説明

臨床症状のモニタリング、予測及び治療

被検対象者(12)の生理的パラメータを検知し、対象者(12)の大きい身体運動を検知する少なくとも1つのセンサと、出力ユニット(24)と、制御ユニット(14)とを備えた装置であって、生理的パラメータと検知した大きい身体運動を分析することで対象者(12)の状態をモニタし、モニタした状態の悪化を検知したら出力ユニットを作動させて警報を発する機能を制御ユニット(14)に持たせた。他の実施形態も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、患者のモニタリング、異常生理的状態の予測及びモニタリング、並びにその治療に関するものであり、特に、非接触測定と、生理的及び/又は物理的パラメータの特徴分析とによって異常生理的状態の予測及びモニタリングを行う方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照として、本願は以下の米国仮出願の権利を主張する、
米国特許仮出願第61/052395号(2008年5月12日出願)、
米国特許仮出願第61/054754号(2008年5月20日出願)、
米国特許仮出願第61/082510号(2008年7月22日出願)、
米国特許仮出願第61/103276号(2008年10月7日出願)、
米国特許仮出願第61/141677号(2008年12月31日出願)、
米国特許仮出願第61/144743号(2009年1月15日出願)。
【0003】
また、本出願は米国特許出願第12/113680号(2008年5月1日出願)の一部継続出願であって、以下の米国仮出願の権利を主張している、
米国特許仮出願第60/924181号(2007年5月2日出願)、
米国特許仮出願第60/924459号(2007年5月16日出願)、
米国特許仮出願第60/935194号(2007年7月31日出願)、
米国特許仮出願第60/981525号(2007年10月22日出願)、
米国特許仮出願第60/983945号(2007年10月31日出願)、
米国特許仮出願第60/989942号(2007年11月25日出願)、
米国特許仮出願第61/028551号(2008年2月14日出願)、
米国特許仮出願第61/034165号(2008年3月6日出願)、
上記各出願は本明細書において参照することで包括されるものとする。
【0004】
慢性疾患は臨床症状の発作的悪化で表されることが多く、慢性疾患の予防的治療によって必要とする投薬量及びこれに伴う副作用を軽減でき、死亡率及び罹患率を低下させることができる。通常、初期段階の臨床症状が見つかったら、臨床発作の進行及び悪化を防ぎ、病態生理学的過程を食い止めるために、直ちに予防的治療を開始し、治療を強化すべきである。従って、先行発作インジケータを精確にモニタできる能力が慢性疾患を予防的に治療する有効性を向上させることになる。
【0005】
多くの慢性疾患が、多様な生理学的機序を介して呼吸や心拍パターンなどの生命徴候の全身的変化をもたらす。例えば、喘息などの呼吸器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び睡眠時無呼吸(CF)が、呼吸及び/又は心拍パターンの直接因子である。また、糖尿病、癲癇、及びある種の心臓疾患(例:鬱血性心不全(CHF))などの他の慢性疾患も、心臓及び呼吸の活動を変異させることが知られている。特定の心臓疾患の場合に、主に体液鬱滞や一般心血管不全に係わる病態生理学のためにそうした変異が起こる。その他の咳や不穏睡眠などの徴候もいくつかの臨床的症状にも重要な因子として知られている。
【0006】
多くの慢性疾患が生命徴候における全身的作用を誘発する。例えば、ある種の慢性疾患は覚醒状態や睡眠状態における正常な呼吸過程及び心拍過程を妨げ、異常な呼吸及び心拍パターンを引き起こす。
【0007】
呼吸及び心拍が様々な直接的及び間接的生理学的機序を介して変調され、一時変異の原因に係わる異常パターンをもたらすことがある。喘息などの呼吸器系疾患やCHFなどの心臓疾患は、直接的な呼吸変調因子である。低血糖症などの代謝系の異常や自律神経系の活動に影響する他の神経的な病変は、間接的な呼吸変調因子である。
【0008】
特許文献1〜21も本明細書において参照することで包括されるものとする。非特許文献1〜22も本明細書において参照することで包括されるものとする。
【0009】
本件出願の出願人に譲渡された特許文献22には臨床症状の発現を予測する方法が開示されており、この方法は被検対象者の呼吸を検知し、検知した呼吸に応答した被検対象者の少なくとも一つの呼吸パターンを測定し、かかる呼吸パターンを基準呼吸パターンと比較し、少なくとも一部の比較結果によって発作の発現を予測するものであり、本明細書において参照することで包括されるものとする。
【0010】
特許文献23〜29の全ては本件出願人に譲渡されたもので、本明細書において参照することで包括されるものとする。これら出願には、臨床症状の予測及びモニタリングについて開示されている。
【0011】
この背景技術の欄に記載した特許文献及び非特許文献は、本発明の先行技術及び類似技術として意味するものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4657026号(Tagg)
【特許文献2】米国特許第5235989号(Zomer)
【特許文献3】米国特許第5540734号(Zabara)
【特許文献4】米国特許第5743263号(Baker)
【特許文献5】米国特許第5957861号(Combs)
【特許文献6】米国特許第5964720号(Pelz)
【特許文献7】米国特許第6134970号(Kumakawa)
【特許文献8】米国特許第6375621号(Sullivan)
【特許文献9】米国特許第6383142号(Gavriely)
【特許文献10】米国特許第6436057号(Goldsmith等)
【特許文献11】米国特許第6856141号(Ariav)
【特許文献12】米国特許第6980679号(Jeung)
【特許文献13】米国特許第6984207号(Sullivan)
【特許文献14】米国特許第6984993号(Ariav)
【特許文献15】米国特許第7025729号(de Chazal)
【特許文献16】米国特許出願公開第2003/0045806号(Brydon)
【特許文献17】米国特許出願公開第2005/0119586号(Coyle等)
【特許文献18】米国特許出願公開第2006/0084848号(Mitchnick)
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0156031号(Sullivan)
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0249952号(Rubin等)
【特許文献21】米国特許出願公開第2008/0005838号(Wan Fong等)
【特許文献22】米国特許第7077810号(Lange等)
【特許文献23】米国特許仮出願第60/541779号
【特許文献24】米国特許仮出願第60/674382号
【特許文献25】米国特許仮出願第60/692,105号
【特許文献26】国際出願公開第WO 05/074361号(Lange等)
【特許文献27】米国特許出願公開第2006/0241510号(Halperin等)
【特許文献28】米国特許出願公開第2008/0275349号(出願人:Halperin等/出願日:2008年5月1日/譲受人:本件出願人)
【特許文献29】米国特許出願公開第2007/0118054号(Pinhas等)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】アリハンカ・J等著「心弾動図、心拍数、呼吸の長期モニタリングの新方法」、米国生理機能規制統合比較生理学ジャーナル第240号、384〜392頁(1981年)
【非特許文献2】ベンツール・L等著「夜間喘息の評価と治療の反応のための子供における喘鳴モニタリング」、欧州呼吸器ジャーナル第21号(4)、621〜626頁(2003年)
【非特許文献3】ビルムズ・J著「EMアルゴリズムと、ガウス分布及び隠れマルコフモデルのためのパラメータ推理への応用についてのやさしい指導書」技術レポート、カリフォルニア大バークレー校、ICSI-TR-97-021(1997年)
【非特許文献4】チャン・A.B.等著「咳、気道炎症及び軽度喘息悪化」、幼児期の疾病記録第86号、270〜275頁(2002年)
【非特許文献5】デンプスター・A.P.、N.M.レアード、D.B.ルビン著「EMアルゴリズムによる不完全データからの最大尤推定法」王立統計学会ジャーナル第39号B、1〜38頁(1977年)
【非特許文献6】ヒルタム・A、ベルクマンズ・D、デムーク・K、コンペーノーラ・D著「自由音場咳音の自己回帰音響モデル」音響、会話、信号処理に関する国際会議会報第1号、493〜496頁、米国オーランド2002年5月
【非特許文献7】スウ・J.Y.等著「頑固な咳症状の患者の咳頻度:24時間携帯レコーダによる評価」、欧州呼吸器ジャーナル第7号、1246〜1253頁(1994年)
【非特許文献8】ハッジェル・D.W.、R.J.マーチン、B.ジョンソン、P.ヒル著「健康人における睡眠中の呼吸器系の力学」、応用生理学ジャーナル第5号、133〜137頁(1984年)
【非特許文献9】カンデルハーズJ.W.、T.ペンゼル、S.ロスティグ、H.F.ベッカー、S.ハルビン、A.ブンダ著「REM及び非REM睡眠中の呼吸:相関−無相関反応」Physica-A、第319号、447〜457頁(2003年)
【非特許文献10】リー・Q.、A.バロン著「混合密度算定/神経情報処理システムにおける発展」第12号、279〜285頁、MITプレス(2000年)
【非特許文献11】マック・D.等著「生理学的信号の非侵襲性分析(NAPS):睡眠の質の安価な受動モニタ及び関連応用技術」バージニア連邦大学健康システム(日付なし)
【非特許文献12】オコーナー・C.J.等著「電子聴診器を用いた呼吸音のコンピュータ分析を利用した気管内チューブ位置異常の確認」、麻酔・鎮痛学会ジャーナル第101号735〜9頁(2005年)
【非特許文献13】オッペンハイム・A.V.、R.W.シェッフル著「離散時間型信号処理」プレンティス・ホール(1989年)、311〜312頁
【非特許文献14】レヒトシャッフェン・A.、ケイルズ・A.著「ヒトの睡眠段階の睡眠のための規格専門用語、技術、評価システム」、ロサンゼルス・UCLA脳内情報サービス/脳内研究所(1968年)
【非特許文献15】サルミ・T.等著「静電感度ベッドを用いた睡眠記録の自動分析」脳波・臨床神経生理学第64号84〜87頁(1986年)
【非特許文献16】シュワルツ・G.著「モデル次元の推計」、統計年報第6号、461〜464頁(1978年)
【非特許文献17】ソルボヤ・H.、ミリラ・R.著「非侵襲血圧測定法」、分子量子音響学第27号(2006年)
【非特許文献18】ヴァン・ダー・ルース、H.F.M.等著「複数センサを設けたベッドシーツからの微弱な生命徴候のモニタリング」、2001年北米リハビリテーション技術学会、米国ネバダ州リーノ、2001年7月22〜26日
【非特許文献19】ワリス・M.等著「新しい自動喘鳴検出方法」、技術保健医療第6(1)号33〜40頁(1998年)
【非特許文献20】ワタナベ・T.等著「非接触睡眠段階推定方法」、IEEE生体工学学会報告書第10巻第51号(2004年10月)
【非特許文献21】ホイットニー・C.W.、ゴットリーブ・D.J.、レッドライン・S.、ノーマン・R.G.、ドッジ・R.R.、シャハー・E.、スロベック・S.、ニエット・F.J.著「呼吸障害徴候と睡眠病期分類の点数化の信頼性」、睡眠(1998年11月2日)第21(7)号749〜757頁
【非特許文献22】ヨンジョン・C.等著「呼吸と心拍運動の非拘束測定のためのバランス管を備えたエアマットのセンサシステム」、生理測定第26号413〜422頁(2005年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様では、慢性疾患疾病などの生理学的事象の発症もしくは再発を見つけるために患者をモニタする方法とシステムを提供する。このモニタリングによって、軽微な疾患の治療や疾患の症状軽減措置を行う際に患者又は医療介護提供者を補佐することができる。さらに、本発明の他の態様では、生理学的事象の発現を検出及び特徴付けすると共に、治療や投薬などのいくつかの用途に応じた発作の治療のために自動センサ及び電子信号処理を用いて生命徴候及び非生命徴候をモニタする技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による被検対象者の慢性症状をモニタするシステムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による図1のシステムの制御ユニットの構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による図2の制御ユニットの呼吸パターン分析モジュールを概略的に示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態によって測定した運動信号を示す特性図である。
【図5】本発明の一実施形態によって測定した典型的な無意識信号を概略的に示す特性図である。
【図6】本発明の一実施形態によって測定した正常呼吸パターンを有する被検対象者の典型的な無意識信号を概略的に示す特性図である。
【図7】本発明の一実施形態によって喘息被検対象者を測定して得た典型的な無意識信号を概略的に示す特性図である。
【図8】本発明の一実施形態によって測定した典型的な心拍信号出力を概略的に示す特性図である。
【図9】本発明の一実施形態によって被検対象者を仰臥位で測定して得た典型的な心拍関連信号出力の周波数分析結果を概略的に示す特性図である。
【図10】本発明の一実施形態によって図9と同じ被検対象者を左横臥位で測定して得た典型的な心拍関連信号出力の周波数分析結果を概略的に示す特性図である。
【図11】本発明の一実施形態によって呼吸状態の悪化が見られる被検対象者を測定して得た呼吸運動信号を概略的に示す特性図である。
【図12】本発明の一実施形態によって呼吸状態の悪化が見られる被検対象者を測定して得た呼吸運動信号を概略的に示す特性図である。
【図13】本発明の一実施形態によって安定した呼吸状態の被検対象者を測定して得た呼吸運動信号を概略的に示す特性図である。
【図14】本発明の一実施形態によって被検対象者がベッド中央部で姿勢を変える前後及び姿勢変化中に測定した運動信号を概略的に示す特性図である。
【図15】本発明の一実施形態によって姿勢変化以外に被検対象者が運動した時に測定した運動信号を概略的に示す特性図である。
【図16】本発明の一実施形態によって被検対象者がベッド中央部からベッド側部に移動する前後及び移動中に測定した運動信号を概略的に示す特性図である。
【図17】本発明の一実施形態において、被検対象者がベッドに240秒間横臥し、240秒間端座し、次に脚をベッド外に240秒間移動させてそのままベッドに座ったまま脚を240秒間床に下ろし、次に240秒間ベッドから離れたときに測定して得た運動信号を概略的に示す特性図である。
【図18】本発明の一実施形態によって睡眠時無呼吸に陥っている被検対象者の睡眠中の典型的心拍信号出力を概略的に示す特性図である。
【図19】本発明の一実施形態によって被検対象者を測定して得た運動信号(上図)と対応する検出心拍(下図)を概略的に示す特性図である。
【図20】本発明の一実施形態によって被検対象者を測定して得た運動信号(A)と、対応する検出心拍(B)と、大きい身体運動時の検出出力(C)を示す概略図である。
【図21】本発明の一実施形態によって被検対象者を測定して得た平均動脈圧参照信号(A)と、ECG信号−パルス酸素濃度計間の対応脈波伝播時間(PTT)(B)と、非接触運動センサパルス酸素濃度計間の対応PTT(C)を示す概略図である。
【図22】本発明の一実施形態によって被検対象者を測定して得たECG信号(点線)と被検対象者の胸部に設けた非接触運動センサからの対応信号(A)と、同じECG信号と脚部に設けた非接触運動センサからの対応信号(B)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一実施形態における被検対象者12の慢性症状をモニタするシステム10の概略図である。システム10は、主に、運動センサ30と、制御ユニット14と、ユーザーインターフェース(U/I)24とを備えている。いくつかの適用例では、図示のようにユーザーインターフェース24は制御ユニット14に一体化されているが、他の適用例においては、ユーザーインターフェースと制御ユニットとを別々のユニットとすることができる。また、いくつかの適用例においては、運動センサ30は制御ユニット14と一体化されているが、その場合、ユーザーインターフェース24を制御ユニット14と一体化又は別個としてもよい。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、運動センサ30は「非接触センサ」、つまり、被検対象者12の身体又は被検対象者12の着衣に接触しないセンサである。本発明の他の実施形態において、運動センサ30は、被検対象者12の身体又は被検対象者12の着衣に接触する。前者の場合、運動センサ30が被検対象者に接触しないので、被検対象者12に不快な思いや不都合をもたらすことなく、この運動センサ30によって運動を検出できる。いくつかの適用例では、被検対象者12に知られずに運動センサ30で検出することができ、さらに、いくつかの適用例では、被検対象者12の同意を得ることもせずに検出が可能になる。また、いくつかの適用例においては、運動センサ30は、被検対象者12から見えないところに設けたり、被検対象者12の着衣に隠すことができる。
【0018】
運動センサ30は、被検対象者12の運動を検出するための、セラミック圧電センサ、振動センサ、圧力センサ、又は、例えば背もたれ面37の下に取り付けるように構成された歪みゲージなどの歪センサを備えている。例えば、睡眠中にセンサ30によって検出される被検対象者12の運動として、後述するように規則正しい呼吸運動、心拍関連運動、及び他の身体運動、さらには、これらを組み合わせた運動が含まれている。いくつかの適用例においては、センサ30は、標準的なモニタ装置に接続可能な標準通信インターフェース(例、USB)を備えている。
【0019】
本願における全ての実験結果は、1つ以上の圧電センサを用いて測定したものであるが、他の圧力ゲージや加速度計などの他の運動センサ30によって測定を行うことも本発明の範囲に含まれるものである。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態における制御ユニット14の構成を概略的に示すブロック図である。制御ユニット14は、主に、運動データ取得モジュール20とパターン分析モジュール16とを備えている。パターン分析モジュール16は、主に、以下に述べるモジュールを1つ以上備えている。即ち、呼吸パターン分析モジュール22と、心拍パターン分析モジュール23と、咳分析モジュール26と、不安分析モジュール28と、血圧分析モジュール29と、覚醒分析モジュール31とを備えている。いくつかの適用例においては、2つ以上の分析モジュール20、22、23、26、28、29及び31が単一のハウジング内にパッケージされている。他の適用例においては、複数のモジュールが別々にパッケージされている(例えば、運動データ取得モジュール20によって局所的に得られた呼吸信号を1つ以上のパターン分析モジュールによって遠隔分析できるようにする)。
【0021】
ユーザーインターフェース24は、主に、LCDやCRTモニタなどの専用表示装置を備えている。代替的に又は付加的に、ユーザーインターフェース24は、取得した未処理データ及び/又は処理済みデータを離れた分析場所に送って、さらなる分析、解釈、専門的検討、及び/又は臨床予後支援を行うための無線又は有線通信ポートを備えている。例えば、データは、電話回線及び/又はインターネットを介して、又は他の広域ネットワークを介して無線若しくは有線で送信されても良い。
【0022】
呼吸パターン分析モジュール22は、図3に示すように、運動データから呼吸パターンを抽出するように構成され、心拍パターン分析モジュール23は、運動データから心拍パターンを抽出するように構成されている。代替的に又は付加的に、システム10は、被検対象者の顔、首、胸及び/又は背中に、又はマットレスの下に取り付けるか、又は指向させた音響センサ若しくは気流センサなどの他のセンサを備えている。
【0023】
本発明の一実施形態において、システム10は、体温測定用の温度センサ80を備えている。いくつかの適用例においては、温度センサ80は、体温測定用の赤外線集積センサを備えている。
【0024】
体温は全身感染症や炎症などの全身状態を示す生体徴候であり、体温の包括的上昇は、医療診断における第1のスクリーニングツールとして利用される。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態における呼吸パターン分析モジュール22の構成要素を概略的に示すブロック図である。呼吸パターン分析モジュール22は、主に、睡眠中の呼吸パターンの変化を分析する。この呼吸パターン分析モジュール22は、主に、デジタル信号プロセッサ(DSP)41と、デュアルポートRAM(DPR)42と、EEPROM44と、I/Oポート46とを備えている。モジュール23、26、28、29及び31は、図3に示したモジュール22と同様である。例えば、モジュール23、26、28、29及び31は、デジタル信号プロセッサ41、デュアルポートRAM42、EEPROM44、及びI/Oポート46と同様のデジタル信号プロセッサ(DSP)、デュアルポートRAM、EEPROM、及びI/Oポートを含んでいても良い。
【0026】
本発明の一実施形態により測定した運動信号の分析結果を示す図4(A)、(B)及び(C)を参照して説明する。同図(A)はマットレス下に設けた圧電センサで測定した未処理メカニカル信号50を示しており、呼吸関連信号、心拍関連信号、及び呼吸又は心拍とは無関係の一般的身体運動を合成させた成分を含んでいる。信号50は、以下に説明する技術を用いて、同図(B)に示す呼吸関連成分52と、同図(C)に示す心拍関連成分54とに分解される。
【0027】
本発明の一実施形態において、運動データ取得モジュール20は、被検対象者の呼吸パターン及び心拍パターンを非侵襲的にモニタするように構成されている。呼吸パターン分析モジュール22及び心拍パターン分析モジュール23は、運動データ取得モジュール20によって生成された未処理データから、呼吸パターン及び心拍パターンをそれぞれ抽出し、呼吸パターン及び心拍パターンをそれぞれ処理及び分類するように構成されている。呼吸パターン分析モジュール22及び心拍パターン分析モジュール23は、(a)喘息発作、心臓疾患関連肺液鬱滞、敗血症、心停止又は呼吸障害などの迫り来る臨床発作を予測し、及び/又は、(b)臨床発作が起こった時点で発作の重症度及び経過をモニタするためにパターンを分析するように構成されている。ユーザーインターフェース24は、被検対象者12及び/又は医療従事者に予想される発作若しくは発症した発作を通知するように構成されている。迫り来る臨床発作の予測によって早期予防的治療を容易にし、例えば、薬剤の必要投与量を少なくする及び/又は死亡率及び疾病率を低下させるなどの措置によって、一般的に、結果を改善するように構成されている。一般ケア病棟での入院患者を治療する際には、例えば、患者の容態悪化を早期に認知することで患者をICUに移す必要性をなくし、入院期間の短縮、退院への良好な回復の見込みを高めることが可能となる。
【0028】
被検対象者の睡眠中の正常な呼吸パターンは数日、数週間、数ヶ月、及び数年にわたって緩やかに変化する可能性がある。いくつかの変化は、季節の変化などの周期的な環境変化若しくは週単位の日程(例えば、土曜日毎に行う屋外運動)などの周期的予定、又は月経周期などのバイオリズムなどに起因して周期的に起こる。また、他の変化として、例えば、子供の成長あるいは成人の加齢に伴って起こる、単調な漸進性の変化がある。本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、こうした緩やかな変化も動的に追跡する。
【0029】
本発明の一実施形態では、2つの薄い圧電センサが半剛性板材の上に重ねて取り付けられている。両センサは、実質的に同じ変形を起こして高い相関信号を発生させ、センサのキャパシタンスを実効的に倍増させ、これによって、必要とする感知面積を増大することなくSN比を向上させることができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、システム10は、対象を限定するものではないが、呼吸数、心拍数、咳込み回数、呼気/吸気比、過呼吸の強度、回数若しくは頻度、深吸気の強度、回数若しくは頻度、振戦の強度、持続時間若しくは頻度、睡眠周期の持続時間若しくは頻度、又は情動不安パターンの強度、回数若しくは頻度を含む被検対象者の臨床パラメータをモニタするように構成されている。これらのパラメータは本明細書及び特許請求範囲に記載しているように「臨床パラメータ」の一例である。一般的には、臨床パラメータとは、投薬時に測定される臨床的有意性を有する数値パラメータである。
【0031】
本発明の一実施形態において、パターン分析モジュール16は、1つ以上の分析モジュール20、22、23、26、28、29及び31から生成されるパラメータデータを連結し、臨床徴候の予測及び/又はモニタを行うために連結データを分析する。いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16は、(特定患者のための又は母集団平均に基づくかのいずれかによる)基準値からのパラメータ偏差に基づいて、パラメータのスコアをそれぞれ導き出す。パターン分析モジュール16は、平均、最大、標準をとるようなスコア、又は、機能スコアを任意に組み合わせることができる。連結スコアを1つ以上の閾値(確定値若しくは未確定値)と比較し、発作を予測するか、その時点で発作を発症しているのか、又は、予測も発症もしていないかどうかを判断すること、及び/又は、発作を起こしている場合は、その重症度と経過をモニタすることを行う。いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16は、特定患者若しくは個人履歴に基づく患者群の個人又はグループのパラメータスコアを組み合わせるための基準及び/又は機能を学習する。例えば、パターン分析モジュール16は、前回の臨床徴候に先立って測定したパラメータを分析することで学習を実行するかもしれない。
【0032】
いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16は、臨床パラメータの基本特性の変化を確定するために、例えば、上述した緩やかな変化パターンなどの個々のパターンを分析するように構成されている。例えば、子供の成長によって起こる睡眠中の平均呼吸数を特定するために、このシステム10は、睡眠中の月間平均呼吸数を算出する。システム10は、次いで、ある月から次の月への平均呼吸数の変化率を求め、この変化率を被検対象者、患者又は医療専門家に表示する。代替的に又は付加的に、システム10は、週末の間の睡眠中の平均呼吸率が平日より高くなることを確認して、臨床発作を起こしたか又はその徴候があるかを比較判定するために週末における異なった基準を用いる。
【0033】
本発明の一実施形態において、システム10は、例えば少なくとも2ヶ月以上という、長期間にわたって、被検対象者の臨床状態をモニタして記録する。また、このシステムは、かかる期間中に、被検対象者の状態に影響を及ぼす可能性のある、行動パターン、治療処置及び外的パラメータをモニタして記録する。システム10は、測定した臨床パラメータに基づいて被検対象者の臨床状態のスコアを算出し、このスコアを被検対象者や看護人が利用できるように出力する。
【0034】
システム10は、呼吸パターン及び心拍パターンを常にモニタしているが、いくつかの症例においては、一般的に、夜間睡眠中のこれらのパターンをモニタすることが最も効果的である。被検対象者が覚醒している時、モニタした状態に関係のない肉体的及び精神的な活動が、呼吸パターン及び心拍パターンに影響を与えることが多い。このような関係のない活動は、通常、夜間睡眠中には影響を及ぼすことが少ない。いくつかの適用例において、システム10は、夜間の全時間又は大半にわたって、パターンをモニタ及び記録する。結果的に得られる一連のデータには、通常、典型的な長期呼吸パターン及び心拍パターンが含まれており、包括的な分析が容易となる。さらに、このような大量の一連のデータによって、統計的に有意な分析に充分なデータを保持しつつ、運動又は他の人為的動作で損なわれる要素を除去することが可能となる。
【0035】
再度、図2を参照すると、運動データ取得モジュール20は、主に、運動センサ30が生成した未処理運動信号を処理する回路を備えており、この回路には少なくとも1つのプリアンプ32、少なくとも1つのフィルタ34、及びアナログ−デジタル(A/D)コンバータ36などが含まれる。フィルタ34は、主に、サンプリングレートの1/2以下のカットオフ周波数を有するアンチエイリアスフィルタとして機能する、バンドパスフィルタ又はローパスフィルタを備えている。ローパスデータは、典型的には、少なくとも10Hzのサンプリングレートでデジタル化され、メモリに格納される。例えば、アンチエイリアスフィルタのカットオフ周波数は10Hzに設定され、サンプリングレートは40Hzに設定される。いくつかの適用例において、フィルタ34は、約0.03Hz〜0.2Hzの範囲(例えば、約0.05Hz)の低域カットオフ周波数と、約1Hz〜10Hzの範囲(例えば、約5Hz)の高域カットオフ周波数とを有するバンドパスフィルタを備えている。いくつかの適用例にはより低い周波数が適するが、データ取得モジュール20は、主に、少なくとも10Hzのサンプリングレートで運動データをデジタル化する。
【0036】
代替的に又は付加的に、運動センサ30の出力は、各々それ自身の利得と所望の信号に従って調整されたフィルタ設定とを伴ういくつかの信号調整回線を介して導かれる。例えば、呼吸信号には比較的低利得で約5Hzまでの周波数帯域が用いられ、心拍信号には適度の利得と10Hz程度の少し高めのカットオフ周波数が用いられる。いくつかの適用例において、運動センサ30は、約100Hzから8kHzの周波数通過帯域が有効な音響信号の記録に用いられる。
【0037】
本発明の一実施形態において、システム10は、被検対象者12の呼吸、心拍、咳発生、身体運動、深吸気、及び/又は呼気/吸気比などの複数の臨床パラメータをモニタするように構成されている。パターン分析モジュール16は、臨床パラメータの基準パターンの変化を確定するために個々のパターンを分析するように構成されている。場合によっては、先の基準から実質的に異なる新たな基準を作り出す基準パターンの変化は、投薬の変化又は被検対象者の状態における長期的な変化によって生じ、これが治療の有効性に関する有益な収集データとして看護人や医療専門家の参考になる。
【0038】
本発明の一実施形態において、システム10は、上述の説明で定義したような臨床パラメータをモニタするように構成されている。パターン分析モジュール16は、投薬によって生じる変化を確定するために、個々のパターンを分析し薬剤投与量の適正化のために役立つデータが得られるように構成されている。例えば、投薬は、高血圧(高血圧症)、鬱血性心不全(CHF)、心拍調律動異常(不整脈)及び胸痛(狭心症)などの治療に用いられる交感神経薬が用いられ、時には、心筋梗塞(MI)を患ったことのある患者の心筋梗塞の再発防止のために投薬される。このシステムは、毎夜睡眠中に心拍パターンを測定することで、例えば、投薬の効果を確認して、最適な心拍パターンが得られるまで投薬量を調整するのに役立つ。このシステムは投薬量の調整を行うために患者若しくは医療専門家にデータを報告するか、又は、それによって投薬量を決める自動投薬装置にデータを送る。
【0039】
図1に示すように、本発明の一実施形態において、運動センサ30は、圧力/振動センサ(例えば、圧電センサ)又は加速度計を備えており、通常は、例えば、対象者が睡眠をとる時などに対象者が寄りかかる面37の中、上、又は下のいずれかに設け、対象者の呼吸関連運動や心拍関連運動を検出するように構成されている。面37は、主に、マットレス、マットレス掛け布、シーツ、マットレスパッド及び/又はマットレスカバーなどを指す。いくつかの適用例において、運動センサ30は、例えばマットレスなどの面37に組み込まれ、運動センサと背もたれ面とが一体化される。また、いくつかの適用例において、運動センサ30は、対象者の腹部38若しくは胸部39近傍の面37の中、上、又は下のいずれかに設置されるように構成されている。代替的に又は付加的に、運動センサ30は、対象者の腰部下位部若しくは脚部40近傍などの対象者12の解剖学的部位の近傍の面37の中、上、又は下のいずれかに設けても良い。いくつかの適用例において、かかる設置位置は、対象者の腹部38又は胸部39の近傍にセンサを位置させたよりも明瞭な脈拍信号を拾うことができる。
【0040】
再度、図2を参照すると、本発明の一実施形態において、運動センサ30は無線で制御ユニット14と通信する。この実施形態において、運動センサ30は、センサ無線通信モジュール56を備えるか、又は、それに接続されており、制御ユニット14に接続された制御ユニット無線通信モジュール58との間でデータを無線で送信及び/又は受信するように構成されている。通信モジュールは、アナログ信号(例えば、標準的なAM若しくはFM信号)又はデジタル信号(例えば、ブルートゥース(登録商標))を用いて通信する。例えば、病院内でベッドなどの被検対象者用の場所は、主に、各対象者が数日間のみ占有する。場合によっては、新たなに被検対象者がベッドを充てがわれる都度、センサ30を交換すると便利である。場合によっては、センサ30と無線通信モジュール56とを備えたパッドをマットレスの下に置くことで看護師の作業時間を短縮できる。こうした無線通信可能なセンサパッドの使用によって、制御ユニット14とのケーブルの取り付け及び取り外しの必要性がなくなる。また、看護師、医師及び患者がベッドへの近付くこと及び/又は入ることがより簡便となる。センサ30が無線で動作する実施形態において、センサ、又はセンサと無線通信モジュールとを備えたセンサアセンブリは、主に、電池などの内部電源を含んでいる。電池寿命を維持するために、センサ30は、主に、関連する運動信号や他の入力を感知した際に通信を開始する。
【0041】
いくつかの設定では、例えば病院において、複数のシステム10が比較的近接した位置で用いられる。このような場合、各制御ユニット14は、主に、正しい運動センサ30のみと通信し、異なるベッドに位置し別のシステム10に連動する他の運動センサ30と誤通信することはない。例えば、ブルートゥース方式ではこうしたペアリング処理が可能になる。一実施形態において、システムは、センサ側と制御ユニット側との双方に従来のブルーツゥース方式のペアリング処理を開始することなくペアリングを行う。無線通信可能な運動センサ30に加えて、制御ユニット14は、血液酸素モニタ86(例えば、パルス酸素濃度計)、ECGモニタ62、若しくは温度センサ80などの、被検対象者に適用した1つ以上の接触センサ60に接続されている。制御ユニット14は、接触センサ60から脈拍情報を抽出する。制御ユニットの無線通信範囲内における数個の送信運動センサ30の中でペアとなる運動センサ30を識別するために、制御ユニットは、運動センサ30から受信した各無線信号の脈拍信号を算出し、接触センサ60から受信した情報に関連付けられた脈拍データを有する信号を識別する。一致が識別されると、制御ユニットは、識別された運動センサ30に接続された無線通信モジュール56の識別特徴(例えば、送信機固有のID)を記録し、それ以降、識別された運動センサ30が制御ユニット14とペアリングされる。いくつかの適用例において、このようなペアリングを行うことにより、制御ユニット14は、接触センサ60がもはや不要になり、非接触センサ30のみか又はより少数の接触センサ60によって、被検対象者をモニタできることを医療従事者に通知する。
【0042】
いくつかの無線の適用例において、センサ30が作動した際、看護師は、制御ユニット14の接続ボタンを押してセンサ30を1回以上の回数だけタップする(たたく)。制御ユニット14は、これにより、その正確な時点においてタップ信号を発した周辺における、複数センサ30のうちの1つのセンサに接続される。変更態様として、ユーザーインターフェース24はそのタップを視覚的又は音響的に表示し、制御ユニットへのセンサのペアリングが承認される前に、医療従事者は、自身のタップが正しく表示されたことを確認できる。いくつかの適用例において、以下で説明するようなセンサ板を含むセンサは、ボタン又は他のユーザー制御器を全く含まない(これら適用例においては、無線通信可能な運動センサ30におけるオン/オフスイッチの使用を除外することはない)。いくつかの適用例において、無線通信可能な運動センサ30は、センサ上のいかなるボタン又は制御器を押すことなく、起動して制御ユニット14とペアリングすることができる。その代わり、センサをタップするか又はセンサを制御ユニットに有線により一時的に接続することにより、このセンサを起動し、制御ユニット14にペアリングすることができる。いくつかの適用例において、一時的なケーブルを用いることにより、センサ30と制御ユニット14とのペアリングを開始させることができる。センサと制御ユニットとをペアリングさせた後、一時的なケーブルを外し、無線通信を用いてシステムを作動させる。代替的又は付加的に、有線によって制御ユニット14に接続されている運動センサ(例えば、圧力センサ)は、背もたれ面に簡単に取り付け、マットレスに対して押圧される。有線接続された運動センサ及び無線通信可能な運動センサ30からの同時読取によって、制御ユニット14は、マットレス下にあり押圧された特定の無線通信可能な運動センサ30を識別することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、制御ユニット14は、運動センサ30でモニタした呼吸データの正確さを確認するために、接触センサが出力する脈拍情報を使用する。制御ユニット14は、センサ30からの情報を用いて呼吸数及び心拍数を算出し、接触センサからの情報を用いて心拍数を算出する。接触センサを用いて測定した心拍数とセンサ30を用いて測定した心拍数との相関もまた、センサ30に基づいて計算した呼吸情報が正しいことを示す。
【0044】
いくつかの実施例において、(これは実施例であって本発明を限定するものではないが、センサ製造においてセンサの感度レベルに有意な影響を及ぼす技術であるセンサの経年変化を防止するために)センサを交換する前に用いたセンサの時間を制限すると便利である。従って、本発明の一実施形態において、センサ30は制限時間中に動作するように構成されている。いくつかの適用例において、センサ30に、センサが使用されている時間と制御ユニット14と通信している時間との両方を計測する内部タイマを備えている。センサ30は、所定時間の使用後、いずれの制御ユニット14とも通信しないように構成されている。いくつかの適用例において、各センサ30は、固有のIDを有している。使用中及び非使用中のセンサの全体的データベースが保持される。新たなセンサユニット30に接続された際、制御ユニット14は、このセンサが他で使用されていたかどうか全体的センサデータベースにおいてチェックする。この全体的データベースは、いくつかの実施形態において、制御ユニット14の動作に関する一般的な校正データ及び他の有用なデータをも保持している。
【0045】
本発明の一実施形態において、センサ30は、単一の圧電セラミックセンサを備えている。センサは、例えば、大きさが20cm×28cm×1.5mmであり、可撓性プラスチック(例えば、パースペクス(PMMA)、ポリカーボネート、若しくはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS))又は非プラスチック(例えば、段ボール)の半剛性板材を含む板材に取り付けられている。センサは、被検対象者がセンサの直上にいなくても、被検対象者がベッドで最も一般的な姿勢をとった時の信号を検出可能である。一実施形態においては、センサ30は、2つ以上の薄型圧電センサ(例えば、半径13mm、厚さ100μm)を用いて構成される。この場合、2つ以上のセンサは、第1のセンサがこの板材上に取り付けられ第2のセンサ(可能性としては第3のセンサ以降もある)が第1のセンサに取り付けられるように、半剛性板材上に重畳されている。システムのSN比を上げるために、両センサからの信号は、増幅及び/又は数値化電子回路によって互いに加算される。
【0046】
本発明の一実施形態において、システム10は、対象者12の心拍数を連続的にモニタできるように構成されている。システム10は、短時間毎、例えば1秒毎、に心拍測定値を生成する。システム10は、また、毎分のHR測定値の標準偏差、例えば過去の全ての心拍測定値の標準偏差を計算する。一実施形態において、システム10は、対象者12の身体運動レベルも連続的にモニタする。休息中の多数の対象者については、心拍の標準偏差が1〜5ビート/分(bpm)の範囲である。時として、休息中の対象者は、HRが上述した標準偏差の5〜10倍の急激な(急激の例として、60秒未満、通常は15秒未満)変化、例えば標準偏差が2bpmで30秒以内に10bpmのHR降下を起こすことがある。一実施形態において、システム10は、かかる事象を臨床医に注意を促す出力ユニットを備えている。システム10の実施モデルを用いた臨床試験では、かかる警報が、この警報から72時間以内における対象者の死亡に高い相関性を有しており、臨床医にとってこの警報が非常に有意なメリットを有している。図8は本発明の一実施形態において、モニタした対象者からの連続心拍信号出力のグラフである。図における「1281」の領域では、対象者の心拍が2pbm以下の標準偏差で非常に安定している。図における「1282」の領域では、例えば、システムが患者が休息状態であると判断していた時間中に、システム10により心拍の急激な変化が認識されている。従って、適切な医療措置を可能にするため、臨床医に注意を促す有意な臨床的価値がある。
【0047】
一実施形態において、システム10は、臨床医が交感神経薬投与又は心拍に影響する他の薬剤投与で対象者を治療するかどうかの情報をユーザーインターフェース24を介して入力できる選択機能を備えている。一般に、かかる薬剤は心拍変動を抑えると考えられるものであり、従って、システム10は、心拍変動の警告に対する感度レベルを高くする。例えば、対象者の基線HRが60bpmになり、標準警告判断基準が変化率33%であると、交感神経薬投与患者の判定基準は、自動的に15%に変更される。又は、例えば、システムが通常時にHR/基線が1時間内に20%を超えて変化した場合に出力ユニットに警告するよう設定されており、かつ、交感神経薬投与患者のHR変動が減少した場合に、システムはHR/基線が1時間に5%変動した場合に警告する。一実施形態において、システム10は、HR情報及び運動情報を組み合わせることで交感神経薬患者のHR/基線変動に警告する。例えば、患者の全体的な身体運動の有意な増加に関連性がない心拍の10%変動に対して警告する。心拍変動を低減する薬剤で治療を受けている患者に対して、通常、システム10は、患者がかかる薬剤の投薬の信号を受け心拍変動を検知したら警告する変動閾値を、かかる薬剤を使用していない患者に適用する閾値と比較して、少なくとも30%低くするよう構成されている。
【0048】
いくつかの適用例において、運動センサ30(例えば、圧電センサ)を、典型的には少なくとも2cmの表面面積を有し、厚さが5mm以下の剛性容体に封入する。センサ出力は、一般に圧電センサと共に用いられる電荷増幅器などの電子増幅器に導かれ、さらに、容量性トランスデューサに送られて増幅器の超高出力インピーダンスを尺長ケーブルの伝送に適した低インピーダンス電圧に調整される。センサ及び電子増幅器は、機械的振動を電子信号に変換する。
【0049】
本発明の一実施形態において、運動センサ30は、背もたれ面37の内部、上部又は下部に設けられるように構成された格子形態の複数のセンサを備えている。単一構造ではなくこのような格子形態を用いることにより、呼吸及び心拍信号の感応性が向上する。
【0050】
本発明の一実施形態において、呼吸パターン分析モジュール22は、約0.05Hzから約0.8Hzの範囲で分光フィルタリングを行うことにより呼吸関連信号を抽出し、心拍パターン分析モジュール23は、約0.8Hzから約5.0Hzの範囲で分光フィルタリングを行うことにより心拍関連信号を抽出する。いくつかの適用例において、運動データ取得モジュール20は、対象者12の年齢に基づいたスペクトルフィルタリングに合わせられている。例えば、幼児はおおむね呼吸数と心拍数とが高く、通常、スペクトルフィルタリングは、呼吸数で約0.1Hzから約0.8Hzの周波数範囲、心拍数で約1.2Hzから約5Hzの周波数範囲の高端に厳格に設定されている。成人については、通常、スペクトルフィルタリングは、呼吸数で約0.05Hzから約0.5Hzの周波数範囲、心拍数で約0.5Hzから約2.5Hzの周波数範囲の低端に厳格に設定されている。
【0051】
本発明の一実施形態において、パターン分析モジュール16は、呼吸関連信号から心拍信号を抽出している。この試みは、例えば、呼吸関連信号が直接モニタした心拍信号より明瞭である場合に有効である。これは、呼吸関連信号が、心拍関連信号よりもっと有意な機械的な体の動きによって生成されることから、しばしば起こる。
【0052】
本発明の一実施形態において、測定した呼吸関連信号は心拍関連信号の復調に用いられ、これによって心拍関連信号の検出を向上させることができる。心拍パターン分析モジュール23は、心拍関連信号に呼吸関連信号を乗算するなど、呼吸関連信号を用いて心拍関連信号を復調する。この復調によって、心拍数関連信号のより明瞭な復調信号が得られ、その検出を向上させることができる。場合によっては、復調信号のパワースペクトルが復調された心拍数に対応する明らかなピークを示すことがある。いくつかの適用例において、復調処理に用いられる呼吸関連信号は、周波数の上端をカットオフして低減された周波数(例えば、上述した約0.8Hzの代わりに約0.5Hz)でフィルタ処理をされる。こうした低減は、呼吸関連信号の基本正弦波形のみが復調計算に用いられることを一般的に保証する。
【0053】
本発明の一実施形態において、フィルタ処理された各信号についてのパワースペクトルが計算され、最大ピークが特定される。呼吸関連ピークに対する心拍関連ピークの比が算出される。比率は夜間についてプロットされる。この比は、一般に、対象者が同じ姿勢で横臥している限り、一定に保たれると想定される。2つの連続する時期(主に、30〜300秒の間、例えば60秒の時期)の各々について、データ取得モジュール20は、2つの時期間におけるこの比の変化率を算出する。このシステムは、比の変化率が閾値(典型的には約10%と約50%との間、例えば、25%)より大きくなった時に身体姿勢の変化が起こったと判定する。これらの変化の周期及び時期は不穏睡眠の指標として測定される。
【0054】
一実施形態において、心弾動信号の頻度分布の変動は、姿勢変化の指標として用いられる。
【0055】
一実施形態において、システム10は、患者がベッド、他の背もたれ面又は椅子において姿勢を変化させたかどうかを確認する姿勢変化識別アルゴリズムを有している。これは、ハイリスク患者の褥瘡を防ぐために2〜4時間毎の姿勢変化が必要であることから、4姿勢(背臥位、伏臥位、左側臥位、右側臥位)のうちの1姿勢に動いたかどうかを確認することが目的である。又は、このシステムは、褥瘡が最も亢進しやすい胴部位及び/又は仙骨部位の体勢を変えることを含む大きな体動を確認する。システムは、大きな体動事象を確認し、体の姿勢変化を伴ったかどうかを判定する。
【0056】
姿勢の変化には次の3つの態様がある、
態様1.姿勢変化前
態様2.姿勢変化中
態様3.姿勢変化後
【0057】
態様1:姿勢変化前
姿勢変化前の期間中に大きな体動を検知しない時は、姿勢によって変化する頻度領域及び時間領域における信号特徴が求められる。この特徴は姿勢変化の事象を特定する基線となる。
周波数領域における信号特徴は、一実施形態において、以下の少なくとも1つを含んでいる。
・心拍周波数及びその高調波成分における心拍によって生じる周波数の振幅(図9は本発明の一実施形態を利用して実施したこの分析を示している)、
・異なる高調波成分の振幅(呼吸周波数及びその高調波成分における呼吸関連運動によって生じる周波数の振幅)の比、
・これら高調波成分の比。
時間領域における信号特徴は、一実施形態において、以下の少なくとも1つを含んでいる。
・呼吸によって生じるパターン、
・心拍によって生じるパターン、
・呼吸サイクルの変動測定値(例えば、呼吸運動信号振幅の標準偏差、呼吸サイクル時間の標準偏差)、
・心拍パターンの変動レベル(例えば、心拍信号振幅の標準偏差、RR時間間隔の標準偏差)。
【0058】
態様2:姿勢変化中
全ての姿勢変化には有意の(重要な)大きな身体運動が必要となる。大きな身体運動は以下のように定義され識別される。姿勢変化中は大きな身体運動の事象は次の2つに分類できる。
1.有意の大体動:大きな身体運動は、マットレス上で患者の体重分布における変化を示す、大体動の前と後との生の信号基線(直流レベル)における変化で識別される。変更態様として、大きな身体運動の時間が、例えば、4〜10秒(例えば、6〜10秒)の閾値以上になった場合にその大体動は有意であると判定する。
2.非有意の大体動:上述の基準に合わない大きな身体運動。
運動が有意の大体動に分類されない場合は、第3の態様において姿勢変化が起こったかどうかを判定するか、又はアルゴリズムは上述した態様1に戻る。
【0059】
態様3:姿勢変化後
大体動の終結が確認された後は、「態様1」に見られるのと同じ特徴が運動後に信号部から抽出され、大体動前に求めた特徴と比較される。実質的な相違が見られた場合は、姿勢変化の事象であると確認される。さもなければ、姿勢変化は記録されない。例えば、心拍数の基礎周波数に対応する信号成分の振幅が30%〜80%(例えば、50%)である閾値を超えた場合に、姿勢変化と判定される。又は、心拍数の1次高調波成分と2次高調波成分との振幅比が33%を超えて変化した場合にも姿勢変化と判定される。一実施形態において、上述した異なるパラメータの差を合成したスコアが計算され、閾値と比較される。
【0060】
図9及び図10は、本発明の一実施形態を用いて実施した臨床試験の結果を示している。図におけるピーク1291〜1295及び1301〜1305は、測定信号のスペクトル分析における心拍数の異なる高調波成分(1次〜5次)を表す周波数スペクトルのピークを示している。ピークの高さ及び比には、背中(背臥位)及び左側臥位との間に極めて明確な差が見られる。左側臥(図10)姿勢では、3次高調波成分(1303)が2次高調波成分(1302)よりかなり大きいが、このことは背臥位には当てはまらない。また、4次高調波成分と5次高調波成分(1294、1295及び1304、1305のそれぞれ)との比においても同様の関係が存在し、背臥位では4次高調波成分はほとんど見られない。種々のベッドでの種々の被検者を対象に行った数々の臨床試験においても同様の結果が見られた。一実施形態において、制御ユニットは、有意な大体動の前後のスペクトルを比較した時に、パワースペクトルにおける心拍数の高調波成分の比(例えば、2次高調波成分と3次高調波成分との比、及び/又は、4次高調波成分と5次高調波成分との比)に明らかな変化が存在しているとの決定に応じて、患者が側臥していると判定する。
【0061】
姿勢変化の事象を判別したかどうかの情報が、記録及び表示される。利用者によってそのように設定されている場合、設定時間(例えば、2時間)にわたって姿勢変化が確認されない際に、警告を発するように出力ユニットが駆動される。この記録情報は、患者の褥瘡予防プロトコルの準拠維持に役立つように臨床管理チームに提供される。
【0062】
一実施形態において、態様2は、姿勢が変わった際に、臨床医がデータ入力できるユーザーインターフェースを介して確認される。システムは、次いで、臨床医が入力した前後の測定値を比較することで姿勢変化が起こったことを確証し、その結果を記録できる。これにより、臨床チームは、臨床医の入力データとセンサの信号分析とに基づいて、患者の姿勢変化の記録をダブルチェックすることができる。
【0063】
半剛性板材に設けられた複数の圧電センサは、同じ種類の圧力が加わったときに全ての素子から同じ方向の信号が出力されるとは限らないように製造されることが多い。このことは、特定の製造バッチ処理におけるいくつかのセンサは特定の方向から更なる圧力が加わった時に正の信号を発生するが、同じ配向性を有する他のセンサは同様の圧力が加わっても負の信号を発生させるかもしれないことを意味している。一実施形態において、システム10は、方向性を校正した半剛性板材に装着した圧電セラミックセンサを用いている。即ち、例えば、板材の中心にかかる下方向の圧力が常に正の信号が生じるように校正されている。これは、例えば、取り付けられたセンサの製造バッチをテストし、望ましい信号の方向性が得られる製造ラインから製造されたセンサのみを選択することで簡単に実現できる。
【0064】
一実施形態において、システム10は、姿勢変化を起こしたかどうかを判定するために以下の基準を用いている。
1.体動信号のサイズ(呼吸関連運動信号に比較して)、
2.運動区分の前後の信号の基線における変化(態様3に対する態様1)、
3.基線(態様1)に比較した運動区分(態様2)中の信号変化の方向、
4.運動期間中の心拍数の変化(態様1及び3に対する態様2)。
【0065】
一実施形態において、システム10は、センサがベッド幅に対して中心に位置していると想定し、上述したように均一な方向性に校正されたセンサを用い、3つの可能性のあるシナリオから1つに適したパターンを捜す。
1.患者がベッド中央にいて回動する、
2.患者がベッドの側部から中央に回動する、
3.患者がベッドの中央から側部に回動する。
【0066】
患者がベッド中央にいて回動するということは下記によって特徴づけられる。
●基線に対する双方向運動であること。一例が図14に示されている。図14の1412部分は、患者がベッド中央で回動して姿勢を変えた間に測定した信号である。1411部分及び1413部分は姿勢変化の前後の基線である。図14は、運動信号の1412部分が基線である1411部分及び1413部分の上下に移動したことを明示している。反対に図15は、臨床試験中に患者が姿勢を変えずに他の身体運動(例えば、手及び脚の運動)を行った場合に収集した信号を示している。図14とは違って、図15では運動している1420部分及び1421部分が基線1422に対する一方向(正方向)変化のみを示している。臨床試験中に収集及び分析した他の数例が、本発明の一実施形態を用いて実施された。
●1412部分の運動振幅が1411部分及び1413部分の基線のリップルとして示される呼吸関連運動よりかなり大きい、図14に示すような、呼吸運動信号よりかなり大きい運動信号であること。
●運動修了後に正常状態に戻る運動期間の患者の心拍数の一過性の増加であること、これはいくつかの姿勢変化事象で見られる(データは図示なし)。
【0067】
一実施形態において、システム10は、確定した運動事象が姿勢変化である確率のスコアを算出し、これを閾値と比較して患者が姿勢を変えたかどうか判定する。他の実施形態において、システム10は、姿勢変化を判定するために、上述した条件のうちの少なくとも2つの条件を必要とする。さらに他の実施形態において、システム10は、姿勢変化を判定するために、上述した条件のうちの少なくとも3つの条件を必要とする。患者の非運動の偽の否定表示と同様に、身体運動の常習的な偽の肯定表示は、好ましくなく、医療スタッフに負担をかける。一実施形態において、臨床医は、例えば、患者の病状及び/又は所用の時に病室がいかに混んでいるかの状況に応じて、姿勢変化を判定するための閾値レベルを設定することができる。
【0068】
一実施形態において、ベッド中心からベッド側部への患者の回動を以下のように判定する。
●センサへの圧力低下を表わす基線における変化(センサがベッド中心にある場合)、例えば、図16に示すように、1431部分は実際に姿勢変更中の運動信号を表しており、基線1432は基線1430より低い。図16にその結果が示されている臨床試験で用いられた特定の実施形態において、センサは高周波フィルタに接続されており、基線1430部分と同様に、基線1432部分に徐々に戻る、基線の緩やかな減少変化を説明している。2つの基線1430と基線1432との一時的な差は、姿勢変化の前後に患者によるセンサにかかる圧力変化に相関すると判断できる。
●起こり得る心拍変化、
●大きな身体運動を表わしており、呼吸関連運動より有意に大きい運動信号レベル、この種の姿勢変化のための一実施形態においては、上述したような同じスコア評価又は判定機構が用いられる。
【0069】
ベッド側部から中央への患者の回動を以下のように判定する。
●センサへの圧力上昇を表わす基線における変化(センサがベッド中心にある場合)、
●起こり得る心拍変化、
●呼吸関連運動より有意に大きい運動信号レベル、この種の姿勢変化のための一実施形態においては、上述したような同じスコア評価又は判定機構が用いられる。
【0070】
一実施形態において、システム10は、被検対象者がベッド側部から中央へ、中央から側部へ、又は中央から中央へのいずれの姿勢変化を行ったかどうかを判定するための上述した基準を用いている。システムは、かかる情報を記録し、臨床医に表示する。この情報は、臨床医及び医療関係者にとって、患者の褥瘡予防手法が正しく維持されているかどうかを判定するのに役立つ。一実施形態において、システム10は、臨床医が行った姿勢変化(操作インターフェースを介して表示)及び対象者自身が行う姿勢変化(インターフェースを介して臨床医が行う措置は非表示)の記録をとる。再度述べるが、この記録情報は患者の褥瘡予防プロトコルの準拠を判定するのに役立ち、一実施形態において、システム10は、被検対象者が左側臥位、右側臥位、背臥位又は座位に姿勢を変化させたかどうかを操作インターフェースを介して臨床医に表示する。この情報が記録及び表示され、いくつかの実施形態において、システムセンサ及び信号分析モジュールを介して検証される。
【0071】
一実施形態において、システム10は、雑音、信号及び雑音を含む信号を判別するために以下の判定規準を用いている。
1.自己相関:一実施形態において、システム10は、限定的ではないが、信号の自己相関のごく一部(即ち、下記の例のような短時間)を用い、結果における局所極値の数をカウントする、
2.選択した周波数帯域における信号出力、例えば、呼吸数又は心拍数の範囲外であるが典型的な生物学的メカニズム周波数の範囲内の雑音信号:一実施形態において、システム10は、3.73Hz及び12.11Hz程度の周波数帯域を用いているが、追加の又は他の帯域を用いてもよい。
3.選択した周波数帯域における信号出力の比率。
【0072】
一実施形態において、システム10は、2つ又は3つの閾値を備えたシステムを用いることで3つのパラメータ全てを雑音スコアに組み合わせる。測定した各パラメータは、閾値に関連したその数値に応じて、雑音スコアを加算するか、減算するか、又は、変更しない。閾値及び雑音スコアは、明確な負の数値が確定信号を表し、明確な正の数値が雑音を表し、ゼロに近いスコアが典型的な雑音を含む信号となるように設定される。
【0073】
可能性のある1つの例として、各小さな部分(例えば、1/2秒)の雑音レベルが以下のリストの各真ステートメントに対して1ポイントだけ増加する。
● PR<10、
● PR<3、
● PR<2、
● P1<P1N、
● P2<P2N、
● AC>75。
同じく、雑音レベルが以下のリストの各真ステートメントに対して1ポイントだけ減少する。
● PR>15、
● PR>20、
● PR>25、
● P1>P1S、
● P2>P2S、
● AC<40。
【0074】
ここで、
● P1は第1の周波数帯域(例えば、3.73Hz)における電力、
● P1Nは第1の周波数帯域における雑音電力(ここで、雑音電力はベッドが空の時にこの周波数帯域で測定した電力と定義する)、
● P1Sは第1の周波数帯域における最小信号電力(ここで、最小信号電力は被検対象者がセンサから最大限離れているが測定可能な範囲にいる時にこの周波数帯域で測定された最小信号電力と定義する)、
● P2は第2の周波数帯域(例えば、12.11Hz)における電力、
● P2Nは第2の周波数帯域における雑音電力、
● P2Sは第2の周波数帯域における最小信号電力、
● PRはP1とP2との比率(つまり、PR=P1/P2)、
● ACは信号の自己相関における局所極値の数。
【0075】
1/2秒の2つの連続時間区における合計雑音レベルは、−12から+12の数値を持つことができる雑音スコア(NS)と見なせる。1/2秒の各々は次のように分類できる。
● NS≦0の場合は「信号」、
● NS>5の場合は「雑音」、
● NS=1〜5の場合は「雑音を含む信号」。
【0076】
一実施形態において、システム10は、ベッドに横臥する、座っている、及びベッドを離れているなどの患者の状態とセンサの状態との異なった相対状態を検出するために、上述した雑音レベルと電力分布とを使用する。図17の上側グラフは、被検対象者が4分間(240秒)ベッドに横たわり(1440部分)、その後に240秒間端座し(1441部分)、さらに、240秒間ベッドの外に足を投げ出し(1442部分)、その後、240秒間足を床に着け(1443部分)、最後に、240秒間ベッドを離れて立ち上がった(1444部分)時に記録した信号の例を示している。同じく図17の下側グラフは、ベッドに横臥している際の低い安定した負の数値(1450部分)から座位におけるゼロ近辺の中レベルの変動値(1451〜1453部分)に変化し、対象者がベッドから離れたときの高く安定した正の数値(1454部分)となる上述の雑音スコア(NS)の実施可能な一実施形態を示している。
【0077】
一実施形態において、システム10は、センサからの雑音レベルを測定及び分析し、被検対象者がベッドにいるかどうか、及びセンサに対して対象者がどのような位置にいるかについての情報を判定する。いくつかの適用例において、単一センサにより対象者の位置変化を仰臥位から座位まで検出することが有用である。場合によっては、対象者の上半身がマットレスに接触していないことを判定し、対象者を手助けすると共に転落することを防止するために、これを介護者又は臨床医へ警告する契機にすることが有用である。一実施形態において、システム10は、運動後12秒(又は、それより短い時間)以内で、1/2秒の少なくとも3周期が雑音であると分類されれば、ベッドから出たと検出する。運動検出後に1/2秒周期の少なくとも20の連続する周期(10秒)が信号であると分類されれば、対象者がベッドで横臥していると見なす。前出の条件のいずれでもなくかつ運動後20秒以内で1/2秒のほとんどの周期が雑音を含む信号であると分類されれば、対象者はベットで座位にあると見なせ、信号と分類された各周期について雑音と分類されるものが少なくとも1つある。
【0078】
一実施形態において、システム10は、対象者がベッドに座ったときに警告を発するように出力ユニットを駆動することにより、対象者の転落を減少させるのに利用される。即ち、ベッドを離れようとする患者の臨床チームに早期の警告を与えてこの患者が実際にベッドを離れる前に介助が可能となるようにし、これにより患者の転落を実質的に防ぐようにする。いくつかの適用例において、システム10は、上述したように運動信号中の雑音レベルの継続的な計算により、ベッド中で座位にある患者を識別する。
【0079】
一実施形態において、システム10は、米国ミシガン州カラマズーのストライカーメディカル社が製作したXPRT可能な機能面を有するインタッチ救命救急ベッド(In Touch Critical Care Bed)のような機能面を備えた高性能ベッドシステムに接続される。このベッドは電動化されており、例えば、背もたれ角度の変更、患者の回動、及び/又は振動及び打診治療の提供などのような機能提供が可能である。システム10は、測定した臨床パラメータに応じてこれら機能のうちの1つを実行させる。例えば、被検対象者の活動レベルに対応する上昇が見られないのに、平均呼吸数が5分から3時間(例えば、30分)の期間にわたって上昇するのを識別したら、つまり、対象者の呼吸状態の悪化が見られた場合は、振動及び打診治療を実行させたり、又は、背もたれ角度を30度に上げる。変更態様においては、被検対象者の時間あたりの姿勢変化数が、1時間〜24時間(例えば、3時間)の期間に1回に設定した閾値未満である場合、ベッド機能面が患者を回動させる。対象者が自発的に身体を回した場合であっても対象者のその回動を検知することなく、ベッドが3時間毎に対象者を回動するように設定されていると、対象者に著しい及び/又は不要な不快感を積極的に与えてしまう。
【0080】
本発明の一実施形態において、システム10は、臨床発作の兆候又は進行の指標として、測定した1つ以上の臨床パラメータが変化する傾向を識別する。例えば、呼吸数が3夜連続して継続的に上昇すると、喘息が悪化した可能性があることをシステム10に指摘する。
【0081】
一実施形態において、システム10は、測定した臨床パラメータに基づいて喘息スコアを算出する。いくつかの適用例において、システムは、喘息スコアを算出するために次式を用いる。
【0082】
【数1】

・・・・・(式1)
ここで、
S(D)はD日における喘息スコア、
(D)は先行する計測日の平均呼吸数で除算したD日における平均呼吸数、
R’(D)は次式で算出した呼吸数の一次導関数、
【数2】

・・・・・(式2)
さらに、
R(D)はD日の平均呼吸数比であり、R(D−1)はD日の直前日の平均呼吸数、
(D)は、先行するn日間(例えば、先行する3日間)の平均呼吸数で除算して求めたD日の直前日の平均呼吸数、
HR(D)は先行する全ての測定日の平均心拍数で除算したD日の平均心拍数、
HR’(D)は次式で算出される平均心拍数の一次導関数である。
【0083】
【数3】

・・・・・(式3)
ここで、
HR(D)はD日における平均心拍数、
HR(D−1)はD日の直前日における平均心拍数である。
【0084】
● AC(D)を先行する全ての計測日の測定値の平均で除算したD日における睡眠(不穏状態)時の活動レベルの測定値、
● SE(D)を先行する全ての計測日の平均睡眠効率によって除算したD日における睡眠効率、
● DI(D)を先行する全ての計測日の平均深呼吸数によって除算したD日における深呼吸数、
● Nを他の要素を加味した状態によって決まる整数であって、約88〜約92、例えば91のような主に約80〜約110の間の値をとる数値とする。
【0085】
これらパラメータの各々をD日に直前の夜間における睡眠期間又は特定期間について計算する。
【0086】
Ra(D)、HRa(D)、AC(D)、SE(D)及びDI(D)の数値を、主に、D日に先立つ少なくとも3日間、例えば、D日の直前の3連続日について算出する。変更態様として、Ra(D)、HRa(D)、AC(D)、SE(D)及びDI(D)をK日間にわたる平均に対する現在の日の測定値の比として算出する。通常、ここでのKとは、約30日のごとく、約7〜約365日である。いくつかの適用例において、K日は連続する日数であり、例として、D日の直前の連続するK日間である。又は、Ra(D)、HRa(D)、AC(D)、SE(D)及びDI(D)を、慢性症状の悪化を起こさず、使用者のマニュアル操作による入力か、若しくは、システム10で自動的に判別される先行するK日間の夜間の平均に対する現在の日の測定値の比として算出する。いくつかの適用例において、睡眠における毎分の平均心拍数を算出し、この時系列の標準偏差を計算する。この標準偏差は付加パラメータとして、例えば、上述した式1のようなスコア計算式に加えられる。
【0087】
本発明の一実施形態において、システム10は、前述のごとく定義した臨床パラメータに基づいて喘息スコアを算出する。いくつかの適用例において、かかる計算式は、例えば、基線に対する呼吸数の変化率及び特定時間当たりの咳比率などの臨床パラメータの一次式を含んでいる。いくつかの適用例において、かかる計算式は、線形に近い臨床パラメータによって決まる式であり、例えば、スコアを何らかの臨床パラメータに対して図式化した場合にスコアのグラフと最も近い線形近似の領域が線形近似の下での領域に比べて比較的小さくなる(例えば、前者の領域が後者領域の10%未満)。
【0088】
いくつかの適用例において、喘息スコアは次式を用いて算出される。
S(D)=100−BR(D)−C(D)・・・・・(式4)
ここで、
S(D)はD日における喘息スコア、
BR(D)は対象者基線対D日における睡眠中の平均呼吸数の上昇率(例えば、D日における呼吸数BRが基線の20%上の場合、BR(D)=20)、
C(D)はD日における咳発作の回数(深夜12時から午前6時までの間、若しくは他の期間における咳の回数)、又は、単位時間当たりの咳発作の率である。
【0089】
一実施形態において、算出された喘息スコアは、閾値(例えば、約75などの、約50〜約90の値)と比較され、スコアが閾値より低い場合は、被検対象者12又は医療従事者に何らかの措置が必要であることが警告される。
【0090】
本発明の一実施形態において、システム10は、上述の説明で定義したような臨床パラメータに基づいて喘息スコアを算出する。いくつかの適用例において、喘息スコアは次式を用いて算出される。
S(D)=100−k1×BR(D)−k2×C(D)・・・・・(式5)
ここで、
S(D)はD日における喘息スコア、
BR(D)は対象者基線対D日における睡眠中の平均呼吸数の上昇率(例えば、D日における呼吸数BRが基線の20%上の場合、BR(D)=20)、
C(D)はD日における咳発作の回数(深夜12時から午前6時までの間、若しくは他の期間における咳の回数)、又は、単位時間当たりの咳発作の率、
k1及びk2は呼吸数と咳パラメータの係数である。通常、k1及びk2は約0.7〜約1.3の範囲にある。
【0091】
一実施形態において、算出された喘息スコアは、閾値(例えば、約75などの、約50〜約90の値)と比較され、スコアが閾値より低い場合は、被検対象者12又は医療従事者に何らかの措置が必要であることが警告される。
【0092】
本発明の一実施形態において、システム10は、上述の説明で定義したような臨床パラメータに基づいて喘息スコアを算出する。いくつかの適用例において、喘息スコアは次式を用いて算出される。
S(D)=100−k1×BR(D)−k2×C(D)−k3×RS(D)
・・・・・(式6)
こので、
S(D)はD日における喘息スコア、
BR(D)は対象者基線対D日における睡眠中の平均呼吸数の上昇率(例えば、D日における呼吸数BRが基線の20%上の場合、BR(D)=20)、
C(D)はD日における咳発作の回数(一実施形態におけるこの回数は、深夜12時から午前6時までの間、他の期間における咳の回数、又は、単位時間当たりの咳発作回数)、
RS(D)はD日における不穏睡眠レベル(例えば、0−Y目盛りで通常Yは10〜30の場合は、一例として17、Yが最高の不穏睡眠レベルの場合は0が最低レベルになる)、
k1、k2及びk3は呼吸数と咳パラメータと不穏睡眠パラメータの係数である。通常、k1、k2及びk3は約0.6〜約1.5の範囲にある。
【0093】
一実施形態において、算出された喘息スコアは、閾値(例えば、約74などの、約60〜約80の値)と比較され、スコアが閾値より低い場合は、被検対象者12又は医療従事者に何らかの措置が必要であることが警告される。
【0094】
上述したように、睡眠中の対象者の動きには、他の関連しない身体運動だけでなく、規則的な呼吸関連運動と心拍関連運動とが含まれている。一般的に、呼吸関連運動は睡眠中の身体運動の主要な因子である。本発明の一実施形態において、パターン分析モジュール16は、運動データ取得モジュール20から受ける運動信号のうちの呼吸及び心拍に関係のない運動を表す部分をほぼ排除するように構成されている。いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16は、非呼吸関連運動及び非心拍関連運動に影響を受けた信号の部分を取り除く。呼吸関連運動及び心拍関連運動は周期的に行われるが、他の運動は、通常、不規則で予測不能である。いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16は、周波数領域のスペクトル分析又は時間領域の回帰分析を用いて、非呼吸関連運動及び非心拍関連運動を除去する。当業者であればこれらの分析技術を本発明に適用できることは容易に理解できよう。いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16は、線形予測や異常値分析などの統計的方法を用いており、信号から非呼吸関連運動及び非心拍関連運動を除去する。
【0095】
本発明の実施形態において、パターン分析モジュール16は、測定した呼吸数パターンと基線呼吸数パターンとを比較し、及び/又は、測定した心拍数パターンと基線心拍数パターンとを比較し、発作の発症を及び/又は発症中の発作の重症度を判定する。
【0096】
本発明の実施形態において、パターン分析モジュール16は、迫り来る臨床発作若しくは発症中の臨床発作に伴う咳発作を検出及び/又は診断評価するように構成された咳分析モジュール26を備えている。喘息における軽度の咳にはたいてい、臨床喘息発作の迫り来る発症を表す重要な発作前の早期指標が含まれている(例えば、非特許文献4参照)。鬱血性心不全(CHF)における咳は、心不全の悪化又は心血管不全の発症によって起こる肺内における体液鬱滞を早期に警告する働きがある。
【0097】
いくつかの適用例において、咳音は、背もたれ面の中、上、又は下のいずれかに設けた運動センサ30又は対象者の近傍に設けたマイクで検出され、特に、約50Hzから約8kHzの間の音響帯域、例えば、約100Hzから約1kHzの間でフィルタ処理される。又は、信号が2つ以上の周波数帯域にフィルタ処理され、運動データ取得モジュール20では、記録身体運動のために10Hzまでの領域の超低周波数のうちの少なくとも1つの周波数と、記録聴覚音のために約50Hzから約8kHzまでの間の高周波領域の少なくとも1つの他の周波数とが用いられる。いくつかの適用例において、モジュールは、約150Hzから約1kHzなどの狭音響帯域を用いる。
【0098】
本発明の一実施形態において、呼吸パターン分析モジュール22は、主に、頻呼吸、チェーン・ストークス呼吸(CSR)又は周期性呼吸などの夜間睡眠時のCHFを伴う異常呼吸パターンを検出するように構成されている。
【0099】
本発明の一実施形態において、呼吸パターン分析モジュール22は、肩息、末期呼吸、失調性呼吸、チェーン・ストークス呼吸又はビオー呼吸などの患者の状態悪化を表す異常呼吸パターンを検出するように構成されている。一実施形態において、システム10は、全体的な呼吸運動数のいかなる変化とも関係なく、呼吸運動の形態に関連するパターンを識別する。呼吸運動の形態のモニタリングは、非レート呼吸パターンをモニタすることにある。運動形態には、例えば、呼吸運動の特徴的部分間の時間、又は吸息か呼息の特徴勾配が含まれることもある。肩息は、平滑な正常呼吸運動とは対照的な激しい呼吸運動として判別できる。システム10は、例えば、正常呼吸運動中に測定された信号より遥かに高い速度変化(特徴勾配)を示す肩息運動信号を判別する(図7において肩息呼吸運動信号を表す線1261と、図6において正常呼吸運動信号を表す線1251とを対比できる)。例えば、呼吸パターンに似た激しい肩息を伴う呼吸における少ない呼吸数(呼吸3〜4回)の不規則性は失調性呼吸を示している。例えば、呼吸間のばらつき時間を演算することで不規則性が分析される。一実施形態において、システムは、こうした呼吸パターンの1つを判別した時点で警報を発する。
【0100】
胸腹非同期(TAA)として知られている二相性胸腹呼吸パターンは、気道閉塞又は他の呼吸困難を患っている患者によく見られる。また、TAAは奇異呼吸又は位相異常として扱われることもある。本発明の一実施形態を用いて実施した臨床研究において、実施形態及び臨床医によってTAAであると識別された数人の被検対象者は、その後に重度の呼吸困難に陥っている。本発明の一実施形態において、呼吸パターン分析モジュール22は、呼吸運動パターンで特徴付けられる患者の状態悪化を示す異常呼吸パターンを検出するように構成されており、呼吸周期パターンは、図13に示された1403部分の正常信号と比較して、2つの明確なピークを含む識別可能な2半周期によって特徴付けられる(図11及び図12における1401及び1402参照)。本発明の一実施形態を用いて実施して臨床試験において、この信号が患者の重大な状態悪化と相関し、いくつかの例では、患者は24〜72時間以内に死亡した。一実施形態において、システムは、かかるパターンを1〜120分(例:15分)より長い時間の間検出すると、警報を出す。一実施形態において、この運動パターンはTAAとして臨床医に示される。
【0101】
一実施形態において、次の3基準は、呼吸サイクルが明確な2つの半サイクルを備えることを決定するために用いられる。
1.2つのピーク間に、2つの最大値の平均より小さい閾値率より低い最小点の谷がある。この閾値は50%〜90%の範囲内である(例えば、80%)、
2.2つのピークの間隔は、全体のサイクル時間に比較して閾値率より大きい。この閾値は15%〜45%の範囲内である(例えば、30%)、
3.2つのピークの各々の前側の立ち上がり波形の勾配は互いに明確に異なる。2つの勾配の平均に比較した両者の差は閾値率より大きい。この閾値は30%〜80%の範囲内である(例えば、65%)。
【0102】
代替的又は付加的に、2つのピークの後側の傾斜信号の勾配についても、同様の計算が繰り返される。
【0103】
3つの基準を満たせば、呼吸サイクルがTAAサイクルであると識別される。1〜10分、例えば3分、の間、総呼吸サイクルからTAAと判定された呼吸サイクルの割合は閾値より上となり、これにより、システムはTAAと判定されたことを記録して臨床医に警告する。この閾値は、通常、30%〜80%、例えば60%、である。一実施形態において、上述の2の基準で計算した間隔が、呼吸サイクル時間の割合として算出され、360が乗算される。これは、TAAの実際の位相角を表し、TAA重症度の徴候として臨床医に表示される(180度に近いほどTAAがより深刻である)。よって、一実施形態において、システム10は、位相角の単一センサ非接触測定を行うツールとして機能を果たす。
【0104】
一実施形態において、呼吸数は連続的にモニタされる。被検対象者が呼吸運動グラフにおいて大きい勾配を示す肩息呼吸パターンを示している場合には、いくつかの呼吸数分析アルゴリズムはこれらパターンを実際の倍の数の呼吸数と間違って検出することがある。
【0105】
一実施形態において、システム10は、例えば15分のような比較的短い時間より少ない時間内に、呼吸数の2倍(例えば、平均呼吸数の1.8倍〜2.2倍)に近い呼吸数変化を識別した場合に警告する。例えば、患者の呼吸数における3時間の間の平均が12回/分であり、15分にわたる平均が24回/分に変化した場合に、システムは、呼吸数が急激に変化したこと又は2倍の測定値となる呼吸数パターンであることを臨床医に警告する。一実施形態において、システム10は、患者が大きな体運動(このような運動があったとすると、患者の症状悪化を示すものではないが呼吸数の重大な増加の原因になる)の量を同時に増加させていない際のみにかかる変化があった場合に警告する。
【0106】
睡眠時無呼吸症の患者は、持続的気道陽圧法(CPAP)のシステムで治療されることが多い。多くの場合、CPAP装置を最大限に利用するために呼吸数及び心拍数を検出することは有用である。本発明の一実施形態において、運動データ取得モジュール20によって(システム10によって測定する他の臨床パラメータと同じように)抽出される呼吸関連信号及び心拍関連信号は、CPAP装置の動作を最適化するために用いられる。
【0107】
本発明の一実施形態において、運動センサ30と運動データ取得モジュール20の一部又は全体は、対象者12内に埋め込むように構成された生体適合性のある単一の容器(又は複数の容器)内に収納することができる。埋め込み可能な素子は、RFなどの送信技術(例えば、ブルートゥース(登録商標)若しくはジグビープロトコルを用いた技術又は専有プロトコル)又は超音波を用いて、外部受信機に取得した信号を送信するように構成された無線送信機を備えている。変更態様においては、1つ以上の分析モジュール22、23、26、28、29若しくは31、及び/又はユーザーインターフェース24が、他の埋め込み可能な素子と同一の容器又はこれとは別個の容器内に収納して対象者12に埋め込むことができるように構成されている。さらなる変更態様においては、運動センサ30が対象者12に埋め込むように構成されており、運動データ取得モジュール20が対象者の外部に設けて無線又は有線のいずれかで運動センサ30と交信できるように構成されている。
【0108】
本発明の一実施形態において、システム10は、腹部38又は胸部39(図1)の近傍に配置した第1のセンサと、脚部40の近傍に配置した第2のセンサなどの複数の運動センサ30を備えている。パターン分析モジュール16は、腹部又は胸部下のセンサで検出した脈拍信号と脚部下のセンサで検出した脈拍信号との時間差を測定する。いくつかの適用例において、このモジュールは、例えば、約1回〜3回の心拍サイクルのように呼吸サイクル時間より少ない時間枠を用いて、心拍信号の相互相関処理を行うことで時間差を測定する。又は、いくつかの適用例において、モジュールは、心拍信号のピークを識別し、信号ピーク間の時間差を計算する。パターン分析モジュール16は、例えば米国特許第6599251号(Chen et al)に記載されている技術を変更するべきところは変更して、連続的な血圧変動信号を算出するために時間差を用いる。モジュール16は、全吸気/呼気周期にわたる血圧変動信号の振幅を計算し、計算した振幅を例えば10mmHgの閾値と又は基線値と比較する。この基線値は、対象者から予め測定して定めるか又は統計的平均で定めた値である。モジュール16は、閾値より大きい振幅を奇脈が顕れていると解釈する。代替的又は追加的に、このシステムは、振幅の表示及び/又は振幅の記録を行い、症状の変化を識別するために後に用いる特定の対象者の基線を形成する。
【0109】
場合によっては、心臓部位から四肢抹消までの心拍(脈波伝搬時間)に対する同じ患者の以前の測定値の平均遅延における増加を心臓機能の低下の徴候として用いる。
【0110】
本発明の一実施形態において、システム10は、上述した1つ以上のメカニカル運動センサ(例えば、圧電センサ)と、米国カリフォルニア州プレザントンのネルコア社が販売するOxiMax(登録商標)などのパルス酸素濃度計とを備えている。このシステムは、対象者の胸部領域下に設けたメカニカルセンサによる脈拍信号の検出値と、対象者の指に取り付けたパルス酸素濃度計による脈波信号の検出値との間の伝搬遅延を測定する。いくつかの適用例において、このシステムは、相関係数演算を用いて伝搬遅延を測定することができ、このシステムからユーザーインターフェース24への遅延情報の出力及び/又は遅延情報の記録を行う。加えて、上述したように、遅延の変化を血圧変化、心拍出量の変化、及び奇脈検出の評価に用いる。いくつかの適用例において、上述したように、この伝搬遅延を対象者のスコアの計算などに供する臨床パラメータの1つとして用いる。一実施形態において、脈波伝搬時間は、マットレス下に設置した一対の非接触センサを用いて検出される。かかる一実施形態における脈波伝播時間の測定は、四肢の運動を見ているため、指に取り付けたセンサによる測定よりも、即時的な影響を受けにくい。
【0111】
一実施形態において、システムは、血圧を算出するために上述の伝搬遅延を用いており、例として、血圧変化の測定に関してソルボヤ・H.、ミリラ・Rによる非特許文献17に記載された脈波伝播時間法を用いる。臨床医が絶対血圧(BP)値を断続的(例えば、4時間毎)に測定してシステムにBP測定値を入力した場合、絶対BP値を測定するために、連続的に算出した血圧の変化を校正することが可能となる。これは、自動血圧バンドを用いて自動化することが可能である。この技術の利点は、かかるシステムによって対象者の腕を4時間毎に圧持するのみで、連続的にBP測定が可能となることである。変更態様として、血圧バンドを用いることなく、対象者のBPが診療介入が必要な急激な変化に見舞われた場合に臨床医に警告することができる。いくつかの適用例において、システム10は、上述した身体運動を識別し、誤認警報としての身体運動と相関する伝播時間変化を識別する。
【0112】
図21(A)〜(C)は本発明の一実施形態によって被検対象者を測定して得た平均動脈圧(MAP)参照信号(図21(A))と、ECG信号−パルス酸素濃度計間の対応脈波伝播時間(PTT)(図21(B))と、非接触運動センサ−パルス酸素濃度計間の対応PTT(図21(C))とを示す概略図である。図21(B)及び(C)に示すように、およそ450〜650秒間におけるMAPの上昇は、明らかにPTTの減少を引き起こす。また、図21(B)及び(C)に示すように、650〜800秒間におけるMAPの減少も明らかにPTTの上昇を引き起こす。
【0113】
本願のいくつかの実施形態において、システムは、例えば、入院患者などのために医療介入が必要となる警告サインである収縮期血圧の低下のような、血圧の著しい変化を検出するとこれを識別して警報を発する。
【0114】
血圧測定、及び/又は脈波伝播時間方法論を用いた血圧変化の識別に関する従来技術では、複数のセンサを用いる必要があった。複数のセンサを使用すると、システムがさらに複雑かつ高価となり、場合によっては、それらセンサを患者又はその周囲に実際に取り付けることができなくなる。例えば、患者が椅子での座位をとる場合、複数のセンサシステムを椅子に実際に組み込むことが困難となる。一実施形態において、システム10は、脈波伝播時間の方法論を利用することで、単一のセンサのみを用いて血圧の測定及び/又は血圧変動の識別を行うことができる。特に(絶対的ではないが)この単一センサは非接触型である。
【0115】
既述したように、血圧(BP)変動は、体内の2つの参照点間の脈波伝播時間(PTT)を計算することによって測定することができる。BPが大きくなれば、血流もまた増加し、2つの参照点間のPTTは減少する。文献では、心電図(ECG)測定と光電脈波(PPG)測定とを用いて測定PTTを比較した参考資料がある。一実施形態においては、指に取り付けたPPGセンサと対象者の胸部下に位置づけた運動センサとの間でPTTを測定している。変更態様においては、対象者の胸部下に位置づけた運動センサと、例えば対象者の脚部など身体の他の部位に設けた運動センサとの間でPTTを測定している。PPGセンサを対象者の指に取り付けた場合、PTTはBPにおける生理的変化がなくても減少するので、対象者がPPGを指に付けた腕を上げるだけでも測定値に影響を受けることがある。いくつかの適用例において、腕と胸部との高さの違いの計測を容易にできる補助チューブが用いられる。胸部下と(例えば)脚部下とに設置された2つのメカニカルセンサで測定を行う場合、ベッドの背もたれの角度を変更することでかかる効果を得ることができる。都合のよいことに、連続的に測定又は調整でき、かつ、ベッドの背もたれ角度と対応できる高性能な電動式ベッドと一体化又は相互稼動する前述したような計測システムを用いることで、かかる測定を容易に実行することができる。変更態様においては、2つのセンサを、臀部/仙骨部位の下に1つ、足首部位に1つそれぞれ設置する。その場合、対象者がベッドに入っていれば著しい高さの差はほとんど生ぜず、従って追加の測定は不要となる。
【0116】
体内のメカニカルなパルス信号の進行速度は、通常、約4m/秒とされており、必要に応じて対象者毎に調整することができる。2つのメカニカルセンサ間の距離と体内を伝わる圧力波のパルス進行速度とを知ることでメカニカル信号の心拍ピークを見つけることができる。例えば、速度が4m/秒で距離が1mであれば、両センサのピーク間の近似差は200ミリ秒のはずである。
【0117】
一実施形態において、脈波伝播時間を算出するための2点は、単一のメカニカルセンサを用いても計算できる。このセンサは脚部位か、胸部から少し離れた、例えば、0.5mを超えて離れた他の部位に設けられる。第1の参照点は大動脈弁が開いた時点(弁ポイント)である(時には、大動脈及び肺という、2つの弁を示す2つの近接したピークが見られる)。脈拍パルスは音速、つまり、v>330m/秒でマットレスを通って伝搬する。このことは、マットレスの下のセンサによってほぼ即座に、つまり、弁が実際に開いてから6ミリ秒を越えない遅延をもって受信する効果のあることを意味している。第2の参照点は、距離が1mの場合に200ミリ秒の遅延をもって、圧力波がセンサ上方に位置する対象者の身体の点(例えば、センサが脚部下にある場合は脚部)を通ってセンサ(圧力ポイント)に到達した時に識別される。「弁ポイント」と「圧力ポイント」との時間差の変化は、脈波伝播時間を計算する際に用いられてBPに反映される。これらの計算を行うためには、心臓の位置とセンサの位置との概算距離を知る必要がある。一実施形態において、この距離は一定(例えば、1m)であり、このシステムを設定する臨床医は、心臓からこの距離の位置にセンサを設けるように指示される(例えば、患者の身長に応じた膝部位近辺)。他の実施形態においては、臨床医は、操作インターフェースによってこの距離を入力設定することができる。さらに、多種の実施形態において、かかるシステムは、BPの変化及び変化の方向性を判定する際に都合が良い。被検対象者は、ベッドで縦方向にはほとんど動かないので、かかる2点間の遅延時間の変化は血圧の変化である可能性が高い。一実施形態においては、単一のメカニカルセンサを対象者の身体に接触させる。
【0118】
一実施形態において「弁ポイント」と「圧力ポイント」とを判別するために下記の方法を採っている。
1.信号を2〜5Hz(例えば、3Hz)の高域フィルタを通過させ、心拍信号から呼吸関連データを取り除く、
2.信号を50〜150Hz(例えば、80Hz)のローパスフィルタを通過させ、信号から高周波ノイズを除去する、
3.全ての局所的な最大値及び最小値を位置付ける。他の方法として、局所的な極値点をゆっくり変化している極値点よりはむしろ急激な変化を重視している信号の一次導関数に位置付けられる、
4.心拍パターン分析モジュール23により(例えば、先立つ8秒間に)算出されるような対象者の最新の測定心拍数を用いて、信号を1心拍を表す時間区分に分割する(例えば、心拍数が120bpmなら時間区分長は0.5秒)、
5.与えられた時間区分複合波における最も急激な局所的極値点が2つの参照点、つまり、「弁ポイント」又は「圧力ポイント」のいずれかを表している。
6.胸部から遠隔センサの概算距離を用いて概算PTTを推定する。例えば、距離が1mで脈波伝搬時間が約4m/秒の場合、PTTは250ミリ秒になる。経験則として、10mmHgの血圧の変化が、おおよそ0.2m/秒だけ脈波伝搬速度を変化させると思われる。よって、心臓とセンサの間が1m離れている場合、BP変化について、10mmHgがおおよそ12ミリ秒のPTT変化を起こすと予想される。測定は連続的なので一つの計算から次の計算までのPTTが10ミリ秒を超えるほど変化するとは考えられない。このことは、極値間の適当な時間差を有する極値を求めることで、信号における正確な極値を判定する際に有用である。
7.上述した概算の時間差だけ隔てられた最も近接した整合極値を求める、
8.次の時間区分において連続する複数の「弁」ポイントと連続する複数の「圧力」ポイントとの差を計算することで両ポイントを検証する。これら時間区分は連続する各ポイントから1心拍時間離れているべきである。さらに、連続する区分における「弁ポイント」と「圧力ポイント」との時間差を計測する。この間隔は比較的一定に維持するべきである、
9.これら「弁」及び「圧力」ポイント間の差を測定する。これがPTTである。血圧変化を算出するために、得られたPTTが用いられる。
【0119】
図22(A)及び(B)は、本発明の一実施形態によって測定された弁ポイント及び圧力ポイントを示している。図22(A)は、本発明の一実施形態によって被検対象者を測定して得たECG信号(点線)と、胸部に設けた非接触運動センサからの対応信号(実線)を示している。図22(B)は、本発明の一実施形態によって図22(A)と同じECG信号(点線)と脚部に設けた非接触運動センサからの対応信号(実線)を示している。1491及び1495はQRS複合波のRピークであり、1493及び1496は対象者から測定したECG信号のT波のピークである。1492及び1497は本発明の一実施形態による「弁ポイント」として識別されたメカニカルな信号の極値である。1492及び1497は同時に近接した両センサで検出したものである。ピーク1494は対象者の脚部のセンサで検出する「圧力ポイント」である。1494及び1497の時間差(概ね250ミリ秒)はPTTである。
【0120】
上述した「単一のセンサ」による血圧の検出ということについて、本発明の範囲には、この計算に使用するいかなるセンサをも対象者の心臓の下方に配置することなく、(例えば)対象者の脚部下に配置した単一のセンサアセンブリを用いることも含まれる。ただし、センサアセンブリ自体は、1つ又は複数のセンサを備えているかもしれない。例えば、センサアセンブリは、対象者のほぼ心臓に向かう線に沿って配列した(例えば、ベッドの縦軸に沿って配列した)2つのセンサを備えているかもしれず、2つのセンサは、典型的には、10〜30cm、例えば25cm互いに離間している。伝搬脈波は、2つのセンサによりそれぞれ異なった時間に検出される。弁ポイント及び圧力ポイントを検出する上述した技術を用いない場合、一般的に、2つのセンサを有する小型センサアセンブリでは、PTTを正確に測定するために十分な時間分解能を生成できなかった。これに対して、弁ポイント及び圧力ポイントを識別するための上述した技術を用いることにより、センサアセンブリの2つのセンサ間の既知の軸方向のオフセットが、弁ポイントの識別と組み合わせた際に、PTT測定における誤差を低減させることができる。
【0121】
場合によっては、パルス酸素濃度計は、可視的警告なしに、誤った測定値を提供するかもしれない。これは、例えばかん流不良のために起こる。本発明の一実施形態において、システム10は、上述したパルス酸素濃度計とメカニカルセンサとを備えている。システム10は、パルス酸素濃度計の信号とメカニカルセンサの信号との両方を用いて対象者の心拍数を算出し、測定した心拍数が正しいことを検証するために、算出した2つの心拍数を比較する。不一致があれば、システムは、医療従事者に警告する。
【0122】
パルス酸素濃度計が検出した心拍信号は、対象者の呼吸サイクルで変調される。本発明の一実施形態において、システム10は、パルス酸素濃度計で検出した呼吸サイクル中の心拍信号の変調レベルを用いて、被検対象者が奇脈に見舞われているかどうかを判断する。いくつかの適用例において、この変調を確認するために、システムは、上述したメカニカルセンサを用いて呼吸信号を測定する。システムは、呼吸サイクルの周波数及びタイミングを見つけ、それに応じて、呼吸サイクルによる心拍信号の変調の深度を測定するべく、この信号を分析する。いくつかの適用例において、システムは、特許文献4に開示されているものと類似した技術を、心拍数に代えて呼吸数を仮想誘発因子として用いることを除いて、また、変更すべきところは変更して使用する。
【0123】
一実施形態において、システム10は、パルス酸素濃度計の測定におけるSN比を向上させるために、上述した非接触メカニカルセンサで検出される心拍数を使用する。例えば、特許文献4に開示されているものと類似した方法で、心拍数を仮想誘発因子として使用する。変更態様においては、パルス酸素濃度計の測定におけるSN比を向上させるために、非接触メカニカルセンサによって測定される心拍信号の正確なタイミングを心拍同期化処理の始動に用いる。
【0124】
一実施形態において、システム10は、中枢性睡眠時無呼吸症(CSA)の発現を認識するために、呼吸及び脈動(又は心拍)をモニタするように構成されている。
【0125】
一実施形態において、システム10は、陽性気道圧(PAP)装置を備えている。対象者の就眠したことを検出した際に、システムは、PAP装置を作動させる。変更態様においては、PAP装置の始動によって対象者の就眠を阻害する可能性があるので、システムは、その就眠を容易にできるように、安静呼吸を確認して所定時間経過後にPAP装置を作動させる。いくつかの適用例において、対象者の就眠を妨げることなく、対象者が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に陥らないようにするため、この実施形態の技術が使用される。
【0126】
本発明の一実施形態において、システム10は、睡眠中に、対象者12の心拍を連続的にモニタする。このシステムは、心拍の短期の実質的増加を識別して記録する。例えば、パターン分析モジュール16は、毎分の平均心拍数と直前の10分間の平均心拍数とを計算する。システムは、現在の毎分平均心拍数が直前の10分間の平均心拍数より少なくとも数パーセント(例えば、約5%〜約30%、特に約10%)を超えたことを検出した場合に、症状が発現したと判断する。かかる発症の数と重症度とを記録し、上述したように、かかる症状を追加の臨床パラメータとして使用する。場合によっては、かかる症状の発現は、血中酸素飽和レベルの低下と密接に相関する。変更態様においては、かかる発症の数と重症度とをCOPD対象者のために記録し、顕著な変化を対象者の臨床症状の変化の兆候として用いる。いくつかの適用例において、システム10は、1夜以上の夜を通した対象者の心拍のピーク又はボトムの特徴の基線を確立し、例えば、睡眠期間中の心拍ピークの高さ、回数又は分布などの心拍ピークの特徴の明確な変化を検出した際に、被験対象者又は医療従事者に警告する。一実施形態において、かかるピークをさらに分析し、ピークが大きな身体運動と同時か、直後に起こるかどうかに従って分類する。一実施形態において、先に大きな身体運動を行っていない場合のみ、臨床医に報告する。
【0127】
本発明の一実施形態において、システム10は、心拍数又は呼吸数などの臨床パラメータ用の特定の範囲の数値を受け取るように構成されている。運動センサ30によって感知した運動信号に応答して、システム10は、対象者の臨床パラメータの値を、例えば少なくとも30秒(例えば、少なくとも60秒又は少なくとも1時間)の期間中、10秒毎に少なくとも1回計算する。かかる期間中に計算した数値が、時間の50%以上にわたって、特定の範囲外となると判明した場合のみ、システムは、警報を発する。いくつかの適用例において、肺炎、COPD、CHFなどの症例、又は、無呼吸やSIDS以外の症例を患う被検対象者をモニタするために、この技術が用いられる。
【0128】
本発明の一実施形態において、システム10は、心拍数又は呼吸数などの臨床パラメータ用の特定の範囲の数値を受け取るように構成されている。運動センサ30によって感知した運動信号に応答して、システム10は、対象者の臨床パラメータのそれぞれの未処理値を、例えば少なくとも30秒(例えば、少なくとも60秒又は少なくとも1時間)の期間中、10秒毎に少なくとも1回計算する。システムは、未処理値の平均値若しくは中央値などの未処理値に基づく代表値、又は未処理値に基づく他の代表値(例えば、範囲外の未処理値の切捨てを含む)を計算する。この代表値が特定の範囲外となると判明した場合のみ、システムは、警報を発する。
【0129】
本発明の一実施形態において、システム10は、心拍数又は呼吸数などの臨床パラメータの基線値の指標を受け取るように構成されている。運動センサ30によって感知した運動信号に応答して、システム10は、対象者の臨床パラメータの値を、例えば少なくとも10秒(例えば、少なくとも30秒、少なくとも60秒又は少なくとも1時間)の期間中、少なくとも3回、例えば少なくとも10回、計算する。かかる期間中に計算した数値が、時間の50%以上にわたって、基線値とは異なる少なくとも閾値割合であると判明した場合のみ、システムは、警報を発する。いくつかの適用例において、肺炎、COPD、CHFなどの症例、又は、無呼吸やSIDS以外の症例を患う被検対象者をモニタするために、この技術が用いられる。
【0130】
本発明の一実施形態において、システム10は、心拍数又は呼吸数などの臨床パラメータの基線値の指標を受け取るように構成されている。運動センサ30によって感知した運動信号に応答して、システム10は、対象者の臨床パラメータのそれぞれの未処理値を、例えば少なくとも10秒(例えば、少なくとも30秒、少なくとも60秒又は少なくとも1時間)の期間中、少なくとも3回計算する。システムは、未処理値の平均値若しくは中央値などの未処理値に基づく代表値、又は未処理値に基づく他の代表値(例えば、範囲外の未処理値の切捨てを含む)を計算する。この代表値が基線値とは異なる少なくとも閾値割合であると判明した場合のみ、システムは、警報を発する。
【0131】
細胞毒性を有する化学療法を受けている対象者はCHF及び/又は肺水腫を患う高いリスクを持っている。本発明の一実施形態において、システム10は、細胞毒性を有する化学療法による治療中及び治療後に被検対象者をモニタし、CHF又は肺水腫の臨床兆候を検知した際に対象者又は医療従事者に警告するために使用される。
【0132】
本発明の一実施形態において、システム10は、腎不全を患う対象者をモニタするために用いられる。システム10は、患者が人工透析治療若しくは他の医療介入を要する生命徴候(例えば、心拍数や呼吸数の上昇、若しくは睡眠の質の低下)、又は(例えば、深夜から午前6時の時間帯にわたって大きな身体運動の頻度及び強さで表される)他の測定パラメータの変化を判別する。
【0133】
肺高血圧症は、肺収縮又は僧帽弁狭窄による肺動脈の血圧が上昇する特徴を有している。この症状は肺の血流に悪影響を及ぼし、心臓の活動に負担をもたらす。本発明の一実施形態において、システム10は、肺高血圧症の被検対象者をモニタし、これらの症状の悪化徴候を識別するために使用される。システム10は、臨床パラメータをモニタし、例えば、呼吸数又は心拍数の上昇などの症状悪化の徴候を識別する。
【0134】
一実施形態において、システム10は、呼吸数、心拍数、大きな身体運動、及び対象者が実際に痛みに苦しむ(例えば、疼痛治療で病院に収容されるような)苦痛を対象者に与えがちな振戦などの変化を検出する。いくつかの適用例において、システムは、痛みを検出すると、適薬を自動投与して痛みを緩和するために薬剤投与装置84(図2)を作動させる。
【0135】
血中酸素飽和レベルは患者の状態の重要な指標となる。しかしながら、場合によっては、血中酸素飽和の低下は、呼吸、心拍及び運動のパターンにおける変化に遅れた比較的遅い指標である。例えば、対象者が酸素補給を受けている際の血中酸素飽和低下は、呼吸不全の遅い指標であることが多い。再度図2を参照すると、本発明の一実施形態において、システム10は、血中酸素モニタ86(例えば、パルス酸素濃度計)を備えている。システム10は、血中酸素モニタ86を用いた対象者の血中酸素濃度をモニタしながら、対象者の呼吸パターン、対象者の心拍パターン、又は対象者の呼吸運動パターン(各呼吸の深さを含む)(又は、これらパターンの2つ若しくはそれ以上の組み合わせ)をモニタする。このシステムは、血中酸素濃度の差し迫った変化に関連する1つ以上の特徴パターンを識別する学習技術を用いている。血中酸素濃度の変化に先行する学習した特徴パターンの少なくとも1つを検出した際に、システム10は、被検対象者又は医療従事者に警告する。このように、システムは、血中酸素濃度の変化を早期警告するシステムとしての機能を有する。オプションとして、学習を行わないとしても、システムは、血中酸素濃度計だけを用いた場合より血中酸素変化の警報を早期に発するために、血中酸素モニタ86と組み合わせたパターンモニタ技術を用いる。いくつかの適用例において、システムは、血中酸素濃度の差し迫った変化を連続的にモニタしていない時に、特徴的な呼吸パターン又は心拍パターンを学習するだけのために血中酸素モニタ86を用いる。
【0136】
いくつかの適用例において、システムは、血中酸素濃度の急激な悪化の可能性が高い呼吸数の変化と呼吸パターンの変化とを読み取る。例えば、休息状態の患者の浅い呼吸又はTAAと連動する呼吸数増加は、そうした徴候を示すことがある。それらの変化を伴う心拍数増加は、酸素飽和度の減少の可能性が高い付加的な指標としての役割りがある。
【0137】
本発明の一実施形態において、システム10は、血中酸素モニタ86を用いて測定した血中酸素に関する情報と運動センサ30を用いて測定した呼吸数及び/又は心拍数に関する情報とを組み合わせて複合臨床スコアを生成する。このスコアが閾値とクロスした場合、システムは、対象者に呼吸困難の危険性があることを警報する。いくつかの適用例において、システム10は、不規則呼吸の臨床パラメータも計算する。いくつかの適用例において、システムは、基線時間帯の間(例えば、約15〜45分程度の1時間より短い時間か、又は1時間より長い時間)にわたって、各測定パラメータについて対象者の基線を計算する。このシステムは、例えば、次式を用いて臨床スコアを計算する。
S=5(100−Ox)−k1×DeltaRR−k2×DeltaHR
+k3×RESPIrreg・・・・・(式7)
ここで、
Sは臨床スコア、
Oxは、血中酸素飽和濃度率、
DeltaRRは、基線に対する呼吸数の変化率、
DeltaHRは、基線に対する心拍数の変化率、
RESPIrregは、基線に対する不規則呼吸の変化率、
k1、k2、k3は、呼吸数パラメータと心拍数パラメータの係数である。通常、k1、k2、k3は約0.6〜約1.4の範囲にある。
【0138】
場合によっては、特に心拍が比較的遅い場合、呼吸数の高調波が心臓経路のスペクトルに現れることがあり、これは心拍測定に影響する。本発明の一実施形態において、システム10は、(心拍数の基本周波数と同様に)呼吸高調波成分の大部分を排除するために、例えば、約2Hz〜約10Hzの通過帯域のバンドパスフィルタを用いている。結果的に得られる信号のフーリエ解析において、心拍数の基本周波数は、もはや最高ピークではなくなるが、心拍数信号の高調波成分には、なおもピークが存在する。心拍パターン分析モジュール23は、これらピークを識別し、連続するピーク間の距離から心拍数を算出する。
【0139】
他の実施形態において、システム10は、心拍数を振幅復調法を用いて計算する。この方法では、大部分の呼吸高調波成分のみならず基本心拍周波数をも排除するバンドパスフィルタを用いている。例えば、バンドパスフィルタを、約2Hz〜約10Hzの帯域通過幅に調整することができる。フィルタ処理した信号の絶対値を計算し、適当なカットオフ周波数(例えば、約3Hz)のローパスフィルタを信号の計算した絶対値に適用する。システム10は、その後、パワースペクトルを計算し、心拍に対応する主ピークを識別する。
【0140】
[振戦測定]
振戦の測定は、多数の臨床的利用につながる。1つの適用例として、糖尿病患者をモニタして低血糖症を確認することがある。本発明の一実施形態において、システム10は、心拍数及び呼吸数に関係する信号を特定する。システムは、信号全体から心拍数信号と呼吸数信号とを取り除く。不穏症状のない領域におけるその結果としての信号は上述の分析用の振戦信号と見なせる。いくつかの適用例において、振戦信号のエネルギが呼吸信号及び/又は心拍信号の大きさで正規化される。
【0141】
特に、振戦関連の身体振動は、約3〜約18Hzの周波数帯域で発生する。本発明の一実施形態において、運動データ取得モジュール20及びパターン分析モジュール16は、これらの周波数におけるデータをデジタル化し分析するように構成されている。システムは、かかる周波数範囲で測定したエネルギの著しい変化は振戦レベルの変化が原因であり、信号スペクトルの変化は振戦スペクトルの変化が原因であると考える。
【0142】
一実施形態において、システム10は、呼吸信号及び心拍信号の中断を機械的センサ30によって判別する。他の標準的モニタ技術、例えば、ECGでは、死後になお心臓が若干の電気的活動を見せてECGモニタが信号として誤認するためにかかる判断を誤ることが多い。一実施形態において、システム10は、呼吸信号及び心拍信号の中断を判別する。一実施形態において、機械的センサ30を用いた測定は、身体を大きく運動させたり、話したり、又は他の何かの活動をすることによる大きな信号(呼吸及び心拍関連信号と比較して)で特徴付けることができる。これらの場合、心拍信号及び呼吸信号が検出されなくなったからと言って心臓死とは限らない。一実施形態において、システム10は、心臓死を検出する付加的基準を設定している。心拍及び呼吸関連運動信号が消えた(又は非常に弱くなった)場合、振戦信号を他のいかなる信号よりも著しく大きく検出することができる。振戦信号があるが心拍及び呼吸関連運動がなければ、システム10は、心臓死として扱う。一実施形態において、検出した機械的信号の周波数分析が実行される。例えば、短い時間枠(心臓死を迅速に判定するために30秒を超えない)が用いられる。システムは、3〜7Hzの周波数における振戦関連ピークがパワースペクトルに現れているかどうかを判定する。かかるピークは、(呼吸関連運動及びその高調波成分によって特徴的に生じるような)正弦波信号の特性ではない広いピークとして、パワースペクトル内で認識される。呼吸及び心拍関連運動信号が現れる0.05Hz〜3.0Hzの周波数に見られるエネルギより著しく大きいピークを確認すると、システム10は、振戦関連信号が呼吸又は心拍関連信号より大きいと判定し、医療専門家に適切な警報を発する。図5は対象者の死に続く短時間の臨床試験においてセンサ30で検出した信号を示しており、線1210はシステム10が分析した時間領域における信号であり、線1211はシステム10が分析した周波数領域における信号である。線1211は、死後振戦に関わるピークであって、呼吸及び心拍関連運動がなくなった後のスペクトルにおいて他の信号より大きい。一実施形態において、システム10は、対象者12の大きい身体運動を識別するように構成されている。大きい身体運動は、呼吸関連身体運動の振幅に比べて相当大きい(例えば、少なくとも5倍大きい)振幅を有し、及び/又は呼吸運動の振幅に比べて大きい周波数成分(約1Hzより大きい周波数成分)を有すると定義される。いくつかの適用例において、システムは、相対及び絶対運動時間と振幅パラメータとを機械的信号から抽出する。運動に先立つ信号は規則的な呼吸(対象者がベッドにいる時)か、システム雑音(対象者がベットに入る時)のどちらかに対応する。大きい身体運動中の信号パターンは、規則的呼吸の振幅より5〜100倍の範囲の大きな振幅によって特徴付けられ、正の最大値から負の最小値に急変する信号に特徴付けられる。規則的な呼吸又はシステム雑音から運動パターンへの過渡期を含む、初期の大きい身体運動段階は、通常、約0.5秒の持続時間を有している。大きい身体運動事象の代表的な持続時間には、10〜20秒の幅がある。初期段階の動特性は、1秒間における信号の最大振幅への変化によって特徴付けられる。大きい身体運動の初期段階における振幅の増加は、主に、規則的な呼吸パターンに対応する最大値より10〜100倍大きい範囲にある。
【0143】
本発明の一実施形態において、システム10は、初期運動段階を検出することで大きい身体運動事象の始点を識別し、運動段階が完了することで運動事象の終点を識別する。いくつかの適用例において、システムは、スライディングオーバーラッピング時間枠を評価し、下記の比の少なくとも一方か、場合によっては、下記の比の両方によって特徴付けられる時間枠内で起こるような初期の運動段階を判定することによって実時間信号の分析を実行する。
●閾値より小さい信号対雑音比(SN比)、及び
●代表的呼吸信号によって特徴付けられる時間枠(例えば、呼吸信号を検出した最近の時間枠)内の、閾値より大きい信号標準偏差(STD)に対する、時間枠内の信号STDの比。
【0144】
SN比を算出するために、システムは、主に、パワースペクトルを計算し、(a)呼吸範囲(例えば、約0.1〜約1Hz)における特定周波数間隔のエネルギの(b)呼吸範囲を除いた全体のスペクトルにおける雑音エネルギ、に対する比率に等しいSN比を設定する。即ち、SN比を計算するために、(a)の値を(b)の値で除算する。周波数間隔は、このシステムによって検出された呼吸数の範囲に相似する。システムは、主に、各時間枠が少なくとも1呼吸サイクル(例えば、呼吸数が12回/分であれば5秒)を含むような時間枠サイズを指定する。いくつかの適用例において、システムが順応的に時間枠サイズを設定するが、他の適用例において、システムは、許容最小呼吸数によって時間枠サイズを固定する。
【0145】
代替的に、システムは、時間枠を約0.25から約0.75秒の期間の小さい時間枠に(時間のオーバーラッピングの有無に拘らず)分割して大きい身体運動の初期段階の検出を行う。各時間枠について、システムは、時間枠内の信号分散に基づく一組のパラメータを算出する。いくつかの適用例において、システムは、時間枠内のサンプル数の平方根によって正規化した、逐次サンプルの差の複数対の絶対値の和に等しい分散を設定する。システムは、分散パラメータを閾値と比較し、分散パラメータが閾値より大きければ、時間枠に大きい身体運動が含まれていると判定する。
【0146】
一実施形態において、システム10は、被検対象者12がベッドへ入ること及び/又はベッドから出ることを検出するように構成されている。システムは、大きい身体運動の後に連続する運動を表す信号を検出した際はベッドに入ったと判定し、大きい身体運動の後に運動信号が途絶えた際はベッドから出たと判定する。いくつかの適用例において、センサ30は、これに結合した単一の半剛性板材と、振動センサと、対象者の身体がセンサ30に与える重さを検出するように構成された2つの歪み計とを備えている。
【0147】
一実施形態において、システム10は、対象者12がベッドを離れ、3分〜2時間の特定時間、例えば、10分間より長い時間に戻らなければ、警報を発するように構成されている。これは、一日の特定時間、例えば、夜間に、手動又は自動で対象者に対して作動させることができる。これは、ベッドに自力で出入りするが転倒の危険性がある患者をモニタするのに有用である。看護師にとっては、患者がベッドから離れるたびに警報を受けなくともよいが、患者がベッドを離れて10分間戻らなければ、患者が倒れて介助を求めていたり、又は患者が病院や養護施設で同伴者なしで徘徊していることを意味するので、警報を受けることが望ましい。例えば、看護チームが少人数で、しかも、患者が短時間だけベッドを離れることを除いて患者が四六時中ほとんどずっとベッドで寝ていると想定できる時は、看護師はこのシステムを夜間のみ作動させておくことを望むかもしれない。この「長時間離床警報」機能は、医療行為を必要とするような異常事態として看護チームに効果的に注意を促す警報の過剰発信、即ち「警報過多」を軽減するのに有用である。
【0148】
一実施形態において、システム10は、心拍数と、呼吸数及び運動レベルなどの追加の生理的パラメータとをモニタする。1分から6時間ほどのかなりの期間(例えば、15分)を超えて呼吸数が測定されて良好な信号が得られた場合、及び/又は、大きい身体運動が検出されず、上述した方法により心拍数が常時測定されない場合は、不安定な心拍、例えば、心房細動などの徴候とも考えられる。そこで、システム10は、不安定な心臓状態の警報を発し、本発明の一部実施形態では、さらに、患者をECG装置に接続することなどの提言を臨床医に付加的に表示する。
【0149】
幾人かの対象者について、不整脈の徴候の可能性がある心拍不安定を識別することは有用である。場合によっては、患者の運動又は興奮によって起こるような心拍数変動のあらゆる事態について、臨床医に警告することは、許容し難いほどの偽警報をもたらすかもしれない。一実施形態において、システム10は、心拍数と呼吸数とをモニタする。1分から1時間ほどのかなりの期間(例えば、15分)を超えて呼吸数が安定した場合(例えば、呼吸数測定値の標準偏差がこの期間中の平均値の5%より少ない場合)、及び大きな身体運動が検出されず、心拍数に大きい変動が見られた場合(例えば、心拍数測定値の標準偏差がこの期間中の平均値の8%より多く、心拍数の減少又は増加がない場合)は、不安定心拍、例えば、心房細動の徴候の可能性がある。そこで、システム10は、不安定な心臓状態の警報を発し、本発明の一部実施形態では、さらに、患者をECG装置に接続することなどの提言を臨床医に付加的に表示する。
【0150】
本発明の一実施形態において、システム10は、機械的信号を圧電センサに最適に送り、従ってセンサ検出部の一部となるよう設計されたマットレス自体を含んでいる。例えば、一実施形態において、かかるセンサを、キネティック社製造の「AtmosAir9000」などの機能的な非電動マットレスと一体化されている。本発明の一部実施形態において、マットレスに接触する対象者の身体面領域を最大にするマットレスの自動調整技術は、システムで検出される信号を向上させる。
【0151】
一実施形態において、システム10は、担架での搬送中の対象者をモニタするために用いることができる。センサは、担架の布地内に埋め込まれており、搬送中に対象者を連続的にモニタする。システム10は、臨床医の手を煩わせたり対象者の応諾を得ることなく対象者の状態急変を検出して警報を発する。
【0152】
[急変検出]
本発明の一実施形態において、システム10は、本明細書で参考として包括し本願権利者に譲渡された米国特許出願第11/782750号に開示の技術を用いるなどして、外科病棟又は内科病棟など病院内で少なくとも一人の対象者の容態変化を識別するように構成されている。この変化は、通常、緊急医療介入が必要な容態悪化を含んでいる。システム10は、主に、対象者若しくは対象者の着衣に接触したり又は視認することなく、対象者の運動を制限することなく、並びに、看護スタッフや他の医療従事者を煩わせることなくかかる変化を認識する。例えば、対象者の呼吸数が8回/分以下に低下した場合は、呼吸障害の徴候とも考えられ、システムは、看護師に警告する。いくつかの適用例において、システムは、臨床発作の発現を予測し、警報を発するように構成されている。
【0153】
いくつかの適用例において、システムは、病院における対象者がベッドなどの所定場所に入ると自動的に患者をモニタする。特に、看護師又は他の医療従事者の労を要せず、また、対象者にベッドにいる以外に要求することはない。通常、運動センサ30は非接触型(即ち、対象者又はその着衣に接触しない)であり、ほぼ連続的に作動する。対象者がベッドに入ると、センサは、対象者が起こす振動又は他の運動を検出し、モニタリングを始める。代替的又は付加的に、システムは、上述したベッド入りを検出する技術を用いる。システムは、医療介入を必要とするいかなる容態変化について臨床医に警告する。システムは、例えば、看護師、即応チーム員、又は医療従事者などに無線で、例えば、ポケットベルなどの無線通信機、又は病院にある別の呼出しシステムを用いて、警報を送る。いくつかの適用例において、かかる通報を受けると無線通信機は、対象者の名前若しくは番号、部屋番号、及び/又は警報の種類を含み自動的に発生した音声情報を例えば含む音響警報を鳴らす。これにより、臨床医は、ポケットベルを操作することなく、警報を受けて行動し、及び/又は状況を見極めることができる(臨床医の繁忙時には役に立つ)。
【0154】
いくつかの適用例において、対象者がベッドに入ると、システム10は、最初に、警報の予め設定した閾値を用いる。例えば1時間である時間枠を過ぎると、システムは、例えば、その時間枠内の平均呼吸数などの参照基線を設定する。基線が設定されると、その基線に対する臨床パラメータの変化(例えば、急変)が判定された際に、システムは臨床医に警告する。例えば、15分の時間枠内で臨床パラメータ率において35%の変化が認められた際に、システムは警報を発するかもしれない。
【0155】
いくつかの適用例において、システムは、(1)臨床パラメータの現在値、(2)基線に対する臨床パラメータの変化、及び(3)例えば約10〜20分などのような約2〜約180分の時間枠における比較的短時間の臨床パラメータの変化率からなるグループから選ばれた少なくとも1つの臨床パラメータに応答して警報を発するか否かを決定する。いくつかの適用例において、システムは、これらパラメータの2つ以上を組み合わせたスコアを用いる。例えば、このスコアには2つ以上のパラメータの加重平均が含まれる。例えば、
スコア=K×Param+J×DeltaParam+
L×DeltaParamRate・・・・・(式19)
ここで、
K、J、及びLは係数(例えば、それぞれ1、0.2、及び0.4に等しい)、
Paramは臨床パラメータの現在値(例えば、呼吸数又は心拍数)、
DeltaParamはパラメータと対象者基線値との差(例えば、パーセントで表現)、
DeltaParamRateは現在時刻とこれに先立つ時間枠とのパラメータ割合の変化(例えば、約15分間などの約10〜約20分の時間枠)である。
通常、「Param」は測定単位(例えば、1分当たりの呼吸数、又は、1分当たりの心拍数)であるが、「DeltaParam」と「DeltaParamRate」とは単位がない。いくつかの適用例において、「Param」は、測定値を基線値で除算し、例えば、100などの定数を乗じて定数正規化される。例えば、(「Param」を正規化した場合)呼吸数のモニタリングのためのスコアの上下閾値を、65及び135にそれぞれ設定する。スコアが閾値内にない場合は、システムで警報を発する。本発明の一実施形態において、センサはベッドのマットレス内部に埋め込まれ、これによって余分な部品が見えないようにベッドに取り付けられる。
【0156】
直前に開示した実施形態を含めた本発明の実施形態において、一般的に、アラーム音は、特にナースコールシステムを作動させて病院中に鳴り渡るようなアラーム音は、最小限にすることが望ましい。一実施形態において、警報を発する場合、システム10は、最初に、例えば、30秒間という短時間の間、対象者の部屋で局所的にアラームを鳴らす。センサ30のユーザーインターフェース24は、部屋で臨床医がアラームを無効にできる、例えば、ボタンなどの無効制御手段が備えられており、これによって、病棟全体にアラームが鳴るのを防止できる。上述した短時間を過ぎても、臨床医が局所アラームを無効にしなければ、全体の警報が作動する。
【0157】
いくつかの適用例において、センサ30は、対象者のベッド近傍の椅子などの対象者の場所に取り付けられる。
【0158】
いくつかの適用例において、システムは、例えば1時間などの特定の時間にわたってベッドが空になっていることを検出した際、これは対象者がベッドを離れて新たな対象者がベッドに入ったことを意味する可能性があるので、基線を削除する。
【0159】
本発明の一実施形態において、システム10は、排尿センサ、温度センサ(有線式若しくは無線式)及び血圧センサのうちの1つ以上のセンサを備えている。
【0160】
一実施形態において、システム10は、対象者をモニタし、容態の悪化を検出すると警報を発するために用いられる。いくつかの適用例において、パターン分析モジュール16には、肺塞栓、低血糖症、及びアルコール離脱などの特異的悪化のパターンに関する情報が入力される。臨床医は、対象者の危険性のある症状のタイプを選択する。システムは、選択された症状に適した設定パラメータを調べてこれらの症状に合う警告を作成する。例えば、頻拍、心悸高進、振戦、興奮睡眠及び発作などはアルコール離脱の徴候であり、振戦及び頻拍は高血糖症の徴候であり、頻呼吸、頻拍及び咳は肺塞栓症の徴候である。システムは、臨床医が選択した症状に合う病気併発をチェックして、いずれかの併発症状を判定して警報を発する。この技術は、臨床医に効果的な早期警報を提供し、特定の対象者に対して全く適合しない症例(例えば、糖尿病を患っていない対象者には低血糖性反応はあり得ず、また、DVTの既知の危険性がない対象者には肺塞栓症はあり得ない)に対する誤警報を低減することができる。
【0161】
ほとんどの入院患者について、長時間続けてベッドで寝ているのを避けることが推奨される。本発明の一実施形態において、システム10は、対象者が連続してどれくらい長くベッドで寝ているのかを測定する。システムは、データを記録し、その時間長が例えば12時間である閾値、又は臨床医が設定した値を越えると、任意の方法で臨床医に警報を発する。
【0162】
本発明の一実施形態において、センサ30は、ベッドのマットレスに一体に組み込まれている。
【0163】
再度図2を参照すると、本発明の一実施形態において、システム10は、非接触型機械センサ(センサ30)と音響センサ82とにより、病院にいる対象者をモニタする。システムは、対象者に係わる運動信号に相関する音響信号を識別する。システムは、例えば、鼾や喘鳴を識別し、臨床医に警告を発する。いくつかの適用例において、システムは、振動信号と音響信号との合成信号を検出することで対象者の会話を識別する。システムは、対象者が会話をしている間に、会話に係わる身体運動を呼吸又は心拍データと誤認しないように、例えば、データの収集されない空白期間を設定するなどの方法で心拍及び呼吸検出アルゴリズムを構成する。
【0164】
褥瘡の危険性がある対象者は、ベッドと対象者の身体との接触点を変化させるよう意図された褥瘡防止用変動圧力型マットレスを利用することが多い。本発明の一実施形態において、圧力型マットレスが位置を変化させるたびに、システム10は、変動圧力型マットレスによって生成される機械的信号(例えば、振動)を検出し、この振動を呼吸信号又は心拍信号として誤認しないように検出アルゴリズムに振動を取り入れる。変更態様において、システム10は、圧力型マットレスのシステムの特徴的振動の性状を学習し、振動を無視するためにこの振動が起こる毎に、パターン分析モジュール16によって信号を識別する。他の変更態様において、システム10が圧力型マットレスの特徴的振動を識別すると、データの収集されない空白期間を作動させる。
【0165】
本発明の一実施形態において、システム10は、検出した各臨床パラメータの信頼性のレベルを算出する。例えば、呼吸数に係わる信頼性のレベルは、周波数スペクトルの基線雑音レベルに対する呼吸数に関連するピークの周波数領域における信号対雑音比を算出することで求められる。システムは、誤認警報を最小限にするために信頼性のレベルを用いている。従って、例えば、呼吸数が警報に設定した閾値を越えるが信頼性のレベルが十分に高くない場合は、アラームを鳴らす前に、引き続いて行う(例えば、30秒後)計測結果を待つ。
【0166】
本発明の一実施形態において、システム10は、信号の振幅変化を識別することにより、単一のセンサのみを用いて対象者の姿勢の変化を判定する。
【0167】
本発明の一実施形態において、システム10は、バンドパスフィルタバンクを用いた復調処理を利用してスペクトルの高周波成分から心拍を検出する。例えば、かかるフィルタバンクは、3Hzから12Hzまでの帯域フィルタが含まれており、各フィルタは、帯域が1Hzであって、他のフィルタと0.5Hzのオーバーラップを有している。アルゴリズムは心拍ピークにおいて最も高い信号対雑音比(SN比)を持つフィルタを選び、システムは、対象者が位置を変えるまで、又は大きい身体運動を検出するまで、このフィルタを用いる。(本願発明者らが実施した臨床試験において、異なる位置における同一の対象者に対して、最適なフィルタは、4〜5Hzの変化ができることを見出した。)いくつかの適用例において、心拍ピークのSNRは、ピークのいかなる次数の高調波成分も含まないピーク近傍のスペクトル振幅によって除算したピークの大きさとして定義される。例えば、心拍ピーク周波数がfで、周波数fにおけるスペクトルの振幅がH(f)であれば、
【数4】

・・・・・(式8)
ここで、
平均(H(a:b))はH(f)の平均値、
fはaからbの範囲にある。
【0168】
本発明の一実施形態において、システム10は、圧電振動センサによって検出された信号に対して比較的高いバンドパスフィルタを作動させることで心拍関連信号を識別する。使用するバンドパスフィルタは、例えば、30〜80Hzの帯域を有する。結果的に得られる信号は、実際の心拍の位置を判定するために、ピーク検出アルゴリズムによって処理される。
【0169】
本発明の一実施形態において、システム10は、呼吸数及び/又は心拍数などの上述のごとく定義された臨床パラメータを算出し、その結果を記録する。システムは、次いで、特定の期間にわたる臨床パラメータの代表値を算出する。典型的には、システムは、その期間の臨床パラメータの平均若しくは中央値を計算するか、又はその期間より短い副期間における臨床パラメータの一連の代表値を計算して、一連の値をローパスフィルタ若しくは中央値フィルタに通す。システムは、以下に述べる警報条件のうちの少なくとも1つの兆候があれば警報を発する(システムは、臨床医が各閾値又は各タイミング範囲のレベルを設定することを可能にする、変更態様として、システムは、特定の対象者、疾病の種類、又は病棟などのパラメータ分布を学習してレベルを設定する)。
【0170】
●約10秒から約3分の期間、例えば、約30秒間、の臨床パラメータの代表値が所定の閾値より大きいか又は小さい場合、
●期間Tについて算出した臨床パラメータの代表値が設定閾値の上か下である場合、
期間Tは、閾値及び現在の測定値の関数であり、対象者の基線測定値又は母集団平均からさらに離れるほど期間Tは短くなる。例えば、母集団の平均呼吸数が12回/分で高閾値が20回/分の呼吸数に設定している場合は、期間Tは2分であるが、閾値を45回/分の呼吸数に設定していると、期間Tは自動的に15秒に減少する。変更態様においては、連続閾値対期間Tの関係を定義する。例えば、上述の場合と同じ例では、例えば15より大きい測定値R(1分当たりの呼吸数で表す)毎に、秒で表される閾値関数T(R)は、T(R)=540/(R−12)を用いて算出される。
期間Tにわたって計算された呼吸数の代表値がRより大きいか等しい場合は警報が発せられる。同様の理論を一実施形態における心拍数又は活動レベルなど他の臨床パラメータに適用する。
●約10秒〜約3分の期間、例えば約30秒間、の臨床パラメータの代表値に急激な変化が現れた場合、
例えば、急激な変化は、少なくとも変化率対約20%〜約70%、例えば、約50%の基線として定義することができる。この変化は、例えば、一定のトレーリング期間(例えば、直前の15分間)の臨床パラメータの代表値として定義した基線に対して計算される。
●臨床パラメータが遅いが実質的な変化を示した場合、
例えば、直前の10分間(A10)に測定された臨床パラメータの代表値を、以下の時間区分に測定された臨床パラメータの代表値と比較してもよい。
○直前の1時間(H)、
○1時間前の直前の1時間(H)、
○2時間前の直前の1時間(H)、
○3時間前の直前の1時間(H)。
【0171】
約20%〜約70%の間、例えば約50%に閾値を設定する。システムは、次の判定基準が「真」であれば警報を発する。
Δ=ABS[(A10−H)/A10]・・・・・(式9)
●最大値{Δ、Δ、Δ、Δ}>閾値(例えば、50%)の場合、警報作動する、
●重さに変化がない(例えば、ベッドを抜け出していない)にもかかわらず、システムによって臨床パラメータが突然検知されなくなった場合、システムは、即座に、又は、1分以内に警報を発する、
●直前の期間中、例えば直前の5分間、の臨床パラメータの代表値は、相当に長い前期間、例えば直前の6時間の臨床パラメータの代表値とは、かなり長い期間内の臨床パラメータの標準偏差の一定数n(例えば、3などの2〜10)倍以上異なっている。代表値前後の標準偏差のn倍の範囲は、臨床パラメータの許容範囲と定義される。
【0172】
本発明の一実施形態において、システム10は、監視対象の患者以外でベッドに座っている他の人(例えば、見舞人又は看護師)が出した偽警報を防止するように設計されている。一実施形態において、システムは、ベッド(例えば、米国ミシガン州カラマズーのストライカーメディカル社や、米国インディアナ州ベーツビルのヒルロム社が製作した数種類のベッドなど)にいる対象者の体重を計る重量センサを備えている。重量センサによる測定値は、標準的な通信手段を介して制御ユニット14に送られる。システム10には、対象者の予想体重の範囲が設定されている(例えば、30〜250kg)。対象者がベッドに入る前の測定体重はほぼ0である。システムは、測定値が30kgのレベルより下であれば測定値を出さず、体重がこの範囲にあることを識別すると、自動的に測定を開始する。対象者を測定中に、例えば、体重が30kgより増える急増が見られたら、システム10は、他の人が加わったと判断して測定を停止及び/又は警報を発する。これによって、一人を超える人がベッドに入ると起こる恐れのある誤測定を防止することができる。変更態様において、システム10は、対象者がベッドに入ったときにシステムに知らせる操作インターフェースを備えている。システム10は、その時点で測定した重量を記録し、体重測定値が初期値より10%を超えて大きいと判定した場合はいかなる時点であっても測定を停止し及び/又は警報を発する。
【0173】
さらに、一実施形態において、システム10は、重量センサからの体重測定値を用いて、非接触型センサ30の信号が突然に喪失される状況を判別する。対象者がベッドを抜け出ることにより、又は心停止が生じることにより信号の喪失が起こる。システムは、体重測定値を利用することで、これらの2つの状況を区別することができる。信号喪失がベッドで測定された体重減少を伴う場合は、システムは、患者がベッドを抜け出たと判定する。かかる重量変化が認められなければ、システム10は、この現象を、例えば心停止として判定し、それによって警報を発する。一実施形態において、ベッドは、一組の重量センサ(例えば、米国ミシガン州カラマズーのストライカーメディカル社販売)を備えており、組になって対象者の質量の中心を演算することができる。一実施形態において、システム10は、対象者の姿勢変化の検出精度を改善するために、非接触型センサを備えた重量センサからの測定値を統合する。かかる質量中心が多少の運動を示し、センサ30が上述したような更なる姿勢変化の特徴を識別したときのみ、姿勢変化が特定される。一実施形態において、対象者がベッド上での座位や横臥の状態を識別することを含め、対象者のベッドに対する入出運動の検出は、画像処理ユニットに結合したカメラを用いて判定することができる。一実施形態においては、椅子又は車椅子に上述したシステムを適用する。
【0174】
臨床医が患者の症状を診断する場合、症例によっては、対象者の症状パラメータの現在の測定値を、過去数分、数時間又は数日にわたるその症状パラメータの傾向と組み合わせることが有効である。現在の測定値と過去の傾向とを組み合わせることで、対象者の現在の危険度の総合的な評価と即時診察の必要性との統合された評価が可能となる。例えば、現在、呼吸数が36回/分に安定している患者は、現在の呼吸数はこれと同じであるが1時間前までは25回/分で安定していた呼吸数の患者とかなり異なった状態にある。本発明の一実施形態において、システム10は、ゆっくりした変化パターンを識別すると共に、警報を発すべきことを知らせる閾値を有するように構成されている。システムは、現時点でゆっくりした呼吸傾向が続く場合、対象者が警報閾値に達するまで時間値を演算して出力する。例えば、システムは、1時間毎に呼吸数の3回/分の増加傾向を識別し、現在の呼吸数が21回/分であり閾値が36回/分の呼吸数の場合、警報を発する時間は5時間(5=(36−21)/3)の後であると計算し、警報する時間をモニタに表示する。警報によって、臨床医は、現在値とゆっくりした呼吸傾向との両方に基づいて、現在の状態の危険度を評価することができる。さらに、一実施形態において、システムは、警報する時間が閾値より低ければ警告を発する。例えば、警報する時間が2時間より短いとシステムはモニタ上に警報メッセージを表示する。
【0175】
本発明の一実施形態において、システム10は、臨床パラメータにおける2以上の変化を組み合わせる。例えば、システムは、10分前の心拍数及び呼吸数の代表値の変化率を合計し、この合計値を閾値と比較する。かかる合計値が、この合計について設定した閾値より大きいと判定した際に、システムは警報を発する。これによって、患者の症状悪化を識別すると同時に、1つの特定的な測定値における局所的な乱れ(例えば、心拍数又は呼吸数の誤測定)が原因となる偽警報が軽減される。一実施形態において、システム10は、2つのパラメータ間の正規相関と反対方向に1つパラメータの変化が発生した場合に警報を発する。例えば、心拍数及び呼吸数は、ほとんどの場合、例えば、心拍数が増加すると呼吸数も増加するか又は少なくともほぼ一定に維持される傾向となるような高い相関性を持っている。従って、一実施形態において、システム10は、心拍数が少なくとも20%増加し、同時間中に呼吸数が少なくとも20%減少した場合に、警報を発する。これは、例えば、鎮痛剤によって起こる呼吸障害と関連する症状悪化の徴候を示している。
【0176】
本発明の一実施形態において、警報の起動される要因は、心拍及び呼吸を組み合わせた症状悪化を含んでいる。例えば、システムは、(a)呼吸数値が、ある時間(例えば、約10秒〜約3分)以上続けて閾値より大きいこと、及び(b)心拍数値が同時間続けて閾値より大きいことの両条件を検出した際に警報を発する。いくつかの適用例において、両条件(a)及び(b)が、約10秒〜約3分(例えば、約30秒)の時間にわたって「真」であれば、システムは、警報を発する。
【0177】
本発明の一実施形態において、システム10は、不整脈の原因となる徴候として、対象者の心拍数の高いレベルの変動を識別する。いくつかの適用例において、システム10は、運動センサで測定される測定心拍数が、大きい身体運動又は大きく変化する身体運動と相関がある場合は、大きく変化する測定心拍数をフィルタで除去する。これは、これらの測定心拍数の変動ばらつきは、対象者の身体運動によって起こる心拍変化が原因のためである。
【0178】
本発明の一実施形態において、システムは、各臨床パラメータ測定(例えば、呼吸数測定)を、例えば、信号品質、信号対雑音比、極く短い時間枠内の臨床パラメータ測定の結果の再現性、及び/又は、異なったセンサ若しくは異なった計算アルゴリズムによる結果の再現性(例えば、周波数領域におけるものと、時間領域における他のもの)の関数として、信頼性のレベルに割り当てる。システムは、通常、信頼性のレベルを連続的に更新し、有効化されている臨床パラメータの信頼性のレベルが閾値より大きい時だけ警報を発する。変更態様において、システムは、ある期間、例えば約10秒〜約3分の間、臨床パラメータの信頼性のレベルの平均が閾値レベルより大きければ警報を発する。
【0179】
本発明の一実施形態において、システムは、対象者の覚醒期間及び睡眠期間中に、対象者をモニタする。睡眠中の臨床パラメータの変動は、場合によっては、覚醒時の変動よりも小さい。一実施形態において、システムは、対象者の2つの異なった状態における症状悪化の徴候を識別するために異なった閾値を用いる。システムは、これら2つの閾値を自動又は手動により切り替える。例えば、医療従事者又は介護人は、対象者の覚醒状態が変化したことを観察した際にその対象者の状態変化をユーザーインターフェース24を介してシステム10に入力することにより、睡眠モードと覚醒モードとを手動で切り替えることができる。代替的又は付加的に、システムは、対象者が就寝若しくは覚醒の状態にあるべき日時に応じて、又は対象者が覚醒中若しくは睡眠中であるかをシステムで検出した結果に応じて自動的に切り替えることができる。この検出は、例えば、上述した大きい身体運動を識別する技術のように、患者が非呼吸の小さい身体運動に対して非呼吸の大きい身体運動を示した際にこれを検出するものである。
【0180】
例えば、基線呼吸数が14回/分の対象者について、覚醒時は呼吸数8回/分及び30回/分の範囲に警報作動閾値が設定されるが、症状悪化をより効果的に判定するために、睡眠中は警報作動閾値が呼吸数8回/分及び20回/分の範囲に狭められる。覚醒状態中に閾値範囲を狭くすると、許容できない程の誤警報が起き易くなるが、場合によっては、睡眠中のこのような狭い閾値は多少の誤警報をもたらすが対象者の症状悪化をより良好に識別することができる。
【0181】
本発明の一実施形態において、システム10は、睡眠モード及び覚醒モード間で、及び/又は小活動レベル及び大活動レベル間で、呼吸数又は心拍数の計算を行うために異なるアルゴリズム間で切り替えを行う。例えば、いくつかの適用例において、対象者が覚醒時に呼吸数を求める時間領域アルゴリズムを用い、対象者が睡眠時に周波数領域アルゴリズムを用いることはより効果的である。変更態様において、システムは、対象者の活動状態及び/又は不穏状態の程度に応じて異なるアルゴリズム間で切り替えを行う。いくつかの適用例において、対象者が睡眠中か安臥状態にあると判定した際、システムは、対象者がベッドを離れようとする危険性が大きい場合に、警報を発する早期警報機構を作動させる。例えば、対象者がベッドに静かに横臥しており、システムが、突然、対象者が30秒以上続けてベッドの回りを動いていると識別した場合、システムは、対象者がベッドを抜け出す恐れが大きいことを臨床医に警告する。これは、対象者の転倒を防止するために有効であり、特に年配の対象者や認知症の対象者に有効である。いくつかの適用例において、システム10は、睡眠中の対象者の身体運動の基線を設定し、対象者問題のある睡眠を行っているか又はや睡眠から覚醒へ推移していることを表す、基線と大きく相違した運動パターンを検出した際に、警報を発する。また、いくつかの適用例において、システムは、1日の異なる時間における対象者の運動について、警報を発する異なった基準を用いる。例えば、午前2時から午前5時の間は30秒の比較的小さい運動でも警報を出すが、1日の他の時間においてはその閾値が大きい。
【0182】
一実施形態において、システム10は、臨床医が対象者を転倒する高い危険性のある患者であると指定できるように構成されている。システムは、そのような患者に対して、転倒の可能性がある運動パターンに関する警報のより厳しい判定基準を用いる。例えば、ほとんどの養護施設で患者が転倒する可能性が高い時間帯は夜間(午後8時〜午前5時)である。その高い可能性があると指定された患者に対して、システムは、患者が休息モード(例えば、15分以上患者の動きが少なく、かつ、心拍数対過去3時間の心拍数平均の低下率が5%である状態)に入ったことを識別する。次いで、このような休息状態を検出した後、閾値を超える運動の上昇が見られた場合に、警報を作動させ患者がもはや休息状態ではないことを看護師に通知する。例えば、30秒を超える期間、大きい身体運動を確認した場合に、警報を作動させる。これは、転倒の危険性がかなり増大するため、看護師が患者に早急に注意を払う必要があることを表わしている。夜間のみ、又は患者が休息状態に入った後にのみ、このような警報を働かせることは、警報軽減さらには警報による臨床チームの疲労軽減に役立つ。一実施形態において、システムは、術後の最初の数時間の鎮静状態にありその鎮静状態から徐々に回復しつつある患者がベッドを離れる際に、警報を発するように構成されている。システムは、臨床医に、患者が術後であることを知らせること及び鎮静状態からの回復予測を知らせることを可能にする操作インターフェースを備えている。システムは、患者が鎮静回復時(例えば、術後12時間)にベッドから離れようとすると警報を発するが、誤警報を最小限にするために警報を自動的に切る。変更態様において、システムは、完全な警報状態を表す運動レベルが設定時間の間確認された際に警報を切る。
【0183】
場合によっては、被検対象者の動きは、検出されたパラメータ(例えば、非接触センサによる呼吸数及び心拍数、並びに接触センサによる血中酸素飽和濃度及び血圧)の精度を低下させる。本発明の一実施形態において、システム10は、測定の信頼度を演算する際に、対象者の運動(安静状態)の程度を測定時に考慮する。一実施形態において、大きい身体運動の期間中に行われた測定の結果は、無視されるか、又は経時的に平均化される際に小さい重みが与えられる。他の実施形態においては、臨床パラメータの値が警報の必要性を示しているときは、信頼度が低い場合に、システムは警報の発生を遅らせる。この遅延時も、システムは、臨床パラメータの測定及び警報を発するかどうかの評価を継続して行う。遅延中のパラメータの値、又は遅延中のパラメータの平均値が警報の正当性を示し続けている場合、システムは、遅延を停止して警報を発する。例えば、システムは、血中酸素飽和濃度を測定し、飽和濃度が90%より低くなったら警報を発するように構成されている。システムは、飽和濃度測定中に、かかる飽和濃度低下を判定すると共にいかなる大きい身体運動も検出しない場合、直ちに警報を発する。一方、システムは、飽和濃度測定中に、かかる飽和濃度低下を判定すると共に、大きい身体運動を検出した場合、測定及び遅延中(例えば、60秒の期間)の血中飽和濃度の平均をとることを継続し、遅延全体に及ぶ平均が90%を下回った時のみ警報を発する。この技術は、一般的に、運動の乱れが原因となる偽警報を低減する。
【0184】
場合によっては、臨床パラメータの変化が対象者の大きい身体運動が原因で起こることがある。例えば、患者が横臥していてもその呼吸数の急増により警報を発することもあるが、その対象者がベッドで不穏状態を示していればそのような急増も正常である(特に超肥満者の場合は該当する)。本発明の一実施形態において、システム10は、第1に、不穏期間直後又は不穏期間中には起こらない臨床パラメータの変化については厳格な閾値又は早期警報応答時間を使用し、第2に、不穏期間直後又は不穏期間中に起こるか不穏期間中に起こると予想される変化(例えば、呼吸数の増加)については緩い閾値を使用する。いくつかの適用例において、システムは、臨床パラメータの変化確認後に不穏状態が起こる場合は、このような2つの閾値を使用しない。
【0185】
本発明の一実施形態において、臨床パラメータが警報を発する閾値を通過したと識別した場合、システムは、警報発生をある期間遅らせる。例えば、その遅延期間は、臨床医の入力設定、対象者の測定値の先行する変動、測定の信頼度、及び対象者の現在の状態(例えば、睡眠、覚醒、REM睡眠、既往喘息、他)などに応じて、約15秒〜約10分の期間であるかもしれない。この遅延期間中、システムは、さらに、測定値が確かに正しいこと及び/又は一貫して警報閾値を超えていることを検証する。この検証を行った上で、システムは、警報を発する。その他の条件では、システムは、警報を発しない。この技術によれば、偽警報を防止できる。
【0186】
本発明の一実施形態において、システム10は、例えば、対象者の心拍数及び/又は呼吸数などの、対象者の臨床パラメータの変化に応じて敗血症の発症を識別し、その進行をモニタする。いくつかの適用例において、システム10は、振戦レベル、心拍数及び/又は興奮レベルの増加の検出に応じて敗血症を識別する。いくつかの適用例において、システムは、呼吸数の増加と共に呼吸関連運動の大きさの低下として特徴付けられる、浅い呼吸促迫の検出に応じて敗血症を識別する。いくつかの適用例において、システムは、呼吸数、呼吸の深さ(浅呼吸対深呼吸)、心拍数、興奮/大身体運動、及び振戦というパラメータの2以上の組み合わせに基づいて敗血症スコアを計算する。このスコアが基線に対して大きく変化したり、又は所定の閾値と交わった際に、システムは、臨床医に警報を発する。
【0187】
本発明の一実施形態において、システム10は、呼吸運動信号サイズの低下と共に呼吸数の増加を判別することで、浅い呼吸の開始前に比べて対象者の姿勢を変えることなく、浅い呼吸促迫を識別する。
【0188】
本発明の一実施形態において、システム10は、呼吸洞性不整脈の強度減少を確認することで、浅い呼吸促迫を識別する。
【0189】
本発明の一実施形態において、システム10は、健康管理施設で適用されている現存するナースコールシステムを用いて、上述したいずれの警報条件も介護スタッフに通知する。
【0190】
本発明の一実施形態において、システム10は、診療行為が完了するまで、対象者の症状の連続している悪化を看護師に持続的に知らせる。
【0191】
本発明の一実施形態において、システム10は、上述した技術を用いるなどして対象者12がベッドに入ることを識別する。何人かの被検対象者にとって、ベッドから出ることなしに非常に長い時間ベッドで過ごさないことが大切である(例えば、褥瘡を防止するために)。システム10は、対象者が一定時間、例えば、12時間、ベッドを離れていない場合に、医療スタッフに警報を発する。いくつかの適用例において、システム10は、対象者がベッドで位置を変えたり、寝返ったりしたことを上述の技術を用いて識別する。代替的又は付加的に、システムは、特許文献28に記載の技術を用いて姿勢変化を判別する。対象者が一定の時間にわたってベッドで位置を変えなかったり、又は寝返らなかった場合に、警報を発する。いくつかの適用例において、システム10は、臨床医が対象者の寝返りをこのシステムに記録することができるユーザーインターフェースを備えている。この記録によって履歴分析が可能になり、対象者に適切な措置を施したことが記録される。システムによる対象者の運動の自動検出は、臨床医の参加、又はその交代のいずれかを確認するために実行される。いくつかの適用例において、システムは、自動姿勢変化検出アルゴリズムを調整するために、対象者の寝返りの手動表示を使用する。
【0192】
本発明の一実施形態において、システム10は、医学機関が褥瘡予防プロトコルを準拠して実施及び記録を行う一助となる。例えば、多くの病院において、褥瘡の高い可能性がある患者に対する褥瘡予防プロトコルによれば、2時間毎に患者を回転させねばならない。一実施形態において、システム10は、臨床医(例えば、医師又は看護師長)による褥瘡予防の必要な手順(例えば、患者の姿勢変更又は患者の回転の最大時間間隔)の指示を可能にするユーザーインターフェースを備えている。システムのユーザーインターフェース24は、上述の手順に従って患者の姿勢変化が必要な次の時間までの秒読みをカウンタに表示する。カウンタの秒読みがゼロになった際に、警報を発せられる。システムは、姿勢変化を認識した際に、カウンタを初期値(例えば、2時間)にリセットし、再び秒読みを開始する。
【0193】
一実施形態において、システム10は、患者の寝返りの誤検出を防ぐために二重の防止策を施している。姿勢変化を識別してカウンタをリセットするためには、センサ及び制御ユニットを用いて姿勢変化を検出することと、臨床医が患者を実際に寝返らせたとユーザーインターフェースを介して臨床医が入力することとが必要となる。カウンタをリセットするために、システム10は、一定期間(例えば、10〜300秒、通常60秒)内に同時に姿勢変化に関する臨床医の入力操作とセンサ入力動作とを要する。従って、看護師は、患者を回転させるために患者に近づいた時に、ユーザーインターフェースの該当するボタンを押してから患者を回転させる。システムは、センサを介して患者の回転を検出し、ユーザーインターフェースを介しての入力を受ける。これらの両方が、例えば60秒の期間内に同時に行われると、カウンタをリセットする。一実施形態において、システム10は、また、かかる全ての事象を記録して患者管理の文章化の一助にし、病院責任を軽減する。一実施形態において、姿勢変化の検出は、マットレスの下に設けたセンサやカメラを用いることで、対象者の身体に触れることなく行われる。
【0194】
一実施形態において、システム10は、カメラと機械的センサという2つの検出素子を組み合わせている。2つの検出素子からの信号は、不適切な結果を低減するために相関される。各センサについて、信頼値を各測定値毎に演算し、より高い信頼度を示す素子を選択する。変更態様として、臨床パラメータ(例えば、心拍数)は、各センサからの信号を別個に用いて計算される。2つの測定値が設定範囲内で相似すれば、測定値は受入れられ、表示され、そして記録される。必要であれば警報は発せられる。両信号が異なれば、これらは拒絶される。
【0195】
本発明の一実施形態において、システム10は、対象者の姿勢変化時の動きのレベル及び回数を基にスコアを計算する。システムは、約15分〜約3日、例えば、約4時間の時間枠にわたるこのスコアを分析する。このスコアは褥瘡進行の危険度の指標になる。このスコア指標は、関連機関や主治担当医が策定するガイドラインに準拠して適用できる。例えば、大半の病院は、褥瘡進行の危険性のある対象者を少なくとも2時間毎に一度回転させるか又は位置を変える必要性を方針にあげている。
【0196】
上述のスコアを計算する第1の技術例によれば、システムは、次式を使用する。
スコア=100−20×(TC/RTC)・・・・・(式10)
ここで、TCは最後の姿勢変化からの時間(分)、RTCはガイドライン又は医師の指示による姿勢変化の間隔(分)の推奨時間である。
【0197】
いくつかの適用例において、算出されたスコアは、数値化して、又は例えば色分けによりグラフ化して表示される。例えば、スコアが85より大きければ緑色で示され、75〜85は黄色で示され、75より小さければ赤色で示される。いくつかの適用例において、スコアが閾値以下となると、システムは、臨床医に警告し、適時の診療行為ができるように、警報を発する。
【0198】
上述のスコアを計算する第2の技術例によれば、システムは、次式を使用する。
スコア=[100−20×(TC/RTC)]+MPR・・・・・(式11)
ここで、TCは最後の姿勢変化からの時間(分)、RTCはガイドライン又は医師の指示による姿勢変化の間隔(分)の推奨時間、MPRは対象者が大きい身体運動をした最後の1時間における時間割合である(例えば、間隔内で大きい身体運動が判別されたかどうかを15秒の間隔毎に運動情報としてマークし、最後の1時間の間のマークをつけた間隔の割合を式11に用いた)。
【0199】
本発明の一実施形態において、システム10は、約1時間から対象者の病院滞在期間の期間にわたる平均スコアを算出する。この平均スコアは、指定ガイドラインに対する臨床チームの準拠整合性の指標(即ち、適格性指数)となる。この平均スコアは、臨床チームの能力を評価するため、並びに対象者のケアの継続的向上及び対象者の経験蓄積を可能にするために、病院管理部門が利用することができる。一実施形態において、例えば運動の8時間枠がスコアの平均化に用いられる。システムは、患者が病院に滞在していた6時間枠の最少スコアを報告する。
【0200】
また、本発明の一実施形態において、このスコアは、基線に対する、呼吸数、心拍及び/又は振戦の変化を反映している。これらのパラメータの増加は、場合によっては褥瘡の徴候を含む影響を表している。いくつかの適用例において、このスコアは、代替的又は付加的に、感染症の更なる指標として、心拍数及び呼吸数における変動レベルを反映している。
【0201】
本発明の一実施形態において、(上述した適当な任意のセンサを備えた)システム10は、対象者がベッド内にいる時を識別するのに用いられる。定期的に、例えば、1時間毎に、システムは、対象者がベッド内にいるかどうかを記録する。例えば、この記録は、対象者がベッドを使用した場合、病院向け医療機器レンタル業者が貸ベッドの日数単位又は時間単位のレンタル料を病院側に請求する際に役立つ。
【0202】
クラスタリング
未処理センサデータを用いた呼吸数計算には、大抵、いくつかの課題がある。課題の1つは、呼吸数変化に対する反応性を維持しながらも、誤測定を最小限にするためにどのようにして局所的な運動の乱れを解消しかつ経過データをどのように利用するかである。以前のアルゴリズムでは、達成レベルを変化可能な異なる種類のフィルタリングに注目していた。本発明の一実施形態によれば、下記のクラスタリングモデルは、履歴時間関連情報のみならず呼吸形態関連情報と長期にわたる形態変化関連情報とを統合する効果的方法に加えて、現在データ及び履歴データを統合する効果的方法を提案し、誤測定を低減させるため全ての情報を組み合わせている。一実施形態において、システム10は、ファジィC平均論理アルゴリズムに基づく呼吸数アルゴリズムを備えている。クラスタリングに基づくアルゴリズムは、次の4つの段階によって実施され。
●潜在的呼吸サイクルの全体最大値検出アルゴリズム、
●異常値除去、
●ファジィC平均クラスタリング、
●判定ブロック。
【0203】
[全体最大値検出アルゴリズム]
潜在的呼吸サイクルの最大値検出は最大値アルゴリズムによって行われる。このアルゴリズムは、呼吸信号の振幅及び周期性に基づいて、局所的最小値/最大値を全体最小値/最大値から区別している。このアルゴリズムの出力は、呼吸履歴と呼ばれる、固定期間(例えば、2分間)の潜在的呼吸サイクルと、各呼吸サイクルのサイクルパラメータのD次元ベクトルとのリストである。一実施形態において、用いられるサイクルパラメータは、呼吸サイクル期間とピーク間振幅(即ち、D=2)である。他の実施形態において、呼吸サイクルの波形の特徴が用いられている。即ち、呼吸サイクルの立ち上がり部のセンサ信号の勾配と、呼吸サイクルの立ち上がり部のセンサ信号の立ち上がり時間と、呼吸サイクルの立ち下がり部のセンサ信号の勾配と、呼吸サイクルの立ち下がり部のセンサ信号の立ち下がり時間とを用いている(D=6)。
【0204】
さらに他の実施形態では、検出された呼吸数に応じて、呼吸履歴の長さが適用されている。
【0205】
[異常値除去]
一実施形態において、他の潜在的呼吸サイクルの全てから隔たったパラメータを有する呼吸サイクル(異常値)は、呼吸履歴から取り除かれる。
これは、以下の手順で行われる。呼吸サイクルパラメータのD次元空間の空間格子を生成する。呼吸履歴の各サイクルは特定の格子セルに属する。呼吸サイクルの離散的空間密度を各セルのサイクル数として求め、密度閾値より低い密度を有する全てのセルを異常値と見なし、該当するサイクルを呼吸履歴から取り除く。
【0206】
[ファジィC平均クラスタリング]
一実施形態において、ファジィC平均クラスタリングを呼吸履歴に適用する。ファジィC平均クラスタリングは、J.C.Bezdek著「ファジィ目的関数アルゴリズムによるパターン認識」、プレナムプレス社(ニューヨーク)、1981年刊行、に説明されており、ここでの参考資料とする。クラスタリングのプロセスを、4クラスタリング処理、3クラスタリング処理、2クラスタリング処理、1クラスタリング処理の構成で繰り返す。
【0207】
各クラスタリング処理では、後述の式12で説明するように相対指標が算出される。最良のクラスタリングは最少指標値を含むクラスタリングである。一実施形態において、新たな呼吸数を最良のクラスタリング中心値の時間分座標に従って決めている。他の実施形態では、新たな呼吸数が、最良のクラスタリングで検出した最新のサイクルに従って決められている。
【0208】
他の実施形態において、新たな呼吸数が、最良のクラスタリングに属し、最後のT秒(例えば、T=60秒)にわたって検出した呼吸サイクルの平均期間に従って決められている。
【0209】
最良のクラスタリングには、後述の式13で説明するように信頼値が算出される。信頼値が選択閾値より大きければ、そのクラスタリングが破棄され、新たな呼吸数が判定ブロックで求められる。信頼値が閾値より小さければ、その値と新たな呼吸数とが判定ブロックに送出される。
【0210】
[判定ブロック]
一実施形態において、判定ブロックは、クラスタリングブロックから受け取った新たな呼吸数をシステム10のディスプレイに表示すべきかどうかを判断する。この判断は、正確な呼吸値は前回の値に近似する可能性が高いという一般理論に基づくものである。これを行うために、事前に受入れた呼吸数値の確率密度関数(PDF)が計算され、新たな呼吸数の確率がこのPDFから推論される。最後に、かかる確率と信頼度との合成によって、判定ブロックは、最新の値を破棄すべきか又は表示すべきかを判定する。
【数5】


・・・・・(式12)
ここで、Xは正規化パラメータのベクトル、Nkはクラスタリングkのサイクル数である。
【数6】


・・・・・(式13)
ここで、Xdはd次元のパラメータ値、Nbest_clusterは最良のクラスタリングにおけるサイクル数である。
【0211】
一実施形態において、システム10は、対象者が一定期間(例えば、夜間)にとった睡眠の質を評価し、スコアを算出する。このスコアは臨床医に提供され、患者の治療管理の判断基準(例えば、薬物処方、又は退院)の決定の一助とされる。例えば、スコアSは次式で算出される。
S=R+HR+RR+K×BEX・・・・・(式14)
ここで、
●Sは臨床スコア、
●Rは一定期間における患者の不穏状態レベルであって、スコアが高いほど不穏状態レベルが大きい、
●RRは現在の時間枠対前の時間枠(先立つ6時間)における対象者の平均呼吸数変化。例えば、現在の時間枠における平均呼吸数が先立つ6時間より12%多ければ、このパラメータは値12をとる、
●HRは現在の時間枠対前の時間枠(先立つ6時間)における対象者の平均心拍数変化。例えば、現在の時間枠における平均心拍数が先立つ6時間より12%多ければ、このパラメータは値−12をとる、
●BEXは一定期間におけるベッドの入出の回数、
●Kはこのスコアにおける離床係数としての定数。通常、3〜20(例えば、8)。
【0212】
スコアSが小さいほど一定期間の安静度が高くなり、臨床医に知らされる。例えば、何人かの臨床医は、病院における多くの患者について、静穏な夜を過ごしている場合には、多くの場合に、患者を即座に退院させることができると考えている。
【0213】
[無呼吸検出]
一実施形態において、システム10は、無呼吸症を識別するのに使用される。無呼吸症の検出は2段階で行われる。第1段階は、疑わしい間隔の予備判定である。第2段階において、各間隔について、スコアのベクトルが計算される。このスコアは、無呼吸発作の推定された可能性と相関がある。さらに、判定ブロックにおいてスコアが分析され、無呼吸発作の検出が行われる。これは、特に、中度又は重度の無呼吸の高いリスクを有する対象者を識別するのに有効である。
【0214】
[疑わしい間隔の検出]
第1段階において、疑わしい間隔を検出するために、2つの方法が採用される。即ち、相関検出と運動検出とである。
【0215】
i.相関
各対象者に関して、事前に検出された3つの連続する規則的呼吸サイクル間に測定されるセンサ信号の形状からなる整合フィルタが選択される。患者のために記録された総合的な信号との整合フィルタの相関結果が記録全体にわたる整合フィルタをシフトすることで算出される。
【0216】
最低相関応答を持つ間隔は、疑わしい無呼吸間隔として定義される。これら間隔の検出は次のパラメータを用いて実行される。
(1)前の期間にわたる相関信号の移動平均に比較した相関信号の振幅の大幅な下落。例えば、先立つ90秒間の相関信号の移動平均より60%低い相関レベル。
(2)相関ピーク間の距離の大きな狭小化。整合フィルタと呼吸関連運動信号との相互相関がなされた場合、結果は呼吸期間によって離間する一連のピークを示すと思われる。即ち、呼吸数が12回/分とすると、ピークは互いにほぼ5秒離れるであろう。大きな狭小化は、移動平均呼吸数に基づくピーク間の距離の70%より短い距離として定義される。従って、12回/分の呼吸数に関して、ピーク間が呼吸数の70%、つまり、3.5秒より小さい距離を持つ場合、判定基準が満たされる。
【0217】
両方の条件を満たす間隔は、無呼吸の疑わしい間隔として判定される。この出力結果は、各疑わしい間隔の始点のタイムスタンプのベクトルである。
【0218】
ii.運動検出
一実施形態において、このアルゴリズムは、本明細書に記載のような大きい身体運動の識別アルゴリズム、又は、例えば、本明細書で引用している本願の出願人による先願で提案したアルゴリズムを利用している。大きい身体運動のアルゴリズムは、センサが検出した信号内の時間スロットが大きい身体運動によって特徴付けられる指標を提供する。一実施形態において、無呼吸検出アルゴリズムは、さらに、以下のように、大きい身体運動の完全な期間を識別するための方法を実行する。即ち、大きい身体運動が検出されない場合に識別された運動時間スロット短い断片分だけ離れているとしても、身体運動の関連する断片を全体の運動期間に合体させるためにアルゴリズムを用いる。このアルゴリズムの入力は、大きい身体運動断片の時間スロットを表し、出力は大きい身体運動の期間の始点と終点となる。
【0219】
上述した両方法からの疑わしい間隔は、疑わしい無呼吸の単一リストに組み合わされる。
【0220】
次の段階は、各疑わしい間隔について、事象を囲む3分間を取り出し、「現状の間隔」として分析することにより、各疑わしい間隔を再度評価するものである。このような各間隔について、アルゴリズムは、無呼吸発症の有無を判定し、その判定結果の信頼度を算出する。各現状の間隔についての判定は、下記の判定基準に基づく。
【0221】
心拍数変化
無呼吸症状を終わらせる短期覚醒に影響する心拍数上昇は、無呼吸の特徴として認知されている。この心拍数上昇の期間は、大抵、およそ心拍5〜8回分である。この上昇は、例えば、システム10に組み込まれたパルス酸素濃度センサから抽出される光電脈波測定信号において識別されるピーク間距離である、心拍信号の心拍間距離を分析することで検出される。2つの隣り合うピークの各々は、心拍1回分をまたぐ2つのピークを意味するR−R間隔として表される。心拍数上昇は、平均値に対比して、かつ、夜間における心拍数の標準偏差を考慮して定義される。例えば、心拍数が夜間の平均心拍数より20%大きく、かつ、夜間の平均プラス標準偏差より12%大きい場合、心拍数増加は潜在的無呼吸パターンであると判定される。20%及び12%の双方を満たす領域に最高の信頼度スコアが与えられる。
【0222】
飽和レベル変化
一実施形態において、パルス酸素濃度計の濃度レベル信号も使用される。この信号を用いて、無呼吸症状に続く不飽和化を識別できる。現状の間隔における最大値から少なくとも5%の減少が認められた場合、不飽和化が無呼吸パターンとして識別される。
【0223】
呼吸数変化
一実施形態において、疑わしい無呼吸症状の前後の呼吸数の変化を用いて無呼吸症状が判別される。現状の間隔における信号のパワースペクトル密度(PSD)を計算することで呼吸数(RR)の変化が検出される。その時間間隔の間、RRが一定なら、一定のRRに対応するPSDにおいて単一の大きなピークが現れる。しかしながら、RRが疑わしい無呼吸発症の前後で変化すると、潜在的呼吸数範囲においてPSDに2つのピークが現れる。通常、無呼吸は運動を伴って発症する。疑わしい間隔が運動を含んでいると、PSDは著しく歪曲し、2つのピークの検出がさらに困難となる。これが理由で、一実施形態において、運動間隔は現況の間隔から除去され、間隔の残った断片が繋ぎ合わされる。一実施形態において、これは以下の方法で実行される。
【0224】
疑わしい間隔のセンサ信号断片が、隣り合う時間枠にオーバーラップする10秒間のデータで60秒の時間枠をスライドさせることで分析される。各60秒の時間枠は次の3段階で処理される。
(1)「クリーンな信号」を得るために、運動(大きい身体運動)(有る場合)を除去する、
(2)ローパスFIRフィルタを「クリーンな信号」に適用する。1〜2Hz(例えば、1.2Hz)のカットオフ周波数がローパスFIRフィルタに用いられる。
(3)PSDを計算するウェルチ・アルゴリズムが用いられ、フィルタ処理された「クリーンな信号」に適用される。
【0225】
結果として得られたPSDダイアグラムの少なくとも1つが2つのピークを含んでいれば、RRの変化が検出される。
【0226】
[スコア式]
一実施形態において、上述した方法(即ち、心拍数変化検出、飽和度変化検出、及び呼吸数変化検出)の各々を用いて現状の間隔について算出した結果は、スコア式を用いて合成される。例えば、上述した判定基準の各々について、その判定基準に整合するスコアが、各現状の間隔についての信頼度が0〜100の間であるとして計算され、最も重症の無呼吸症で測定された各判定基準の結果にスコア100が与えられ、全く変化のない結果に0が与えられる。例えば、心拍数変化に関して40回/分以上の心拍変化に、スコア100が与えられる。飽和率に関して20%を越える変化に、スコア100が与えられる。呼吸数変化に関して10回/分を越える呼吸変化に、スコア100が与えられる。これらの閾値以下の結果については、線形補間を用いてスコアが計算される。従って、例えば、10回/分の心拍数変化には、スコア25が与えられる。全体の信頼度スコアは、3つの判定基準の3つの信頼度の平均である。
【0227】
[判定ブロック]
このモジュールの目的は、最終的に、現状の間隔が無呼吸症状を含んでいるかどうかを判定することにある。例えば、そのスコアを閾値と比較する。一実施形態において、システム10は、睡眠中の心拍数変動を分析することで無呼吸のリスクが高い患者を識別する。無呼吸睡眠にある患者は、多くの場合、睡眠中に周期的な心拍パターンを示す。このパターンは、40〜120秒の範囲の周期を持つと予想される。一実施形態において、システム10は、夜間の心拍信号の周期性を分析し、適当な周期的パターンが見つかれば、患者が無呼吸睡眠のリスクが高いと臨床医に知らせる。
【0228】
図18は、非接触センサを用いた本発明の一実施形態で測定した心拍パターンであって、無呼吸睡眠のリスクが高いと判定された患者からシステムが得た心拍パターンである。図中、ピーク1460及び1461は、心拍パターンにおいて、約60秒離れたサンプルのピークである。
【0229】
図19は、約60秒のサイクル時間の中枢性無呼吸で最も起こしやすい無呼吸発作を示す周期的呼吸パターン(上側の図は、60秒毎に1回増加/減少する呼吸振幅)に対応する同様の周期的心拍パターン(下側の図)を示す。反復して起こる心拍パターンがシステム10によって判別され、潜在的に高い無呼吸のリスクとして臨床医に提示される。一実施形態において、システム10は、心拍数のピークと、図19の上側の図に示すような呼吸パターン又は運動センサで測定される大きい身体運動の形跡の変化との相関を取る。この例では、対象者は、図18の例に比べて心拍数が低く、変動も少ない。(無呼吸が原因で)呼吸振幅が小さくなるほど心拍数が増える。
【0230】
大きい身体運動の形跡、及び/又は呼吸運動パターンが、心拍数のピークの大きな部分集合と相関して変化すると、判定された無呼吸のリスクは高まり、それにより臨床医に表示する。
【0231】
図20(A)〜(C)は、睡眠時無呼吸の高いリスクを有する被検対象者の、一般的運動信号(図20(A))と、心拍出力信号(図20(B))と、大きい身体運動の検出出力信号(図20(C))とを示している。大きい身体運動の検出は出力「オン」で示され、大きくない身体運動は出力「オフ」で示される。大きい身体運動の検出もまた心拍パターンの周期性と相関がある。このパターンは、心拍数増加の各サイクル(約50秒毎)でそれ自身が繰り返えし、これによって無呼吸の高いリスクを補強する、一連の短時間運動を示す。一実施形態において、システム10は、40〜120秒周期の心拍数周期パターンの存在、呼吸周期パターンの心拍パターンの相関、大きい身体運動検出の心拍周期パターンの相関、及び(例えば、心拍周期パターンを有する指装着パルス酸素濃度計で測定するような)酸素飽和度低下の相関のうちの1つ以上に基づいて無呼吸リスクを算出する。例えば、心拍数サイクルの各検出ピークにおいて、心拍数の周期性に対応する時間枠は、かかるピークに先行する区分に始まる。従って、例えば、心拍数の周期的パターンが50秒の期間であれば、長さ50秒の時間枠を毎回分析する。かかる期間内に大きい身体運動が検出されれば、呼吸の振幅における明確な変化(平均周期振幅の15%〜30%、例えば、20%に設定された閾値を越える呼吸信号振幅の標準偏差)を有する呼吸パターン又はTAAの呼吸パターンはかかる時間枠内で識別され、この症状が無呼吸リスク事象としてカウントされる。1時間当たりのかかる事象数が閾値(例えば、15などの10〜30の閾値)以上であれば、1時間当たりの事象数となるリスク指標で患者が無呼吸の危険性があることが臨床医に警告される。
【0232】
ここで説明した技術は、本願出願人に譲渡され、ここで参照引用した下記の特許出願及び特許の1つ以上に開示された技術と組み合わせて実施することができる。一実施形態において、下記の特許出願の1以上に開示された技術及び装置をここに開示の技術及び装置と組み合わせることができる。
●米国特許仮出願第61/052395号
●米国特許仮出願第61/054754号
●米国特許仮出願第60/674382号
●米国特許仮出願第60/692105号
●米国特許仮出願第60/731934号
●米国特許仮出願第60/784799号
●米国特許仮出願第60/843672号
●米国特許仮出願第60/924459号 出願2007年5月16日
●米国特許仮出願第60/924181号 出願2007年5月2日
●米国特許仮出願第60/935194号 出願2007年7月31日
●米国特許仮出願第60/981525号 出願2007年10月22日
●米国特許仮出願第60/983945号 出願2007年10月31日
●米国特許仮出願第60/989942号 出願2007年11月25日
●米国特許仮出願第61/028551号 出願2008年2月14日
●米国特許仮出願第61/034165号 出願2008年3月6日
●米国特許仮出願第61/082510号 出願2008年7月22日
●米国特許出願第11/197786号 出願2005年8月3日(特許第7314451号)
●米国特許出願第11/782750号
●米国特許出願第11/446281号
●米国特許出願第11/755066号
●米国特許出願第12/113680号
●米国特許出願第11/048100号 出願2005年1月31日(特許第7077810号)
●国際特許出願第PCT/IL2005/000113号(公開第WO 2005/074361号)
●国際特許出願第PCT/IL2006/000727号(公開第WO 2006/137067号)
●国際特許出願第PCT/IL2006/002998号(公開第WO 2007/052108号)
【0233】
当該技術分野の技術者には明らかであるが、本発明は、特に、以上の説明及び図示した実施形態のみに限定するものではない。詳述すると、以上の説明で開示した様々な特徴の組み合わせ、さらには、その二次的組み合わせと共に、上述の説明に係わり当該業者が想定し得る従来技術に基づく変更及び改変をも含むものである。
【符号の説明】
【0234】
10 システム
12 被検対象者
14 制御ユニット
16 パターン分析モジュール
20 運動データ取得モジュール
22 呼吸パターン分析モジュール
23 心拍パターン分析モジュール
24 ユーザーインターフェース
26 咳分析モジュール
28 不安分析モジュール
29 血圧分析モジュール
30 運動センサ
31 覚醒分析モジュール
32 プリアンプ
34 フィルタ
36 アナログ−デジタル(A/D)コンバータ
37 背もたれ面
38 腹部
39 胸部
40 脚部
41 デジタル信号プロセッサ(DSP)
42 デュアルポートRAM(DPR)
44 EEPROM
46 I/Oポート
50 未処理機械信号
52 呼吸関連成分
54 心拍関連成分
56 センサ無線通信モジュール
58 制御ユニット無線通信モジュール
60 接触センサ
62 ECGモニタ
80 温度センサ
82 音響センサ
84 薬剤投与装置
86 血液酸素モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検対象者の生理的パラメータを検知し、これに応じた信号を生成するように構成されたセンサと、
ベッドと、
前記生理的パラメータを分析することで前記被検対象者の状態をモニタし、該モニタした結果に応じて診療行為を施すよう前記ベッドを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記センサが、前記ベッドに結合した1つ以上の重量センサを備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ベッドと共に用いる装置であって、
被検対象者の生理的パラメータを検知し、これに応じた信号を生成するように構成されたセンサと、
前記生理的パラメータを分析することで前記被検対象者の状態をモニタし、該モニタした結果に応じて診療行為を施すよう前記ベッドを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項4】
センサを含むベッドと共に用いる装置であって、
前記センサによって検知された生理的パラメータを表す信号を分析することで被検対象者の状態をモニタするように構成されたモニタ機能と、該モニタした結果に応じて診療行為を施すよう前記ベッドを駆動するように構成された駆動機能とを備えた制御ユニット
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記制御ユニットが、モニタした結果に応じて前記被検対象者を回転させるよう前記ベッドを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットが、モニタした結果に応じて前記ベッドの背もたれ角度を変えるよう前記ベッドを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニットが、モニタした結果に応じて前記被検対象者に振動療法を施すよう前記ベッドを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の装置。
【請求項8】
前記センサが、前記被検対象者の運動を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の装置。
【請求項9】
前記制御ユニットが、前記被検対象者の検知された運動に応じて該被検対象者の姿勢変化度を抽出するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御ユニットが、前記信号から前記被検対象者の呼吸数を抽出するように構成されていることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の装置。
【請求項11】
前記センサが、前記ベッドに結合可能な1つ以上の重量センサを備えていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項12】
被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなくベッド上にいる該被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成するように構成された運動センサと、
前記ベッドの一部の上にいる前記被検対象者の体重を測定し、これに応じて重量信号を生成するように構成された重量センサと、
出力ユニットと、
前記運動信号を分析し、分析結果に応じて、警報発生の必要性を表す該運動信号の状況を識別し、前記重量信号の変化が前記運動信号の該識別した状況とほぼ同時であるかどうかを識別することによって偽警報の発生を低減するように構成された制御ユニットと
を備えており、
同時であれば、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動せず、
同時でなければ、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動することを特徴とする装置。
【請求項13】
被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなく該被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成するように構成された運動センサと、
ベッド上にいる前記被検対象者の体重を測定し、これに応じて重量信号を生成するように構成された重量センサと、
出力ユニットと、
(a)前記運動信号を分析することにより心拍数及び呼吸数の変化と、(b)前記重量信号の変化とを組み合わせて分析し、
(b)と組み合わせた(a)の分析結果に応じて、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項14】
モニタしているベッドをさらに備えており、前記重量センサが該モニタしているベッドの構成要素であることを特徴とする請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
被検対象者の生理的パラメータを検知すると共に、被検対象者の振戦を検知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
出力ユニットと、
前記生理的パラメータと前記検知した振戦とを分析することにより、前記被検対象者の振戦以外の状態をモニタし、前記生理的パラメータ及び前記振戦の分析結果に基づいて前記モニタした状態の悪化を検出した際に警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項16】
前記制御ユニットが、前記生理的パラメータと前記検知した振戦との分析によって低血糖症をモニタするように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成する少なくとも1つのセンサと、
クラスタリングアルゴリズムを用い、前記運動信号に基づいて前記被検対象者の呼吸数を計算するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項18】
被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成する少なくとも1つのセンサと、
クラスタリングアルゴリズムを用い、前記運動信号に基づいて前記被検対象者の呼吸関連運動を計算し、前記運動信号と前記呼吸関連運動との相関を求め、該求めた相関に応じて前記被検対象者の潜在的無呼吸発作を識別するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項19】
被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなく該被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記運動信号に基づいて前記被検対象者の呼吸関連運動を計算し、該呼吸関連運動に基づいて胸腹部大動脈瘤を識別し、該識別した胸腹部大動脈瘤の徴候に応じて前記被検対象者の潜在的無呼吸発作を識別するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項20】
被検対象者の姿勢変化を検出するセンサと、
臨床医が該被検対象者の姿勢を変えたという指摘を受取るユーザーインターフェースと、
(a)前記センサによる姿勢変化の検出と、(b)前記ユーザーインターフェースによる前記指摘の受取りの双方が規定された期間の時間枠内で行われた際に識別処理する制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項21】
被検対象者の呼吸運動信号を検知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
出力ユニットと、
前記呼吸運動信号を分析することにより非レート呼吸パターンをモニタし、前記被検対象者の状態の悪化を表す非レート非無呼吸パターンを判別し、状態の悪化を検出した際に警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項22】
前記非レート非無呼吸パターンが、肩息、末期呼吸、失調性呼吸、チェーン・ストークス呼吸、ビオー呼吸、深吸気勾配を伴う呼吸パターン、及び呼気勾配を伴う呼吸パターンからなるグループから選ばれ、前記制御ユニットが、前記非レート非無呼吸パターンをモニタするように構成されたことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記制御ユニットが、前記呼吸運動信号の規則性を分析し、該呼吸運動信号の規則性の分析結果に応じて前記出力ユニットを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記制御ユニットが、前記呼吸運動信号の規則性レベルが規則性の閾値レベルより低いレベルに低減したことを識別したことに応じて、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなく該被検対象者の運動を検知するように構成されたセンサと、
該検知した運動信号を分析し、これに基づいて呼吸関連運動を識別するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項26】
前記制御ユニットが、前記検知した運動の分析に応じて、胸腹部大動脈瘤を特徴付ける位相角を計算し、識別した位相角を臨床医に出力するように構成されていることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
被検対象者の心拍を検出するセンサと、
出力ユニットと、
前記心拍を分析することによって前記被検対象者の状態をモニタし、制御ユニットが心拍数の急変を伴う前記被検対象者の初期の低レベルの心拍数変動を検出した際に、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成されている制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項28】
前記制御ユニットが、他に検出パラメータに変化がなくても、心拍数の急変を検出した際に、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成されている制御ユニットと
を備えたことを特徴とする請求項27の装置。
【請求項29】
前記センサが、前記被検対象者の大きい身体運動を検知するように構成されており、前記制御ユニットが、前記心拍数の急変が前記被検対象者の大きい身体運動を伴っている際は警報を発生しないように構成されていることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記制御ユニットが、心拍数の急変を検出した際に心拍数の急激な減少を識別するように構成されていることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項31】
被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなく該被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成するように構成されたセンサと、
出力ユニットと、
検知した運動に応答して、前記被検対象者の臨床パラメータのそれぞれの未処理値を計算し、該計算された未処理値に基づいて代表値を計算し、該計算された代表値が臨床パラメータの基線値とは異なる少なくとも閾値割合であることが判明した場合のみ、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成されている制御ユニットと
を備えており、
前記制御ユニットは、運動を検知する期間を自動的に適用し、該運動検知に基づいて、所与の代表値を前記計算された未処理値の関数として計算するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項32】
前記制御ユニットが、前記計算された未処理値が臨床パラメータの基線値から偏位する範囲の関数として、運動を検知する期間を自動的に適用するように構成されていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
被検対象者の身体運動を検知し、それに応答して運動信号を生成するように構成された運動センサと、
前記運動信号を分析し、姿勢変化を伴う身体運動と姿勢変化を伴わない身体運動とを区別するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項34】
前記制御ユニットが、前記運動信号の分析に応じて前記被検対象者の心拍関連運動信号を抽出し、該抽出された心拍関連運動信号に応じて姿勢変化を伴う身体運動と姿勢変化を伴わない身体運動とを区別するように構成されていることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記制御ユニットが、姿勢変化を伴う身体運動と姿勢変化を伴わない身体運動との区別化を用いて褥瘡防止プロトコルの準拠の検証を行うように構成されていることを特徴とする請求項20、33又は34に記載の装置。
【請求項36】
前記制御ユニットが、姿勢変化率が0.1〜1回/時間の閾値率より小さいかどうかを識別するように構成されていることを特徴とする請求項20、33又は34に記載の装置。
【請求項37】
前記姿勢変化率が閾値率より小さい場合に、警報を発生するように構成されていることを特徴とする請求項20、33又は34に記載の装置。
【請求項38】
前記制御ユニットが、異なる方向から前記センサに作用する力に対する該センサの応答を表す校正データを用いて識別を実行するように構成されていることを特徴とする請求項20、33又は34に記載の装置。
【請求項39】
前記制御ユニットが、(a)ベッド中心部からベッド側部への姿勢変化と、(b)ベッド側部からベッド中心部への姿勢変化を区別するように構成されていることを特徴とする請求項20、33又は34に記載の装置。
【請求項40】
被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成する少なくとも1つのセンサと、
出力ユニットと、
前記運動信号を分析し、該分析に応答して、前記被検対象者の睡眠の可能性を識別することに応答して、該運動信号が、前記被検対象者がもはや非睡眠状態でありかつ該被検対象者がベッドから落下する危険性が高いことを表わしている場合に、臨床医に警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項41】
前記制御ユニットが、前記被検対象者の運動減少に基づいて該被検対象者の睡眠の可能性を識別するように構成されていることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記制御ユニットが、前記被検対象者の予め測定した運動パターンに基づいて、該被検対象者の運動減少を該被検対象者が睡眠している可能性の表れであると識別するように構成されていることを特徴とする請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記制御ユニットが、一日の時間帯に基づいて、前記被検対象者が睡眠している可能性を識別するように構成されていることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項44】
前記制御ユニットが、前記被検対象者がベッドから落下する危険性が高いことを示す入力と、該被検対象者に投与した薬剤の特徴を示す入力と、手術を受けた該被検対象者を示す入力とからなるグループから選んだ入力に基づいて、臨床医に警報を発生する閾値を適応させるように構成されていることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項45】
被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなく該被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成するように構成された単一のセンサと、
前記被検対象者の運動を識別するために前記運動信号を分析し、これに応じて該被検対象者がベッドにいるかどうかを判定するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項46】
前記制御ユニットが、前記運動信号を分析する際に、該信号中の雑音と該信号のスペクトルとよりなるグループから選ばれた信号の特徴を分析するように構成されていることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項47】
被検対象者がベッド内か外のどちらにいるのかを示す信号を生成するように構成されたセンサと、
出力ユニットと、
前記被検対象者が少なくとも規定時間の間、ベッド外にいる場合に、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項48】
前記制御ユニットが、前記被検対象者が1分より短い間、ベッド外にいる場合に、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動しないように構成されていることを特徴とする請求項47に記載の装置。
【請求項49】
被検対象者の運動を検知し、これに応じて運動信号を生成するように構成されており、板材、及び該板材上に重ねて連結した2つ以上の圧電センサを備えたセンサアセンブリと、
前記運動信号に応答して1つ以上の臨床パラメータを計算するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項50】
機械的センサ信号を生成するように構成された機械的センサと、
被検対象者の運動を検知し、これに応じてカメラ信号を生成するように構成されたカメラと、
前記機械的センサ信号と前記カメラ信号とからなるグループから選ばれた少なくとも1つの信号を用いて前記被検対象者の臨床パラメータを計算し、前記機械的センサ信号及び前記カメラ信号から導かれた情報を処理し、該処理された情報を用いて前記計算した臨床パラメータのエラーを最小限とするように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項51】
被検対象者の心拍数及び該被検対象者の追加の生理的パラメータを検知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
出力ユニットと、
前記心拍数及び前記生理的パラメータを分析することにより前記被検対象者の状態をモニタし、前記追加の生理的パラメータの低変動を伴う前記心拍数の高変動を検出した際に、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項52】
被検対象者の心拍数及び該被検対象者の追加の生理的パラメータを検知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
出力ユニットと、
前記心拍数及び前記生理的パラメータを分析することにより前記被検対象者の状態をモニタし、(a)低い信号品質の前記検知された心拍数を伴うと共に(b)高い信号品質の前記検出した追加の生理的パラメータを伴う、前記心拍数の高変動を検出した際に、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項53】
前記制御ユニットが、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動する際に、心不整脈の警報を発生すべく該出力ユニットを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項51又は52に記載の装置。
【請求項54】
前記制御ユニットが、警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動する際に、心房性細動の警報を発生すべく該出力ユニットを駆動するように構成されていることを特徴とする請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記追加の生理的パラメータが、前記被検対象者の呼吸数を含んでおり、前記少なくとも1つのセンサが呼吸数を測定するように構成されていることを特徴とする請求項51又は52に記載の装置。
【請求項56】
前記追加の生理的パラメータが、前記被検対象者の運動レベルを含んでおり、前記少なくとも1つのセンサが運動レベルを測定するように構成されていることを特徴とする請求項51又は52に記載の装置。
【請求項57】
前記制御ユニットが、高変動及び低変動の各々が15分内に発生することを判定することにより、高変動の前記心拍数が低変動の前記追加の生理的パラメータを伴うことを判定するように構成されていることを特徴とする請求項51又は52に記載の装置。
【請求項58】
前記少なくとも1つのセンサが、前記心拍数と前記追加の生理的パラメータとを検知するように構成された単一のセンサを備えていることを特徴とする請求項51又は52に記載の装置。
【請求項59】
被検対象者の心拍数及び該被検対象者の追加の生理的パラメータを検知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
出力ユニットと、
前記被検対象者への投薬の指示を受け、該投薬の指示に応じて自動的に閾値を設定し、心拍数変化が閾値を超えたことを識別した際に、警報を発生するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項60】
前記制御ユニットが、薬剤が交感神経薬であることの指示に応答して前記閾値を設定するよう構成されていることを特徴とする請求項59に記載の装置。
【請求項61】
ベッドにいる被検対象者の運動を検知し、それに応じて運動信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記運動信号の雑音特性を分析し、それに応じて前記被検対象者の体内動態を判定するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項62】
前記制御ユニットが、前記被検対象者の体内動態を判定する際に、該被検対象者が前記ベッドで横臥しているか又は座位の姿勢でいるかを判定するように構成されていることを特徴とする請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記少なくとも1つのセンサが、前記被検対象者の運動を感知する単一センサを備えていることを特徴とする請求項61に記載の装置。
【請求項64】
被検対象者の心拍数を検知し、これに応じて心拍数信号を生成するように構成されたセンサと、
出力ユニットと、
該心拍数信号の周期的パターンを検出した際に、睡眠時無呼吸の危険警報を発生すべく前記出力ユニットを駆動するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項65】
前記制御ユニットが、心拍数を分析する際に、該心拍数と前記被検対象者の呼吸運動との相関をとり、該相関に応じて前記被検対象者が睡眠時無呼吸の危険にあるかどうかを判定するように構成されていることを特徴とする請求項64に記載の装置。
【請求項66】
単一のセンサと、
該単一センサからの信号を受け、被検対象者の2態様のパルス経過時間の指標を計算し、該計算したパルス経過時間に基づいて、前記被検対象者の血圧の指標を抽出するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項67】
前記単一センサが、前記被検対象者に接触させて設置されていることを特徴とする請求項66に記載の装置。
【請求項68】
前記制御ユニットが、前記単一センサからの信号から(a)前記被検対象者の心周期の特徴時間と、(b)前記被検対象者の非心臓部における圧力波形の到達時間とを抽出し、該(a)及び(b)からパルス遷移時間を抽出するように構成されていることを特徴とする請求項66に記載の装置。
【請求項69】
被検対象者の運動を検知し、それに応じて運動信号を生成するように構成された複数のセンサと、
該運動信号を受け、前記複数のセンサの1つからの前記信号に基づいて、(a)前記被検対象者の心周期の特徴時間と、(b)前記被検対象者の非心臓部における圧力波形の到達時間とを抽出し、該(a)及び(b)からパルス遷移時間を抽出するように構成された制御ユニットと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項70】
前記センサが、前記被検対象者又は該被検対象者の着衣に接することなく該被検対象者の運動を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1、3、4、15、17、18、20、21、27、33、40、47、50、51、52、59、61、64又は66に記載の装置。
【請求項71】
前記センサが、前記被検対象者又は該被検対象者の着衣に接する若しくは視認することなく該被検対象者の運動を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1、3、4、15、17、18、20、21、27、33、40、47、50、51、52、59、61、64又は66に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2012−502671(P2012−502671A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509080(P2011−509080)
【出願日】平成21年5月10日(2009.5.10)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000473
【国際公開番号】WO2009/138976
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(507418809)アーリーセンス エルティディ (3)
【Fターム(参考)】