説明

自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材

【課題】自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材において、上下方向に作業スペースが十分とれない場合でも、ドア取付部材とハンガー金具とを容易に着脱することができ、取付時やメンテナンス時の作業性を向上することができるようにする。
【解決手段】自動ドア装置のドア部2の上端にハンガースペーサ6を設け、ハンガースペーサ6を、水平方向に可動支持されたハンガー金具5に上下方向からネジ締結して取り付け、ハンガースペーサ6の取付部に、ハンガー固定ボルト16、ドア吊りボルト17に対して水平方向に引抜き可能なU字溝6a、6bが形成されたドア取付構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動ドア装置には、自動ドア駆動装置(ドアエンジン)を設置する場所に応じて、無目(鴨居)内蔵式、鴨居外付け式、および天井裏設置式が知られている。
例えば、特許文献1には、吊戸車レール部上で水平駆動される吊戸車を保持するドアハンガー(ハンガー金具)をボルトで引戸式ドアの上端縁に締結したドア取付構造を有する自動ドア装置が記載されている。
このような自動ドア装置は、引戸式ドアとドアハンガーとが直接ボルト締結(ネジ締結)されているので、ボルトの着脱などの作業性が悪く、特に天井裏に取り付けた場合には、取付時やメンテナンス時の作業効率がよくないという問題があった。
そのような作業性を少しでも改善するため、ドアに対して直接作業を行わなくても済むように、ドアとハンガー金具との間に、ドア取付部材を設けたドア取付構造を有する自動ドア装置が知られている。例えば、ドア取付部材として、2枚の平行平板を支持板で接続した断面H字状のハンガースペーサを設けて、上側の平板とハンガー金具とをネジ締結し、下側の平板をドアとネジ締結したものが知られている。このハンガースペーサは、2枚の平行平板と支持板とを溶接したものや、同様の形状を鋳物で製作したものが知られている。
この場合、ハンガースペーサの高さや形状を適宜設定することにより、ネジ締結などの作業スペースを確保したり作業を容易化したりすることができるものである。
【特許文献1】特開2003−148038号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材には、以下のような問題があった。
ドア取付部材として、上記のハンガースペーサを用いたドア取付構造では、特許文献1に記載の技術の場合とは異なり、ハンガー金具をドアに直接取り付けることによる作業性の悪さは改善されるものの、例えばドアを取り外す際に振れ止め用の溝から外れるまで持ち上げられない場合や、天井裏のスペースの制約からドア取付部材へのネジ着脱のためのスペースが十分取れない場合には、作業性が悪くなるという問題がある。例えば、ハンガースペーサとハンガー金具とを締結するネジのすぐ上に、ハンガー金具を移動するためのレールが配置され、ネジを上方に引き抜くスペースがとれない場合がある。このような場合、例えばドアを外すためにレールを含めたハンガー金具を取り外さなければならないので、作業性効率が悪化するという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、上下方向に作業スペースが十分とれない場合でも、ドア取付部材とハンガー金具とを容易に着脱することができ、取付時やメンテナンス時の作業性を向上することができる自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、自動ドア装置のドア部の上端にドア取付部材を設け、該ドア取付部材を、水平方向に可動支持されたハンガー金具に上下方向からネジ締結して取り付けた自動ドア装置のドア取付構造であって、前記ドア取付部材の取付部に、取付用雄ネジに対して水平方向に引抜き可能なU字状溝が形成された構成とする。
この発明によれば、ドア取付部材の取付部にU字状溝が形成されるので、取付用雄ネジを緩めることで、ドア取付部材を水平方向に引き抜くことができる。そのため、上下方向に取付用雄ネジを引き抜くスペースがない場合でも、容易にハンガー金具からドア取付部材を取り外すことができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の自動ドア装置のドア取付構造において、前記取付用雄ネジを締結する雌ネジ部を有する板ナット部材を設けた構成とする。
この発明によれば、雌ネジ部を板ナット部材に設けるので、ドア取付部材の雌ネジ部を割愛または低減することができるので、ドア取付部材の構成を簡素な構成とすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の自動ドア装置のドア取付構造に用いるドア取付部材であって、前記ハンガー金具の取付部の下面に下方から当接される第1の取付部と、前記ドア部の上端面に上方から当接される第2の取付部と、前記第1の取付部と前記第2の取付部とを上下方向に離間して接続する支持部とが、プレス加工により一体に形成された構成とする。
この発明によれば、ドア取付部材を、第1の取付部と第2の取付部とを支持部によって上下方向に離間して接続するので、第1の取付部の下方および第2の取付部の上方にそれぞれ、空きスペースを形成することができる。そのため、取付用雄ネジの締結作業を行うためのスペースが確保することができる。
また、第1、第2の取付部、支持部が、プレス加工により一体に成形されるので、それぞれを別体として、例えば溶接などにより接合する場合に比べて、安価かつ信頼性の高い構成とすることができる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のドア取付部材において、前記第1の取付部に、前記U字状溝が形成された構成とする。
この発明によれば、第2の取付部とドア部とを固定した状態で、第1の取付部とハンガー金具とを固定する取付用雄ネジを緩めるのみで、ドア取付部材を固定したドア部を取り外すことができる。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項3または4に記載のドア取付部材において、前記第2の取付部に、前記U字状溝が形成された構成とする。
この発明によれば、ドア部に取り付けるための取付用雄ネジを緩めるのみで、ドア取付部材を水平方向に引き抜いてドア部から外すことができるので、ドア部からのドア取付部材の着脱が容易となる。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項3〜5のいずれかに記載のドア取付部材において、前記第1の取付部と前記第2の取付部とが、前記支持部に対して異なる方向に曲げ加工して形成されたZ字状の断面を有する構成とする。
この発明によれば、例えば、ドア取付部材を曲げ加工する金型や板材のバラツキにより、曲げ角度に製作誤差が生じても、製作誤差が、発生方向の対称性により第1の取付部と第2の取付部との間で相殺され、第1の取付部と第2の取付部との平行度を高精度に保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材によれば、取付用雄ネジを緩めることで、ドア取付部材を水平方向に引き抜くことができるので、上下方向に作業スペースが十分とれない場合でもハンガー金具とドア取付部材とを容易に着脱することができ、ドア部の取付時やメンテナンス時の作業性を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0013】
本発明の実施形態に係る自動ドア装置のドア取付構造、およびそれに用いるドア取付部材について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るドア取付構造を有する自動ドア装置の概略構成を模式的に示す正面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る自動ドア装置のドア取付構造について説明する分解斜視図である。図4(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る自動ドア装置のドア取付構造に用いるドア取付部材のそれぞれ上面図、正面図、および下面図である。図4(d)は、図4(b)のB−B断面図である。
【0014】
本実施形態のドア取付構造を有する自動ドア装置1は、図1、2に示すように、建物の壁9に設けられた出入口40にドア部2を配置し、その上方にある正面パネル部23(図2参照)の裏面側のドア駆動機構収納部21(図2参照)に設けられたドア駆動機構10により図1の左右方向にドア部2を移動して自動的に開閉するものである。図1の符号14は、ドア部2が開いたときのドア退避スペースである。
ドア駆動機構10は、例えばタイミングベルトなどからなる駆動ベルト11が、図示左右方向に配置されたプーリ12、12に巻き掛けられ、図示右端側のプーリ12が駆動モータ13と接続され、正逆回転可能とされたものである。
駆動ベルト11には、ドア連結板7が固定され、ドア連結板7の下端部には、戸車部4、4が設置されている。
【0015】
戸車部4は、図2に示すように、正面パネル部23の裏面側において水平方向に固定されたアングル22によって水平支持されたレール8上を走行し、ドア連結板7が図1の左右方向に滑らかに移動できるようにするためのものである。
その概略構成は、ハンガー金具5と、ハンガー金具5に水平方向に立設された支持軸4aに軸受4bを介して戸車4cが嵌合されてなる。
以下、方向の説明の便宜のために、レール8に直交して建物の正面に向かう方向(図2の左方向)、すなわち天井裏19から正面パネル部23の裏面を見る方向をP方向、その逆方向をQ方向と称するものとする。
【0016】
ハンガー金具5は、図3に示すように、水平方向に配置され、レール8(図1参照)に沿う方向に延された矩形板状の水平板部5A(ハンガー金具の取付部)と、水平板部5A上に垂直に立設された垂直板部5Bからなる。このため、ハンガー金具5の断面形状は、図2に示すように、垂直板部5Bがレール8に平行に配置され、レール8の下方でP方向に向けて水平板部5Aが延されたL字状をなしている。
【0017】
水平板部5Aの長手方向の両端部分には、ハンガー固定ボルト16、16(取付用雄ネジ)を上方から挿通するための板厚方向に貫通するU字溝5a、5a(U字状溝)が、水平板部5Aの内部からP方向に向かって延されている。
また、垂直板部5Bは、水平方向の両端部に切欠き5b、5bが形成され、U字溝5a、5aの近傍範囲での作業がQ方向側から容易に行えるようになっている。
水平板部5Aの下面側には、ハンガースペーサ6(ドア取付部材)がハンガー固定ボルト16、16によりネジ締結され、ドア部2がハンガースペーサ6にドア吊りボルト17、17によりネジ締結されて吊り下げられている。
【0018】
ハンガースペーサ6は、図3、4に示すように、ハンガー金具5の水平板部5Aに略重なる範囲に延された、平面視Q方向に開口したコ字状の上側取付部6A(ドア取付部材の第1の取付部)と、平面視P方向に開口したコ字状の下側取付部6C(ドア取付部材の第2の取付部)とが、略平行に配置され、それぞれのコ字状の凹部間が上下方向に延びる支持板部6B(支持部)で接続された部材である。
このため、レール8の延びる方向から見るとH字状の形状をなしている。また、図4(b)のB−B断面では、上側取付部6A、支持板部6B、下側取付部6Cとが、Z字状(図示では、逆Z字状)断面を構成している。
【0019】
上側取付部6A、下側取付部6Cのコ字状の開口を挟む両端部には、それぞれハンガー固定ボルト16、ドア吊りボルト17を上下方向に挿通するために、それぞれの内部からQ方向、P方向に向かってそれぞれ延され板厚方向に貫通するU字溝6a、6a(U字状溝)とU字溝6b、6b(U字状溝)が設けられている。
U字溝6a、6aの配置間隔はU字溝5a、5aの配置間隔に等しく、U字溝6b、6bの配置間隔はドア部2の上端部に設けられた雌ネジ18、18の配置間隔に等しくなるようにそれぞれ設定とされる。
U字溝6aとU字溝6bとの上下方向の位置関係は、適宜設定することができるが、本実施形態では各溝側部の近傍が略重なり合う位置関係に設定されている。
【0020】
そのため、図4(b)に示すように、Q方向から見るとH字状の形状を有し、支持板部6Bの両側部には、上側取付部6A、下側取付部6Cの間にドア吊りボルト17が出し入れ可能な取付スペース6c、6cが形成されている。
上側取付部6Aの下面側には、支持板部6Bを水平方向に外嵌する開口を有する平面視コ字状の板ナット15(板ナット部材)が配置される。板ナット15には、各U字溝5a、6aが重ね合わされた位置に、ハンガー固定ボルト16を螺合するための雌ネジ15a(雌ネジ部)が設けられている。
【0021】
ハンガースペーサ6は、例えば、上側取付部6A、支持板部6B、下側取付部6Cにそれぞれ対応する3枚の金属板を溶接などすることにより製作してもよいが、本実施形態では、ドア部2の荷重を保持するための剛性を有する1枚の金属板、例えば軟鋼板、ステンレス鋼板、アルミ合金板などをプレス加工して形成している。例えば、板厚6mmのSS400を採用することができる。
図5(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係るドア取付部材の製造工程の一部を説明するための工程説明図である。図6は、本発明の実施形態に係るドア取付部材の製造バラツキについて説明する断面図である。
【0022】
ハンガースペーサ6をプレス加工により製作するには、まず、抜き工程で、外形およびU字溝6a、6a、6b、6bの形状を形成した被加工部材30(図5(a)参照)を形成する。そして、曲げ工程で、上側取付部6Aと支持板部6Bとの境界を90°に曲げる。
すなわち、角度θをなすV字状の金型面32a、32aが形成されたダイ32上に平板状の被加工部材30を配置し、パンチ31によりプレスし、被加工部材30をダイ32の金型面32aに沿って曲げ、被加工部材30Aを形成する。被加工部材30Aは、ダイ32から外れると、スプリングバックによる曲げ部の角度変化Δθが起こるため、曲げ部の角度は、θ+Δθとなる。ダイ32は、Δθを考慮して設計するため、θ+Δθ=90°とすることができる。
次に、被加工部材30Bを裏返して、再度ダイ32上に配置して曲げ工程を行い、下側取付部6Cと支持板部6Bとの境界を上側取付部6Aとは反対方向に向けて90°に曲げる。
このようにして、図6(a)に示すように、角度θ=90°の曲げ部を有するハンガースペーサ6が形成される。
【0023】
ところで、被加工部材30の板厚バラツキや金属板のロットバラツキなどにより、スプリングバック量Δθが変化し、曲げ部の角度に製作誤差が生じる場合も考えられる。例えば、図6(b)に示すように、θ>θの曲げ部が形成されたとする。この場合、支持板部6Bは、上側取付部6A、下側取付部6Cに対して傾斜するが、傾斜方向の対称性から、互いの傾斜角がキャンセルされるため、上側取付部6Aと下側取付部6Cとの間の平行度は変わらない。そのため、これらの平行度の変化によりドア部2が傾いたりすることなく、ハンガースペーサ6から吊り下げることができる。
【0024】
このような構成によれば、ドア吊りボルト17をハンガースペーサ6のU字溝6bに上方から挿通して、ドア部2の上端の2本の雌ネジ18にネジ締結して、ハンガースペーサ6をドア部2上に固定する。そして、ハンガースペーサ6とハンガー金具5とを、上側取付部6AのU字溝6aとU字溝5aとを位置合わせして重ね合わせ、ハンガー固定ボルト16をそれらU字溝に挿通して板ナット15の雌ネジ15aにネジ締結することにより固定し、ドア部2をハンガー金具5に吊り下げるドア取付構造を構築することができる。
【0025】
このようなドア取付構造では、例えばメンテナンス時などに、以下のようにしてドア部2を取り外すことができる。
図7は、本発明の実施形態に係るドア取付構造におけるドア部の取り外し工程を説明する図2と同方向の断面説明図である。
作業者は、点検口20(図2参照)を開けて天井裏19に入り、Q方向から、例えばレンチなどの工具を入れて、各ハンガー固定ボルト16を緩める。その結果、ハンガー金具5とハンガースペーサ6との締結が解除される。
ここで、ハンガー金具5に切欠き5bが形成されているので、Q方向からハンガー固定ボルト16を容易に視認し、レンチなどの工具を切欠き5bを通して差し入れることができる。
次に、ハンガースペーサ6をドア部2とともにP方向に移動すれば、ドア部2をハンガー金具5から取り外すことができる。そして、例えば、ドア部2を交換したり、保守点検作業を行ったりすることができる。
【0026】
このような場合、もし水平板部5Aとアングル22との間の距離hがハンガー固定ボルト16の長さより短いと、ハンガー固定ボルト16が上方向にしか引き抜けない従来技術では、引き抜くことはできなくなる。
本実施形態によれば、ハンガー固定ボルト16を、U字溝5aを通して水平方向に引き抜き、ハンガー金具5から外れた状態で、U字溝6aに沿ってQ方向に引き抜くことで、2点鎖線に示すように取り外すことができる。
また、ハンガー固定ボルト16を水平板部5A上に残す必要があれば、ハンガー固定ボルト16を移動させず、ハンガースペーサ6のみをハンガー固定ボルト16から水平方向に引き抜いて、P方向に移動させることもできる。
また、ドア部2からハンガースペーサ6を外す必要がある場合、取付スペース6cに向けてP方向にレンチなどを差し入れてドア吊りボルト17を緩め、ハンガースペーサ6をQ方向に引き抜けば、ハンガースペーサ6をドア部2から取り外すことができる。
また、以上と逆の過程をたどることにより、分解されたそれぞれの部材を再度組み立てることができる。
【0027】
このように、本実施形態の自動ドア装置のドア取付構造では、U字溝5a、6a、6bの作用により、ハンガー固定ボルト16を緩めることで、ハンガー金具5およびハンガースペーサ6のいずれも水平方向に引き抜くことができるので、必要に応じて少なくともいずれかを水平方向に引き抜くことができる。そのため、上下方向に作業スペースが十分とれない場合でも、ハンガー金具5とハンガースペーサ6とを容易に着脱することができる。また、ハンガー固定ボルト16、ドア吊りボルト17などを抜き取ることが容易となる。
このように、本実施形態によれば、ドア部2の取付時やメンテナンス時の作業性を向上することができるものである。
【0028】
また、本実施形態のハンガースペーサ6は、プレス加工により製作するので、例えば鋳造や溶接などで製作する場合と異なり、例えば巣などの鋳造欠陥・溶接欠陥や溶接不良などを起こすことなく、安価かつ高精度に製作することができるという利点がある。
【0029】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図8(a)、(b)は、本発明の実施形態の変形例に係るドア取付部材の一例の概略構成を説明する図6と同方向の断面説明図である。
本変形例のハンガースペーサ60は、図8(a)に示すように、上記実施形態のハンガースペーサ6の上側取付部6A、下側取付部6Cに対応して、支持板部6Bに対する曲げ方向が同方向とされた上側取付部60A、下側取付部60Cを備える。すなわち、上側取付部60A、支持板部6B、下側取付部60Cにより、それぞれ、角度θ=90°に曲げられたコ字状断面が形成されている。
【0030】
この場合、チャンネル曲げを行うことで曲げ工程を1工程にできるので、安価に製造することができる。
ただし、図8(b)に示すように、スプリングバックのバラツキが生じる場合は、その影響が同方向に及んで倍増されるため、上側取付部60Aと下側取付部60Cとの平行度にバラツキが出やすい。このような場合には、スプリングバックのバラツキが少なくなるような管理を十分に行うことが好ましい。
【0031】
なお、上記の説明では、U字状溝をハンガー金具、ドア取付部材の各取付部に設ける例で説明したが、ドア部を取り外すという目的のためには、ドア取付部材の少なくも1つの取付面にU字状溝を設けるだけでよい。
例えば、ドア取付部材の第1の取付部のみにU字状溝を設け、ドア取付部材の第2の取付部に丸孔または長孔を設けてもよい。
また、ドア取付部材の第2の取付部のみにU字状溝を設け、第1の取付部に丸孔または長孔、あるいは雌ネジを設けてもよい。ここで、雌ネジを設けた場合には、板ナット部材は省略することができる。
また、いずれの場合でも、ハンガー金具は、U字状溝、丸孔、または長孔のいずれを有していてもよい。
【0032】
また、上記の説明では、ハンガー金具とドア取付部材とをネジ締結する場合、取付用雄ネジを締結するための複数の雌ネジを板ナット部材に設けた例で説明した。この場合、部品点数を削減することができるとともに、取付作業が容易となるという利点はあるが、板ナット部材は、複数の雌ネジが形成されているものに限定されるものではない。例えば、取付用雄ネジに対応して1個ずつの雌ネジが形成された板ナット部材でもよい。
また、板ナット部材に代えて、例えば、六角ナットなどナット部材を採用してもよい。
【0033】
また、上記の説明では、U字状溝として、U字溝の例で説明したが、端部に開口を有することで取付用雄ネジに対して水平方向に引抜き可能な形状であれば、U字溝に限定されるものではない。例えば、矩形溝、V字溝であってもよい。また、溝が延びる方向は直線状に限るものではなく、例えば、引抜き方向が屈折されるような、くの字状、L字状、波形などに形成されていてもよい。
【0034】
また、上記の説明では、U字状溝がP方向またはQ方向に延された例で説明したが、取付用雄ネジに対して水平方向に引抜き可能な形状であれば、引抜き方向はこれら2方向に限定されない。また、各取付部におけるU字状溝の設置方向も必要に応じて適宜変えて実施することができる。
例えば、上記の実施形態で、U字溝6aの開口の向きをP方向とすれば、ハンガースペーサ6をQ方向、すなわち天井裏の作業者の方向に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るドア取付構造を有する自動ドア装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る自動ドア装置のドア取付構造について説明する分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る自動ドア装置のドア取付構造に用いるドア取付部材のそれぞれ上面図、正面図、下面図および正面図のB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るドア取付部材の製造工程の一部を説明するための工程説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るドア取付部材の製造バラツキについて説明する断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るドア取付構造におけるドア部の取り外し工程を説明する図2と同方向の断面説明図である。
【図8】本発明の実施形態の変形例に係るドア取付部材の一例の概略構成を説明する図6と同方向の断面説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 自動ドア装置
2 ドア部
3 ハンガー部
4 戸車部
5 ハンガー金具
5A 水平板部(ハンガー金具の取付部)
5a、6a、6b U字溝(U字状溝)
5b 切欠き
6、60 ハンガースペーサ(ドア取付部材)
6A、60A 上側取付部(ドア取付部材の第1の取付部)
6B 支持板部(支持部)
6C、60C 下側取付部(ドア取付部材の第2の取付部)
6c 取付スペース
7 ドア連結板
8 レール
10 ドア駆動機構
15 板ナット(板ナット部材)
15a 雌ネジ(雌ネジ部)
16 ハンガー固定ボルト(取付用雄ネジ)
17 ドア吊りボルト(取付用雄ネジ)
19 天井裏
23 正面パネル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドア装置のドア部の上端にドア取付部材を設け、該ドア取付部材を、水平方向に可動支持されたハンガー金具に上下方向からネジ締結して取り付けた自動ドア装置のドア取付構造であって、
前記ドア取付部材の取付部に、取付用雄ネジに対して水平方向に引抜き可能なU字状溝が形成されたことを特徴とする自動ドア装置のドア取付構造。
【請求項2】
前記取付用雄ネジを締結する雌ネジ部を有する板ナット部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動ドア装置のドア取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動ドア装置のドア取付構造に用いるドア取付部材であって、
前記ハンガー金具の取付部の下面に下方から当接される第1の取付部と、
前記ドア部の上端面に上方から当接される第2の取付部と、
前記第1の取付部と前記第2の取付部とを上下方向に離間して接続する支持部とが、プレス加工により一体に形成されたことを特徴とするドア取付部材。
【請求項4】
前記第1の取付部に、前記U字状溝が形成されたことを特徴とする請求項3に記載のドア取付部材。
【請求項5】
前記第2の取付部に、前記U字状溝が形成されたことを特徴とする請求項3または4に記載のドア取付部材。
【請求項6】
前記第1の取付部と前記第2の取付部とが、前記支持部に対して異なる方向に曲げ加工して形成されたZ字状の断面を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のドア取付部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−146600(P2007−146600A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346020(P2005−346020)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(390001904)寺岡オート・ドアシステム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】