説明

自動二輪車

【課題】燃料を貯蔵するタンクから燃料電池に燃料を導く一連の装置を容易に組み立てることが可能であり、これらを流体的に接続する流路の漏洩検査の作業性が良好であり、組立作業や検査における取り扱いの容易な自動二輪車を提案する。
【解決手段】自動二輪車は、燃料タンク15と、燃料タンク15に接続する燃料充填用の継手55と、燃料タンク15に接続して燃料の圧力を第一圧力に減圧する第一減圧弁71と、第一減圧弁71に接続して燃料の圧力を第二圧力に減圧する第二減圧弁72と、第二減圧弁72に接続して燃料と酸化剤との反応により発電する燃料電池2と、燃料タンク15、継手55および第一減圧弁71の相対的な配置を保って支持する高圧側構造体75と、第二減圧弁72および燃料電池2の相対的な配置を保って支持する低圧側構造体76と、高圧側構造体75と低圧側構造体76とを着脱自在に固定可能な主構造体77と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池が発電する電力でモータを駆動して走行する自動二輪車が知られている。この自動二輪車は、水素ガスを貯蔵する水素タンクと、水素タンクに水素ガスを充填可能な燃料充填用継手と、水素タンクに接続する複数の減圧弁と、水素ガスと空気中の酸素との反応により発電する燃料電池と、を備える。また、自動二輪車は、これら水素タンク、燃料充填用継手、複数の減圧弁および燃料電池などの装置を固定するフレームと、適宜、これらの装置間を流体的に接続する中継配管と、を備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−078622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素タンク、燃料充填用継手、複数の減圧弁および燃料電池などの装置をフレームに取り付ける手順として、先ずこれらの装置間を中継配管で流体的に接続し、この後、これら装置および中継配管の流体的な接続を保ったままフレームへ取り付け付けて固定する手順(以下、「配管接続先行手順」と呼ぶ)がある。一方、先ずこれらの装置間をフレームに取り付けて固定し、この後、これら装置を中継配管で流体的に接続する手順(以下、「フレーム取付先行手順」と呼ぶ)がある。いずれの手順においても、水素タンクから燃料電池に水素ガスを導く流路は、常用の圧力を印加して接続部分毎に気密性を保証するための漏洩検査を行う必要が有る。
【0005】
しかしながら、配管接続先行手順の場合、水素タンク、継手、複数の減圧弁および燃料電池などの装置を一括して取り扱いフレームへ取り付ける必要が有り、これら装置間の相対的な位置関係を保つことが難しく、相対的な位置関係の変化を生じる虞が高い。この装置間の相対的な位置関係の変化は、中継配管や、中継配管と装置との継手部分を損傷したり、漏洩を誘発したりする。
【0006】
また、フレーム取付先行手順の場合、当然、水素タンク、継手、複数の減圧弁および燃料電池、中継配管などの装置をフレームに取り付けた状態で漏洩検査を行うことになり、検査対象の重量が増して取り扱いの容易性が低下する。また、中継配管と装置との継手部分の近傍にフレームが位置する場合、漏洩検査の作業性が低下するとともに、検査の信頼性をも低下させかねない。さらに、これら取り扱い容易性、検査の作業性の低下は、ライン生産方式に適さない。
【0007】
そこで、本発明は、燃料を貯蔵するタンクから燃料電池に燃料を導く一連の装置を容易に組み立てることが可能であり、これらを流体的に接続する流路の漏洩検査の作業性が良好であり、組立作業や検査における取り扱いの容易な自動二輪車を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため本発明に係る自動二輪車は、燃料を貯蔵可能な燃料タンクと、前記燃料タンクに流体的に接続する燃料充填用の継手と、前記燃料タンクに流体的に接続して前記燃料の圧力を第一圧力に減圧する第一減圧弁と、前記第一減圧弁に流体的に接続して前記燃料の圧力を第二圧力に減圧する第二減圧弁と、前記第二減圧弁に流体的に接続して燃料と酸化剤との反応により発電する燃料電池と、前記燃料タンク、前記継手および前記第一減圧弁の相対的な配置を保って支持する高圧側構造体と、前記第二減圧弁および前記燃料電池の相対的な配置を保って支持する低圧側構造体と、前記高圧側構造体と前記低圧側構造体とを着脱自在に固定可能な主構造体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料を貯蔵するタンクから燃料電池に燃料を導く一連の装置を容易に組み立てることが可能であり、これらを流体的に接続する流路の漏洩検査の作業性が良好であり、組立作業や検査における取り扱いの容易な自動二輪車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す左側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す左側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る自動二輪車の後半部を部分的に示した斜視図。
【図5】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の一例として燃料電池自動二輪車の主要な装置を示したブロック図。
【図6】本発明の実施形態に係る自動二輪車のフレーム、燃焼電池および燃料供給系統を示す斜視図。
【図7】本発明の実施形態に係る自動二輪車のフレーム、燃焼電池および燃料供給系統を示す平面図。
【図8】本発明の実施形態に係る自動二輪車の高圧側構造体を示す斜視図。
【図9】本発明の実施形態に係る自動二輪車の高圧側モジュールを示す斜視図。
【図10】本発明の実施形態に係る自動二輪車の高圧側モジュールを示す斜視図。
【図11】本発明の実施形態に係る自動二輪車の低圧構造体を示す斜視図。
【図12】本発明の実施形態に係る自動二輪車の低圧側モジュールを示す斜視図。
【図13】本発明の実施形態に係る自動二輪車の低圧側モジュールを示す斜視図。
【図14】本発明の実施形態に係る自動二輪車の主構造体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両駆動用モータの冷却装置の実施の形態について、図1から図14を参照して説明する。
【0012】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。
【0013】
図3は、本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す斜視図である。
【0014】
図1は、自動二輪車1の外観を示す図であり、図2および図3は、自動二輪車1の外装を部分的に切り欠きまたは除去して内部構造を示す図である。
【0015】
また、説明を容易にするため、自動二輪車1の前方に実線矢F、後方に実線矢Rを付す。
【0016】
図4は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の後半部を部分的に示した斜視図である。
【0017】
図1から図4に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、燃料電池2が発電する電力によりモータ8を駆動して走行する燃料電池自動二輪車である。自動二輪車1は、スクータ型の自動二輪車である。自動二輪車1は、前後に延びる車両本体3と、操舵輪である前輪5と、前輪5を操舵可能に支えるステアリング機構6と、駆動輪である後輪7と、後輪7を駆動するモータ8と、後輪7を支えるスイングアーム9と、を備える。
【0018】
燃料電池2は、燃料と酸化剤との反応により発電する。燃料電池2は、燃料として水素ガスを使用し、酸化剤として空気中の酸素を使用する空冷式燃料電池システムである。
【0019】
車両本体3は、車両の前後に延びるフレーム10と、フレーム10を覆う外装11と、フレーム10後半部の上方に位置するシート12と、を備える。
【0020】
また、車両本体3は、燃料により発電する燃料電池2と、燃料電池2の発電に使用する燃料を貯蔵可能な燃料タンク15と、燃料電池2の電力を補助する二次電池16と、燃料電池2の出力電圧の調整と燃料電池2および二次電池16の電力分配制御とを行う電力管理装置17と、電力管理装置17から直流電力を受け取り三相交流電力に変換してモータ8の運転制御を行うモータコントローラ18と、これらを統括的に管理して運転制御を行う車両コントローラ19と、を備える。自動二輪車1のパワートレインは、燃料電池2および二次電池16を有するハイブリッドシステムである。
【0021】
フレーム10は、複数の鋼鉄製中空管を一体に組み合わせたものであり、前端上部に位置するヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21の中央部分から後ろ下がりに傾斜して延びる上部ダウンフレーム22と、上部ダウンフレーム22と、下部ダウンフレーム23と、左右一対の下部フレーム25と、左右一対の上部フレーム26と、ピボット28と、ガードフレーム29と、を備える。
【0022】
ヘッドパイプ21は、フレーム10の前端上部に位置し、ステアリング機構6を車両の左右方向へ回転可能に支持する。
【0023】
上部ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21の中央部に接続し、この接続部分から後ろ下がりに傾斜して延びる。
【0024】
下部ダウンフレーム23は、ヘッドパイプ21の下部に接続し、この接続部分から後ろ下がりに傾斜して延びる。
【0025】
左右一対の下部フレーム25は、下部ダウンフレーム23を挟み込んでヘッドパイプ21の下部に接続し、この接続部分から後ろ下がりに傾斜して延び、この傾斜部分の下端を後方に向けて湾曲し、この湾曲部分の後端から車両本体3の前後に沿って車両本体3の中央部分に達する位置まで直線状に延び、この直線部分の後端部から後上方に向けて湾曲し、この湾曲部分の上端部から後ろ上がりに傾斜して延びて上部フレーム26に接続する。左右一対の下部フレーム25は、前側の湾曲部分にライダーが足を載せるためのフットレスト31を備える。車両本体3の左側にある下部フレーム25は、サイドスタンドブラケット32を備える。サイドスタンドブラケット32は、左側へ傾斜する自動二輪車1を自立状態で支えるサイドスタンド33を備える。サイドスタンド33は、自動二輪車1を支える展開位置と走行のための格納位置との間を揺動できる。
【0026】
左右一対の上部フレーム26は、車両本体3の前半部において下部ダウンフレーム23の前側傾斜部分の中央部に接続し、この接続部分から車両本体3の後方に向かって略水平に延び、車両本体3の後半部であり後輪7の上方部分において後ろ上がりに大きく傾斜し、ヘッドパイプ21と同程度の高さまで延びる。
【0027】
ピボット28は、車両本体3の後半部において左右の上部フレーム26間に架かる。また、ピボット28は、上部フレーム26と下部フレーム25との接続部分よりも後方に位置する。
【0028】
ガードフレーム29は、左右の下部ダウンフレーム23の後側に位置する屈曲部分の間に架かり、下部ダウンフレーム23との接続部分から後ろ下がりに膨らみU字形状をなす。ガードフレーム29は、直立する自動二輪車1を自立状態で支えるセンタースタンド34を備える。センタースタンド34は、自動二輪車1を支える展開位置と走行のための格納位置との間を揺動する。
【0029】
シート12は、車両本体3の後半上部に位置し、フレーム10の後半部上方を覆って前後に延びる。シート12は、タンデム式であり、ライダーが着座するための前方部12aと、パッセンジャーが着座するための後方部12bとを一体的に備える。
【0030】
ここで、左右の上部フレーム26および左右の下部フレーム25で囲む空間をセンタートンネル領域35と呼び、上部フレーム26の後半部、外装11およびシート12で囲む空間を機器搭載領域36と呼び、センタートンネル領域35の後方かつ機器搭載領域36の下方の空間をタイヤハウス領域37と呼ぶ。
【0031】
センタートンネル領域35は、燃料タンク15を収容する。
【0032】
機器搭載領域36は、車両本体3の前方側から順に二次電池16、電力管理装置17、燃料電池2を収容する。また、機器搭載領域36は、電力管理装置17の左右いずれかの側方、例えば車両本体3の左側方に並ぶモータコントローラ18を収容する。
【0033】
タイヤハウス領域37は後輪7の配置箇所である。
【0034】
隔壁部材39は、機器搭載領域36とタイヤハウス領域37との間に挟まり、それぞれの領域を分断する。
【0035】
外装11は、車両本体3の前半部を覆うフロントレッグシールドカバー41と、車両本体3の中央上部に位置して上部フレーム26の上方を覆うフロントフレームカバー42と、車両本体3の後半部に位置して車両本体3の側面のうちシート12の下方部分を覆うフレームカバー43と、を備える。
【0036】
フレームカバー43は、シート12とともに機器搭載領域36を区画する。機器搭載領域36は、シート12、フレームカバー43および隔壁部材39が囲む閉鎖的な空間であり、フレームカバー43、もしくは隔壁部材39の適宜の箇所に通気孔(図示省略)を配置することによって、燃料電池2への空気の流れを容易、かつ確実に制御できるとともに、冷却が必要な装置へ冷却風としての空気の流れを容易、かつ確実に供給できる。なお、機器搭載領域36は、気密空間である必要はなく、各カバーの継ぎ目などから空気が入り込むことを許容する。
【0037】
燃料電池2は、機器搭載領域36の後半側に位置する。さらに具体的には、燃料電池2は、シート12の後方部12bの下方であり、上部フレーム26が後ろ上がりに大きく傾斜する部分に位置する。燃料電池2は、扁平な立方体形状の装置である。燃料電池2は、投影面積が最も大きい吸気面2aに空気の導入口を有し、車両の後方を臨む面に排気口2bを有する。燃料電池2は、吸気面2aを前上方に向け、より詳しくはシート12の前方部12aと後方部12bとの段差部分に向けて、前傾する姿勢でフレーム10に固定される。これにより、燃料電池2は、吸気面2aとシート12との間に比較的大きな隙間を確保して機器搭載領域36の雰囲気(空気)を十分に吸い込むことができる。
【0038】
また、燃料電池2は、機器搭載領域36の雰囲気(空気)を吸気面2aに吸い込むため、吸込負圧を発生するファン45を備える。燃料電池2は、燃料タンク15から供給された水素ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電し、この後、湿潤な余剰ガスを排気口2bから排出する。この過程で、燃料電池2は空気によって冷却される。排気口2bは、排気ダクト47に接続する。
【0039】
排気ダクト47は、燃料電池2の後方に位置し、車両本体3の後端に開口する排気口47aへ燃料電池2の排気を導く。排気ダクト47の前方下端部は燃料電池2の排気口2bに接続する。排気口47aは、燃料電池2の排気口2bよりも上方、望ましくは排気ダクト47の後方上端部に位置する。排気ダクト47は、燃料電池2の排気口2bよりも上方に位置する排気口47aを有することで、未反応の水素ガスを含む湿潤な余剰ガスを確実に車両本体3から排気する。
【0040】
燃料タンク15は、高圧圧縮水素貯蔵システムであり、燃料電池2の燃料としての水素ガスを貯蔵するアルミライナ製複合容器である。例えば、燃料タンク15は、約30MPaから約70MPaの水素ガスを貯蔵可能な容器である。燃料タンク15は、前後の端面にドーム状の鏡板を有する円筒形状のタンクである。燃料タンク15は円筒胴の中心線を車両本体3の前後方向へ向けてセンタートンネル領域35に位置する。
【0041】
また、燃料タンク15は、左右の下部フレーム25の間に架設されるクランプバンド49によって固定される。
【0042】
燃料供給元弁52は、電磁弁を用いた遮断弁であり、燃料タンク15から燃料電池2へ向かう燃料の供給と遮断とを行う。燃料供給元弁52は、燃料タンク15の後方側の鏡板の頂部に位置する。
【0043】
継手55は、燃料タンク15に流体的に接続して燃料タンク15内に燃料としての水素ガスを充填可能な継手である。継手55は、燃料タンク15の胴部の上方に位置して車両本体3の上方に向けて延びる。継手55の燃料充填口53は、機器搭載領域36の外側であり、上部ダウンフレーム22の近傍であり、燃料タンク15の前方側鏡板の上方近傍に位置して二次電池16から十分に離れる。また、燃料充填口53は、フロントフレームカバー42に覆われる。
【0044】
また、燃料充填口53は、車両本体3の上方を向く。燃料タンク15に燃料を充填する際、フロントフレームカバー42を開放した状態において、燃料充填口53の上方は、雰囲気に開放する空間になる。したがって、燃料の充填作業において仮に燃料が漏洩しても、漏洩燃料が滞留することはない。さらに、燃料充填口53は、通常のガソリンエンジンを備えたスクータ型の自動二輪車における燃料給油口と配置を同じくするので、違和感を生じることがない。
【0045】
二次電池16は、箱形状のリチウムイオン電池である。二次電池16は、機器搭載領域36の前側に位置し、より具体的には、燃料タンク15の後方側鏡板の上方、かつシート12の前方部12aの下方に位置して自動二輪車1の仮想的な水平面に略直立する。
【0046】
自動二輪車1は、二次電池16の他に、メータ類(図示省略)、ランプ類(図示省略)用の電源として12V系の電力を供給する第2二次電池56を備える。第2二次電池56は、燃料タンク15の側方(例えば燃料タンク15の右側方)に位置する。第2二次電池56は、燃料充填口53よりも下方かつ燃料タンク15の燃料供給元弁52よりも前方に位置する。仮に燃料である水素ガスが燃料充填口53から漏洩しても、水素ガスは自動二輪車1の上方に向かって上昇するので、外装11内に滞留することなく、車外に拡散する。また、仮に燃料である水素ガスが燃料供給元弁52から漏洩しても、水素ガスはタイヤハウス領域37に向かって移動するので、外装11内に滞留することなく、車外に拡散する。
【0047】
電力管理装置17は、二次電池16および燃料電池2の間に挟まり位置する。また、電力管理装置17は、扁平な立方体形状の装置であり、天面を後ろ斜め上方へ向けて傾き燃料電池2を臨み、フレーム10に固定される。
【0048】
電力管理装置17の側方に並ぶモータコントローラ18も、電力管理装置17と同様に、二次電池16および燃料電池2の間に挟まり位置する。モータコントローラ18も、扁平な立方体形状の装置であり、天面を後ろ斜め上方へ向けて傾き燃料電池2を臨み、フレーム10に固定される。
【0049】
自動二輪車1は、二次電池16、電力管理装置17、モータコントローラ18および燃料電池2を上述のように配置することで、電気的な接続関係が隣り合う装置を極力近接する位置に配置することが可能であり、装置間の配線長を短く、配線に係る重量を軽くすることができる。
【0050】
車両コントローラ19は、下部フレーム25の前方に位置して燃料タンク15の前方側鏡板に対面する。
【0051】
ステアリング機構6は、車両本体3の前方に位置し、フレーム10のヘッドパイプ21を中心に左右方向へ回転し前輪5の操舵を可能にする。ステアリング機構6は、頂部に位置するハンドル57と、ハンドル57と前輪5との間を若干後傾して上下に延びる左右一対のフロントフォーク58と、を備える。左右のフロントフォーク58は、弾性的に伸縮自在なテレスコピック構造を備え、下端部に前輪を回転自在に支持するとともに前輪5の上方にフロントフェンダ59を支持する。
【0052】
前輪5は、左右のフロントフォーク58の下端部に架かる車軸の周りに回転自在な従動輪である。
【0053】
スイングアーム9は、車両本体3の左右へ延びる回転中心としてのピボット28の周りに上下方向へ揺動できる。スイングアーム9は所謂片持ち式であり、車両本体3の左右いずれか一方側(ここでは左方側)から片持ち状に後輪7を支える。リアサスペンション61は、フレーム10とスイングアーム9との間に介在してスイングアーム9の揺動を緩衝する。冷却用ダクト62は、機器搭載領域36とモータ8とを接続し、機器搭載領域36内の空気をモータ8の冷却風として案内する。リアサスペンション61は、フレーム10とスイングアーム9との間に架かり、スイングアーム9の揺動を干渉する。
【0054】
後輪7は、スイングアーム9の後端部において車両本体3の左右いずれか一方側(ここでは左方側)から片持ち状に延びる車軸の周りに回転自在な駆動輪である。
【0055】
モータ8は、燃料電池2の出力により後輪7を駆動する自動二輪車1の原動機である。モータ8は、スイングアーム9に一体的に組み付き、ユニットスイング式スイングアームを構成する。
【0056】
また、車両本体3は、燃料の漏洩を検出可能な燃料漏洩検出器65、66を備える。具体的には、燃料漏洩検出器65、66は、水素ガスを検出可能な水素ガス検出器である。燃料漏洩検出器65は、機器搭載領域36、すなわちシート12の下方空間のうち上方寄りに配置される。燃料漏洩検出器66は、センタートンネル領域35のうち燃料供給元弁52近傍の空間の上方寄りであり、かつタイヤハウス領域37に接近した位置にある。水素ガスは機器搭載領域36およびセンタートンネル領域35の雰囲気である空気よりも軽く、燃料電池2や、燃料タンク15、燃料タンク15と燃料電池2とを接続する中継配管などから漏洩する燃料を容易に検出できる。特に、機器搭載領域36は、閉鎖的な空間であり、燃料電池2、もしくはその近傍の配管系統(図示省略)から燃料が漏洩した場合は、燃料漏洩検出器65によって漏洩する燃料を速やかに検知できる。また、燃料漏洩検出器66は、燃料タンク15の燃料供給元弁52付近から燃料が漏洩し、走行風などによってタイヤハウス領域37に漏洩燃料が流れ出しやすい状況下においても、漏洩する燃料を確実に検知できる。
【0057】
図5は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の一例として燃料電池自動二輪車の主要な装置を示したブロック図である。
【0058】
図5に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、燃料電池2、モータ8、燃料タンク15、二次電池16、電力管理装置17、モータコントローラ18および車両コントローラ19に加えて、ライダーの加速/減速の操作の検知および操作量の計測を行うスロットルセンサ67と、燃料タンク15から燃料電池2に向かう燃料の圧力を検出する圧力センサ68と、燃料タンク15から燃料電池2に向かう燃料の温度を検出する燃料用温度センサ69と、燃料漏れ時に燃料タンク15から燃料電池2に供給される燃料を遮断する燃料供給元弁52と、燃料タンク15に流体的に接続して燃料の圧力を第一圧力に減圧する第一減圧弁71と、第一減圧弁71に流体的に接続して燃料の圧力を第二圧力に減圧する第二減圧弁72と、を備える。なお、図5中、実線矢は燃料である水素ガスおよび空気の流れを示し、破線または破線矢は電力の流れを示し、一点鎖線または一点鎖線矢は制御信号の流れを示す。矢のない線分は双方向の流れを示す。
【0059】
電力管理装置17は、燃料電池2の発電電力を制御するとともに、燃料電池2および二次電池16から送られる電力を12V電源に変換し、第2二次電池56に蓄電する。
【0060】
モータコントローラ18は、モータ8の駆動制御に加え、自動二輪車1の減速時や、下り坂走行時にモータ8に発生する負のトルクを電力に変換する回生制御を行う。
【0061】
車両コントローラ19は、スロットルセンサ67が検出するアクセル操作量、圧力センサ68および燃料用温度センサ69の検出値を読み取り、燃料電池2、二次電池16、電力管理装置17およびモータコントローラ18との間で状態量の読み取りおよび制御信号の出力を双方向に行い、自動二輪車1の運転制御を行う。
【0062】
具体的には、車両コントローラ19は、自動二輪車1の走行に必要なエネルギーが比較的に小さい巡航時や平坦路の走行の際、燃料電池2が発電した電力を電力管理装置17からモータコントローラ18を経由し、モータ8に供給するとともに、電力管理装置17から二次電池16に供給し、モータ8の駆動に不要な余剰電力を二次電池16に蓄える。
【0063】
他方、車両コントローラ19は、自動二輪車1の走行に必要なエネルギーが比較的に大きい加速時や、上り坂の走行の際、燃料電池2が発電した電力を電力管理装置17からモータコントローラ18を経由し、モータ8に供給するとともに、二次電池16に蓄えられた電力も電力管理装置17からモータコントローラ18を経由し、モータ8に供給する。
【0064】
さらに、車両コントローラ19は、減速時や、下り坂の走行の際、モータ8を発電機として使用し、モータ8が発電した回生電力を電力管理装置17から二次電池16に供給し、蓄える。
【0065】
ここで、燃料タンク15から燃料供給元弁52、第一減圧弁71および第二減圧弁72を経て燃料電池2に至る燃料の供給路を燃料供給系統73と呼ぶ。
【0066】
第一減圧弁71は、燃料タンク15の圧力を一次側圧力とし、これを第一圧力に減圧して第二減圧弁へ送る。
【0067】
第二減圧弁72は、第一減圧弁71の二次側圧力(すなわち、第一圧力)を第二圧力に減圧して燃料電池2へ送る。
【0068】
なお、燃料タンク15の圧力、すなわち第一減圧弁71の一次側圧力は、例えば、高圧ガス保安法における高圧ガスであり、常用の温度で圧力が1MPa以上、具体的には約70MPaである。また、第一減圧弁71の二次側圧力(すなわち、第一圧力)は、常用の温度で圧力が1MPa未満であることが好ましく、具体的には約2Mpaに設定される。さらに、第二減圧弁72の二次側圧力(すなわち、第二圧力)は、第一圧力よりも低圧であり、かつ常用の温度で圧力が1MPa未満であることが好ましく、具体的には約0.4MPaに設定される。
【0069】
次にフレーム10、燃料電池2および燃料供給系統73について詳述する。
【0070】
図6は、本発明の実施形態に係る自動二輪車のフレーム、燃焼電池および燃料供給系統を示す斜視図である。
【0071】
図7は、本発明の実施形態に係る自動二輪車のフレーム、燃焼電池および燃料供給系統を示す平面図である。
【0072】
図6および図7に示すように、自動二輪車1は、燃料を貯蔵可能な燃料タンク15と、燃料タンク15に流体的に接続する燃料充填用の継手55と、燃料タンク15に流体的に接続して燃料の圧力を第一圧力に減圧する第一減圧弁71と、第一減圧弁71に流体的に接続して燃料の圧力を第二圧力に減圧する第二減圧弁72と、第二減圧弁72に流体的に接続して燃料と酸化剤との反応により発電する燃料電池2と、燃料タンク15、継手55および第一減圧弁71の相対的な配置を保って支持する高圧側構造体75と、第二減圧弁72および燃料電池2の相対的な配置を保って支持する低圧側構造体76と、高圧側構造体75と低圧側構造体76とを着脱自在に固定可能な主構造体77と、を備える。
【0073】
燃料電池2は、搭載箇所における左右の上部フレーム26間の離間距離よりも大きい幅寸法を有する幅広な直方体形状の装置である。
【0074】
第一減圧弁71は、少なくとも一部を左右の上部フレーム26間に配置する。
【0075】
自動二輪車1は、燃料タンク15、継手55および第一減圧弁71を高圧側構造体75に固定して高圧側モジュール78とし、第二減圧弁72および燃料電池2を低圧側構造体76に固定して低圧側モジュール79とし、それぞれのモジュール78、79を個別に取り扱い、フレーム10に着脱できる。第一減圧弁71と第二減圧弁72とを流体的に接続する第一中継配管81は、それぞれのモジュール78、79をフレーム10に固定した後、接続される。
【0076】
ここで、先ずフレーム10について詳述する。
【0077】
左右それぞれの下部フレーム25は、ヘッドパイプ21に接続する前側から順に連接する前傾斜部82、前湾曲部83、下水平部85、後湾曲部86および後傾斜部87を有する。前傾斜部82は、ヘッドパイプ21との接続部分から後ろ下がりに傾斜して延びる。前湾曲部83は、前傾斜部82の下端に連接し、後方に向けて湾曲する。下水平部85は、前湾曲部83の後端に連接し、後方へ略水平に延びる。後湾曲部86は、下水平部85の後端に連接し、後ろ斜め上方へ向けて湾曲する。後傾斜部87は、後湾曲部86の上端に連接し、後ろ上がりに傾斜して延びる。
【0078】
左右それぞれの上部フレーム26は、前傾斜部82の中央部との接続部分から後方へ略水平に延びて後傾斜部87の頂部に接続し、後部傾斜部88との接続部分より後部を後ろ上がりに大きく傾斜してヘッドパイプ21の高さ程度まで延びる。
【0079】
左右の下水平部85および左右の上部フレーム26は燃料タンク15を協働して囲む。
【0080】
また、フレーム10は、高圧側構造体75と、主構造体77と、組み合わせた構造物でもある。フレーム10は、高圧側構造体75と主構造体77とを結合する結合構造89を備える。結合構造89は、高圧側構造体75側のフランジ91と、主構造体77側のフランジ92と、それぞれのフランジ91、92を結合する締結部材としてのボルト93と、を備える。
【0081】
他方、低圧側構造体76は、U字形状の枠状に屈折する鋼管であり、上部フレーム26間に架設される。低圧側構造体76は、U字形状の開放端を左右それぞれの上部フレーム26に結合し、この結合部分から後ろ斜め上方に延びる。
【0082】
図8は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の高圧側構造体を示す斜視図である。
【0083】
図8に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1の高圧側構造体75は、下部フレーム25のうち下水平部85および後湾曲部86と、ガードフレーム29と、を備える。なお、高圧側構造体75は、下部フレーム25の一部であって、前傾斜部82のうち上部フレーム26との接続部分より下方部分、前湾曲部83、下水平部85、後湾曲部86、および後傾斜部87のうち上部フレーム26との接続部分よりも下方部分であり、一体に連接している部分を備えるものでも良い。
【0084】
また、高圧側構造体75は、左右の下水平部85の前端部分に架設されたブリッジフレーム95と、左右の下水平部85に架かって燃料タンク15を固定可能なクランプバンド49と、左右の後湾曲部86の上端部近傍に架かり、後ろ斜め上方へ延びる減圧弁支柱96と、左右の下水平部85の前端部および左右の後湾曲部86の上端部にそれぞれ位置するフランジ91と、を備える。
【0085】
左右の下部フレーム25のうち高圧側構造体75を構成する部分、ブリッジフレーム95およびガードフレーム29は、協働して井桁状の構造を構成し燃料タンク15を支える。
【0086】
図9および図10は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の高圧側モジュールを示す斜視図である。
【0087】
図9は、左前側から高圧側モジュール78を見た斜視図であり、図10は、右後方から高圧側モジュール78を見た斜視図である。
【0088】
図9および図10に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1の高圧側構造体75は、燃料タンク15の胴部を左右側方から挟み込み、かつ燃料タンク15の胴部の下縁に沿わせて左右の下水平部85を配置する。後湾曲部86は、下水平部85の後端に連接して燃料タンク15の胴部後縁部を左右から挟み、燃料タンク15の上下方向の高さの1/2程度(すなわち、胴部の半径程度)の位置まで延びる。
【0089】
ブリッジフレーム95は、燃料タンク15の胴部前縁部の下方に沿って円弧状に延びる。
【0090】
ガードフレーム29は、燃料タンク15の胴部後縁部の左右側方において後湾曲部86の途中部分に接続し、燃料タンク15の後方鏡板の下方を保護する。ガードフレーム29は、燃料タンク15の後方鏡板に位置するバルブユニット97の下方にセンタースタンドブラケット98を備える。センタースタンドブラケット98はセンタースタンド34を揺動可能に支える。
【0091】
減圧弁支柱96は、バルブユニット97の上方に第一減圧弁71を固定するブラケット99を備える。減圧弁支柱96は、第一減圧弁71の少なくとも一部を左右の上部フレーム26間に配置する高さまで延びる。
【0092】
クランプバンド49は、燃料タンク15の胴部の前縁近傍を固定する前クランプバンド49aと、燃料タンク15の胴部の後縁近傍を固定する後クランプバンド49bと、を備える。
【0093】
バルブユニット97は、燃料供給元弁52と、継手55に流体的に接続する燃料充填元弁(図示省略)と、安全弁(図示省略)と、を一体に備える。
【0094】
継手55は、前クランプバンド49aの頂部に位置する継手用架台101に固定されてバルブユニット97から延びる燃料充填用の第二中継配管102に接続する。
【0095】
第一減圧弁71は、減圧弁支柱96のブラケット99の下面側に固定されてバルブユニット97から延びる燃料供給用の第三中継配管103に接続する。第三中継配管103は、燃料タンク15から第一減圧弁71に至るタンク元圧を負担する。
【0096】
燃料漏洩検出器66は、減圧弁支柱96のブラケット99の上面側に固定される。
【0097】
このように構成される高圧側モジュール78は、高圧側構造体75によって、燃料供給系統73のうち、継手55から燃料タンク15へ燃料を充填する系統、および燃料タンク15から第一減圧弁71へ燃料を導く系統の相対的な位置関係を固定したまま、第二中継配管102、第三中継配管103に負担を掛けることなく、取り扱いの容易性を向上できる。
【0098】
図11は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の低圧構造体を示す斜視図である。
【0099】
図12および図13は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の低圧側モジュールを示す斜視図である。
【0100】
図12は、左前側から低圧側モジュール79を見た斜視図であり、図13は、下方から低圧側モジュール79を見た斜視図である。
【0101】
図11から図13に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1の低圧側構造体76は、左右一対の平行部105と、平行部105の後端に連接して車両の内側方向へ折れ曲がり左右の平行部105を繋ぐ後部直線部106とを備え、全体でU字形状の枠状をなす。低圧側構造体76は、U字形状の内側に燃料電池2を抱え、換言すると、燃料電池2の左右の側方外側を囲んで延びる。
【0102】
左右の平行部105は、燃料電池2を固定する燃料電池固定用ブラケット107を備える。また、左右の平行部105の前端部は、燃料電池2の幅方向にみて窄まり、低圧側モジュール79をフレーム10に固定するブラケット108を備える。
【0103】
後部直線部106は、平板状の減圧弁用ブラケット109と、フレーム10に向かって短冊状に延び、低圧側モジュール79をフレーム10に固定するブラケット111と、を備える。
【0104】
燃料電池2は、吸気面2aを有する天面プレート112の左右縁を燃料電池固定用ブラケット107に引っ掛けるようにして垂れ下がる。燃料電池2は、平行部105よりも上方に上半部を配置し、平行部105よりも下方に下半部を配置する。
【0105】
第二減圧弁72は、減圧弁用ブラケット109の下面に固定される。他方、減圧弁用ブラケット109の上面には第二減圧弁用制御装置113がある。
【0106】
なお、本実施形態に係る第二減圧弁72は燃料電池2の後ろ側に位置するが、前側に位置するよう別途ブラケットを設けても良い。第二減圧弁72が燃料電池2の後ろ側に位置する場合、仮に第二減圧弁72や燃料電池2との接続部分に漏洩が生じても燃料である水素ガスを機器搭載領域36の後方寄りに漏らすことになり、車外への迅速な排気が期待できる。他方、第二減圧弁72が燃料電池2の前側に位置する場合、第一減圧弁71と距離が近くなり、第一中継配管81を短縮できる。
【0107】
燃料漏洩検出器65は、燃料電池2に固定された燃料漏洩検出器用ブラケット115により支持されて、燃料電池2の上方に位置する。
【0108】
このように構成される低圧側モジュール79は、低圧側構造体76によって、燃料供給系統73のうち、第二減圧弁72から燃料電池2へ燃料を導く系統の相対的な位置関係を固定したまま、取り扱いの容易性を向上できる。
【0109】
図14は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の主構造体を示す斜視図である。
【0110】
図14に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1の主構造体77は、フレーム10のうち下部フレーム25の残部である前傾斜部82、前湾曲部83、後傾斜部87および上部フレーム26である。なお、主構造体77は、高圧側構造体75の構成範囲に応じてフレーム10の残部により構成できる。
【0111】
また、主構造体77は、左右の前湾曲部83の後端部および左右の後傾斜部87の下端部のそれぞれに位置するフランジ92を備える。
【0112】
さらに、主構造体77は、低圧側構造体76のブラケット108、111を固定するブラケット116、117を備える。主構造体77側のブラケット117は、スイングアーム9の揺動を緩衝するリアサスペンション61とともに低圧側構造体76のブラケット111を共締めできる。
【0113】
このように構成される自動二輪車1は、燃料供給系統73の漏洩検査において、先ず、高圧側モジュール78と、低圧側モジュール79とをそれぞれ個別に検査し、検査の後、フレーム10にそれぞれのモジュール78、79を搭載し、この後、第一減圧弁71と第二減圧弁72とを第一中継配管81で接続して、この第一中継配管81の接続箇所を検査することで燃料供給系統73全体の漏洩検査を実施できる。
【0114】
ところで、高圧側モジュール78は、燃料タンク15に極力大量の燃料(水素ガス)を充填することを目的に、耐圧性能の高い燃料タンク15を採用することで漏洩検査時の圧力も高くなる。他方、低圧側モジュール79は、常用の温度で圧力が1MPa未満、具体的には約0.4MPaの燃料を燃料電池2に送り込むため、漏洩検査時の圧力は高圧側モジュール78に比べて極めて低い。
【0115】
そこで、本実施形態に係る自動二輪車1は、第一減圧弁71の一次側と第二減圧弁72の二次側とのそれぞれの圧力に応じて高圧側モジュール78と低圧側モジュール79とを分割し、それぞれを個別に漏洩検査できるよう構成したものである。
【0116】
すなわち、本実施形態に係る自動二輪車1は、高圧の燃料が流通する燃料タンク15、継手55および第一減圧弁71を強固に保持するため、第二中継配管102、103を破損することなく、従来の配管接続先行手順において懸念される漏洩発生のリスクを回避できる。
【0117】
また、本実施形態に係る自動二輪車1は、低圧側構造体76によって、燃料が流通する第二減圧弁72および燃料電池2を強固に保持するため、各装置の接続部分を破損することなく、従来の配管接続先行手順において懸念される漏洩発生のリスクを回避できる。
【0118】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1は、燃料供給系統73全体を取り扱うことなく、高圧の燃料が流通する部分に絞って漏洩検査を実施することが可能であり、漏洩検査における検査対象の重量を軽減して取り扱いの容易性を向上できる。
【0119】
さらにまた、本実施形態に係る自動二輪車1は、燃料供給系統73全体を取り扱うことなく、低圧の燃料が流通する部分に絞って漏洩検査を実施することが可能であり、漏洩検査における検査対象の重量を軽減して取り扱いの容易性を向上できる。
【0120】
また、本実施形態に係る自動二輪車1は、主構造体77から高圧側モジュール78を取り外した状態で漏洩検査を実施することが可能であり、主構造体77が漏洩検査の作業性を損なうことがなく、検査の信頼性も向上する。
【0121】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1は、主構造体77から低圧側モジュール79を取り外した状態で漏洩検査を実施することが可能であり、主構造体77が漏洩検査の作業性を損なうことがなく、検査の信頼性も向上する。
【0122】
さらにまた、本実施形態に係る自動二輪車1は、これら取り扱い容易性、検査の作業性の工場によりライン生産方式に好適する。
【0123】
また、本実施形態に係る自動二輪車1は、燃料タンク15を上部フレーム26と下部フレーム25とで囲むことにより、車両が転倒した場合や衝突などのアクシデントから燃料タンク15を確実かつ堅牢に保護できる。
【0124】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1は、第一減圧弁71の少なくとも一部を左右の上部フレーム26間に配置することにより、車両が転倒した場合でも高圧の印加される第一減圧弁71を確実に保護できる。
【0125】
したがって、本発明の実施形態に係る自動二輪車1によれば、燃料を貯蔵する燃料タンク15から燃料電池2に燃料を導く一連の装置(燃料供給系統73)を容易に組み立てることが可能であり、これらを流体的に接続する流路の漏洩検査の作業性が良好であり、組立作業や検査における取り扱いが容易である。
【符号の説明】
【0126】
1 自動二輪車
2 燃料電池
2a 吸気面
2b 排気口
3 車両本体
5 前輪
6 ステアリング機構
7 後輪
8 モータ
9 スイングアーム
10 フレーム
11 外装
12 シート
12a 前方部
12b 後方部
15 燃料タンク
16 二次電池
17 電力管理装置
18 モータコントローラ
19 車両コントローラ
21 ヘッドパイプ
22 上部ダウンフレーム
23 下部ダウンフレーム
25 下部フレーム
26 上部フレーム
28 ピボット
29 ガードフレーム
31 フットレスト
32 サイドスタンドブラケット
33 サイドスタンド
34 センタースタンド
35 センタートンネル領域
36 機器搭載領域
37 タイヤハウス領域
39 隔壁部材
41 フロントレッグシールドカバー
42 フロントフレームカバー
43 フレームカバー
45 ファン
47 排気ダクト
47a 排気口
49 クランプバンド
49a 前クランプバンド
49b 後クランプバンド
52 燃料供給元弁
55 継手
53 燃料充填口
56 第2二次電池
57 ハンドル
58 フロントフォーク
59 フロントフェンダ
61 リアサスペンション
62 冷却用ダクト
65 燃料漏洩検出器
66 燃料漏洩検出器
67 スロットルセンサ
68 圧力センサ
69 燃料用温度センサ
71 第一減圧弁
72 第二減圧弁
73 燃料供給系統
75 高圧側構造体
76 低圧側構造体
77 主構造体
78 高圧側モジュール
79 低圧側モジュール
81 第一中継配管
82 前傾斜部
83 前湾曲部
85 下水平部
86 後湾曲部
87 後傾斜部
88 後部傾斜部
89 結合構造
91、92 フランジ
93 ボルト
95 ブリッジフレーム
96 減圧弁支柱
97 バルブユニット
98 センタースタンドブラケット
99 ブラケット
101 継手用架台
102 第二中継配管
103 第三中継配管
105 平行部
106 後部直線部
107 燃料電池固定用ブラケット
108 ブラケット
109 減圧弁用ブラケット
111 ブラケット
112 天面プレート
113 第二減圧弁用制御装置
115 燃料漏洩検出器用ブラケット
116、117 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯蔵可能な燃料タンクと、
前記燃料タンクに流体的に接続する燃料充填用の継手と、
前記燃料タンクに流体的に接続して前記燃料の圧力を第一圧力に減圧する第一減圧弁と、
前記第一減圧弁に流体的に接続して前記燃料の圧力を第二圧力に減圧する第二減圧弁と、
前記第二減圧弁に流体的に接続して燃料と酸化剤との反応により発電する燃料電池と、
前記燃料タンク、前記継手および前記第一減圧弁の相対的な配置を保って支持する高圧側構造体と、
前記第二減圧弁および前記燃料電池の相対的な配置を保って支持する低圧側構造体と、
前記高圧側構造体と前記低圧側構造体とを着脱自在に固定可能な主構造体と、を備えることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記第一減圧弁と前記第二減圧弁とを流体的に接続する着脱自在な中継配管を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記高圧側構造体および前記主構造体は、
ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプとの接続部分から後ろ下がりに傾斜して延びる前傾斜部、前記前傾斜部の下端に連接して後方に向けて湾曲する前湾曲部、前記前湾曲部の後端に連接して後方へ略水平に延びる下水平部、および前記下水平部の後端に連接して後ろ斜め上方へ向けて湾曲する後湾曲部、前記後湾曲部の上端に連接して後ろ上がりに傾斜して延びる後傾斜部をそれぞれ有する左右一対の下部フレームと、
前記前傾斜部の中央部との接続部分から後方へ略水平に延びて前記後傾斜部に接続しさらに後方へ延びる左右一対の上部フレームと、を備え、
左右の前記下水平部および前記左右の上部フレームは前記燃料タンクを協働して囲み、
前記高圧側構造体は、下部フレームの一部であって、前記前傾斜部のうち前記上部フレームとの接続部分より下方部分、前記前湾曲部、前記下水平部、前記後湾曲部、および前記後傾斜部のうち前記上部フレームとの接続部分よりも下方部分であり、前記主構造体は下部フレームの残部と前記上部フレームを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記高圧側構造体は前記第一減圧弁の少なくとも一部を前記左右の上部フレーム間に配置する減圧弁支柱を備えることを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記主構造体は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプとの接続部分から後ろ下がりに傾斜して延びる前傾斜部と、前記前傾斜部の中央部との接続部分から前後方向へ略水平に延びる左右一対の上部フレームと、を備え、
前記低圧側構造体は、前記上部フレーム間に架設することを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記燃料電池は、前記左右の上部フレーム間の離間距離よりも大きい幅寸法を有し、
前記低圧側構造体は、前記燃料電池の左右の側方外側を囲んで延びることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記第二減圧弁は前記燃料電池の前側または後ろ側に位置することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−71671(P2013−71671A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213238(P2011−213238)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】