説明

脳機能改善組成物

【課題】 様々な医薬品などが痴呆やアルツハイマー病の治療や予防に使用され、開発研究されているが、まだ満足するような医薬品は開発されておらず、また、副作用を誘発することや医療費の削減ため、最近では、医薬品による治療よりは食生活を通じて病気の予防、改善、遅延、又は治療効果のある機能を持った成分又は食品成分に対する研究も注目されるようになってきている。本発明は、幅広い飲食品や医薬品に使用可能な痴呆、アルツハイマー症候群等、の予防、改善、遅延、又は治療する脳機能改善組成物及びそれを含有する飲食品及び医薬品を提供することを目的とする。
【解決手段】 アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有させることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする脳機能改善組成物及びそれを含有する飲食品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会となり、身体能力の衰えた老人の介護などあるが、豊か老後を送る上で最も問題となっているのが痴呆症、アルツハイマー病であり、根本的な治療法が確立されていない。そしてこの痴呆には大きく分けると脳梗塞などによる脳血管障害が原因で起こる「脳血管性痴呆」と、まだ原因の不明の、脳が萎縮する「アルツハイマー型痴呆」の二つがあり、この二つの症状を併せ持った「混在型痴呆症」と呼ばれる三つのタイプがある。このうち日本人には脳血管性痴呆が多く、欧米人の痴呆の半数以上はアルツハイマー型である。この違いは食習慣によるもののほか、遺伝的な要因も多いと言われている。いまだその原因が不明なアルツハイマーだが、加齢、遺伝子、環境因子等が働いていると推定されている。正常な脳内にはペプチドの新陳代謝に関係するプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)が存在する。PEP(EC 3.4.21.26)は、プロリンを含むペプチドのプロリンのカルボキシル側を特異的に切断する酵素で、記憶にも関与していると考えられている神経ペプチド、バソプレッシンを分解、不活性化する。脳機能関連ペプチドの分解が異常に亢進されると脳機能に変調を引き起こすことが報告されている。近年、アルツハイマー型痴呆とPEPとの関係が取りざたされ、アルツハイマー型痴呆症の患者の脳内にはPEPが多量に存在することが報告されている。実際、多くの合成PEP阻害剤によってラット、マウスを用いた実験で抗健忘作用を示すことが報告されている。そこで、PEP阻害剤が抗痴呆活性を有することが期待されている。
【0003】
現在、抗痴呆薬の根本的な予防治療薬はないが、痴呆によって起こる周辺症状を改善させる薬として、ハロペリドールなどの抗精神病薬、抗痴呆薬として、アセチルコリンを分解する酵素・アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害し、アセチルコリンの分解を防ぎ脳内での量を増やすことで、症状を改善するという治療法のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬のアリセプトという塩酸ドネペジルとタクリンがある。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬以外ではムスカリンM1受容体作動薬のタルサクリジン、コリン取り込み促進薬、ソマトスタチン遊離促進薬、ニューロトランスミッター調整薬のネフィラセタム、アセチルコリン・ノルアドレナリン遊離促進薬などの開発が進められている。これら以外にも、アルツハイマー予防、治療薬として記憶にかかわる神経ペプチドに作用するプロリルエンドペプチダーゼ阻害薬、神経成長因子(NGF)などの成長因子合成促進薬のネオトロフィン、さらに、NGFなどの遺伝子を組み込んだ細胞を脳内に投与する遺伝子治療の研究も注目されている。その他、老年斑構成成分であるアミロイドβ蛋白の産生に関与するセクレターゼの阻害薬、アミロイドβ蛋白ワクチン、タウプロテインキナーゼ1阻害薬、エストロゲン、シクロオキシゲナーゼ(COX)−2阻害薬、H3受容体アンタゴニスト、NMDA受容体モジュレータなどの研究も進められている。
アセチルコリンの減少もアルツハイマーの結果であってアルツハイマーの原因ではなく、アルツハイマー病を根本的に抑制する治療薬ではないため、飲むのをやめると元の症状に戻ってしまうという問題がある。
【0004】
このような抗痴呆薬などが痴呆やアルツハイマー病の治療や予防に使用され、開発研究されているが、まだ満足するような医薬品は開発されておらず、また、副作用を誘発することや医療費の削減ため、最近では、医薬品による治療よりは食生活を通じて病気の予防、改善、遅延、又は治療効果のある機能を持った成分又は食品成分に対する研究も注目されるようになってきている。
食品成分としては、蕎麦種子の抽出物または、プロポリス又はその抽出物(例えば、特許文献1参照。)、米糠の発酵物(例えば、特許文献2参照。)、コメアルブミンペプチド(例えば、特許文献3参照。)、蕎麦種子抽出物(例えば、特許文献4参照。)等の素材が知られているが、脳機能改善に関する報告は無い。
【0005】
【特許文献1】特開2003−335689号公報(第2−5頁)
【特許文献2】特開2002−265377号公報(第3頁)
【特許文献3】特開2001−64197号公報(第3頁)
【特許文献4】特開2000−53575号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、幅広い飲食品や医薬品に使用可能な痴呆、アルツハイマー症候群等、の予防、改善、遅延、又は治療する脳機能改善組成物及びそれを含有する飲食品及び医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは様々な天然植物を利用して脳機能改善組成物を捜す目的で、多角的に研究検討した結果、多角的に研究検討した結果アムラーの抽出物に優れた脳血管障害の予防をする効果があることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明で得られたアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する脳機能改善組成物は、PEP活性阻害の効果試験結果から、PEP活性を阻害する効果が高いことがわかった。
特にアムラーは、昔から人間が日常食生活に使用してきた天然植物由来なので、従来使用していた薬剤とは違い、副作用が無く安全である。
本発明はアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する脳機能改善組成物を各種飲食品及び医薬品等に利用して、アルツハイマー症の進行を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明に用いるアムラーとは、学名:エンビリカ・オフィシナル(Emblica officinale)又は、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus embilica)といい、トウダイグサ科コミカンソウ属に属する落葉の亜高木であり、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。また、各地方又は言語により、各々固有の名称があり、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン、アーマラキー、マラッカノキ、マラッカツリー、インディアングーズベリー、アロンラ、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ、ネリカイ、ネルリ、タシャ、カユラカ、ケムラカ、ナックホンポン等とも称されている。
【0010】
本発明において、アムラーの部位としては、果実が用いられる。その形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実、果汁、果汁粉末等のいずれでも良い。
果汁又は果汁粉末の場合は、そのままでも使用できるが、生果実又は乾燥果実等、水不溶性成分を含む物を使用する場合は、抽出により、水不溶性成分が除去されていることが好ましい。
抽出の際、生果実を使用する場合は、種子を除去した後、水を添加又は無添加で、抽出効率を高めるためにミキサー等により破砕、均質化したものを用いることが好ましい。
乾燥果実を使用する場合は、抽出効率を高めるために40メッシュ以下の粒度になるように粉砕されていることが好ましい。
【0011】
抽出方法は、抽出溶媒、抽出温度等、特に限定されるものではなく、抽出溶媒としては、水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンを使うことができる。親水性溶媒はメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール群より選ばれる1種類以上が操作性、抽出効率の点から好ましい。特に好ましくは、水、塩基、酸のいずれかである。
酸又は塩基を抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させることが好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除くことができる。水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もないため、水を用いることが更に好ましい。
この時使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使うことができるが、好ましくは、入手しやすい及び操作性点により塩酸、硫酸より選ばれる1種又は両者の併用である。
また、塩基としては、特に限定するものではなく、大部分の塩基を使うことができるが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムより選ばれる1種又は両者の併用である。
抽出に使用される酸又は塩基の濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではなく、酸又は塩基の強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の点より、0.01〜0.5モルの濃度を使用することが好ましい。
【0012】
上記の抽出において、酵素処理することによって収率や風味の改善ができるので、酵素処理をすることは好ましい。酵素処理する時のpHは使用する酵素の至摘pH及びpH安定性を指標に適宜選択できる。また、処理する時の温度に関しても酵素の至摘温度及び温度安定性を指標に適宜選択できる。本発明の酵素処理に使用する酵素は限定するものではないが、食品工業用に用いるものであれば、特に限定するものではなく、ペクチナーゼ、セルラーゼ、へミセルラーゼ、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトトリオヒドロラーゼ、β−アミラーゼ、トランスグルコシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルタミナーゼ、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、デキストラナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラクターゼ、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、プルラナーゼ、トリプシン、パパイン、レンネット、ホスホリパーゼA2等より選ばれる1種類または2種類を併用することができる。好ましくは、ぺクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、タンナーゼより選ばれる1種類または2種類を併用することができる。酵素の使用量は特に限定するものではないが、酵素の種類や反応条件によっても異なるが、アムラに対して0.05〜2%使用するのが好ましい。更に、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回又はそれ以上繰り返すことで、抽出率が向上し、収率が向上するので、好ましい。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じでも良いし、別の溶媒を用いても良い。
【0013】
上記の果汁又は抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留により、不溶性物質及び溶媒を取り除くことにより、PEPの活性阻害効果が高くなり、応用範囲も広がるので好ましい。
不溶性物質及び溶媒を取り除いた後、果汁又は抽出液をそのまま又は濃縮した後に親水性溶媒又は疎水性溶媒用いて分配を行い、それぞれの溶媒可溶画分を得る。これら溶媒可溶画分は、更に脳機能改善効果が高くなるので好ましい。親水性溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコールが使用でき、疎水性溶媒としては酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン又はクロロホルムが使用できる。また可溶画分の純度を上げる為には、他の疎水性溶媒による分配を組み合わせることもできる。これら溶媒の濃度としては、特に限定するものではないが、収率及び効果の点より、終濃度として10〜90%が好ましく、20〜80%が更に好ましい。
さらに純度を高める為に、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系など母体とした疎水性樹脂を用いることも可能である。その場合、樹脂吸着後の溶離液としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール及びアセトンを単独又は水溶液として使用できる。
抽出物及び画分はそのままでの使用も可能だが、必要であれば噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能である。
【0014】
PEPは通常、大脳の海馬部分に多く存在し、サブスタンスPやニューロテンシンと呼ばれる神経伝達物質や、学習や記憶に関与しているバソプレッシンという神経ホルモンを分解する作用があり、健忘症患者ではPEPの活性が高く、PEPが働きすぎてバソプレッシンが少ないことがわかっている。このため、PEPを阻害することが脳機能改善に有効であるといえる。
本願発明において脳機能改善効果は、例えば、PEPのエステラーゼ作用により、基質から遊離されるp−NA(パラニトロアニリン)の吸光度を測定することによりPEP活性阻害率を求める方法を指標とすることができ、PEP活性阻害率の増加より、脳機能改善効果を確認することができる。
【0015】
本願発明の脳機能改善組成物は、飲食品、医薬品、飼料等に応用でき、好ましくは、人が手軽に摂食できる飲食品又は医薬品が好ましい。
本願発明における飲食品とは溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等経口摂取可能な形態であれば良く特に限定するものではない。より具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等が例示される。
【0016】
本願発明の脳機能改善組成物の飲食品としての摂取量は、本発明の病気の状態、病人の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、一般に1日あたり、脳機能改善組成物として0.05g〜20g、好ましくは0.1g〜5gの範囲で適宜選択することができる。これを病気の状態や食品等の形態によって1日1ないし数回にわけて摂取することができる。
【0017】
本願発明において、脳機能改善組成物又は、飲食品等に加工する際に、各種栄養成分を強化することができる。
強化できる栄養成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の1種又は2種以上が使用できる。
【0018】
本願発明における医薬品とは、経口または非経口投与に適した賦形剤、その他の添加剤を用いて、常法に従って、経口製剤または注射剤として調製することができる。好ましいのは、経口製剤であり、最も好ましいのは、容易に服用でき且つ保存、持ち運びに便利な経口固形製剤である。
経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固形製剤においては、適宜の薬理学的に許容され得る坦体、賦形剤(例えばデンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例えばデンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピリドンなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(例えばカルボキシメチルセルロース、タルクなど)、などと混合し、常法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等を調整することが出来る。経口液状製剤は、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与しての注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保管フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
本願発明の脳機能改善組成物の医薬品としての投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1人当たり有効成分約1〜500mg/日、好ましくは10〜200mg/日である。
【0019】
以下本発明を、実施例にて詳細に説明するが、次の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0020】
(実施例1)脳機能改善組成物の調製1
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせた後、凍結乾燥し、本願発明の脳機能改善組成物A35.0gを得た。収率は43.8%であった。
【0021】
(実施例2)脳機能改善組成物の調製2
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを入れ、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを入れ、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせて、減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液にエタノールを加え、250mLになるように調製(最終エタノール濃度20%)した後、4℃で24時間静置後、不溶性成分を沈殿させた。沈澱物を遠心分離で分離除去し、上清を減圧濃縮後、蒸留水1Lに再溶解し、濾過して不溶性成分除去後、濾液を凍結乾燥して本願発明の脳機能改善組成物B13.6gを得た。
同様にして、エタノールの終濃度が40%、60%、80%にして、本願発明の脳機能改善組成物C20.8g、D21.2g、E12.5gを得た。
【0022】
(実施例3)脳機能改善組成物の調製3
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを入れ、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを入れ、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせて、減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液に酢酸エチルを加え、500mLになるように調製(最終酢酸エチル濃度60%)した後、4℃で24時間静置後、酢酸エチル層を分離し、減圧濃縮後、濾液を凍結乾燥して本願発明の脳機能改善組成物F12.5gを得た。
【0023】
(実施例4)脳機能改善組成物の調製4
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末100gに、蒸留水2Lペクチナーゼ0.1g及びタンナーゼ0.1gを加え、55℃で2時間抽出した。その後、90℃で30分間酵素失活させた。その後、濾過し、濾液をスプレードライし、本願発明の脳機能改善組成物G45gを得た。
【0024】
(比較例1)PEP活性阻害の確認−1
実施例1で得られた脳機能改善組成物A、実施例2で得られた脳機能改善組成物B、実施例3で得られた脳機能改善組成物F、実施例4で得られた脳機能改善組成物G並びにビタミンCを蒸留水で希釈して、試料濃度は1.0mg/mLとした。40%ジオキサン溶液に溶解した2mM Z−Gly−Pro−pNA基質(生化学工業社製)125μLに0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)1.0mLを加え、さらに各濃度調整した試料125μLを加えて30℃で5分間インキュベーションした。インキュベーション後に、0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液に溶解したフラボバクテリウム属(Flavobacterium meningoseepticum)由来のPEP(0.2U/mL、生化学工業社製)100μLを加え、30℃で10分間インキュベーションした。その後、1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)に溶解したTriton X−100溶液2.0mLを加えることにより酵素反応を停止させた。PEPのエステラーゼ作用により、基質から遊離されるp−NA(パラニトロアニリン)の吸光度を410nmの吸光度を測定し、各々の吸光度の測定値を下式に代入することによりPEP活性阻害率を算出した。尚、コントロールとして試料の代わりに蒸留水を使用した。その結果を図1に示した。

PEP活性阻害率=(コントロールの吸光度の測定値−試料の吸光度の測定値)/(コントロールの吸光度の測定値)×100
【0025】
図1の結果により、本願発明の脳機能改善組成物は、ビタミンCより高いPEP活性阻害率を示すことが確認できた。
【0026】
(比較例2)PEP活性阻害の確認-2
実施例2で得られた脳機能改善組成物Eを蒸留水で希釈して、0(蒸留水のみ)、0.2、0.5、0.7、1.0mg/mlの試料濃度とし、試験例2と同様方法でPEP活性阻害効果を確認した。その結果を図2に示した。
【0027】
図2の結果により、本願発明の脳機能改善組成物の濃度を増加させることによって濃度依存的にPEP活性の阻害効果も増加することが確認できた。
【0028】
(実施例4)脳機能改善組成物含有飲料の調製
ブドウ糖528g、果糖85.4g、粉末クエン酸15.8g、クエン酸ナトリウム11.2g、乳酸カルシウム1.3g、塩化マグネシウム1.3g、粉末天然香料13.2g、ビタミンCおよび実施例1で得られた脳機能改善組成物A5.5gに水を加えて11Lとし、乾熱減菌済110mL褐色ビンに100mLずつ充填、アルミキャップで密封後、120℃、30分間殺菌を脳機能改善組成物含有飲料100本を得た。
【0029】
(実施例5)脳機能改善組成物含有野菜果汁混合飲料の調製
実施例2で得られた脳機能改善組成物B1g及び、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)3gを市販の野菜果汁混合飲料100mLに添加混合溶解して、本願発明の脳機能改善組成物含有野菜果汁混合飲料を得た。
【0030】
(実施例6)脳機能改善組成物含有乳酸菌飲料の調製
15%脱脂乳に3%グルコースを添加し、120℃で3秒殺菌した後、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)を1%接種し、37℃でpH3.6まで培養してヨーグルト210gを得た。一方、砂糖100gに、実施例2で得られた脳機能改善組成物C1gに水を加えて790gにし、110℃で3秒の殺菌を行ってシロップを得、得られたヨーグルトとシロップを混合し、香料を添加した後、均質化(150kg/cm)し、容器に充填して脳機能改善組成物乳酸菌飲料を得た。
【0031】
(実施例7)脳機能改善組成物含有食品(錠菓)の調製
実施例2で得られた脳機能改善組成物D50g、乳糖30g、DHA含有粉末油脂(サンコートDY−5;太陽化学株式会社製)12g、ショ糖脂肪酸エステル4g、ヨーグルト香料4gを混合し、1錠が300mgになるように打錠して、本願発明の脳機能改善組成物含有飲食品(錠菓)を得た。
【0032】
(実施例8)脳機能改善組成物含有クッキーの調製
実施例2で得られた脳機能改善組成物E4g及び、市販のケーキミックス粉200gを容器に入れた後、バター35gを入れ、木杓子で混ぜ合わせた。それに溶き卵25gを加えて、生らかな生地になるまで良く練った。小麦粉を振った台の上に生地を取り出し、さらに小麦粉を振って麺棒で5mmの厚さに伸ばし、丸型で抜き、それを170℃のオーブンで10分間焼いて、1個約5gの本願発明の脳機能改善組成物含有クッキーを得た。
【0033】
(実施例9)脳機能改善組成物含有錠剤の調製
実施例3で得られた脳機能改善組成物F20g、結晶セルロース10g、トウモロコシデンプン27.5g、乳糖65g、ヒドロキシプロピルセルロース6.5gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム2.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して一錠が130mgの本願発明の脳機能改善組成物含有錠剤を得た。
【0034】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下の通りである。
(1) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする脳機能改善組成物。
(2) アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から水、塩基、酸、親水性溶媒のいずれかにより抽出されていることを特徴とする前記(1)記載の脳機能改善組成物。
(3) アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から水により抽出されていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の脳機能改善組成物。
(4) アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から酵素処理により抽出されていることを特徴とする前記(1)〜(3)いずれか記載の脳機能改善組成物。
(5) アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁からぺクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、タンナーゼより選ばれる1種類または2種類を併用する酵素処理により抽出されていることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載の脳機能改善組成物。
(6) アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から、親水性溶媒もしくは疎水性溶媒により分画されていることを特徴とする前記(1)〜(5)いずれか記載の脳機能改善組成物。
(7) アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から、エタノールにより抽出し、エタノール可溶分画を特徴とする前記(1)〜(6)いずれか記載の脳機能改善組成物。
(8) エタノールで分画する際のエタノール濃度が、終濃度として10〜90%であり、そのエタノール可溶化成分であることを特徴とする前記(7)記載の脳機能改善組成物。
(9) エタノールで分画する際のエタノール濃度が、終濃度として30〜75%であり、そのエタノール可溶化成分であることを特徴とする前記(7)又は(8)記載の脳機能改善組成物。
(10) アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から、酢酸エチルにより抽出し、酢酸エチル可溶分画を特徴とする前記(1)〜(5)いずれか記載の脳機能改善組成物。
(11) 酢酸エチルで分画する際の酢酸エチル濃度が、終濃度として30〜90%であり、その酢酸エチル可溶化成分であることを特徴とする前記(10)記載の脳機能改善組成物。
(12)酢酸エチルで分画する際の酢酸エチル濃度が、終濃度として50〜80%であり、その酢酸エチル可溶化成分であることを特徴とする前記(10)又は(11)記載の脳機能改善組成物。
(13)脳機能改善効果がPEP活性阻害であることを特徴とする前記(1)〜(12)いずれか記載の脳機能改善組成物。
(14) 前記(1)〜(13)いずれか記載の脳機能改善組成物を含有することを特徴とする飲食品。
(15) 前記(1)〜(13)いずれか記載の脳機能改善組成物を含有することを特徴とする医薬品。
(16) 前記(1)〜(13)いずれか記載の脳機能改善組成物を含有することを特徴とする飼料。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明で得られたアムラー抽出物を含有する脳機能改善組成物は、PEP活性阻害の試験結果から、PEP活性の阻害する効果が高く、各種飲食品及び医薬品等に利用して、アルツハイマー症の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】脳機能改善組成物A、B、F、GまたはビタミンCを1.0mg/mL添加した時のPEP活性阻害率を示す。
【図2】脳機能改善組成物Eを0(蒸留水のみ)、0.2、0.5、0.7、1.0mg/mLに希釈して添加した時のPEP活性阻害率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする脳機能改善組成物。
【請求項2】
アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンのいずれかにより抽出されていることを特徴とする請求項1記載の脳機能改善組成物。
【請求項3】
アムラー果実、果汁又はそれら抽出物を酵素処理したことを特徴とする請求項1又は2記載の脳機能改善組成物。
【請求項4】
親水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの群より選ばれる1種類以上の低級アルコールであることを特徴とする請求項1又は2記載の脳機能改善組成物。
【請求項5】
アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から親水性溶媒もしくは疎水性溶媒のいずれか1種類又は2種類以上により分画されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の脳機能改善組成物。
【請求項6】
疎水性溶媒が酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、又はクロロホルムからなる群より選ばれる少なくともの1種類であることを特徴記載の脳機能改善組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の脳機能改善組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか記載の脳機能改善組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−28091(P2006−28091A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209338(P2004−209338)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】