説明

膵臓癌に関連した遺伝子ファミリー(LBFL313)

本発明は、ヒト膵臓腺癌における遺伝子発現の変化に関する。特に、本発明は、相応する非癌化された膵臓組織に比べて差別的に発現される癌化膵臓組織におけるヒト遺伝子ファミリーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌患者の 膵臓癌組織における遺伝子発現の変化に係り、特に、それに相応する正常膵臓組織および他の悪性腫瘍と比較して膵臓癌組織で差別的に発現されるヒト遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
男女ともに癌による死亡原因の第4位となる膵臓癌は、先進国の主要な健康上のイッシューであり、非常に不良な予後を持っている(Faint et al. (2004) Datamonitor DMHC2045; Garcea et al. (2005) Pancreatology 5:514-529; Kern et al. (2002) Cancer Biol Therapy 1:607-613; Laheru and Jaffee (2005) Nature Rev Cancer 5: 59-467; Li et al. (2004) Lancet 363:1049-1057)。一年にわたっておよそ30,000名の米国人が膵臓癌によって亡くなっている。積極的な外科および医学的治療にも拘らず、平均期待寿命は、局所疾患患者の場合には約15〜18ヶ月であり、転移性疾患患者の場合には3〜6ヶ月である。ほぼ100%の膵臓癌患者は転移を経験し、それらの制限されていない成長によって新陳代謝が悪化して死に至る。切除手術を受けていない膵臓癌患者が総5年を生存する可能性は5%未満に過ぎない。また、膵臓癌は、非特異的な初期症状によって初期診断が難しいという問題点がある。現在、膵臓癌の初期感知法は未だ開発中であって商用化されておらず、従来の癌治療法では予後または疾病結果にほぼ影響を及ぼさない。膵臓癌の不良な予後は、遅い表示、攻撃的な局所侵入、初期転移、および化学療法に対する不十分な反応に起因する。
【0003】
多くの他の悪性疾病と同様に、膵臓癌は後天性の突然変異の蓄積によって発生する。ガン原遺伝子(protooncogenes)の活性化、腫瘍抑制遺伝子の不活性化、および維持遺伝子(maintenance genes)の奇形を含む多重遺伝的および後生遺伝的変化が膵臓癌の発生、持続的成長および転移に関連している。このような遺伝子内の蓄積された突然変異は、「PanINs」(Pancreatic Intraepithelial Neoplasia)段階で予想可能な時間内に発生するものと知られている(Hruban et al. (2000) Clin Cancer Res 6:2969-2972; Kern et al. (2002) Cancer Biol Therapy 1:607-613; Li et al. (2004) Lancet 363:1049-1057)。K−rasの突然変異は、PanIN−1の半分地点で発生する。PanIN−2段階は、K−ras突然変異速度の付加的変化および増加、並びに多数のp16奇形の外観で表示され、p53突然変異の存在を表すことが可能なp53タンパク質ファミリーの発現はさらに進歩したPanINsで時々現れる。腫瘍抑制遺伝子、TP53、DPC4およびBRCA2の損失は膵臓腫瘍形成、PanIN−3の発生後期に生ずるものと思われる。
【0004】
膵管癌(pancreatic ductal cancers)の85%以上が膵臓癌の発生で活性化させたK−ras遺伝子の点突然変異を持っている(Li et al. (2004) Lancet 363:1049-1057; Xiong (2004) Cancer Chem Pharm 54:S69-77)。K−ras突然変異は細胞増殖を誘導し、この遺伝子に点突然変異を含む細胞上に形質転換性質を与えるようにする細胞内シグナル経路(intracellular signaling pathway)であるRas−Raf−MEK−ERKの構成成分の活性化を引き起こす。Ras突然変異は、腫瘍段階または予後に連関しておらず、K−ras発癌遺伝子が発癌の開始には関連できるが、ヒト膵臓癌の悪性可能性または促進に連関してはいないことを示す。rasファミリーの主要な下流標的の一つはホスホイノシトール3キナーゼ(phosphoinositol 3 kinase、PI3K)である。PI3Kの活性化は、化学療法または分子薬物標的化薬剤によって誘導されたアポトーシス(apotosis)に対する膵臓癌耐性に関連する。
【0005】
p16腫瘍抑制遺伝子の不活性化は少し後で発生する。p16遺伝子は、プロモーターメチル化に連関した突然変異、ホモ接合体欠失(homozygous deletion)または転写サイレンシング(transcriptional silecing)によって実質的に全ての膵管腺癌(ductal adeenocarcinomas)内で不活性化される(Kern et al. (2002) Cancer Biol Therapy 1:607-613; Maitra et al. (2006) Best Pract Res Clin Gastroenterol 20:211-226)。p16タンパク質はp16/Rb経路を介して細胞サイクルを調節するので、p16遺伝子の遺伝的な不活性化は細胞サイクルの決定的な調節因子が膵臓癌では紛失したことを意味する。興味深いことに、p16遺伝子内の遺伝突然変異は家族性異型多発母斑黒色腫(Familial Atypical Multiple Mole Melanoma、FAMMM)症候群の原因であり、FAMMM患者は黒色腫および膵臓癌を発病させる増加したリスクを持っている。
【0006】
TP53遺伝子の不活性化は、殆ど2番目の対立遺伝子(allele)の損失と関連している一つの対立遺伝子内で遺伝子内の突然変異によって発生する(Maitra et al. (2006) Best Pract Res Clin Gastroenterol 20:211-226)。p53の機能不全は、2つの決定的な細胞数の調節、G1/S細胞サイクルチェックポイントおよびG2/M阻止の維持を意味し、大部分の膵臓癌内で調節されない。
【0007】
SMAD4として知られているDPC4遺伝子は、膵臓癌では1/2以上、ホモ接合体欠失によって35%、残余の対立遺伝子の損失と関連している遺伝子内の突然変異によっては20%不活性化される(Maitra et al. (2006) Best Pract Res Clin Gastroenterol 20:211-226; Wilentz et al. (2000) Am J Pathol 156:37-43)。ところが、DPC4の遺伝的非活性化は他の腫瘍形態ではほぼ稀に見えるのである。dpc4タンパク質はTGF−B経路によるシグナルおよび成長調節において決定的な役割を果たす。
【0008】
DNA修復に関連したBRCA2遺伝子は、膵臓癌の少ないパーセント(〜10%)でターゲットになるだけであるが、家族集積性(familial aggregation)膵臓癌を引き起こす(Maitra et al. (2006) Best Pract Res Clin Gastroenterol 20:211-226; Murphy et al. (2002) Cancer Res 62:3789-3793)。(6174delT BRCA2遺伝子突然変異と呼ばれる)BRCA2遺伝子の単一塩基対のキャリアは、膵臓癌の発病リスクを10倍増大させる。
【0009】
p65(RelA)/p50へテロダイマーとして主流をなして存在する転写因子の核因子κB(NF−κB)または膵臓癌に関連した遺伝子の一つとして思われる(Garcea et al. (2005) Pancreatology 5:514-529; Xiong (2004) Cancer Chem Pharm 54:S69-77)。NF−κBのp65サブユニットであるRelAは、膵臓腺癌の約67%で構造的に活性化されるが、健康な膵臓組織ではそうではなく、IκBαはヒト膵臓腫瘍組織および細胞株では過発現される。RelAの構造的活性化は、膵臓腫瘍細胞内でrasなどの上流シグナル経路(upstream signaling pathway)と相互連関しているものと思われる。NF−κBは、膵臓癌内の細胞毒性薬剤によって誘導されたアポトーシスに対する腫瘍耐性において重要な役割を果たすものと示唆されてきた。他の結果も、膵臓の細胞成長を促進するものと思われるNF−κBの主要なメカニズムがアポトーシスの阻害によることを示す。
【0010】
膵臓腺癌のより正確な診断を行うことが可能な物質および方法についての技術が求められてきた。しかも、この疾病を効果的に治療することが可能な薬剤を処理および同定する方法についての技術も求められてきた。本発明は、これらおよび他のニーズに符合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、膵臓腺癌を正確に診断することが可能な物質および方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、膵臓腺癌を効果的に治療することが可能な治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、正常膵臓組織と比較して膵臓腺癌組織内で特異的に発現される新規の遺伝子(以下、「LBFL313」という)に関する。本発明は、(a)配列番号1の塩基配列を含む単離核酸分子、(b)配列番号2の塩基配列をコードする単離核酸分子、(c)配列番号1の塩基配列と95%以上の同一性を有する単離核酸分子、および(d)それらと相補的な配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0013】
本発明は、前記単離核酸分子を含むベクターを含有する一つまたはそれ以上の発現調節因子と作動可能に連結されている核酸分子をさらに含む。本発明は、本発明の核酸分子を含むように形質転換された宿主細胞、およびタンパク質が発現される条件の下で本発明の核酸分子で形質転換された宿主砂防を培養する段階を含むタンパク質製造方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、あるいは配列番号2と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を示す、単離ポリペプチドまたはタンパク質をさらに提供する。
【0015】
本発明は、本発明に係るタンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬剤を同定する方法をさらに提供する。
【0016】
本発明は、本発明に係るタンパク質のレベルまたは少なくとも一つの活性を調節する薬剤を同定する方法をさらに提供する。
【0017】
本発明は、本発明に係るタンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する方法をさらに提供する。
【0018】
本発明は、本発明に係るタンパク質に対する結合パートナーを同定する方法をさらに提供する。
【0019】
本発明は、本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの会合を妨害しまたは調節することが可能な薬剤を同定する方法をさらに提供する。
【0020】
本発明は、一つまたはそれ以上の結合パートナーと本発明に係るタンパク質との会合を減少または妨害する方法をさらに提供する。
【0021】
本発明は、本発明に係るコードされたポリペプチドの発現を防止するために、本発明に係る核酸分子を含むように変形された非ヒト遺伝子組換動物、または本発明に係るコードされたポリペプチドの発現を防止するために、突然変異された核酸分子を含むように変形された非ヒト遺伝子組換動物をさらに提供する。
【0022】
本発明は、また、配列番号1の全てまたは一部を含む全てまたは一部の遺伝子が前記動物のゲノムから脱落または欠失された非ヒト遺伝子組換動物を提供する。
【0023】
本発明は、希釈液およびポリペプチドまたはタンパク質を含む組成物をさらに提供し、前記ポリペプチドまたはタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を含み、あるいは配列番号2と少なくとも95%のアミノ酸同一性を示す。
【0024】
本発明に係る遺伝子およびタンパク質は、膵臓癌を感知し、またはサンプル内の正常組織と膵臓腺癌を識別するための診断薬剤またはマーカーとして使用できる。それらは、また、遺伝子発現または活性を調節する薬剤に対するターゲットとして作用することができる。例えば、膵臓癌の増殖性過程を含んで、腫瘍の成長に連関した生物学的過程を調節する薬剤を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1はLBFL313(配列番号2)の分泌に対する予測されたシグナル配列を示す図である。前記分析はシグナルIP3.0サーバー(SignalIP3.0 Server)を用いて行われた(www.cbs.dtu.dk/services/SignalIP/)。
【図2】図2はLBFL313が細胞の培養上澄み液から感知されたことを示すウエスタン分析の結果を示す図である。
【図3】図3は細胞増殖(パネルA)、運動性(パネルB)および浸潤性(パネルC)に対するCHO細胞のLBFL313過発現効果を示す図である。
【図4】図4は腫瘍形成(パネルA)および微細血管形成(パネルB)に対するヌードマウスのLBFL313過発現効果を示す図である。
【図5】図5は膵臓生検サンプルおよび抗−LBFL313抗体を用いたLBFL313発現の免疫組織化学的分析の代表的な結果を示す図である。
【図6】図6は膵臓癌細胞株の浸潤性に対するポリクローナル抗−LBFL313抗体の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
A.膵臓癌に連関したタンパク質
本発明は、単離タンパク質、タンパク質の対立遺伝子変形、およびタンパク質の保存的アミノ酸置換を提供する。ここで、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、部分的に、配列番号2に示したヒトアミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。また、この用語は、自然的に発生する対立遺伝子変形、および特別に前述したものとやや異なるアミノ酸配列を有するタンパク質を示す。前述したものとやや異なるアミノ酸配列を含むとしても、対立遺伝子はこれらのタンパク質に連関した同一または類似の生物学的機能を依然として持つであろう。
【0027】
前述したように、配列番号2のヒトアミノ酸配列に連関しているタンパク質ファミリーは、ヒトに加えて有機体から単離したタンパク質を指す。これらのタンパク質に連関している他の一部のタンパク質ファミリーを確認し単離するために使用された方法については後述する。
【0028】
本発明のタンパク質は、好ましくは単離型である。ここで、一般にタンパク質に連関している細胞構成成分からタンパク質を除去するために物理的、機械的または化学的方法が使用されるとき、タンパク質が単離されるとする。当業者は単離タンパク質を得るための標準精製方法を容易に使用することができる。
【0029】
本発明のタンパク質は、配列番号2の挿入、欠失または保存的なアミノ酸置換変形をさらに含む。ここで、保存的な変形とは、タンパク質の生物学的機能に逆に作用しない、アミノ酸配列の変更を意味する。置換、挿入または欠失は、変更された配列がタンパク質に連関した機能を妨害または崩壊するとき、タンパク質に逆に作用するとする。例えば、タンパク質の全体電荷、構造または疎水性/親水性性質は生物学的活性に逆に作用せずに変更できる。したがって、例えばタンパク質の生物学的活性に逆に作用せず、ペプチドがより疎水性または親水性となるよう、アミノ酸配列は変更できる。
【0030】
通常、対立遺伝子変形、保存的置換変形および一部のタンパク質ファミリーは、配列番号2に示された配列と少なくとも約50%、60%、70%または75%の、さらに好ましくは少なくとも約80〜90%、より好ましくは少なくとも約92〜94%、最も好ましくは少なくとも約95%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を持つであろう。配列を整列させ、必要の際に最大パーセントの相同性を有するための間隔を導入した後、配列同一性の一部分として保存的置換を考慮せず(連関媒介変数についてはセクションBを参照)、配列候補のアミノ酸配列残基のパーセントが配列番号2と同一であるように、このような配列に対する同一性または相同性はここで定義される。融合タンパク質、またはN末端、C末端または内部延長、欠失またはペプチド配列への挿入は相同性に作用したものと把握されない。
【0031】
このため、本発明に係るタンパク質は、配列番号2に示されたアミノ酸配列を有する分子、これらのタンパク質の少なくとも約3、4、5、6、10、15、20、25、30、35の連続的な配列またはより多くのアミノ酸残基を有するその断片、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基が開示されたコード配列へ又はからNまたはC末端が挿入されたアミノ酸配列変形体、少なくとも一つの残基が置換された、開示された配列のアミノ酸配列変形体、または前記で定義されたその断片を含む。また、このようにペプチドまたはポリペプチドと呼ばれる断片は、明白な疎水性部位だけでなく、既存のタンパク質ドメインに該当するアミノ酸配列の部位として確認されるタンパク質の抗原性部位、機能性部位を含むことができる。一般に使用可能なMacVector(Oxford Molecular)などのタンパク質配列分析ソフトウェアを使用することにより、これらの部位は容易に確認することができる。
【0032】
予想された変形体は、例えば相同性再配列、特定の部位またはPCR突然変異誘発による突然変異、ウサギ、マウス、豚、牛、羊、馬および非ヒト霊長類を含むがこれに限定されない他の動物種のこれに相応するタンパク質、並びに対立遺伝子または他の自然的に発生するタンパク質ファミリーの変形体、および自然的に発生するアミノ酸以外の作用基(例えば、酵素または放射性同位元素などの感知可能な作用基)で置換、化学的、酵素的または他の適切な手段によって共有的に変形された誘導体によって予定された突然変異を含むものをさらに含む。
【0033】
本発明は、本発明に係るタンパク質またはポリペプチドおよび希釈液を含む組成物をさらに含む。適切な希釈液は、水溶性および非水溶性溶媒またはその組み合わせであってもよく、付加の成分、例えばタンパク質またはポリペプチドの安定性、溶解度、活性度、および/または貯蔵に寄与する水溶解性塩またはグリセロールを含むことができる。
【0034】
後述するように、(1)タンパク質のレベルまたは少なくとも一つの活性度を調節する薬剤を確認するために、(2)タンパク質のための結合パートナーを確認するために、(3)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生産する抗原として、(4)治療剤またはターゲットとして、および(5)膵臓癌および他の増殖性疾病の診断薬剤またはマーカーとしてタンパク質ファミリーの一部を使用することができる。
【0035】
B.核酸分子
本発明は、配列番号2を有するタンパク質、および好ましくは単離形態である、ここに記述された連関タンパク質をコードする核酸分子をさらに提供する。ここで、「核酸」は前記で定義したようにタンパク質またはペプチドをコードするRNAまたはDNAとして定義され、このペプチドをコードする核酸配列に補完的であり、配列番号1の核酸にハイブリダイゼーション(hybridization)し、適切に厳しい条件の下でそれに安定的に結合した状態であり、配列番号2のペプチド配列と少なくとも約50%、60%、70%または75%、好ましくは少なくとも約80〜90%、さらに好ましくは少なくとも約92〜94%、最も好ましくは少なくとも約95%、98%、99%またはそれ以上の同一性を共有するポリペプチドをコードし、あるいは配列番号1のオープンリーディングフレーム(open reading frames)に対する少なくとも50%、60%、70%または75%、好ましくは少なくとも約80〜90%、さらに好ましくは少なくとも約92〜94%、より好ましくは少なくとも約95%、98%、99%またはそれ以上のヌクレオチド配列同一性を示す。
【0036】
本発明は、配列番号1の相補的な結合に特異的にハイブリダイゼーションする単離核酸分子、特にオープンリーディングフレームに対して特異的にハイブリダイゼーションする分子をさらに含む。このように配列番号1の相補的な結合に特異的にハイブリダイゼーションする分子は、一般に厳しいハイブリダイゼーション条件の下でそのようにする。
【0037】
自然源に由来したものか、合成されたものかを問わずに、代替バックボーン(alternative backbones)を基礎とし、あるいは代替塩基(alternative bases)を含む核酸だけでなく、ゲノムDNA、cDNA、mRNAまたはアンチセンス分子が特に計画されたものである。
【0038】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列レベルにおける相同性または同一性は、配列類似性探索のために合わせられたblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxを用いたアルゴリズムを使用したブラスト(Basic Local Alignment Search Tool)分析によって決定される(Altschul et al. (1997), Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, and Karlin et al. (1990), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268、両者とも参考文献として記載される)。ブラストプログラムによって使用された接近は、クエリー配列とデータベース配列との間にギャップがある及びない類似セグメントをまず考慮した後、確認される全てのマッチの統計学的重要性を評価し、ひいては前もって選択された重要性の境界を満足するこれらのマッチを要約することである。配列データベースの類似性探索における基本的なイッシューを検討するために、Altschul文献を参照する(Altschul et al. (1994), Nat. Genet. 6: 119-129)。カットオフ、マトリクスおよびフィルター(低い複雑度)を除き(すなわち、データベース配列に対するマッチを報告するための統計学的重要性の境界)、ヒストグラム、記載、配列に対するサーチパラメートはデフォルトとして設定する。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxで使用されたデフォルトスコーリングマトリクス(default scoring matrix)は、BLOSUM62マトリクス(Henikoff et al. (1992), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919、参考文献として全て記載される)であって、長さが85個以上のヌクレオチドまたはアミノ酸のクエリー配列のために勧められる。
【0039】
ブラストに対して、スコーリングマトリクスはN(すなわち、ミスマッチされた残基に対するペナルティースコア)に対するM(すなわち、マッチされた残基の対に対する補償スコア)の比によって設定される。ここで、MおよびNに対するデフォルト値はそれぞれ5と−4である。4つのblastnパラメータは下記のとおりに調節される:Q=10(ギャップ生成ペナルティー)、R=10(ギャップ延長ペナルティー)、wink=1(クエリーに沿って毎度瞬きする位置で単語ヒットを生成)、およびgapw=16(ギャップの開いた配列が生成されたものでウィンドウの幅を設定)。同等のblastpパラメータ設定値は、Q=9、R=2、wink=1、およびgapw=32であった。GCGパッケージバージョン10.0における配列間の最良適合の比較はDNAパラメータGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ延長ペナルティー)を使用し、タンパク質の同等な設定値GAP=8およびLEN=2である。
【0040】
「厳しい条件」は、(1)洗浄のために低いイオン強度および高温で実施すること、例えば50℃で0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS、または(2)ハイブリダイゼーションの際にホルムアミドなどの変性薬剤、例えば、42℃で0.1%牛血清アルブミンを含む50%(v/v)ホルムアミド/0.1%、Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用することである。他の例として、42℃の50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理された鮭精液DNA(50μg/mL)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランでハイブリダイゼーションし、42℃の0.2×SSCおよび0.1%SDSで洗浄する。当業者は、明白で感知可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るために、適切に厳しい条件を容易に決定し、変更することができる。好ましい分子は、前述した条件の下で配列番号1の相補的な結合にハイブリダイゼーションし、機能性または全長のタンパク質をコードする分子である。さらに好ましいハイブリダイゼーションされた分子は、前述した条件下で配列番号1のオープンリーティングフレームの相補鎖にハイブリダイゼーションされたものである。
【0041】
ここで、核酸分子は、核酸分子が他のポリペプチドをコードする核酸分子汚染物質から実質的に分離されたとき、「単離」されたとする。
前記核酸分子は、大腸菌(Echerichia coli)DH5@/p313−JF3の形態でKCTC(Korean Collection for Type Gultures、大田広域市儒城区魚隠洞52)に2006年6月5日付け、寄託番号KCTC10954BPで寄託された。
【0042】
本発明は、開示された核酸分子の断片をさらに提供する。ここで、核酸分子の断片はコードされているまたはコードされていない配列の小さい部分を指す。断片の大きさは意図された用途によって決定されるであろう。例えば、断片がタンパク質の活性部位をコードするために選択されるならば、その断片はタンパク質の機能性部位をコードするほど十分大きい必要がある。例えば、予測された抗原部位に対応するペプチドをコードする断片が準備できる。もし断片が核酸プローブまたはPCRプライマーとして使用されるならば、断片の長さはプロービングまたはプライミング中に相対的に少ない数の偽陽性(flase positives)を得るために選択される(セクションGを参照)。
【0043】
遺伝子増幅技術(polymerase chain reaction、PCR)のためのプローブまたは特異的プライマーとして使用された、あるいは本発明に係るタンパク質をコードする遺伝子配列を合成するために使用された本発明に係る核酸分子の断片(すなわち、合成オリゴヌクレオチド)は、化学的技術、例えばMatteucci等((1981) J. Am. Chem. Soc. 103: 3185-3191)のホスホロジアミダイト(phosphoramidite)方法または自動化合成方法を用いて容易に合成することができる。しかも、よりさらに大きいDNAセグメントは、多様な遺伝子のモジュラセグメントを確認するオリゴヌクレオチドグループの合成の後に、完全に変形された遺伝子を作るために、オリゴヌクレオチドのライゲーションを行う公知の方法によって製造することができる。
【0044】
本発明の核酸分子は、診断用およびプローブ用感知可能なラベルを含むためにさらに変形できる。このような多様なラベルは、本発明の分野では知られており、ここに記述されたコードする分子と共に容易に使用できる。適切なラベルとして、ビオチン、放射性標識または蛍光性標識ヌクレオチドなどを含むが、これに制限されない。当業者は、本発明に係る核酸分子の標識変形体を得るために、このような全てのラベルを容易に使用することができる。
【0045】
C.その他の連関した核酸分子の単離
前述したように、前記配列を追加して他の群のタンパク質グループをコードする核酸分子を単離するために、配列番号1を有する核酸分子の同定および分析は当業者には自明なことである。しかも、現在知られている配列番号2を有するタンパク質を追加して他の群のタンパク質グループをコードする核酸分子を単離するための方法も当業者には自明なことである。
【0046】
例えば、当業者は、固有の細胞から準備されたスクリーン発現ライブラリーの抗体プローブを生産するための配列番号2の核酸配列を直ちに使用することができる。典型的に、精製されたタンパク質(下記に示した)または単一抗体で免疫化されたウサギなどの哺乳類から得たポリクローナル血清は、他の群のタンパク質グループの適切なコーディング配列を得るためにラムダgtllライブラリーなどの遺伝子発現ライブラリーまたは哺乳類cDNAプローブを使用することができる。クローン化cDNA配列は、融合タンパク質として発現でき、自体調節配列を用いて直接発現でき、あるいは酵素の発現のためのそれぞれの宿主に適した調節配列を使用した構成によって発現できる。
【0047】
その代わりに、前述したコーディング配列の一部は合成でき、ある哺乳類から得られたタンパク質グループのメンバーをコードするDNAを得るためのプローブとして用いられる。約18〜20のヌクレオチド(6〜7のアミノ酸残基をコードする)を含むオリゴマーが製造され、このオリゴマーは、不要な水準の偽陽性を除去するために十分厳しい条件または厳しい条件の下でハイブリッドを得るためのスクリーンゲノムDNA(screen genomic DNA)またはcDNAとして用いられる。
【0048】
しかも、オリゴー核酸プライマー対は、核酸分子をコードするクローンを選別するためのPCRに使用するために製造できる。当業界における公知のPCRプライマーの使用において、PCR変性/アニール/延長の周期は他のコードされた核酸分子の単離に直ちに使用することに適する。
【0049】
また、タンパク質グループの別のメンバーをコードする核酸分子は、PSI−BLAST(Altschul et al. (1997), Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402)、PHI−BLAST(Zhang et al. (1998), Nucl. Acids Res. 26: 3986-3990)、3D−PSSM(Kelly et al. (2000), J. Mol. Biol. 299: 499-520)、および他のコンピュータ的な分析方法(Shi et al. (1999), Biochem. Biophys. Res. Commun. 262: 132-138 and Matsunami et. al. (2000), Nature 404: 601-604)などの方法を含むが、これに限定されず、コンピュータ的な方法が使用可能な他の配列情報またはゲノム遺伝子の存在下に同定されるであろう。
【0050】
D.核酸分子を含むrDNA分子
本発明は、コーティング配列を含む組み換えDNA分子(rDNAs)をさらに提供する。ここで、rDNA分子はインサイチュ(in-situ)における分子的操作をしたDNA分子のことをいう。rDNA分子を製造する方法は、当業界に良く知られており、例えばSambrookなどの文献(Molecular Cloning- A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001.)に開示されている。優先的に、DNA配列をコードするrDNA分子は、調節配列および/またはベクター配列を発現し得るように作動可能に連結される。
【0051】
本発明において一つのタンパク質グループをコードする配列のベクターおよび/または発現調節配列の選択は、公知になっており、タンパク質発現および形質転換された宿主細胞の好ましい機能的特性によって直ちに作動可能に連結される。本発明によって考案されたベクターは、少なくとも宿主の染色体内に直接複製または挿入でき、好ましくはrDNA分子に含まれた構造遺伝子を発現する。
【0052】
公知の技術である作動可能に連結されたタンパク質のコーディング配列の発現調節に使用された発現調節因子は、プロモーター、構成プロモーター、分泌シグナルおよびその他の調節因子を誘導することが可能な発現調節因子を含むが、これに限定されない。好ましくは、誘導可能なプロモーターは、宿主細胞の環境が栄養分に敏感であるように直ちに調節される。
【0053】
実施例において、コードされた核酸分子を含むベクターは、例えば直接的な自律複製が可能でバクテリア宿主細胞、形質転換された細胞などの原核宿主細胞で染色体外的に組み換えDNA分子を維持することが可能なDNA配列を有する原核細胞のレプリコン(Prokaryoic replicon)を含むであろう。このようなレプリコンは当業界によく知られている。しかも、原核細胞のレプリコンを含んだベクターは、また、薬剤耐性などの検出マーカーを発現する遺伝子を含むことができる。典型的なバクテリアの薬剤耐性遺伝子はアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリンに対して抵抗性を持つ。
【0054】
原核細胞のレプリコンを含むベクターは、大腸菌(E.coli)などのバクテリア宿主細胞のコーディング遺伝子配列を直接発現(転写および翻訳)させることが可能な原核またはバクテリオファージプロモーターを含むことができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼと結合し、転写を行うためのDNA配列によって形成された発現調節因子である。バクテリア宿主に適したプロモーター配列は、典型的に本発明のDNAセグメントに挿入し易い制限部位を含むプラスミドベクターを提供する。このような典型的なプラスミドベクターは、BioRad Laboratories(Richmond、CA)から購入可能なpUC8、pUC9、pBR322およびpBR329、Pharmacia(Piscataway、NJ)から購入可能なpPLおよびpKK223がある。
【0055】
原核細胞に適した発現ベクターは、好ましくは脊椎動物の細胞に適し、コーディング配列を含むrDNA分子を作ることに使用できる。公知の技術であるウイルス性ベクターを含む原核細胞発現ベクターは様々な商業的材料として使用できる。典型的に、このようなベクターは理想的なDNAセグメントを挿入し易い制限部位を含んで提供される。このような典型的なベクターは、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia)、pBPV-1/pML2d(International Biotechnologies、Inc)、pTDT1(ATCC、#31255)、前記pCDM8ベクターおよび類似真核発現ベクターがある。ベクターは必要に応じて組織特異的プロモーターを含んで操作できる。
【0056】
本発明において、rDNA分子の製作に使用される真核細胞発現ベクターは、真核細胞に効果的な選別マーカーを含み、好ましくは薬剤耐性選別マーカーを含む。好ましい薬剤耐性マーカーは、例えばネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子(Southern et al. (1982), J. Mol. Anal. Genet. 1:327-341)などのネオマイシン抵抗性を発現する遺伝子である。その代わりに、選別マーカーとして、分離されたプラスミド、2つのベクターが宿主細胞に同時転移によって挿入されたもの、および選別マーカー用として適した薬剤から培養によって選別されたものが存在し得る。
【0057】
E.外部から供給されたコーディング核酸分子を含む宿主細胞
本発明は、本発明のタンパク質をコードする核酸分子で形質転換された宿主細胞をさらに提供する。宿主細胞は真核細胞または原核細胞である。原核細胞は本発明のタンパク質発現に有用であるが、これに限定されず、細胞主は細胞培養方法および発現ベクターの増殖と遺伝子産物の発現に適する。真核宿主細胞は、好ましくはイースト、昆虫および哺乳類細胞、さらに好ましくはマウス、ラット、猿またはヒトの細胞株などの脊椎動物の細胞を含むが、これに限定されない。真核宿主細胞は、好ましくはATCCのCCL61から購入可能なCHO(Chinese hamster ovary)細胞、ATCCのCRL1658から購入可能なNIHスイスマウスの胚芽細胞(NIH/3T3)、ベビーハムスターの腎臓細胞(BHK)および類似真核細胞組織培養細胞株を含む。
【0058】
ある原核細胞宿主は、本発明のタンパク質をコードするrDNA分子の発現に使用できる。好ましくは、原核細胞宿主は大腸菌(E.coli)である。
【0059】
本発明のrDNA分子を有する適切な細胞宿主の形質転換は公知の技術であり、典型的にベクターの類型に依存的であり、宿主数のシステムを使用する。原核宿主細胞の形質転換には、電気穿孔法(electroporation)および塩処理方法が典型的に用いられる(例えば、Cohen et al. (1972), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69: 2110; and Sambrook et al., supra)。rDNAを含むベクターを有する脊椎動物細胞の形質転換には電気穿孔法、陽イオン界面活性剤または塩処理方法を典型的に使用し、例えば文献「Graham et al. (1973), Virol. 52: 456; Wigler et al. (1979), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 1373-1376」から確認することができる。
【0060】
成功的に形質転換された細胞、例えば本発明のrdNA分子を含む細胞は、公知の技術、すなわち選別マーカーを用いて選別する方法を含んだ技術によって同定できる。例えば、本発明のrDNAが導入された細胞は、単一コロニーを作るために複製される。このコロニーから得られた細胞は、破砕、溶解され、文献「southern, (1975) J. Mol. Biol. 98: 503 or Berent et al., (1985) Biotech. 3: 208」に開示されているものと同じ方法を用いて、DNA内容物にrDNAが存在するか否かを検査することができ、あるいはタンパク質は免疫学的方法による細胞検定から得られる。本発明者は、大腸菌(Echerichia coli)DH5@/p313−JF3を製造し、韓国生命工学研究院のKCTC(Korean Collection for Type Gultures)に2006年6月5日付け(寄託番号KCTC10954BP)で寄託した。
【0061】
F.rDNA分子を用いた組み換えタンパク質の生産
本発明は、前述した核酸分子を用いてタンパク質を生産するための方法をさらに提供する。一般に、組み換え型タンパク質の生産は次の段階を持つ。
【0062】
まず、核酸分子は、配列番号1、または配列番号1のヌクレオチド53〜643または53〜640から構成されるあるいは基本的に構成される核酸分子などの本発明のタンパク質をコードして得られる。もしコーディング配列がこのようなオープンリーディングフレームのようにイントロンによって中断されなければ、これはいずれの宿主細胞における発現にも適する。
【0063】
したがって、核酸分子は、好ましくはオープンリーディングフレームタンパク質を含む発現体を形成するために、前述したように適切な調節配列を有する作動可能な連鎖に位置する。発現体は適した宿主細胞の形質転換に使用され、形質転換された宿主細胞は組み換えタンパク質の生産が可能な環境の下で培養される。任意に組み換えタンパク質は培地または細胞から単離され、タンパク質の回収および精製は若干の不純物がある状態では不要である。
【0064】
前述した各段階は多様な方法で行われ得る。例えば、理想的なコーディング配列は遺伝子断片から得られることができ、適した宿主細胞に直ちに用いられる。多様な宿主細胞で使用可能な発現ベクターの製作は、前述したように適したレプリコンおよび調節配列を使用することが可能である。調節配列、発現ベクターおよび形質転換方法は、前述したとおりに、遺伝子発現のために使用された宿主細胞の類型に依存する。一般に使用できない適切な制限部位はこのようなベクター内に挿入するための切除可能な遺伝子を生産するためにコーディング配列の端部に添加することができる。当業者は、既に公知のいずれの宿主細胞/発現システムに対しても、組み換えタンパク質を生産するための本発明の核酸分子を直ちに適用可能であろう。
【0065】
G.膵臓癌に連関した遺伝子をコードする核酸の発現を調節する薬剤を同定する方法
本発明の他の実施例は、本発明のタンパク質、例えば配列番号2の核酸配列を有するタンパク質などをコードする核酸の発現を調節する薬剤を同定する方法を提供する。このような検定は、本発明で核酸の発現度合いの変化を観察する手段として利用可能である。細胞における核酸発現の上方または下方調節が可能であれば、この薬剤は本発明の核酸発現を調節するために使用される。
【0066】
一つの検定方法は、レポーター遺伝子(reporter gene)を含む細胞株と配列番号1の53〜643ヌクレオチドによって定義されたオープンリーディングフレーム内のヌクレオチドを融合し、および/または5’および/または3’調節因子および検定可能な融合パートナーを得ることができる。多くの検定可能な融合パートナーが知られており、蛍ルシフェラz−ゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Alam et al. (1990), Anal. Biochem. 188: 245-254)をコードする遺伝子を含んで容易に利用可能である。レポーター遺伝子融合体を含む細胞株は、薬剤に露出されて適切な環境と時間の下で検査される。薬剤に露出されたサンプルと対照サンプル間のレポーター遺伝子の差別的な発現は、本発明の核酸発現を調節する薬剤を同定する。
【0067】
追加的な検定方法は、本発明のタンパク質、例えば配列番号2を有するタンパク質などをコードする核酸の発現を調節する薬剤の活性を測定することに使用できる。例えば、mRNA発現は、本発明の核酸ハイブリダイゼーションによって直ちに測定することができる。薬剤に露出された細胞株は適切な環境と時間の下で検査され、総RNAまたはmRNAは文献「Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001」に開示されている標準方法によって同定される。
【0068】
好ましい細胞は、ヒトの組織に由来し、例えば、癌患者からの培養された細胞または生検組織である。ATCC乳管癌細胞株(Catalogue Nos.CRL−2320、CRL−2338およびCRL−7345)、ATCC結腸直腸腺癌細胞株(Catalogue Nos.CCL−222、CCL−224、CCL−225、CCL−234、CRL−7159およびCRL−7184)、ATCC肺腺癌細胞株(Catalogue Nos.CRL−5944、CRL−7380およびCRL−5907)、ATCC卵素腺癌細胞株(Catalogue Nos.HTB−161、HTB−75およびHTB−76)、ATCC膵臓腺癌細胞株(Catalogue Nos.HTB−79、HTB−80およびHTB−2547)、ATCC前立腺線癌細胞株(Catalogue Nos.CRL−1435、CRL−2422およびCRL−2220)およびATCC胃腺癌細胞株(Catalogue Nos.CRL−1739、CRL−1863およびCRL−1864)が使用できる。その代わりに、他の有効な細胞または細胞株も使用することができる。
【0069】
対照群細胞と薬剤に露出された細胞間のRNA発現度合いの差を検出するためのプローブは、本発明の核酸から製造できる。好ましくは、非常に厳しい条件の下で標的核酸のみをハイブリダイゼーションするプローブを製作する。但し、非常に相補的な核酸ハイブリッド(hybrid)は非常に厳しい条件の下で形成される。したがって、厳しい検定条件はハイブリッドを形成するために存在する2つの核酸鎖間の相補性を決定する。その厳しさは、プローブ:標的ハイブリッドおよびプローブ:非標的ハイブリッド間の安定性の差を最大化するために選択される。
プローブは、公知の方法によって本発明の核酸から製作される。例えば、プローブのG+C構成およびプローブの長さは標的配列に結合するプローブに影響を与えることができる。プローブの特異性を最適化するための方法は、文献「Sambrook et al., supra, or Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, Fourth Ed., John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999」に開示されており、一般に使用することができる。
【0070】
ハイブリダイゼーション条件は、公知の方法、例えば「Sambrook et al. and Ausubel et al.」によって記述された方法を用いてそれぞれのプローブに使用することができる。ポリA RNAに富むRNAまたは総細胞のRNAのハイブリダイゼーションはいずれの方法でも可能である。例えば、ポリA RNAに富むRNAまたは総細胞のRNAは固体支持体に付着させることができ、少なくとも一つのプローブに露出された固体支持体はプローブが特異的にハイブリダイゼーションすることが可能な条件の下で本発明の配列の少なくとも一つまたは一つの一部を含む。その代わりに、本発明の配列の少なくとも一つまたは一つの部分を含む核酸断片は、固体支持体、例えばシリコンチップ、多孔性ガラスウエハーまたは膜などに付着できる。固体支持体は、付着した配列が特異的にハイブリダイゼーションできる条件の下でサンプルからポリA RNAまたは総細胞のRNAに露出できる。このような固体支持体とハイブリダイゼーション方法は広く使用可能であり、例えば、BeattieによってWO95/11755(1995)に記述されている。配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を上方または下方調節する薬剤に露出された細胞群および非処理細胞群から得たRNAサンプルを特異的にハイブリダイゼーションするために、与えられたプローブの活性を測定することにより、同定する。
【0071】
mRNAの定性および定量分析のためのハイブリダイゼーションは、RNA分解酵素保護法(RNase protection assay)(例えば、RPA, Ma et al. (1996), Methods 10: 273-238参照)の使用によって行われ得る。簡単に、遺伝子産物をコードするcDNAおよびファージ特異的DNA依存RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7、T3またはSP6 RNAポリメラーゼ)を含む発現媒体はcDNA分子の3’末端、ファージプロモーターの下流を線形化し、このように線形化された分子はその後で試験管内で転写によってcDNAの標識付きアンチセンスの転写物を合成するための鋳型として使用される。標識付き転写物は、80%ホルムアミド、40mMパイプ(pipes)、pH6.4、0.4M NaClおよび1mM EDTAを含む緩衝溶液で45℃で一晩培養することにより、単離されたRNA混合物(例えば、総mRNAまたは分別されたmRNA)にハイブリダイゼーションされる。ハイブリッドは、40μL/mLリボヌクレアーゼAおよび2μL/mLリボヌクレアーゼを含む緩衝溶液で分解される。外部タンパク質の抽出および不活性化の後、サンプルは分析のための尿素/ポリアクリルアミドゲルにロードする。
【0072】
別の検定法は、インスタント遺伝子産物の発現に影響する薬剤の同定のために、生理学的に本発明の遺伝子産物を発現する細胞または細胞株は一番目に同定される。また、同定された細胞および/または細胞株は、転写機構の調節能力などの必須的な細胞組織を含み、適切な表面形質導入構造および/または細胞質カスケードを有する外部接触薬剤によって維持される。しかも、このような細胞または細胞株は、インスタント遺伝子産物のコーディングに使用可能な非翻訳された5’プロモーター含有構造の遺伝子が一つまたはそれ以上の抗原性の断片と融合されてインスタント遺伝子産物を作る。前記断片は、前記プロモーターの転写的調節の下でポリペプチドとして発現される。このプロモーターの分子量は自然的に存在するポリペプチドとは区別されるか、あるいは免疫学的に別個のタグまたはその他の検出マーカーを含むことができる。このような過程は当業界によく知られている(Sambrook et al., supra参照)。
【0073】
前述したように形質導入またはトランスフェクションされた細胞または細胞株は、適切な環境の下で試薬に露出される。例えば、薬剤学的に使用可能な賦形剤内で、試薬は生理学的pHにおけるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理学的pHにおけるBSS(Eagles balanced salt solution)などの水溶性生理学的バッファ内で細胞に露出され、血清を含むPBSまたはBSS、あるいはPBSまたはBSSおよび/または血清を含む調節された培養液で細胞を37℃で培養する。このような条件は当業者の判断によって調節できる。次に、試薬に露出された前記細胞は分裂でき、溶解物のポリペプチドは断片化される。ポリペプチド断片は集められ、抗体に接触した断片は免疫学的検定法(例えば、ELISA、免疫沈降またはウエスタンブロット)で行うことができる。「試薬に露出された」サンプルから単離されたタンパク質全体は、賦形剤に露出された細胞の対照サンプルと比較でき、対照サンプルと比較して「試薬に露出された」サンプルから免疫学的に発生したシグナルの増加または減少は試薬の有効性区別に使用できる。
【0074】
H.膵臓癌関連タンパク質のレベルまたは少なくとも一つの活性を調節する薬剤を同定する方法
本発明の他の実施例は、本発明のタンパク質、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質などのレベルまたは少なくとも一つの活性を調節する薬剤を同定する方法を提供する。このような方法または検定は、所定の活性を観察または発見する手段として活用でき、特に膵臓癌治療薬剤の同定に非常に有用である。
【0075】
一つの形式において、本発明のタンパク質の相対量は、薬剤に露出、測定されなければならない細胞群と露出されていない調節細胞群とを比較して検定できる。このような形式において、特定の抗体などのプローブは他の細胞群におけるタンパク質の特異的発現を観察することに用いられる。細胞系または細胞群は測定されるべき薬剤に適切な環境と時間の条件下で露出される。細胞の溶解物は露出された細胞系または細胞群、および露出されていない調節細胞系または細胞群から製造できる。前記細胞の溶解物はプローブを用いて分析される。
【0076】
抗体プローブは、ペプチド、ポリペプチドまたは本発明のタンパク質が十分な長さであり、あるいは適当なキャリア(保菌者)に接合した免疫原性を強化する必要がある場合、これらを使用した適切な免疫プロトコルで適当な哺乳類宿主を免疫させることにより製造できる。キャリア、例えばBSA、KLHまたは他のキャリアタンパク質などを有する免疫接合を製造する方法は、公知の技術である。幾つかの環境ではカルボジイミド試薬を使用する直接接合が効果的であり得る。他の状況では、Pierce Chemical Co.(Rackford、IL)から提供される連結試薬がハプテン接近可能性の提供に理想的であり得る。ハプテンペプチドは、例えばキャリアとの連結を容易にするために、システイン残基または処々に置かれたシステイン残基と共にアミノまたはカルボキシ末端まで延長できる。免疫原の投与は一般に注射で行われるが、適当な時間と適当な補助薬を使用し、これは公知の技術である。免疫化日程の間、抗体力価は抗体形成の妥当性を決定することに用いられる。
【0077】
このような方式で生産されたポリクローナル抗血清は、幾つかの外用薬と医薬組成物に適し、モノクローナル調剤を使用することがさらに好ましい。所定のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞系は、KohlerおよびMilstein((1975) Nature 256: 495-497)の標準方法を使用し、あるいはリンパ球または脾臓細胞の不死化をもたらす変形を使用することにより製造できる。これは公知の技術である。所定の抗体を分泌する不死化細胞系は、ペプチドハプテン、ポリペプチドまたはタンパク質が抗原である免疫測定法によって区分される。所定の抗体を分泌する適切な不死化細胞の培養が同定されると、細胞はインビトロ(in vitro)で培養され、あるいは腹水(ascites fluid)で生産される。
【0078】
その後、所定のモノクローナル抗体は、培養上澄み液または腹水上澄み液から回収される。モノクローナル抗体、または免疫学的に重要な(抗原と結合する)部分を含んでいるポリクローナル抗血清の断片は、拮抗剤だけでなく、完全な抗体として使用できる。Fab、Fab’または好ましくはF(ab’)などの免疫学的に反応する(抗原と結合する)抗体断片を特に治療環境で使用することは、全体免疫グロブリン抗体に比べて一般に免疫性が低下する。
【0079】
抗体または抗原と結合する断片は、また、現代技術を用いて組み換え型手段によって生産できる。特に、所定のタンパク質部分に結合する抗体部位は、タンパク質の所定の区域を結合させる抗体区域は、人体に適応したヒト化抗体などの多数種起源のキメラの環境で生産できる。
【0080】
前記方法で検定された薬剤は、任意に選択されるか、あるいは論理的に選択、考案できる。言及したように、薬剤が任意に選択されたということは、薬剤を本発明のタンパク質の群集が単独でまたは関連基質、接合パートナーなどが含まれた種の配列が考慮されないままで任意に選択されたときをいう。任意に選択された薬剤は、例えば化学ライブラリーまたはペプチド結合ライブラリー、あるいは微生物の培養液として使用される。
【0081】
前述したように、薬剤が論理的に選択または考案されるということは、目標部位の配列と薬剤の作用に関連してそれの構造を考慮して計画された根拠に基づいて薬剤が選択されたときをいう。薬剤は、このような部位を構成するペプチド配列を用いることにより、論理的に選択または考案され得る。例えば、論理的に選択されたペプチド薬剤は、アミノ酸配列が一致するペプチドまたは機能的に一致する部位の誘導体になれる。
【0082】
本発明の薬剤は、例えばペプチド、小さい分子、ビタミン誘導体および炭水化物になれる。優性ネガティブ(dominant negative)タンパク質、このようなタンパク質をコードしたDNA、このようなタンパク質の抗体、このようなタンパク質のペプチド断片またはこのようなタンパク質の模倣体は、機能に影響を及ぼすために挿入できる。「模倣体(Mimic)」は、局所解剖学的、機能的には親ペプチドと類似であるが、化学的には親ペプチドと異なる構造を提供するために、ペプチド分子の一つまたは多数の部位の変形を呼ぶ用語である(参考:Grant in: Molecular Biology and Biotechnology, Meyers, ed., pp. 659-664, VCH Publishers, Inc., New York, 1995)。熟練した当業者は、本発明の薬剤の構造的な本質においては限界がないことを容易に知ることができる。
【0083】
本発明のペプチド薬剤は、周知の如く、標準固体相(または溶液相)ペプチド合成方法を用いて製造できる。しかも、このようなペプチドをコードしたDNAは商用の核酸合成手段によって合成でき、標準組み換え型生産システムを用いて組み換え型に生産できる。コードされた非遺伝子アミノ酸が含まれなければならない場合、固体相のペプチド合成を用いて生産することが必要である。
【0084】
本発明の別の種類の薬剤は、本発明のタンパク質の決定的位置と免疫反応を行う抗体である。抗体薬剤は、抗体によってターゲットと定められるタンパク質の部分を抗原区域部位として含むペプチドと適当な哺乳類個体の免疫によって獲得できる。
【0085】
I.膵臓癌に関連したタンパク質の少なくとも一つの活性または発現を調節する薬剤の使用
実施例で言及したように、配列番号2のアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質と核酸は、膵臓癌組織で差別的に発現される。例えば作用薬剤または拮抗剤などのタンパク質の少なくとも一つの活性あるいはタンパク質の発現を調整(modulate)あるいは上方または下方調節(up- or down-regulate)する薬剤は、タンパク質の機能および活性に連関した生物学的、病理学的過程を調節するために使用できる。これは本発明の同族体および類似体として使われるものとして同定された薬剤を含む。
【0086】
前述したように、個体はいずれの哺乳動物も可能であるが、哺乳類が本発明のタンパク質によって伝達される病理的または生物学的過程の調節を必要とする限りはそうである。「哺乳動物」という用語は、哺乳類種に属する個体をいう。本発明は特にヒト個体の治療に有用である。
【0087】
病理的過程は、有害効果を作り出す生理学的過程の範疇のことをいう。例えば、本発明のタンパク質の発現は、細胞培養成長(cell growth)または過形成(hyperplasia)と関連があり得る。前述したように、薬剤が過程の度合いまたは深刻性を減少させるときを、薬剤が病理的過程を調節するという。例えば、本発明のタンパク質の少なくとも一つの活性または発現を調整あるいは上方または下方調節する薬剤の投与によって疾病の経過が調節されるかあるいは癌が予防され得る。
【0088】
本発明の薬剤は、単独で、あるいは特定の病理的過程を調節する他の薬剤と結合して提供できる。例えば、本発明の薬剤は、他の周知の薬物と結合して投与できる。前述したように、2つの薬剤が結合して投与されるというのは、2つの薬剤が同時に投与される場合、あるいは薬剤が同時に作用する方式で個別的に投与される場合をいう。
【0089】
本発明の薬剤は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹膜内、経皮または口腔的経路によって投与できる。投与された投薬は、受容者の年齢、健康および体重、同時治療の種類、治療の種類、並びに所定の効果の本質によって異なる。
【0090】
また、本発明は、本発明のタンパク質の少なくとも一つの活性または発現を調節する一つ以上の薬剤を含む混合物を提供する。個別的な要求は多様であるが、各成分の効果的な量の最適範囲を決定することは周知の技術に属する。典型的な投薬量は0.1〜100μg/kg(体重)である。最も好ましい投薬量は0.1〜1μg/kg(体重)である。
【0091】
薬理作用を有する薬剤と共に、本発明の混合物は作用部位への伝達のために薬理的に利用できるように活性構成成分を調製する過程を容易にする添加剤と補助剤からなる適当な薬理学的に許容可能なキャリアを含む。非経口投薬の適当な剤形は水溶性塩などの水溶性形態の活性構成成分水溶液を含む。また、適切な油性注入懸濁液として活性構成成分の懸濁液が投与できる。水性注入懸濁液は懸濁液の粘性を増加させることが可能な物質を含むが、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランである。選択的に、懸濁液は安定剤を含むこともできる。また、リポソームは、細胞に伝達するために薬剤をカプセルに入れることに使用できる。
【0092】
本発明に係る全身投与のための薬剤の剤形は、腸、非経口または局部性の投薬のために製造できる。実際に、この3類型の剤形は主成分の全身投薬を可能にするために同時に使用できる。
【0093】
経口投薬のための適当な剤形は、堅いまたは柔らかいゼラチンカプセル、丸薬、コートされた錠剤を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップまたは吸入剤を含み、それらの放出制御型を含む。
【0094】
本発明に係る方法を行うとき、本発明の混合物は単独でまたは組み合わせの形態で使用されるか、あるいは他の治療薬または診断薬と組み合わせて使用される。詳細な説明において、本発明の混合物は、一般に許容された医療行為に従い、このような病気に対して大体は所定の他の混合物と共に投与できる。本発明の混合物は、通常、例えばヒト、羊、馬、牛、豚、犬、猫、マウス、ラットなどの哺乳動物の生体内または試験管内で利用できる。
【0095】
J.結合パートナーを同定する方法
本発明の別の詳細な説明では、本発明のタンパク質の結合パートナーを同定し単離する方法を提示している。一般に、本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質と潜在的な結合パートナーとの会合が許容される状況で細胞の部分断片、または抽出物あるいは潜在的な結合パートナーと混合される。混合の後、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または本発明のタンパク質に会合する他の分子が混合物から分離される。本発明のタンパク質に結合した結合パートナーは、除去された後、分解される。結合パートナーを同定し単離するために、配列番号2の完全なアミノ酸配列を含むタンパク質が使用される。その代案として、タンパク質の断片が使用されてもよい。
【0096】
前述したように、細胞抽出物とは、溶解細胞または破壊細胞から作られた部分または調剤をいう。細胞抽出物の好適な根源は、癌腫からの組織培養細胞または生検組織などの形質転換細胞またはヒト腫瘍から派生した細胞である。代案として、細胞抽出物は正常組織または利用可能な細胞系から準備できる。
【0097】
細胞抽出物を獲得するための多様な方法がある。細胞は物理的または化学的破壊方法を用いて破壊できる。物理的な破壊方法の例には超音波分解および機械せん断があり、これに限定されない。化学的細胞溶解方法の例には界面活性剤溶解と酵素溶解があり、これに限定されない。熟練した当業者は、本方法を用いて抽出物を獲得するために細胞抽出物を準備する方法を容易に適用することができる。
【0098】
細胞抽出物が準備されると、この抽出物はタンパク質と結合パートナーとの会合が発生しうる状況で本発明のタンパク質と混合される。多様な環境が使用できるが、最も好ましい環境はヒト細胞の細胞質と非常に類似な環境である。オスモル濃度、pH、温度、および使用された細胞抽出物の濃度などの特徴は、タンパク質と結合パートナーとの会合を最適化するように変更できる。最適化のために多様化できる。
【0099】
適切な環境で混合した後、結合した合成物は混合物から分離される。混合物を分離するための多様な技術が利用できる。例えば、本発明のタンパク質に特殊な抗体が、結合パートナー合成物を免疫沈降するために使用できる。代案として、一般な化学分離技術、例えばクロマトグラフィーおよび密度/沈殿物遠心分離などが使用できる。
【0100】
抽出物の非会合細胞成分を除去した後、結合パートナーは従来の方法を用いて合成物から分離できる。例えば、塩濃度または混合物のpHを変更することにより分離できる。
【0101】
混合された抽出物から会合した一対の結合パートナーを分離することに役に立つために、本発明のタンパク質は固体支持体に固定される。例えば、タンパク質はニトロセルロースマトリクスまたはアクリルビーズに付着できる。タンパク質を固体支持体に付着させることは、ペプチド/結合パートナーの一対を抽出物の他の成分から分離することに役に立つ。同定された結合パートナーは、単独のタンパク質または2つ以上のタンパク質からなる合成物である。代案として、結合パートナーはTakayama et al.(1997)の手続きによるFar−Western検定、文献「Methods Mol. Biol. 69: 171-184」または文献「Sauder et al. (1996), J. Gen. Virol. 77: 991-996」の方法を用いて同定でき、あるいはエピトープ標識タンパク質またはGST融合タンパク質の使用によって同定できる。
【0102】
その代案としては、本発明の核酸分子は、酵母の2つのハイブリッドシステム(yeaste two-hybrid system)または他の生体内タンパク質−タンパク質結合分析装置に使用できる。酵母の2つのハイブリッドシステムは、他のタンパク質パートナー対を同定することに使用されてきた。前述した核酸分子を使用することに容易に利用できる。
【0103】
K.膵臓癌に関連したタンパク質の結合パートナーの使用
一応単離すると、前述した方法を用いて得た本発明に係るタンパク質の結合パートナー、およびその同族体および類似体は、多様な目的のために使用できる。結合パートナーは、従来の技術を用いて結合パートナーを結合させる抗体を生成するために使用できる。結合パートナーを結合させる抗体は、本発明に係るタンパク質によって仲裁された生物学的または病理学的工程を調節するための治療剤として使用でき、あるいは結合パートナーを精製するために、本発明に係るタンパク質の活性を検査するために使用できる。これらの用途は詳しく後述する。
【0104】
L.膵臓癌関連タンパク質と結合パートナーとの会合を阻害する薬剤を同定する方法
本発明の別の様態は、本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの会合を減少または阻害する薬剤を同定する方法を提供する。詳しくは、本発明に係るタンパク質は、テストする薬剤があるとき、およびテストする薬剤がないときに結合パートナーと混合される。タンパク質の会合を許容する条件の下で混合した後、薬剤が本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの会合を減少または阻害したかを決定するために、2つの混合物を分析比較する。本発明に係るタンパク質と結合パタートナーとの会合を阻害または減少させる薬剤は、テスト用薬剤を含むサンプルに存在する会合量を減少させるものと確認されるであろう。
【0105】
前述したように、薬剤が存在して、結合パートナーが本発明に係るタンパク質と会合する度合いを減少または阻害させるとき、薬剤が本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの会合を減少または阻害するものと確認される。ある部類の薬剤は、別の部類の薬剤が本発明に係るタンパク質に結合することによりその会合を減少または阻害する間に結合パートナーに結合することにより、会合を減少または阻害するであろう。
【0106】
前記検査に使用された結合パートナーは、単離したものであってもよく、完全に特性を与えたタンパク質であってもよく、本発明に係るタンパク質または細胞抽出物に存在するものと確認された結合パードナーに結合した部分的に特性を与えたタンパク質であってもよい。結合パートナーが確認可能な性質、例えば分子量などの性質を持っているならば、本発明に係る検査が使用できることは当業者には明白であろう。
【0107】
前記方法で検査された薬剤は、無作為抽出によって選択されるか、あるいは合理的に選択または設計できる。この際、本発明に係るタンパク質と結合パートナーの会合に連関した特異的な配列を考慮せず薬剤が無作為に選択されるとき、薬剤は無作為に選択される。無作為に選択された薬剤の実例は、化学ライブラリーまたはペプチド組み合わせライブラリーまたは有機体の成長培養液の使用である。
前述したように、ターゲット部位の配列および/または薬剤の作用と連関した配列を考慮する作為的な根拠に基づいて薬剤が選択されるとき、薬剤は合理的に選択/設計される。本発明に係るタンパク質に対する結合パートナーの接触部位を構成するペプチド配列を用いることにより、薬剤は合理的に選択または設計できる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬剤は、アミノ酸配列が結合パートナーに対する本発明に係るタンパク質の接触部位と同一のペプチドであり得る。このような薬剤は、結合パートナーに結合することにより、本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの会合を減少または阻害するであろう。
【0108】
本発明に係る薬剤は、例えば炭水化物だけでなく、ペプチド、小分子またはビタミン誘導体である。当業者であれば、本発明に係る薬剤の構造的な性質に対しては制限がないことを容易に認識するであろう。
【0109】
本発明に係るある部類の薬剤は、アミノ酸配列が本発明に係るタンパク質のアミノ酸配列に基づいて選択されるペプチド薬剤である。本発明に係るペプチド薬剤は、本発明の技術分野で知られている標準固相(または溶液相)ペプチド合成法を用いて製造することができる。しかも、これらのペプチドをコードするDNAは、商業的に活用可能なオリゴヌクレオチド合成機構を用いることにより合成でき、標準組み換え体製造システムを用いることにより組み換え的に製造できる。アミノ酸のコードされた非遺伝子が含まれる場合には、固相ペプチド合成を用いた製造を必要とする。
【0110】
本発明に係る別の部類の薬剤は、本発明に係るタンパク質または結合パートナーの決定的な位置と免疫反応性を有する抗体である。前述したように、抗体は、ペプチドとして適切な哺乳類検体を免疫させることにより得ることができ、抗原性部位、本発明に係るタンパク質または結合パートナーのこれらの部分として含むことができ、抗体によってターゲットになるものと意図される。
【0111】
後述するように、本発明に係るタンパク質の活性に関連した重要な最小限の残基配列は、2つのハイブリッドスクリーニングおよび潜在的に連関した分子の確認に対するおとりとして効果的に使用できる機能的な線形ドメインを定義する。このような断片を使用すると、全長の分子を使用することに対立したものであって、スクリーニングの特異性が非常に増加するであろう。これと同様に、この線形配列は親和度マトリクスとして使用でき、生化学的親和度精製方法を用いて結合タンパク質を単離させるために使用できる。
【0112】
M.膵臓癌に関連したタンパク質と結合パートナーとの会合を阻害する薬剤の使用
実施例に示したように、配列番号2のアミノ酸配列を有する本発明に係るタンパク質および核酸は、膵臓癌組織で差別的に発現される。確認されたタンパク質の同族体および類似体を含む本発明に係るタンパク質の結合パートナーとの相互作用を減少または阻害する薬剤は、タンパク質の機能および活性に連関した生物学的および病理学的過程を調節するために使用できる。
【0113】
ここで、検体は本発明に係るタンパク質によって仲介された病理学的または生物学的過程の調節を必要とする哺乳類であれば、いずれの哺乳類でも使用できる。「哺乳類」という用語は、哺乳類綱に属する個体を意味する。本発明は特にヒト検体の治療に有用である。
【0114】
病理学的な方法は、有害効果を発生させる生物学的過程のカテゴリーを意味する。例えば、本発明に係るタンパク質の発現は細胞成長または過形成と連関できる。ここで、薬剤が方法の度合いまたは強度を減少させるとき、薬剤が病理学的過程を調節するとする。例えば、膵臓癌が予防でき、あるいは本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの相互作用を減少または阻害する薬剤を投入することにより疾病の進行が調節できる。
【0115】
本発明に係る薬剤は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮性または口腔の経路を介して投入できる。選択的に又は同時に、経口の経路を介して投入できる。投入された投薬量は受容者の年齢、健康状態および体重、伴う治療剤の種類、もし在れば、治療の頻度および好適な効果の性質によって決定されるであろう。
【0116】
また、本発明は、本発明に係るタンパク質と結合パートナーとの会合を阻害する一つまたはそれ以上の薬剤を含む組成物をさらに提供する。個体の要求が変わるにつれて、各構成要素の効果的な量の適正範囲は本発明の技術分野で決定することができる。一般な投薬量は体重(kg)当り0.1〜100μgである。好適な投薬量は体重(kg)当り0.1〜10μgである。最も好ましい投薬量は体重(kg)当り0.1〜1μgである。
【0117】
薬理的活性薬剤に加えて、本発明の組成物は、作用部位に伝達するために薬学的に使用できる製剤に、活性化合物を加工する添加剤または補助剤を含む、適切に薬学的に許容されたキャリアを含有することができる。非経口投与のための適切な剤形は水溶性型の活性化合物、例えば水溶性塩の水溶性溶液を含む。さらに、適切な油性注射懸濁液として活性化合物の懸濁液を投入することができる。適切な脂肪親和性の溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばコマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドを含む。水溶性注射懸濁液は懸濁液の粘性度を増加させる物質、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含むことができる。選択的に、懸濁液は安定化剤をさらに含むことができる。また、細胞内への薬剤の伝達のためのカプセル化を行うためにリポソームを使用することができる。
【0118】
本発明に係る組織的な投与のための薬剤学的剤形は、腸管、非経口または局所投与のために剤形化できる。事実上、全ての3タイプの剤形は活性成分の組織的な投与のために同時に使用できる。
【0119】
経口投与のための適切な剤形は、硬質または軟質ゼラチンカプセル、丸薬、コートされた錠剤を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップまたは吸入剤、およびそれらの放出制御型を含む。
【0120】
本発明の方法を実施するにおいて、本発明の化合物は、単独でまたは組み合わせて使用し、あるいは他の治療薬または診断薬と組み合わせて使用する。好適な様態において、本発明の化合物は、一般に許容される医療行為による条件のために、一般に処方される他の化合物と共に投与できる。本発明の化合物は、通常、例えばヒト、羊、馬、牛、豚、犬、猫、ラットおよびマウスなどの哺乳類の生体内または試験管内で使用できる。
【0121】
N.合理的な製薬デザインおよび組み合わせ化学
本発明はさらに合理的な製薬デザインおよび組み合わせ化学を含む。当業者は、膵臓癌治療のために開発できる化合物を確認することに本発明を利用および開発するための適切な方法を認識するであろう。ポリペプチドに関連した合理的な製薬デザインは、相互作用するデザインされた製薬によって1次ペプチドを確認および定義し、1次ターゲットペプチドを用いて2次ペプチドに対する必要条件を定義する。このように定義された必要条件で、全てまたは実質的に全て定義された必要条件に合う適切なペプチドまたは非ペプチドを誰でも探し出し、準備することができる。よって、合理的な製薬デザインの一つの目標は、例えば超過または未満の有力なリガンド形態の薬剤を形成するために、関心の対象となるまたはそれらと相互作用する小分子(例えば、アゴニスト、拮抗剤、ナル化合物)の生物学的に活性を有するポリペプチドの構造的または機能的類似体を製造することである(Hodgson (1991), Bio. Technology 9:19-21参照)。組み合わせ化学は、化合物の生物活性を一つずつの代わりに一挙に合成およびテストする科学であり、その目的は以前に可能であったものより迅速且つより経済的に薬剤および物質を見い出すことである。最近、コンピュータを用いたタンパク質モデリングおよび新薬開発の接近法の開発によってさらに直接に合理的な薬剤デザインおよび組み合わせ化学が関連している(米国特許4,908,773、同5,884,230、同5,873,052、同5,331,573および同5,888,738参照)。
【0122】
分子モデリングを合理的な薬剤デザインおよび組み合わせ化学のための道具として使用することが、コンピュータグラフィックの導入によって非常に増加している。コンピュータスクリーンの三次元像で分子を見せることが可能であるうえ、巨大分子、例えば酵素、受容体、およびテストする合理的にデザインされた誘導体分子などの相互作用を検査することが可能になる(Boorman (1992), Chem. Eng. News 70:18-26参照)。使用者に親しいソフトウェアおよびハードウエアの莫大な量が現在使用中であり、事実上全ての製薬会社は合理的な製薬デザインに努力を傾けるコンピュータモデリンググループを持っている。例えば、Molecular Simulations社(www.msi.com)は、使用者がアミノ酸配列から出発してタンパク質またはポリペプチドの二次元または三次元像のモデルを作り出し、これを他の二次元および三次元モデルと比較して化合物、薬剤およびペプチドと三次元モデルとの相互作用を実時間で分析することが可能な非常に複雑な幾つかのプログラムを販売する。したがって、本発明の一実施例では、相互作用する本発明に係るタンパク質および分子の部位(「結合パートナー」と総括して指す。)を他の分子、例えばペプチド、ペプチド類似体(peptidomimetics)および化学物質などと比較して治療作用が予測可能となるように設計するためにソフトウェアが使用される(Schneider (1998), Genetic Engineering News December: page 20; Tempczyk et al. (1997), Molecular Simulations Inc. Solutions April; and Butenhof (1998), Molecular Simulations Inc. Case Notes (August 1998) for a discussion of molecular modeling参照)。
【0123】
O.遺伝子治療
別の実施例では、タンパク質の機能および活性に関連した生物学的および病理学的過程を調節する手段として遺伝子治療が使用できる。これは、プロモーターまたはエンハンサーに作動可能に連結され、前記タンパク質の発現が前記癌の抑制を引き起こし、ここで前記プロモーターまたはエンハンサー要素が遺伝子構造物を調節するプロモーターまたはエンハンサー要素である、全ての配列番号2の配列または少なくとも一部分を含むタンパク質をコードする遺伝子構造物、または選択的に全ての配列番号1の非コーティング部位または一部分を含む遺伝子構造物を癌細胞内に挿入する段階を含む。
【0124】
前述した構造物は、前記タンパク質の発現は全て適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、またはメタロチオネインプロモーター(metallothionein promoters)の指示を受け、全ての適切な哺乳類調節要素によって調節できる。例えば、好ましくは神経細胞、T細胞、またはB細胞内の遺伝子発現を優先的に指示するものと知られているエンハンサーは、発現を指示するように使用できる。使用されたエンハンサーは、制限なく、その発現に特異的な組織または細胞として特定付けられたものを含むことができる。代案として、もしLBFL313のゲノムクローンが治療構造物(例えば、後で、前述した核酸分子でハイブリダイゼーションさせることにより単離させるもの)として使用されるならば、同族調節配列によって、好ましくは前記全てのプロモーターまたは調節要素を含んで、異種起源に由来した調節配列によって調節が仲裁できる。
【0125】
癌細胞内に構造物を挿入させることは、生体内、例えばウイルスまたはプラスミドベクター内で行われる。また、このような方法は、試験管内における用途としても活用できる。このため、本発明に係る方法は、細胞が試験管内で遺伝的に変形されてから宿主に投与されるか、あるいは特にこのような治療法に適したベクターを含む適切な多数の方法を用いて生体内で実施された遺伝子変形の一つである他の形態の遺伝子治療法に容易に活用することができる。
【0126】
レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ連関ウイルスベクター、または癌に関連する細胞(例えば、上皮細胞)に対して適切な屈性を持つ他のウイルスベクターは、治療遺伝子構造物に対する遺伝子伝達運搬システムとして使用できる。この目的に有用な多数のベクターは一般に知られている(Cozzi PJ, et al., (2002) Prostate, 53(2):95-100; Bitzer M, Lauer U., (2002) Dtsch Med Wochenschr. 127(31-32):1623-1624; Mezzina and Danos (2002), Trends Genet. 8:241-256; Loser et al. (2002) Curr. Gene Ther. 2:161-171; Pfeifer and Verma (2001), Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 2:177-211)。レトロウイルスベクターは、特に臨床セッティングでは十分開発されて使用されてきた(Anderson et al. (1995)、米国特許第5,399,346号)。非ウイルス接近法も、癌を経験するものと他の方法で予測された細胞内に治療DNAを導入することに使用できる(Jeschke et al. (20002) Curr. Gene Ther. 1:267-278; Wu et al. (1988), J. Biol. Chem. 263:14621-14624; Wu et al. (1989), J. Biol. Chem. 264:16985-16987)。例えば、リポフェクション、アシアロロソヌコイドポリリシンコンジュゲーション(asialorosonucoid polylysine conjugation)、またはより少し好ましくは手術の条件下における顕微注射によって遺伝子はニューロンまたはT細胞内に導入できる。
前述した方法のいずれでも治療核酸構造物は、好ましくは癌発病部位に(例えば、注射によって)好ましく適用される。ところが、癌発病付近の組織、または癌を経験するものと予測される細胞を供給する血管に適用できる。
【0127】
P.形質転換動物
【0128】
配列番号1のcDNA配列に相応する操作された遺伝子または変種、特定の遺伝子が欠如された遺伝子、または配列番号2のポリペプチド配列をコードしたオープンリーディングフレーム、あるいは少なくとも3、4、5、6、10、15、20、25、30、35の連続的な配列を有するそれらの断片またはアミノ酸残基からなる形質転換動物も本発明に属する。形質転換動物は遺伝的に操作された。形質転換動物は、遺伝的に操作された動物のことをいうもので、組み換え体、外因またはクローン遺伝子物質が実験上転移されたことをいう。このような遺伝子物質は、通常「トランス遺伝子(transgene)」と呼ぶ。このように配列番号1の形態を有する場合、トランス遺伝子の核酸配列は特定の核酸配列が一般に発見されないゲノムの遺伝子座であるいはトランス遺伝子の一般な遺伝子座で統合できる。トランス遺伝子は標的動物種よりは同種あるいは異種のゲノムに由来した核酸配列からなっている。
【0129】
発明の詳細な説明において、配列番号1からなる遺伝子の全体または一部が削除された形質転換動物を作ることができる。このような配列番号1に相応する遺伝子が少なくとも一つのイントロンを含んでいる場合、全体遺伝子(全てのエクソン、イントロンおよび調節配列)が削除できる。その代案として、全体遺伝子より少ない部分が削除できる。例えば、一つのエクソンまたはイントロンが削除され、本発明のタンパク質の操作された変形を発現する動物を生産することができる。
【0130】
「生殖細胞系遺伝子導入動物(germ cell line transgenic animal)」とは、遺伝子変化または遺伝子情報が生殖系細胞に挿入された後、遺伝子情報を子孫に転移させることが可能な能力を持つ形質転換動物を呼ぶ。もし子孫が実際に幾つかあるいは全ての変化と遺伝子情報を所有すると、それらもやはり形質転換動物になるのである。
【0131】
変化または遺伝情報は、受容者が属している動物の種に対して外来であってもよく、特定の個別受容者に対してのみ外来であってもよく、受容者によって既に所有された遺伝子情報であってもよい。
【0132】
形質転換動物を多様な方法で作り出すことができるが、その方法としては核内注入、電気沈降、顕微注射、胚芽幹細胞内遺伝子的中、並びに組み換え体ウイルスおよびレトロウイルス感染などがある(米国特許4,736,866、同5,602,307、Mullins et al. (1993), Hypertension 22: 630-633; Brenin et al. (1997), Surg. Oncol. 6: 99-110; Recombinant Gene Expression Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 62), Tuan, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 1997参考)。
【0133】
多数の組み換え体または形質転換マウスが生産されたが、次のものを含んでいる:活性化された発現遺伝子配列を発現し(米国特許4,736,866)、猿ウイルス40T−抗原を発現し(米国特許5,728,915)、インターフェロン調節因子1(IRF−1)の発現が足りず(米国特許5,731,490)、ドーパミン機能障害を示し(米国特許5,723,719)、血圧調節に関与するヒト遺伝子の少なくとも一つを発現し(米国特許5,731,489)、アルツハイマー病が自然的に生ずる条件と非常に類似性を示し(米国特許5,720,936)、細胞付着を調節する能力が減少し(米国特許5,602,307)、牛成長ホルモン遺伝子を所有しており(Clutter et al. (1996), Genetics 143: 1753-1760)、あるいはヒト抗体反応を起す能力がある(McCarthy (1997), Lancet 349: 405)。
【0134】
マウスとラットが遺伝子導入実験で最もよく選択されるが、幾つかの場合では他の種の動物を使用することがさらに好ましいまたは必須的である。遺伝子導入手続きは羊、山羊、豚、犬、猫、猿、チンパンジー、ハムスター、ウサギ、牛、およびモルモットなどの多様な非マウス動物を使用することにより、成功的に行われてきた(Kim et al. (1997), Mol. Reprod. Dev. 46: 515-526; Houdebine (1995), Reprod. Nutr. Dev. 35: 609-617; Petters (1994), Reprod. Fertil. Dev. 6: 643-645; Schnieke et al. (1997), Science 278: 2130-2133; and Amoah (1997), J. Animal Sci. 75: 578-585参考)。
【0135】
核酸断片を組み換え体哺乳類に適した細胞に挿入する方法は、多発核酸分子の共同変換を促進する方法であれば誰でも可能である。形質転換動物を生産する詳細な手続きは、米国特許5,489,743と米国特許5,602,307に開示されたものを含んで当業者には自明である。
【0136】
Q.診断方法
本発明のタンパク質と遺伝子が、癌にかかっていない膵臓組織と比較したときに膵臓癌組織で特異的に発現されたため、本発明のタンパク質と遺伝子は膵臓癌を診断または監視することに使用し、あるいは病気の進行を追跡し、癌にかかっていない膵臓組織サンプルから膵臓細胞を分化させることに使用できる。核酸分子または本発明のタンパク質を用いて癌を診断する一つの方法は、生きている個体から組織を獲得することである。
【0137】
核酸または本発明のタンパク質分子を検出する検定は、全ての形式で可能である。核酸分子に対する典型的な検定はハイブリダイゼーション、または形式に基づいたPCRを含む。本発明のタンパク質、ポリペプチドあるいはペプチドの検出のための典型的な検定は、インサイチュ結合などの可能な形式で抗体プローブを使用することを含む(Harlow & Lane, Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1988)。好ましい実施例において、検定は適切な調節と共に実行される。
【0138】
一般に、本発明の診断は、実施例が核酸に基づいた検定であるか、あるいはタンパク質に基づいた検定であるかによって分類できる。幾つかの診断検定は、本発明内の突然変異あるいは多型性(polymorphisms)、癌の異常に寄与する核酸またはタンパク質を検出する。他の診断検定はタンパク質活動の欠陥を同定し区別するが、これは、本発明のRNAまたは癌などの病気に苦しんでいる生物のタンパク質水準と同様の実験された生物内のタンパク質と本発明水準のRNAを検出することにより行われるか、あるいは病気に苦しんでいる生物とは異なる実験された生物内のタンパク質と本発明水準のRNAを検出することにより行われる。
【0139】
また、次の詳細な説明で記載された方法と、薬剤を混合することにより迅速な検出とタンパク質の活動性またはレベルの異常を同定することが可能なキットの生産も考慮された。診断キットは、特に本発明の少なくとも一つのタンパク質の発現またはRNAの水準を決定することに使用できる本発明のタンパク質または核酸プローブまたは抗体またはこれらの組み合わせの突然変異形態を検出する核酸プローブまたは抗体またはこれらの組み合わせを含む。このようなキットの検出成分は、典型的に次の薬剤の少なくとも一つと結合して提供される。吸収能力のある支持体または結合DNA、RNAまたはタンパク質が度々提供される。有効な支持体は陽性に帯電した置換基の配列を持つことにより分析できるニトロセルロース膜、ナイロンまたは誘導されたナイロンを含む。制限酵素、調節薬剤、緩衝液、増幅酵素、および例えば子牛胸腺または鮭精子DNAなどの非ヒトポリヌクレオチドの少なくとも一つがこのようなキットに提供できる。
【0140】
有用な核酸に基づいた診断技術は、直接的なDNA配列決定(direct DNA sequencing)、勾配ゲル電気泳動(gradient gel electrophoresis)、サザンブロット分析(Southern Blot analysis)、単一鎖確定分析(single-stranded confirmation analysis)、RNA分解酵素保護分析法(RNase protein assay)、点滴分析(dot blot analysis)、核酸増幅(nucleic acid amplification)、特定対立遺伝子(allele-specific PCR)、およびこのような接近方法の組み合わせを含み、これに限定されない。このような分析の起点は、生物学的サンプルから核酸を単離させ、精製させることである。組織生検は良いサンプルになれる。核酸はサンプルから抽出され、プライマーを用いたPCRなどのDNA増幅技術で増幅できる。当業者は、多型性の存在を確定することに有効な方法を容易に認知することができる。しかも、周知技術であるアドレス可能な配列技術は本発明のこのような点に適用できる。ポリヌクレオチド配列の特定の詳細説明はGenechipsTMとして知られており、米国特許5,143,854、WO09/15070および同92/10092に一般に記載されている。
【0141】
多様な標識と接合技術は、当業者に自明であり、多様な核酸検定に用いられる。PCRあるいはハイブリダイゼーションに用いられる標識核酸を生産する方法には、微量標識、ニックトランスレーション(nick translation)、縦断標識または標識ヌクレオチドを用いたPCR増幅などがある。その代案として、本発明のタンパク質をコードした核酸は、mRNAプローブを生産する媒介体(ベクター)で複製できる。このような媒介体は、周知の技術であり、商業的に利用可能であり、T7、T3またはSP6などの適切なRNAポリメラーゼと標識ヌクレオチドを添加することにより、体外でRNAプローブを合成することに使用できる。Pharmacia Biotech(Piscataway、NJ)、Promega(Madison、WI)、U.S.Biochemical Corp(Cleveland、OH)などの多数の会社が、このような手続きのための実験計画案と商業的なキットを提供している。適当なレポーター分子または標識は、放射核、酵素、蛍光薬剤、化学発光薬剤、有色薬剤だけでなく、基質、補助因子、抑制剤、磁気粒子などを含む。
【0142】
タンパク質に基づいたより好ましい診断において、本発明の抗体は、多数の抗体が支持体の相異なる地域に付着しており、互いに重なり合わない順序配列内の支持体に付着している。当業者は、タンパク質に基づいた診断検定を容易に認知することができる。タンパク質は、生物学的サンプルから獲得することができ、伝統的な接近法(すなわち、放射能、比色または蛍光)によって標識される。本発明のタンパク質の突然変異または野生型の公知の濃度の標識標準を用いて、研究者はサンプルから本発明のタンパク質のレベルを正確に決定することができ、このような情報によって特定形式のタンパク質の発現レベルを評価することができる。濃度計測の伝統的な方法もこのようなタンパク質の発現レベルまたは濃度をより正確に決定することに使用できる。このような接近法は、大量診断分析分野の当業者には自明なことであろう。前述したように、アドレス可能な周知の配列技術は、本発明のこのような部分に使用でき、抗体結合パターンと診断情報を最大化しようとする試みであって、タンパク質の配列を破片で示す。
【0143】
前述したように、本発明の遺伝子とタンパク質内の多型性の存在と検出は、癌または生物内の類似疾患の診断を可能にする。また、抗体、本発明の遺伝子またはタンパク質の特定の多形変形に特定な検出成分からなる診断キットを製造することも含まれる。検出薬剤は典型的に次の薬剤の少なくとも一つの組み合わせとして提供されるであろう。吸収能力のある支持体または結合RNAまたはタンパク質が度々提供される。このような目的に有効な支持体は、陽性に帯電した置換基の配列を持つことにより分析できるニトロセルロース膜、ナイロンまたは誘導されたナイロンとGenechipsTMまたはそれらの等量を含み、これに限定されない。逆転写酵素および/またはTaqポリメラーゼなどの酵素の少なくとも一つがこのようなキットに提供できるが、これはdNTP、緩衝液、または例えば子牛胸腺や鮭精子DNAなどの非ヒトポリヌクレオチドであり得る。キット検定結果は健康医療提供者または診断試験所によって解釈できる。その代案おして、診断キットは自己診断のために個々人に生産、販売できる。
【0144】
多型性の不在または存在による疾病の診断に加えて、癌を含んだ幾つかの疾病は特定の組織内または本発明のタンパク質発現の異常パターン内における本発明のタンパク質または遺伝子の非対称的水準に由来する。例えば、多様な組織内の発現水準を監視することにより診断を行うことができ、疾病状態を同定することができる。これと同様に、特定組織内の本発明の多様なタンパク質の発現水準の比率を決定することにより(すなわち、発現パターン)、健康または疾病の予後が作られ得る。多様な組織内の本発明のタンパク質の発現組織は、健康な個体だけでなく、癌に苦しんでいる個体から決定される。このような価値は、データベースに記録され、実験された個体から得られた価値と比較される。しかも、健康な個体と病気にかかった個体の多様な組織内発現の比率とパターンはデータベースに記録される。このような分析は「疾病状態プロファイル(disease state profiles)」と呼び、一つの疾病状態プロファイル(すなわち、健康な個体または疾病にかかった個体)とテストされた個体から出た別の疾病状態プロファイルとを比較することにより、臨床医師は迅速に疾病の存在または不在を診断することができる。
【0145】
前述した核酸とタンパク質に基づいた診断技術は、組織内の本発明の遺伝子またはタンパク質の発現水準または量または比率を検出することに用いられる。例えば、定量ノーザンハイブリダイゼーション(quantitative Northern hybridization)、インサイチュ分析(in situ analysis)、免疫組織化学、ELISA、遺伝子チップ配列技術(genechip array technology)、PCR、およびウエスタンブロットなどによって、RNAまたは本発明のタンパク質の特定タンパク質(野生型または突然変異)の発現水準または量が迅速に決定され、このような情報によって発現の比率が確認できる。その代案として、分析すべき本発明のタンパク質は現在知られていないが、前述した相同性地域の少なくとも一つを所有していることに基づき、同定されたファミリーメンバになれる。
【0146】
それ以上の記載がなくても、前述した説明と次の実例を用いて、当業者は、本発明の構成成分を作り、利用し、請求項に記載された方法を行うことができる。したがって、特に本発明の詳細な説明に焦点を合わせた下記の実施例は本発明の記載された以外のものに限定されない。
【実施例】
【0147】
実施例1
膵臓腺癌で差別的に発現されたmRNAの同定
韓国人患者から由来した患者の組織サンプルを得、これを2つのグループに分類した。第1グループは膵臓腺癌と診断された患者から構成した。6名の男性お3名の女性からなる第1グループの患者の年齢は51〜70才であった。第2グループは正常膵臓を持つ患者から構成した。3名の男性からなる第2グループの患者の年齢は63〜66才であった。それぞれの組織サンプルの組織学的分析が行われた。それぞれのサンプルは非癌化された範疇と、癌化された範疇に分離された。
【0148】
若干の変形(minor modification)を経て、前記サンプルはアフィメトリクス遺伝子チップ発現分析マニュアル(Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual)による実験方法に従って準備された。まず、冷凍組織がSpex Certiprep 6800 Freezer Millを用いて粉末に粉砕された。総RNAが以後トリゾール(Life Technologies)を用いて抽出された。その後、mRNAがオリゴテックスmRNAミディキット(Oligotex mRNA Midi Kit、Qiagen)を用いて分離された。その次、1〜5mgのmRNAを用いて二重鎖のcDNAがスーパースクリプトチョイスシステム(SuperScript Choice system;Gibco−BRL)を用いて製作された。第1鎖のcDNA合成はT7−(dT24)オリゴヌクレオチドをプライマーとして行われた。前記cDNAは、以後、フェノール−クロロホルムで抽出され、エタノールで沈殿されて最終濃度が1mg/mLとなった。
【0149】
2mgの前記cDNAから一般な方法によってcRNAが合成された。cRNAにビオチンを標識するために、ヌクレオチドBio−11−CTPおよびBio−16−UTP(Enzo Diagnostics)が前記反応中に添加された。37℃で6時間反応させた後、標識されたcRNAがRT−PCR RNA分離キットプロトコール(Rneasy Mini kit protocol;Qiagen)に従って洗浄された。その後、前記cRNAは94℃で35分間断片化(5’断片化バッファ:200mMトリス−アセテート(pH8.1)、500mM KOAc、150mM MgOAc)された。
【0150】
前記断片化されたcRNA55mgがアフィメトリクスヒト遺伝子U133(Affymetrix Human Genome U133)のアレイセットに24時間60rpm、45℃のハイブリダイゼーションオーブンでハイブリダイゼーションされた。前記製造されたチップは洗浄され、ストレプトアビジンピコエリトリン(Streptavidin Phycoerythirn(SAPE);Molecular Probes)によってアフィメトリクスフルーイディックスステーション(Affymetrix fluidics stations)で染色された。染色を強化するために、SAPE溶液が抗−ストレプトアビジンビオチン化抗体(anti-streptavidin biotinylated antibody;Vector Laboratories)と共に染色過程中に2回添加された。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、フルオロメトリックスキャニング(flurometric scanning;Hewlett Packard Gene Array Scanner)によって測定された。前記ハイブリダイゼーションおよびスキャニングの後、マイクロアレイイメージは主要なチップのハイブリダイゼーションにおける欠点または非正常を探すための定性調節(Quality Control)のために分析された。前記全てのチップが定性調節、Affymetrix Microarray Suite(v5.0)およびLIMS(v3.0)を通過した。
【0151】
癌化および非癌化された膵臓サンプル間の差別的な遺伝子の発現は、アフィメトリクスヒト遺伝子チップセットU133(Affymetrix human GeneChip sets U133)を用いて下記統計的な方法によって決定された。
【0152】
(1)それぞれの遺伝子に対して、U133のシグナル値はAffymetrix Microarray Suite(v5.0)によって決定され、「不存在(Absent)」(未検出)、「存在(Present)」(検出)または「境界(Marginal)」(確実に検出されない)とそれぞれの遺伝子チップ要素が指称された。
(2)癌化された膵臓サンプルグループで40%以上存在するものと指称される前記原則を用いて、一つの遺伝子セットが追加的な分析のために選択された。
(3)全てのシグナル値が対数的な比率(logarithmic scale)で変形された。
(4)データ分析のために、分散分析(Analysis of Variance;ANOVA)方法が使用された(Steel et al., Principles and Procedures of Statistics: A Biometrical Approach, Third Ed., McGraw-Hill, 1997)。
【0153】
前記チップデータの分析は、LBFL313マーカーの発現が正常膵臓組織サンプルに比べて膵臓腺癌サンプルから著しく上方調節(11.13−fold、p=0)されることを示す。これらのデーアはLBFL313の上方調節が膵臓癌の診断になれることを意味する。
【0154】
LBFL313(配列目的1)の発現度合いは、アフィメトリクス遺伝子チップU133におけるチップ配列断片No.228058_atによって測定できる。Gene Logic,Inc.(Gaithersburg、MD)の遺伝子発現腫瘍学データベース(GeneExpress Oncology DatabaseTM)を使用した複合的な検査によって多様な悪性腫瘍における228058_atの発現度合いが正常コントロール組織と比較されて下記表1に提示された。前記表ではフォールド変化(fold-change)および変化の方向(上方または下方調節)も共に提示された。フォールド変化が1.5を超える場合が有意的であると考慮された。
【0155】
チップ配列断片No.228058_atに付着しているサンプルによって決定された遺伝子チップ発現結果は、Taqman検定法(Taqman(登録商標) assay;Perkin−Elmer)を使用する定量的なRT−PCR(Q−RT−PCR)によって確認された。特定のアフィメトリクス断片(Affymetrix fragment;228058_at)の配列情報ファイルからデザインされたPCRプライマーが前記分析方法で使用された。それぞれのRNAサンプル(総RNA10ng)にある標的遺伝子は、外部の突出した参考遺伝子(reference gene)に比例して検定される。このような目的で、テトラサイクリン抵抗性遺伝子は外部に添加されたスパイクとして使用される。この方法は一定の量のTetスパイク閾値と比例する標的mRNAのサイクル閾値(Ct)を測定することにより、相対発現率を提供する。サンプル集団はU133遺伝子チップによって分析された組織RNAsを含む。しかも、遺伝子チップによって分析されていない幾つかのサンプルはQ−RT−PCRによって発現の検証のために使用される。Q−RT−PCR資料は一般な膵臓生検組織と比較して膵臓腺癌から観察されたLBFL313の上方調節を裏付ける。
【表1】

【0156】
実施例2
差別的に発現されたmRNA種に相応する全長cDNA(LBFL313)のクローニング
配列番号1を有する全長DNAは、オリゴプーリング(oligo-pulling)方法によって得られる。簡単にいうと、遺伝子特異的なオリゴーは、LBFL313の配列に基づいてデザインされる。オリゴーは、ビオチンで標識され、Sambrookなどの方法を用いてヒトの胎盤ライブラリーから2μgの単鎖プラスミッドDNA(cDNA組み換え体)とハイブリダイゼーションするために使用される。ハイブリダイゼーションされたcDNAは、ストレプトアビジンが結合したビーズによって分離され、加熱によって抽出される。抽出されたcDNAは二重鎖プラスミドDNAに転換されて大腸菌細胞(DH10B)の形質転換に用いられ、最も長いcDNAが得られる。その後、陽性選択(ポジティブセレクション)は遺伝子特異的なプライマーを用いたPCRによって決定され、cDNAクローンはDNA配列分析が行われた。
【0157】
差別的に調節されたmRNAに対応する全長ヒトcDNAの核酸配列は、前述した配列番号1と検出された。cDNAは777塩基対を含む。
【0158】
53〜640核酸(停止コドンを含む53〜643)において、配列番号1のcDNA核酸配列のオープンリーディングフレームは196アミノ酸タンパク質をコードする。配列番号1によってコードされた予測タンパク質に相応するアミノ酸配列は配列番号2で表示、発表された。
【0159】
配列番号2は、ジャカリン様レクチンドメイン(Jacalin-like lectin domain)を含む:このドメインを含んだタンパク質はレクチンであり、これはこれらのタンパク質から1〜6対発見される。このドメインは動物の前立腺癌スペルミン結合タンパク質(prostatic spermine-binding protein)(Raval et al. (2004) Glycobiology 14:1247-1263)から発見される。図1はSignalIP3.0Server(www.cbs.dtu.dk/services/SignalIP/)によって分析されたシグナル配列の結果を示す。分泌のためのポテンシャルシグナル配列切断部位はアミノ酸位置40(Ala)と41(Gly)の間と予測される。
【0160】
ノーザンブロットによる分析は、LBFL313に対応するmRNA転写体のサイズを決定するために行われる。多様なヒトの組織から得た総RNAを含むノーザンブロット(Clontech、Palo Alto、CA)が使用され、228058_at配列を含むESTはランダムプライマー方法によって放射性標識され、ブロットにおけるプローブとして使用される。このブロットは42℃で50%ホルムアミド、5X SSPE、0.1%SDS、5X Denhart’s溶液および0.2mg/mLの鰊の精子DNAでハイブリダイゼーションされ、室温で0.1%SDSを含む0.2X SSCによって洗浄する。ノーザンブロットは約0.8kbサイズの前記遺伝子の単一転写体を示す。これはLBFL313クローン(配列番号1)のサイズと類似である。
【0161】
実施例3
LBFL313でトランスフェクションされた細胞株の生産
LBFL313のコーディング部位は、BamHI部位を含んだ前方向プライマー(5’−TTGGGATCCGTATAAAGGCGATGTGGAGG−3’)およびXbaI部位を含んだ逆方向プライマー(5’−ACC ATC TAG AGC GAC CCA CGG GTG AGT−3’)によって増幅される。PCRは、製品の使用説明書に従ってTaqPlusプレシジョンDNAポリメラーゼ(TaqPlus precision DNA Polymerase;Stratagene、CA)を用いて行われる。PCR増幅サイクルは94℃で2分間初期変性および94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分間の27周期を含み、72℃で10分間の最終延長によって得られる。PCR生成物は、哺乳類発現ベクターpcDNA3.1−mycHis(Invitrogen)のBamHIおよびXbaI部位を複製する。複製されたプラスミド(pLFG250)は、最初の構造を確認するためのクローニング部位の領域に沿って連続する。亜充満状態(subconfluent)のCHO細胞は、製造会社の説明書に従ってリポフェクタミングプラス試薬(Invitrogen)のみを用いてpLFG250またはpcDNA3.1−mycHisベクターで安定的にトランスフェクションされる。24時間の後、トランスフェクションされた細胞は選別のために10%FBSおよび400μg/mL G418(Sigma)を含んだHam’s F12(Invitrogen)で培養される。選別培地は二日に1回ずつ取り替え、10〜12日後のクローニング環は陽性クローンの同定に使用される。培養を拡張させてLBFL313の発現を検査する。細胞は50mM HEPES(pH7.2)、150mM NaCl、25mM β−グリセロリン酸、25mM NaF、5mM EGTA、1mM EDTA、1%NP−50、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、0.1mM PMSFおよびプロテアーゼ阻害剤であるプロテアーゼ阻害剤カクテイル(ロイペプチン)、ペプスタチン(Penstatin)、アプロチニン(Aprotinin)およびアンチパイン(antipain)各5μL/mL)を含んだ溶解バッファで溶解させる。培養液は15μLの体積で作った10kに切断されたマイクロコン(Amicon)によって濃縮される。タンパク質は4×SDSローディングバッファで95℃で5分間培養によって減少する。ポリペプチドは12%SDS−PAGEゲル上の10mA/gelで分解され、4℃の200mA/gelで2時間0.45μmのImmobilon P−transfer membrane(Millipore)で電気泳動によってトランスフェクションされる。膜は5%(w/v)無脂肪牛乳を含んだTBSTバッファ(25mM Tris、pH7.5、125mM NaClおよび0.1%(v/v)Tween−20)で1時間ブロッキングされる。ブロットは抗−His HRP抗体(Santa Cruz)と共に一晩培養してプローブを付着させる。免疫活性物質は、製作会社の説明書に従って、強化された化学発光法(Slpis Biotech)によって視覚化される。図2に示すように、LBFL313タンパク質は細胞抽出物ではなく培養上澄み液からのみ検出される。これは、LBFL313が分泌されたタンパク質をコードするという予想を裏付ける。
【0162】
実施例4
細胞の増殖、移動および転移におけるLBFL313過発現の分析
細胞の増殖、成長率におけるLBFL313過発現の効果を測定するために、細胞数計数法を使用した。12ウェルプレートで4×10の細胞を培養した。プレートは37℃および5%COで12日間培養し、細胞の数は毎日血球計算機で測定した。その結果は平均値と3重の標準偏差値とを合わせて示した。図3Aに示したように、LBFL313の過発現はCHO細胞の速い分化を誘導した。LBFL313過発現PANC−1膵臓癌細胞株においても同様の効果を示した。
【0163】
移動と転移は、ボイデンチャンバー(Boyden Chamber)検定法によって研究された。48ウェルボイデンチャンバーとニューロプローブ48ウェルマイクロチャンバー(Neuro Probe 48 well micro chamber;Neuroprobe)の両方ともで施行された。細胞はトリプシン阻害剤、大豆トリプシン阻害剤(Sigma)でトリプシン化され、再懸濁される。細胞は無血清培地でmL当り2×10の濃度で最終濃縮されて懸濁され、ペレット化される。低いウェルのチャンバーを30μLの標準培養液で一杯満たす。チャンバーはポリカーボネートフィルター(8μmの孔径、Neuroprobe)を用いて組み立てられた。細胞転移検定法のために、1mg/mLのMatrigelTM基底膜マトリクス(BD biosciences)はそれぞれのフィルター(500μg/フィルター)に層を作って自然乾燥させる。細胞懸濁液(1×10細胞/ウェル)の50μLサンプルを上部に添加する。チャンバーは37℃および5%COで培養され、培養時間は分析すべき細胞型によって多様である:CHO移動検定法の場合には24時間、CHO転移検定方の場合には48時間、PANC−1移動および転移検定法の場合には18時間である。培養の最後にフィルターの上部表面の細胞は機械的に除去される。フィルターはメタノールで固定され、ギムザ染色(Gimsa stain)、変更された溶液によって染色される。フィールド当り(100×)移動した細胞の数は光学顕微鏡(Olympus)の下で計算される。各サンプルは3重に検定される。図3Bと図3Cに示すように、CHO細胞運動性と転移性はLBFL313の過発現によって増加する。LBFL313過発現PANC−1膵臓癌細胞株においても同様の効果を示す。
【0164】
実施例5
ヌードマウス内の腫瘍形成に対するLBFL313過発現の効果
生体内腫瘍成長に対するLBFL313過発現の生物学的効果を検査した。CHO細胞を免疫欠乏ヌードマウスの側面内に皮下注射した。LBFL313ベクター(pLFG250)またはベクター単独でトランスフェクションされないか、あるいは安全にトランスフェクションされた融合性CHO細胞をトリプシンで処理し、3.3×10細胞/mLの密度を持つ細胞をPBSでさらにサスペンションさせた。各タイプの5百万のCHO細胞を5匹の8週齢雌Balb/C(nu/nu)マウスの側面内に皮下注射した。マウスの成長過程で腫瘍の長さと広さを測定した。腫瘍の体積を[腫瘍の体積=(長さ)×(幅)/2]の式を用いて計算した。37日後に、マウスを犠牲させて腫瘍を分析した。図4Aに示すように、LBFL313−トランスフェクションされた細胞によって生成された腫瘍の大きさは前記対照群細胞によって形成されたものより5倍以上大きかった。
【0165】
腫瘍によって誘導された血管新生の度合いを決定するために、腫瘍異種移植片のパラフィンセクションを抗因子VIIIモノクローナル抗体(Dako)で染色した。マウス各グループの腫瘍から得たパラフィン包埋組織セクション(3〜5μmの厚さ)をキシレン内で脱パラフィン化し、等級別エタノールシリーズ(−100−90−80−70−50−30%)内で再水和させ、PCSで洗浄した。内因性ペルオキシダーゼを、常温で15分間0.3%(v/v)の過酸化水素メタノール溶液にスライドを浸漬することによりブロッキングさせた。それぞれ4分間PBSで3回洗浄した後、セクションを常温で1時間10%(v/v)の正常驢馬血清PBS溶液内に浸漬することによりブロッキングさせた。それぞれ4分間PBSで3回洗浄した後、ブロッキングされたセクションを抗因子VIIIモノクローナル抗体(von Willebrand factor、1:50希釈、Dako)で常温で2時間培養させた。2時間後に、それぞれ4分間PBSで3回洗浄した後、スライドを常温で30分間ビオチン化リンクユニバーシャル(biotinylated Link universal)と共に培養させ、それぞれ4分間PBSで3回洗浄し、接合されたストレプトアビジン−HRP(Dako)で常温で15分間培養させた。PBSで3回洗浄した後、セクションを色原体(Chromogen)と共に培養させ、蒸留水で洗浄した。因子VIIIセクションは対照染色をしなかった。
微細血管の数はPadroなどによる方法で決定した(Padro el al. (2000) Blood 95:2637-2644)。微細血管カウンティングを、光学顕微鏡を用いて、独立した熟練研究者によって同時に分析した。研究者らは臨床病理学的な発見に対しては知っていない。全体セクションをフィールド対フィールド(field per field)×100倍率で最も激しい血管化を示す領域を探し出すために組織的にスキャニングした。その後、倍率を×200または×400に変え、最も多い数の微細血管が×400フィールド内にあるときまで研究者がスライドを保存するようにした。この領域は両側研究者を一致させて観測者間の微細血管カウンティングのエラーを減らした後、ホットスポットと定義した。それぞれのホットスポットで両側研究者が×400フィールドで個々微細血管のカウンティングを行った。図4Bに示すように、模造対照群細胞より、LBFL313−トランスフェクションされた細胞が注入されたマウスでさらに多い数の微細血管がカウントされた。生体内実験はLBFL313による浸潤性腫瘍形成および強化された血管形成を意味する。
【0166】
実施例6
ポリクローナル抗−LBFL313抗体の生産
LBFL313の全長cDNAを前方向プライマー(5’−CTAAGGCCCAGCCGGCCGGGAAGATGTATGGCCCTGGA−3’)および逆方向プライマー(5’−CATAGGCCCCACCGGCCGAGCGACCCACGGGTGAGTT−3’)を用いてPCRを行うことにより増幅させた。PCRは、製品の使用説明書に従ってTaqPlusプレシジョンDNAポリメラーゼ(Stratagene、CA)を用いて行った。PCR増幅サイクルは94℃で5分および30分;94℃で30秒、58℃で30秒、72℃で30秒間変性を1サイクルとして30サイクルを含み、72℃で10分間最終的に延長させた。PCR生成物は、1.5%TAEゲル上で視覚化させ、製品の使用説明書に従ってZymocleanゲルDNAリカバリーキット(Zymo Research、CA)を用いてゲルを精製した。精製されたDNAをpLFG106ベクターのSfiI部位内に挿入させ、組み換えLBFL313−Fc融合タンパク質を製造した。pLFG106はシグナル配列、ヒトIgGのFc部位、およびpcDNA3.1(invitrogen)のバックボーン内のDHFR遺伝子を含む発現ベクターである。PLFG106もクローニング部位およびFc部位の間にトロンビン認識配列を含んでいる。LBFL313−Fc発現プラスミドはExGen500薬剤(Fermentas、Lithuania)を用いて製品説明書に従ってDHFR欠乏CHO突然変異体細胞株内に安定的にトランスフェクションされた。安定的にトランスフェクションされた細胞は、2週間G418 800μg/mL(Invitrogen、CA)および10%に希釈されたFBSを含むヌクレオチドのないMEM−α(Invitrogen、CA)内で選択した。安定したトランスフェクタントを10mM濃度のメトトレキサート(Sigma、MO)で2週間さらに適応させた。培地内に分泌された組み換え体LBFL313−Fc融合タンパク質は、抗ヒトFc抗体(Sigma、MO)を用いたウエスタンブロット分析およびELISA法を行うことにより確認した。
【0167】
組み換え体LBFL313−Fc融合タンパク質の大規模の発現はローラーボトル(1750cm)を用いて行った。組み換え体LBFL313−Fc誘導タンパク質を発現する安定的なトランスフェクタントは、IMDM/5%FBSで成長した。ローラーボトル培養液を3×10細胞に接種させ、装置を37℃の培養器内で5rpmの速度で回転させた。細胞を5日間培養させ、培地を3日ごとに無血清培地で取り替えた。収穫された無血清培地内の細胞破片は10分間6000rpmの速度で遠心分離して除去した。組み換え体LBFL313−Fc融合タンパク質を精製するために、10K MWCOメンブレイン(Pellicon2、Milipore)による濃縮器(ProFlux M12、Amicon)を用いて無細胞培地を濃縮処理した。20mMリン酸ナトリウム(pH8.0)で予備平衡させた10mLのタンパク質Aアガロースカラム(Pierce)で濃縮された培地を通過させた。10mMリン酸ナトリウム緩衝液で、結合していないタンパク質をカラムの外に洗い出した。そして、カラムを0.1Mクエン酸(pH3.0)で溶出させ、500μL 1M Tris−HCl(pH9.0)を含むチューブで4.5mLの分画を収集した。分画を含む組み換え体LBFL313−Fc融合タンパク質でプールを形成し、セファロース200HRレジン(Amersham、IL)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを行ってさらに精製させた。
【0168】
組み換え体LBFL313−Fc融合タンパク質からトロンビン切断キャプチャーキット(Novagen)によってC末端Fcは切断され、ImmunoPureR Immobilized Protein A(Pierce)によって除去された。要するに、組み換え体LBFL313−Fc融合タンパク質を20℃で一晩ビオチン化トロンビンによって培養させた。タンパク質分解の後に、ビオチン化トロンビンをストレプトアビジンアガロースビーズによって除去した。生成された溶液である組み換え体LBFL313およびFcの混合物を、ImmunoPureR Immobilized Protein A column(Pierce)を2回通過させて分離した。組み換え体LBFL313の純度をSDS−PAGEゲルによって確認した。
【0169】
精製された組み換え体LBFL313を、標準方法を用いて2匹のウサギを免疫させることに使用した。免疫された血清を収集してから、製品の使用説明書に従ってImmunoPureR(A Plus)IgG精製キット(Pierce)を用いて精製した。組み換え体ヒトFcと結合したアミノリンクR固定化キット(AminoLinkR(A Plus) Immobilization Kit、Pierce)を用いてさらに精製した。精製されたポリクローナル抗体は、LBFL313を発現する膵臓癌細胞から得た条件付きの培地のウエスタンブロットで約21kDaのタンパク質を感知した。抗体の特異性はPANC−1細胞がトランスフェクションされたLBFL313の条件付き培地から得たLBFL313タンパク質の強化された感知によって確認されたが、これに対し、PANC−1細胞がトランスフェクションされたベクターからはいずれの強化もなかった。
【0170】
実施例7
LBFL313発現の免疫組織化学的分析
組織マイクロアレイスライドをキシレン内で脱パラフィン化させ、等級別にアルコール内で再水和させた。内因性ペルオキシダーゼの活性を常温で20分間0.3%の過酸化水素含有メタノール溶液でブロッキングした。マイクロウエーブ抗原検索をクエン酸緩衝液(0.01M、pH6.0)で4分間実施した。その後、スライドを10%正常驢馬血清溶液で1時間培養させて非特異的な背景染色を減少させた。
【0171】
1次抗体は1:500の希釈においてポリクローナル抗−LBFL313抗体であった。ブロッキングされたセクションを1次抗体内で4℃で一晩培養させた。次の反応をLSAB+キット(DakoCytomation、Carpineteria、CA、USA)および勧奨過程を用いて行った。最後に、スライドを3−アミノ−9−エチル−カルバゾール(DakoCytomation、Carpinteria、CA、USA)で培養させ、変形されたハリスヘマトキシリン(Harris hematoxylin、Sigma−Aldrich、Inc.,St.Louis、MO、USA)溶液で対照染色した。
【0172】
全ての場合において腫瘍細胞の細胞質から免疫反応性が観察された。免疫反応はH−スコア法(H-score method)によって評価した。染色の強度はそれぞれ陰性 、弱い 、中間および強い茶色染色の存在に該当する0、1、2、および3と評価した。別の強度で染色された細胞のパーセントを決定し、下記の式に適用した:H-score=(強度スコア1で染色された細胞の%)+2×(強度スコア2で染色された細胞の%)+3×(強度スコア3で染色された細胞の%)。腫瘍組織および隣接非腫瘍組織のH−スコアをWilcoxonの符号順位検定(Wilcoxon signed rank test)を用いて分析した。図5に示すように、腫瘍組織は隣接非腫瘍組織より相当高いLBFL313発現を示す。
【0173】
実施例8
膵臓癌細胞浸潤性に対する抗LBFL313の効果
ヒト膵臓癌細胞株の浸潤性に対する抗−LBFL313抗体の効果を決定するために、抗−LBFL313抗体または正常ウサギIgGの存在下にボイデンチャンバー分析を行った。要するに、5種の膵臓癌細胞株、CFPAC−1、MiaPaCa−2、PANC−1、AsPC−1およびBxPC−3をトリプシン化させ、トリプシン阻害剤(Sigma)溶液内で再びサスペンションさせた。細胞をペレット化させ、PBS、抗−LBFL313抗体、または正常ウサギIgGの存在下に無血清培地でサスペンションさせて最終濃度を1〜5×10細胞/mLに作った。チャンバーのより低いウェルは標準培地30μLで満たした。チャンバーを1mg/mLのMatrigelTM基底膜メンブレインマトリクス(BD Biosciences)で上部がコートされた孔径8μmのポリカーボネートフィルター(Neuroprobe)を用いて組み立てた。細胞サスペンションの50μLを上部区画に添加した。チャンバーを37℃および5%COで24時間培養させた。培養の最後にはフィルターの上部表面上の細胞を機械的に除去した。フィルターをメタノールで固定させ、ギムザ染色変形溶液(Sigma)で染色させた。フィールド当り移動した細胞数(100×)を光学顕微鏡(Olympus)を用いて計数した。それぞれのサンプルを3重に分析した。図6に示すように、抗−LBFL313抗体は用量依存方式でヒト膵臓癌細部株の浸潤性を効果的に阻害した。これと類似の効果が胃癌細胞株、AGSおよびN87で観察された。
【産業上の利用可能性】
【0174】
以上、本発明を上述した実施例を参照して詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、多様な変形を加え得ることを理解するであろう。よって、本発明は特許請求の範囲によって限定されるものではない。本出願で参照する全ての引用特許、特許出願および公開は参照として本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1の塩基配列を含む単離核酸分子と、(b)配列番号2のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子と、(c)癌で発現されるタンパク質をコードし、配列番号1の塩基配列と95%以上の同一性を有する単離核酸分子と、(d)前記(a)、(b)または(c)の核酸分子と相補的な配列を含む単離核酸分子とよりなる郡から選ばれたことを特徴とする、単離核酸分子。
【請求項2】
前記核酸分子が配列番号1の53番目〜640番目のヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項3】
前記核酸分子が配列番号1の53番目〜643番目のヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子が少なくとも一つの発現調節因子と作動可能に連結されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項の単離核酸分子を含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項の核酸分子を含むように形質転換されたことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項7】
請求項5のベクターを含むことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項8】
前記宿主細胞が原核宿主細胞および真核宿主細胞よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記宿主細胞が大腸菌(Eschrichia coli)DH5@/p313−JF3(寄託番号KCTC10954BP)であることを特徴とする、請求項7記載の宿主細胞。
【請求項10】
ポリペプチドの製造方法において、
請求項1〜3のいずれか1項の核酸分子で形質転換された宿主細胞を培養する段階を含んでなることを特徴とする、ポリペプチドの製造方法。
【請求項11】
前記宿主細胞が原核宿主細胞および真核宿主細胞よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項12】
請求項10の方法によって製造されたことを特徴とする、単離ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質と、
配列番号2のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するタンパク質とよりなる群から選ばれたことを特徴とする、単離ポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項14】
請求項13のポリペプチドに結合する、単離抗体または抗原結合抗体断片。
【請求項15】
前記抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
請求項13のタンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬剤を同定する方法であって、
前記核酸分子を発現する細胞を薬剤に露出させる段階と、
前記薬剤が前記核酸分子の発現を調節する薬剤であるかを決定し、これにより前記タンパク質をコードする核酸分子の発現を調節する薬剤を同定する段階とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項13のタンパク質のレベルまたは少なくとも一つの活性を調節する薬剤を同定する方法であって、
前記タンパク質を発現する細胞を薬剤に露出させる段階と、
前記薬剤が前記タンパク質のレベルまたは少なくとも一つの活性を調節する薬剤であるかを決定し、これにより前記タンパク質のレベルまたは少なくとも一つの活性を調節する薬剤を同定する段階とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記薬剤が前記タンパク質の一つの活性を調節することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項13のタンパク質をコードする核酸の発現を調節する方法であって、
前記タンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬剤の有効な量を投与する段階を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項13のタンパク質の少なくとも一つの活性を調節する方法であって、
前記タンパク質の少なくとも一つの活性を調節する薬剤の有効な量を投与する段階を含むことを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項13のタンパク質の結合パートナーを同定する方法であって、
前記タンパク質を潜在的な結合パートナーに露出させる段階と、
前記タンパク質に結合する潜在的な結合パートナーを決定し、これにより前記タンパク質の結合パートナーを同定する段階とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項22】
請求項21の結合パートナーと請求項13のタンパク質間の相互作用を調節する薬剤を同定する方法であって、
前記結合パートナーに結合した前記タンパク質を薬剤に露出させる段階と、
前記薬剤が、前記結合パートナーに結合した前記タンパク質との相互作用を調節する薬剤であるかを決定し、これにより前記結合パートナーと前記タンパク質間の相互作用を調節する薬剤を同定する段階とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項23】
請求項21の結合パートナーと請求項13のタンパク質間の相互作用を調節する方法であって、
前記結合パートナーと前記タンパク質との相互作用を調節する薬剤を有効な量で投与する段階を含むことを特徴とする、方法。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれか1項の核酸分子を含むように改変された非ヒト遺伝子組換動物。
【請求項25】
前記核酸分子が、前記コードされたタンパク質の発現を抑制する変異を含むことを特徴とする、請求項24に記載の遺伝子組換動物。
【請求項26】
希釈液およびポリペプチドまたはタンパク質を含む組成物であって、
前記ポリペプチドまたはタンパク質が、
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはタンパク質、あるいは
配列番号2のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはタンパク質であることを特徴とする、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−539400(P2009−539400A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515305(P2009−515305)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002848
【国際公開番号】WO2007/145466
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(502345599)エルジー・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】LG Life Sciences Ltd.
【Fターム(参考)】