説明

腫瘍および損傷のターゲティングに関する方法および組成物

腫瘍、損傷の部位および血餅を標的するために有用な組成物および方法が開示される。組成物および方法は、動物において腫瘍、損傷の部位および血餅に選択的に結合し、ホーミングするペプチド配列に基づく。開示されるターゲティングは、治療薬および検出可能物質を腫瘍、損傷の部位および血餅に送達するために有用である。本発明は特に、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列または関連アミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチドに関連する方法および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年2月6日に出願された米国仮特許出願第60/765,540号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/765,540号は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0002】
政府の支援による研究に関する声明
本発明は、DoDからのGrant DAMD 17−02−1−0315およびNCIからのContract NO1−CO−37007およびNIHからのGrant CA099258およびCA103563の下で政府援助を得て為された。政府は、本発明に一定の権利を持つ。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に分子医学および癌生物学の分野、特に腫瘍間質および創傷部位に選択的にホーミングする分子に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
癌を治療することの進歩にとっての主要な障害は、正常組織を温存しながら癌を選択的に標的することができる薬剤の相対的な欠如である。例えば、一般に限局された治療である放射線療法および手術は、治療領域の正常組織に実質的な損傷を生じさせることがあり、瘢痕化および正常組織の喪失をもたらし得る。一般に全身投与される化学療法は、比較すると、迅速な細胞の代謝回転と継続的な細胞分裂を受ける骨髄、粘膜、皮膚および小腸などの器官に実質的な損傷を引き起こし得る。結果として、癌患者を静脈内経路での化学療法剤によって治療したとき、吐気、脱毛および血球数の減少などの望ましくない副作用がしばしば起こる。そのような望ましくない副作用は、安全に投与できる薬剤の量を制限し、それによって生存率の妨げとなり、患者の生活の質に影響を及ぼし得る。
【0005】
組織損傷に関して、創傷治癒の機序、創傷の治療のための様々な方法の効果、および創傷感染を診断するための最良の方法を評価するために多大の基礎科学および臨床研究が実施されてきた。この努力の多くが、慢性創傷感染を診断するための最も性格で再現可能な方法を評価することに向けられてきた。慢性創傷はしばしば、多くの場合急性手術創傷における感染を構成するレベルで、細菌を内包するが、これらの慢性創傷の多くは、非常に高レベルの微生物にもかかわらず閉鎖へと進行する。臨床徴候と症状だけによって創傷感染を診断し、治療の枠組みを確立することにはいくつかの内在性の制限がある。特に懸念されるのは、抗生物質耐性を有する微生物の数が絶えず増加し続けることである。臨床徴候および症状の評価は、慢性創傷感染を診断するための非常に費用効果的で好都合な方法であるが、この方法の単独での使用は、創傷の治療を行う医師に、治療に対する最も適切な化学療法アプローチの情報を与えない。臨床徴候および症状の単独使用は、特定病原体についてのごくわずかしかない詳細情報に基づいて治療薬を選択することを提供者に委ねる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、腫瘍と創傷を選択的に標的し、全身療法に関連する副作用を軽減するための新しい治療戦略が求められている。本発明は、腫瘍および組織損傷に選択的にホーミングし、化学療法剤、遺伝子治療ベクターまたは他の作用物質を適切な組織に選択的に標的するのに適した分子を提供することによってこの要求に応える。関連する利点も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要旨
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列または関連アミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチドに関連する方法および組成物が開示される。
【0008】
また、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列または関連アミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有するペプチドを含むコンジュゲートを被験体に投与することを含む、被験体において腫瘍、損傷部位および/または血餅の部位に成分を指向させる方法が開示される。
【0009】
また、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチドが開示される。
【0010】
また、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有するペプチドに連結された成分を含むコンジュゲートが開示される。
【0011】
また、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有するペプチドに連結された成分を含むコンジュゲートを被験体に投与することを含む、被験体において腫瘍、損傷の部位および/または血餅の部位に成分を指向させる方法が開示される。
【0012】
ペプチドは100残基未満の長さを有し得る。ペプチドは50残基未満の長さを有し得る。ペプチドは20残基未満の長さを有し得る。アミノ酸セグメントは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列を含み得る。アミノ酸セグメントは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含み得る。配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列は、1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有し得る。アミノ酸セグメントは円形または環状であり得る。アミノ酸セグメントはジスルフィド結合によって円形化または環化され得る。ペプチドはアミノ酸セグメントから成り得る。ペプチドは、腫瘍、損傷部位および/または血餅の部位と選択的に存在し得る。ペプチドは、腫瘍、損傷部位および/または血餅の部位と選択的に相互作用し得る。
【0013】
アミノ酸セグメントは、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含み得る。
【0014】
成分は、癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤、抗血管新生薬、ポリペプチド、核酸分子、低分子、発蛍光団、フルオレセイン、ローダミン、放射性核種、インジウム111、テクネチウム99、炭素11、炭素13または組合せであり得る。成分は治療薬であり得る。成分は検出可能物質であり得る。コンジュゲートはウイルスを含み得る。コンジュゲートはファージを含み得る。コンジュゲートは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する2番目のペプチドをさらに含み得る。
【0015】
被験体は癌を有していてもよく、前記成分は被験体における腫瘍間質を指向する。コンジュゲートは癌を治療し得る。コンジュゲートは、癌への治療作用を有し得る。腫瘍の大きさが縮小され得る。腫瘍の増殖が低減、停止または逆転され得る。
【0016】
前記成分は、癌を検出する、1またはそれ以上の腫瘍を視覚化する、またはその両方のために使用できる。被験体は損傷の1またはそれ以上の部位を有していてもよく、成分は損傷部位の1またはそれ以上を指向する。コンジュゲートは損傷部位の少なくとも1つを治療し得る。コンジュゲートは損傷部位の少なくとも1つへの治療効果を有し得る。成分は、損傷部位の少なくとも1つを検出する、視覚化するまたは画像化する、または組合せのために使用できる。
【0017】
開示される方法および組成物のさらなる利点は、一部は以下の説明の中で述べられ、一部は説明から理解されるか、または開示される方法および組成物の実施によって学習され得る。開示される方法および組成物の利点は、特に付属の特許請求の範囲において列挙される要素および組合せによって認識され、実現される。前記の一般的な説明および以下の詳細な説明のいずれもが単なる例示および説明であり、特許請求される本発明を限定するものではないことが了解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
開示される方法および組成物は、以下の特定実施形態の詳細な説明とその中に含まれる実施例および図面とそれらの前記および下記の説明を参照することによってより容易に理解され得る。
【0019】
本発明の化合物、組成物、製品、装置および/または方法を開示し、説明する前に、それらは、言うまでもなく変化し得るので、異なる記載がない限り特定合成方法または特定組換え生物工学法に限定されないこと、または異なる記載がない限り特定試薬に限定されないことが了解されるべきである。また、ここで使用される用語は、特定実施形態を説明することだけを目的とし、限定を意図しないことが了解されるべきである。
【0020】
A.総論
悪性腫瘍内およびその周囲の結合組織(間質)は、バイスタンダー細胞を移動させるためおよび腫瘍細胞を浸潤させるために、血管新生およびリンパ管新生のための機能的マトリックスを提供することによって腫瘍を宿主組織内に組み込む複雑で動的な構造である(Bissell,M.J.とRadisky,D.(2001)Nat.Rev.Cancer 1,46−54)。正常結合組織とその細胞外マトリックス(ECM)は抗増殖性環境を創造するが、腫瘍ECMは、細胞移動、生存および増殖のために重要な接着タンパク質、プロテアーゼおよび増殖因子を提供することによってこれらの過程を促進する(Kalluri,R.(2003)Nat.Rev.Cancer 3,422−33)。
【0021】
腫瘍ECMの独自性は、テネイシン(Ventimiglia,J.B.,Wikstrand,C.J.,Ostrowski,L.E.,Bourdon,M.A.,Lightner,V.A.およびBigner,D.D.(1992)J.Neuroimmunol.36,41−55)および腫瘍胎児性フィブロネクチン(Neri,D.,Carnemolla,B.,Nissim,A.,Leprini,A.,Querze,G.,Balza,E.,Pini,A.,Tarli,L.,Halin,C,Neri,P.ら(1997)Nat.Biotech.15,1271−5)などの、その特異的マーカーの内容に反映される。さらに、高レベルのコラーゲン発現(St.Croix,B.,Rago,C,Velculescu,V.,Traverso,G.,Romans,K.E.,Montgomery,E.,Lal,A.,Riggins,G.J.,Lengauer,C,Vogelstein,B.ら(2000)Science,289,1197−202)および選択的スプライシング形態のフィブロネクチンの存在(Halin,C,Rondini,S.,Nilsson,F.,Berndt,A.,Kosmehl,H.,Zardi,L.およびNeri,D.(2002)Nat.Biotechnol.20,264−269)が、腫瘍血管のECMを正常血管のものと区別する。腫瘍の間質腔も、おそらく血漿タンパク質の腫瘍組織内へのVEGF誘導性漏出の結果として、フィブリンを含む(Senger,D.R.,Galli,S.J.,Dvorak,A.M.,Perruzzi,C.A.,Harvey,V.S.およびH.F.Dvorak.Science(1983)219,983−985)。創傷と同様に、漏出したフィブリノーゲンは組織の前凝固因子によってフィブリンに変換される(Dvorak,H.F.,Senger,D.R.,Dvorak,A.M.,Harvey,V.S.およびMcDonagh,J.(1985)Science,227,1059−61;Abe,K.,Shoji,M.,Chen,J.,Bierhaus,A.,Danave,I.,Micko,C.,Casper,K.,Dillehay,D.L.,Nawroth,P.P.およびRickles,F.R.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,8663−8)。
【0022】
インビボで腫瘍に選択的にホーミングするペプチドを同定するためのツールとしてファージ上に提示されるペプチドライブラリーが示された(Ruoslahti,E.(2002)Nat.Rev.Cancer 2,83−90)。この方法によって選択されるホーミングペプチドは、薬剤および造影剤の担体として使用できる(Ellerby,H.M.,Wadih,A.,Ellerby,L.M.,Kane R.,Andrusiak R.,Del Rio,G.,Krajewski,S.,Lombardo C.R.,Rao,R.およびRuoslahti,E.ら(1999)Nature Medicine 5,1032−1038;Akerman,M.E.,Warren C.W.Chan,W.C.W.,Laakkonen,P.,Bhatia,S.N.およびRuoslahti E.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.99,12617−12621)。
【0023】
ここで使用される「フィブリン結合ペプチド」、「フィブロネクチン結合ペプチド」および「凝固血漿タンパク質結合ペプチド」という用語は、血餅、可溶性または不溶性フィブリンまたはフィブロネクチン、あるいは血餅中のフィブリンまたはフィブロネクチンによって示される構造又は特徴を有するフィブリンまたはフィブロネクチンの可溶性または不溶性フラグメントと共にコンジュゲートを形成するペプチドを指す。フィブリンまたはフィブロネクチン以外の血餅成分に結合するペプチドは、血餅結合ペプチドに包含される。これら全てのペプチドについての際立った特徴は、それらが血液および血漿クロットの成分に結合するが、対応する可溶性血漿タンパク質には実質的に結合しないことである。
ペプチドフラグメントは、無傷フィブリンまたはフィブロネクチン分子またはそのフラグメントのタンパク質分解消化によって、当技術分野で周知の化学的ペプチド合成によって、組換えDNA法によって、あるいはフィブリンまたはフィブロネクチン結合ペプチドに対応するペプチドを生産できる他の何らかの方法によって作製できる。
【0024】
フィブリンおよびフィブロネクチン結合ペプチドの具体例は、例えば、フィブリンおよびフィブロネクチン結合ペプチドに関する教示についてそれらの全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第7,041,790号および同第6,984,373号、同第5,792,742号およびPCT特許出願第US00/20612号に認められる。
【0025】
ファージ法はまた、腫瘍内の凝固血漿タンパク質を認識するペプチドを同定するためにも使用できる。ファージライブラリーがインビトロで血漿クロットに関してスクリーニングされ、インビボで腫瘍および創傷に特異的にホーミングし、組織切片のオーバーレイにおいて腫瘍組織に結合する2つの環状デカペプチド(CLT1およびCLT2)が誘導された。ペプチドの組織特異性は、フィブリンクロットに結合する、血漿フィブロネクチンに関連する。ペプチドは、腫瘍および組織病巣への診断薬および治療薬のターゲティングにおいて有用である。
【0026】
CLT1およびCLT2のフルオレセインコンジュゲートは、多重癌モデルにおける静脈内注射後、腫瘍組織内に特異的に蓄積する。ペプチドはまた、組織損傷の部位にホーミングした。注入したCLTペプチドは、フィブリンおよびフィブロネクチン染色と共局在する網を描き、ペプチドは、フィブリノーゲンまたは血漿フィブロネクチンを欠くマウスでは増殖中の腫瘍にホーミングしない。CLTペプチドは、腫瘍内および組織損傷の部位で血漿凝固の結果として形成されるフィブリン−フィブロネクチン複合体中のエピトープに結合する。
【0027】
CLT1およびCLT2は腫瘍間質にホーミングするが、正常組織では検出不能である。これらのペプチドはまた、凝固が典型的に起こる、組織損傷の部位にホーミングした(Dvorak,H.F.,Senger,D.R.,Dvorak,A.M.,Harvey,V.S.およびMcDonagh,J.(1985)Science,227,1059−61;Ten Cate H.,Bauer KA.,Levi M.,Edgington TS.,Sublett RD.,Barzegar S.,Kass BL.およびRosenberg RD.(1993)J.Cln.Inv.92,1207−12)。CLTペプチドが腫瘍において形成した網は、フィブリン(フィブリノーゲン)およびフィブロネクチンと共局在した。最後に、CLTペプチドが腫瘍において凝固産物を検出することの最も直接的な証拠は、血漿フィブロネクチンまたはフィブリノーゲンを欠くマウスでは増殖中の腫瘍へのCLTペプチドのホーミングが大きく低下することの実証からもたらされる。血漿フィブロネクチン欠損マウスは組織フィブロネクチンを有さないので、これらの結果は、CLT結合部位のために必要なフィブロネクチンが血液に由来することを示す。それ故CLTペプチドは、血管漏出および組織凝固作用の結果としての、血漿からのフィブリンおよびフィブロネクチンの腫瘍間質への組み込みに依存する、結合部位への結合を通して腫瘍に特異的にホーミングする。
【0028】
結果は、血漿クロットにおいてCLTペプチドによって検出される結合部位がフィブロネクチンであることを指示する。血漿フィブロネクチンを欠くマウスでは増殖中の腫瘍へのペプチドのホーミングは存在しなかった。CLTペプチドは、フィブリノーゲンヌルマウスにおいて増殖する腫瘍にある程度ホーミングしたが、ペプチド蛍光は通常の網パターンを形成せずに散在性であった。フィブロネクチンは多くの潜在結合部位を含み、それらは、分子が緊張に供されるかまたは疎水性実体と相互作用するとき使用可能となる(Morla,A.,Ruoslahti,E.(1992)J.Cell.Biol.118,421−9;Baneyx,G.,Baugh,L.およびVogel,V.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98,14464−8)。それにもかかわらず、これらの結果は、フィブロネクチン上にCLT結合部位が存在すること、および腫瘍間質における血漿由来のフィブロネクチンの組織化、またおそらくその保持も、フィブリン網の同時フィブリン沈着を必要とすることと適合する。
【0029】
CLTペプチドは、マウスにおける5つの腫瘍型および一部のヒト腫瘍を含む、試験したすべての腫瘍を認識した。それ故、CLTペプチドは、腫瘍ならびに組織損傷のための造影剤または薬剤送達物質として有用である。
【0030】
これらの所見に基づき、例えば、腫瘍間質を含む腫瘍、創傷部位および損傷の部位、および血餅に成分を指向させるため、被験体において腫瘍の大きさおよび/または数を低減するため、被験体において腫瘍血管の数を低減するため、感染を低下させ、創傷部位に治療薬を送達するため、血餅を画像化するおよび/または血餅に治療薬を送達するため、および癌を治療するために有用なホーミング分子およびコンジュゲートが開示される。開示されるコンジュゲートはまた、例えば腫瘍間質を含む腫瘍、ならびに組織損傷の部位および血餅を画像化するために有用であり得る。特に、心筋梗塞、発作および静脈血栓症において認められるような血餅は、開示されるホーミング分子およびコンジュゲートで標的することができる。開示される方法は、そのような血餅を検出する、視覚化する、画像化する、および/または血栓崩壊剤などの治療薬をそのような血餅に送達するために使用できる。フィブリン結合ペプチド、または血液または血漿クロットに関してフィブロネクチンに結合するペプチド、または別の凝固血漿タンパク質に結合することができるペプチドは、ここで開示される方法に関して有用である。
【0031】
B.定義
本明細書および付属の特許請求の範囲において使用するとき、単数形態の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに異なる指示を与えない限り複数の指示対象を包含する。それ故、例えば「医薬担体」の言及は、2またはそれ以上のそのような担体の混合物等を包含する。
【0032】
範囲は、ここでは「約」ある特定値から、および/または「約」もう1つの特定値までとして表わされ得る。そのような範囲が表わされるとき、もう1つの実施形態は、ある特定値から、および/または他方の特定値までを包含する。同様に、値が、先行詞「約」の使用により、近似値として表わされるとき、その特定値はもう1つの実施形態を形成することが了解される。範囲の各々の終点は、どちらも他方の終点に対しておよび他方の終点とは独立して、有意であることがさらに了解される。また、多くの数値がここで開示されることおよび各々の数値はまた、その数値自体に加えて「約」その特定値としてもここで開示されることが了解される。例えば数値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。また、ある数値が開示されるとき、当業者に適切に理解されるように、その数値「以下」、「その数値以上」および数値の間の可能な範囲も開示される。例えば数値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。また、本明細書全体を通じて、データは多くの異なる形態で提供されること、およびこのデータは、終点と出発点、およびデータの点のあらゆる組合せについての範囲であることが了解される。例えば特定データ点「10」と特定データ点15が開示される場合、10および15より大きい、10および15以上、10および15未満、および10および15以下、および10および15、ならびに10から15の間も開示されるとみなされることが了解される。また、2つの特定値の間の各々の単位も開示されることが了解される。例えば10および15が開示される場合、11、12、13、14も開示される。
【0033】
この明細書および以下の特許請求の範囲において、多くの用語が言及され、それらは以下の意味を有すると定義される:
「選択的」または「場合により」は、その後に記述される事象または状況が起こってもよくまたは起こらなくてもよいこと、および記述が、前記事象または状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。
【0034】
この明細書全体を通じて、様々な公表文献が参照される。これらの公表文献の開示全体が、本明細書が関連する技術水準をより完全に説明するために参照により本明細書に組み込まれる。開示される参考文献はまた、その参考文献を根拠とする文の中で論じられる、参考文献中に含まれる資料に関して、個別におよび明確に参照によりここに組み込まれる。
【0035】
開示される方法および組成物は、異なる記載がない限り特定合成方法、特定分析手法、または特定試薬に限定されず、それら自体変化し得ることが了解されるべきである。また、ここで使用される用語は、特定実施形態を説明することだけを目的とし、限定を意図しないことが了解されるべきである。
【0036】
試験材料
開示される組成物を作製するために使用される成分ならびにここで開示される方法の中で使用される組成物自体が開示される。これらや他の材料がここで開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群等が開示されるとき、これらの化合物の各々様々な個別および集合的組合せおよび置換の特定の言及は明白に開示されないことがあるが、各々はここで明確に考慮され、記述される。例えば特定ペプチドが開示され、論じられ、そのペプチドを含む多くの分子に対して施し得る多くの変更が述べられる場合、特にその反対の指示がない限り、そのペプチドのありとあらゆる組合せと置換および可能な変更が明確に考慮される。それ故、分子A、BおよびCならびに分子D、EおよびFのクラスおよび組合せ分子の例が開示される場合、各々が個別に列挙されない場合でも、各々は個別におよび集合的に考慮され、組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fが開示されるとみなされることを意味する。同様に、これらの何らかのサブセットまたは組合せも開示される。それ故、例えばA−E、B−FおよびC−Eの小群が開示されるとみなされる。この概念は、開示される組成物を作製し、使用する方法における工程を含むが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。そこで、実施できる様々な追加工程がある場合、これらの追加工程の各々は、開示される方法の何らかの特定実施形態または実施形態の組合せに関して実施できることが了解される。
【0037】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列または関連アミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチドに関連する方法および組成物が開示される。
【0038】
また、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチドが開示される。
【0039】
また、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有するペプチドに連結された成分を含むコンジュゲートが開示される。
【0040】
ペプチドは100残基未満の長さを有し得る。ペプチドは50残基未満の長さを有し得る。ペプチドは20残基未満の長さを有し得る。アミノ酸セグメントは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列を含み得る。アミノ酸セグメントは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含み得る。配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列は、1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有し得る。アミノ酸セグメントは円形または環状であり得る。アミノ酸セグメントはジスルフィド結合によって円形化または環化され得る。ペプチドはアミノ酸セグメントから成り得る。ペプチドは、腫瘍、損傷部位および/または血餅の部位と選択的に存在し得る。ペプチドは、腫瘍、損傷部位および/または血餅の部位と選択的に相互作用し得る。
【0041】
アミノ酸セグメントは、例えば配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含み得る。
【0042】
成分は、癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤、抗血管新生薬、ポリペプチド、核酸分子、低分子、発蛍光団、フルオレセイン、ローダミン、放射性核種、インジウム111、テクネチウム99、炭素11、炭素13または組合せであり得る。成分は治療薬であり得る。成分は検出可能物質であり得る。コンジュゲートはウイルスを含み得る。コンジュゲートはファージを含み得る。コンジュゲートは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する2番目のペプチドをさらに含み得る。
【0043】
被験体は、成分が被験体における腫瘍間質を指向する、癌を有し得る。コンジュゲートは癌を治療し得る。コンジュゲートは、癌への治療作用を有し得る。腫瘍の大きさが縮小され得る。腫瘍の増殖が低減、停止または逆転され得る。
【0044】
前記成分は、癌を検出する、1またはそれ以上の腫瘍を視覚化する、またはその両方のために使用できる。被験体は、損傷の1またはそれ以上の部位を有していてもよく、前記成分は損傷部位の1またはそれ以上を指向する。コンジュゲートは損傷部位の少なくとも1つを治療し得る。コンジュゲートは損傷部位の少なくとも1つへの治療効果を有し得る。成分は、損傷部位の少なくとも1つを検出する、視覚化するまたは画像化する、または組合せのために使用できる。被験体は1またはそれ以上の血餅を有していてもよく、成分は血餅の1またはそれ以上を指向する。コンジュゲートは血餅の少なくとも1つを治療し得る。コンジュゲートは血餅の少なくとも1つへの治療効果を有し得る。成分は、血餅の少なくとも1つを検出する、視覚化するまたは画像化するために使用できる。
【0045】
A.ホーミング分子
腫瘍間質を含む腫瘍、損傷および創傷の部位、および血餅に選択的にホーミングする分子が開示される。様々なホーミング分子が、開示される組成物、コンジュゲートおよび方法において使用できる。そのようなホーミング分子は、限定を伴わずに、ここで開示されるペプチドを含む。フィブリン結合ペプチド、または血液または血漿クロットに関してフィブロネクチンに結合するペプチド、または別の凝固血漿タンパク質に結合でき、ホーミングすることができるペプチドは、ここで開示される方法に関して有用である。
【0046】
開示される化合物、組成物、コンジュゲートおよび方法は、開示されるペプチドおよびペプチドミメティックを含む、様々な形態の開示ホーミング分子を含むまたは使用することができる。表現の便宜上、ここでは多くの場所でペプチドの使用または包含が列挙される。そのような場合、様々な形態のホーミング分子はまた、ペプチドに関して述べられるのと同じようにまたは同様に使用され得るまたは包含され得るとみなされ、そのような使用および包含はそれによって明確に考慮され、開示されることが了解される。
【0047】
ここで使用されるとき、「分子」という用語は、高分子または非高分子有機化学物質、例えば低分子薬剤;RNA、cDNAのようなDNAまたはオリゴヌクレオチドなどの核酸分子;ペプチド;あるいは増殖因子受容体または抗体またはFv、FdまたはFabフラグメントのようなそのフラグメントまたは抗原結合ドメインを含むもう1つ別の抗体フラグメントなどのタンパク質を意味するために広く使用される。
【0048】
ここで使用される「ホーミング分子」という用語は、正常組織よりも1またはそれ以上の腫瘍、創傷組織または血餅の凝固血漿にインビボで選択的にホーミングする分子を意味する。同様に、「ホーミングペプチド」または「ホーミングペプチドミメティック」という用語は、正常組織よりも1またはそれ以上の腫瘍の間質にインビボで選択的にホーミングするペプチドを意味する。フィブリン結合ペプチド、または血液または血漿クロットに関してフィブロネクチンに結合するペプチド、または別の凝固血漿タンパク質に結合することができるペプチドは、ここで開示される方法に関して有用である。インビボで腫瘍間質に選択的にホーミングするホーミング分子は、全ての腫瘍の間質にホーミングできるかまたは腫瘍型の1つまたはサブセットの間質への選択的ホーミングを示し得ることが了解される。
【0049】
「選択的にホーミングする」とは、インビボで、ホーミング分子が、非標的と比較して標的に優先的に結合することを意味する。例えばホーミング分子は、非腫瘍組織または非創傷組織と比較して、乳癌間質などの腫瘍間質を含む、1またはそれ以上の腫瘍、創傷組織または血餅の凝固血漿に選択的に結合することができる。そのようなホーミング分子は、例えば腫瘍間質に選択的にホーミングできる。例えば腫瘍間質への選択的ホーミングは、一般に、非腫瘍組織のいくつかの組織型と比較して、乳癌間質などの腫瘍間質内での少なくとも2倍大きい局在化によって特徴づけられる。ホーミング分子は、非腫瘍組織のいくつかのまたは多くの組織型と比較して、あるいは大部分のまたは全ての非腫瘍組織と比較して、腫瘍間質への5倍、10倍、20倍またはそれ以上の優先的局在化によって特徴づけられ得る。それ故、一部の場合、ホーミング分子は、部分的に、乳癌および他の腫瘍間質へのホーミングに加えて1またはそれ以上の正常器官の間質にホーミングすることが了解される。選択的ホーミングはターゲティングとも称され得る。
【0050】
一部の実施形態では、ホーミング分子は、腫瘍間質、創傷または血漿クロットに選択的にホーミングし、抗体またはその抗原結合フラグメントではない分子であり得る。「抗体」という用語は、1またはそれ以上の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドまたはポリペプチドを指す、当技術分野で認識されている用語である。例えばBorrabaeck,Antibody Engineering 2nd Edition,Oxford University Press,New York(1995)参照。
【0051】
優先的および/または選択的ホーミングを含む、ホーミングは、ホーミング分子が正常および/または非標的領域(例えば非腫瘍、非クロットおよび/または非創傷)に結合しないことを意味しない。一部の実施形態では、ホーミング選択性は、例えば、他の非標的成分に対する相対的Kに関して対応する標的に少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、または少なくとも約200倍選択的であり得る。一部の実施形態では、ホーミング分子は、対応する標的に対して少なくとも約50倍の選択性、少なくとも約100倍の選択性、少なくとも約200倍の選択性、少なくとも約300倍の選択性、少なくとも約400倍の選択性、少なくとも約500倍の選択性、少なくとも約600倍の選択性、少なくとも約700倍の選択性、少なくとも約800倍の選択性、少なくとも約1000倍の選択性、または少なくとも約1500倍の選択性を有し得る。例えば、一部の好ましい実施形態では、ホーミング分子は、約200nM未満、約150nM未満、約100nM未満、または約75nM未満の標的に対するK値を有し得る。一部の好ましい実施形態では、ホーミング分子は、約50nM以上、約25nM以上、約20nM以上、約15nM以上、約10nM以上、約5nM以上、約3nM以上、または約1nM以上の標的に対するK値を有し得る。一部の好ましい実施形態では、ターゲティング成分は、約10−8M未満、約10−9M未満、約10−10M未満、約10−11M未満、約10−12M未満、約10−13M未満、または約10−14M未満のKでその標的に結合する。
【0052】
その標的を認識するおよび/または標的に結合するホーミングに関する結合は、例えばホーミング分子が共有および/または非共有結合によってその標的に結合、連結または共役できる場合、共有結合と非共有結合の両方を意味し得る。結合は、高親和性または低親和性であり得、好ましくは抗親和性であり得る。有用であり得る結合力の例は、共有結合、双極子相互作用、静電力、水素結合、疎水性相互作用、イオン結合、および/またはファンデルワールス力を含むが、これらに限定されない。
【0053】
1.ペプチドおよびペプチドミメティック
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列または関連アミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチドに関連する方法および組成物が開示される。単離ペプチドは、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含む、例えばアミノ酸セグメントを含有し得る。アミノ酸セグメントは、例えば配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含み得る。
【0054】
アミノ酸セグメントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも約90%、80%、70%または60%同一のアミノ酸配列を含み得る。アミノ酸セグメントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含み得る。アミノ酸セグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8または9個の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含み得る。アミノ酸セグメントは、アミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のキメラを含み得る。そのようなキメラは、ある配列の配列がもう1つ別の配列に付加される場合は付加的、ある配列の配列がもう1つ別の配列の配列と置換される場合は置換的、または組合せであり得る。開示されるペプチドはアミノ酸セグメントから成り得る。
【0055】
アミノ酸セグメントは、線状、円形または環状であり得る。アミノ酸セグメントは、何らかの適切な結合、例えばジスルフィド結合によって円形化または環化され得る。
【0056】
ペプチドは、100残基未満の長さなどの、何らかの適切な長さを有し得る。ペプチドは50残基未満の長さを有し得る。ペプチドは20残基未満の長さを有し得る。
【0057】
開示されるペプチドは、腫瘍、損傷の部位、および/または血餅の部位に選択的にホーミングし得る。開示されるペプチドは、腫瘍、損傷の部位、および/または血餅の部位と選択的に相互作用し得る。
【0058】
また、100残基未満の長さを有し、アミノ酸配列CLT1(配列番号1)またはそのペプチドミメティック、あるいはCLT2(配列番号2)またはそのペプチドミメティックを含む単離ペプチドが開示される。そのような単離ペプチドは、例えば50残基未満または20残基未満の長さを有し得る。特定実施形態では、アミノ酸配列、配列番号1または配列番号2を含み、20、50または100残基未満の長さを有するペプチドが開示され得る。
【0059】
開示されるペプチドは単離形態であり得る。開示されるペプチドに関してここで使用されるとき、「単離」という用語は、通常細胞内でペプチドに結合している、あるいはライブラリーまたは粗製剤中でペプチドに結合している、夾雑ポリペプチド、脂質、核酸および他の細胞物質などの物質を比較的含まない形態であるペプチドを意味する。
【0060】
開示されるペプチドは何らかの適切な長さを有し得る。開示されるペプチドは、例えば6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35または40残基未満の比較的短い長さを有し得る。開示されるペプチドはまた、有意により長い配列に関しても有用であり得る。例えばここで開示されるCLT1およびCLT2ペプチド(それぞれ配列番号1および配列番号2)は、ファージコートタンパク質に融合したときホーミングする能力を維持し、開示されるペプチドが、より大きなタンパク質配列に組み込まれたとき選択的ホーミング活性を有し得ることを確認した。それ故、ペプチドは、例えば50、100、150、200、250、300、400、500、1000または2000残基までの長さを有し得る。特定実施形態では、ペプチドは、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100または200残基の長さを有し得る。さらなる実施形態では、ペプチドは、5−200残基、5−100残基、5−90残基、5−80 残基、5−70残基、5−60残基、5−50残基、5−40残基、5−30残基、5−20残基、5−15残基、5−10残基、10−200残基、10−100残基、10−90残基、10−80残基、10−70残基、10−60残基、10−50残基、10−40残基、10−30残基、10−20残基、20−200残基、20−100残基、20−90残基、20−80残基、20−70残基、20−60残基、20−50残基、20−40残基または20−30残基の長さを有し得る。ここで使用されるとき、「残基」という用語は、アミノ酸またはアミノ酸類似体を指す。
【0061】
i.ペプチド変異体
ここで論じるように、ここで考慮されるCLT1およびCLT2ペプチド、ならびに他のフィブリン、凝固フィブロネクチンまたは凝固血漿タンパク質結合ペプチドの数多くの変異体が存在する。公知の機能的変異体に加えて、開示される方法および組成物において同様に機能し得るペプチドの誘導体が存在する。タンパク質およびペプチドの変異体および誘導体は当業者に広く理解されており、アミノ酸配列修飾を含み得る。例えば、アミノ酸配列修飾は、典型的には3つのクラス:置換、挿入または欠失変異体の1またはそれ以上に属する。挿入は、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合ならびに1個または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は通常、アミノまたはカルボキシル末端融合の場合よりも小さな挿入、例えば約1−4残基である。
【0062】
欠失は、タンパク質またはペプチド配列からの1またはそれ以上のアミノ酸残基の除去によって特徴づけられる。典型的には、約2−6個以下の残基がタンパク質またはペプチド分子内のいずれか1つの部位で欠失される。これらの変異体は、タンパク質またはペプチドをコードするDNA内のヌクレオチドの部位特異的突然変異誘発によって作製でき、それによって変異体をコードするDNAを生産し、その後組換え細胞培養においてDNAを発現させる。公知の配列を有するDNA内のあらかじめ定められた部位で置換突然変異を作製するための手法は周知である。アミノ酸置換は、典型的には1個の残基の置換であるが、多くの異なる位置で同時に起こり得る;挿入は通常約1−10アミノ酸残基である;および欠失は約1−30残基に及ぶ。欠失または挿入は、好ましくは隣接対で為され、すなわち2残基の欠失または2残基の挿入である。置換、欠失、挿入またはそれらの何らかの組合せは、最終産物に到達するように組み合わせることができる。突然変異は配列を読み枠の外側に置いてはならず、好ましくは、二次mRNA構造を生じ得る相補性領域を創造しない。置換変異体は、少なくとも1個の残基が除去され、異なる残基がその位置に挿入されたものである。
【0063】
特定アミノ酸配列に関してここで使用されるとき、「保存的変異体」は、最初のアミノ酸が、その最初のアミノ酸に類似する少なくとも1つの生化学的性質を有するもう1つ別のアミノ酸またはアミノ酸類似体によって置換されている配列である;類似する性質は、例えば類似の大きさ、電荷、疎水性または水素結合能力を含む。
【0064】
一例として、保存的変異体は、最初の非電荷極性アミノ酸が、システイン、セリン、トレオニン、チロシン、グリシン、グルタミンまたはアスパラギンまたはそれらの類似体のような2番目の(非同一)非電荷極性アミノ酸で保存的に置換されている配列であり得る。保存的変異体はまた、最初の塩基性アミノ酸が、アルギニン、リシン、ヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、N−メチルリシンまたはそれらの類似体のような2番目の塩基性アミノ酸で保存的に置換されている配列であり得る。同様に、保存的変異体は、最初の疎水性アミノ酸が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニンまたはトリプトファンまたはそれらの類似体のような2番目の疎水性アミノ酸で保存的に置換されている配列であり得る。同じように、保存的変異体は、最初の酸性アミノ酸が、アスパラギン酸またはグルタミン酸またはそれらの類似体のような2番目の酸性アミノ酸で保存的に置換されている配列;フェニルアラニンなどの芳香族アミノ酸が、2番目の芳香族アミノ酸またはアミノ酸類似体、例えばチロシンで保存的に置換されている配列;あるいはアラニンなどの最初の比較的小さなアミノ酸が、グリシンまたはバリンまたはそれらの類似体のような2番目の比較的小さなアミノ酸またはアミノ酸類似体で置換されている配列であり得る。例えばあるアミノ酸残基の、生物学的および/または化学的に類似するもう1つ別のアミノ酸残基による置換は、保存的置換として当業者に公知である。例えば保存的置換は、ある疎水性残基をもう1つ別の疎水性残基で、またはある極性残基をもう1つ別の極性残基で置換している。置換は、例えばGly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組合せを含む。各々の明白に開示される配列のそのような保存的に置換された変異体は、ここで提供されるモザイクポリペプチドに包含される。非限定的な例として、CLT1(CGLIIQKNEC、配列番号1)およびCLT2(CNAGESSKNC、配列番号2)は、CALIIQKNEC(配列番号13)、CGLILQKNEC(配列番号14)、CGLIIQRNEC(配列番号15)、CGLIINKNEC(配列番号16)、CNAAESSKNC(配列番号17)、CNAGESSRNC(配列番号18)、CNAGESTKNC(配列番号19)およびCNAGDSSKNC(配列番号20)を含む。CLT1およびCLT2(配列番号1および2)の両方の保存的変異体が、配列番号1および2に関する1、2、3、4またはそれ以上のアミノ酸置換を含む配列を包含すること、およびそのような変異体は、天然および非天然に生じるアミノ酸類似体を含み得ることが了解される。
【0065】
機能および免疫学的同一性の実質的な変化は、より保存的でない置換を選択すること、すなわち(a)置換の領域内のポリペプチド骨格、例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしての構造、(b)標的部位の分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖のかさ高さを維持することへの影響がより有意に異なる残基を選択することによって為される。一般にタンパク質の性質に最も大きな変化を生じさせると予想される置換は、(a)親水性残基、例えばセリルまたはトレオニルが疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルを置換する(またはこれらによって置換される);(b)システインまたはプロリンが何らかの他の残基を置換する(または他の残基によって置換される);(c)電気的陽性側鎖を有する残基、例えばリシル、アルギニルまたはヒスチジルが電気的陰性側鎖、例えばグルタミルまたはアスパルチルを置換する(またはこれらによって置換される);あるいは(d)かさの高い側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、側鎖を持たない残基、例えばグリシンを置換する(またはグリシンによって置換される)、この場合は、(e)硫酸化および/またはグリコシル化のための部位の数を増加させることによる、ものである。
【0066】
置換または欠失突然変異誘発は、N−グリコシル化(Asn−X−Thr/Ser)またはO−グリコシル化(SerまたはThr)のための部位を挿入するために使用できる。システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましい場合があり得る。潜在的タンパク質分解部位、例えばArgの欠失または置換は、例えば塩基性残基の1つを欠失させることまたはグルタミニルまたはヒスチジル残基で置換することによって達成される。
【0067】
一部の翻訳後誘導体化は、発現されたポリペプチドへの組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、しばしば翻訳後に対応するグルタミルおよびアスパリル残基へと脱アミド化される。あるいは、これらの残基は弱酸性条件下で脱アミド化される。他の翻訳後修飾は、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のo−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco pp 79−86[1983])、N末端アミノ酸のアセチル化、一部の場合は、C末端カルボキシルのアミド化を含む。
【0068】
ここで開示されるタンパク質の変異体および誘導体を定義する1つの方法は、特定の公知配列に対する相同性/同一性に関して変異体および誘導体を定義することを通してである。例えば配列番号1はCLT1の特定配列を示し、配列番号2はCLT2の特定配列を示す。特に、記述される配列に少なくとも70%または75%または80%または85%または90%または95%の相同性を有する、これらおよびここで開示される他のタンパク質の変異体が開示される。当業者は、2つのタンパク質の相同性をどのようにして決定するかを容易に理解する。例えば相同性は、相同性がその最も高いレベルになるように2つの配列を整列した後で算定され得る。
【0069】
また、アミノ酸セグメントが、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含むペプチドが開示される。
【0070】
相同性を算定するもう1つの方法は、公開されているアルゴリズムによって実施できる。比較のための配列の最適アラインメントは、SmithとWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムによって、NeedlemanとWunsch,J.MoL Biol.48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、PearsonとLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行によって(the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WTにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または検査によって、実施できる。
【0071】
同じ種類の相同性が、例えば、少なくとも核酸アラインメントに関する試料について参照によりここに組み込まれる、Zuker,M.Science 244:48−52,1989,Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706−7710,1989,Jaegerら、Methods Enzymol 183:281−306,1989に開示されているアルゴリズムによって核酸に関しても得られ得る。
【0072】
保存的突然変異および相同性の記述は、変異体が保存的突然変異である特定配列に少なくとも70%の相同性を有する実施形態のような、何らかの組合せで結合できることが了解される。
【0073】
この明細書が様々なタンパク質およびタンパク質配列を論じるとき、それらのタンパク質配列をコードし得る核酸も開示されることが了解される。これは、特定タンパク質配列に関する全ての縮重配列、すなわち1つの特定タンパク質配列をコードする配列を有する全ての核酸ならびに、縮重核酸を含む、そのタンパク質配列の開示される変異体および誘導体をコードする全ての核酸を包含する。そこで、各々の特定核酸配列はここで全てが書き出されないことがあり得るが、1つ1つの配列は、開示されるタンパク質配列を通して事実上ここで開示され、記述される。
【0074】
開示される組成物に組み込むことができる数多くのアミノ酸およびペプチド類似体が存在することは了解される。例えば数多くのDアミノ酸または上記で論じたものとは異なる機能的置換基を有するアミノ酸が存在する。天然に生じるペプチドの反対の立体異性体ならびにペプチド類似体の立体異性体が開示される。これらのアミノ酸は、tRNA分子に選択アミノ酸を負荷すること、および部位特異的方法でペプチド鎖に類似体アミノ酸を挿入するために、例えばアンバーコドンを利用する遺伝子構築物を工作することによってポリペプチド鎖に容易に組み込むことができる(全てが、少なくともアミノ酸類自体に関する資料について参照によりここに組み込まれる、Thorsonら、Methods in Molec.Biol.77:43−73(1991);Zoller,Current Opinion in Biotechnology,3:348−354(1992);Ibba,Biotechnology & Genetic Enginerring Reviews 13:197−216(1995);Cahillら、TIBS,14(10):400−403(1989);Benner,TIB Tech,12:158−163(1994);IbbaとHennecke,Bio/technology,12:678−682(1994))。
【0075】
ペプチドに類似するが、天然ペプチド結合によって連結されていない分子を作製することができる。例えばアミノ酸またはアミノ酸類事態についての結合は、CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHHSO−(これらおよびその他は、各々が参照によりここに組み込まれる、Spatola,A.F.in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,B.Weinstein編集、Marcel Dekker,New York,p.267(1983);Spatola,A.F.,Vega Data(March 1983),Vol.1,Issue 3,Peptide Backbone Modifications(general review);Morley,Trends Pharm Sci(1980)pp.463−468;Hudson,D.ら、Int J Pept Prot Res 14:177−185(1979)(−CHNH−、CHCH−);Spatolaら、Life Sci 38:1243−1249(1986)(−CH H−S);Hann J.Chem.Soc Perkin Trans.I 307−314(1982)(−CH−CH−、シスおよびトランス);Almquistら、J.Med.Chem.23:1392−1398(1980)(−COCH−);Jennings−Whiteら、Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(−COCH−);Szelkeら、欧州特許第EP45665CA号(1982):97:39405(1982)(−CH(OH)CH−);Holladayら、Tetrahedron.Lett 24:4401−4404(1983)(−C(OH)CH−);およびHruby Life Sci 31:189−199(1982)(−CH−S−)に見出される)を含み得る。特に好ましい非ペプチド結合は−CHNH−である。ペプチド類似体は、b−アラニン、g−アミノ酪酸等のように、結合原子の間に2以上の原子を有し得ることが了解される。
【0076】
アミノ酸類似体および類似体およびペプチド類似体は、しばしば、より経済的な生産、より大きな化学的安定性、改善された薬理学的性質(半減期、吸収、潜在能、効果等)、変化した特異性(例えば広いスペクトルの生物活性)、低い抗原性その他のような、改善されたまたは望ましい性質を有する。
【0077】
D−アミノ酸は、ペプチダーゼなどによって認識されないので、より安定なペプチドを生成するために使用できる。同じタイプのD−アミノ酸によるコンセンサス配列の1またはそれ以上のアミノ酸の系統的置換(例えばL−リシンの代わりにD−リシン)は、より安定なペプチドを生成するために使用できる。システイン残基は、環化するためあるいは2またはそれ以上のペプチドを結合するために使用できる。これは、ペプチドを特定のコンフォメーションに制限するために有益であり得る(参照によりここに組み込まれる、RizoとGierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)。
【0078】
また、異種タンパク質に融合した開示ペプチドを含むキメラタンパク質が開示される。1つの実施形態では、異種タンパク質は、サイトカイン活性、細胞傷害活性またはプロアポトーシス活性などの治療的活性を有し得る。さらなる実施形態では、異種タンパク質は、抗体またはその抗原結合フラグメントであり得る。他の実施形態では、キメラタンパク質は、異種タンパク質に融合した、アミノ酸配列、配列番号1または配列番号2を含むペプチド、あるいはその保存的変異体またはペプチドミメティックを含む。「異種」という用語は、開示されるペプチドに融合したタンパク質に関してここで使用されるとき、前記ペプチドをコードするまたはペプチドミメティックが由来する遺伝子以外のソースに由来するタンパク質を意味する。開示されるキメラタンパク質は、100残基未満、200残基未満、300残基未満、400残基未満、500残基未満、800残基未満または1000残基未満の長さを含むが、これらに限定されない、様々な長さを有し得る。
【0079】
ここで使用されるとき、「キメラ」および「キメラの」は、2またはそれ以上のソースに由来する配列の何らかの組み合わせを指す。これは、例えばサブユニット(例えばヌクレオチド、アミノ酸)の単一成分から、他の配列に付加、挿入および/または置換されるソース配列全体までを含む。キメラは、例えば、ある配列の1またはそれ以上の部分が1またはそれ以上の他の配列の1またはそれ以上の部分に付加される場合は、付加的;ある配列の1またはそれ以上の部分が1またはそれ以上の他の配列の1またはそれ以上の部分と置換される場合は、置換的;または組合せであり得る。「保存的置換キメラ」は、キメラについてのソース配列が幾分かの構造的および/または機能的関係を有する場合および同様または類似の構造および/または機能を有する配列の部分が互いに置換される場合の置換キメラを指すために使用できる。典型的なキメラおよびヒト化抗体は、保存的置換キメラの例である。
【0080】
また、別の機能を有する2番目のペプチドに融合したホーミングペプチドを含む二元機能ペプチドが開示される。そのような二元機能ペプチドは、完全長分子の異なる部分によって与えられる少なくとも2つの機能を有し、および例えば、選択的ホーミング活性に加えて抗血管新生活性またはプロアポトーシス活性を示し得る。
【0081】
また、各々が独立してホーミング分子(例えばアミノ酸配列、配列番号1または2、またはその保存的変異体またはペプチドミメティック)を含む少なくとも2つのサブ配列を含む単離多価ペプチドが開示される。多価ペプチドは、例えば少なくとも3、少なくとも5または少なくとも10個の、各々が独立してホーミング分子(例えばアミノ酸配列、配列番号1または2、またはその保存的変異体またはペプチドミメティック)を含むそのようなサブ配列を有し得る。特定実施形態では、多価ペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20個の同一または非同一サブ配列を有し得る。さらなる実施形態では、多価ペプチドは、ホーミング分子(例えばアミノ酸配列、配列番号1または2、またはその保存的変異体またはペプチドミメティック)から成る、同一サブ配列を含み得る。さらなる実施形態では、多価ペプチドは、介在アミノ酸によって分離されていない、隣接同一または非同一サブ配列を含む。さらなる実施形態では、多価ペプチドは、環状であり得るかまたはさもなければ立体配座的に制限され得る。一例では、ペプチドはジスルフィド結合によって円形化または環化され得る。
【0082】
ここで使用されるとき、「ペプチド」という用語は、ペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメント等を意味するために広く使用される。「ペプチドミメティック」という用語は、ここで使用されるとき、それが構造的に基礎とするペプチドの活性を有するペプチド様分子を意味する。そのようなペプチドミメティックは、化学修飾ペプチド、非天然に生じるアミノ酸を含むペプチド様分子、およびペプトイドを含み、ペプチドミメティックが由来するペプチドの選択的ホーミング活性などの活性を有する(例えばGoodmanとRo,Peptidomimetics for Drug Design,in“Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery”Vol.1(M.E.Wolff編集;John Wiley & Sons 1995),pages 803−861参照)。
【0083】
例えば制限アミノ酸を含むペプチド様分子、ペプチドの二次構造を模倣する非ペプチド成分、またはアミド結合同配体を含む、様々なペプチドミメティックが当技術分野において公知である。制限された、非天然に生じるアミノ酸を含むペプチドミメティックは、例えばα−メチル化アミノ酸;α,α−ジアルキルグリシンまたはα−アミノシクロアルカンカルボン酸;Nα−Cα環化アミノ酸;Nα−メチル化アミノ酸;β−またはγ−アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β−不飽和アミノ酸;β,β−ジメチルまたはβ−メチルアミノ酸;β−置換−2,3−メタノアミノ酸;N−CεまたはCα−CΔ環化アミノ酸;置換プロリンまたはもう1つ別のアミノ酸ミメティックを含み得る。ペプチドの二次構造を模倣するペプチドミメティックは、例えば、各々が当技術分野で周知である、非ペプチド性βターンミミック;γターンミミック;βシート構造のミミック;またはらせん構造のミミックを含み得る。ペプチドミメティックはまた、例えばレトロインベルソ修飾などのアミド結合同配体;低アミド結合;メチレンチオエーテルまたはメチレンスルホキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランスオレフィンまたはフルオロオレフィン結合;1,5−二置換テトラゾール環;ケトメチレンまたはフルオロケトメチレン結合またはもう1つ別のアミド同配体を含むペプチド様分子であり得る。当業者は、これらや他のペプチドミメティックがここで使用される「ペプチドミメティック」という用語の意味に包含されることを理解する。
【0084】
ペプチドミメティックを同定するための方法は当技術分野において周知であり、例えば潜在的ペプチドミメティックのライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。一例として、Cambridge Structural Databaseは、公知の結晶構造を有する300,000以上の化合物のコレクションを含む(Allenら、Acta Crystalloqr.Section B,35:2331(1979))。この構造寄託機関は、新しい結晶構造が決定されると共に継続的に更新されており、適切な形状、例えば開示されるペプチドと同じ形状を有する化合物、ならびに標的分子に潜在的な幾何学的および化学的相補性を有する化合物に関してスクリーニングすることができる。ペプチドまたはペプチドに結合する標的分子の結晶構造が入手可能でない場合は、例えばCONCORDプログラム(Rusinkoら、J.Chem.Inf.Comput.Sci.29:251(1989))を使用して構造を生成することができる。もう1つのデータベース、the Available Chemicals Directory(Molecular Design Limited,Information Systems;San Leandro Calif.)は、市販されている約100,000化合物を含み、例えば腫瘍間質、創傷および血漿クロットに選択的にホーミングする活性を有するペプチドの潜在的ペプチドミメティックを同定するために同様に検索することができる。
【0085】
所望する場合、単離ペプチドまたは本文中別の箇所でさらに論じるホーミング分子は、環状であり得るかまたはさもなければ立体配座的に制限され得る。ここで使用されるとき、ペプチドなどの、「立体配座的に制限された」分子は、三次元構造が経時的に1つの空間配置に実質的に維持されるものである。立体配座的に制限された分子は、高い親和性、代謝安定性、膜透過性または溶解度などの改善された性質を有し得る。立体配座制限の方法は当技術分野において周知であり、本文中別の箇所でさらに論じる環化を含む。
【0086】
ペプチドに関してここで使用されるとき、「環状」という用語は、2個の非隣接アミノ酸またはアミノ酸類似体の間の分子内結合を含む構造を意味する。環化は、共有結合または非共有結合を通して実施され得る。分子内結合は、骨格対骨格、側鎖対骨格および側鎖対側鎖の結合を含むが、これらに限定されない。環化の好ましい方法は、非隣接アミノ酸またはアミノ酸類似体の側鎖の間でのジスルフィド結合の形成を通してである。ジスルフィド結合を形成することができる残基は、例えばシステイン(Cys)、ペニシラミン(Pen)、β,β−ペンタメチレンシステイン(Pmc)、β,β−ペンタメチレン−β−メルカプトプロピオン酸(Pmp)およびそれらの機能的等価物を含む。
【0087】
ペプチドはまた、例えば、1個のアミノ酸またはその類似体の側鎖基を利用して、アミノ末端残基のN末端アミンへの共有結合を形成することができる、ラクタム結合によって環化できる。ラクタム結合を形成することができる残基は、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、リシン(Lys)、オルニチン(orn)、α,β−ジアミノプロピオン酸、γ−アミノ−アジピン酸(Adp)およびM−(アミノメチル)安息香酸(Mamb)を含む。環化は付加的に、例えばリシン(Lys)とロイシン(Leu)残基の間のリシノノルロイシン結合または2個のチロシン(Tyr)残基の間のジチロシン結合の形成を通して実施され得る。当業者は、これらや他の結合が環状ペプチド内に含まれ得ることを理解する。
【0088】
B.コンジュゲート
ある成分と、ここで開示されるペプチドなどのホーミング分子を含むコンジュゲートが開示される。例えば腫瘍間質、創傷および血漿クロットに選択的にホーミングするホーミング分子に連結された治療薬を含むコンジュゲートが開示される。開示されるコンジュゲートは、例えばペプチドに連結された成分を含み得る。ペプチドは、フィブリン結合ペプチド、凝固フィブロネクチン結合ペプチドまたは凝固血漿タンパク質結合ペプチドなどの、ここで論じるもののいずれかであり得る。一部の形態では、ペプチドは、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含み得る。
【0089】
ここで開示されるホーミング分子のいかなる形態またはタイプも、開示されるコンジュゲートにおいて使用できる。好ましくは、成分は、ホーミング分子の標的に有効に標的される分子である。例えば治療効果を有する成分などの、標的に影響を及ぼす成分、あるいは蛍光分子または放射性核種などの、標的の検出、視覚化または画像化を促進する成分。腫瘍、創傷部位および血餅にホーミングする開示ペプチドは、例えば腫瘍および癌に影響を及ぼし得る、血餅を低減または排除し得る、および/または創傷治癒を促進し得る成分と有用に結合され得る。限定を伴わずに、癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤、抗血管新生薬、ポリペプチド、核酸分子および低分子を含む、様々な治療薬がコンジュゲートにおいて有用である。
【0090】
多数のホーミング分子を含むコンジュゲートは、例えば2またはそれ以上、3またはそれ以上、5またはそれ以上、10またはそれ以上、20またはそれ以上、30またはそれ以上、40またはそれ以上、50またはそれ以上、100またはそれ以上、200またはそれ以上、300またはそれ以上、400またはそれ以上、500またはそれ以上、あるいは1000またはそれ以上のホーミング分子を含み得る。1つの実施形態では、コンジュゲートは、全てが同一のアミノ酸配列を有するホーミング分子を含む。もう1つの実施形態では、コンジュゲートは、2またはそれ以上の非同一アミノ酸配列を有するホーミング分子を含む。例えば配列番号1および配列番号2は、別々にまたは一緒に使用することができる。多数のホーミング分子が組み込まれたコンジュゲートにおいて有用な成分は、限定を伴わずに、ファージ、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスおよび他のウイルス、細胞、リポソーム、ポリマーマトリックス、非ポリマーマトリックス、金粒子などの粒子、マイクロデバイス、ナノデバイス、およびナノスケールの半導体材料を含む。
【0091】
コンジュゲートは、例えば少なくとも2個のホーミング分子に連結されたリポソームまたは他のポリマーマトリックスを含み得る。所望する場合、リポソームまたは他のポリマーマトリックスは、少なくとも10、少なくとも100または少なくとも1000個のホーミング分子に連結され得る。リポソームはそのようなコンジュゲートにおいて有用であり得る;リポソームは、リン脂質または他の脂質から成り、非毒性で、製造および投与が比較的簡単な、生理的に許容される代謝性の担体である(Gregoriadis,Liposome Technology,Vol.1(CRC Press,Boca Raton,Fla.(1984))。リポソームまたは他のポリマーマトリックスは、場合により、限定を伴わずに、治療薬、癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤、抗血管新生薬、ポリペプチドまたは核酸分子などのもう1つ別の成分を含み得る。
【0092】
開示されるコンジュゲートの成分は、何らかの適切な方法で結合、連結および/または共役され得る。例えば成分とホーミング分子は、共有結合または非共有結合によって、直接または間接的に、リンカー成分を伴ってまたは伴わずに、結合され得る。
【0093】
C.成分
成分が標的を指向する組成物および方法が開示される。ここで使用されるとき、「成分」という用語は、一般に連結された分子に生物学的に有用な機能を与える物理的、化学的または生物学的物質を意味するために広く使用される。成分は、限定を伴わずに、細胞、ファージまたは他のウイルスなどの生物学的物質;低分子などの有機化学物質;放射性核種;核酸分子またはオリゴヌクレオチド;ポリペプチド;またはペプチドを含む、何らかの天然または非天然物質であり得る。有用な成分は、癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤、プロアポトーシス薬剤、および抗血管新生薬などの治療薬;検出可能標識および造影剤;およびタグまたは他の不溶性支持体を含むが、これらに限定されない。有用な成分は、限定を伴わずに、ファージおよび他のウイルス、細胞、リポソーム、ポリマーマトリックス、非ポリマーマトリックスまたは金粒子などの粒子、マイクロデバイスおよびナノデバイス、およびナノスケールの半導体材料をさらに含む。これらや当技術分野で公知の他の成分は、コンジュゲートの構成要素であり得る。
【0094】
1.治療薬
コンジュゲートに組み込まれる成分は治療薬であり得る。ここで使用されるとき、「治療薬」という用語は、正常および病理組織において1またはそれ以上の生物活性を有する分子を意味する。様々な治療薬がコンジュゲートに含まれ得る。
【0095】
一部の実施形態では、コンジュゲートは癌化学療法剤を含み得る。ここで使用されるとき、「癌化学療法剤」は、癌細胞の増殖、成長、寿命または転移活性を阻害する化学物質である。そのような癌化学療法剤は、限定を伴わずに、ドセタキセルなどのタキサン;ドキソルビシンなどのアントラサイクリン;アルキル化剤;ビンカアルカロイド;代謝拮抗剤;シスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金剤;メトトレキサートなどのステロイド;アドリアマイシンなどの抗生物質;または選択的エストロゲン受容体調節剤;トラスツズマブなどの抗体であり得る。
【0096】
タキサンは、コンジュゲートにおいて有用な化学療法剤である。有用なタキサンは、限定を伴わずに、ドセタキセル(Taxotere;Aventis Pharmaceuticals,Inc.;Parsippany,N.J.)およびパクリタキセル(Taxol;Bristol−Myers Squibb;Princeton,N.J.)を含む。例えばChanら、J.Clin.Oncol.17:2341−2354(1999)およびParidaensら、J.Clin.Oncol.18:724(2000)参照。
【0097】
コンジュゲートにおいて有用な癌化学療法剤はまた、ドキソルビシン、イダルビシンまたはダウノルビシンなどのアントラサイクリンであり得る。ドキソルビシンは一般的に使用される癌化学療法剤であり、例えば乳癌を治療するために有用であり得る(StewartとRatain,In:“Cancer:Principles and practice of oncology”5th ed., chap.19(DeVita,Jr.ら編集;J.P.Lippincott 1997);Harrisら、In“Cancer:Principles and practice of oncology,”前出、1997)。加えて、ドキソルビシンは、癌を治療する上でその有効性に寄与し得る、抗血管新生活性を有する(Folkman,Nature Biotechnology 15:510(1997);Steiner,In“Angiogenesis:Key principles−Science,technology and medicine,”pp.449−454(Steinerら編集;Birkhauser Verlag,1992))。
【0098】
メルファランまたはクロラムブシルなどのアルキル化剤も、コンジュゲートにおいて有用な癌化学療法剤であり得る。同様に、ビンデシン、ビンブラスチンまたはビノレルビンなどのビンカアルカロイド;あるいは5−フルオロウラシル、5−フルオロウリジンまたはそれらの誘導体などの代謝拮抗剤は、コンジュゲートにおいて有用な癌化学療法剤であり得る。
【0099】
白金剤もコンジュゲートにおいて有用な癌化学療法剤であり得る。そのような白金剤は、例えばCrown,Seminars in Oncol.28:28−37(2001)に述べられているようなシスプラチンまたはカルボプラチンであり得る。コンジュゲートにおいて有用な他の癌化学療法剤は、限定を伴わずに、メトトレキサート、マイトマイシンC、アドリアマイシン、イフォスファミドおよびアンサマイシンを含む。
【0100】
乳癌およびホルモン依存性癌の治療のための癌化学療法剤はまた、選択的エストロゲン受容体調節剤または抗エストロゲンなどの、エストロゲンの作用に拮抗する物質であり得る。選択的エストロゲン受容体調節剤、タモキシフェンは、乳癌の治療のためにコンジュゲートにおいて使用できる癌化学療法剤である(Fisherら、J.Natl.Cancer Instit.90:1371−1388(1998))。
【0101】
コンジュゲートにおいて有用な治療薬は、ヒト化モノクローナル抗体などの抗体であり得る。一例として、抗上皮増殖因子受容体2(HER2)抗体、トラスツズマブ(Herceptin;Genentech,South San Francisco,Calif.)は、HER2/neu過剰発現性乳癌を治療するためにコンジュゲートにおいて有用な治療薬である(Whiteら、Annu.Rev.Med.52:125−141(2001))。
【0102】
有用な治療薬はまた、ここで使用されるとき、直接または間接的に細胞死を促進する分子であり得る、細胞傷害性薬剤であり得る。有用な細胞傷害性薬剤は、限定を伴わずに、低分子、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドミメティック、核酸分子、細胞およびウイルスを含む。非限定的な例として、有用な細胞傷害性薬剤は、ドキソルビシン、ドセタキセルまたはトラスツズマブなどの細胞傷害性低分子;以下でさらに述べるような抗菌性ペプチド;カスパーゼおよび毒素、例えばカスパーゼ−8などのプロアポトーシスポリペプチド;ジフテリア毒素A鎖、シュードモナス内毒素A、コレラ毒素、DAB389EGFなどのリガンド融合毒素、トウゴマ(ricinus communis)毒素(リシン);および細胞傷害性T細胞などの細胞傷害性細胞を含む。例えばMartinら、Cancer Res.60:3218−3224(2000);Kreitman and Pastan,Blood 90:252−259(1997);Allamら、Cancer Res.57:2615−2618(1997);およびOsborneとCoronado−Heinsohn,Cancer J.Sci.Am.2:175(1996)参照。当業者は、これらやここで述べるまたは当技術分野で公知のさらなる細胞傷害性薬剤が、開示されるコンジュゲートおよび方法において有用であり得ることを理解する。
【0103】
1つの実施形態では、治療薬は治療用ポリペプチドであり得る。ここで使用されるとき、治療用ポリペプチドは、生物学的有用な機能を有する何らかのポリペプチドであり得る。有用な治療用ポリペプチドは、限定を伴わずに、サイトカイン、抗体、細胞傷害性ポリペプチド;プロアポトーシスポリペプチド;および抗血管新生ポリペプチドを包含する。非限定的な例として、有用な治療用ポリペプチドは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、腫瘍壊死因子β(TNF−β)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン12(IL−12)、リンホタクチン(LTN)または樹状細胞ケモカイン1(DC−CK1)などのケモカイン;抗HER抗体またはそのフラグメント;毒素またはカスパーゼを含む細胞傷害性ポリペプチド、例えばジフテリア毒素A鎖、シュードモナス内毒素A、コレラ毒素、DAB389EGFなどのリガンド融合毒素またはリシン;またはアンギオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン、血小板因子4などの抗血管新生ポリペプチド;アナステリン;またはここでさらに述べるまたは当技術分野で公知のもの(下記参照)の1つであり得る。生物活性を有するこれらや他のポリペプチドは「治療用ポリペプチド」であり得ることが了解される。
【0104】
コンジュゲートにおいて有用な治療薬はまた、抗血管新生薬であり得る。ここで使用されるとき、「抗血管新生薬」という用語は、血管の増殖と発達である、血管新生を低減する又は予防する分子を意味する。様々な抗血管新生薬が常套的な方法によって製造され得る。そのような抗血管新生薬は、限定を伴わずに、低分子;ドミナントネガティブ形態の血管新生因子、転写因子および抗体などのタンパク質;ペプチド;およびリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および、例えばドミナントネガティブ形態の血管新生因子および受容体、転写因子、および抗体とその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を含む、核酸分子を包含する。例えばHagedornとBikfalvi,Crit.Rev.Oncol.Hematol.34:89−110(2000)、およびKirschら、J.Neurooncol.50:149−163(2000)参照。
【0105】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、インビボでの乳癌血管新生を含む、多くの型の癌における血管新生のために重要であることが示された(Borgstromら、Anticancer Res.19:4213−4214(1999))。VEGFの生物学的作用は、内皮細胞の増殖、生存、遊走および管腔形成の刺激、および血管透過性の調節を含む。抗血管新生薬は、例えばVEGFまたは別の血管新生因子の発現またはシグナル伝達を低下させる阻害剤または中和抗体、例えば抗VEGF中和モノクローナル抗体であり得る(Borgstromら、前出、1999)。抗血管新生薬はまた、FGF−1(酸性)、FGF−2(塩基性)、FGF−4またはFGF−5などの線維芽細胞増殖因子ファミリーの成員などのもう1つ別の血管新生因子(Slavinら、Cell Biol.Int.19:431−444(1995);FolkmanとShing,J.Biol.Chem.267:10931−10934(1992))、または内皮細胞特異的Tie2受容体チロシンキナーゼを通してシグナル伝達する因子、アンギオポエチン1(Davisら、Cell 87:1161−1169(1996);およびSuriら、Cell 87:1171−1180(1996))、またはこれらの血管新生因子の1つの受容体を阻害し得る。様々な機構が、限定を伴わずに、受容体結合の直接阻害、細胞外空間への血管新生因子の分泌を低下させることによる間接的阻害、または血管新生因子の発現、機能またはシグナル伝達の阻害を含む、血管新生因子の活性を阻害するように作用し得ることが了解される。
【0106】
様々な他の分子も抗血管新生薬として機能することができ、例えば、限定を伴わずに、アンギオスタチン;アンギオスタチンのクリングルペプチド;エンドスタチン;フィブロネクチンのヘパリン結合フラグメントである、アナステリン;修飾形態の抗トロンビン;コラゲナーゼ阻害剤;基底膜代謝回転阻害剤;脈管形成抑制ステロイド;血小板因子4およびそのフラグメントおよびペプチド;トロンボスポンジンおよびそのフラグメントおよびペプチド;およびドキソルビシンを含む(O’Reillyら、Cell 79:315−328(1994));O’Reillyら、Cell 88:277−285(1997);Homandbergら、Am.J.Path.120:327−332(1985);Homandbergら、Biochim.Biophys.Acta 874:61−71(1986);およびO’Reillyら、Science 285:1926−1928(1999))。市販されている抗血管新生薬は、例えばアンギオスタチン、エンドスタチン、メタスタチンおよび2ME2(EntreMed;Rockvilie,Md.);Avastin(Genentech;South San Francisco,Calif.)などの抗VEGF抗体;およびVEGFR−2の低分子阻害剤であるSU5416(SUGEN;South San Francisco,Calif.)およびVEGFR−2の低分子阻害剤、SU6668(SUGEN)などのVEGFR−2阻害剤、血小板由来増殖因子および線維芽細胞増殖因子I受容体を含む。これらや他の抗血管新生薬は常套的な方法によって製造でき、ここで使用される「抗血管新生薬」という用語に包含されることが了解される。
【0107】
ここで開示されるコンジュゲートはまた、創傷または組織損傷、又は血餅が形成している部位を治療するために使用できる。このために有用な成分は、炎症を予防する抗炎症薬、組織増殖を予防する再狭窄予防薬、血栓の形成を阻害するまたは制御する抗血栓薬または血栓崩壊剤、および組織増殖を調節し、組織の治癒を促進する生物活性物質を含む、いくつかの基本的な群に属する分子を含み得る。活性物質の例は、ステロイド、フィブロネクチン、抗凝血薬、抗血小板機能薬、脈管の内側表面壁の平滑筋細胞増殖を予防する薬剤、ヘパリン、ヘパリンフラグメント、アスピリン、クマジン、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、ヒルジン、ストレプトキナーゼ、抗増殖薬(メトトレキサート、シスプラチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン)、抗酸化剤(アスコルビン酸、βカロテン、ビタミンE)、代謝拮抗剤、トロンボキサン阻害剤、非ストロイド系およびステロイド系抗炎症薬、βおよびカルシウムチャネル遮断薬、DNAおよびRNAフラグメントを含む遺伝物質、完全発現遺伝子、抗体、リンホカイン、増殖因子、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ラミニン、エラスチン、コラーゲンおよびインテグリンを含むが、これらに限定されない。
【0108】
有用な治療薬はまた、抗菌性ペプチドであり得る。これは、創傷または他の感染部位を標的するために特に有用であり得る。そこでまた、腫瘍間質、創傷または血漿クロットに選択的にホーミングし、フィブリン−フィブロネクチンと相互作用するホーミング分子が、抗菌性ペプチドに連結されているコンジュゲートであって、コンジュゲートが標的領域に選択的にインターナリゼーションされ、標的領域に高い毒性を示し、および抗菌性ペプチドが、ホーミング分子に連結されていないとき低い哺乳動物細胞毒性を有する、コンジュゲートが開示される。ここで使用されるとき、「抗菌性ペプチド」という用語は、1またはそれ以上の微生物を死滅させるまたは微生物の増殖を緩慢化する能力である、抗菌活性を有し、およびホーミング分子に連結されていないとき低い哺乳動物細胞毒性を有する、天然に生じるペプチドまたは合成ペプチドを意味する。抗菌性ペプチドは、例えばグラム陽性またはグラム陰性細菌を含む細菌の1またはそれ以上の菌株、または真菌または原生動物を死滅させるまたはそれらの増殖を緩慢化することができる。それ故抗菌性ペプチドは、例えば大腸菌、緑膿菌または黄色ブドウ球菌の1またはそれ以上の菌株に対して、例えば静菌または殺菌活性を有し得る。下記に縛られるのは望むところではないが、抗菌性ペプチドは、自己凝集の結果としての膜二重層を通してイオンチャネルを形成する能力によって生物学的活性を有し得る。
【0109】
抗菌性ペプチドは、典型的には高度に塩基性であり、線状または環状構造を有し得る。以下でさらに論じるように、抗菌性ペプチドは両親媒性αヘリックス構造を有し得る(米国特許第5,789,542号;Java(登録商標)dpourら、J.Med.Chem.39:3107−3113(1996);およびBlondelleとHoughten,Biochem.31:12688−12694(1992))。抗菌性ペプチドはまた、例えばManchenoら、J.Peptide Res.51:142−148(1998)に述べられているようにβ鎖/βシート形成ペプチドであり得る。
【0110】
抗菌性ペプチドは、天然に生じるペプチドまたは合成ペプチドであり得る。天然に生じる抗菌性ペプチドは、細菌、昆虫、両生類および哺乳動物などの生物学的ソースから単離され、細菌感染から宿主生物を防護できる誘導的防御タンパク質であると考えられる。天然に生じる抗菌性ペプチドは、グラミシジン、マガイニン、メリチン、デフェンシンおよびセクロピンを含む(例えばMaloyとKari,Biopolymers 37:105−122(1995);Alvarez−Bravoら、Biochem.J.302:535−538(1994);Bessalleら、FEBS 274:−151−155(1990);およびBlondelleとHoughten in Bristol(編集),Annual Reports in Medicinal Chemistry pages 159−168 Academic Press,San Diego参照)。抗菌性ペプチドはまた、天然ペプチドの類似体、特に両親媒性を保持するまたは増強するものであり得る(下記参照)。
【0111】
コンジュゲートに組み込まれる抗菌性ペプチドは、ホーミング分子に連結されていないとき低い哺乳動物細胞毒性を有し得る。哺乳動物細胞毒性は、常套的アッセイを用いて容易に評価することができる。一例として、哺乳動物細胞毒性は、Java(登録商標)dpourら、前出、1996に述べられているようにインビトロでのヒト赤血球の溶解によって検定できる。低い哺乳動物細胞毒性を有する抗菌性ペプチドは、ヒト赤血球に対して溶解性ではないか、または溶解活性のために100μM以上の濃度、好ましくは200、300、500または1000μM以上の濃度を必要とする。
【0112】
1つの実施形態では、抗菌性ペプチド部分が、真核細胞によってインターナリゼーションされたときミトコンドリア膜の崩壊を促進する。特に、そのような抗菌性ペプチドは、真核細胞膜に比べてミトコンドリア膜を選択的に崩壊させる。ミトコンドリア膜は、細菌膜と同様に、しかし真核細胞形質膜とは異なって、高い含量の負に荷電したリン脂質を有する。抗菌性ペプチドは、例えばミトコンドリア膨潤に関するアッセイまたは当技術分野で周知の別のアッセイを用いて、ミトコンドリア膜を崩壊させる上での活性について検定できる。例えば(KLAKLAK)(配列番号8)は、真核細胞を死滅させるために必要な濃度よりも有意に低い、10μMの濃度で著明なミトコンドリア膨潤を誘導する抗菌性ペプチドである。
【0113】
例えば50μM、40μM、30μM、20μM、10μMまたはそれ以下で、有意のミトコンドリア膨潤を誘導する抗菌性ペプチドは、ミトコンドリア膜の崩壊を促進するペプチドとみなされる。
【0114】
抗菌性ペプチドは、例えば配列(KLAKLAK)(配列番号9)、(KLAKKLA)(配列番号10)、(KAAKKAA)(配列番号11)または(KLGKKLG)(配列番号12)を含むことができ、および、1つの実施形態では、配列(KLAKLAK)(配列番号8)を含む。
【0115】
抗菌性ペプチドは一般に、希釈水溶液中でランダムコイル立体配座を有するが、高レベルのらせん率は、ミセル、合成二重層または細胞膜などのヘリックス促進溶媒および両親媒性媒質によって誘導され得る。αヘリックス構造は当技術分野において周知であり、理想的なαヘリックスは、1回転当たり3.6個の残基および1残基当たり1.5Åの翻訳(1回転当たり5.4Å;Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties W.H Freeman,New York(1984))を有することによって特徴づけられる。両親媒性αヘリックス構造では、極性および非極性アミノ酸残基が両親媒性ヘリックスへと一列に並んでおり、両親媒性ヘリックスは、ペプチドをらせんの軸に沿って見たとき、疎水性アミノ酸残基が主として1つの面に存在し、親水性残基が主として反対側の面に存在するαヘリックスである。
【0116】
広く異なる配列の抗菌性ペプチドが単離されており、共通の特徴として両親媒性αヘリックス構造を共有した(Saberwalら、Biochim.Biophys.Acta 1197:109−131(1994))。両親媒性およびらせん率を高めると予測されるアミノ酸置換を有する天然ペプチドの類似体は、典型的には高い抗菌活性を有する。一般に、高い抗菌活性を有する類似体は、同時に哺乳動物細胞に対する高い細胞毒性も有する(Maloyら、Biopolymers 37:105−122(1995))。
【0117】
抗菌性ペプチドに関してここで使用されるとき、「両親媒性αヘリックス構造」は、生理的pHでいくつかの極性残基を含む親水性の面と非極性残基を含む疎水性の面を有するαヘリックスを意味する。極性残基は、例えばリシンまたはアルギニン残基であり得、一方非極性残基は、例えばロイシンまたはアラニン残基であり得る。両親媒性αヘリックス構造を有する抗菌性ペプチドは、一般に両親媒性ドメイン内に等しい数の極性残基と非極性残基、および中性pHでペプチドに全体的正電荷を与えるのに十分な数の塩基性残基を有する(Saberwalら、Biochim.Biophys.Acta 1197:109−131(1994))。当業者は、ロイシンおよびアラニンなどのヘリックス促進アミノ酸が好都合に抗菌性ペプチドに含まれ得ることを理解する(例えばCreighton、前出、1984)。両親媒性αヘリックス構造を有する抗菌性ペプチドは当技術分野で公知であり、例えばMcLaughlinとBeckerへの米国特許第5,789,542号に述べられている。
【0118】
これらや他の物質は有用な治療薬であり、開示されるコンジュゲートおよび方法において別々にまたは一緒に使用できることは医薬腫瘍学の当業者によって了解される。それ故、コンジュゲートがそのような治療薬の1またはそれ以上を含み得ること、および所望する場合は、付加的な成分がコンジュゲートの一部として含まれ得ることが了解される。非限定的な例として、一部の場合には、ホーミング分子と治療薬の間にオリゴペプチドスペーサーを使用することが望ましいと考えられる(FitzpatrickとGarnett,Anticancer Drug Des.10:1−9(1995))。
【0119】
他の有用な薬剤は、血栓崩壊剤、アスピリン、抗凝血薬、鎮痛薬および精神安定薬、β遮断薬、ACE阻害剤、硝酸塩、律動安定化薬剤、および利尿薬を含む。心臓への損傷を制限する薬剤は、心臓発作の2−3時間以内に与えた場合のみ効果がある。血餅を破壊し、酸素に富む血液がブロックされた動脈を流れることを可能にする血栓崩壊剤は、心臓発作後できるだけ早く投与すれば患者の生存の可能性を上昇させる。心臓発作後2−3時間以内に投与された血栓崩壊剤は最も有効である。静脈内注射される場合、これらは、アニソール結合プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子コンジュゲート(APSAC)またはアニストレプラーゼ、組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(r−tPA)、およびストレプトキナーゼを含む。開示されるコンジュゲートは、これらまたは同様の薬剤のいずれかを使用することができる。
【0120】
2.検出可能物質
開示されるコンジュゲート中の成分はまた、検出可能物質であり得る。様々な検出可能物質が、開示される方法において有用である。ここで使用されるとき、「検出可能物質」という用語は、検出することができる何らかの分子を指す。有用な検出可能物質は、インビボで投与して、その後検出できる成分を含む。開示されるコンジュゲートおよび画像化法において有用な検出可能物質は、放射性標識および蛍光分子を含むが、これらに限定されない。検出可能物質は、例えば、直接または間接的に、好ましくは非侵襲的手法および/またはインビボ視覚化手法によって、検出を容易にする何らかの成分であり得る。例えば検出可能物質、例えば放射線医学的手法を含む、何らかの公知の画像化手法によって検出できる。検出可能物質は、例えば造影剤がイオン性または非イオン性である場合の、造影剤を含み得る。一部の実施形態では、例えば、検出可能物質は、タンタル化合物および/またはバリウム化合物、例えば硫酸バリウムを含む。一部の実施形態では、検出可能物質は、放射性ヨウ素などのヨウ素を含む。一部の実施形態では、例えば、検出可能物質は、ヨードカルボン酸、トリヨードフェノール、ヨードホルムおよび/またはテトラヨードエチレンなどの有機ヨード酸を含む。一部の実施形態では、検出可能物質は、非放射性検出可能物質、例えば非放射性同位体を含む。例えばGdは、ある種の実施形態において非放射性検出可能物質として使用できる。
【0121】
検出可能物質の他の例は、検出可能な放射線(例えば蛍光励起、放射性壊変、スピン共鳴励起等)を放射するまたは放射を生じさせ得る成分、局所電磁場に影響を及ぼす成分(例えば磁性、強磁性、強磁性、常磁性および/または超常磁性種)、放射線エネルギーを吸収するまたは散乱させる成分(例えば発色団および/または発蛍光団)、量子ドット、重元素および/またはその化合物を含む。例えば米国特許公開第2004/0009122号に述べられている検出可能物質参照。検出可能物質の他の例は、陽子放出成分、X線不透過性成分、および/またはTc−99mおよび/またはXe−13のような放射性核種などの放射性成分を含む。そのような成分は放射性薬品として使用できる。さらなる他の実施形態では、開示される組成物は、ここで開示される検出可能物質の何らかの組合せを含む、1またはそれ以上の異なる種類の検出可能物質を含み得る。
【0122】
有用な蛍光成分は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、アミノメチルクマリン(AMCA)、エオシン、エリスロシン、BODIPY(登録商標)、Cascade Blue(登録商標)、Oregon Green(登録商標)、ピレン、リサミン、キサンテン、アクリジン、オキサジン、フィコエリトリン、量子染料(商標)などのランタニドイオンの大環状キレート、チアゾールオレンジ−エチジウムヘテロ二量体などの蛍光エネルギー転移染料、およびシアニン染料Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7を含む。他の特異的蛍光標識の例は、3−ヒドロキシピレン5,8,10−トリスルホン酸、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、酸性フクシン、アリザリンコンプレキソン、アリザリンレッド、アロフィコシアニン、アミノクマリン、アントロイルステアリン酸、アストラゾンブリリアントレッド4G、アストラゾンオレンジR、アストラゾンレッド6B、アストラゾンイエロー7GLL、アタブリン、オーラミン、オーロホスフィン、オーロホスフィンG、BAO9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール)、BCECF、硫酸ベルベリン、ビスベンズアミド、ブランコフォアFFG溶液、ブランコフォアSV、Bodipy F1、ブリリアントスルホフラビンFF、カルセインブルー、カルシウムグリーン、カルコフロールRW溶液、カルコフロールホワイト、カルコフルオアホワイト(Calcophor White)ABT溶液、カルコフルオアホワイト(Calcophor White)標準溶液、カルボスチリル、カスケードイエロー、カテコールアミン、チナクリン、コリホスフィンO、クマリン−ファロイジン、CY3.1 8、CY5.1 8、CY7、Dans(1−ジメチルアミノナファリン5スルホン酸)、Dansa(ジアミノナフチルスルホン酸)、ダンシルNH−CH3、ジアミノフェニルオキシジアゾール(DAO)、ジメチルアミノ−5−スルホン酸、二フッ化ジピロメテンホウ素、ジフェニルブリリアントフラビン7GFF、ドーパミン、エリスロシン ITC、オイクリシン、FIF(ホルムアルデヒド誘導性蛍光)、フラゾオレンジ、フルオ 3、フルオレスカミン、Fura−2、ゲナクリルブリリアントレッドB、ゲナクリルブリリアントイエロー 10GF、ゲナクリルピンク3G、ゲナクリルイエロー5GF、グロキサン酸、グラニュラーブルー、ヘマトポルフィリン、Indo−1、イントラホワイトCf液、ロイコフォアPAF、ロイコフォアSF、ロイコフォアWS、リサミンローダミンB200(RD200)、ルシファーイエローCH、ルシファーイエローVS、マグダラレッド、マリーナブルー、マキシロンブリリアントフラビン10GFF、マキシロンブリリアントフラビン8GFF、MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン)、ミトラマイシン、NBDアミン、ニトロベンゾキサジドール、ノルアドレナリン(Noradorenaline)、ヌクレアファストレッド、ヌクレアイエロー、ニロサンブリリアントフラビンE8G、オキサジアゾール、パシフィックブルー、パラロサニリン(フォイルゲン)、ホルワイトAR溶液、ホルワイトBKL、ホルワイトRev、ホルワイトRPA、ホスフィン3R、フタロシアニン、フィコエリトリンR、ポリアザインダセンポントクロームブルーブラック、ポルフィリン、プリムリン、プロシオンイエロー、ピロニン、ピロニンB、ピロザールブリリアントフラビン7GF、キナクリンマスタード、ローダミン123、ローダミン5GLD、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミンB200、ローダミンBエクストラ、ローダミンBB、ローダミンBG、ローダミンWT、セロトニン、セブロンブリリアントレッド2B、セブロンブリリアントレッド4G、セブロンブリリアントレッドB、セブロンオレンジ、セブロンイエローL、SITS(プリムリン)、SITS(スチルベンイソチオスルホン酸、スチルベン、スナーフ1(Snarf1)、スルホローダミンBカンC、スルホローダミンGエクストラ、テトラサイクリン、チアジンレッドR、チオフラビンS、チオフラビンTCN、チオフラビン5、チオライト、チオゾールオレンジ、チノポールCBS、トゥルーブルー、ウルトラライト、ウラニンB、ユビテックスSFC、キシレンオレンジ、およびXRITCを含む。
【0123】
特に有用な蛍光標識は、フルオレセイン(5−カルボキシフルオレセイン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ローダミン(5,6−テトラメチルローダミン)、およびシアニン染料Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7を含む。これらの蛍石(fluors)についての吸収および発光極大波長は、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm:672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)およびCy7(755nm;778nm)であり、それ故それらの同時検出を可能にする。フルオレセイン染料の他の例は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,4’,1,4,−テトラクロロフルオレセイン(TET)、2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、2’,7’−ジメトキシ−4’、5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)、2’−クロロ−5’−フルオロ−7’,8’−縮合フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(NED)、および2’−クロロ−7’−フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(VIC)を含む。蛍光標識は、Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ;Molecular Probes,Eugene,OR;およびResearch Organics,Cleveland,Ohioを含む、様々な商業的ソースから入手できる。蛍光プローブおよびそれらの使用はまた、Richard P.HauglandによるHandbook of Fluorescent Probes and Research Productsに述べられている。
【0124】
放射性検出可能物質のさらなる例は、γ放射体、例えばγ放射体In−111、I−125およびI−131、レニウム−186および188、およびBr−77(例えばThakur,M.L.ら、Throm Res.Vol.9 pg.345(1976);Powersら、Neurology Vol.32 pg.938(1982);および米国特許第5,011,686号参照);Cu−64、C−11およびO−15、ならびにCo−57、Cu−67、Ga−67、Ga−68、Ru−97、Tc−99m、In−113m、Hg−197、Au−198およびPb−203などの陽電子放射体を含む。他の放射性検出可能物質は、例えばトリチウム、C−14および/またはタリウム、ならびにRh−105、I−123、Nd−147、Pm−151、Sm−153、Gd−159、Tb−161、Er−171および/またはTl−201を含み得る。
【0125】
テクネチウム99m(Tc−99m)の使用は好ましく、他の適用において記述されており、例えば米国特許第4,418,052号および米国特許第5,024,829号参照。Tc−99mは、140keVの単一光子エネルギーおよび約6時間の半減期を有するγ放射体であり、Mo−99/Tc−99発生器から容易に入手できる。
【0126】
一部の実施形態では、放射性検出可能物質を含む組成物は、標的成分を検出のための適切な放射性同位体とカップリングすることによって作製できる。カップリングは、そのいずれもが標的成分に共有結合することができる、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N−N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)および/またはメタロチオネインなどのキレート化剤によって生じ得る。一部の実施形態では、テクネチウム99m、還元剤および水溶性リガンドの水性混合物を調製し、その後、開示される標的成分と反応させ得る。そのような方法は当技術分野において公知であり、例えば国際公開広報第WO99/64446号参照。一部の実施形態では、放射性ヨウ素を含む組成物は、交換反応を用いて作製し得る。例えばホットヨウ素とコールドヨウ素の交換は当技術分野において周知である。あるいは、放射性ヨウ素標識化合物は、対応するブロモ化合物からトリブチルスタニル中間体を通して作製できる。
【0127】
磁性検出可能物質は、常磁性造影剤、例えば磁気共鳴画像法(MRI)と共に使用される、ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸を含む(例えばDe Roos,A.ら、Int.J.Card.Imaging Vol.7 pg.133(1991)参照)。一部の好ましい実施形態は、原子番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、42、44、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70を有する元素の二価または三価イオンである常磁性原子を検出可能物質として使用する。適切なイオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)およびイッテルビウム(lll)、ならびにガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)を含むが、これらに限定されない。一部の好ましい実施形態は、強い磁気モーメントを有する原子、例えばガドリニウム(III)を使用する。
【0128】
一部の実施形態では、磁性検出可能物質を含む組成物は、標的成分を常磁性原子とカップリングすることによって作製できる。例えば適切な常磁性原子の金属酸化物あるいは硝酸塩、塩化物または硫酸塩などの金属塩を、メチル、エチルおよび/またはイソプロピルアルコールなどの水/アルコール媒質中に溶解または懸濁し得る。混合物を、同様の水/アルコール媒質中の等モル量の標的成分の溶液に添加し、攪拌し得る。混合物を、反応が完了するまたはほぼ完了するまで穏やかに加熱し得る。形成される不溶性組成物はろ過によって得ることができ、一方可溶性組成物は溶媒を蒸発させることによって入手できる。キレート化成分上の酸性基が開示される組成物中に残存する場合は、無機塩基(例えばナトリウム、カリウムおよび/またはリチウムの水酸化物、炭酸塩および/または重炭酸塩)、有機塩基、および/または塩基性アミノ酸を、例えば組成物の単離または精製を容易にするために、酸性基を中和するために使用できる。
【0129】
好ましい実施形態では、検出可能物質は、ホーミング分子が標的にホーミングする能力に干渉しないようにホーミング分子にカップリングされ得る。一部の実施形態では、検出可能物質は、ホーミング分子に化学結合することができる。一部の実施形態では、検出可能物質は、それ自体がホーミング分子に化学結合している成分に化学結合して、画像化および標的成分に間接的に結合することができる。
【0130】
D.医薬組成物および担体
開示されるコンジュゲートは、医薬的に許容される担体中でインビボ投与することができる。「医薬的に許容される」とは、生物学的ではないまたは有害ではない物質、すなわち物質が、望ましくない生物学的作用を生じさせずにまたはそれが含まれる医薬組成物のその他の成分のいずれかと有害な方法で相互作用せずに、核酸またはベクターと共に被験体に投与できることを意味する。担体は、当業者に周知のように、当然ながら有効成分の分解を最小限に抑えるようにおよび被験体における有害な副作用を最小限に抑えるように選択される。物質は、溶液中、懸濁液中に(例えば微粒子、リポソームまたは細胞に組み込まれて)存在し得る。
【0131】
1.医薬的に許容される担体
抗体を含む、組成物は、医薬的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用され得る。
【0132】
適切な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19版)A.R.Gennaro編集、Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に述べられている。典型的には、適切な量の医薬的に許容される塩が、製剤を等張にするために製剤中で使用される。医薬的に許容される担体の例は、食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液を含むが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5−約8、より好ましくは約7−約7.5である。さらなる担体は、マトリックスが成形された製品、例えばフィルム、リポソームまたは微粒子の形態である、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出性製剤を含む。一部の担体が、例えば投与の経路および投与される組成物の濃度に依存して、より好ましいと考えられることは当業者に明白である。
【0133】
医薬担体は当業者に公知である。これらの最も典型的なものは、滅菌水、食塩水および生理的pHの緩衝液などの溶液を含む、薬剤のヒトへの投与のための標準担体である。組成物は筋肉内または皮下経路で投与し得る。他の組成物は、当業者によって使用される標準手順に従って投与される。
【0134】
医薬組成物は、選択分子に加えて担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤等を含み得る。医薬組成物はまた、抗菌剤、抗炎症薬、麻酔薬等のような1またはそれ以上の有効成分を含み得る。
【0135】
医薬組成物は、局所治療または全身治療のいずれを所望するかおよび治療される領域に依存して、多くの方法で投与され得る。投与は、局所的に(眼科的、膣、直腸、鼻内経路を含む)、経口的に、吸入によって、または非経口的に、例えば点滴静注、皮下、腹腔内または筋肉内注射によってであり得る。開示される抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下的、腔内または経皮的に投与され得る。
【0136】
非経口投与のための製剤は、滅菌水溶液または非水性溶液、懸濁液および乳剤を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体は、食塩水および緩衝媒質を含む、水、アルコール/水溶液、乳剤または懸濁液を包含する。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液、または固定油を含む。静脈内ビヒクルは、液体および栄養補充液、電解質補充液(リンガーデキストロースに基づくものなど)等を含む。防腐剤および他の添加物、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガス等も存在し得る。
【0137】
局所投与のための製剤は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐薬、スプレー、液体および粉末を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等は、必要であるかまたは望ましいと考えられる。
【0138】
経口投与のための組成物は、粉末または顆粒、水または非水性媒質中の懸濁液または溶液、カプセル、サシェットまたは錠剤を含む。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤は望ましいと考えられる。
【0139】
組成物の一部は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、およびモノ−、ジ−、トリアルキルおよびアリールアミンおよび置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される、医薬的に許容される酸または塩基付加塩として投与され得る。
【0140】
E.コンビナトリアル化学
開示される組成物は、所望される方法で開示組成物と相互作用する分子または高分子を同定するコンビナトリアル手法のための標的として使用できる。また、配列番号1および2に開示される組成物またはその部分がコンビナトリアルまたはスクリーニングプロトコールにおいて標的として使用される、コンビナトリアル手法またはスクリーニング手法を通して同定される組成物が開示される。
【0141】
コンビナトリアル手法またはスクリーニング方法において開示組成物を使用するとき、標的分子の機能の阻害または刺激のような特定の所望特性を有する、高分子などの分子が同定されることは了解される。CLT1およびCLT2などの開示組成物を使用して同定され、単離される分子も開示される。それ故、CLT1およびCLT2などの開示組成物を含むコンビナトリアルおよびスクリーニングアプローチを使用して生産される産物も、ここで開示されるとみなされる。
【0142】
F.コンピュータ支援薬剤設計
開示される組成物は、開示組成物の構造を同定するためまたは所望する方法で開示組成物と相互作用する、低分子などの潜在的または実際の分子を同定するための、何らかの分子モデリング手法の標的として使用できる。
【0143】
モデリング手法において開示組成物を使用するとき、標的分子の機能の阻害または刺激のような特定の所望特性を有する、高分子などの分子が同定されることは了解される。CLT1およびCLT2などの開示組成物を使用して同定され、単離される分子も開示される。それ故、CLT1およびCLT2などの開示組成物を含む分子モデリングアプローチを使用して生産される産物も、ここで開示されるとみなされる。
【0144】
そこで、選択分子に結合する分子を単離するための1つの方法は、合理的設計を通してである。これは、構造情報およびコンピュータモデリングを通して達成され得る。コンピュータモデリング技術は、選択分子の三次元原子構造の視覚化および分子と相互作用する新しい化合物の合理的設計を可能にする。三次元構造物は、典型的には選択分子のx線結晶解析またはNMR画像化法からのデータに依存する。分子動力学は力場データを必要とする。コンピューターグラフィックシステムは、新規化合物が標的分子にどのように結合するかを予測することを可能にし、結合特異性を完全にするために化合物および標的分子の構造を実験的に操作することを可能にする。分子−化合物相互作用が、その一方または両方に小さな変化が生じたときどのようになるかを予測するには、通常、ユーザーが使用しやすい、分子設計プログラムとユーザーの間のメニュー起動性インターフェースに連結された、分子力学ソフトウエアおよび計算集約型コンピュータが必要である。
【0145】
分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation,Waltham,MAである。CHARMmは、エネルギーの最小化および分子動力学機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリングおよび分析を実行する。QUANTAは、互いに対する分子の相互作用的構築、改変、視覚化およびその挙動の解析を可能にする。
【0146】
多くの論文が、特定タンパク質と相互作用する薬剤のコンピュータモデリングを総説しており、例えばRotivinenら、1988 Acta Pharmaceutica Fennica 97,159−166;Ripka、New Scientist 54−57(June 16,1988);McKinalyとRossmann、1989 Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.29,111−122;PerryとDavies、QSAR:Quantitative Structure−Activity Relationships in Drug Design、pp.189−193(Alan R.Liss,Inc.1989);LewisとDean,1989 Proc.R.Soc.Lond.236,125−140および141−162;および、核酸成分のためのモデル酵素に関して、Askewら、1989 J.Am.Chem.Soc.111,1082−1090が挙げられる。化学物質をスクリーニングし、グラフィック表示する他のコンピュータプログラムは、BioDesign,Inc,Pasadena,CA.、Allelix,Inc,Mississauga,Ontario,CanadaおよびHypercube,Inc.,Cambridge,Ontarioなどの会社から入手可能である。これらは、主として特定タンパク質に特異的な薬剤への適用のために設計されるが、ひとたびDNAまたはRNAの特異的領域が同定されれば、その領域と特異的に相互作用する分子の設計に適合され得る。
【0147】
結合を変化させ得る化合物の設計と生成に関して上述したが、同様に、天然産物または合成化学物質を含む公知の化合物、およびタンパク質を含む生物活性物質のライブラリーを、基質結合または酵素活性を変化させる化合物に関してスクリーニングすることもできる。
【0148】
G.同様の機能を有する組成物
ここで開示される組成物は、フィブリン−フィブロネクチン複合体と相互作用することなどの、特定の機能を有することが了解される。開示される機能を実施するための特定の構造必要条件がここで開示され、開示される構造に関連する同じ機能を実行できる様々な構造が存在すること、およびこれらの構造は最終的に同じ結果、例えば刺激または阻害を実現することが了解される。
【0149】
H.キット
ここで開示される方法を実施するときに使用できる試薬を組み込んだキットがここで開示される。キットは、ここで論じるまたは開示される方法の実施において必要または有益であることが了解される、試薬または試薬の組合せを含み得る。例えば、キットはCLT1およびCLT2を含み得る。
【0150】
I.混合物
方法が組成物または成分または試薬の混合または接触を含むときはいつでも、方法を実施することは多くの異なる混合物を生じさせる。例えば方法が3つの混合工程を含む場合、工程が別々に実施されるときはこれらの工程の各々1つの後に固有の混合物が形成される。加えて、工程がどのように実施されたかに関わらず、全ての工程の完了時に1つの混合物が形成される。本開示は、開示される方法の実施によって得られるこれらの混合物、ならびに何らかの開示される試薬、組成物または成分を含む混合物、例えばここで開示される混合物を考慮する。
【0151】
J.システム
開示される方法を実施するためまたは実施を助けるために有用なシステムが開示される。システムは一般に、機構、機械、装置等のような製造の製品と、組成物、化合物、材料等の組合せを含む。開示されるまたは開示から明白であるそのような組合せが考慮される。
【0152】
K.コンピュータ読取り可能媒体
開示される核酸およびタンパク質は、アミノ酸のヌクレオチドから成る配列として表わされ得ることが了解される。これらの配列を表示する様々な方法があり、例えばヌクレオチドグアノシンはGまたはgによって表わされ得る。同様にアミノ酸バリンはValまたはVによって表わされ得る。当業者は、核酸またはタンパク質配列を、存在する様々な方法のいずれかでどのように表示し、表現するかを理解し、前記方法の各々がここで開示されるとみなされる。市販のフロッピー(登録商標)ディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスクおよびビデオディスクなどのコンピュータ読取り可能媒体、または他のコンピュータ読取り可能媒体上でのこれらの配列の表示がここで特に考慮される。また、開示される配列の2進コード表示も開示される。当業者はコンピュータ読取り可能媒体を理解する。それ故、核酸またはタンパク質配列が記録される、記憶されるまたは保存されるまたはコンピュータ読取り可能媒体。
【0153】
方法
フィブリンまたはフィブロネクチン結合ペプチドに連結された成分を含むコンジュゲートを被験体に投与することを含む、被験体において腫瘍、損傷の部位または血餅の部位に成分を指向させる方法が開示される。一例では、ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、または関連アミノ酸配列を含み得る。
【0154】
また、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有するペプチドに連結された成分を含むコンジュゲートを被験体に投与することを含む、被験体において腫瘍、損傷の部位および/または血餅の部位に成分を指向させる方法が開示される。
【0155】
前記成分は、癌を検出する、1またはそれ以上の腫瘍を視覚化する、またはその両方のために使用できる。被験体は、損傷の1またはそれ以上の部位を有していてもよく、前記成分は損傷部位の1またはそれ以上を指向する。コンジュゲートは損傷部位の少なくとも1つを治療し得る。コンジュゲートは、損傷部位の少なくとも1つの治療効果を有し得る。成分は、損傷部位の少なくとも1つを検出する、視覚化するまたは画像化する、または組合せのために使用できる。被験体は、1またはそれ以上の血餅を有していてもよく、成分は血餅の1またはそれ以上を指向する。コンジュゲートは血餅の少なくとも1つを治療し得る。コンジュゲートは、血餅の少なくとも1つへの治療効果を有し得る。成分は、少なくとも1つの血餅を検出する、視覚化するまたは画像化するために使用できる。
【0156】
また、腫瘍間質を含む腫瘍または血漿クロットまたは損傷または創傷の部位に選択的にホーミングするホーミング分子に連結された分子を含むコンジュゲートを被験体に投与し、それによって腫瘍間質を含む腫瘍または血漿クロットまたは損傷または創傷の部位に成分を指向させることによる、被験体において腫瘍間質を含む腫瘍または血漿クロットまたは損傷または創傷の部位に成分を指向させる方法が開示される。
【0157】
ここで開示されるコンジュゲートを被験体に投与することを含む、被験体における血餅中のフィブリン−フィブロネクチン複合体に成分を指向させる方法がここで開示される。成分は、1つの実施形態では、被験体における腫瘍間質に指向させることができ、コンジュゲートは癌を治療し得るまたは癌への治療効果を有し得る。一例では、腫瘍の大きさが縮小され得る。腫瘍の増殖が低減、停止または逆転され得る。
【0158】
また、腫瘍間質を含む、腫瘍に選択的にホーミングするホーミング分子に連結された治療薬を含むコンジュゲートを被験体に投与し、それによって被験体における腫瘍脈管の数を減少させることによる、被験体において腫瘍脈管の数を減少させる方法が開示される。開示される方法は、例えば乳癌脈管の数を減少させるために有用であり得る。腫瘍脈管の数を減少させるための方法では、例えば癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤および抗血管新生薬を含む、様々な治療薬を、被験体に投与されるコンジュゲートに組み込むことができる。
【0159】
また、腫瘍間質を含む、腫瘍に選択的にホーミングするホーミング分子に連結された治療薬を含むコンジュゲートを被験体に投与することにより、被験体において癌を治療する方法がここで提供される。非限定的な例として、開示される方法は乳癌を治療するために有用であり得る。
【0160】
開示される組成物は、癌などの、制御されない細胞増殖が起こる何らかの疾患を治療するために使用できる。種々のタイプの癌の非限定的なリストは以下の通りであり得る:リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、癌腫、固形組織の癌、扁平上皮癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫または肉腫、転移性癌、または一般的な癌。
【0161】
治療するために開示組成物を使用できる癌の代表的であるが非限定的なリストは以下の通りである:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳の癌、神経系の癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌などの肺癌、神経芽細胞腫/神経膠芽細胞腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、肝癌、黒色腫、口、咽喉、喉頭および肺の扁平上皮癌、結腸癌、子宮頸癌(cervical cancer)、子宮頸癌(cervical carcinoma)、乳癌、上皮癌、腎癌、尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血器癌、精巣癌、結腸直腸癌、前立腺癌または膵癌。
【0162】
乳癌間質のマトリックスに選択的にホーミングするが、脳、心臓、腎臓、肺、膵臓および乳房組織などの非腫瘍組織には検出可能にホーミングしないホーミング分子がここで例示される。配列番号1および配列番号2のような、腫瘍間質または血漿クロットに選択にホーミングする付加的なホーミング分子は、所望する場合はエクスビボ選択と結合した、米国特許第5,622,699号に述べられているインビボパニングを使用して同定され得るか、またはここで実施例において開示されるフィブリン−フィブロネクチンと相互作用する能力などのインビトロアッセイを通して同定され得る。
【0163】
組成物は、経口的に、非経口的に(例えば静脈内経路で)、筋肉内注射によって、腹腔内注射によって、経皮的に、体外的に、局所鼻内投与または吸入剤による投与を含む、局所的に、等で投与し得る。ここで使用されるとき、「局所鼻内投与」は、外鼻孔の一方または両方を通して鼻および鼻腔に組成物を送達することを意味し、噴霧機構または点鼻機構による送達、あるいは核酸またはベクターのエアロゾル化を通しての送達を含み得る。吸入抗原による組成物の投与は、噴霧機構または点鼻機構による送達により、鼻または口を通過し得る。送達はまた、挿管法によって呼吸器系(例えば肺)のいずれかの領域に直接行い得る。必要とされる組成物の正確な量は、被験体の種、年齢、体重および全身状態、治療されるアレルギー性疾患の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与方法等に依存して、被験体ごとに異なる。それ故、あらゆる組成物についての正確な量を特定することは不可能である。しかし、適切な量は、ここでの教示を考慮して、常套的な実験だけを用いて当分野の通常技術の1つによって決定され得る。
【0164】
組成物の非経口投与は、使用される場合、一般に注射によって特徴づけられる。注射用製剤は、液体溶液または懸濁液として、注射の前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態として、または乳剤として、従来の形態で製造され得る。非経口投与のために最近改良されたアプローチは、一定用量が維持されるような徐放性または持続放出性システムの使用を含む。例えば、参照によりここに組み込まれる、米国特許第3,610,795号参照。
【0165】
また、血漿クロットに選択的にホーミングするホーミング分子に連結された検出可能物質を含むコンジュゲートを被験体に投与すること、およびコンジュゲートを検出し、それによって対象領域を画像化することにより、被験体において凝固血漿を画像化する方法も開示される。
【0166】
血漿クロットを画像化するための開示される方法は、乳癌、卵巣癌、脳の癌、結腸癌、腎癌、肺癌、膀胱癌および前立腺癌および黒色腫を含む、様々な腫瘍に関連する腫瘍間質の存在を検出するために有用であり得る。検出可能物質を含むコンジュゲートの投与後、腫瘍間質が視覚化され得る。画像が腫瘍血管の存在に関して陽性であれば、腫瘍を大きさおよび浸潤の量に関して評価することができる。これらの結果は、癌の発生の病期および転移の存在または確率に関して臨床医に貴重な情報を提供する。
【0167】
腫瘍間質を画像化する方法において、投与されるコンジュゲートは、腫瘍内または腫瘍の周囲、例えば乳癌中または乳癌周囲の腫瘍組織の検出または視覚化を可能にする検出可能物質を含む。腫瘍間質のインビボでの診断画像化のために、ホーミング分子を、被験体への投与後、被験体の外部で検出可能である検出可能物質に連結し得る。そのような検出可能物質は、例えばインジウム113、インジウム115またはテクネチウム99などのγ線を放出する放射性核種であり得る;被験体への投与後、コンジュゲートは固体シンチレーション検出器を用いて視覚化され得る。
【0168】
また、実質的に精製された間質試料またはそのフラグメントを1またはそれ以上の分子と接触させること;および実質的に精製された間質試料またはそのフラグメントへの分子の特異的結合を測定し、特異的結合の存在が前記分子を腫瘍間質に選択的にホーミングする腫瘍ホーミング分子として同定することによる、腫瘍間質に選択的にホーミングする腫瘍ホーミング分子を同定する方法が開示される。開示される方法は、所望する場合、インビボでフィブリン−フィブロネクチンと相互作用する分子を投与すること;および腫瘍間質と分子の相互作用を測定することをさらに含み得る。所望する場合、実質的に精製された間質試料は支持体に固定化され得る。
【0169】
ここで開示される組成物および開示される方法を実施するために必要な組成物は、特に異なり指示がない限り、その特定試薬または化合物に関して当業者に公知の何らかの方法を用いて作製され得る。
【0170】
配列番号1および2などの、開示されるタンパク質を生産する1つの方法は、2またはそれ以上のペプチドまたはポリペプチドをタンパク質化学手法によって共に連結することである。例えばペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学のいずれかを用いて現在使用可能な実験室装置を使用して化学合成し得る。当業者は、開示されるタンパク質に対応するペプチドまたはポリペプチドが標準化学反応によって合成できることを容易に認識し得る。例えばペプチドまたはポリペプチドを合成し、その合成樹脂から切断せずにおき、一方ペプチドまたはタンパク質のその他のフラグメントは、合成して、その後樹脂から切断し、それによってその他のフラグメント上の機能的にブロックされた末端基を露出させることができる。ペプチド縮合反応により、これらの2つのフラグメントを、抗体またはそのフラグメントを形成するためにそれぞれそれらのカルボキシルおよびアミノ末端でペプチド結合によって共有結合連結することができる。(Grant GA(1992)Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1992);Bodansky MとTrost B.編集(1993)Principles of Peptide Synthesis.Springer−Verlag Inc.,NY(少なくともペプチド合成に関する資料について参照によりここに組み込まれる)。あるいは、ペプチドまたはポリペプチドは、ここで述べるようにインビボで独立して合成される。ひとたび単離されれば、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドは、同様のペプチド縮合反応によってペプチドまたはそのフラグメントを形成するように連結され得る。
【0171】
例えばクローン化されたペプチドまたは合成ペプチドセグメントの酵素による連結は、比較的短いペプチドフラグメントを連結してより大きなペプチドフラグメント、ポリペプチドまたは全長タンパク質ドメインを作製することを可能にする(Abrahmsen Lら、Biochemistry,30:4151(1991))。あるいは、合成ペプチドのネイティブ化学的連結法(native chemical ligation)が、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成によって構築するために利用できる。この方法は2段階の化学反応から成る(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science,266:776−779(1994))。第一工程は、初期共有結合産物としてチオエステル結合中間体を与えるための、保護されていない合成ペプチド−チオエステルと、アミノ末端Cys残基を含むもう1つの保護されていないペプチドセグメントの化学選択的反応である。反応条件を変化させずに、この中間体は、連結部位に天然ペプチド結合を形成する、自発的で迅速な分子内反応を受ける(Baggiolini Mら(1992)FEBS Lett.307:97−101;Clark−Lewis Iら、J.Biol.Chem.,269:16075(1994);Clark−Lewis Iら、Biochemistry,30:3128(1991);Rajarathnam Kら、Biochemistry 33:6623−30(1994))。
【0172】
あるいは、化学的連結の結果としてペプチドセグメントの間で形成される結合が非天然(非ペプチド)結合である場合は、保護されていないペプチドセグメントを化学的に連結する(Schnolzer,Mら、Science,256:221(1992))。この手法は、タンパク質ドメインの類似体を合成するためならびに完全な生物活性を有する比較的純粋なタンパク質を大量に合成するために使用されてきた(deLisle Milton RCら、Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press,New York,pp.257−267(1992))。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、ここで特許請求される化合物、組成物、製品、装置および/または方法がどのようにして作製され、評価されるかの完全な開示と説明を当業者に提供するために提示されるものであり、純粋に例示であることが意図され、開示を限定することは意図されない。数(例えば量、温度等)に関しては正確さを保証するよう努力を払ったが、多少の誤差および偏差が存在するはずである。異なる指示がない限り、割合は重量比であり、温度は℃または周囲温度であり、および圧は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0174】
A.血漿クロットから選択されるペプチドは腫瘍間質に結合する
血漿クロットに結合するが、抗凝固性血漿には結合しないファージを増幅するためにファージ選択スキームを設計した。3回の選択は、血漿クロットへの7倍高い結合を有するプールを生産した。さらなる選択手順は結合を上昇させなかった。配列決定は、ペプチド挿入物CGLIIQKNEC(CLT1ペプチド、配列番号1)およびCNAGESSKNC(CLT2ペプチド、配列番号2)をコードするファージがクロット結合ファージにおいて高度に富化されたことを示した。24クローンのうち3つがCLT1をコードすると配列決定され、2つがCLT2をコードすると配列決定された;残りのクローンは一度だけ提示された。CLTファージクローンは、対照ファージと比較して3−4倍の効率で血漿クロットに結合した。それらは、プラスチック上に固定化された精製フィブリンまたはフィブロネクチンから生じたクロットには有意に結合しなかった。
【0175】
CLTペプチドがインビボで凝固血漿タンパク質を認識するかどうかを調べるため、ペプチドをフルオレセインコンジュゲートとして合成し、腫瘍におけるそれらの蓄積を画像化した。正所性MDA−MB−435異種移植片腫瘍を担持するマウスにフルオレセイン結合CLT1(n=6)、CLT2(n=4)、または配列KAREC(配列番号5)を有する対照ペプチド(n=4)を静脈内注射した。ペプチド注射の3時間後の青色光下でのこれらのマウスからの全組織の検査は、CLT1およびCLT2を注射したマウスの腫瘍において強い蛍光を明らかにし、一方対照ペプチドを注射したマウスからの腫瘍では基本的に蛍光が検出されなかった(図1)。CLTを注射した動物の健常器官では蛍光が検出されなかった。
【0176】
組織学的検査で、腫瘍におけるCLTペプチド蛍光は腫瘍内でのネットワークパターンとして現われた(図1C、G)。両方のペプチドの腫瘍ホーミングは、5倍過剰の非標識CLT2と組み合わせたフルオレセイン結合CLT1およびCLT2の同時注射後、大きく低下した(図1D、H)。これは、CLT1ペプチドがCLT2と同じ腫瘍内の結合部位を認識することを指示する。これらの結果の定量は、CLTペプチドを注射したマウスのMDA−MB−435腫瘍における蛍光の強度が、KAREC(配列番号5)対照ペプチドを注射したマウスにおけるよりも60−130倍強いことを示した(図1M)。また、CLTペプチドが、試験した様々な腫瘍の全てにおいて特異的に蓄積したことが図1Mに示されている(n=2−8)。図1Cおよび1Gに示されているものと類似した線維状パターンが、これらの他の腫瘍の各々で見られた。ヒト臨床癌を認識するCLTペプチドの能力を検討するため、ペプチドオーバーレイアッセイを開発した。CLT1ペプチドによるオーバーレイは、ペプチドのi.v.注射後に腫瘍で見られたものと同様のマウスルイス肺癌における線維ネットワークを生じた(図2A)。ペプチドの結合も、非標識CLTペプチドによって阻害されたが(図2B)、対照ペプチドでは阻害されず(図2C)、結合の特異性を示した。2つの臨床乳癌(図2D、E)およびPPC1異種移植片からの切片は、このオーバーレイアッセイにおいて陽性であった(図2F)。
【0177】
B.CLTペプチドは腫瘍間質においてフィブリンおよびフィブロネクチンと結合する
フィブリン(フィブリノーゲン)に対する抗体による腫瘍切片の染色は、正常組織では見られない線維染色を生じる(Dvorak,H.F.,Senger,D.R.,Dvorak,A.M.,Harvey,V.S.およびMcDonagh,J.(1985)Science,227,1059−61)。静脈内注射したCLTペプチドからの蛍光(CLT1;図3A)とフィブリン染色(図3B)は、MDA−MB−435乳癌異種移植片の腫瘍切片に共局在した(図3C)。血漿フィブロネクチンおよびフィブリンは、第XIII因子活性により血漿クロット中に共に沈積する(Mosher,D.F.(1975)J.Biol.Chem.,250,6614−21)。次に、腫瘍におけるCLTペプチド蛍光とフィブロネクチン染色の関係を分析した。結果は、CLTペプチドがフィブロネクチンとも共分布することを示した。MMTV−PyMTトランスジェニック乳癌におけるCLTペプチド、フィブリンおよびフィブロネクチンの分布も検討した。結果は、MDA−MB−435異種移植片で得られたものと同じであった。
【0178】
C.CLTペプチドの腫瘍ホーミングはフィブリンおよび血漿フィブロネクチンを必要とする
CLTペプチドの腫瘍へのホーミングにおけるフィブリン(フィブリノーゲン)およびフィブロネクチンの役割を検討するため、ノックアウトマウスを使用した。フィブリノーゲンノックアウトマウスは生存可能であり(Palumbo,J.S.,Kombrinck,K.W.,Drew,A.F.,Grimes,T.S.,Kiser,J.H.Jay L.Degen,J.L.およびBugge,T.H.(2000),Blood 96,3302−3309)、腫瘍レシピエントとして使用した。フィブロネクチンの完全な欠如は致死的であるが、血漿フィブロネクチンを欠くマウスは、生後、肝におけるフィブロネクチン遺伝子を欠失させることによって作製できる(Sakai,T.,Johnson,K.J.,Murozono,M.,Sakai,K.,Magnuson,M.A.,Wieloch,T.,Cronberg,T.,Isshiki,A.,Erickson,H.P.およびFassler R.(2001)Nat.Med.7,324−30)。CLTペプチドは、野生型C57BL/6マウス(n=10)で増殖するB16F1腫瘍にホーミングし、線維網を生じさせた(CLT1;図3D)。これに対し、フィブリノーゲンノックアウトマウス(フィブリンを産生する能力を欠く)で増殖させた腫瘍(n=4)ではかすかな均一に分布する蛍光だけが存在した(図3E)。血漿フィブロネクチン欠損マウスの野生型同腹子において増殖させたB16F1腫瘍も線維マトリックス中にCLTペプチドを蓄積した(図3F)が、血漿フィブロネクチンを欠くマウス(n=6)では蓄積しなかった(図3G)。フィブリノーゲンノックアウトマウスと異なり、血漿フィブロネクチン欠損マウスでは腫瘍への残留ペプチド結合は存在しなかった(図3H)。これらの結果は、フィブリンおよび血漿からのフィブロネクチンの両方が、CLTペプチドが腫瘍における線維マトリックスを際立たせるために必要であるが、フィブリンの不在下ではペプチドの多少の散在性結合が存続することを示す。
【0179】
D.CLTはインビボで組織損傷の部位に結合する
血液凝固は創傷治癒の重要な部分である。それ故、組織損傷にホーミングするCLTペプチドを試験した。フルオレセイン結合CLTペプチドは脱内皮化大腿動脈にホーミングし(n=5)、血管壁において強い蛍光を生じた(図4A)。CLTホーミングはまた、筋肉の挫滅損傷(n=3;図4D)および切開から生じる皮膚創傷(n=4;図4E)においても認められた。損傷を有するマウスの無傷動脈、筋肉、皮膚(図4B、F、G)または他の健常組織ではCLTペプチドホーミングは認められず、および対照ペプチドは損傷組織へのホーミングを示さなかった。
【0180】
E.試験材料および方法
1.動物、細胞系および組織
B16F1マウス黒色腫、ルイス肺癌、C8161ヒト黒色腫、MDA−MB−435ヒト乳癌、およびPPC−1ヒト前立腺癌細胞(American Type Culture Collection)を、10%FCSを添加したRPMIまたはDMEM中に維持した。ヒト腫瘍細胞(1×10)を、腫瘍を誘発するためにヌードBALB/c nu/nuマウスの乳房脂肪パッドまたは側腹部に注入した。MMTV PyMTマウスはDr.Robert Oshima(Burnham Institute for Medical Research,La Jolla,CA)によって提供された。MMTV PyMTマウスは、マウス腫瘍ウイルスプロモーターによって駆動されるポリオーマミドルT抗原の影響下で乳癌を発症する(Siegel,P.M.,Ryan,E.D.,Cardiff,R.D.,Muller W.J.(1999)EMBO J.,18,2149−64)。1×10細胞を皮下注射することによって誘発されるB16F1腫瘍を、フィブリノーゲンノックアウトマウス(Suh,T.T.,Holmback,K.,Jensen,N.J.,Daugherty,C.C.,Small,K.,Simon,D.I.,Potter,S.およびDegen,J.L.(1995)Genes Dev.9,2020−2033)、およびトランスジェニック血漿フィブロネクチン欠損C57BL/6−Fn(fl/fl)Mx−Cre(Sakai,T.,Johnson,K.J.,Murozono,M.,Sakai,K.,Magnuson,M.A.,Wieloch,T.,Cronberg,T.,Isshiki,A.,Erickson,H.P.およびFassler R.(2001)Nat.Med.7,324−30)およびそれらの野生型同腹子の側腹部で増殖させた。肝におけるフィブロネクチン遺伝子の欠失はpoly(I):poly(C)によって誘導された(Yi,M.,Sakai,T.,Fassler,R.およびRuoslahti,E.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.100,11435−11438)。臨床乳癌からの凍結ヒト組織は、the Western Division of the NCI Cooperative Human Tissue Network(Vanderbilt University Medical Center,Nashville,TN)によって提供された。
【0181】
2.ファージライブラリー
T7 10−3bファージベクター(T7 Select Kit,Novagen)上で5−15のペプチドコピーを発現するため、CX8C(C=システイン;X=任意のアミノ酸)の一般構造を有する環状ペプチドライブラリーを設計した。CX8Cをコードするオリゴヌクレオチドを、隣接するEcoRI/HindIIIアダプターと共に合成した(N=任意のヌクレオチド、K=グアニンまたはチミン、M=アデニンまたはシトシン):
5’−AATTCCTGCNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKTGCTA−3’(配列番号6)および
3’−GGACGNNMNNMNNMNNMNNMNNMNNMNNMACGATTC
GA−5’(配列番号7)。
【0182】
アニーリングしたオリゴヌクレオチド対を、T7 Selectプロトコールに従ってEcoRI/HindIII消化したファージベクターに連結した。ペプチドライブラリーの多様性は、5×10の一次組換え体であった。
【0183】
3.血餅形成
血液を0.4%クエン酸ナトリウムで抗凝固化し、2,500×gで遠心分離した。血漿を収集し、再び遠心して残りの血球を除去し、−80℃で冷凍した。CaClを20mMまで添加することによって凝血を開始させ、血餅をPBSで反復洗浄した。
【0184】
4.ファージスクリーニング
ヒト血漿クロットをCX8Cペプチドライブラリーと共に22℃で30分間インキュベートし、PBSで十分に洗浄した。次に血漿をクロットに添加して、可溶性血漿成分を認識するファージを除去した。クロットに結合したままであるファージプールを定量し、増幅した。最大クロット結合に達するまで前記工程を反復した。選択したプール中の24の無作為に取り出したファージクローンからの、ペプチドをコードするDNAを単離し、塩基配列決定した。
【0185】
5.ペプチド合成
記述されているように(Laakonenら、PNAS 2004)ペプチドを合成し、フルオレセインイソチオシアネートに結合して、空気に曝露することによって環化した。
【0186】
6.画像化抗体および免疫組織学
青色光下での画像化、および尾静脈注射後のフルオレセイン結合ペプチドの分布の検査が記述されている(Hoffman,R.M.(2005)Nature Reviews Cancer 5,796−806;Laakkonen,P.,Akerman,M.E.,Biliran,H.,Yang,M.,Ferrer,F.,Karpanen,T.,Hoffman,R.M.およびRuoslahti E.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101,9381−6)。
【0187】
画像化法は、手短には以下のように説明される:50Wの水銀灯を備えたライカ蛍光立体顕微鏡LZ12型を高倍率画像化のために使用した。D425y60帯域フィルターおよび470 DCXR二色性ミラーを通してGFPの選択的励起を生じさせた。放出された蛍光を、Hamamatsu C5810 3チップ冷却カラー電荷結合素子カメラ(Hamamatsu Photonics Systems,Bridgewater,NJ)でロングパスフィルターGG475(Chroma Technology,Brattleboro,VT)を通して収集した。画像をコントラストと輝度に関して処理し、IMAGE PRO PLUS 3.1ソフトウエア(Media Cybernetics,Silver Springs,MD)を使用して分析した。1,024×724ピクセルの画像が、IBM PCで直接にまたは高解像度Sony VCRのSLV−R1000型(Sony,Tokyo)でのビデオ出力を通して持続的に捕獲された。動物全体を視覚化するより低倍率での画像化を、青色光ファイバーによって照明したライトボックス(Lightools Research,Encinitas,CA)において実施し、上述したように、熱電冷却カラー電荷結合素子カメラを用いて画像化した(Yang,M.,Baranov,E.,Jiang,P.,Sun,F−X.,Li,X−M.,Li,L.,Hasegawa,S.,Bouvet,M.,Al−Tuwaijri,M.,Chishima,T.ら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97,1206−11)。
【0188】
マウスを、ペプチド注射の3時間後に心臓を通して灌流し、組織を検査のために切除した。フィブリンおよびフィブロネクチン免疫染色のため、組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、ビオチニル化マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗血清(Nordic Immunological Laboratories)またはポリクローナル抗マウスフィブロネクチン(Chemicon)、次いでストレプトアビジンAlexa 594または抗ウサギAlexa 594(Molecular Probes)でそれぞれ染色した。ペプチドオーバーレイのため、凍結OCT包埋組織の切片を10μg/mlフルオレセイン結合ペプチドと共に室温で30分間インキュベートした。Image−Pro Plusソフトウエアを使用して組織蛍光を定量した。代表的顕微鏡視野からの少なくとも2つの画像を各々の組織試料から分析し、同じ処置を受けた(n=2−8)個々のマウスからのデータをプールした。
【0189】
7.創傷アッセイ
マウス大腿動脈のワイヤ損傷を、以前に述べられているように(Komatsu,M.とRuoslahti,E.(2005)Nat Med.(2005)11:1346−1350)誘発した。ワイヤ損傷の30分後、フルオレセイン結合ペプチド250μgを静脈内注射した。マウスにおいて、四頭筋に挫滅損傷を与えることによって筋損傷を誘発し、48時間後にフルオレセイン結合ペプチド500μgを静脈内注射した。皮膚切開を同様に検討した。マウスを、ペプチド注射の4時間後に心臓を通して灌流し、組織を切除して、4%パラホルムアルデヒドで固定し、OCTに包埋した。
【0190】
参考文献
【0191】
【数1】

【0192】
【数2】

【0193】
【数3】

開示される方法および組成物は、これらは変化し得るので、述べられている特定の方法、プロトコールおよび試薬に限定されないことが了解される。また、ここで使用される用語は特定実施形態を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図されておらず、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることが了解される。
【0194】
ここでおよび付属の特許請求の範囲において使用するとき、単数形態の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに異なる指示を与えない限り複数の指示対象を包含することが留意されねばならない。それ故、例えば「ペプチド」の言及は複数のそのようなペプチドを包含し、「ペプチド」の言及は、1またはそれ以上のペプチドおよび当業者に公知のその等価物等の言及である。
【0195】
「選択的」または「場合により」は、その後に記述される事象、状況または物質が、生じてもよいまたは生じなくてもよいまたは存在してもよいこと、および記述が、前記事象、状況または物質が生じるまたは存在する場合と生じないまたは存在しない場合を包含することを意味する。
【0196】
範囲は、ここでは「約」ある特定値から、および/または「約」もう1つの特定値までとして表わされ得る。そのような範囲が表わされるとき、文脈が特に異なる指示を与えない限り、同時にその一方の特定値から、および/または他方の特定値までの範囲も明確に考慮され、開示されるとみなされる。同様に、値が、先行詞「約」の使用により、近似値として表わされるとき、その特定値は、文脈が特に異なる指示を与えない限り、開示されたとみなされるべきであるもう1つの明確に考慮される実施形態を形成することが了解される。範囲の各々の終点は、文脈が特に異なる指示を与えない限り、どちらも他方の終点に対しておよび他方の終点とは独立して有意であることがさらに了解される。最後に、明白に開示される範囲内に含まれる個々の値および値のサブ範囲の全てが、文脈が特に異なる指示を与えない限り、同様に明確に考慮され、開示されるとみなされるべきであることが了解されねばならない。前記は、個々の場合にこれらの実施形態の一部または全部が明白に開示されているか否かに関わりなく適用される。
【0197】
異なる定義がない限り、ここで使用される全ての技術的および学術的用語は、開示される方法および組成物が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。ここで述べるものと類似または等価のいかなる方法および材料も、本発明の方法および組成物の実施または試験において使用できるが、特に有用な方法、装置および材料は述べられている通りである。ここで引用する公表文献およびそれらが引用される資料は、参照により明確にここに組み込まれる。本文中のいかなる内容も、本発明が先行発明によるそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。参考文献が先行技術を構成するとは認めない。参考文献の考察はそれらの著者が主張する内容を述べるものであり、出願人は、引用される資料の正確さと適切性に異議を申し立てる権利を留保する。多くの公表文献がここで言及されるが、そのような言及は、これらの資料のいずれかが当技術分野における一般的知識の一部を形成することの承認ではないことは明らかに了解される。
【0198】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通じて、「含む」および「含むこと」のようなこの語の変形は、「含むがそれらに限定されないこと」を意味し、例えば他の添加物、成分、整数または工程を排除することは意図されない。
【0199】
当業者は、ここで述べる方法および組成物の特定実施形態の多くの等価物を認識し、常套的な実験だけを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0200】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、添付の図面は、開示される方法および組成物のいくつかの実施形態を例示し、説明と合わせて、開示される方法および組成物の原理を明らかにする役割を果たす。
【図1−1】図1A−1Mは、CLT1およびCLT2が腫瘍間質中に蓄積することを示す。正所性MDA−MB−435異種移植片腫瘍を担持するマウスに、フルオレセイン結合CLT1、CLT2または対照ペプチド(KAREC)500μgを静脈内注射した。3時間後、マウスをPBSで灌流した。腫瘍と様々な器官を青色光下で蛍光に関して肉眼検査した。CLT1(A、B)およびCLT2(E、F)は、切除した腫瘍において強い蛍光を生じたが、対照器官では蛍光を生じなかった。組織学的分析(400×)は、フルオレセイン標識CLT1(C)およびCLT2(G)が腫瘍内にネットワークパターンで分布することを示した。フルオレセイン結合CLT1(D)およびCLT2(H)を非標識CLT2(5倍過剰)と同時注射したとき、蛍光は大きく減少した。フルオレセイン結合対照ペプチドは腫瘍に蛍光を運搬しなかった(I−K)。CLTペプチド注入マウスの無腫瘍組織も陰性であった(L)。代表的な組織蛍光の結果を示す。対照ペプチド(KAREC)と比較した蛍光強度としてのCLTペプチドからの蛍光の数量化は、MDA−MB−435腫瘍(MDA)と同様に、様々な他の型の腫瘍が静脈内注射したCLTペプチドに特異的に結合することを示す(M)。核をDAPIで染色した。誤差バーは平均±SEMを示す;縮尺バーは50μmを示す。
【図1−2】図1A−1Mは、CLT1およびCLT2が腫瘍間質中に蓄積することを示す。正所性MDA−MB−435異種移植片腫瘍を担持するマウスに、フルオレセイン結合CLT1、CLT2または対照ペプチド(KAREC)500μgを静脈内注射した。3時間後、マウスをPBSで灌流した。腫瘍と様々な器官を青色光下で蛍光に関して肉眼検査した。CLT1(A、B)およびCLT2(E、F)は、切除した腫瘍において強い蛍光を生じたが、対照器官では蛍光を生じなかった。組織学的分析(400×)は、フルオレセイン標識CLT1(C)およびCLT2(G)が腫瘍内にネットワークパターンで分布することを示した。フルオレセイン結合CLT1(D)およびCLT2(H)を非標識CLT2(5倍過剰)と同時注射したとき、蛍光は大きく減少した。フルオレセイン結合対照ペプチドは腫瘍に蛍光を運搬しなかった(I−K)。CLTペプチド注入マウスの無腫瘍組織も陰性であった(L)。代表的な組織蛍光の結果を示す。対照ペプチド(KAREC)と比較した蛍光強度としてのCLTペプチドからの蛍光の数量化は、MDA−MB−435腫瘍(MDA)と同様に、様々な他の型の腫瘍が静脈内注射したCLTペプチドに特異的に結合することを示す(M)。核をDAPIで染色した。誤差バーは平均±SEMを示す;縮尺バーは50μmを示す。
【図2】図2A−2Fはペプチドオーバーレイアッセイを示し、CLTペプチドが臨床ヒト腫瘍に結合することを示している。マウスルイス肺癌の凍結切片をフルオレセイン結合CLT1ペプチドと共にインキュベートし、洗浄して、蛍光に関して分析した。ペプチドによって生成される線維ネットワーク(A)は、非標識CLTペプチドとの共インキュベーションによって排除されたが(B)、対照ペプチドでは排除されなかった(C)。2つのヒト臨床乳癌(DおよびE)およびPPC1異種移植片腫瘍(F)もCLTによって認識された。縮尺バーは50μmを示す(全てのパネル)。
【図3−1】図3A−3Hは、CLTペプチドが腫瘍間質においてフィブリンおよびフィブロネクチンと結合し、腫瘍ホーミングのためにフィブリン/フィブロネクチンマトリックスを必要とすることを示す。フルオレセイン結合CLT1を注射したマウスからのMDA−MB−435異種移植片腫瘍の凍結切片をフィブリン(フィブリノーゲン)に関して染色した。ペプチド蛍光(A)およびフィブリン染色(B)は、重複する分布を有する同様のパターンを示す(C)。静脈内注射したCLTペプチド(CLT1を示している)は、C57BL/6マウスにおいて増殖するB16F1腫瘍内に蛍光網を生じる(図3D)が、フィブリノーゲンノックアウトマウスで増殖する腫瘍では蛍光網を生じない(図3E)。CLT1はまた、血漿フィブロネクチン欠損C57BL/6−Fn(fl/fl)Mx−Creマウスの野生型同腹仔ではB16F1腫瘍にホーミングするが(F)、血漿フィブロネクチン欠損マウスの腫瘍は陰性であった(G)。顕微鏡写真は代表的画像を示す;パネルHは、結果を要約し、数量化している。WT、野生型マウス;FG−、フィブリノーゲンノックアウトマウス;FN−、血漿フィブロネクチン欠損マウス。誤差バーは平均±SEMを示し、縮尺バーは50μmを示す。
【図3−2】図3A−3Hは、CLTペプチドが腫瘍間質においてフィブリンおよびフィブロネクチンと結合し、腫瘍ホーミングのためにフィブリン/フィブロネクチンマトリックスを必要とすることを示す。フルオレセイン結合CLT1を注射したマウスからのMDA−MB−435異種移植片腫瘍の凍結切片をフィブリン(フィブリノーゲン)に関して染色した。ペプチド蛍光(A)およびフィブリン染色(B)は、重複する分布を有する同様のパターンを示す(C)。静脈内注射したCLTペプチド(CLT1を示している)は、C57BL/6マウスにおいて増殖するB16F1腫瘍内に蛍光網を生じる(図3D)が、フィブリノーゲンノックアウトマウスで増殖する腫瘍では蛍光網を生じない(図3E)。CLT1はまた、血漿フィブロネクチン欠損C57BL/6−Fn(fl/fl)Mx−Creマウスの野生型同腹仔ではB16F1腫瘍にホーミングするが(F)、血漿フィブロネクチン欠損マウスの腫瘍は陰性であった(G)。顕微鏡写真は代表的画像を示す;パネルHは、結果を要約し、数量化している。WT、野生型マウス;FG−、フィブリノーゲンノックアウトマウス;FN−、血漿フィブロネクチン欠損マウス。誤差バーは平均±SEMを示し、縮尺バーは50μmを示す。
【図4】図4A−4Gは、CLTペプチドが損傷組織にホーミングすることを示す。蛍光CLTペプチドまたは対照ペプチドを、あらかじめ組織損傷を与えておいたマウスに静脈内注射した。フルオレセイン結合CLT2は、30分前に針金で損傷させたマウス大腿動脈にホーミングするが(パネルAおよび挿入図)、正常大腿動脈にはホーミングしない(B)。パネルCは、動脈損傷モデルにおける両方のCLTペプチドについての結果の数量化を示す。48時間前に作製した筋挫滅損傷(D)および皮膚切開(E)もCLT2を蓄積する。正常筋肉および皮膚は陰性である(FおよびG)。縮尺バーは50μmを示す。
【図5】図5は、CLTペプチド環化の結果を示す。正所性MDA−MB−435異種移植片腫瘍を担持するマウスに、フルオレセイン結合CLT1および2(500μg)を静脈内注射した。3時間後、マウスをPBSと4%パラホルムアルデヒドで灌流した。組織学的分析は、環状型のCLTペプチドだけが腫瘍組織中に蓄積することを示した。
【図6】図6は、CLT1が血漿タンパク質に関してはアミロイド形成性であり、内皮細胞に関しては細胞傷害性であることを示す。CLT1は、3つの連続する疎水性残基の配列、LII(ロイシン−イソロイシン−イソロイシン)を含む。このモチーフはタンパク質に大きな不溶性凝集体を形成させる、VII配列(V、バリン)に非常に類似する(Esteras−Chopoら、2005)。血漿タンパク質フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンと凝集体を形成するCLT1の能力は、600nmで光散乱を測定することによってインビトロで明らかにされた(混濁度)。CLT1は、アルブミン溶液に添加したときアミロイド形成性ではなかった。フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンの存在下で凝集体を形成することが報告されている血管新生阻害剤Anginexを陽性対照として使用した(Akerman,Pilchら、2005)。タンパク質を凝集させるCLT1の能力は、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)に対するその細胞傷害性と相関する。150μg/mlで培地に添加したCLT1は、増殖中のHUVECにおいてのみ24時間以内に細胞死を誘導したが、集密状態のHUVECでは細胞死を誘導しなかった。 CLT2(CNAGESSKNEC、配列番号22)は、アミロイド形成性ではなく、細胞傷害性でもなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むアミノ酸セグメントを含有する単離ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが100残基未満の長さを有する、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが50残基未満の長さを有する、請求項1または2に記載の単離ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが20残基未満の長さを有する、請求項1−3のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸セグメントが、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1−4のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸セグメントが配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1−5のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項7】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列が1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、請求項1−6のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項8】
アミノ酸セグメントが環状である、請求項1−7のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項9】
前記アミノ酸セグメントがジスルフィド結合によって環化されている、請求項8に記載の単離ペプチド。
【請求項10】
前記アミノ酸セグメントが、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも約90%同一のアミノ酸配列、あるいは1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1−9のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドが腫瘍および損傷の部位に選択的にホーミングする、請求項1−10のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドが前記アミノ酸セグメントから成る、請求項1−11のいずれかに記載の単離ペプチド。
【請求項13】
請求項1−12のいずれかに記載のペプチドに連結された成分を含むコンジュゲート。
【請求項14】
前記ペプチドが腫瘍および損傷の部位と選択的に相互作用する、請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記成分が、癌化学療法剤、細胞傷害性薬剤、抗血管新生薬、ポリペプチド、核酸分子、低分子、発蛍光団、フルオレセイン、ローダミン、放射性核種、インジウム111、テクネチウム99、炭素11、炭素13または組合せである、請求項13または14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記成分が治療薬である、請求項13−15のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記成分が検出可能物質である、請求項13−15のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記コンジュゲートがウイルスを含む、請求項13−15のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記コンジュゲートがファージを含む、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
2番目のペプチドをさらに含み、該2番目のペプチドが請求項1−12のいずれかに記載のペプチドである、請求項13−19のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項21】
フィブリンまたは凝固フィブロネクチン結合ペプチド、あるいはもう1つ別の凝固血漿タンパク質に結合するペプチドに連結された成分を含むコンジュゲートを被験体に投与することを含む、該被験体において腫瘍、損傷の部位または血餅の部位に成分を指向させる方法。
【請求項22】
前記コンジュゲートが、請求項13−20のいずれかに記載のコンジュゲートである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記被験体が癌を有しており、前記成分が被験体における腫瘍間質を指向する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記コンジュゲートが前記癌を治療する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コンジュゲートが前記癌への治療効果を有する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
腫瘍の大きさが縮小する、請求項23−25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
腫瘍の増殖が低減されるか、停止されるか、または逆転される、請求項23−25のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記成分が、癌を検出するか、1またはそれ以上の腫瘍を視覚化するか、またはその両方のために使用される、請求項23−27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記被験体が1またはそれ以上の損傷部位を有し、前記成分が該1またはそれ以上の損傷部位を指向する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項30】
前記コンジュゲートが前記損傷部位の少なくとも1つを治療する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記コンジュゲートが前記損傷部位の少なくとも1つへの治療効果を有する、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記成分が、損傷部位の少なくとも1つを検出するか、視覚化するか、または画像化するか、あるいはそれらの組合せのために使用される、請求項29−31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記被験体が1またはそれ以上の血餅を有し、前記成分が1またはそれ以上の該血餅を指向する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項34】
前記コンジュゲートが前記血餅の少なくとも1つを治療する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記コンジュゲートが前記血餅の少なくとも1つへの治療効果を有する、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記成分が、前記血餅の少なくとも1つを検出するか、視覚化するか、または画像化するか、あるいはそれらの組合せのために使用される、請求項33−35のいずれかに記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−533317(P2009−533317A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553409(P2008−553409)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/003156
【国際公開番号】WO2007/092447
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508236848)バーナム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (9)
【Fターム(参考)】