腎神経ブロッキング方法及び装置
【課題】神経への選択された薬剤の送達を標的化し、周囲組織への薬剤の放散を減少させ、装置に貯蔵される薬剤の量を減少させ、装置の詰め替え又は取替え間の時間間隔を増加させることによって腎神経を効果的にブロックする新規な方法及び埋め込み可能な装置を提供する。
【解決手段】腎神経信号を腎臓との間でブロックするための装置を埋め込むことによって、高められた交感腎神経活性に関連する心臓疾患及び腎臓疾患を処置するための方法及び装置である。装置は、腎動脈の動脈周囲スペースへの神経ブロッキング剤の標的化された送達のための薬剤ポンプ(105)又は薬剤徐放埋設物とすることができる。
【解決手段】腎神経信号を腎臓との間でブロックするための装置を埋め込むことによって、高められた交感腎神経活性に関連する心臓疾患及び腎臓疾患を処置するための方法及び装置である。装置は、腎動脈の動脈周囲スペースへの神経ブロッキング剤の標的化された送達のための薬剤ポンプ(105)又は薬剤徐放埋設物とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所薬物送達装置及び方法に関し、特に、腎神経叢をブロッキングする目的で腎動脈の動脈周囲スペースに神経ブロッキング剤を標的送達するための埋め込み可能なシステム、これを埋め込む方法、並びに、疾患を処置するための方法及び装置に向けられている。本発明は、神経へ神経ブロッキング剤を誘導して、周囲組織における薬剤の放散を防止し、周囲組織における薬剤送達機構の固定化を与える。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2003年4月8日に米国特許商標局(USPTO)に出願された「Renal Nerve Stimulation Method And Apparatus For Treatment Of Patients」と題する第60/408,665号、及び、2002年4月8日に米国特許商標局(USPTO)に出願された「Modulation Of Renal Nerve To Treat CHF」と題する米国特許仮出願第60/370,190号、2002年10月3日にUSPTOに出願された「Modulation Of Renal Nerve To Treat CHF」と題する第60/415,575号、及び2003年1月29日にUSPTOに出願された「Treatment Of Renal Failure And Hypertension」と題する第60/442,970号に関連し、それらに基づく優先権を主張するものである。これらの出願の各々の全体を、引用によりここに組み入れる。
【背景技術】
【0003】
高血圧(HTN)及び鬱血性心不全(CHF)は、現代の心臓学における最も重要な問題である。これらの慢性疾患は、ほとんどの心臓血管の病的状態及び死亡状態の原因となり、多くの進歩にもかかわらず治療上の課題が残っている。HTN及びCHFの両方についての治療の基礎は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬及び利尿剤といった腎臓に対して直接的に又は間接的に作用する主に経口及び静脈内薬剤の使用を含み、各薬剤の使用量は病気の段階に依存する。薬剤治療は、HTN及びCHFの初期段階においては効果的であるが、これらの疾患の中間段階から最終段階に対する本当に効果的な薬剤処置は存在しない。
【0004】
HTN及びCHFは、多くの異なる初期原因を有する。初期原因に関係なく、この両方の疾患は、主に腎神経の過剰な活性の結果として、それらの末期疾患に進む際に共通の経過をたどる。腎神経除去は、HTNをコントロールし、症状を改善し、CHFの進行を遅らせることができる、一般に容認された動物モデルにおいて示されている。しかしながら、長期間の臨床上有用なヒトの腎神経活性のブロッキングを提供することができる薬剤又は装置治療は現在存在しない。腎神経除去の唯一の利用可能な臨床的方法は、侵襲的な外科処置であり、腎臓は速く再生するため、技術的に難しく使用が限られている。
【0005】
本発明の特に有意な点は、心筋梗塞(MI)後の多くの患者において発現するCHF状態である。冠動脈疾患は、鬱血性心不全の原因のおよそ70%である。冠動脈の閉塞による急性MIは、最終的に心不全を招きうる一般的な誘発事象である。これが起こるプロセスは、リモデリングと呼ばれ、Heart Disease 第5版、E.Braunwald、Ch.37(1997)のテキストに記載されている。心筋梗塞後のリモデリングは、左心室の大きさ、形状及び厚さへの2つの別個のタイプの物理的変化に関係する。第1に、梗塞拡張として知られるものは、梗塞域の心筋の局所的な薄化及び伸びに関係している。この心筋は、梗塞の重度さに応じて機能障害の進行した段階に進むことがある。これらの段階は、下にある心筋壁の動きの異常を表し、初期同調性異常(initial dyssynchrony)、その後の運動低下症、無動症、そして最終的には、結果として左心室の動脈瘤、運動異常につながるケースを含む。この運動異常は、収縮期の間に梗塞域の膨らみが外方に出っぱる一方で、左心室の残りの部分が内方に引っ込むことから、「逆」運動と呼ばれている。結果として、運動異常の心臓の収縮末期容量が非運動異常の心臓に比べて増大する。
【0006】
左心室のリモデリングの第2の物理的特徴は、運動亢進状態となり、ひどく拡張して、左心室がより球形状になることによって、閉塞領域の心筋による非梗塞領域の埋め合わせが試みられることである。これは、梗塞形成後の1回拍出量を保つ一助となる。これらの変化は、左心室の心筋の壁応力を増大させる。壁の張力は、左心室のリモデリングを促す最も重要なパラメータの1つであると考えられる。増大した壁の張力又は応力に対応して、さらなる心室肥大が起こる。したがって、肥大がさらなる肥大を招き、より大きな機能障害を招くという悪循環がもたらされることがある。細胞レベルでも好ましくない適応が起こる。これはさらに、機能低下をひどくする。
【0007】
ノザワタカシ他は、Heart Vessels(2002)16:51−56 Springer−Verlagにおいて発表された「Effects of long−term renal sympathetic denervation on heart failure after myocardial infarction in rats」において腎神経除去の効果を報告している。ラットでは、冠動脈レガーションによって、MIが誘発される2日前に両側腎神経が外科的に神経除去(切断)(RD)された。4週間後に、左室(LV)機能及びナトリウム排泄を測定した。MIラットでは、RDは、ナトリウム排泄の減少を改善した。MI RDラットは、MI神経支配(INN)ラットに比べて低いLV拡張末期圧力及び高い最大dP/dtを示した。LV拡張末期及び収縮末期ディメンションはかなり小さく、LVの部分的短縮はMI RDラットにおいてMI INNラットよりも大きかった。
【0008】
本発明者らは、同時係属出願において腎神経の可逆性の最小侵襲モジュレーションのための新規な方法及び装置を説明している。この出願は、新規な薬物送達方法及び統合された生理学的薬物送達方法と、現在利用可能なものよりも非常に効果的な、HTN及びCHFを処置する目的で腎神経をブロッキングする方法を提供する感知システムを説明するものである。本発明の目的は、1)最小の侵襲形式で配置することができ、2)患者及び医師による介入の要求が最小であり、患者の順守度を大きく増してこれらの全体的な治療効果を高めることになる、少なくとも1つの腎臓の腎神経活性をブロックする十分に埋め込み可能な装置である。さらに、HTN及びCHFのために、この方法は、慢性腎不全の進行を遅らせる、及び、常習的な腎臓透析を要求する患者数を減らすといった、他の主な疾患にも適用可能である。
【0009】
ヒトの神経ブロッキングは、ほとんどが、局所麻酔及び疼痛管理の分野で知られており、実施されている。一般的な麻酔として用いられている化合物は、意識の低下をもたらすことによって疼痛を減少させるが、局所麻酔は、身体の局所的な投与領域における感覚を失わせることによって作用する。局所麻酔がそれらの効果を生じる機構は、決定的に判明しているわけではないが、一般に、神経インパルスの開始及び伝達を局所的に妨害できること、例えば、腎組織の局所領域における脱分極波の開始及び/又は伝播を妨害することに基づいていると考えられる。局所麻酔の作用は一般的なものであり、神経伝導、例えば細胞膜の脱分極が起こる組織が、これらの薬剤による影響を受ける。したがって、感覚機能及び運動機能の両方を仲介する神経組織は、局所麻酔薬によって同様の影響を受ける。神経毒は、神経組織に極めて少量適用されたときに、神経を、局所麻酔薬で達成される時間を大きく上回る長時間にわたってブロックすることができる化学物質である。それらはまた、局所麻酔薬よりも患者に対して毒性があり、潜在的により危険である。
【0010】
局所麻酔薬の投与のための従来技術における異なる装置及び処方が知られている。例えば、局所麻酔薬は、注入、注射、浸潤、灌注、局所的などの手段によって、溶液又は懸濁液で送達することができる。注入又は注射は、緊急に行うことができ、又は、長期の局所的な作用が望まれる場合には、重力点滴又は輸液ポンプにより局所麻酔薬を連続的に投与することができる。したがって、ブピバカインといった局所麻酔剤は、例えば、長期の硬膜外又は髄腔内(脊椎)投与といった連続注入によって投与される。疼痛の持続的管理のために、十分に埋め込み可能なポンプが提案され実施されている。これらのポンプは、特定の量の薬剤を貯蔵することができ、医師が定期的にこれを詰め替えることができる。数人の執筆者が、疼痛及び筋痙攣管理のための、埋め込み部位で麻酔薬をゆっくりと放出する、薬剤徐放埋設物を提案している。
【0011】
局所麻酔薬の作用の持続時間は、神経組織と実際に接触する時間に比例する。したがって、神経における薬剤の局所化を維持する処置又は処方が、麻酔作用を大いに持続させる。局所麻酔薬は、局所的吸収と全身的吸収との両方により潜在的に毒性があり、それでもなお、局所的な疼痛を十分な時間にわたって鎮静するのに充分なだけ長く存在していなければならない。したがって、それらを腎神経のブロックに適用することを検討するときには、薬剤の選択、薬剤の濃度、並びに、薬剤の投与速度及び投与部位といった因子を考慮することが非常に重要である。Charles Berdeは、「Mechanisms of Local Anesthetics」(Anesthesia、第5版、R.D.Miller著、Churchill−Livingstone、Philadelphia、2000、p491−521)において、慣習的方法で送達されたときに、局所麻酔薬の全量のほんの1−2%が、いずれ神経に到達すると明記している。薬剤の残りは、薬剤を神経に向かわせるのではなく運び去る血液循環によって放散される。したがって、本発明の目的は、神経へと向かう薬剤の量を最大にして、最小量の薬剤で効果的な腎神経ブロックが達成されるようにすることである。
【0012】
理論的には、ヒトの腎神経をブロックするために、Medtronic Inc.(ミネソタ州ショアビュー)によって製造されたSyncromedポンプのような適切な市販の埋め込み可能な薬剤ポンプを用いることができる。ポンプは、ブピバカインのような一般的な市販の局所麻酔薬溶液を、付属のカテーテルを介して腎神経周囲組織に送達することができる。実行可能ではあるが、こうした腎神経ブロックの実施形態は、実用上の制限をもつことになる。末梢神経をブロックするために(例えば、一般的に行われる上腕神経叢ブロックのために)、医師は、従来技術を用いて典型的には10−50mlのブピバカイン又は同様の麻酔薬を標的神経周囲組織に浸潤させる。これは通常、感覚信号及び運動信号の両方の2乃至6時間に及ぶ適切なブロッキングを達成する。Marcaine又はSensorcaineとして販売されている市販のブピバカインは、0.25乃至0.1%の濃度で入手可能である。末梢神経(単一神経)ブロックのためには、0.5乃至0.75%の濃度が典型的に用いられる。なぜ局所麻酔薬がそのように希釈されるかについては幾つかの理由がある。ブピバカインのようなアミノ酸化合物は、局所的(刺激がある)及び全身的(心臓を抑圧する)の両方において毒性がある。局所麻酔薬は、特定の最小濃度以下では有効ではなくなり、特定の最大濃度以上では有害となることが一般に認められている。
【0013】
埋め込み可能な薬剤ポンプは、一般に、30乃至50mlの内部薬剤貯蔵リザーバを装備している。より大きいリザーバも可能であるが、埋設物の物理的及び臨床的容認性に対し大きな制約を課す。患者の腎神経の連続(終日7日間)ブロックが望まれ、通常の末梢神経ブロッキング技術が用いられる場合には、埋め込まれたポンプリザーバは、毎日或いはさらに頻繁に詰め替えられる必要がある。ポンプの詰め替えには皮膚の穿孔を伴い、痛みを引き起こし、局所的及び全身的感染の恐れをもたらすため、これは可能ではあるが実用的ではない。また、大量の薬剤の毎日の注入は、特に患者の心臓が弱い場合、患者の健康を重大に脅かす恐れがある。とりわけ、同じ薬剤のブピバカインは、患者の脊椎の標的神経組織に直接送達されるときには非常に少ない投与量で有効性がある。例えば、有効な髄腔内(脊椎)疼痛ブロックは、2−5mlのブピバカインで達成することができる。この観察は、神経組織への同薬剤のより標的化された送達は、神経ブロッキングに必要とされる薬剤の量を10倍又はそれ以上減らすことになることを示している。
【0014】
したがって、本発明の目的は、神経への選択された薬剤の送達を標的化し、周囲組織への薬剤の放散を減少させ、装置に貯蔵される薬剤の量を減少させ、装置の詰め替え又は取替え間の時間間隔を増加させることによって腎神経を効果的にブロックする新規な方法及び埋め込み可能な装置を提供することである。本発明の目的はまた、腎神経ブロックの有効性をテストできるようにし、連続ブロックが望まれない臨床上のシナリオにおいて腎ブロックを自動的に、間欠的に及び/又は周期的に実行することである。
【発明の概要】
【0015】
実験動物の腎臓の外科的神経除去は、心臓病及び腎臓病の患者にとって多くの即時的及び長期的利点を示した。ほとんどの大きな潜在的に有益な効果は、CHFの進行を遅らせること、誘導又は利尿の強化によるCHF中の流体オーバーロードの消散、心筋梗塞後のリモデリングの減少、高血圧症の減少、及び慢性腎疾患が透析に進行するのを遅らせることである。血管の血管収縮を引き起こす全身的な交感神経の緊張の減少、心臓に対する負荷の減少、及び腎臓に対する直接的な神経除去効果を介して達成される。単一腎神経除去及び両側神経除去の両方に潜在的な利点がある。疼痛を管理するために動物及び少数のヒトに外科的神経除去がこれまで行われてきた。これは大手術を要求し、腎神経が結局は成長して元に戻るので長期間有効ではない。さらに、外科的神経除去の後、腎神経が異常な方法で再成長することがあり、痛みや他の深刻な副作用を引き起こすことがある。神経除去部位における線維性変化が外科的神経除去の繰り返しを不可能にするため、患者は疼痛を管理するために腎臓の摘出の可能性に直面する。
【0016】
本発明者らは、最小限に侵襲的な腎神経モジュレーションによって患者の腎神経の活性を低下させ又はブロッキングする代替的方法を提案する。腎神経モジュレーションは、腎臓の腎動脈の動脈周囲スペースへの神経ブロッキング剤の制御された注入によって達成される。動脈周囲スペースは、腎動脈及び静脈周囲領域であり、大動脈から大静脈へと延び、腎臓自体の周囲領域を含む。腎神経は腎動脈の外面に従うため、この動脈周囲スペースに有効濃度の神経ブロッキング剤が存在するときには、腎神経活性が実質的に低下し又は停止する。腎神経を連続的及び間欠周期的の両方でブロッキングするための方法及び装置が提案されている。これらの方法及び装置は、これまで用いられていた外科的神経除去を特徴付ける大手術及び神経への取り返しのつかない損傷を回避しながら、臨床上適切な持続時間にわたって有効な可逆的神経ブロッキングを提供する。
【0017】
好ましい実施形態の装置は、埋め込み可能な薬剤ポンプ又は薬剤徐放埋設物とすることができる。両方の種類の局所薬剤送達装置は公知である。これまでは、局所麻酔薬を患者の脊椎に注入することによって疼痛管理するために、埋め込みポンプが上手く用いられてきた。埋め込み可能なポンプは、付属のカテーテルと共に皮膚の下に埋め込まれる単一リザーバ(ポート)からペースメーカーに類似の洗練されたマイクロプロセッサ駆動プログラマブル装置に至るまで多岐にわたる。産児調節剤を送達し、冠動脈の再狭窄を防止するために、薬剤徐放埋設物が用いられている。
【0018】
埋め込みポンプもまた、針を用いてアクセス可能な経皮的ポートを用いて、手術なしに薬剤を詰め替えることができるが、疼痛及び感染の恐れを最小にするために詰め替え間の時間を延ばすことが好ましい。プログラム可能な埋め込み型ポンプの実施形態はまた、遠隔通信リンクを用いて上下に調節することができる、周期的な薬剤送達の利点を有する。これは、連続的な一定の神経ブロッキングの結果として適応(生理的利得又は代償の休止)及び治療効果の損失を招くことになる、CHFのような慢性疾患の処置においては特に重要である。
【0019】
薬剤徐放埋設物は主に拡散によって作用する。薬剤徐放埋設物は、急性MI後の梗塞拡張のような一過性の状態の処置に有利であり、神経をおよそ30日間ブロックしてその後自己溶解する埋設物が本発明の最良の実施形態である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態及び最良モードが添付の図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の埋め込みポンプ実施形態を用いて処置された患者を示す図である。
【図2】腎神経モジュレーションの生理的機構を示す図である。
【図3】腎神経ブロッキング装置の解剖学的配置を示す図である。
【図4】カテーテル電極を備えた埋め込み可能な薬剤注入ポンプを示す図である。
【図5】腎脂肪パッドへの麻酔薬の注入を示す図である。
【図6】動脈周囲スペースへの分散された薬剤注入のためのカフを備えたカテーテルを示す図である。
【図7】動脈周囲スペースへの薬剤注入のための分岐カテーテルを示す図である。
【図8】動脈周囲スペースへの薬剤注入のためのコイル・カテーテルを示す図である。
【図9】動脈周囲スペースにおける薬剤徐放埋設物を示す図である。
【図9A】動脈周囲スペースにおける薬剤徐放生分解性材料を示す図である。
【図10】多孔性薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図11】組織の内成長を伴う薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図12】薬剤を腎神経に誘導する薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図13】腎動脈に重なり、薬剤注入液を腎神経に誘導する薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図14】図13に示されたカテーテル及び動脈の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
提案された臨床的使用のために、本発明にできることは、患者の腎臓及び心臓機能を改善する目的で、神経ブロッキング剤の制御された局所送達によって、腎臓の腎神経の交感神経活性をブロックすることである。本発明の要素は、心腎疾患を処置する以外の目的で神経をブロッキングするのにも有用であり、他の解剖学的位置に適用することもできる。
【0023】
神経ブロッキング剤は、腎神経による信号の伝達を減少させ又はブロックする薬剤である。使用される神経ブロッキング剤は、(1)局所麻酔薬、(2)ケタミン(神経ブロッキング特性をもつ周知の鎮静剤)、(3)アミトリプチリンのような三環系抗うつ薬、(4)テトロドトキシン及びサキシトキシンのようなニューロトキシン、(5)神経伝達を一時的に又は恒久的に、部分的に又は完全に変えるその他の族又は種類の薬剤を含む、異なる群から選択することができる。神経ブロッキング剤及び神経ブロッキング薬という用語は交換可能である。
【0024】
心腎疾患は、心臓と腎臓の両方に関係する慢性又は急性状態として定義される。心腎疾患の例は高血圧及びCHFである。心腎疾患は、腎神経の高い活性によって特徴付けられる。
【0025】
本発明の目的上、腎神経は、いずれかの個々の神経又は神経叢、及び、腎臓との間で神経信号を伝達する神経節として定義され、解剖学的には腎動脈の表面上、腎動脈が大動脈から分岐する部位の大動脈の一部、及び/又は腎動脈の分岐上に位置する。
【0026】
動脈周囲スペースは、腎動脈、腎静脈、及び大動脈と腎臓の門との間のそれらの分岐、のすぐそばを包囲するスペースとして定義される。腎脂肪パッドは、動脈周囲スペースを埋め、腎動脈、腎静脈、腎神経、及び腎臓自体を包囲する脂肪組織又は脂肪として定義される。腎筋膜は、腎動脈、腎静脈、腎脂肪パッド及び腎臓自体を包囲し、包み込み、収容する結合組織層である。
【0027】
埋め込み可能な又は埋め込み装置(一般に「埋設物」と呼ばれる)は、患者の体内に十分に封じ込められる人工装置である。埋設物は、患者の自然な皮膚が感染に対するバリヤとして働くようにすることが重要である。埋設物は、例えば、複合電気機械ポンプ、カテーテル及びポート、又は薬剤放出ポリマーとすることができる。埋め込みは、血管外、血管内又は上記のいずれかの組み合わせのいずれであるかに関係なく、開腹手術、最小限に侵襲的な手術、又は経カテーテル介入によって達成することができる。埋め込み処置の間、皮膚を横切って患者の体内に貫入するのに外科用器具又はカテーテルが用いられる。埋設物は所望の部位に配置され、該部位にアクセスするのに用いられた通路が閉鎖される。この部位が癒えれば、装置が十分に埋め込まれたことになる。
【0028】
埋め込み可能ポンプは、患者の皮膚の下に挿入される埋め込み可能装置であり、経皮的針アクセスを用いて詰め替えることができる。埋め込み可能ポンプは、一体型カテーテルを有することができ、又は、薬を動脈周囲スペースに送達する別個のカテーテルを装備することができる。所望の処置様式に応じて、好ましい埋め込み可能ポンプは、プログラム可能な、患者が制御する、又は一定速度の装置とすることができる。
【0029】
薬剤徐放埋設物は、神経ブロッキング剤を標的スペースにゆっくりと徐放する、体内に十分に埋め込まれる装置である。こうしたスペースの1つの例は、腎動脈周囲スペースである。別の例は、副腎の内部、又は、腎臓組織と腎臓組織自体を包囲する線維鞘との間の仮想スペースである。薬剤徐放埋設物は、拡散によって作用し、生分解可能とすることもできるし、生分解可能でないものとすることもできる。浸透ポンプも薬剤徐放埋設物である。標的スペースへの薬剤の拡散を遅らせるように働く異なるマトリックスは、本発明の目的上、すべて薬剤徐放埋設物と呼ばれる。これらには、ゲル、パッチ、注射可能なミクロスフェア、懸濁液、溶液又は十分な薬剤を保持して意図される効果をもたらすその他のマトリックスがある。
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態を用いて処置された患者101を示す。患者は、長さ12cm、幅6cm、厚さ3cmの豆形の組織であって、腹膜腔の外部及び背後に位置する腎臓103及び104を有する。患者には、患者の側部の皮膚の下に埋め込まれた埋め込み可能薬剤ポンプ105が装備される。ポンプは、送達された薬剤が腎神経をブロッキングすることができる腎動脈領域107において終端する、薬剤送達カテーテル106を装備している。
【0031】
図2は、慢性の心臓疾患及び腎疾患の進行における腎神経活性の役割を示す。腎求心性(腎臓から脳へ)神経活性201の増加によって、全身の交感神経の緊張202及び血管の血管収縮(狭窄)203が増加することになる。血管抵抗の増加によって、高血圧204となる。高血圧は、慢性の心不全及び腎不全の進行、並びに、発作及び心筋梗塞といった急性事象に対する主要因である。腎遠心性(脳から腎臓へ)神経活性205の増加によって、求心性腎神経活性がさらに増加し、腎ホルモンレニンが分泌され206、腎臓の血流が減少し、腎臓による水及びナトリウムの排泄が減少する。レニンは、全身的な血管の血管収縮203の一因となる。これらの腎臓因子が組み合わさって、流体が滞留し207、心臓の動作負荷が増加して、さらに患者の状態が悪化することになる。腎神経活性の調整は、心臓、腎臓及び循環系(心腎)疾患のある患者には有益となることが図2から明らかであろう。
【0032】
図3は、人体のCTスキャン(デジタルX線)画像を用いる本発明の好ましい実施形態を示す。ポンプ105が、患者の背中の皮膚の下に埋め込まれる。ポンプは、カテーテル106を装備している。カテーテルの先端部304は、腎動脈107の近くにある。この例では、先端部304は、腎臓血管(動脈及び静脈)が腎臓に出入りする、腎臓の門領域305に示されている。臨床上の慣例では、先端部は、その位置が、神経ブロッキング剤が少なくとも要求されるレベルの神経ブロックを達成するのに十分な神経領域にわたって拡散することを可能にする限り、腎動脈周囲スペース内の他の位置に存在することができる。各々の腎臓は、外側凸面と、門と呼ばれる内側凹面とを有する。門は、血管、リンパ管、腎臓の神経及び尿管の出入りルートとして機能する。腎神経は、腎臓104を脊椎302の前に示された大動脈301に接続する腎動脈107に沿っている。腎臓及び腎血管は、脂肪と、このタイプのCTスキャン画像には明瞭に示されない結合組織からなる筋膜に包まれている。
【0033】
カテーテル106は、手術なしにCTガイダンスの下で動脈周囲スペースの中に導入することができる。CT、CT透視法、超音波及びMRIといった最新の画像化様式の空間分解能は、インターベンショナル・ラジオロジストが、ヒトの腎動脈から1ミリメートル以内にカテーテルを位置決めできるようにする。この処置は、針、交換ガイドワイヤ、及びインターベンショナル・ラジオロジーにおいて一般に用いられる同様の技術を用いて行われる。カテーテルの遠位端は、テスト期間の間、又は、処置にほんの僅かな時間しか要さない場合には処置全体の間、身体の外側に残される。その後、腎神経ブロッキング療法が臨床的に上手くいけば、埋め込みポンプ又は市販のPort−A−Cath装置のような単純な皮下ポートを既に埋め込まれたカテーテルに接続して、神経ブロッキング剤の注入を繰り返すことができる。
【0034】
図4は、埋め込み可能なプログラマブル薬剤注入ポンプの簡単化された設計を示す。ポンプ105は、患者の皮膚401の下のポケットに埋め込まれる。ポンプの全ての機構は、チタン又はポリマー・ケース402の中に納められている。薬剤は、リザーバ403内に貯蔵される。ポンプを詰め替えるために、針405を用いて、皮膚及びポンプ・リザーバ・セプタム406に穿孔される。セプタム406は、穿孔後にシールするシリコンのような材料からなる。薬剤が、圧縮された推進体407によってリザーバから排出される。推進体は、クロロフルオロカーボン、ブタン又は他の同様の化合物とすることができる。推進体は、弾性隔膜408を通る薬剤に対して作用する。或いは、隔膜は、薬剤を排出するために、ばねとして働くことができ又はばねによって働くことができる。カテーテル106は、リザーバ403と流体連通している。推進体は、薬剤をリザーバからカテーテルの中へ、そしてカテーテルを通して送達部位へ、この場合には、腎動脈の動脈周囲スペース及び腎神経へと付勢する。薬剤の放出を制御するために、リザーバとカテーテルとの間に弁408が配置される。弁は普通は閉じている。弁がポンプ電子制御回路409によって短時間強制的に開かれたときには、薬剤のボーラスがポンプから腎神経ブロッキング部位に放出される。内部バッテリ411が、エネルギーを電子部及び弁に供給する。通信電子部410は、医師がポンプを再プログラムして、薬剤送達量及び頻度を変更するとともに、装置に問い合わせを行うことができるようにする。通信電子部は、無線周波数RFリンクとすることができる。上述の全ての要素は、埋め込み可能な薬剤ポンプのディベロッパーとして知られている。
【0035】
薬剤を関連する薬剤送達カテーテルの中に能動的に計量する、プログラマブル埋め込み可能注入装置(埋め込み可能ポンプとも呼ばれる)は、米国特許第4,692,147号、第5,713,847号、第5,711,326号、第5,458,631号、第4,360,019号、第4,487,603号及び第4,715,852号に記載されている。或いは、埋め込み可能注入装置は、米国特許第5,836,935号に記載されるように薬剤リザーバと送達カテーテルとの間に配置される速度制限要素によって、又は、米国特許第4,816,016号及び第4,405,305号に記載されるように皮下に配置された制御装置に圧力をかけてリザーバから薬剤のみを放出することによって、薬剤送達を制御することができる。埋め込み可能な注入装置は、静脈内、動脈内、鞘内、腹腔内、脊髄内、及び硬膜外薬剤送達のために用いられているが、動脈周囲薬剤注入のためには用いられていない。
【0036】
前述の公知の注入ポンプは、心臓疾患を処置する目的で腎神経をブロックするのに用いることができるが、それらは、実際的適用に必要な特定の特性を欠いている。医者にとっては、神経が実際に効果的にブロックされているかを判断できることが重要である。局所麻酔薬の疼痛管理用途においては、疼痛自体の消失が有効なブロックの指標である。簡単に測定できる腎神経活性の自然な指標は存在しない。この問題に対処するために、ポンプ105に、カテーテル106の先端部304上の試験電極412が装備される。電極は、金、ステンレススチール又はチタンといった導電性金属からなる単一の環又は複数の電極とすることができる。電極412は、カテーテル本体106内部に組み込まれた導電性ワイヤ413によってポンプ409の制御回路に接続される。先端部の電極412以外は、ワイヤは患者から電気的に絶縁される。
【0037】
腎神経ブロックの有効性をテストするために、制御回路は電極への電気パルスを開始する。電気回路を閉じるために、第2リターン電極としてポンプの金属ケース402を用いることができる。或いは、カテーテル106は、1つ以上の電極を装備することができる。5−10ミリアンペアの範囲内の低電流パルスが、電極412の周囲組織を通過する。神経ブロックが有効であれば、患者は刺痛又は軽度の電気ショックを感じない。ブロックが有効でなければ、周囲組織の神経がパルスを伝達することになり、痛みを引き起こして、患者がそれを医師に伝え、医師は、例えばポンプによって送達される薬剤量を増加させるといった治療に調節を行うことができる。
【0038】
この態様は、手術中の短期侵襲性神経ブロックを確立するために、麻酔科医によって用いられる外科技術に類似している。手術開始前に、麻酔科医は、針を正確に神経又は神経叢に配置する。これを行うために、特別に設計された電気神経刺激器が用いられる。神経刺激器は、小さすぎて感じないほどの非常に小さい電流を神経に送達して、神経又は神経叢によって与えられる特定の筋の痙攣を引き起こす。この例においては、神経は、洗練された「電線」以上の何者でもなく、それは、通常脳から発生して伝導される電流の代わりに、電気装置によって供給された電流を筋に伝導する。その後、患者は、目が痙攣するときに似た、その神経によって与えられる、筋における僅かな筋痙攣を経験することになる。この技術は、これまで埋め込み装置に適用されていなかった。提案された発明においては、医者は、洗練された外科技術及び滅菌環境なしに診療室で神経ブロックテストを行うことができる。外部プログラマ装置は、RF波を用いて埋め込みポンプの電子部によって受信されることになる命令シーケンスを開始する。
【0039】
代替的な実施形態においては、カテーテルは、2つ又はそれ以上の電極の組を有することができ、腎神経ブロック領域に対し、少なくとも1つの組は近位にあり、少なくとも1つの組は遠位にある。電極の各組は、腎神経に十分に近接しており、内因性神経活性又は刺激性神経活性のいずれも感知することができる。ポンプ制御回路が開始し、電気パルスブロックの一方の側における電極の組の1つに電気パルスが伝わり、ブロックの反対側において対応する適切にタイミング調整された信号が記録されない場合には、薬剤は神経ブロックをもたらすのに有効であることが明らかである。逆に、電気活性が感知される場合には、所望のブロックをもたらすために、より多くの薬剤が注入されなければならない。この情報は、タイミング及び/又は薬剤放出量を自動的に調整するために、制御回路によるフィードバックとして用いることができることも明らかである。
【0040】
図5は、腎動脈の動脈周囲スペース内の薬剤注入カテーテル106の解剖学的配置を示す。カテーテル106は、注入ポンプ105と組み合わせて概略的に示されている。腎臓102には、大動脈301から腎動脈107によって血液が供給される。動脈周囲スペースは、大動脈と腎臓の門305との接続部間のその長さに沿った腎動脈及び静脈のすぐそばを包囲するスペースとして定義される。腎動脈は、2つ又はそれ以上の動脈へと分岐することができる。腎静脈と、腎臓を患者の大静脈に接続するその分岐が、そのスペースを共有する。腎脈管系のこれらの付加的な要素は、明瞭にするために図5及びそれ以降の図面においては省略されているが、存在することを前提とされている。
【0041】
腎神経501が、腎動脈107の外面に付着された分岐網として概略的に示されている。解剖学的には、腎神経は、腎動脈の外面上に1つ又はそれ以上の網状組織を形成する。これらの網状組織に寄与する繊維は、腹腔神経節、最下位の内臓神経、大動脈腎動脈神経節、及び大動脈網状組織から生じる。網状組織には、腎臓血管、糸球及び細管への腎動脈の分岐が分布している。数にして15乃至20の、これらの源からの神経は、それらの上に発達した幾つかの神経節を有する。それらは、腎臓への腎動脈の分岐に付随し、幾つかのフィラメントが精巣動脈神経叢に分散し、右側では下大静脈に分散する。
【0042】
副腎と呼ばれる繊維性接続組織層が、各々の腎臓を包み込む。副腎の周りに、脂肪組織の密な沈積物である腎脂肪パッドがあり、これが腎臓を機械的衝撃から保護する。腎臓及びそれを取り囲む脂肪組織は、結合組織の薄層である腎筋膜によって腹壁に固定される。腎動脈の動脈周囲スペースは、腎臓と大動脈との間に延びて腎血管及び神経を包囲する腎筋膜502によって外部的に制限される。腎筋膜は、カテーテル106の先端部から放出された注入薬剤504の消散に対する自然な障壁を与える。脂肪は、筋膜と腎動脈との間のスペースを埋める。特に、動脈、神経及び静脈が腎臓に入る腎茎を取り囲む腎臓の門に脂肪組織層503が存在する。腎筋膜及び腎脂肪に貫入して脂肪パッド組織に麻酔剤を注入するカテーテル先端部304が示されている。腎臓の門内に示されているが、先端部は、その位置が、要求されるレベルの神経ブロックを達成するのに少なくとも十分な神経領域に神経ブロッキング剤が分散することを可能にする限り、腎動脈周囲スペース内のどこにでも配置することができる。実際には、先端部を、動脈周囲スペースの脂肪と連続する位置に配置することに利点がある。アミノエステルのような麻酔薬及びブピバカインのようなアミノアミド局所麻酔薬は、高い脂質溶解性を有する。本発明は、これを利用している。ブピバカインの単一のボーラスは、これらの領域に注入された後で、脂肪によって吸着され、腎神経の場所に保持される。このようにして、腎脂肪は、薬剤保存器として働き、そして腎脂肪から薬剤をゆっくりと放出し、そうして、所望の長期の神経ブロッキング作用が得られる。
【0043】
図6は、カテーテル106がシールされた先端部601を有するが、カテーテルの壁に複数の側部穴又は孔602を備えた本発明の代替的な実施形態を示す。孔は、直径1ミクロンほどの小ささとすることができる。直径20ミクロン以下の孔は、神経ブロッキング剤がカテーテルの壁を通って動脈周囲スペース、腎脂肪パッド及び最終的には標的腎神経の中に浸透することを可能にする。同時に、これらの小さい孔は、組織が側部孔の中に内方成長するのを阻止し、体内に長期間埋め込まれた後のカテーテルの開存確率を高める。この設計は、腎動脈壁と腎筋膜502との間の動脈周囲スペース内の麻酔薬の再分散を助ける。カテーテルは、結合組織の内方成長を促し、注入された薬剤が腎筋膜の穿孔部を通って逃げるのを防止するために、カフ603を装備している。カフは、天然又は合成繊維材料からなり、20ミクロンより大きい、好ましくは100ミクロンの孔を備える。例えば、ヒトの長期脈管アクセス及び透析のために外科的に埋め込まれるカテーテルにおいては、Dacronカフが一般的に用いられ、Dacronカフは、組織の内方成長を支持し、固定位置からの移動を防止し、注入に対する障壁を与える。
【0044】
図7は、腎筋膜の内部に入った後の腎臓の動脈周囲スペースにおいて分岐するカテーテル106の実施形態を示す。カテーテルの内腔は、2つ又はそれ以上の分岐701及び702間で分かれる。カテーテル分岐は、端部穴と、薬を腎神経に送達するための側部穴又は壁孔とを有することができる。
【0045】
図8は、動脈周囲スペース内にコイル801を形成するカテーテル106の実施形態を示す。コイルは、注入薬剤を腎動脈の周りの動脈周囲スペースに均等に分布させるための側部穴又は孔を備えている。
【0046】
図9は、本発明のもう1つの好ましい実施形態を示す。神経ブロッキング剤は、薬剤徐放埋設物901内に貯蔵される。埋設物901は、埋め込み手術後に動脈周囲スペースに収容される。埋設物は、恒久的なものとすることができ、又はゆっくりと生分解するものとすることができる。埋め込み前に、埋設物に神経ブロッキング剤が含浸され又は「取り込まれ」、それが時間の経過と共に腎神経をブロックするのに十分な量で動脈周囲スペースに徐々に放出される。非生分解性ポリマーからなる埋め込み可能な薬剤徐放埋設物又はペレットは、外科的な埋め込みと取出しとの両方を要するという欠点をもつ。生物学的適合性のある生分解性埋設物は、非生分解性埋設物の欠陥を克服する。生分解性埋設物は、薬剤を長期間にわたって放出することができ、それと同時に又はその後組織内でポリマーが構成要素に分解し、それにより埋設物を取り出す必要性がなくなる。分解性ポリマーは、表面侵食ポリマーとすることができる。表面侵食ポリマーは、その外面からのみ分解ししたがって、薬剤放出は、ポリマーの侵食速度に比例する。適切なこうしたポリマーは、ポリ無水物とすることができる。侵食面が腎動脈及び腎神経に面する表面侵食埋設物を有することに利点がある。埋設物の他の表面は、よりゆっくりとした速度で侵食されるか、又は全く侵食されずに薬剤を標的腎神経に誘導するように設計することができる。
【0047】
長期薬剤送達のための埋設物が知られている。例えば、こうした埋設物は、産児制限薬を全身的に(循環系に)又は化学療法薬剤を局所的な胸部腫瘍に送達するために用いられ又は提案されている。こうした埋め込み可能な薬剤送達装置の例には、埋め込み可能な拡散システム(例えば、産児制限用のNorplant及び前立腺癌の処置のためのZoladexといった埋設物)、及び、米国特許第5,756,115号、第5,429,634号、第5,843,069号の例に示されているその他のこうしたシステムがある。Norplantは、治療薬の長期送達のためのポリマーからなる放出制御システムとも呼ばれる薬剤徐放埋設物の種類の一例である。Norplantは、ポリマーからなる皮下リザーバ埋設物であり、プロゲスチンのような避妊ステロイドを、25−30mg/日の量で60ヶ月までにわたって放出するのに用いることができる。Norplantは、週から6ヶ月又はそれ以上の期間にわたって薬剤の送達を制御するためのプラットフォームであるDURIN生分解性埋設物技術を用いるものである。DURINは、麻酔薬を動脈周囲スペースに送達するために適合させることができる。この技術は、認可された薬剤送達及び医療装置製品における安全性及び有効性の証明された記録を有する生分解性ポリエステル賦形剤の使用に基づいている。DURIN技術は、カリフォルニア州クパチーノ所在のDURECT Corporationから得られる。
【0048】
薬剤徐放埋設物は、一般に、単純な拡散、例えば、活性薬剤の組成及びポリマー材料の特徴によって制御される速度でのポリマー材料を通じた活性薬剤の拡散によって機能する。もう1つの手法は、薬剤を含有する埋設材料の分解または侵食により薬剤の送達を促進する生分解性埋設物の使用に関係している(例えば、米国特許第5,626,862号を参照されたい)。或いは、埋設物は、制御された薬剤送達を達成するために、浸透により機能する装置に基づくものであってもよい(例えば、米国特許第3,987,790号、第4,865,845号、第5,057,318号、第5,059,423号、第5,112,614号、第5,137,727号、第5,234,692号、第5,234,693号及び第5,728,396号を参照されたい)。これらの浸透ポンプは、一般に、外部環境から流体を吸収し、対応する量の治療薬を放出することによって作動する。腎神経ブロッキング用途に適した浸透ポンプは、Alzet Osmotic Pumps及びDuros implantという商標名でカリフォルニア州マウンテンビュー所在のALZA Corporationから入手可能である。Duros implantは、チタン合金からなる小型シリンダであり、薬剤を内部で保護し安定化させる。水が半透膜を通ってシリンダの一方の端部に入り、薬剤がシリンダの他方の端部において特定の治療薬に適した制御された速度でポートから送達される。薬剤徐放埋設物の利点は、それらが一般的な局所麻酔薬の注入に用いられるよりも非常に高い濃度で一般的な麻酔剤を貯蔵できることである。拡散による少量の薬剤の正確な送達は、埋設物内で神経ブロッキング剤の供給を数ヶ月もの間貯蔵可能にし、埋め込み薬剤ポンプでは典型的な頻繁な詰め替えの必要性をなくす。互いの活性を強める又は弱めるために相補的な形式又は抑制する形式で1以上の薬剤を埋設物から放出することができることも明らかである。
【0049】
図9Aは、図9によって示された局所薬剤徐放システムのもう1つの実施形態を示す。この実施形態においては、腎動脈の周りの動脈周囲スペースに、神経ブロッキング剤が含浸された自己形成生分解性化合物を注入し又は埋め込むことによって、神経ブロッキング剤の持続的な放出が達成される。神経ブロッキング剤は、注入可能ゲル又はミクロスフェアのような生分解性マトリックスで送達される。したがって、適用部位の炎症を抑えるステロイドのような他の薬を添加することによって、神経ブロッキング剤の作用が延長され、強化される。この実施形態は、腎神経周囲の解剖学的スペースへの薬剤徐放埋設物の良好な分散及び適合を可能にする利点を有する。神経ブロッキング剤が担持されたキャリア・マトリックスを、外科医によってパッチとして腎動脈表面に適用することができる。次いで、動脈周囲スペースが閉鎖され、筋膜が修復されることになる。或いは、キャリア・マトリックスは、注入装置に取り付けられた針を通して送達することができる。こうした針は、図3に示されたようなCTガイダンスの下で動脈周囲スペースの中に挿入することができる。針を通した送達については、マトリックスは、ゲル又は注入可能なミクロスフェアの形態である必要がある。
【0050】
炎症又は火傷箇所の麻痺した皮膚に局所適用するために、局所麻酔薬を含有するパッチ又はゲルがこれまで用いられてきた。1つの適用可能なゲルは、「Gel pharmaceutical formulation for local anesthesia」と題するOkabe他の米国特許第5,589,192号に記載されている。
【0051】
薬剤を担持した注入可能な微粒子又はミクロスフェア或いはミクロカプセルも知られている。注入可能なミクロスフェアは、中でも、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、及びコレステロールといった分解可能材料からなる。例えば、米国特許第5,061,492号は、グリコール酸と乳酸とのコポリマーからなる生分解性ポリマー・マトリックスにおける水溶性薬剤の長期放出ミクロカプセルに関連する。注入可能な調合物は、薬剤及び薬剤担持物質の水性層とポリマーの油性層との油中水型エマルジョンを調製し、濃縮し、次いで水乾燥することによって作成される。さらに、グルココルチコイド(ステロイド)剤を含有する制御された放出微粒子が、例えば、Tice他の米国特許第4,530,840号に記載されている。他の実施形態においては、埋め込まれたミクロスフェアは安定であり、それら自身では分解しない。この場合、ミクロスフェアは、外部の、超音波、温度又は放射線といったエネルギー源の差し向けられた適用を介して破壊される。ミクロスフェアの破壊によって、カプセル化された薬剤が放出され、所望の生理的効果、この場合には神経ブロックが達成される。
【0052】
「Prolonged nerve blockage by the combination of local anesthetic and glucocorticoid」と題するBerde他の米国特許第5,700,485号は、局所麻酔剤の長期投与のための生分解性の制御された放出ミクロスフェアの製造及び適用法の十分な詳細を示している。ミクロスフェアは、生分解性ポリマーのポリ無水物、ポリ乳酸−グリコール酸コポリマーからなる。局所麻酔剤は、ポリマーの中に組み込まれる。長期放出は、グルココルチコイドをポリマー・マトリックス中に組み込むか、又は、グルココルチコイドをミクロスフェアと共に同時投与することによって得られる。重要なことには、「High load formulations and methods for providing prolonged local anesthesia」と題する同一発明者の米国特許第6,238,702号は、通常の注入に用いられるよりも非常に高濃度の局所麻酔剤を含有するポリマー・マトリックスを示している。動脈周囲スペースは、十分なサイズの埋設物を解剖学的に収容することができるので、少なくとも30日間、より好ましくは数年間にわたる神経ブロッキングが可能である。「Biodegradable polymer matrices for sustained delivery of local anesthetic agnts」と題するBerde他の米国特許第5,618,563号は、局所麻酔剤の長期投与のための局所麻酔剤を組み入れたポリマー・マトリックスからなる生分解性の制御された放出システムと、その製造方法についてさらに詳しく述べている。
【0053】
図10は、動脈周囲スペース内のカテーテルの固定及び注入薬の分布を改善する、本発明の薬剤送達カテーテルの設計を示す。埋め込み後、埋設物及び周囲組織が変化することになる。薬剤送達装置のインターフェースを改善して、量を最小にしながら神経に対する薬剤の効果を最大にすることが、本発明のこの部分の目的である。
【0054】
人体は、身体又は特定の身体器官に導入されたあらゆる異物を自発的に拒絶し又は被包するように働く。いくつかのケースでは、被包は、薬物注入を妨げ又は止める。他の事例では、送達流体は、カテーテルの外部とカテーテルが受け入れられるボアの組織との間の開かれたスペースを通って、組織から逆流することがある。これらの結果のいずれも、冒された身体組織に対する薬の直接注入の効果を大きく損なうことになる。したがって、身体自身の自然な防御システムは、処置を失敗させる傾向がある。埋設物への組織の生体反応は、多くの異なる形態をとることがある。例えば、埋め込みの外科的外傷に対する初期反応は、普通は、急性炎症性反応と呼ばれ、多形核白血球(PMN)の浸潤によって特徴付けられる。急性炎症性反応の後に慢性炎症性反応が起こり、これは、多数のマクロファージ及びリンパ球と幾つかの単球及び顆粒球の存在によって特徴付けられる。線維芽細胞も埋設物の近傍に蓄積し始め、コラーゲン・マトリックスを生成し始める。線維芽細胞及びコラーゲンは、埋設物及び慢性炎症性細胞の周りに結合組織カプセルを形成して、埋設物とこれらの細胞を身体の残りの部分から効果的に分離する。コラーゲンと、慢性炎症性細胞、毛細管、及び血管に随伴する活性生成線維芽細胞との微細網からなる結合組織は、まとめて、肉芽組織と呼ばれる。
【0055】
したがって、材料がヒト又は動物のような生体の軟組織床の中に埋め込まれたときに、炎症細胞、未熟繊維芽細胞、及び血管からなる埋設物質の周りに肉芽組織カプセルが形成される。この組織カプセルは、普通は、時間と共に厚さが増加し、埋設物の周りに収縮し、埋設部位、埋設物の剛性に応じて潜在的には埋設物自体を変形させる。
【0056】
図10によって示された埋設物は、この明細書の最初に説明した埋設薬剤ポンプに結合された薬剤送達カテーテル106の先端部304である。先端部304は、カテーテルの内腔1001と流体連通し、ポンプ104(図4参照)によって神経ブロッキング剤が送達される内部キャビティ1002が示されている。先端部は、例えばPTFEといった多孔性プラスチックであることが好ましい多孔性材料からなる。埋設物が多孔性であり、約20ミクロンより大きい孔入口直径を有するときには、組織がこれらの孔の中に成長することが知られている。この現象は、埋設物を埋設された器官と一体化し、理論上、埋設物への組織の内部成長を可能にし、カプセル拘縮を減少させるため、多くの医療装置用途に望ましく現れる。例えば、Engerの米国特許第4,011,861号は、好ましくは約10から500ミクロンの範囲内の孔を有して血管及び組織が孔の中に成長できるようにする、埋め込み可能な電気端子を開示している。
【0057】
図10によって示された実施形態は、組織の内部成長を阻止するように設計された好ましくは20ミクロンよりより小さな小孔304を有する材料と、組織の内部成長を促すための好ましくは20ミクロンより大きい大孔1004を有する材料とを組み合わせる。材料1003は、キャビティ1002から動脈周囲スペースへの薬剤の自由拡散及び対流を可能にする。材料1004は、カテーテル先端部304の自然な固定化を促進して、それが動きによって詰まったり、動脈周囲スペースの外に移動したりしないようにする。
【0058】
図11は、多孔性材料からなるカテーテル先端部を示す。大孔埋設物1004区域への周囲組織1101の内部成長1102が示されている。小孔区域1003は、腎動脈107及び腎神経501に向けて薬剤注入を向けるように方向付けられる。
【0059】
図12はさらに、指向性薬剤送達のためのカテーテル106の多孔性先端部の実施形態を示す。薬剤充填キャビティ1002を取り囲み、腎神経から遠ざかる方に向けられた埋設物の部分は、薬剤不透過性の材料1004からなる。腎神経(腎動脈表面上の)1003の方に向けられた埋設物の部分は、神経ブロッキング剤を透過する材料からなる。薬剤フラックス1201は、一方向性として示されており、それにより、治療薬を治療部位に方向付け、薬剤の損失を最小にする。
【0060】
図13及び図14はさらに、腎神経の方に薬剤送達をさらに方向付ける目的で腎動脈107を少なくとも部分的に取り囲み又は包囲するカテーテル106の多孔性先端部の実施形態を示す。先端部は、動脈の周りに多層カフを形成する。カフの外側シェル1004は、薬剤が腎神経から離れる方に消散するのを防止するために、注入薬剤に対し不透過性の材料からなる。材料1004はまた、埋設物の内部成長及び固定化を促進するために大孔を有することができる。内側層1003は、神経ブロッキング剤を透過する材料からなる。内側層は、送達カテーテル106と流体連通する。層1003は、カフと動脈107との間のスペース1301内の薬剤1201の等しい分布を容易にするために、内部チャネルを装備することができる。
【0061】
本発明は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものと組み合わせて説明されたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、それに対して、添付の請求項の精神及び範囲内に含まれる種々の修正及び均等物の構成をカバーすることを意図されている。
【0062】
また、好ましい実施態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤送達カテーテルを埋め込むステップと、
b.患者の身体に薬剤注入ポンプを埋め込むステップと、
c.前記薬剤注入ポンプを前記カテーテルに結合するステップと、
d.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
2. 前記カテーテルが前記腎脂肪パッドに埋め込まれることを特徴とする上記1に記載の方法。
3. 前記埋め込まれたカテーテルに電荷を適用して、前記腎神経ブロッキングの有効性を判断する付加的なステップを含むことを特徴とする上記1に記載の方法。
4. 前記電荷が、前記薬剤注入ポンプによって適用されることを特徴とする上記3に記載の方法。
5. 前記動脈周囲スペースに埋め込まれる前記カテーテルが、前記神経ブロッキング剤を透過する多孔性材料からなることを特徴とする上記1に記載の方法。
6. 前記カテーテルが前記腎動脈の周りに巻きつけられることを特徴とする上記1に記載の方法。
7. 前記カテーテルが組織の内部成長を受け入れるようになった多孔性材料からなることを特徴とする上記1に記載の方法。
8. 前記動脈周囲スペースに神経ブロッキング剤を送達する前記ステップが、周期的に行われることを特徴とする上記1に記載の方法。
9. 前記神経ブロッキング剤が、局所麻酔薬、ケタミン、三環系抗うつ剤及びニューロトキシンからなる群から選択されることを特徴とする上記1に記載の方法。
10. 前記神経ブロッキング剤がステロイドと組み合わされることを特徴とする上記1に記載の方法。
11. 心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤徐放装置を埋め込むステップと、
b.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
12. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ポリマー・マトリックスであることを特徴とする上記11に記載の方法。
13. 前記神経ブロッキング剤が、局所麻酔薬、ケタミン、三環系抗うつ剤及びニューロトキシンからなる群から選択されることを特徴とする上記11に記載の方法。
14. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ゲルからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
15. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置がミクロスフェアからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
16. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が前記腎動脈を取り囲む形状にされることを特徴とする上記11に記載の方法。
17. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が浸透ポンプからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
18. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が自己形成生分解性化合物からなることを特徴とする上記11に記載の方法。
19. 前記神経ブロッキング剤がステロイドと組み合わされることを特徴とする上記11に記載の方法。
20. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が、前記腎動脈上のパッチからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
21. ヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングによって心筋梗塞拡張を減少させる方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤徐放装置を埋め込むステップと、
b.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
22. ヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングによって心筋梗塞拡張を減少させる方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤送達カテーテルを埋め込むステップと、
b.患者の身体に薬剤注入ポートを埋め込むステップと、
c.前記薬剤注入ポンプを前記ポートに結合するステップと、
d.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
23. ヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングによって心筋梗塞拡張を減少させる方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに神経ブロッキング剤を注入するステップと、
b.前記神経ブロッキング剤の作用期間にわたって前記腎神経をブロッキングするステップと、
c.前記梗塞拡張期間にわたって前記ステップa及び前記ステップbを繰り返すステップと、
を含む方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所薬物送達装置及び方法に関し、特に、腎神経叢をブロッキングする目的で腎動脈の動脈周囲スペースに神経ブロッキング剤を標的送達するための埋め込み可能なシステム、これを埋め込む方法、並びに、疾患を処置するための方法及び装置に向けられている。本発明は、神経へ神経ブロッキング剤を誘導して、周囲組織における薬剤の放散を防止し、周囲組織における薬剤送達機構の固定化を与える。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2003年4月8日に米国特許商標局(USPTO)に出願された「Renal Nerve Stimulation Method And Apparatus For Treatment Of Patients」と題する第60/408,665号、及び、2002年4月8日に米国特許商標局(USPTO)に出願された「Modulation Of Renal Nerve To Treat CHF」と題する米国特許仮出願第60/370,190号、2002年10月3日にUSPTOに出願された「Modulation Of Renal Nerve To Treat CHF」と題する第60/415,575号、及び2003年1月29日にUSPTOに出願された「Treatment Of Renal Failure And Hypertension」と題する第60/442,970号に関連し、それらに基づく優先権を主張するものである。これらの出願の各々の全体を、引用によりここに組み入れる。
【背景技術】
【0003】
高血圧(HTN)及び鬱血性心不全(CHF)は、現代の心臓学における最も重要な問題である。これらの慢性疾患は、ほとんどの心臓血管の病的状態及び死亡状態の原因となり、多くの進歩にもかかわらず治療上の課題が残っている。HTN及びCHFの両方についての治療の基礎は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬及び利尿剤といった腎臓に対して直接的に又は間接的に作用する主に経口及び静脈内薬剤の使用を含み、各薬剤の使用量は病気の段階に依存する。薬剤治療は、HTN及びCHFの初期段階においては効果的であるが、これらの疾患の中間段階から最終段階に対する本当に効果的な薬剤処置は存在しない。
【0004】
HTN及びCHFは、多くの異なる初期原因を有する。初期原因に関係なく、この両方の疾患は、主に腎神経の過剰な活性の結果として、それらの末期疾患に進む際に共通の経過をたどる。腎神経除去は、HTNをコントロールし、症状を改善し、CHFの進行を遅らせることができる、一般に容認された動物モデルにおいて示されている。しかしながら、長期間の臨床上有用なヒトの腎神経活性のブロッキングを提供することができる薬剤又は装置治療は現在存在しない。腎神経除去の唯一の利用可能な臨床的方法は、侵襲的な外科処置であり、腎臓は速く再生するため、技術的に難しく使用が限られている。
【0005】
本発明の特に有意な点は、心筋梗塞(MI)後の多くの患者において発現するCHF状態である。冠動脈疾患は、鬱血性心不全の原因のおよそ70%である。冠動脈の閉塞による急性MIは、最終的に心不全を招きうる一般的な誘発事象である。これが起こるプロセスは、リモデリングと呼ばれ、Heart Disease 第5版、E.Braunwald、Ch.37(1997)のテキストに記載されている。心筋梗塞後のリモデリングは、左心室の大きさ、形状及び厚さへの2つの別個のタイプの物理的変化に関係する。第1に、梗塞拡張として知られるものは、梗塞域の心筋の局所的な薄化及び伸びに関係している。この心筋は、梗塞の重度さに応じて機能障害の進行した段階に進むことがある。これらの段階は、下にある心筋壁の動きの異常を表し、初期同調性異常(initial dyssynchrony)、その後の運動低下症、無動症、そして最終的には、結果として左心室の動脈瘤、運動異常につながるケースを含む。この運動異常は、収縮期の間に梗塞域の膨らみが外方に出っぱる一方で、左心室の残りの部分が内方に引っ込むことから、「逆」運動と呼ばれている。結果として、運動異常の心臓の収縮末期容量が非運動異常の心臓に比べて増大する。
【0006】
左心室のリモデリングの第2の物理的特徴は、運動亢進状態となり、ひどく拡張して、左心室がより球形状になることによって、閉塞領域の心筋による非梗塞領域の埋め合わせが試みられることである。これは、梗塞形成後の1回拍出量を保つ一助となる。これらの変化は、左心室の心筋の壁応力を増大させる。壁の張力は、左心室のリモデリングを促す最も重要なパラメータの1つであると考えられる。増大した壁の張力又は応力に対応して、さらなる心室肥大が起こる。したがって、肥大がさらなる肥大を招き、より大きな機能障害を招くという悪循環がもたらされることがある。細胞レベルでも好ましくない適応が起こる。これはさらに、機能低下をひどくする。
【0007】
ノザワタカシ他は、Heart Vessels(2002)16:51−56 Springer−Verlagにおいて発表された「Effects of long−term renal sympathetic denervation on heart failure after myocardial infarction in rats」において腎神経除去の効果を報告している。ラットでは、冠動脈レガーションによって、MIが誘発される2日前に両側腎神経が外科的に神経除去(切断)(RD)された。4週間後に、左室(LV)機能及びナトリウム排泄を測定した。MIラットでは、RDは、ナトリウム排泄の減少を改善した。MI RDラットは、MI神経支配(INN)ラットに比べて低いLV拡張末期圧力及び高い最大dP/dtを示した。LV拡張末期及び収縮末期ディメンションはかなり小さく、LVの部分的短縮はMI RDラットにおいてMI INNラットよりも大きかった。
【0008】
本発明者らは、同時係属出願において腎神経の可逆性の最小侵襲モジュレーションのための新規な方法及び装置を説明している。この出願は、新規な薬物送達方法及び統合された生理学的薬物送達方法と、現在利用可能なものよりも非常に効果的な、HTN及びCHFを処置する目的で腎神経をブロッキングする方法を提供する感知システムを説明するものである。本発明の目的は、1)最小の侵襲形式で配置することができ、2)患者及び医師による介入の要求が最小であり、患者の順守度を大きく増してこれらの全体的な治療効果を高めることになる、少なくとも1つの腎臓の腎神経活性をブロックする十分に埋め込み可能な装置である。さらに、HTN及びCHFのために、この方法は、慢性腎不全の進行を遅らせる、及び、常習的な腎臓透析を要求する患者数を減らすといった、他の主な疾患にも適用可能である。
【0009】
ヒトの神経ブロッキングは、ほとんどが、局所麻酔及び疼痛管理の分野で知られており、実施されている。一般的な麻酔として用いられている化合物は、意識の低下をもたらすことによって疼痛を減少させるが、局所麻酔は、身体の局所的な投与領域における感覚を失わせることによって作用する。局所麻酔がそれらの効果を生じる機構は、決定的に判明しているわけではないが、一般に、神経インパルスの開始及び伝達を局所的に妨害できること、例えば、腎組織の局所領域における脱分極波の開始及び/又は伝播を妨害することに基づいていると考えられる。局所麻酔の作用は一般的なものであり、神経伝導、例えば細胞膜の脱分極が起こる組織が、これらの薬剤による影響を受ける。したがって、感覚機能及び運動機能の両方を仲介する神経組織は、局所麻酔薬によって同様の影響を受ける。神経毒は、神経組織に極めて少量適用されたときに、神経を、局所麻酔薬で達成される時間を大きく上回る長時間にわたってブロックすることができる化学物質である。それらはまた、局所麻酔薬よりも患者に対して毒性があり、潜在的により危険である。
【0010】
局所麻酔薬の投与のための従来技術における異なる装置及び処方が知られている。例えば、局所麻酔薬は、注入、注射、浸潤、灌注、局所的などの手段によって、溶液又は懸濁液で送達することができる。注入又は注射は、緊急に行うことができ、又は、長期の局所的な作用が望まれる場合には、重力点滴又は輸液ポンプにより局所麻酔薬を連続的に投与することができる。したがって、ブピバカインといった局所麻酔剤は、例えば、長期の硬膜外又は髄腔内(脊椎)投与といった連続注入によって投与される。疼痛の持続的管理のために、十分に埋め込み可能なポンプが提案され実施されている。これらのポンプは、特定の量の薬剤を貯蔵することができ、医師が定期的にこれを詰め替えることができる。数人の執筆者が、疼痛及び筋痙攣管理のための、埋め込み部位で麻酔薬をゆっくりと放出する、薬剤徐放埋設物を提案している。
【0011】
局所麻酔薬の作用の持続時間は、神経組織と実際に接触する時間に比例する。したがって、神経における薬剤の局所化を維持する処置又は処方が、麻酔作用を大いに持続させる。局所麻酔薬は、局所的吸収と全身的吸収との両方により潜在的に毒性があり、それでもなお、局所的な疼痛を十分な時間にわたって鎮静するのに充分なだけ長く存在していなければならない。したがって、それらを腎神経のブロックに適用することを検討するときには、薬剤の選択、薬剤の濃度、並びに、薬剤の投与速度及び投与部位といった因子を考慮することが非常に重要である。Charles Berdeは、「Mechanisms of Local Anesthetics」(Anesthesia、第5版、R.D.Miller著、Churchill−Livingstone、Philadelphia、2000、p491−521)において、慣習的方法で送達されたときに、局所麻酔薬の全量のほんの1−2%が、いずれ神経に到達すると明記している。薬剤の残りは、薬剤を神経に向かわせるのではなく運び去る血液循環によって放散される。したがって、本発明の目的は、神経へと向かう薬剤の量を最大にして、最小量の薬剤で効果的な腎神経ブロックが達成されるようにすることである。
【0012】
理論的には、ヒトの腎神経をブロックするために、Medtronic Inc.(ミネソタ州ショアビュー)によって製造されたSyncromedポンプのような適切な市販の埋め込み可能な薬剤ポンプを用いることができる。ポンプは、ブピバカインのような一般的な市販の局所麻酔薬溶液を、付属のカテーテルを介して腎神経周囲組織に送達することができる。実行可能ではあるが、こうした腎神経ブロックの実施形態は、実用上の制限をもつことになる。末梢神経をブロックするために(例えば、一般的に行われる上腕神経叢ブロックのために)、医師は、従来技術を用いて典型的には10−50mlのブピバカイン又は同様の麻酔薬を標的神経周囲組織に浸潤させる。これは通常、感覚信号及び運動信号の両方の2乃至6時間に及ぶ適切なブロッキングを達成する。Marcaine又はSensorcaineとして販売されている市販のブピバカインは、0.25乃至0.1%の濃度で入手可能である。末梢神経(単一神経)ブロックのためには、0.5乃至0.75%の濃度が典型的に用いられる。なぜ局所麻酔薬がそのように希釈されるかについては幾つかの理由がある。ブピバカインのようなアミノ酸化合物は、局所的(刺激がある)及び全身的(心臓を抑圧する)の両方において毒性がある。局所麻酔薬は、特定の最小濃度以下では有効ではなくなり、特定の最大濃度以上では有害となることが一般に認められている。
【0013】
埋め込み可能な薬剤ポンプは、一般に、30乃至50mlの内部薬剤貯蔵リザーバを装備している。より大きいリザーバも可能であるが、埋設物の物理的及び臨床的容認性に対し大きな制約を課す。患者の腎神経の連続(終日7日間)ブロックが望まれ、通常の末梢神経ブロッキング技術が用いられる場合には、埋め込まれたポンプリザーバは、毎日或いはさらに頻繁に詰め替えられる必要がある。ポンプの詰め替えには皮膚の穿孔を伴い、痛みを引き起こし、局所的及び全身的感染の恐れをもたらすため、これは可能ではあるが実用的ではない。また、大量の薬剤の毎日の注入は、特に患者の心臓が弱い場合、患者の健康を重大に脅かす恐れがある。とりわけ、同じ薬剤のブピバカインは、患者の脊椎の標的神経組織に直接送達されるときには非常に少ない投与量で有効性がある。例えば、有効な髄腔内(脊椎)疼痛ブロックは、2−5mlのブピバカインで達成することができる。この観察は、神経組織への同薬剤のより標的化された送達は、神経ブロッキングに必要とされる薬剤の量を10倍又はそれ以上減らすことになることを示している。
【0014】
したがって、本発明の目的は、神経への選択された薬剤の送達を標的化し、周囲組織への薬剤の放散を減少させ、装置に貯蔵される薬剤の量を減少させ、装置の詰め替え又は取替え間の時間間隔を増加させることによって腎神経を効果的にブロックする新規な方法及び埋め込み可能な装置を提供することである。本発明の目的はまた、腎神経ブロックの有効性をテストできるようにし、連続ブロックが望まれない臨床上のシナリオにおいて腎ブロックを自動的に、間欠的に及び/又は周期的に実行することである。
【発明の概要】
【0015】
実験動物の腎臓の外科的神経除去は、心臓病及び腎臓病の患者にとって多くの即時的及び長期的利点を示した。ほとんどの大きな潜在的に有益な効果は、CHFの進行を遅らせること、誘導又は利尿の強化によるCHF中の流体オーバーロードの消散、心筋梗塞後のリモデリングの減少、高血圧症の減少、及び慢性腎疾患が透析に進行するのを遅らせることである。血管の血管収縮を引き起こす全身的な交感神経の緊張の減少、心臓に対する負荷の減少、及び腎臓に対する直接的な神経除去効果を介して達成される。単一腎神経除去及び両側神経除去の両方に潜在的な利点がある。疼痛を管理するために動物及び少数のヒトに外科的神経除去がこれまで行われてきた。これは大手術を要求し、腎神経が結局は成長して元に戻るので長期間有効ではない。さらに、外科的神経除去の後、腎神経が異常な方法で再成長することがあり、痛みや他の深刻な副作用を引き起こすことがある。神経除去部位における線維性変化が外科的神経除去の繰り返しを不可能にするため、患者は疼痛を管理するために腎臓の摘出の可能性に直面する。
【0016】
本発明者らは、最小限に侵襲的な腎神経モジュレーションによって患者の腎神経の活性を低下させ又はブロッキングする代替的方法を提案する。腎神経モジュレーションは、腎臓の腎動脈の動脈周囲スペースへの神経ブロッキング剤の制御された注入によって達成される。動脈周囲スペースは、腎動脈及び静脈周囲領域であり、大動脈から大静脈へと延び、腎臓自体の周囲領域を含む。腎神経は腎動脈の外面に従うため、この動脈周囲スペースに有効濃度の神経ブロッキング剤が存在するときには、腎神経活性が実質的に低下し又は停止する。腎神経を連続的及び間欠周期的の両方でブロッキングするための方法及び装置が提案されている。これらの方法及び装置は、これまで用いられていた外科的神経除去を特徴付ける大手術及び神経への取り返しのつかない損傷を回避しながら、臨床上適切な持続時間にわたって有効な可逆的神経ブロッキングを提供する。
【0017】
好ましい実施形態の装置は、埋め込み可能な薬剤ポンプ又は薬剤徐放埋設物とすることができる。両方の種類の局所薬剤送達装置は公知である。これまでは、局所麻酔薬を患者の脊椎に注入することによって疼痛管理するために、埋め込みポンプが上手く用いられてきた。埋め込み可能なポンプは、付属のカテーテルと共に皮膚の下に埋め込まれる単一リザーバ(ポート)からペースメーカーに類似の洗練されたマイクロプロセッサ駆動プログラマブル装置に至るまで多岐にわたる。産児調節剤を送達し、冠動脈の再狭窄を防止するために、薬剤徐放埋設物が用いられている。
【0018】
埋め込みポンプもまた、針を用いてアクセス可能な経皮的ポートを用いて、手術なしに薬剤を詰め替えることができるが、疼痛及び感染の恐れを最小にするために詰め替え間の時間を延ばすことが好ましい。プログラム可能な埋め込み型ポンプの実施形態はまた、遠隔通信リンクを用いて上下に調節することができる、周期的な薬剤送達の利点を有する。これは、連続的な一定の神経ブロッキングの結果として適応(生理的利得又は代償の休止)及び治療効果の損失を招くことになる、CHFのような慢性疾患の処置においては特に重要である。
【0019】
薬剤徐放埋設物は主に拡散によって作用する。薬剤徐放埋設物は、急性MI後の梗塞拡張のような一過性の状態の処置に有利であり、神経をおよそ30日間ブロックしてその後自己溶解する埋設物が本発明の最良の実施形態である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態及び最良モードが添付の図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の埋め込みポンプ実施形態を用いて処置された患者を示す図である。
【図2】腎神経モジュレーションの生理的機構を示す図である。
【図3】腎神経ブロッキング装置の解剖学的配置を示す図である。
【図4】カテーテル電極を備えた埋め込み可能な薬剤注入ポンプを示す図である。
【図5】腎脂肪パッドへの麻酔薬の注入を示す図である。
【図6】動脈周囲スペースへの分散された薬剤注入のためのカフを備えたカテーテルを示す図である。
【図7】動脈周囲スペースへの薬剤注入のための分岐カテーテルを示す図である。
【図8】動脈周囲スペースへの薬剤注入のためのコイル・カテーテルを示す図である。
【図9】動脈周囲スペースにおける薬剤徐放埋設物を示す図である。
【図9A】動脈周囲スペースにおける薬剤徐放生分解性材料を示す図である。
【図10】多孔性薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図11】組織の内成長を伴う薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図12】薬剤を腎神経に誘導する薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図13】腎動脈に重なり、薬剤注入液を腎神経に誘導する薬剤注入カテーテルを示す図である。
【図14】図13に示されたカテーテル及び動脈の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
提案された臨床的使用のために、本発明にできることは、患者の腎臓及び心臓機能を改善する目的で、神経ブロッキング剤の制御された局所送達によって、腎臓の腎神経の交感神経活性をブロックすることである。本発明の要素は、心腎疾患を処置する以外の目的で神経をブロッキングするのにも有用であり、他の解剖学的位置に適用することもできる。
【0023】
神経ブロッキング剤は、腎神経による信号の伝達を減少させ又はブロックする薬剤である。使用される神経ブロッキング剤は、(1)局所麻酔薬、(2)ケタミン(神経ブロッキング特性をもつ周知の鎮静剤)、(3)アミトリプチリンのような三環系抗うつ薬、(4)テトロドトキシン及びサキシトキシンのようなニューロトキシン、(5)神経伝達を一時的に又は恒久的に、部分的に又は完全に変えるその他の族又は種類の薬剤を含む、異なる群から選択することができる。神経ブロッキング剤及び神経ブロッキング薬という用語は交換可能である。
【0024】
心腎疾患は、心臓と腎臓の両方に関係する慢性又は急性状態として定義される。心腎疾患の例は高血圧及びCHFである。心腎疾患は、腎神経の高い活性によって特徴付けられる。
【0025】
本発明の目的上、腎神経は、いずれかの個々の神経又は神経叢、及び、腎臓との間で神経信号を伝達する神経節として定義され、解剖学的には腎動脈の表面上、腎動脈が大動脈から分岐する部位の大動脈の一部、及び/又は腎動脈の分岐上に位置する。
【0026】
動脈周囲スペースは、腎動脈、腎静脈、及び大動脈と腎臓の門との間のそれらの分岐、のすぐそばを包囲するスペースとして定義される。腎脂肪パッドは、動脈周囲スペースを埋め、腎動脈、腎静脈、腎神経、及び腎臓自体を包囲する脂肪組織又は脂肪として定義される。腎筋膜は、腎動脈、腎静脈、腎脂肪パッド及び腎臓自体を包囲し、包み込み、収容する結合組織層である。
【0027】
埋め込み可能な又は埋め込み装置(一般に「埋設物」と呼ばれる)は、患者の体内に十分に封じ込められる人工装置である。埋設物は、患者の自然な皮膚が感染に対するバリヤとして働くようにすることが重要である。埋設物は、例えば、複合電気機械ポンプ、カテーテル及びポート、又は薬剤放出ポリマーとすることができる。埋め込みは、血管外、血管内又は上記のいずれかの組み合わせのいずれであるかに関係なく、開腹手術、最小限に侵襲的な手術、又は経カテーテル介入によって達成することができる。埋め込み処置の間、皮膚を横切って患者の体内に貫入するのに外科用器具又はカテーテルが用いられる。埋設物は所望の部位に配置され、該部位にアクセスするのに用いられた通路が閉鎖される。この部位が癒えれば、装置が十分に埋め込まれたことになる。
【0028】
埋め込み可能ポンプは、患者の皮膚の下に挿入される埋め込み可能装置であり、経皮的針アクセスを用いて詰め替えることができる。埋め込み可能ポンプは、一体型カテーテルを有することができ、又は、薬を動脈周囲スペースに送達する別個のカテーテルを装備することができる。所望の処置様式に応じて、好ましい埋め込み可能ポンプは、プログラム可能な、患者が制御する、又は一定速度の装置とすることができる。
【0029】
薬剤徐放埋設物は、神経ブロッキング剤を標的スペースにゆっくりと徐放する、体内に十分に埋め込まれる装置である。こうしたスペースの1つの例は、腎動脈周囲スペースである。別の例は、副腎の内部、又は、腎臓組織と腎臓組織自体を包囲する線維鞘との間の仮想スペースである。薬剤徐放埋設物は、拡散によって作用し、生分解可能とすることもできるし、生分解可能でないものとすることもできる。浸透ポンプも薬剤徐放埋設物である。標的スペースへの薬剤の拡散を遅らせるように働く異なるマトリックスは、本発明の目的上、すべて薬剤徐放埋設物と呼ばれる。これらには、ゲル、パッチ、注射可能なミクロスフェア、懸濁液、溶液又は十分な薬剤を保持して意図される効果をもたらすその他のマトリックスがある。
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態を用いて処置された患者101を示す。患者は、長さ12cm、幅6cm、厚さ3cmの豆形の組織であって、腹膜腔の外部及び背後に位置する腎臓103及び104を有する。患者には、患者の側部の皮膚の下に埋め込まれた埋め込み可能薬剤ポンプ105が装備される。ポンプは、送達された薬剤が腎神経をブロッキングすることができる腎動脈領域107において終端する、薬剤送達カテーテル106を装備している。
【0031】
図2は、慢性の心臓疾患及び腎疾患の進行における腎神経活性の役割を示す。腎求心性(腎臓から脳へ)神経活性201の増加によって、全身の交感神経の緊張202及び血管の血管収縮(狭窄)203が増加することになる。血管抵抗の増加によって、高血圧204となる。高血圧は、慢性の心不全及び腎不全の進行、並びに、発作及び心筋梗塞といった急性事象に対する主要因である。腎遠心性(脳から腎臓へ)神経活性205の増加によって、求心性腎神経活性がさらに増加し、腎ホルモンレニンが分泌され206、腎臓の血流が減少し、腎臓による水及びナトリウムの排泄が減少する。レニンは、全身的な血管の血管収縮203の一因となる。これらの腎臓因子が組み合わさって、流体が滞留し207、心臓の動作負荷が増加して、さらに患者の状態が悪化することになる。腎神経活性の調整は、心臓、腎臓及び循環系(心腎)疾患のある患者には有益となることが図2から明らかであろう。
【0032】
図3は、人体のCTスキャン(デジタルX線)画像を用いる本発明の好ましい実施形態を示す。ポンプ105が、患者の背中の皮膚の下に埋め込まれる。ポンプは、カテーテル106を装備している。カテーテルの先端部304は、腎動脈107の近くにある。この例では、先端部304は、腎臓血管(動脈及び静脈)が腎臓に出入りする、腎臓の門領域305に示されている。臨床上の慣例では、先端部は、その位置が、神経ブロッキング剤が少なくとも要求されるレベルの神経ブロックを達成するのに十分な神経領域にわたって拡散することを可能にする限り、腎動脈周囲スペース内の他の位置に存在することができる。各々の腎臓は、外側凸面と、門と呼ばれる内側凹面とを有する。門は、血管、リンパ管、腎臓の神経及び尿管の出入りルートとして機能する。腎神経は、腎臓104を脊椎302の前に示された大動脈301に接続する腎動脈107に沿っている。腎臓及び腎血管は、脂肪と、このタイプのCTスキャン画像には明瞭に示されない結合組織からなる筋膜に包まれている。
【0033】
カテーテル106は、手術なしにCTガイダンスの下で動脈周囲スペースの中に導入することができる。CT、CT透視法、超音波及びMRIといった最新の画像化様式の空間分解能は、インターベンショナル・ラジオロジストが、ヒトの腎動脈から1ミリメートル以内にカテーテルを位置決めできるようにする。この処置は、針、交換ガイドワイヤ、及びインターベンショナル・ラジオロジーにおいて一般に用いられる同様の技術を用いて行われる。カテーテルの遠位端は、テスト期間の間、又は、処置にほんの僅かな時間しか要さない場合には処置全体の間、身体の外側に残される。その後、腎神経ブロッキング療法が臨床的に上手くいけば、埋め込みポンプ又は市販のPort−A−Cath装置のような単純な皮下ポートを既に埋め込まれたカテーテルに接続して、神経ブロッキング剤の注入を繰り返すことができる。
【0034】
図4は、埋め込み可能なプログラマブル薬剤注入ポンプの簡単化された設計を示す。ポンプ105は、患者の皮膚401の下のポケットに埋め込まれる。ポンプの全ての機構は、チタン又はポリマー・ケース402の中に納められている。薬剤は、リザーバ403内に貯蔵される。ポンプを詰め替えるために、針405を用いて、皮膚及びポンプ・リザーバ・セプタム406に穿孔される。セプタム406は、穿孔後にシールするシリコンのような材料からなる。薬剤が、圧縮された推進体407によってリザーバから排出される。推進体は、クロロフルオロカーボン、ブタン又は他の同様の化合物とすることができる。推進体は、弾性隔膜408を通る薬剤に対して作用する。或いは、隔膜は、薬剤を排出するために、ばねとして働くことができ又はばねによって働くことができる。カテーテル106は、リザーバ403と流体連通している。推進体は、薬剤をリザーバからカテーテルの中へ、そしてカテーテルを通して送達部位へ、この場合には、腎動脈の動脈周囲スペース及び腎神経へと付勢する。薬剤の放出を制御するために、リザーバとカテーテルとの間に弁408が配置される。弁は普通は閉じている。弁がポンプ電子制御回路409によって短時間強制的に開かれたときには、薬剤のボーラスがポンプから腎神経ブロッキング部位に放出される。内部バッテリ411が、エネルギーを電子部及び弁に供給する。通信電子部410は、医師がポンプを再プログラムして、薬剤送達量及び頻度を変更するとともに、装置に問い合わせを行うことができるようにする。通信電子部は、無線周波数RFリンクとすることができる。上述の全ての要素は、埋め込み可能な薬剤ポンプのディベロッパーとして知られている。
【0035】
薬剤を関連する薬剤送達カテーテルの中に能動的に計量する、プログラマブル埋め込み可能注入装置(埋め込み可能ポンプとも呼ばれる)は、米国特許第4,692,147号、第5,713,847号、第5,711,326号、第5,458,631号、第4,360,019号、第4,487,603号及び第4,715,852号に記載されている。或いは、埋め込み可能注入装置は、米国特許第5,836,935号に記載されるように薬剤リザーバと送達カテーテルとの間に配置される速度制限要素によって、又は、米国特許第4,816,016号及び第4,405,305号に記載されるように皮下に配置された制御装置に圧力をかけてリザーバから薬剤のみを放出することによって、薬剤送達を制御することができる。埋め込み可能な注入装置は、静脈内、動脈内、鞘内、腹腔内、脊髄内、及び硬膜外薬剤送達のために用いられているが、動脈周囲薬剤注入のためには用いられていない。
【0036】
前述の公知の注入ポンプは、心臓疾患を処置する目的で腎神経をブロックするのに用いることができるが、それらは、実際的適用に必要な特定の特性を欠いている。医者にとっては、神経が実際に効果的にブロックされているかを判断できることが重要である。局所麻酔薬の疼痛管理用途においては、疼痛自体の消失が有効なブロックの指標である。簡単に測定できる腎神経活性の自然な指標は存在しない。この問題に対処するために、ポンプ105に、カテーテル106の先端部304上の試験電極412が装備される。電極は、金、ステンレススチール又はチタンといった導電性金属からなる単一の環又は複数の電極とすることができる。電極412は、カテーテル本体106内部に組み込まれた導電性ワイヤ413によってポンプ409の制御回路に接続される。先端部の電極412以外は、ワイヤは患者から電気的に絶縁される。
【0037】
腎神経ブロックの有効性をテストするために、制御回路は電極への電気パルスを開始する。電気回路を閉じるために、第2リターン電極としてポンプの金属ケース402を用いることができる。或いは、カテーテル106は、1つ以上の電極を装備することができる。5−10ミリアンペアの範囲内の低電流パルスが、電極412の周囲組織を通過する。神経ブロックが有効であれば、患者は刺痛又は軽度の電気ショックを感じない。ブロックが有効でなければ、周囲組織の神経がパルスを伝達することになり、痛みを引き起こして、患者がそれを医師に伝え、医師は、例えばポンプによって送達される薬剤量を増加させるといった治療に調節を行うことができる。
【0038】
この態様は、手術中の短期侵襲性神経ブロックを確立するために、麻酔科医によって用いられる外科技術に類似している。手術開始前に、麻酔科医は、針を正確に神経又は神経叢に配置する。これを行うために、特別に設計された電気神経刺激器が用いられる。神経刺激器は、小さすぎて感じないほどの非常に小さい電流を神経に送達して、神経又は神経叢によって与えられる特定の筋の痙攣を引き起こす。この例においては、神経は、洗練された「電線」以上の何者でもなく、それは、通常脳から発生して伝導される電流の代わりに、電気装置によって供給された電流を筋に伝導する。その後、患者は、目が痙攣するときに似た、その神経によって与えられる、筋における僅かな筋痙攣を経験することになる。この技術は、これまで埋め込み装置に適用されていなかった。提案された発明においては、医者は、洗練された外科技術及び滅菌環境なしに診療室で神経ブロックテストを行うことができる。外部プログラマ装置は、RF波を用いて埋め込みポンプの電子部によって受信されることになる命令シーケンスを開始する。
【0039】
代替的な実施形態においては、カテーテルは、2つ又はそれ以上の電極の組を有することができ、腎神経ブロック領域に対し、少なくとも1つの組は近位にあり、少なくとも1つの組は遠位にある。電極の各組は、腎神経に十分に近接しており、内因性神経活性又は刺激性神経活性のいずれも感知することができる。ポンプ制御回路が開始し、電気パルスブロックの一方の側における電極の組の1つに電気パルスが伝わり、ブロックの反対側において対応する適切にタイミング調整された信号が記録されない場合には、薬剤は神経ブロックをもたらすのに有効であることが明らかである。逆に、電気活性が感知される場合には、所望のブロックをもたらすために、より多くの薬剤が注入されなければならない。この情報は、タイミング及び/又は薬剤放出量を自動的に調整するために、制御回路によるフィードバックとして用いることができることも明らかである。
【0040】
図5は、腎動脈の動脈周囲スペース内の薬剤注入カテーテル106の解剖学的配置を示す。カテーテル106は、注入ポンプ105と組み合わせて概略的に示されている。腎臓102には、大動脈301から腎動脈107によって血液が供給される。動脈周囲スペースは、大動脈と腎臓の門305との接続部間のその長さに沿った腎動脈及び静脈のすぐそばを包囲するスペースとして定義される。腎動脈は、2つ又はそれ以上の動脈へと分岐することができる。腎静脈と、腎臓を患者の大静脈に接続するその分岐が、そのスペースを共有する。腎脈管系のこれらの付加的な要素は、明瞭にするために図5及びそれ以降の図面においては省略されているが、存在することを前提とされている。
【0041】
腎神経501が、腎動脈107の外面に付着された分岐網として概略的に示されている。解剖学的には、腎神経は、腎動脈の外面上に1つ又はそれ以上の網状組織を形成する。これらの網状組織に寄与する繊維は、腹腔神経節、最下位の内臓神経、大動脈腎動脈神経節、及び大動脈網状組織から生じる。網状組織には、腎臓血管、糸球及び細管への腎動脈の分岐が分布している。数にして15乃至20の、これらの源からの神経は、それらの上に発達した幾つかの神経節を有する。それらは、腎臓への腎動脈の分岐に付随し、幾つかのフィラメントが精巣動脈神経叢に分散し、右側では下大静脈に分散する。
【0042】
副腎と呼ばれる繊維性接続組織層が、各々の腎臓を包み込む。副腎の周りに、脂肪組織の密な沈積物である腎脂肪パッドがあり、これが腎臓を機械的衝撃から保護する。腎臓及びそれを取り囲む脂肪組織は、結合組織の薄層である腎筋膜によって腹壁に固定される。腎動脈の動脈周囲スペースは、腎臓と大動脈との間に延びて腎血管及び神経を包囲する腎筋膜502によって外部的に制限される。腎筋膜は、カテーテル106の先端部から放出された注入薬剤504の消散に対する自然な障壁を与える。脂肪は、筋膜と腎動脈との間のスペースを埋める。特に、動脈、神経及び静脈が腎臓に入る腎茎を取り囲む腎臓の門に脂肪組織層503が存在する。腎筋膜及び腎脂肪に貫入して脂肪パッド組織に麻酔剤を注入するカテーテル先端部304が示されている。腎臓の門内に示されているが、先端部は、その位置が、要求されるレベルの神経ブロックを達成するのに少なくとも十分な神経領域に神経ブロッキング剤が分散することを可能にする限り、腎動脈周囲スペース内のどこにでも配置することができる。実際には、先端部を、動脈周囲スペースの脂肪と連続する位置に配置することに利点がある。アミノエステルのような麻酔薬及びブピバカインのようなアミノアミド局所麻酔薬は、高い脂質溶解性を有する。本発明は、これを利用している。ブピバカインの単一のボーラスは、これらの領域に注入された後で、脂肪によって吸着され、腎神経の場所に保持される。このようにして、腎脂肪は、薬剤保存器として働き、そして腎脂肪から薬剤をゆっくりと放出し、そうして、所望の長期の神経ブロッキング作用が得られる。
【0043】
図6は、カテーテル106がシールされた先端部601を有するが、カテーテルの壁に複数の側部穴又は孔602を備えた本発明の代替的な実施形態を示す。孔は、直径1ミクロンほどの小ささとすることができる。直径20ミクロン以下の孔は、神経ブロッキング剤がカテーテルの壁を通って動脈周囲スペース、腎脂肪パッド及び最終的には標的腎神経の中に浸透することを可能にする。同時に、これらの小さい孔は、組織が側部孔の中に内方成長するのを阻止し、体内に長期間埋め込まれた後のカテーテルの開存確率を高める。この設計は、腎動脈壁と腎筋膜502との間の動脈周囲スペース内の麻酔薬の再分散を助ける。カテーテルは、結合組織の内方成長を促し、注入された薬剤が腎筋膜の穿孔部を通って逃げるのを防止するために、カフ603を装備している。カフは、天然又は合成繊維材料からなり、20ミクロンより大きい、好ましくは100ミクロンの孔を備える。例えば、ヒトの長期脈管アクセス及び透析のために外科的に埋め込まれるカテーテルにおいては、Dacronカフが一般的に用いられ、Dacronカフは、組織の内方成長を支持し、固定位置からの移動を防止し、注入に対する障壁を与える。
【0044】
図7は、腎筋膜の内部に入った後の腎臓の動脈周囲スペースにおいて分岐するカテーテル106の実施形態を示す。カテーテルの内腔は、2つ又はそれ以上の分岐701及び702間で分かれる。カテーテル分岐は、端部穴と、薬を腎神経に送達するための側部穴又は壁孔とを有することができる。
【0045】
図8は、動脈周囲スペース内にコイル801を形成するカテーテル106の実施形態を示す。コイルは、注入薬剤を腎動脈の周りの動脈周囲スペースに均等に分布させるための側部穴又は孔を備えている。
【0046】
図9は、本発明のもう1つの好ましい実施形態を示す。神経ブロッキング剤は、薬剤徐放埋設物901内に貯蔵される。埋設物901は、埋め込み手術後に動脈周囲スペースに収容される。埋設物は、恒久的なものとすることができ、又はゆっくりと生分解するものとすることができる。埋め込み前に、埋設物に神経ブロッキング剤が含浸され又は「取り込まれ」、それが時間の経過と共に腎神経をブロックするのに十分な量で動脈周囲スペースに徐々に放出される。非生分解性ポリマーからなる埋め込み可能な薬剤徐放埋設物又はペレットは、外科的な埋め込みと取出しとの両方を要するという欠点をもつ。生物学的適合性のある生分解性埋設物は、非生分解性埋設物の欠陥を克服する。生分解性埋設物は、薬剤を長期間にわたって放出することができ、それと同時に又はその後組織内でポリマーが構成要素に分解し、それにより埋設物を取り出す必要性がなくなる。分解性ポリマーは、表面侵食ポリマーとすることができる。表面侵食ポリマーは、その外面からのみ分解ししたがって、薬剤放出は、ポリマーの侵食速度に比例する。適切なこうしたポリマーは、ポリ無水物とすることができる。侵食面が腎動脈及び腎神経に面する表面侵食埋設物を有することに利点がある。埋設物の他の表面は、よりゆっくりとした速度で侵食されるか、又は全く侵食されずに薬剤を標的腎神経に誘導するように設計することができる。
【0047】
長期薬剤送達のための埋設物が知られている。例えば、こうした埋設物は、産児制限薬を全身的に(循環系に)又は化学療法薬剤を局所的な胸部腫瘍に送達するために用いられ又は提案されている。こうした埋め込み可能な薬剤送達装置の例には、埋め込み可能な拡散システム(例えば、産児制限用のNorplant及び前立腺癌の処置のためのZoladexといった埋設物)、及び、米国特許第5,756,115号、第5,429,634号、第5,843,069号の例に示されているその他のこうしたシステムがある。Norplantは、治療薬の長期送達のためのポリマーからなる放出制御システムとも呼ばれる薬剤徐放埋設物の種類の一例である。Norplantは、ポリマーからなる皮下リザーバ埋設物であり、プロゲスチンのような避妊ステロイドを、25−30mg/日の量で60ヶ月までにわたって放出するのに用いることができる。Norplantは、週から6ヶ月又はそれ以上の期間にわたって薬剤の送達を制御するためのプラットフォームであるDURIN生分解性埋設物技術を用いるものである。DURINは、麻酔薬を動脈周囲スペースに送達するために適合させることができる。この技術は、認可された薬剤送達及び医療装置製品における安全性及び有効性の証明された記録を有する生分解性ポリエステル賦形剤の使用に基づいている。DURIN技術は、カリフォルニア州クパチーノ所在のDURECT Corporationから得られる。
【0048】
薬剤徐放埋設物は、一般に、単純な拡散、例えば、活性薬剤の組成及びポリマー材料の特徴によって制御される速度でのポリマー材料を通じた活性薬剤の拡散によって機能する。もう1つの手法は、薬剤を含有する埋設材料の分解または侵食により薬剤の送達を促進する生分解性埋設物の使用に関係している(例えば、米国特許第5,626,862号を参照されたい)。或いは、埋設物は、制御された薬剤送達を達成するために、浸透により機能する装置に基づくものであってもよい(例えば、米国特許第3,987,790号、第4,865,845号、第5,057,318号、第5,059,423号、第5,112,614号、第5,137,727号、第5,234,692号、第5,234,693号及び第5,728,396号を参照されたい)。これらの浸透ポンプは、一般に、外部環境から流体を吸収し、対応する量の治療薬を放出することによって作動する。腎神経ブロッキング用途に適した浸透ポンプは、Alzet Osmotic Pumps及びDuros implantという商標名でカリフォルニア州マウンテンビュー所在のALZA Corporationから入手可能である。Duros implantは、チタン合金からなる小型シリンダであり、薬剤を内部で保護し安定化させる。水が半透膜を通ってシリンダの一方の端部に入り、薬剤がシリンダの他方の端部において特定の治療薬に適した制御された速度でポートから送達される。薬剤徐放埋設物の利点は、それらが一般的な局所麻酔薬の注入に用いられるよりも非常に高い濃度で一般的な麻酔剤を貯蔵できることである。拡散による少量の薬剤の正確な送達は、埋設物内で神経ブロッキング剤の供給を数ヶ月もの間貯蔵可能にし、埋め込み薬剤ポンプでは典型的な頻繁な詰め替えの必要性をなくす。互いの活性を強める又は弱めるために相補的な形式又は抑制する形式で1以上の薬剤を埋設物から放出することができることも明らかである。
【0049】
図9Aは、図9によって示された局所薬剤徐放システムのもう1つの実施形態を示す。この実施形態においては、腎動脈の周りの動脈周囲スペースに、神経ブロッキング剤が含浸された自己形成生分解性化合物を注入し又は埋め込むことによって、神経ブロッキング剤の持続的な放出が達成される。神経ブロッキング剤は、注入可能ゲル又はミクロスフェアのような生分解性マトリックスで送達される。したがって、適用部位の炎症を抑えるステロイドのような他の薬を添加することによって、神経ブロッキング剤の作用が延長され、強化される。この実施形態は、腎神経周囲の解剖学的スペースへの薬剤徐放埋設物の良好な分散及び適合を可能にする利点を有する。神経ブロッキング剤が担持されたキャリア・マトリックスを、外科医によってパッチとして腎動脈表面に適用することができる。次いで、動脈周囲スペースが閉鎖され、筋膜が修復されることになる。或いは、キャリア・マトリックスは、注入装置に取り付けられた針を通して送達することができる。こうした針は、図3に示されたようなCTガイダンスの下で動脈周囲スペースの中に挿入することができる。針を通した送達については、マトリックスは、ゲル又は注入可能なミクロスフェアの形態である必要がある。
【0050】
炎症又は火傷箇所の麻痺した皮膚に局所適用するために、局所麻酔薬を含有するパッチ又はゲルがこれまで用いられてきた。1つの適用可能なゲルは、「Gel pharmaceutical formulation for local anesthesia」と題するOkabe他の米国特許第5,589,192号に記載されている。
【0051】
薬剤を担持した注入可能な微粒子又はミクロスフェア或いはミクロカプセルも知られている。注入可能なミクロスフェアは、中でも、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、及びコレステロールといった分解可能材料からなる。例えば、米国特許第5,061,492号は、グリコール酸と乳酸とのコポリマーからなる生分解性ポリマー・マトリックスにおける水溶性薬剤の長期放出ミクロカプセルに関連する。注入可能な調合物は、薬剤及び薬剤担持物質の水性層とポリマーの油性層との油中水型エマルジョンを調製し、濃縮し、次いで水乾燥することによって作成される。さらに、グルココルチコイド(ステロイド)剤を含有する制御された放出微粒子が、例えば、Tice他の米国特許第4,530,840号に記載されている。他の実施形態においては、埋め込まれたミクロスフェアは安定であり、それら自身では分解しない。この場合、ミクロスフェアは、外部の、超音波、温度又は放射線といったエネルギー源の差し向けられた適用を介して破壊される。ミクロスフェアの破壊によって、カプセル化された薬剤が放出され、所望の生理的効果、この場合には神経ブロックが達成される。
【0052】
「Prolonged nerve blockage by the combination of local anesthetic and glucocorticoid」と題するBerde他の米国特許第5,700,485号は、局所麻酔剤の長期投与のための生分解性の制御された放出ミクロスフェアの製造及び適用法の十分な詳細を示している。ミクロスフェアは、生分解性ポリマーのポリ無水物、ポリ乳酸−グリコール酸コポリマーからなる。局所麻酔剤は、ポリマーの中に組み込まれる。長期放出は、グルココルチコイドをポリマー・マトリックス中に組み込むか、又は、グルココルチコイドをミクロスフェアと共に同時投与することによって得られる。重要なことには、「High load formulations and methods for providing prolonged local anesthesia」と題する同一発明者の米国特許第6,238,702号は、通常の注入に用いられるよりも非常に高濃度の局所麻酔剤を含有するポリマー・マトリックスを示している。動脈周囲スペースは、十分なサイズの埋設物を解剖学的に収容することができるので、少なくとも30日間、より好ましくは数年間にわたる神経ブロッキングが可能である。「Biodegradable polymer matrices for sustained delivery of local anesthetic agnts」と題するBerde他の米国特許第5,618,563号は、局所麻酔剤の長期投与のための局所麻酔剤を組み入れたポリマー・マトリックスからなる生分解性の制御された放出システムと、その製造方法についてさらに詳しく述べている。
【0053】
図10は、動脈周囲スペース内のカテーテルの固定及び注入薬の分布を改善する、本発明の薬剤送達カテーテルの設計を示す。埋め込み後、埋設物及び周囲組織が変化することになる。薬剤送達装置のインターフェースを改善して、量を最小にしながら神経に対する薬剤の効果を最大にすることが、本発明のこの部分の目的である。
【0054】
人体は、身体又は特定の身体器官に導入されたあらゆる異物を自発的に拒絶し又は被包するように働く。いくつかのケースでは、被包は、薬物注入を妨げ又は止める。他の事例では、送達流体は、カテーテルの外部とカテーテルが受け入れられるボアの組織との間の開かれたスペースを通って、組織から逆流することがある。これらの結果のいずれも、冒された身体組織に対する薬の直接注入の効果を大きく損なうことになる。したがって、身体自身の自然な防御システムは、処置を失敗させる傾向がある。埋設物への組織の生体反応は、多くの異なる形態をとることがある。例えば、埋め込みの外科的外傷に対する初期反応は、普通は、急性炎症性反応と呼ばれ、多形核白血球(PMN)の浸潤によって特徴付けられる。急性炎症性反応の後に慢性炎症性反応が起こり、これは、多数のマクロファージ及びリンパ球と幾つかの単球及び顆粒球の存在によって特徴付けられる。線維芽細胞も埋設物の近傍に蓄積し始め、コラーゲン・マトリックスを生成し始める。線維芽細胞及びコラーゲンは、埋設物及び慢性炎症性細胞の周りに結合組織カプセルを形成して、埋設物とこれらの細胞を身体の残りの部分から効果的に分離する。コラーゲンと、慢性炎症性細胞、毛細管、及び血管に随伴する活性生成線維芽細胞との微細網からなる結合組織は、まとめて、肉芽組織と呼ばれる。
【0055】
したがって、材料がヒト又は動物のような生体の軟組織床の中に埋め込まれたときに、炎症細胞、未熟繊維芽細胞、及び血管からなる埋設物質の周りに肉芽組織カプセルが形成される。この組織カプセルは、普通は、時間と共に厚さが増加し、埋設物の周りに収縮し、埋設部位、埋設物の剛性に応じて潜在的には埋設物自体を変形させる。
【0056】
図10によって示された埋設物は、この明細書の最初に説明した埋設薬剤ポンプに結合された薬剤送達カテーテル106の先端部304である。先端部304は、カテーテルの内腔1001と流体連通し、ポンプ104(図4参照)によって神経ブロッキング剤が送達される内部キャビティ1002が示されている。先端部は、例えばPTFEといった多孔性プラスチックであることが好ましい多孔性材料からなる。埋設物が多孔性であり、約20ミクロンより大きい孔入口直径を有するときには、組織がこれらの孔の中に成長することが知られている。この現象は、埋設物を埋設された器官と一体化し、理論上、埋設物への組織の内部成長を可能にし、カプセル拘縮を減少させるため、多くの医療装置用途に望ましく現れる。例えば、Engerの米国特許第4,011,861号は、好ましくは約10から500ミクロンの範囲内の孔を有して血管及び組織が孔の中に成長できるようにする、埋め込み可能な電気端子を開示している。
【0057】
図10によって示された実施形態は、組織の内部成長を阻止するように設計された好ましくは20ミクロンよりより小さな小孔304を有する材料と、組織の内部成長を促すための好ましくは20ミクロンより大きい大孔1004を有する材料とを組み合わせる。材料1003は、キャビティ1002から動脈周囲スペースへの薬剤の自由拡散及び対流を可能にする。材料1004は、カテーテル先端部304の自然な固定化を促進して、それが動きによって詰まったり、動脈周囲スペースの外に移動したりしないようにする。
【0058】
図11は、多孔性材料からなるカテーテル先端部を示す。大孔埋設物1004区域への周囲組織1101の内部成長1102が示されている。小孔区域1003は、腎動脈107及び腎神経501に向けて薬剤注入を向けるように方向付けられる。
【0059】
図12はさらに、指向性薬剤送達のためのカテーテル106の多孔性先端部の実施形態を示す。薬剤充填キャビティ1002を取り囲み、腎神経から遠ざかる方に向けられた埋設物の部分は、薬剤不透過性の材料1004からなる。腎神経(腎動脈表面上の)1003の方に向けられた埋設物の部分は、神経ブロッキング剤を透過する材料からなる。薬剤フラックス1201は、一方向性として示されており、それにより、治療薬を治療部位に方向付け、薬剤の損失を最小にする。
【0060】
図13及び図14はさらに、腎神経の方に薬剤送達をさらに方向付ける目的で腎動脈107を少なくとも部分的に取り囲み又は包囲するカテーテル106の多孔性先端部の実施形態を示す。先端部は、動脈の周りに多層カフを形成する。カフの外側シェル1004は、薬剤が腎神経から離れる方に消散するのを防止するために、注入薬剤に対し不透過性の材料からなる。材料1004はまた、埋設物の内部成長及び固定化を促進するために大孔を有することができる。内側層1003は、神経ブロッキング剤を透過する材料からなる。内側層は、送達カテーテル106と流体連通する。層1003は、カフと動脈107との間のスペース1301内の薬剤1201の等しい分布を容易にするために、内部チャネルを装備することができる。
【0061】
本発明は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものと組み合わせて説明されたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、それに対して、添付の請求項の精神及び範囲内に含まれる種々の修正及び均等物の構成をカバーすることを意図されている。
【0062】
また、好ましい実施態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤送達カテーテルを埋め込むステップと、
b.患者の身体に薬剤注入ポンプを埋め込むステップと、
c.前記薬剤注入ポンプを前記カテーテルに結合するステップと、
d.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
2. 前記カテーテルが前記腎脂肪パッドに埋め込まれることを特徴とする上記1に記載の方法。
3. 前記埋め込まれたカテーテルに電荷を適用して、前記腎神経ブロッキングの有効性を判断する付加的なステップを含むことを特徴とする上記1に記載の方法。
4. 前記電荷が、前記薬剤注入ポンプによって適用されることを特徴とする上記3に記載の方法。
5. 前記動脈周囲スペースに埋め込まれる前記カテーテルが、前記神経ブロッキング剤を透過する多孔性材料からなることを特徴とする上記1に記載の方法。
6. 前記カテーテルが前記腎動脈の周りに巻きつけられることを特徴とする上記1に記載の方法。
7. 前記カテーテルが組織の内部成長を受け入れるようになった多孔性材料からなることを特徴とする上記1に記載の方法。
8. 前記動脈周囲スペースに神経ブロッキング剤を送達する前記ステップが、周期的に行われることを特徴とする上記1に記載の方法。
9. 前記神経ブロッキング剤が、局所麻酔薬、ケタミン、三環系抗うつ剤及びニューロトキシンからなる群から選択されることを特徴とする上記1に記載の方法。
10. 前記神経ブロッキング剤がステロイドと組み合わされることを特徴とする上記1に記載の方法。
11. 心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤徐放装置を埋め込むステップと、
b.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
12. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ポリマー・マトリックスであることを特徴とする上記11に記載の方法。
13. 前記神経ブロッキング剤が、局所麻酔薬、ケタミン、三環系抗うつ剤及びニューロトキシンからなる群から選択されることを特徴とする上記11に記載の方法。
14. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ゲルからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
15. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置がミクロスフェアからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
16. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が前記腎動脈を取り囲む形状にされることを特徴とする上記11に記載の方法。
17. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が浸透ポンプからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
18. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が自己形成生分解性化合物からなることを特徴とする上記11に記載の方法。
19. 前記神経ブロッキング剤がステロイドと組み合わされることを特徴とする上記11に記載の方法。
20. 前記埋め込み可能薬剤徐放装置が、前記腎動脈上のパッチからなることを特徴とする上記11に記載の方法。
21. ヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングによって心筋梗塞拡張を減少させる方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤徐放装置を埋め込むステップと、
b.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
22. ヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングによって心筋梗塞拡張を減少させる方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに薬剤送達カテーテルを埋め込むステップと、
b.患者の身体に薬剤注入ポートを埋め込むステップと、
c.前記薬剤注入ポンプを前記ポートに結合するステップと、
d.神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するステップと、
を含む方法。
23. ヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングによって心筋梗塞拡張を減少させる方法であって、
a.腎臓の動脈周囲スペースに神経ブロッキング剤を注入するステップと、
b.前記神経ブロッキング剤の作用期間にわたって前記腎神経をブロッキングするステップと、
c.前記梗塞拡張期間にわたって前記ステップa及び前記ステップbを繰り返すステップと、
を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う装置であって、
腎臓の動脈周囲スペースに埋め込むようになった薬剤徐放装置を有し、
薬剤徐放装置は、埋め込まれたとき神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するように、神経ブロッキング剤を拡散供給することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ポリマー・マトリックスであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記神経ブロッキング剤が、局所麻酔薬、ケタミン、三環系抗うつ剤及びニューロトキシンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ゲルからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置がミクロスフェアからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が前記腎動脈を取り囲む形状にされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が浸透ポンプからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が自己形成生分解性化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記神経ブロッキング剤がステロイドと組み合わされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が、前記腎動脈上のパッチからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項1】
心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の腎臓の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う装置であって、
腎臓の動脈周囲スペースに埋め込むようになった薬剤徐放装置を有し、
薬剤徐放装置は、埋め込まれたとき神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するように、神経ブロッキング剤を拡散供給することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ポリマー・マトリックスであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記神経ブロッキング剤が、局所麻酔薬、ケタミン、三環系抗うつ剤及びニューロトキシンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が生分解性ゲルからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置がミクロスフェアからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が前記腎動脈を取り囲む形状にされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が浸透ポンプからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が自己形成生分解性化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記神経ブロッキング剤がステロイドと組み合わされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記埋め込み可能薬剤徐放装置が、前記腎動脈上のパッチからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【公開番号】特開2012−35096(P2012−35096A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221524(P2011−221524)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2007−523531(P2007−523531)の分割
【原出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(507029764)メドトロニック アーディアン ルクセンブルク ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテ (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2007−523531(P2007−523531)の分割
【原出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(507029764)メドトロニック アーディアン ルクセンブルク ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテ (12)
【Fターム(参考)】
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