腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の制御方法
【課題】 小粒の気泡が腹腔に送られることを防止できる腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび制御方法の提供。
【解決手段】 使い捨てタイプのカセット2を装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび制御方法であって、カセットの装填後に、一定量の透析液を前記加温部で所定温度に加温するヒータ91、92、93で加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために起立状態で設けられる容器と、容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁51と液面のレベルを検出する液面レベルセンサ52、52から構成される気泡除去装置50を備える。
【解決手段】 使い捨てタイプのカセット2を装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび制御方法であって、カセットの装填後に、一定量の透析液を前記加温部で所定温度に加温するヒータ91、92、93で加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために起立状態で設けられる容器と、容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁51と液面のレベルを検出する液面レベルセンサ52、52から構成される気泡除去装置50を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の制御方法に係り、特に透析液を腹膜内に送液する前に体温近くの温度まで加温する際にヘンリーの法則で発生する気泡を排除するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析方法(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis、以下「CAPD」ともいう)による腹膜透析装置によれば、患者自身が自宅や職場で透析液の容器(バッグ)の交換を行うことができる。このため社会復帰が容易となるので大いに注目されている。しかしながら、このCAPDは、患者の腹膜内に輸液チューブであるカテーテルチューブ(腹膜カテーテル)を留置し、このカテーテルチューブの体外端にトランスチューブを接続し、これに透析液の入った透析液バッグのチューブを接続し、各チューブを通じてバッグ内の透析液を腹膜内に注液し、所定時間透析を行った後に腹膜内の透析液排液を各チューブを通じて、排液バッグ内に回収するものである。このように使用される腹膜透析装置によれば、チューブ中に気泡が混入するかまたは透析液が空になったことを検出するために超音波による検出を行うように構成されている。
【0003】
このCAPDにおいては、透析液の腹膜内への注液は、透析液バッグを患者の腹部から1m程度高い位置に置き、その重力落差によって透析液を透析液バッグから腹膜内の腹部内(腹部内)に移送している。また、腹膜内からの透析液排液の回収は、排液バッグを患者の腹部から1m程度低い位置に置き、その落差によって透析液を腹膜内から排液バッグへ移送している。
【0004】
一方、このような透析液の注液及び排液方法では、例えば、患者が就寝中に腹膜透析を行う場合には、ベッドを用いて患者を床から70〜100cm程度高い位置に寝かせ、さらに、患者より1m程度高い位置に透析液バッグをセットする必要がある。このために、装置全体の高さが2m程度と大型なものとなり、取り扱いや運搬がしにくいばかりか、就寝中の患者が寝返りを打つこと等により送液用チューブを抑えて閉塞させ、透析注液及び排液が流れなくなる虞れがある。これに対する防止策として、流量センサの他に、閉塞検出器を設けて閉塞のアラームを発生および解除を行うように構成されたシステムも知られている。(特許文献1)
【特許文献1】特許第3113887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次に、図13の気泡量と温度の相関関係を示す図表において、透析バッグの容量が3500mlの場合において、例えば冬季においてバッグ内の温度が室内温度の5℃の温度状態となっており、ヒータ手段により体温近くの温度37℃までヒータで加温するとヘンリーの法則により2000ml当り約32ml分の気泡が発生することが知られている。このようにして発生した、気泡は滅菌状態の透析バッグ中に存在し、かつ面ヒータにより加温されるカセット体の加温部において蓄積されるので、大型の気泡に成長するので、この状態を気泡センサで検出し、それ移行の送液を中止させ、かつ廃棄バッグに向けて気泡を送ることで回収していた。
【0006】
一方、細かい小粒の気泡は気泡センサで検出できないので、腹腔内にそのまま送る場合があるが、人体の有する代謝機能で腹腔外に排出されるが、長期間に渡る治療後に腹腔内に堆積し肩痛などの放散痛が発生する場合がある。
【0007】
そこで、腹膜透析装置において気泡が腹腔内に混入することを防止するために、気泡除去容器(エアートラップ)を設けると良いが、この気泡除去容器は、専用カセットにおいて液面より上方に気泡を溜めておき液底面から透析液を供給するために、例えば光学式のセンサを用いて液面レベル検出を行うように構成することが考えられる。
【0008】
しかし、光学式液面レベルセンサによれば、透析液が透明であること、受光発光センサの光軸を揃えること、センサ部が汚染されないこと、などの条件を満足しないと正確な液面レベル検出ができなくなることが知られている。
【0009】
したがって、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、気泡センサでは検出不能な小粒の気泡が腹腔内に堆積することを防止して、肩痛などの放散痛が発生しない腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の腹膜透析方法の提供を課題としている。 加えて、気泡除去容器に設けられる液面レベルセンサに要求される全ての条件を満足することのできる腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の制御方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明によれば、送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置であって、操作部と表示部とを設けた本体と、前記カセットを、着脱自在に装填するカセット装填手段と、前記カセットの装填後に、前記ダイアフラムを正圧状態と負圧状態にすることで前記透析液容器からの送液及び前記排液容器への送液を行うポンピング作動手段と、前記カセットの装填後に、一定量の透析液を前記加温部で所定温度に加温するヒータ手段と、前記ヒータ手段により加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために起立状態で設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサと、から構成される気泡除去手段と、前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するために、前記流路切換部を開閉する流路切換手段と、前記操作部と前記表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段とを具備することを特徴としている。
【0011】
また、複数の前記透析バッグと、吊り下げられた予備バッグと、前記排液バッグとを前記カセットに対して接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にして使用するために、患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を、前記ポンピング作動手段により前記排液バッグに送液する第1の送液状態と、前記透析バッグの一つに溜められた透析液を、前記ポンピング作動装置により前記予備バッグへ送液するとともに、前記ヒータ手段により加温して前記気泡除去手段を介して前記予備バッグ内に溜め、前記加温で発生する気泡を前記予備バッグの液面より上方の空間部において蓄積させる第2の送液状態と、前記予備バッグから前記ポンピング作動装置により患者の腹腔に前記透析液を送液するとともに、患者の腹腔に所定時間貯留させておく第3の送液状態とに前記流路を切換えるように前記流路切換手段を制御することを特徴としている。
【0012】
また、前記流路切換手段は、前記第3の送液状態の後に、前記ポンピング作動手段により前記第2の送液状態で空になった前記透析バッグへ前記使用済透析液を送液する第4の送液状態に切換えることを特徴としている。
【0013】
また、前記逆止弁は中空糸を束ねて形成され、前記液面レベルセンサは、前記容器に対して上下方向に連通する軟質樹脂製のチューブと、前記チューブの対向する外周面を略平らに変形させて挟持する部材を1組の電極とし、前記1組の電極に夫々リード線を接続し、前記チューブの肉厚部と、前記1組の電極で挟まれた前記チューブの容積部とを、コンデンサ容量としたコンデンサとして構成し、透析液が前記チューブ内に存在する状態と、透析液が前記チューブ内に存在しない状態との間で変化する前記コンデンサ容量に基づき、前記液面レベルを判断する判断手段を備えることを特徴としている。
【0014】
また、前記チューブの横断面形状を略矩形に弾性変形させるための保持手段を備え、前記1組の電極は、前記チューブの肉厚部の端部に当接する第1電極と、前記チューブの対向する外周面に当接する第2電極とから構成され、前記チューブの比誘電率をεrとし、空気の誘電率をεoとし、前記第1電極の前記チューブの長手方向に沿う距離をLとし、前記第1電極間の距離をdとし、前記肉厚部の厚さをtとして、前記第1電極を備えるコンデンサ容量をC1として、前記第1電極を備えるコンデンサ容量を、C1=εr・εo・Lt/dから求め、前記第2電極の高さ寸法をd1とし、前記第2電極を備えるコンデンサ容量をC2として、前記第2電極を備えるコンデンサ容量を、C2・1=εr・εo・Ld1/tから求め、さらに、前記第2電極の間の距離であるdから前記肉厚部の2倍の厚さ2tを引いた距離をd2とし、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量をC2・2として、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量を、C2・2=εo・Ld1/d2から求めることで、C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1を求め、前記電極間に透析液が存在するコンデンサ容量をC2として、C2=(2/C2・1)−1から求めることを特徴としている。
【0015】
また、前記判断手段は、前記コンデンサの前記リードの一方をトリガー端子と、スレシュホールド(堰)端子とに接続し、他方の前記リードを接地するとともに、抵抗器を介して出力端子に接続した第1タイマー素子と、前記第1タイマー素子の前記出力端子をトリガー端子に接続した第2タイマー素子と、フリップ・フロップ素子とを有する回路構成であるあることを特徴としている。
【0016】
また、腹膜透析装置に用いられる透析液セットであって、前記複数の透析バッグと、前記予備バッグと、前記排液バッグと、前記流路とを前記カセットに対する接続前に無菌状態としたことを特徴としている。
【0017】
そして、送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置の制御方法であって、前記カセットを着脱自在に装填するカセット装填手段にセットされた前記カセットのダイアフラムをポンピング作動手段により正圧状態と負圧状態にすることで、前記透析液バッグからの送液及び前記排液バッグへの送液を行う工程と、ヒータ手段により一定量の透析液を加温部で所定温度に加温する工程と、起立状態に設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部に連通した逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサとから構成される気泡除去手段により、前記ヒータ手段により加温されることでヘンリーの法則で発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留し、かつ成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す工程と、前記流路切換部を開閉する流路切換手段により、前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するための工程と、操作部と表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段により、腹膜透析のための制御を行う工程とを備えることを特徴としている。
【0018】
本発明のその他の特徴は、以下の発明を実施するための最良の形態の記載及び添付図面により明らかになるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヒータによる加温でヘンリーの法則により発生した小粒の気泡が腹腔内に堆積することを防止して、肩痛などの放散痛が発生しないようにできる腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の腹膜透析方法が提供される。
【0020】
加えて、気泡除去容器に設けられる液面レベルセンサをチューブの対向する外周面を略平らに変形させて挟持する部材を1組の電極とし、これらの1組の電極で挟まれたチューブの容積部としたコンデンサとして構成することで、透析液がチューブ内に存在する状態と存在しない状態との間で変化するコンデンサ容量の変化に基づきチューブ中の液面レベルを判断することで、液面レベル検出が廉価な構成で実現可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である腹膜透析装置1と、カセット体2と、透析液を溜めた複数の透析バッグ5と、予備バッグ7と、排液バッグ6とをチューブ9に設けられたプラグ8a〜8jで接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成し、透析液を患者の腹腔4(破線図示)内に送液する接続状態を示した外観斜視図である。
【0022】
本図において、カセット体2は、扁平なカセット部2aと図中の破線図示の気泡除去タンク50を収納したカセット部2bとから構成されている。腹膜透析腹装置1は、この腹膜透析装置1に対して二重矢印方向に着脱可能に装着される腹膜透析装置用のカセット体2を設けている。この腹膜透析装置1は、カセット部2aを前面から装着するための横長の第1開口部300aと、カセット部2bを前面から装着するための縦長の第2開口部300bとを形成しており、回動されることでこれらの開口部300a、300bを同時に覆う状態に固定するための蓋部材301を設けている。
【0023】
また、カラー液晶装置を用いた表示部23と、治療の開始操作を行うための開始スイッチ24aと、治療の停止操作を行うための停止スイッチ24bとを図示のように配設している。
【0024】
操作部24aと操作部24bの形状および色は、それらを区別し易いように、上下に互いに異なっており、操作部24aには一つの凸部がまた操作部24bには二つの凸部が形成されている。また、誤操作防止のために、操作部24aと操作部24bは、表示部23を挟んで図示のように離間して配置されている。
【0025】
表示部23は、液晶表示パネル等を備えたタッチパネルとして構成されており、タッチパネルの押圧操作で透析治療に必要となる各種情報の表示と、装置の操作指示を音声ガイドとともに行うようにして、操作性、利便性を確保している。
【0026】
腹膜透析装置1は、主基部と、副基部とを取付用の基部としており、図示の樹脂製のカバーをそれぞれ設けるとともに、主基部と、副基部とを1〜2mm厚のアルミ金属板製としさらに随所に大型孔部を穿設することで軽量化を図っている。これらの各基部に対して軽量の樹脂製のカバーが固定されている。また、例えば100メガバイト以上の記憶容量を有するメモリカード(不図示)が腹膜透析装置1の背面からカード読取装置に対して装填可能に設けられており、表示部23の表示内容及び音声の変更や各国別の仕様変更を迅速に行えるように構成されている。
【0027】
さらに、上記の腹膜透析装置1の右側面手前側には不図示の遮蔽板が移動自在に設けられており、カセット体2のチューブ9に対する機械的な干渉防止をすることでカセット体2を矢印方向に移動して装填位置にセットできるようにしている。
【0028】
一方、カセット体2は、カセット体装着部に対して着脱可能な形状のカセット本体81と、カセット体2の本体81から連続形成される下本体フレーム811と、この下本体フレーム811から間隙86を介して対向して設けられた上本体フレーム812とから構成されている。
【0029】
さらに、カセット体2の本体81にはポンピング作動手段の被作動部であるダイヤフラム20、21と加温部60と流路切換部とが図示のように一体的に形成されている。
【0030】
一方、容積が3500ml前後の透析バッグ5は、6個分がプラグ8a〜8fを介してチューブ9に接続されるとともに、図示のようにスタンド3に設けられた一対のフック3fに対して一対の孔部5kを挿入することで吊るす状態にセットされる。この結果、各透析バッグ5の容積部の底面に接続されたチューブ9を介して透析液が供給されるとともに、後述するように使用済透析液の回収を行えることとなる。
【0031】
スタンド3は、ベース部材3cと、このベース部材3cの奥側から起立して設けられるとともに手前側に向けて曲げられた左右の支持部材3a、3aと、これらの支持部材3a、3aの間に固定される横棒部材3bと、この横棒部材3bの下方に固定される一対のフック3fとから構成されている。また、このスタンド3は、図示のように透析バッグ5と予備バッグ7を吊り下げるためにフック3fの高さ位置が、各バッグの上下方向の長さ寸法にチューブとプラグの長さ分を加えた位置となるように設定されており、図示のようにチューブとプラグが垂直になるように構成されている。
【0032】
また、スタンド3のベース部材3cは排液バッグ6を横たえて置けるように充分に広い面積を備えるとともに、上記の支持部材3a、3aを垂直に固定する充分な機械的強度を有する固定部を一体形成している。
【0033】
次に、図2は、図1の腹膜透析装置1に透析液を溜めた複数の透析バッグと予備バッグと排液バッグとをプラグを用いて接続して患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にした模式図である。
【0034】
本図において既に説明済みの同様の構成部品については同様の符号を付して割愛すると、排液バッグ6はプラグ8hを用いてチューブ9hに接続される。ここで、プラグ8h〜8jについては、接続後の状態が図示されており、接続前の状態ではプラグの一方と、プラグの他方とが別々な状態になっており、接続されることで図示の状態になる。また、チューブ9hには流路切換手段を構成するクランプ10hの一方が接続され、このクランプ10hの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0035】
また、図1に示したように吊り下げられた状態にセットされる透析バッグ5aは、プラグ8aを用いてチューブ9aに接続される。このチューブ9aには流路切換手段を構成するクランプ10aの一方が接続され、このクランプ10aの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0036】
以下同様に、透析バッグ5b〜5fはプラグ8b〜8fを用いてチューブ9b〜9fに接続される。これらのチューブ9b〜9fには流路切換手段を構成するクランプ10b〜10fの一方が接続され、これらのクランプ10b〜10fの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0037】
また、図1に示したように吊り下げられた状態でセットされる予備バッグ7は、プラグ8gを用いてチューブ9gに接続される。このチューブ9gには流路切換手段を構成するクランプ10gの一方が接続され、このクランプ10gの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0038】
これらの各クランプ10h〜10gと、クランプ10k、10m、10n、10p、10q、10jは図中の一点鎖線図示のカセット体2に内蔵されており、腹膜透析腹膜透析装置1にカセット体2が装填位置に装填された状態で後述するカム機構によりチューブ9が閉塞され、弾性力で元の状態に戻ることで開くように各クランプが機能するように構成されている。
【0039】
上記のように排液バッグ、予備バッグ、透析バッグがプラグとクランプを介して接続されるチューブ9kは、チューブ19に対してT字管で合流している。また、このチューブ19を取り囲むようにして気泡センサ14aが設けられており、チューブ19内に流入する大きい気泡検出を行うことで、気泡混入があった場合にはその旨を知らせ、動作を停止することで気泡が腹腔に入ることを未然に防止するようにしている。
【0040】
この気泡センサ14aを後述するコンデンサ式とすることで確実な気泡検出を行うことが可能となる。
【0041】
このチューブ19の途中からはクランプ10kを接続したチューブ29がT字管を介して分岐している。このチューブ29にはダイヤフラム20が接続しており、このダイヤフラム20にはクランプ10mが接続されている。このクランプ10mからは上記の加温部60となる蛇行流路が接続されており、面ヒータ91、92、93で加温部60を上下方向から挟むことで温度上昇を短時間で行うように構成されている。各面ヒータ91、92、93の温度は温度センサ13でモニターされることで各ヒータが適温になるように温度制御される。
【0042】
加温部60の上流と下流側には温度センサ12A、12Bが設けられており、加温部60で温度上昇された透析液の温度検出を行い、上記の温度センサ13とともに温度制御のためのフィードバック系を構成して、体温に近い温度に透析液を維持できるようにしている。
【0043】
この加温部60の出口となる下流には面ヒータにより加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために、図1で示したように起立状態で設けられる気泡除去装置50がチューブ59を介して接続されている。この気泡除去装置50は、容器と容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁51と、上下の液面レベルを検出するための液面レベルセンサ52、52とから構成されており、カセット体2を装填することで各液面レベルセンサによる液面検出をコンデンサの容量変化として検出できるように構成されている。
【0044】
この気泡除去装置50の出口にはクランプ10nが接続されており、このクランプ10nにはチューブ59が接続されている。このチューブ59の途中からはチューブ39とチューブ49が分岐しており、チューブ39にはクランプ10pが接続されており、チューブ29に戻るようにチューブ39が接続されている。また、チューブ59の途中から分岐したチューブ49にはクランプ10qが接続されており、ダイヤフラム21を介してチューブ19に戻るように接続されている。
【0045】
チューブ59にはクランプ10jが接続されており、このクランプ10jにはチューブ9mが接続されており、チューブ9mに接続されるプラグ8jを介して患者の腹腔4に接続するようにしている。チューブ9mの途中には電磁流量計16aと、気泡検出のための気泡センサ14bが設けられている。また、腹膜透析装置1には外気温度を検出する外気温センサ16bが設けられている。さらに、各チューブを開閉するクレンメ(不図示)が随所に設けられており、セット時における液漏れを防止している。
【0046】
ここで、各バッグ、チューブおよび加温部、ダイヤフラムの構成材料は、それぞれ軟質樹脂材料が使用される。この軟質樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ−(4−メチルペンテンー1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
【0047】
なお、上記の各ダイヤフラム20、21は、特開2003−000704号公報に詳細に記載されているエア回路で送液を行うことができるが、これに限定されずチューブの外周面に作用することで蠕動運動を行う蠕動式、ローラポンプ式であっても良い。
【0048】
次に、図3(a)は上記の気泡除去装置50の外観斜視図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。先ず、図3(a)において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、気泡除去装置50は加温後の透析液を最大で約50cc分溜めておく容積を有する密閉容器53を備えており、上記のチューブ59を下方に接続している。透析液Tの液面レベルM(破線図示)は入口側のチューブ59を介して送られる加温後の透析液により上方に移動し、出口側のチューブ59を介して腹腔4内に送られることで下方に移動する。
【0049】
この液面レベルMをコンデンサの容量変化として検出するために、密閉容器50の側面には上方開口部53bと下方開口部53cとの間で連通する柔軟性を備えるチューブ54が接続されている。このチューブ54は、上記のようにカセット体2が腹膜透析装置1に対して矢印D方向にセットされると電極72、73で挟持される状態となることでコンデンサを形成する液面センサ52、52を上下に形成している。電極72、73は不図示の保持手段で腹膜透析装置1に固定されている。
【0050】
一方、液面レベルM上の空間に連通する逆止弁51が設けられており、気泡を外部に出すとともに外部に対する無菌状態を密閉容器内部で維持できるように構成されている。
【0051】
図3(b)において、逆止弁51は液面レベルMより上方に位置する開口部53aにその切断面が露出するようにした無数の中空糸を設けており、外部へ気泡(空気)を圧力差で放出で逆方向には外気が流れないようにして容器内部を無菌状態に維持できるようにしている。この逆止弁としては、ゴム製のアンブレラ弁、ボール弁などに無菌フィルタを設けたものでも良いことになる。
【0052】
次に、液面レベルセンサをコンデンサの容量変化を検出する構成について述べると、図4(a)はチューブ54を破断して示した液面センサ52の立体模式図、(b)は(a)をさらに分解して示した立体模式図である。
【0053】
まず、図4(a)において、液面センサ52にチューブ54がセットされるとチューブの横断面形状を略矩形に弾性変形させる保持手段により、対向する外周面が略平らに変形されて1組の電極72、73で挟まれた状態となり、さらにチューブ54の下面が腹膜透析装置1の不図示の形状部に対して当接されてフラットな状態となり、チューブ54の上面は密閉容器53の側面に固定された不図示の部材が当接することで図示のようなフラット状態になる。
【0054】
1組の電極72、73は良電気伝導特性の銅などの金属板にメッキ処理を施し端子部を一体形成して準備され、図示のようにリード線74、74が夫々接続される。1組の電極72、73のチューブ54の長手方向に沿う距離Lを、電極72、73の間の距離dを有しており、チューブ54の肉厚部の厚さはtである。
【0055】
次に、図4(b)において、1組の電極72、73は、チューブ54の肉厚部tの端部に当接する第1電極72b、72b、73b、73bと、チューブ54の対向する外周面に当接する第2電極72a、73aに分解することができる。
【0056】
そして、チューブ54の比誘電率をεrとし、空気の誘電率をεoとし、第1電極72b、72b、73b、73bを備えるコンデンサ容量をC1として、コンデンサ容量C1=εr・εo・Lt/dの式から求めることができる。
【0057】
また、図4(a)に図示のようにチューブ54の当接部54aに当接する第2電極72a、73aの高さ寸法をd1とし、第2電極を備えるコンデンサ容量をC2とすると、第2電極72a、73aを備えるコンデンサ容量はC2・1=εr・εo・Ld1/tの式から求めることができる。
、さらに、図5(a)、(b)の模式図を参照して、第2電極72a、73aの間の距離であるdから肉厚部の2倍の厚さ2tを引いた距離をd2とし、電極間に空気が存在するコンデンサ容量をC2・2とすると、コンデンサ容量C2・2=εo・Ld1/d2の式から求めることができるので、C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1の式からチューブ54中に透析液が存在するかまたは空の状態にあるときのコンデンサ容量を求めることができる。
【0058】
また、図5(b)において電極72a、73a間に透析液Tが存在するコンデンサ容量をC2とするとC2=(2/C2・1)−1の式からコンデンサ容量を求めることができる。
【0059】
以上のように、液面レベルセンサ52をチューブ54の容積部をコンデンサ容量としたコンデンサとして構成することで、透析液Tがチューブ内に存在する状態と、存在しない状態との間で変化するコンデンサ容量から液面レベルを判断することが可能になる。この液面レベルセンサ52を判断手段である回路に接続することでレベル検出を行えることになる。
【0060】
図6は、液面レベルセンサ52を接続した回路構成図である。また、図7(a)、(b)は気泡除去装置50の模式図である。両図において、第1と第2の2個のタイマー素子LMC555を図示のように配線し、電力供給をV端子から夫々受けるとともに、液面レベルセンサ52を上記のように構成するためのコンデンサCのリード線74を一方のタイマー素子LMC555のトリガー端子とスレシュホールド(堰)端子とに接続し、他方のリード線74を接地するとともに、抵抗器Rcを介して出力端子に接続している。
【0061】
また、この第1タイマー素子の出力端子を第2タイマー素子LMC555のトリガー端子に接続し、図示のようにフリップ・フロップ素子77に対して接続している。
【0062】
以上の回路構成により、発振クロックの立下りパスルで一定幅のパルスを作成し、液面レベルセンサ52の接続されているタイマー素子の発振クロックの立下りパルスで、その一定幅のパルスが「1」であるか「0」であるかをフリップ・フロップ素子77において作成して透析液の液面レベルM1、M2を判断することが可能になる。
【0063】
すなわち、透析液Tが存在するコンデンサ容量C2=(2/C2・1)−1から、透析液Tが存在しないコンデンサ容量C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1に変動することを静電容量変化として検出して、チューブ54中に透析液Tが存在するか否かを簡単な回路構成で瞬時に検出することができる。
【0064】
次に、図8(a)はカセット体2の平面図、また図8(b)は図8(a)のX−X線矢視断面図である。このカセット体2の構成は、上記の特開2003−000704号公報に開示されたものと略同じ構成のものが使用可能であるが、相違点としては流路切換手段の被切り換え部となるクランプ10a〜10fが設けられる透析バッグ5a〜5fは、図示のように手前側に位置している点が挙げられる。また、排液バッグ6のクランプ10hと予備バッグ7のクランプ10gについては右側に位置している。また、ダイヤフラム20とダイヤフラム21は図示のように2個分が併設されている。
【0065】
また、図8(b)において、各クランプを制御してクランプ状態、アンクランプ状態の切り替えをするためにフィンガを上下駆動するためにカム機構100がモータ101で駆動されるように配置されているが、このカム機構の構成についても特開2003−000704号公報に詳細に記載されているので説明を省略する。ここで、このカム機構に代えてウオームギア機構を使用することができる。
【0066】
次に、図9は腹膜透析装置1の回路構成を示すブロック図である。本図において制御手段である制御システム15は、各種プログラムと治療条件などが記憶されたROM、RAMに基づいて制御を司るCPU150と、記憶部152とを備えており、CPU150には、上記の複数のクランプ10a〜10qの開閉を制御するクランプ制御部153と、複数の面ヒータ91、92、93の温度を制御するためのヒータ制御部154と、ポンピング作動装置であるポンピング作動手段10を制御するためのポンピング作動制御部155とが電気的に接続されている。また、CPU150には、上記の温度センサ12A、12Bと、各ヒータ用の温度センサ13と、表示部23と、操作部24a、24bとが接続されている。また気泡センサ14a、14bは気泡センサ部14を介してCPU150に接続されている。
【0067】
また、CPU150には、電源回路156と、バッテリー回路157と音声発生回路400とカセット体装填手段300を制御するためのカセット体装填制御部301とが電気的に接続されている。また、上記の液面レベルセンサ52、52もCPU150に接続されている。表示部23には上記のメモリカードを装填可能にしたカード読取装置203が電気的に接続されている。
【0068】
さらに、電磁流量計16aや外気温度センサ16bもCPU150に接続されている。電磁流量計16aは、注液された透析液の量を計測するために設けられたものであり、透析液の温度に左右されず流量を正確に測定することができる。
【0069】
この制御システム15によれば、温度センサ12Aにより測温された温度が予め設定された所定の温度である39℃以上になると、クランプ制御部153により、クランプを制御してクランプ状態とアンクランプ状態に切り替えるとともに、ヒータ制御部154により、各面ヒータ91、92、93への通電制御を行う。
【0070】
また、各面ヒータ91、92、93の出力値は、透析液の透析液の温度に基づいて選択される。すなわち、この制御システム15は、温度センサ12Aにより側温された温度と、温度センサ12Bにより測温された温度に基づいて、注液されるべき透析液の温度が所定の温度範囲内になるように各面ヒータ91、92、93への通電制御を行うように構成されている。
【0071】
そして、流路切換手段であるクランプ制御部153により、各クランプを後述のようにクランプ状態とアンクランプ状態に切り替えることで、患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を、ポンピング作動装置により各バッグに送り出す。
【0072】
具体的には、患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を排液バッグ6に送液する第1の送液状態と、透析バッグの一つに溜められた透析液を、ポンピング作動装置により予備バッグ7へ送液するとともに、ヒータ手段で加温して予備バッグ7内に溜める第2の送液状態と、予備バッグ7からポンピング作動装置で患者の腹腔4に透析液を送液するとともに、患者の腹腔に所定時間貯留させておくための第3の送液状態と、この第3の送液状態の後に、ポンピング作動装置で第2の送液状態で空になった例えば透析バッグ5aへ使用済透析液を送液する第4の送液状態とに流路を切換えるように構成されている。
【0073】
図10(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第1の送液状態を説明する配管図、図10(b)は第2の送液状態を説明する配管図である。
【0074】
本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず、図10(a)において、腹腔4に連通する流路を形成する接続状態にされて透析の準備が整い、腹膜透析装置1の起動が行われると患者はベッド上に横たわる。この後に腹腔4に日中において所定時間貯留させた使用済透析液(図中のハッチング図示)を、ポンピング作動装置により排液バッグ6に送液するための第1の送液状態にされる。
【0075】
具体的には、図10(a)においてチューブ9kに通じる透析バッグ5a〜5fのクランプが全て閉じられ、予備バッグ7のクランプも閉じられ、排液バッグ6のクランプ10hが開かれる。また、チューブ59のクランプ10n、10mと、チューブ49のクランプ10qが閉じられる一方で、チューブ9mのクランプ10j、チューブ39のクランプ10p、チューブ29のクランプ10kが開かれる。この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム20が動作されることで、腹腔4と、チューブ9mと、チューブ59と、チューブ39と、チューブ29と、チューブ19とチューブ9hとを連通する流路が形成される。この流路を介して図中の矢印方向に送液が行われて排液バッグ6に約3500mlの送液が行われる。この結果、腹腔4は空の状態となる。
【0076】
次に、図10(b)において、透析バッグの一つに溜められた透析液を、ポンピング作動装置により予備バッグ7へ送液するとともに、ヒータ手段により加温し、気泡除去装置50で細かい気泡を除去し予備バッグ7内に溜める第2の送液状態に移行する。
【0077】
具体的には、図10(b)において排液バッグ6のクランプ10hが閉じられる。また、チューブ9kに通じる透析バッグ5a〜5fの内の透析バッグ5aのクランプ10aのみが開かれる。また、チューブ29のクランプ10kと、10mと、10nと、チューブ49のクランプ10qが開かれる一方で、チューブ9mのクランプ10jと、チューブ39のクランプ10pとが閉じられる。また、チューブ49のクランプ10qが開かれることになる。
【0078】
この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム20が最初に動作されるとともに、これに前後して面ヒータ91、92、93への通電が実施されて透析液を体温近くまで温度上昇させるように、この流路を介して図中の実線矢印方向の送液が行われる。すなわち、加温後の透析液はバイパス流路となるチューブ49を流れ、ダイヤフラム21により図中の破線図示の矢印方向の送液が開始される。これに前後して、空になった透析バッグ5aのクランプ10aが閉じられ予備バッグ7のクランプ10gが開かれる。
【0079】
すると、例えば室温の5℃から体温近くの37℃に加温された透析液は上記のように吊り下げられた状態にセットされた予備バッグ7の中に流れ込むことになるが、このときヒータ手段による温度変化に伴い析出した小さな気泡を加温後の透析液の液面上の空間部7aで成長させつつ約3500ml分の送液が行われる。
【0080】
続いて、図11(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第3の送液状態を説明する配管図、図11(b)は第4の送液状態を説明する配管図である。
【0081】
本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず、図11(a)において、予備バッグ7からポンピング作動装置により患者の腹腔4に透析液を送液するとともに、患者の腹腔4に所定時間貯留させておくための第3の送液状態の様子が示されている。
【0082】
具体的には、図11(a)においてチューブ9kに通じる予備バッグ7のクランプ10gのみが開かれる。このとき、透析バッグ10aは空になっている。また、チューブ29のクランプ10kと、10mと、10nとが開かれる一方で、チューブ9mのクランプ10jも開かれる。チューブ39のクランプ10pと、チューブ49のクランプ10qは閉じられる。
【0083】
この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム20が動作されて既に加温済みの透析液が、この流路を介して図中の実線矢印方向に送液される。このとき、加温後の透析液は再度温度センサで温度検出され適温にされてからチューブ9mを介して腹腔4内への送液が行われる。この後に、所定時間である約1.5乃至2時間の時間経過を待つことで、腹腔周辺の血管中の血液と透析液との間の浸透圧の差によって行われる最初の透析治療が完了する。
【0084】
このとき、透析液は予備バッグ7中において発生する小さな気泡が液面上の空間部7aで成長されており、しかも底面から送液するのので気泡が流れ出ることは一切なくなる。 次に、図11(b)において、上記の第3の送液状態の後に、ポンピング作動装置により第3の送液状態で空になった透析バッグ10aへ使用済透析液を送液する第4の送液状態の様子が示されている。
【0085】
具体的には、図11(b)においてチューブ9kに通じる予備バッグ7のクランプ10gは閉じられる。このとき予備バッグ7は空になっているので、次の透析バッグ5bによる透析治療のための予備バッグ7として使用できることとになる。一方、透析バッグ10aは空になっているのでこの透析バッグ10aへの送液が行われる。このために、チューブ29のクランプ10kと、10mと、10nとが閉じられる一方で、チューブ9mのクランプ10jとチューブ49のクランプ10qと透析バッグ5aのクランプ10aが開かれることとなる。
【0086】
この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム21が動作されて使用済透析液がバイパス流路となるチューブ49を通して透析バッグ5aに送液される。
【0087】
これ移行、上記の第2の送液状態から第4の送液状態を繰り返し実施することで、透析バッグ5b、5c、5d、5e、5fの全てに使用済透析液を溜めることで患者の就寝時間である8時間に及ぶ腹膜透析が完了する。
【0088】
このようにして各透析バッグ内に溜められた使用済透析液は、各透析バッグがクレンメを用いてチューブが閉塞状態にされた後に各プラグを外すことで個別に運べるようになるので、簡単に廃棄処分できる。また、使用後の透析バッグは焼却処分される。
【0089】
図12は、腹膜透析装置1において上記の第1から第4の送液状態になることを示す動作説明のフローチャートである。本図においてステップS1において送液の準備が整うと腹膜透析装置1の電源がオンされて、ステップS2に進みセルフチェックプログラムが起動されて装置内の異常状態の有無が検査される。この後に、ステップS3に進みプライミング動作が実施されて透析バッグ他の接続後の透析液の流路中の空気を追い出しが行われて透析液でチューブ内を充満させる状態にする。
【0090】
以上で患者の就寝中の透析治療の準備が整い、ステップS4でスイッチがオンされることで治療が開始されると、ステップS5に進み初期排液である上記の第1の送液状態にされる。すなわち患者の昼間の活動中における透析液の回収を廃液バック6を用いて行う。これに前後して透析液の加温が実施され、気泡除去装置50で細かい気泡を除去し、予備バッグ7に予備加熱された透析液が溜められる上記の第2の送液状態になる。このとき、気泡除去装置50の液面レベルを上記のようにモニターして、所定量が密閉容器内に存在する状態に維持する。
【0091】
これに続き、ステップS6に進み上記の第3の送液状態にされる。すなわち患者の腫腔4に透析液を注入する処理を行う。この後にステップS7で、患者の腹腔4内に透析液を貯留させることで浸透圧による透析治療を行うことで透析液に析出してくる老廃物を含む排液である使用済透析液を患者の腹腔4で一時的に溜める。これに続き、ステップS8に進み上記の第4の送液状態にすることで空になった透析バッグ5aへの送液を行い最初の1個分の透析バッグによる治療を終了する。
【0092】
続く、ステップS9では残りの透析バッグ分の所定のサイクル数分の治療が終了したか否かが判断されて、透析バッグ5a〜5e分の透析液による治療が繰り返し行われて、終了するとステップS10に進み再排液が行われる。すなわち患者の腹腔4から回収し切れなかった使用済透析液を体の向きを変えるなどしながら排液する。
【0093】
このようにして排液が終了するとステップS11において最終注液が行われ、昼間活動中において腹腔4内に透析液を入れたままで生活する場合には、透析バッグ5fに溜められた透析液を最後に注液する。以上で送液が全て終了し、ステップS12で輸液セットを腹膜透析装置1から取り外すとともに、ステップS12で腹膜透析装置1の電源をオフして終了する。
【0094】
以上説明したように、気泡センサでは検出不能な小粒の気泡が腹腔内に送られることで腹腔内で堆積することを防止できるようになるので、肩痛などの放散痛が発生しないようにできる。また、気泡除去装置50に設けられる液面レベルセンサは、上記のようにコンデンサ式としたのでセンサに要求される全ての条件を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態である腹膜透析装置1と、カセット体2と、透析液を溜めた複数の透析バッグ5と、予備バッグ7と、排液バッグ6とをチューブ9に設けられたプラグ8a〜8jで接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成し、透析液を患者の腹腔4(破線図示)内に送液する接続状態を示した外観斜視図である。
【図2】図1の腹膜透析装置1に透析液を溜めた複数の透析バッグと予備バッグと排液バッグとをプラグを用いて接続して患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にした模式図である。
【図3】(a)は気泡除去装置50と液面レベルセンサ52、52とを示した外観斜視図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。
【図4】(a)はチューブ54を破断して示した液面センサ52の立体模式図、(b)は(a)をさらに分解して示した立体模式図である。
【図5】(a)、(b)は液面センサの模式図である。
【図6】液面レベルセンサ52を接続した回路構成図である。
【図7】(a)、(b)は気泡除去装置50の模式図である。
【図8】(a)はカセット体2の平面図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。
【図9】腹膜透析腹膜透析装置1の回路構成を示すブロック図である。
【図10】(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第1の送液状態を説明する配管図、(b)は第2の送液状態を説明する配管図である。
【図11】(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第3の送液状態を説明する配管図、(b)は第4の送液状態を説明する配管図である。
【図12】腹膜透析装置1において上記の第1から第4の送液状態になることを示す動作説明のフローチャートである。
【図13】気泡量と温度の相関関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0096】
1 腹膜透析装置
2 カセット体
3 スタンド
4 腹腔
5a〜5f 透析バッグ
6 排液バッグ
7 予備バッグ
8a〜8j プラグ
9 チューブ
10a〜10q クランプ
19、29、39、49、59 チューブ
20、21 ダイヤフラム
50 気泡除去装置
51 逆止弁
52 液面レベルセンサ
60 加温部
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の制御方法に係り、特に透析液を腹膜内に送液する前に体温近くの温度まで加温する際にヘンリーの法則で発生する気泡を排除するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析方法(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis、以下「CAPD」ともいう)による腹膜透析装置によれば、患者自身が自宅や職場で透析液の容器(バッグ)の交換を行うことができる。このため社会復帰が容易となるので大いに注目されている。しかしながら、このCAPDは、患者の腹膜内に輸液チューブであるカテーテルチューブ(腹膜カテーテル)を留置し、このカテーテルチューブの体外端にトランスチューブを接続し、これに透析液の入った透析液バッグのチューブを接続し、各チューブを通じてバッグ内の透析液を腹膜内に注液し、所定時間透析を行った後に腹膜内の透析液排液を各チューブを通じて、排液バッグ内に回収するものである。このように使用される腹膜透析装置によれば、チューブ中に気泡が混入するかまたは透析液が空になったことを検出するために超音波による検出を行うように構成されている。
【0003】
このCAPDにおいては、透析液の腹膜内への注液は、透析液バッグを患者の腹部から1m程度高い位置に置き、その重力落差によって透析液を透析液バッグから腹膜内の腹部内(腹部内)に移送している。また、腹膜内からの透析液排液の回収は、排液バッグを患者の腹部から1m程度低い位置に置き、その落差によって透析液を腹膜内から排液バッグへ移送している。
【0004】
一方、このような透析液の注液及び排液方法では、例えば、患者が就寝中に腹膜透析を行う場合には、ベッドを用いて患者を床から70〜100cm程度高い位置に寝かせ、さらに、患者より1m程度高い位置に透析液バッグをセットする必要がある。このために、装置全体の高さが2m程度と大型なものとなり、取り扱いや運搬がしにくいばかりか、就寝中の患者が寝返りを打つこと等により送液用チューブを抑えて閉塞させ、透析注液及び排液が流れなくなる虞れがある。これに対する防止策として、流量センサの他に、閉塞検出器を設けて閉塞のアラームを発生および解除を行うように構成されたシステムも知られている。(特許文献1)
【特許文献1】特許第3113887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次に、図13の気泡量と温度の相関関係を示す図表において、透析バッグの容量が3500mlの場合において、例えば冬季においてバッグ内の温度が室内温度の5℃の温度状態となっており、ヒータ手段により体温近くの温度37℃までヒータで加温するとヘンリーの法則により2000ml当り約32ml分の気泡が発生することが知られている。このようにして発生した、気泡は滅菌状態の透析バッグ中に存在し、かつ面ヒータにより加温されるカセット体の加温部において蓄積されるので、大型の気泡に成長するので、この状態を気泡センサで検出し、それ移行の送液を中止させ、かつ廃棄バッグに向けて気泡を送ることで回収していた。
【0006】
一方、細かい小粒の気泡は気泡センサで検出できないので、腹腔内にそのまま送る場合があるが、人体の有する代謝機能で腹腔外に排出されるが、長期間に渡る治療後に腹腔内に堆積し肩痛などの放散痛が発生する場合がある。
【0007】
そこで、腹膜透析装置において気泡が腹腔内に混入することを防止するために、気泡除去容器(エアートラップ)を設けると良いが、この気泡除去容器は、専用カセットにおいて液面より上方に気泡を溜めておき液底面から透析液を供給するために、例えば光学式のセンサを用いて液面レベル検出を行うように構成することが考えられる。
【0008】
しかし、光学式液面レベルセンサによれば、透析液が透明であること、受光発光センサの光軸を揃えること、センサ部が汚染されないこと、などの条件を満足しないと正確な液面レベル検出ができなくなることが知られている。
【0009】
したがって、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、気泡センサでは検出不能な小粒の気泡が腹腔内に堆積することを防止して、肩痛などの放散痛が発生しない腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の腹膜透析方法の提供を課題としている。 加えて、気泡除去容器に設けられる液面レベルセンサに要求される全ての条件を満足することのできる腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の制御方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明によれば、送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置であって、操作部と表示部とを設けた本体と、前記カセットを、着脱自在に装填するカセット装填手段と、前記カセットの装填後に、前記ダイアフラムを正圧状態と負圧状態にすることで前記透析液容器からの送液及び前記排液容器への送液を行うポンピング作動手段と、前記カセットの装填後に、一定量の透析液を前記加温部で所定温度に加温するヒータ手段と、前記ヒータ手段により加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために起立状態で設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサと、から構成される気泡除去手段と、前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するために、前記流路切換部を開閉する流路切換手段と、前記操作部と前記表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段とを具備することを特徴としている。
【0011】
また、複数の前記透析バッグと、吊り下げられた予備バッグと、前記排液バッグとを前記カセットに対して接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にして使用するために、患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を、前記ポンピング作動手段により前記排液バッグに送液する第1の送液状態と、前記透析バッグの一つに溜められた透析液を、前記ポンピング作動装置により前記予備バッグへ送液するとともに、前記ヒータ手段により加温して前記気泡除去手段を介して前記予備バッグ内に溜め、前記加温で発生する気泡を前記予備バッグの液面より上方の空間部において蓄積させる第2の送液状態と、前記予備バッグから前記ポンピング作動装置により患者の腹腔に前記透析液を送液するとともに、患者の腹腔に所定時間貯留させておく第3の送液状態とに前記流路を切換えるように前記流路切換手段を制御することを特徴としている。
【0012】
また、前記流路切換手段は、前記第3の送液状態の後に、前記ポンピング作動手段により前記第2の送液状態で空になった前記透析バッグへ前記使用済透析液を送液する第4の送液状態に切換えることを特徴としている。
【0013】
また、前記逆止弁は中空糸を束ねて形成され、前記液面レベルセンサは、前記容器に対して上下方向に連通する軟質樹脂製のチューブと、前記チューブの対向する外周面を略平らに変形させて挟持する部材を1組の電極とし、前記1組の電極に夫々リード線を接続し、前記チューブの肉厚部と、前記1組の電極で挟まれた前記チューブの容積部とを、コンデンサ容量としたコンデンサとして構成し、透析液が前記チューブ内に存在する状態と、透析液が前記チューブ内に存在しない状態との間で変化する前記コンデンサ容量に基づき、前記液面レベルを判断する判断手段を備えることを特徴としている。
【0014】
また、前記チューブの横断面形状を略矩形に弾性変形させるための保持手段を備え、前記1組の電極は、前記チューブの肉厚部の端部に当接する第1電極と、前記チューブの対向する外周面に当接する第2電極とから構成され、前記チューブの比誘電率をεrとし、空気の誘電率をεoとし、前記第1電極の前記チューブの長手方向に沿う距離をLとし、前記第1電極間の距離をdとし、前記肉厚部の厚さをtとして、前記第1電極を備えるコンデンサ容量をC1として、前記第1電極を備えるコンデンサ容量を、C1=εr・εo・Lt/dから求め、前記第2電極の高さ寸法をd1とし、前記第2電極を備えるコンデンサ容量をC2として、前記第2電極を備えるコンデンサ容量を、C2・1=εr・εo・Ld1/tから求め、さらに、前記第2電極の間の距離であるdから前記肉厚部の2倍の厚さ2tを引いた距離をd2とし、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量をC2・2として、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量を、C2・2=εo・Ld1/d2から求めることで、C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1を求め、前記電極間に透析液が存在するコンデンサ容量をC2として、C2=(2/C2・1)−1から求めることを特徴としている。
【0015】
また、前記判断手段は、前記コンデンサの前記リードの一方をトリガー端子と、スレシュホールド(堰)端子とに接続し、他方の前記リードを接地するとともに、抵抗器を介して出力端子に接続した第1タイマー素子と、前記第1タイマー素子の前記出力端子をトリガー端子に接続した第2タイマー素子と、フリップ・フロップ素子とを有する回路構成であるあることを特徴としている。
【0016】
また、腹膜透析装置に用いられる透析液セットであって、前記複数の透析バッグと、前記予備バッグと、前記排液バッグと、前記流路とを前記カセットに対する接続前に無菌状態としたことを特徴としている。
【0017】
そして、送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置の制御方法であって、前記カセットを着脱自在に装填するカセット装填手段にセットされた前記カセットのダイアフラムをポンピング作動手段により正圧状態と負圧状態にすることで、前記透析液バッグからの送液及び前記排液バッグへの送液を行う工程と、ヒータ手段により一定量の透析液を加温部で所定温度に加温する工程と、起立状態に設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部に連通した逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサとから構成される気泡除去手段により、前記ヒータ手段により加温されることでヘンリーの法則で発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留し、かつ成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す工程と、前記流路切換部を開閉する流路切換手段により、前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するための工程と、操作部と表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段により、腹膜透析のための制御を行う工程とを備えることを特徴としている。
【0018】
本発明のその他の特徴は、以下の発明を実施するための最良の形態の記載及び添付図面により明らかになるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヒータによる加温でヘンリーの法則により発生した小粒の気泡が腹腔内に堆積することを防止して、肩痛などの放散痛が発生しないようにできる腹膜透析装置、腹膜透析セットおよび腹膜透析装置の腹膜透析方法が提供される。
【0020】
加えて、気泡除去容器に設けられる液面レベルセンサをチューブの対向する外周面を略平らに変形させて挟持する部材を1組の電極とし、これらの1組の電極で挟まれたチューブの容積部としたコンデンサとして構成することで、透析液がチューブ内に存在する状態と存在しない状態との間で変化するコンデンサ容量の変化に基づきチューブ中の液面レベルを判断することで、液面レベル検出が廉価な構成で実現可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である腹膜透析装置1と、カセット体2と、透析液を溜めた複数の透析バッグ5と、予備バッグ7と、排液バッグ6とをチューブ9に設けられたプラグ8a〜8jで接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成し、透析液を患者の腹腔4(破線図示)内に送液する接続状態を示した外観斜視図である。
【0022】
本図において、カセット体2は、扁平なカセット部2aと図中の破線図示の気泡除去タンク50を収納したカセット部2bとから構成されている。腹膜透析腹装置1は、この腹膜透析装置1に対して二重矢印方向に着脱可能に装着される腹膜透析装置用のカセット体2を設けている。この腹膜透析装置1は、カセット部2aを前面から装着するための横長の第1開口部300aと、カセット部2bを前面から装着するための縦長の第2開口部300bとを形成しており、回動されることでこれらの開口部300a、300bを同時に覆う状態に固定するための蓋部材301を設けている。
【0023】
また、カラー液晶装置を用いた表示部23と、治療の開始操作を行うための開始スイッチ24aと、治療の停止操作を行うための停止スイッチ24bとを図示のように配設している。
【0024】
操作部24aと操作部24bの形状および色は、それらを区別し易いように、上下に互いに異なっており、操作部24aには一つの凸部がまた操作部24bには二つの凸部が形成されている。また、誤操作防止のために、操作部24aと操作部24bは、表示部23を挟んで図示のように離間して配置されている。
【0025】
表示部23は、液晶表示パネル等を備えたタッチパネルとして構成されており、タッチパネルの押圧操作で透析治療に必要となる各種情報の表示と、装置の操作指示を音声ガイドとともに行うようにして、操作性、利便性を確保している。
【0026】
腹膜透析装置1は、主基部と、副基部とを取付用の基部としており、図示の樹脂製のカバーをそれぞれ設けるとともに、主基部と、副基部とを1〜2mm厚のアルミ金属板製としさらに随所に大型孔部を穿設することで軽量化を図っている。これらの各基部に対して軽量の樹脂製のカバーが固定されている。また、例えば100メガバイト以上の記憶容量を有するメモリカード(不図示)が腹膜透析装置1の背面からカード読取装置に対して装填可能に設けられており、表示部23の表示内容及び音声の変更や各国別の仕様変更を迅速に行えるように構成されている。
【0027】
さらに、上記の腹膜透析装置1の右側面手前側には不図示の遮蔽板が移動自在に設けられており、カセット体2のチューブ9に対する機械的な干渉防止をすることでカセット体2を矢印方向に移動して装填位置にセットできるようにしている。
【0028】
一方、カセット体2は、カセット体装着部に対して着脱可能な形状のカセット本体81と、カセット体2の本体81から連続形成される下本体フレーム811と、この下本体フレーム811から間隙86を介して対向して設けられた上本体フレーム812とから構成されている。
【0029】
さらに、カセット体2の本体81にはポンピング作動手段の被作動部であるダイヤフラム20、21と加温部60と流路切換部とが図示のように一体的に形成されている。
【0030】
一方、容積が3500ml前後の透析バッグ5は、6個分がプラグ8a〜8fを介してチューブ9に接続されるとともに、図示のようにスタンド3に設けられた一対のフック3fに対して一対の孔部5kを挿入することで吊るす状態にセットされる。この結果、各透析バッグ5の容積部の底面に接続されたチューブ9を介して透析液が供給されるとともに、後述するように使用済透析液の回収を行えることとなる。
【0031】
スタンド3は、ベース部材3cと、このベース部材3cの奥側から起立して設けられるとともに手前側に向けて曲げられた左右の支持部材3a、3aと、これらの支持部材3a、3aの間に固定される横棒部材3bと、この横棒部材3bの下方に固定される一対のフック3fとから構成されている。また、このスタンド3は、図示のように透析バッグ5と予備バッグ7を吊り下げるためにフック3fの高さ位置が、各バッグの上下方向の長さ寸法にチューブとプラグの長さ分を加えた位置となるように設定されており、図示のようにチューブとプラグが垂直になるように構成されている。
【0032】
また、スタンド3のベース部材3cは排液バッグ6を横たえて置けるように充分に広い面積を備えるとともに、上記の支持部材3a、3aを垂直に固定する充分な機械的強度を有する固定部を一体形成している。
【0033】
次に、図2は、図1の腹膜透析装置1に透析液を溜めた複数の透析バッグと予備バッグと排液バッグとをプラグを用いて接続して患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にした模式図である。
【0034】
本図において既に説明済みの同様の構成部品については同様の符号を付して割愛すると、排液バッグ6はプラグ8hを用いてチューブ9hに接続される。ここで、プラグ8h〜8jについては、接続後の状態が図示されており、接続前の状態ではプラグの一方と、プラグの他方とが別々な状態になっており、接続されることで図示の状態になる。また、チューブ9hには流路切換手段を構成するクランプ10hの一方が接続され、このクランプ10hの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0035】
また、図1に示したように吊り下げられた状態にセットされる透析バッグ5aは、プラグ8aを用いてチューブ9aに接続される。このチューブ9aには流路切換手段を構成するクランプ10aの一方が接続され、このクランプ10aの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0036】
以下同様に、透析バッグ5b〜5fはプラグ8b〜8fを用いてチューブ9b〜9fに接続される。これらのチューブ9b〜9fには流路切換手段を構成するクランプ10b〜10fの一方が接続され、これらのクランプ10b〜10fの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0037】
また、図1に示したように吊り下げられた状態でセットされる予備バッグ7は、プラグ8gを用いてチューブ9gに接続される。このチューブ9gには流路切換手段を構成するクランプ10gの一方が接続され、このクランプ10gの他方には共通流路となるチューブ9kが接続される。
【0038】
これらの各クランプ10h〜10gと、クランプ10k、10m、10n、10p、10q、10jは図中の一点鎖線図示のカセット体2に内蔵されており、腹膜透析腹膜透析装置1にカセット体2が装填位置に装填された状態で後述するカム機構によりチューブ9が閉塞され、弾性力で元の状態に戻ることで開くように各クランプが機能するように構成されている。
【0039】
上記のように排液バッグ、予備バッグ、透析バッグがプラグとクランプを介して接続されるチューブ9kは、チューブ19に対してT字管で合流している。また、このチューブ19を取り囲むようにして気泡センサ14aが設けられており、チューブ19内に流入する大きい気泡検出を行うことで、気泡混入があった場合にはその旨を知らせ、動作を停止することで気泡が腹腔に入ることを未然に防止するようにしている。
【0040】
この気泡センサ14aを後述するコンデンサ式とすることで確実な気泡検出を行うことが可能となる。
【0041】
このチューブ19の途中からはクランプ10kを接続したチューブ29がT字管を介して分岐している。このチューブ29にはダイヤフラム20が接続しており、このダイヤフラム20にはクランプ10mが接続されている。このクランプ10mからは上記の加温部60となる蛇行流路が接続されており、面ヒータ91、92、93で加温部60を上下方向から挟むことで温度上昇を短時間で行うように構成されている。各面ヒータ91、92、93の温度は温度センサ13でモニターされることで各ヒータが適温になるように温度制御される。
【0042】
加温部60の上流と下流側には温度センサ12A、12Bが設けられており、加温部60で温度上昇された透析液の温度検出を行い、上記の温度センサ13とともに温度制御のためのフィードバック系を構成して、体温に近い温度に透析液を維持できるようにしている。
【0043】
この加温部60の出口となる下流には面ヒータにより加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために、図1で示したように起立状態で設けられる気泡除去装置50がチューブ59を介して接続されている。この気泡除去装置50は、容器と容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁51と、上下の液面レベルを検出するための液面レベルセンサ52、52とから構成されており、カセット体2を装填することで各液面レベルセンサによる液面検出をコンデンサの容量変化として検出できるように構成されている。
【0044】
この気泡除去装置50の出口にはクランプ10nが接続されており、このクランプ10nにはチューブ59が接続されている。このチューブ59の途中からはチューブ39とチューブ49が分岐しており、チューブ39にはクランプ10pが接続されており、チューブ29に戻るようにチューブ39が接続されている。また、チューブ59の途中から分岐したチューブ49にはクランプ10qが接続されており、ダイヤフラム21を介してチューブ19に戻るように接続されている。
【0045】
チューブ59にはクランプ10jが接続されており、このクランプ10jにはチューブ9mが接続されており、チューブ9mに接続されるプラグ8jを介して患者の腹腔4に接続するようにしている。チューブ9mの途中には電磁流量計16aと、気泡検出のための気泡センサ14bが設けられている。また、腹膜透析装置1には外気温度を検出する外気温センサ16bが設けられている。さらに、各チューブを開閉するクレンメ(不図示)が随所に設けられており、セット時における液漏れを防止している。
【0046】
ここで、各バッグ、チューブおよび加温部、ダイヤフラムの構成材料は、それぞれ軟質樹脂材料が使用される。この軟質樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ−(4−メチルペンテンー1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
【0047】
なお、上記の各ダイヤフラム20、21は、特開2003−000704号公報に詳細に記載されているエア回路で送液を行うことができるが、これに限定されずチューブの外周面に作用することで蠕動運動を行う蠕動式、ローラポンプ式であっても良い。
【0048】
次に、図3(a)は上記の気泡除去装置50の外観斜視図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。先ず、図3(a)において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、気泡除去装置50は加温後の透析液を最大で約50cc分溜めておく容積を有する密閉容器53を備えており、上記のチューブ59を下方に接続している。透析液Tの液面レベルM(破線図示)は入口側のチューブ59を介して送られる加温後の透析液により上方に移動し、出口側のチューブ59を介して腹腔4内に送られることで下方に移動する。
【0049】
この液面レベルMをコンデンサの容量変化として検出するために、密閉容器50の側面には上方開口部53bと下方開口部53cとの間で連通する柔軟性を備えるチューブ54が接続されている。このチューブ54は、上記のようにカセット体2が腹膜透析装置1に対して矢印D方向にセットされると電極72、73で挟持される状態となることでコンデンサを形成する液面センサ52、52を上下に形成している。電極72、73は不図示の保持手段で腹膜透析装置1に固定されている。
【0050】
一方、液面レベルM上の空間に連通する逆止弁51が設けられており、気泡を外部に出すとともに外部に対する無菌状態を密閉容器内部で維持できるように構成されている。
【0051】
図3(b)において、逆止弁51は液面レベルMより上方に位置する開口部53aにその切断面が露出するようにした無数の中空糸を設けており、外部へ気泡(空気)を圧力差で放出で逆方向には外気が流れないようにして容器内部を無菌状態に維持できるようにしている。この逆止弁としては、ゴム製のアンブレラ弁、ボール弁などに無菌フィルタを設けたものでも良いことになる。
【0052】
次に、液面レベルセンサをコンデンサの容量変化を検出する構成について述べると、図4(a)はチューブ54を破断して示した液面センサ52の立体模式図、(b)は(a)をさらに分解して示した立体模式図である。
【0053】
まず、図4(a)において、液面センサ52にチューブ54がセットされるとチューブの横断面形状を略矩形に弾性変形させる保持手段により、対向する外周面が略平らに変形されて1組の電極72、73で挟まれた状態となり、さらにチューブ54の下面が腹膜透析装置1の不図示の形状部に対して当接されてフラットな状態となり、チューブ54の上面は密閉容器53の側面に固定された不図示の部材が当接することで図示のようなフラット状態になる。
【0054】
1組の電極72、73は良電気伝導特性の銅などの金属板にメッキ処理を施し端子部を一体形成して準備され、図示のようにリード線74、74が夫々接続される。1組の電極72、73のチューブ54の長手方向に沿う距離Lを、電極72、73の間の距離dを有しており、チューブ54の肉厚部の厚さはtである。
【0055】
次に、図4(b)において、1組の電極72、73は、チューブ54の肉厚部tの端部に当接する第1電極72b、72b、73b、73bと、チューブ54の対向する外周面に当接する第2電極72a、73aに分解することができる。
【0056】
そして、チューブ54の比誘電率をεrとし、空気の誘電率をεoとし、第1電極72b、72b、73b、73bを備えるコンデンサ容量をC1として、コンデンサ容量C1=εr・εo・Lt/dの式から求めることができる。
【0057】
また、図4(a)に図示のようにチューブ54の当接部54aに当接する第2電極72a、73aの高さ寸法をd1とし、第2電極を備えるコンデンサ容量をC2とすると、第2電極72a、73aを備えるコンデンサ容量はC2・1=εr・εo・Ld1/tの式から求めることができる。
、さらに、図5(a)、(b)の模式図を参照して、第2電極72a、73aの間の距離であるdから肉厚部の2倍の厚さ2tを引いた距離をd2とし、電極間に空気が存在するコンデンサ容量をC2・2とすると、コンデンサ容量C2・2=εo・Ld1/d2の式から求めることができるので、C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1の式からチューブ54中に透析液が存在するかまたは空の状態にあるときのコンデンサ容量を求めることができる。
【0058】
また、図5(b)において電極72a、73a間に透析液Tが存在するコンデンサ容量をC2とするとC2=(2/C2・1)−1の式からコンデンサ容量を求めることができる。
【0059】
以上のように、液面レベルセンサ52をチューブ54の容積部をコンデンサ容量としたコンデンサとして構成することで、透析液Tがチューブ内に存在する状態と、存在しない状態との間で変化するコンデンサ容量から液面レベルを判断することが可能になる。この液面レベルセンサ52を判断手段である回路に接続することでレベル検出を行えることになる。
【0060】
図6は、液面レベルセンサ52を接続した回路構成図である。また、図7(a)、(b)は気泡除去装置50の模式図である。両図において、第1と第2の2個のタイマー素子LMC555を図示のように配線し、電力供給をV端子から夫々受けるとともに、液面レベルセンサ52を上記のように構成するためのコンデンサCのリード線74を一方のタイマー素子LMC555のトリガー端子とスレシュホールド(堰)端子とに接続し、他方のリード線74を接地するとともに、抵抗器Rcを介して出力端子に接続している。
【0061】
また、この第1タイマー素子の出力端子を第2タイマー素子LMC555のトリガー端子に接続し、図示のようにフリップ・フロップ素子77に対して接続している。
【0062】
以上の回路構成により、発振クロックの立下りパスルで一定幅のパルスを作成し、液面レベルセンサ52の接続されているタイマー素子の発振クロックの立下りパルスで、その一定幅のパルスが「1」であるか「0」であるかをフリップ・フロップ素子77において作成して透析液の液面レベルM1、M2を判断することが可能になる。
【0063】
すなわち、透析液Tが存在するコンデンサ容量C2=(2/C2・1)−1から、透析液Tが存在しないコンデンサ容量C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1に変動することを静電容量変化として検出して、チューブ54中に透析液Tが存在するか否かを簡単な回路構成で瞬時に検出することができる。
【0064】
次に、図8(a)はカセット体2の平面図、また図8(b)は図8(a)のX−X線矢視断面図である。このカセット体2の構成は、上記の特開2003−000704号公報に開示されたものと略同じ構成のものが使用可能であるが、相違点としては流路切換手段の被切り換え部となるクランプ10a〜10fが設けられる透析バッグ5a〜5fは、図示のように手前側に位置している点が挙げられる。また、排液バッグ6のクランプ10hと予備バッグ7のクランプ10gについては右側に位置している。また、ダイヤフラム20とダイヤフラム21は図示のように2個分が併設されている。
【0065】
また、図8(b)において、各クランプを制御してクランプ状態、アンクランプ状態の切り替えをするためにフィンガを上下駆動するためにカム機構100がモータ101で駆動されるように配置されているが、このカム機構の構成についても特開2003−000704号公報に詳細に記載されているので説明を省略する。ここで、このカム機構に代えてウオームギア機構を使用することができる。
【0066】
次に、図9は腹膜透析装置1の回路構成を示すブロック図である。本図において制御手段である制御システム15は、各種プログラムと治療条件などが記憶されたROM、RAMに基づいて制御を司るCPU150と、記憶部152とを備えており、CPU150には、上記の複数のクランプ10a〜10qの開閉を制御するクランプ制御部153と、複数の面ヒータ91、92、93の温度を制御するためのヒータ制御部154と、ポンピング作動装置であるポンピング作動手段10を制御するためのポンピング作動制御部155とが電気的に接続されている。また、CPU150には、上記の温度センサ12A、12Bと、各ヒータ用の温度センサ13と、表示部23と、操作部24a、24bとが接続されている。また気泡センサ14a、14bは気泡センサ部14を介してCPU150に接続されている。
【0067】
また、CPU150には、電源回路156と、バッテリー回路157と音声発生回路400とカセット体装填手段300を制御するためのカセット体装填制御部301とが電気的に接続されている。また、上記の液面レベルセンサ52、52もCPU150に接続されている。表示部23には上記のメモリカードを装填可能にしたカード読取装置203が電気的に接続されている。
【0068】
さらに、電磁流量計16aや外気温度センサ16bもCPU150に接続されている。電磁流量計16aは、注液された透析液の量を計測するために設けられたものであり、透析液の温度に左右されず流量を正確に測定することができる。
【0069】
この制御システム15によれば、温度センサ12Aにより測温された温度が予め設定された所定の温度である39℃以上になると、クランプ制御部153により、クランプを制御してクランプ状態とアンクランプ状態に切り替えるとともに、ヒータ制御部154により、各面ヒータ91、92、93への通電制御を行う。
【0070】
また、各面ヒータ91、92、93の出力値は、透析液の透析液の温度に基づいて選択される。すなわち、この制御システム15は、温度センサ12Aにより側温された温度と、温度センサ12Bにより測温された温度に基づいて、注液されるべき透析液の温度が所定の温度範囲内になるように各面ヒータ91、92、93への通電制御を行うように構成されている。
【0071】
そして、流路切換手段であるクランプ制御部153により、各クランプを後述のようにクランプ状態とアンクランプ状態に切り替えることで、患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を、ポンピング作動装置により各バッグに送り出す。
【0072】
具体的には、患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を排液バッグ6に送液する第1の送液状態と、透析バッグの一つに溜められた透析液を、ポンピング作動装置により予備バッグ7へ送液するとともに、ヒータ手段で加温して予備バッグ7内に溜める第2の送液状態と、予備バッグ7からポンピング作動装置で患者の腹腔4に透析液を送液するとともに、患者の腹腔に所定時間貯留させておくための第3の送液状態と、この第3の送液状態の後に、ポンピング作動装置で第2の送液状態で空になった例えば透析バッグ5aへ使用済透析液を送液する第4の送液状態とに流路を切換えるように構成されている。
【0073】
図10(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第1の送液状態を説明する配管図、図10(b)は第2の送液状態を説明する配管図である。
【0074】
本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず、図10(a)において、腹腔4に連通する流路を形成する接続状態にされて透析の準備が整い、腹膜透析装置1の起動が行われると患者はベッド上に横たわる。この後に腹腔4に日中において所定時間貯留させた使用済透析液(図中のハッチング図示)を、ポンピング作動装置により排液バッグ6に送液するための第1の送液状態にされる。
【0075】
具体的には、図10(a)においてチューブ9kに通じる透析バッグ5a〜5fのクランプが全て閉じられ、予備バッグ7のクランプも閉じられ、排液バッグ6のクランプ10hが開かれる。また、チューブ59のクランプ10n、10mと、チューブ49のクランプ10qが閉じられる一方で、チューブ9mのクランプ10j、チューブ39のクランプ10p、チューブ29のクランプ10kが開かれる。この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム20が動作されることで、腹腔4と、チューブ9mと、チューブ59と、チューブ39と、チューブ29と、チューブ19とチューブ9hとを連通する流路が形成される。この流路を介して図中の矢印方向に送液が行われて排液バッグ6に約3500mlの送液が行われる。この結果、腹腔4は空の状態となる。
【0076】
次に、図10(b)において、透析バッグの一つに溜められた透析液を、ポンピング作動装置により予備バッグ7へ送液するとともに、ヒータ手段により加温し、気泡除去装置50で細かい気泡を除去し予備バッグ7内に溜める第2の送液状態に移行する。
【0077】
具体的には、図10(b)において排液バッグ6のクランプ10hが閉じられる。また、チューブ9kに通じる透析バッグ5a〜5fの内の透析バッグ5aのクランプ10aのみが開かれる。また、チューブ29のクランプ10kと、10mと、10nと、チューブ49のクランプ10qが開かれる一方で、チューブ9mのクランプ10jと、チューブ39のクランプ10pとが閉じられる。また、チューブ49のクランプ10qが開かれることになる。
【0078】
この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム20が最初に動作されるとともに、これに前後して面ヒータ91、92、93への通電が実施されて透析液を体温近くまで温度上昇させるように、この流路を介して図中の実線矢印方向の送液が行われる。すなわち、加温後の透析液はバイパス流路となるチューブ49を流れ、ダイヤフラム21により図中の破線図示の矢印方向の送液が開始される。これに前後して、空になった透析バッグ5aのクランプ10aが閉じられ予備バッグ7のクランプ10gが開かれる。
【0079】
すると、例えば室温の5℃から体温近くの37℃に加温された透析液は上記のように吊り下げられた状態にセットされた予備バッグ7の中に流れ込むことになるが、このときヒータ手段による温度変化に伴い析出した小さな気泡を加温後の透析液の液面上の空間部7aで成長させつつ約3500ml分の送液が行われる。
【0080】
続いて、図11(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第3の送液状態を説明する配管図、図11(b)は第4の送液状態を説明する配管図である。
【0081】
本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず、図11(a)において、予備バッグ7からポンピング作動装置により患者の腹腔4に透析液を送液するとともに、患者の腹腔4に所定時間貯留させておくための第3の送液状態の様子が示されている。
【0082】
具体的には、図11(a)においてチューブ9kに通じる予備バッグ7のクランプ10gのみが開かれる。このとき、透析バッグ10aは空になっている。また、チューブ29のクランプ10kと、10mと、10nとが開かれる一方で、チューブ9mのクランプ10jも開かれる。チューブ39のクランプ10pと、チューブ49のクランプ10qは閉じられる。
【0083】
この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム20が動作されて既に加温済みの透析液が、この流路を介して図中の実線矢印方向に送液される。このとき、加温後の透析液は再度温度センサで温度検出され適温にされてからチューブ9mを介して腹腔4内への送液が行われる。この後に、所定時間である約1.5乃至2時間の時間経過を待つことで、腹腔周辺の血管中の血液と透析液との間の浸透圧の差によって行われる最初の透析治療が完了する。
【0084】
このとき、透析液は予備バッグ7中において発生する小さな気泡が液面上の空間部7aで成長されており、しかも底面から送液するのので気泡が流れ出ることは一切なくなる。 次に、図11(b)において、上記の第3の送液状態の後に、ポンピング作動装置により第3の送液状態で空になった透析バッグ10aへ使用済透析液を送液する第4の送液状態の様子が示されている。
【0085】
具体的には、図11(b)においてチューブ9kに通じる予備バッグ7のクランプ10gは閉じられる。このとき予備バッグ7は空になっているので、次の透析バッグ5bによる透析治療のための予備バッグ7として使用できることとになる。一方、透析バッグ10aは空になっているのでこの透析バッグ10aへの送液が行われる。このために、チューブ29のクランプ10kと、10mと、10nとが閉じられる一方で、チューブ9mのクランプ10jとチューブ49のクランプ10qと透析バッグ5aのクランプ10aが開かれることとなる。
【0086】
この状態において、ポンピング作動装置によりダイヤフラム21が動作されて使用済透析液がバイパス流路となるチューブ49を通して透析バッグ5aに送液される。
【0087】
これ移行、上記の第2の送液状態から第4の送液状態を繰り返し実施することで、透析バッグ5b、5c、5d、5e、5fの全てに使用済透析液を溜めることで患者の就寝時間である8時間に及ぶ腹膜透析が完了する。
【0088】
このようにして各透析バッグ内に溜められた使用済透析液は、各透析バッグがクレンメを用いてチューブが閉塞状態にされた後に各プラグを外すことで個別に運べるようになるので、簡単に廃棄処分できる。また、使用後の透析バッグは焼却処分される。
【0089】
図12は、腹膜透析装置1において上記の第1から第4の送液状態になることを示す動作説明のフローチャートである。本図においてステップS1において送液の準備が整うと腹膜透析装置1の電源がオンされて、ステップS2に進みセルフチェックプログラムが起動されて装置内の異常状態の有無が検査される。この後に、ステップS3に進みプライミング動作が実施されて透析バッグ他の接続後の透析液の流路中の空気を追い出しが行われて透析液でチューブ内を充満させる状態にする。
【0090】
以上で患者の就寝中の透析治療の準備が整い、ステップS4でスイッチがオンされることで治療が開始されると、ステップS5に進み初期排液である上記の第1の送液状態にされる。すなわち患者の昼間の活動中における透析液の回収を廃液バック6を用いて行う。これに前後して透析液の加温が実施され、気泡除去装置50で細かい気泡を除去し、予備バッグ7に予備加熱された透析液が溜められる上記の第2の送液状態になる。このとき、気泡除去装置50の液面レベルを上記のようにモニターして、所定量が密閉容器内に存在する状態に維持する。
【0091】
これに続き、ステップS6に進み上記の第3の送液状態にされる。すなわち患者の腫腔4に透析液を注入する処理を行う。この後にステップS7で、患者の腹腔4内に透析液を貯留させることで浸透圧による透析治療を行うことで透析液に析出してくる老廃物を含む排液である使用済透析液を患者の腹腔4で一時的に溜める。これに続き、ステップS8に進み上記の第4の送液状態にすることで空になった透析バッグ5aへの送液を行い最初の1個分の透析バッグによる治療を終了する。
【0092】
続く、ステップS9では残りの透析バッグ分の所定のサイクル数分の治療が終了したか否かが判断されて、透析バッグ5a〜5e分の透析液による治療が繰り返し行われて、終了するとステップS10に進み再排液が行われる。すなわち患者の腹腔4から回収し切れなかった使用済透析液を体の向きを変えるなどしながら排液する。
【0093】
このようにして排液が終了するとステップS11において最終注液が行われ、昼間活動中において腹腔4内に透析液を入れたままで生活する場合には、透析バッグ5fに溜められた透析液を最後に注液する。以上で送液が全て終了し、ステップS12で輸液セットを腹膜透析装置1から取り外すとともに、ステップS12で腹膜透析装置1の電源をオフして終了する。
【0094】
以上説明したように、気泡センサでは検出不能な小粒の気泡が腹腔内に送られることで腹腔内で堆積することを防止できるようになるので、肩痛などの放散痛が発生しないようにできる。また、気泡除去装置50に設けられる液面レベルセンサは、上記のようにコンデンサ式としたのでセンサに要求される全ての条件を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態である腹膜透析装置1と、カセット体2と、透析液を溜めた複数の透析バッグ5と、予備バッグ7と、排液バッグ6とをチューブ9に設けられたプラグ8a〜8jで接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成し、透析液を患者の腹腔4(破線図示)内に送液する接続状態を示した外観斜視図である。
【図2】図1の腹膜透析装置1に透析液を溜めた複数の透析バッグと予備バッグと排液バッグとをプラグを用いて接続して患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にした模式図である。
【図3】(a)は気泡除去装置50と液面レベルセンサ52、52とを示した外観斜視図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。
【図4】(a)はチューブ54を破断して示した液面センサ52の立体模式図、(b)は(a)をさらに分解して示した立体模式図である。
【図5】(a)、(b)は液面センサの模式図である。
【図6】液面レベルセンサ52を接続した回路構成図である。
【図7】(a)、(b)は気泡除去装置50の模式図である。
【図8】(a)はカセット体2の平面図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。
【図9】腹膜透析腹膜透析装置1の回路構成を示すブロック図である。
【図10】(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第1の送液状態を説明する配管図、(b)は第2の送液状態を説明する配管図である。
【図11】(a)は腹腔に連通する流路を形成する接続状態にされた第3の送液状態を説明する配管図、(b)は第4の送液状態を説明する配管図である。
【図12】腹膜透析装置1において上記の第1から第4の送液状態になることを示す動作説明のフローチャートである。
【図13】気泡量と温度の相関関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0096】
1 腹膜透析装置
2 カセット体
3 スタンド
4 腹腔
5a〜5f 透析バッグ
6 排液バッグ
7 予備バッグ
8a〜8j プラグ
9 チューブ
10a〜10q クランプ
19、29、39、49、59 チューブ
20、21 ダイヤフラム
50 気泡除去装置
51 逆止弁
52 液面レベルセンサ
60 加温部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置であって、
操作部と表示部とを設けた本体と、
前記カセットを、着脱自在に装填するカセット装填手段と、
前記カセットの装填後に、前記ダイアフラムを正圧状態と負圧状態にすることで前記透析液容器からの送液及び前記排液容器への送液を行うポンピング作動手段と、
前記カセットの装填後に、一定量の透析液を前記加温部で所定温度に加温するヒータ手段と、
前記ヒータ手段により加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために起立状態で設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサと、から構成される気泡除去手段と、
前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するために、前記流路切換部を開閉する流路切換手段と、
前記操作部と前記表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段と、
を具備することを特徴とする腹膜透析装置。
【請求項2】
複数の前記透析バッグと、吊り下げられた予備バッグと、前記排液バッグとを前記カセットに対して接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にして使用するために、
患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を、前記ポンピング作動手段により前記排液バッグに送液する第1の送液状態と、前記透析バッグの一つに溜められた透析液を、前記ポンピング作動装置により前記予備バッグへ送液するとともに、前記ヒータ手段により加温して前記気泡除去手段を介して前記予備バッグ内に溜め、前記加温で発生する気泡を前記予備バッグの液面より上方の空間部において蓄積させる第2の送液状態と、前記予備バッグから前記ポンピング作動装置により患者の腹腔に前記透析液を送液するとともに、患者の腹腔に所定時間貯留させておく第3の送液状態とに前記流路を切換えるように前記流路切換手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析装置。
【請求項3】
前記流路切換手段は、前記第3の送液状態の後に、前記ポンピング作動手段により前記第2の送液状態で空になった前記透析バッグへ前記使用済透析液を送液する第4の送液状態に切換えることを特徴とする請求項2に記載の腹膜透析装置。
【請求項4】
前記逆止弁は中空糸を束ねて形成され、
前記液面レベルセンサは、前記容器に対して上下方向に連通する軟質樹脂製のチューブと、
前記チューブの対向する外周面を略平らに変形させて挟持する部材を1組の電極とし、前記1組の電極に夫々リード線を接続し、
前記チューブの肉厚部と、前記1組の電極で挟まれた前記チューブの容積部とを、コンデンサ容量としたコンデンサとして構成し、
透析液が前記チューブ内に存在する状態と、透析液が前記チューブ内に存在しない状態との間で変化する前記コンデンサ容量に基づき、前記液面レベルを判断する判断手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の腹膜透析装置。
【請求項5】
前記チューブの横断面形状を略矩形に弾性変形させるための保持手段を備え、
前記1組の電極は、前記チューブの肉厚部の端部に当接する第1電極と、前記チューブの対向する外周面に当接する第2電極とから構成され、
前記チューブの比誘電率をεrとし、空気の誘電率をεoとし、前記第1電極の前記チューブの長手方向に沿う距離をLとし、前記第1電極間の距離をdとし、前記肉厚部の厚さをtとして、前記第1電極を備えるコンデンサ容量をC1として、前記第1電極を備えるコンデンサ容量を、C1=εr・εo・Lt/dから求め、
前記第2電極の高さ寸法をd1とし、前記第2電極を備えるコンデンサ容量をC2として、前記第2電極を備えるコンデンサ容量を、C2・1=εr・εo・Ld1/tから求め、
さらに、前記第2電極の間の距離であるdから前記肉厚部の2倍の厚さ2tを引いた距離をd2とし、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量をC2・2として、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量を、C2・2=εo・Ld1/d2から求めることで、C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1を求め、
前記電極間に透析液が存在するコンデンサ容量をC2として、
C2=(2/C2・1)−1から求めることを特徴とする請求項4に記載の腹膜透析装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記コンデンサの前記リードの一方をトリガー端子と、スレシュホールド(堰)端子とに接続し、他方の前記リードを接地するとともに、抵抗器を介して出力端子に接続した第1タイマー素子と、前記第1タイマー素子の前記出力端子をトリガー端子に接続した第2タイマー素子と、フリップ・フロップ素子とを有する回路構成であるあることを特徴とする請求項4または5に記載の腹膜透析装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の腹膜透析装置に用いられる透析液セットであって、
前記複数の透析バッグと、前記予備バッグと、前記排液バッグと、前記流路とを前記カセットに対する接続前に無菌状態としたことを特徴とする透析液セット。
【請求項8】
送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置の制御方法であって、
前記カセットを着脱自在に装填するカセット装填手段にセットされた前記カセットのダイアフラムをポンピング作動手段により正圧状態と負圧状態にすることで、前記透析液バッグからの送液及び前記排液バッグへの送液を行う工程と、
ヒータ手段により一定量の透析液を加温部で所定温度に加温する工程と、
起立状態に設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部に連通した逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサとから構成される気泡除去手段により、前記ヒータ手段により加温されることでヘンリーの法則で発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留し、かつ成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す工程と、
前記流路切換部を開閉する流路切換手段により、前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するための工程と、
操作部と表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段により、腹膜透析のための制御を行う工程と、を備えることを特徴とする腹膜透析装置の制御方法。
【請求項1】
送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置であって、
操作部と表示部とを設けた本体と、
前記カセットを、着脱自在に装填するカセット装填手段と、
前記カセットの装填後に、前記ダイアフラムを正圧状態と負圧状態にすることで前記透析液容器からの送液及び前記排液容器への送液を行うポンピング作動手段と、
前記カセットの装填後に、一定量の透析液を前記加温部で所定温度に加温するヒータ手段と、
前記ヒータ手段により加温されることで発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留するために起立状態で設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部で成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサと、から構成される気泡除去手段と、
前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するために、前記流路切換部を開閉する流路切換手段と、
前記操作部と前記表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段と、
を具備することを特徴とする腹膜透析装置。
【請求項2】
複数の前記透析バッグと、吊り下げられた予備バッグと、前記排液バッグとを前記カセットに対して接続することで患者の腹腔に連通する流路を形成する接続状態にして使用するために、
患者の腹腔に所定時間貯留させた使用済透析液を、前記ポンピング作動手段により前記排液バッグに送液する第1の送液状態と、前記透析バッグの一つに溜められた透析液を、前記ポンピング作動装置により前記予備バッグへ送液するとともに、前記ヒータ手段により加温して前記気泡除去手段を介して前記予備バッグ内に溜め、前記加温で発生する気泡を前記予備バッグの液面より上方の空間部において蓄積させる第2の送液状態と、前記予備バッグから前記ポンピング作動装置により患者の腹腔に前記透析液を送液するとともに、患者の腹腔に所定時間貯留させておく第3の送液状態とに前記流路を切換えるように前記流路切換手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析装置。
【請求項3】
前記流路切換手段は、前記第3の送液状態の後に、前記ポンピング作動手段により前記第2の送液状態で空になった前記透析バッグへ前記使用済透析液を送液する第4の送液状態に切換えることを特徴とする請求項2に記載の腹膜透析装置。
【請求項4】
前記逆止弁は中空糸を束ねて形成され、
前記液面レベルセンサは、前記容器に対して上下方向に連通する軟質樹脂製のチューブと、
前記チューブの対向する外周面を略平らに変形させて挟持する部材を1組の電極とし、前記1組の電極に夫々リード線を接続し、
前記チューブの肉厚部と、前記1組の電極で挟まれた前記チューブの容積部とを、コンデンサ容量としたコンデンサとして構成し、
透析液が前記チューブ内に存在する状態と、透析液が前記チューブ内に存在しない状態との間で変化する前記コンデンサ容量に基づき、前記液面レベルを判断する判断手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の腹膜透析装置。
【請求項5】
前記チューブの横断面形状を略矩形に弾性変形させるための保持手段を備え、
前記1組の電極は、前記チューブの肉厚部の端部に当接する第1電極と、前記チューブの対向する外周面に当接する第2電極とから構成され、
前記チューブの比誘電率をεrとし、空気の誘電率をεoとし、前記第1電極の前記チューブの長手方向に沿う距離をLとし、前記第1電極間の距離をdとし、前記肉厚部の厚さをtとして、前記第1電極を備えるコンデンサ容量をC1として、前記第1電極を備えるコンデンサ容量を、C1=εr・εo・Lt/dから求め、
前記第2電極の高さ寸法をd1とし、前記第2電極を備えるコンデンサ容量をC2として、前記第2電極を備えるコンデンサ容量を、C2・1=εr・εo・Ld1/tから求め、
さらに、前記第2電極の間の距離であるdから前記肉厚部の2倍の厚さ2tを引いた距離をd2とし、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量をC2・2として、前記電極間に空気が存在するコンデンサ容量を、C2・2=εo・Ld1/d2から求めることで、C2=(1/C2・1+1/C2・2+1/C2・1)−1を求め、
前記電極間に透析液が存在するコンデンサ容量をC2として、
C2=(2/C2・1)−1から求めることを特徴とする請求項4に記載の腹膜透析装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記コンデンサの前記リードの一方をトリガー端子と、スレシュホールド(堰)端子とに接続し、他方の前記リードを接地するとともに、抵抗器を介して出力端子に接続した第1タイマー素子と、前記第1タイマー素子の前記出力端子をトリガー端子に接続した第2タイマー素子と、フリップ・フロップ素子とを有する回路構成であるあることを特徴とする請求項4または5に記載の腹膜透析装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の腹膜透析装置に用いられる透析液セットであって、
前記複数の透析バッグと、前記予備バッグと、前記排液バッグと、前記流路とを前記カセットに対する接続前に無菌状態としたことを特徴とする透析液セット。
【請求項8】
送液用のダイアフラムと加温部と流路切換部とを一体的に形成した使い捨てタイプのカセットを装填し、透析液を貯めた透析液バックと排液バックとに接続して使用される腹膜透析装置の制御方法であって、
前記カセットを着脱自在に装填するカセット装填手段にセットされた前記カセットのダイアフラムをポンピング作動手段により正圧状態と負圧状態にすることで、前記透析液バッグからの送液及び前記排液バッグへの送液を行う工程と、
ヒータ手段により一定量の透析液を加温部で所定温度に加温する工程と、
起立状態に設けられる容器と、前記容器の液面より上方の空間部に連通した逆止弁と、前記液面のレベルを検出する液面レベルセンサとから構成される気泡除去手段により、前記ヒータ手段により加温されることでヘンリーの法則で発生した小粒の気泡を含む透析液を一時的に貯留し、かつ成長した気泡を前記容器の外部に無菌状態で送り出す工程と、
前記流路切換部を開閉する流路切換手段により、前記加温された透析液を患者の腹腔内に送液し、所定時間経過後に透析液を前記腹腔から吸引・排液する流路を形成するための工程と、
操作部と表示部と前記カセット装填手段と前記ポンピング作動手段と前記ヒータ手段と前記流路切換手段と前記液面レベルセンサとに接続される制御手段により、腹膜透析のための制御を行う工程と、を備えることを特徴とする腹膜透析装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−552(P2008−552A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175745(P2006−175745)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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