前記ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素と少なくとも1つの前記付加的な神経活性バイオマーカーに対する動的プロファイルを得るために2回目に測定する工程を含む請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記対象体の正常レベル間のユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素の量と少なくとも1つの付加的な神経活性バイオマーカーの量を、前記対象体と同性の他の個体と比較する工程を含む請求項25に記載の方法。
【請求項31】
対象体の多臓器損傷を診断し、治療するための方法であって、
対象体からの生体試料を複数のバイオマーカーに対してアッセイする工程、
前記生体試料中の前記複数のバイオマーカーの第1比率に基づいて、第1臓器損傷の第1サブタイプを決定する工程、
前記生体試料中の前記複数のバイオマーカーの第2比率に基づいて、第2臓器損傷の第2サブタイプを決定する工程、
前記第1臓器損傷の第1サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を阻害するのに有効な少なくとも1つの治療アンタゴニスト、又は前記第1臓器損傷の第1サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を促進するのに有効な少なくとも1つの治療アゴニストを投与する工程、及び、
前記第2臓器損傷の第2サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を阻害するのに有効な少なくとも1つの治療アンタゴニスト、又は前記第2臓器損傷の第2サブタイプに応答して放出されるタンパク質の活性を促進するのに有効な少なくとも1つの治療アゴニストを投与する工程、を含む、方法。
【請求項32】
前記タンパク質が、カルパインである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質が、カスパーゼ−3である請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記複数のバイオマーカーが、前記第1臓器及び前記第2臓器の少なくとも1つの損傷に関連する細胞分解産物である請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記損傷が、衝撃性損傷または脳卒中である請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記治療アンタゴニストが、ジサイクロミンである請求項31に記載の方法。
【請求項37】
対象体の外傷性脳損傷を診断し、治療するための方法であって、
1以上のスペクトリン分解産物に対する対象組織または流体をアッセイする工程、及び、
ジサイクロミンを投与する工程を含む、方法。
【請求項38】
前記外傷性脳損傷が、脳卒中である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記外傷性脳損傷が、虚血性脳卒中である請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記外傷性脳損傷が、衝撃性脳損傷である請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−511301(P2011−511301A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545969(P2010−545969)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/033080
【国際公開番号】WO2009/100131
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(510212823)バンヤン・バイオマーカーズ・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】