説明

自動二輪車

【課題】収納空間の奥に配置されているバッテリのメンテナンス作業を容易にすることができるバッテリ収納構造を有する自動二輪車を提供する。
【解決手段】自動二輪車1は、バッテリ19、エアクリーナ4、乗員シート17、リヤフェンダ18、およびバッテリ19を搭載することができる物品収納部100を備える。物品収納部100は、リヤフェンダ18の上部に設けられていて、上部に開口110を有しているとともに、エアクリーナ4の下方で電極82、88を上方に位置させたバッテリ固定位置を備える。リヤフェンダ18の上面に形成されるリブ187を切り欠いて物品収納部100内にバッテリ仮置き部58を設ける。バッテリ19の電極82、88に接続されるハーネス92、93は、バッテリ19の固定位置からバッテリ仮置き部58までの距離に相当するマージンを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関するものであり、特に、車体に対するバッテリの着脱作業性を良好にすることができるバッテリ収納部を有する自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
電源として車両に搭載されるバッテリは重量が大きいので、その配置位置には工夫が必要である。特に、自動二輪車ではバッテリの配置位置が操縦性に大きく影響するので、従来から種々検討されている。例えば、特許文献1に記載されている自動二輪車では、リヤフェンダ上方に配置される物品収納部内の最先端部つまり奥であって、エアクリーナの下方にバッテリを配置することによってマスの集中化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両に搭載されるバッテリのメンテナンスは、作業の初期段階でバッテリの電極に連結されているハーネスを外してから始められる。しかし、特許文献1に記載されている従来技術のように物品収納部の奥にバッテリを収納している構造の自動二輪車では、バッテリ電極の周辺に明かりが届かないので、作業者の手元が暗かったり、物品収納部の形状によっては作業者が手や工具を電極まで近づけにくかったりすることもあって、作業に手間がかかるという課題があった。
【0005】
物品収納部の形状を大きくしてバッテリの周囲に作業空間を確保することが考えられるが、車両の大型化につながるので好ましくない。また、バッテリを物品収納部の外へ引き出してからハーネスを外すことが考えられるが、バッテリを物品収納部から引き出すためには、バッテリに接続されているハーネスの長さをバッテリ収納位置から物品収納部の開口まで移動させる距離に相当する分だけ予め長くしておく必要がある上、バッテリを引き出した場所の、物品収納部を形成しているリヤフェンダの上面は後輪に沿って曲面になっていて水平面がないので、所定のバッテリ収納位置以外ではバッテリ姿勢が安定せず、作業がしにくいという課題もある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、バッテリ収納位置が物品収納部の奥底に設定されて自動二輪車において、バッテリからハーネスを比較的簡単に外すことができる構造を有する物品収納部を備えた自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明は、エンジン(2)と、電源としてのバッテリ(19)と、エンジン(2)の後方に配置されてエンジン(2)の燃焼室に送る空気を浄化するエアクリーナ(4)と、前記エアクリーナ(4)の上方に位置して運転者が着座するシート(17)と、後輪(RW)の上方に配置されるリヤフェンダ(18)と、前記シート(17)の下方で前記リヤフェンダ(18)の上部に設けられていて、前記シート(17)で覆われる開口(110)が上部に形成され、前記エアクリーナ(4)の下方位置で前記バッテリ(19)を搭載するバッテリ固定部(190)を設定した物品収納部(100)と、前記バッテリ(19)の端子(82、88)に接続されるハーネス(92、93)とを備えている自動二輪車において、前記エアクリーナ(4)より後方であって前記物品収納部(100)の開口(110)よりも下方位置で前記電極(82、88)を上方に位置させた姿勢で前記バッテリ(19)を保持するため前記物品収納部(100)内に形成されるバッテリ仮置き部(58)を設けた点に第1の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記リヤフェンダ(18)の底板(181)の上面には、前記バッテリ(19)の固定位置より車両後方位置で車両前後方向に沿って延在する複数本のリブ(187)が設けられ、前記リブ(187)の途中に前記バッテリ仮置き部(58)として、バッテリ(19)の下部が係合するように切り欠き(58)が形成されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記ハーネス(92、93)の長さが、前記バッテリ(19)を、前記バッテリ固定部(190)から前記バッテリ仮置き部(58)まで移動できる長さ以上であって、かつ前記物品収納部(100)の開口(110)まで移動できる長さ未満に設定されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記エアクリーナ(4)が車体後方に指向する吸気ダクト(75)を備え、該吸気ダクト(75)の吸入口端面(751)が、車体に対して前下方に傾いた後傾面となっている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記後輪(RW)が上下に揺動自在なスイングアーム(10)を介して車体に枢支されているとともに、前記スイングアーム(10)の揺動量を規制するクッションユニット(13)を備えており、該クッションユニット(13)の上端部が前記エアクリーナ(4)の下方かつ前記バッテリ固定部(190)の前方で車体フレーム(3)に支持され、下端部が前記スイングアーム(10)より下方に配置されて前記スイングアーム(10)と前記車体フレーム(3)とを連結するリンク機構(14)に連結されている点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
第1の特徴を有する本発明によれば、重量が大きいバッテリを自動二輪車のほぼ中心部に近い配置にしてマスの集中を図りながら、バッテリ仮置き部に係止させることができるので、バッテリを安定した姿勢に保持させてハーネスの脱着を含むメンテナンス作業を行うことができる。
【0013】
第2の特徴を有する本発明によれば、バッテリ仮置き部はリヤフェンダに設けられるリブを利用して形成できるので、既存のリヤフェンダの設計を大きく変更する必要がない。
【0014】
第3の特徴を有する本発明によれば、ハーネスは、バッテリをバッテリ固定部からバッテリ仮置き部まで移動することができる長さ以上、かつバッテリを物品収納部の開口まで移動することができる長さ未満に設定されているので、むだに長尺になるのを防止することができる。
【0015】
第4の特徴を有する本発明によれば、吸気ダクトの長さを確保することによって、エンジンの良好な出力特性を確保した上で、バッテリと吸気ダクトの吸入口の下部とのクリアランスを確保できるので、バッテリの取り付け、取り外し作業を行いやすい。
【0016】
第5の特徴を有する本発明によれば、エアクリーナの下方であってバッテリの前方の空間を利用してクッションユニットを配置できるので、デッドスペースを有効に利用しながらマスの集中を図ることができる。また、クッションユニットの下端部をスイングアームよりも下方に延ばし、リンク機構を介してスイングアームに連結させたので、エアクリーナの容量およびクッションユニットのストロークを確保した上で、マスの集中を図ることができる位置にクッションユニットを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るバッテリ収納装置を備えた自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の車体フレームを示す左側面図である。
【図3】図2における3−3断面図である。
【図4】自動二輪車要部の左右中央面に関する断面図である。
【図5】エアクリーナを含むリヤフェンダを左後方から見た斜視図である。
【図6】図5の要部上面図である。
【図7】エアクリーナを取り除いた状態での要部上面図である。
【図8】リヤフェンダの左側壁を取り除いた図である。
【図9】バッテリを手前に引き出してリヤフェンダに仮置きした状態の側面断面図である。
【図10】バッテリを手前に引き出してリヤフェンダに仮置きした状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るバッテリ収納部を備えた自動二輪車の左側面図であり、図2は車体フレームとスイングアームの左側面図である。図中、符号Frは自動二輪車の前方向、符号Lは自動二輪車の左方向、符号Upは自動二輪車の上方向を示す。
【0019】
図1および図2において、自動二輪車1は、単気筒4サイクル水冷エンジン2を搭載する。自動二輪車1の車体フレーム3は、ヘッドパイプ30の上端部寄りに先端部が接合されて斜め下後方に延在するメインフレーム31と、ヘッドパイプ30の下端部寄りに先端部が接合されて斜め下後方に延在するダウンフレーム32と、メインフレーム31の中間部から斜め上後方に延在するシートフレーム33と、シートフレーム33に対して後部で接合されていてシートフレーム33とほぼ平行で少しだけ前下がりに配置されるリヤフレーム34と、メインフレーム31の後端部およびリヤフレーム34の前端部に接合されて下方に延在するハンガブラケット35とを含んでいる。
【0020】
また、シートフレーム33とリヤフレーム34との間にはリブ41、42が設けられる。車体フレーム3を構成する上述の各部材は車体の左右にそれぞれ設けられて対をなしている。
【0021】
エンジン2は、シリンダ部21、クランク部22、および減速機部23を備える。エンジン2には吸気管24が接続され、吸気管24の端部はエンジン2の後方に配置されるエアクリーナ4に設けられるエアクリーナ排気ダクト76(後述)に連通される。エアクリーナ4は、エンジン2のシリンダ部21上部の燃焼室に送る空気を浄化する。
【0022】
エンジン2の前部には排気管25が連結され、排気管25は車体下方を迂回して車体後部のマフラ5に連結される。エンジン2は、ハンガブラケット35およびダウンフレーム32の下部に結合されて支持される。ダウンフレーム32には、エンジン2の冷却水が循環されるラジエータ43が取り付けられる。
【0023】
ヘッドパイプ30には、図示しないステアリングステムが上下方向に指向させて配置されており、ステアリングステムの上下には、それぞれトップブリッジ26およびボトムブリッジ27が連結される。これらトップブリッジ26およびボトムブリッジ27によってフロントフォーク28が支持される。フロントフォーク28の下端部には前輪軸29が設けられ、前輪軸29で前輪FWが支持される。トップブリッジ26にはステアリングハンドル6が取り付けられ、ステアリングハンドル6には、グリップ44およびミラー45が取り付けられる。ヘッドパイプ30には、車体前方に向けて図示しないステーが延びており、このステーによってヘッドライト7およびメータ装置8が支持される。
【0024】
ハンガブラケット35には、車幅方向に延在する枢軸9が設けられ、この枢軸9によってスイングユニット200が回動自在に支持される。スイングユニット200は、枢軸9に対して回動自在に支持される支持パイプ10a(図3に関して後述)に溶接された左右一対の部材10d、10dからなるスイングアーム10と、長手方向の中間部にてスイングアーム10の左右部材10d、10d同士を接合するクロスメンバ10bと、クロスメンバ10bの下方に接合されるステー15とからなる。スイングアーム10の後端部には車軸取り付け用孔10cが形成され、この車軸取り付け用孔10cを通される後輪軸11で後輪RWが支持される。減速機部23の出力軸46と後輪軸11には図示しない駆動側スプロケットおよび従動側スプロケットがそれぞれ結合され、両スプロケット間に駆動用チェーン12が掛け渡されてエンジンの出力が後輪RWに伝達される。スイングアーム10は前端部が枢軸9で枢支されるとともに、クッションユニット13およびリンク機構14によってスイングアーム10の中間部に設けられるステー15が支持される。
【0025】
メインフレーム31とシートフレーム33上には、前部に燃料タンク16が、後部には乗員シート17がそれぞれ配置される。乗員シート17の前下方には前記エアクリーナ4が位置する。
【0026】
シートフレーム33とリヤフレームフレーム34とによってリヤフェンダ18が支持される。リヤフェンダ18はハンガブラケット35の上部近傍から後方に延在し、後輪RWの上方に位置して泥や水が飛散するのを防止する泥よけとして機能するとともに、上部は箱形に形成されて、少なくともバッテリ19の固定部190(図4に関して後述)を含む物品収納部100(図5参照)として利用される。乗員シート17は、リヤフェンダ18によって形成される物品収納部100の上方を覆う蓋としても機能し、キーを使用してロックを解除すると開閉または取り外しできるように構成される。リヤフェンダ18上部で乗員シート17の後方には、リヤランプユニット48が設けられる。
【0027】
図2と併せて図3を参照してスイングアーム10の支持構造をさらに説明する。図3は図2の3−3断面図である。図2および図3において、左右一対のハンガブラケット35は、上部がメインフレーム31およびリヤフレーム34に接続されて、下方に延在している部材であり、エンジン2およびスイングアーム10ならびにサイドスタンドを支持する。ハンガブラケット35はスイングアーム10を支持する枢軸9の軸受け35bを収容できるスペース35aを有する中空の部材である。左右一対のハンガブラケット35、35同士は、上部で上側クロスメンバ50によって接合されるとともに、下部で下側クロスメンバ53によって接合される。上側クロスメンバ50は上部分50aと下部分50bとからなり、横断面形状がおおむね矩形をなす箱体であり、下側クロスメンバ53は円環状横断面のパイプである。
【0028】
クッションユニット13は、枢軸9で支持される支持パイプ10aに前端部が溶接されるスイングアーム10の左右部材10d、10dの間であって、かつ支持パイプ10aとクロスメンバ10bとの間を上下に通して配置される。クッションユニット13の上端部がエアクリーナ4の下方かつバッテリ19の収納位置の前方において上側クロスメンバ50に連結され、下端部はリンク機構14を介してスイングアーム10およびハンガブラケット35に連結される。
【0029】
クロスメンバ50の下部分50bはリヤクッション13の上部が貫通できる開口50cを有しており、この開口50cを貫通するリヤクッション13は、上端部で水平方向に延在する枢軸(ボルト)60によって上ブラケット61に連結される。上ブラケット61の、ボルト60が通されている部分の面に対して直交する面を有する部分に、もう一つのボルト62が貫通して設けられる。ボルト62は、さらにクロスメンバ50の上部分50aとプレート63に形成されるボルト孔とを貫通して上部でナット64に螺合する。ボルト62は、ナット64が締め付けられた状態で、上ブラケット61がボルト62を中心に回動可能なように寸法を決定された、例えば段付きボルトである。この支持構造により、リヤクッション13はクロスメンバ50に対して、互いに直交するボルト60および62の2軸で回動自在となっている。
【0030】
リヤクッション13の下端部に連結されるリンク機構14は、第1リンク141および第2リンク142からなり、第1リンク141は、一端がクッションユニット13の下端部に取り付けられる下ブラケット65に対して枢軸(ボルト)51によって連結され、他端は枢軸52によってスイングアーム10のステー15に連結される。
【0031】
ハンガブラケット35の下端部に接合されたクロスパイプ53には、下方に延在する左右一対のリンクステー54が接合される。左右一対のリンクステー54によって、水平に延在する枢軸55の両端が支持され、この枢軸55によって第2リンク142の一端(前端)が枢支される。第2リンク142の他端(後端)は、ほぼスイングアーム10に沿って車体後方に延び、第1リンク141の後部下部に設けられる枢軸56によって第1リンク141に連結される。ステー54には、サイドスタンド支持ステー57も接合される。
【0032】
このリンク機構14においては、スイングアーム10が枢軸9を中心に揺動すると、第2リンク142が枢軸55を中心に揺動する。これに伴って第1リンク141が枢軸52を中心に揺動し、この第1リンク141の揺動は、枢軸51を介して連結されるクッションユニット13に伝わり、クッションユニット13を伸縮させると同時に、枢軸50を中心に揺動させる。この動作により、スイングアーム10の上下動は、リンク機構14の揺動とクッションユニット14の伸縮・揺動によって緩衝されて車体フレーム3に伝わる。
【0033】
図4は自動二輪車1の左右中央面での要部断面図である。図4において、左右に配置されるシートフレーム33で支持されるリヤフェンダ18は車体前後方向に延在し、その下面で後輪RWを上部から覆うとともに、上面は左右両側および前部に壁面を有して物品収納部100としての箱を形成する。リヤフェンダ18の最前部にはエアクリーナ4が設けられる。エアクリーナ4は、上ケース70および下ケース71と、上ケース70および下ケース71の間に配置されるエアフィルタ72とを備える。上ケース70、下ケース71およびエアフィルタ72によって吸気室73および排気室74が形成される。吸気室73にはエアクリーナ吸気ダクト75が嵌装され、排気室74にはエアクリーナ排気ダクト76が嵌装される。
【0034】
エアクリーナ吸気ダクト75はエアフィルタ72に対して角度φ1を有して後傾姿勢で配置され、エアクリーナ吸気ダクト75の前端面752は、エアフィルタ72の面にほぼ沿った後傾面となるように、エアクリーナ吸気ダクト75の延在方向に対して前下方に斜めにカットされる。つまり、エアクリーナ4の内部ではエアクリーナ排気ダクト75の前端面752はエアフィルタ72に沿って延在する。一方、エアクリーナ吸気ダクト75の吸気側つまり吸気室73の外部後方に突き出している部分の端面(吸入口端面)751は、端面752と同様、前下方に斜めにカットされた後傾面を形成している。
【0035】
エアフィルタ72はフィルタホルダ77を介して上ケース70および下ケース71に取り付けられ、フィルタホルダ77は排気室74内の余剰空気を排気する空気抜き孔78を有する。下ケース71の斜め上後部には、エアフィルタ72のメンテナンスのためのエアクリーナリッド79が設けられる。エアクリーナリッド79は図示しない止めネジで下ケース71に取り付けられる。この止めネジは下ケース71のネジ孔(図示しない)から外したときに落下してしまうのを防止できるように、エアクリーナリッド79から正面に突き出した止めネジホルダ80を通して下ケース71のネジ孔に螺着される。エアクリーナ排気ダクト75はエンジン2の吸気管24(図1参照)に接続される。
【0036】
このアクリーナ4の構造では、エアクリーナ吸気ダクト75の排気側端面752が、後傾姿勢に配置されたエアフィルタ72に沿っているので、エアクリーナ吸気ダクト75は、その長さをある程度確保しつつ、エアフィルタ72に接近させることができ、その分だけ排気室74を大きくしてエアクリーナ排気ダクト76およびエンジン吸気管24内の圧力に安定性をもたせることができる。また、エアクリーナ吸気ダクト75の後端面751は、前端面752と同様、前下方に斜めにカットされていて、後端面751がバッテリ19の着脱方向(上後方)やバッテリホルダ81の上面818やバッテリ19の上面にほぼ沿っているので、バッテリ19やバッテリホルダ81の上方が開放されていてバッテリホルダ81やバッテリ19を図4の矢印Aで示す方向で着脱する際の作業性を良好にすることができる。
【0037】
リヤフェンダ18は底板181を有しており、この底板181の下面で後輪RWを覆い、底板181の上面は側壁182および前壁183と共に物品収納部100を形成する。物品収納部100の奥、つまり前壁183および底板181に近接している位置には、略直方体の外形を有するバッテリ19を収納するバッテリ固定部190が設定される。つまり、バッテリ固定部190は、前壁183と底板181の上面にバッテリ19の2面が接触される位置に設定される。
【0038】
バッテリ19をリヤフェンダ18のバッテリ固定部190に固定するバッテリホルダ81はバッテリ19の上面(一部側面にかかる部分を含む面)と正面(電極82が設けられる面)とを覆う部材である。なお、電極82はプラス電極であり、電気絶縁性の電極カバー83でカバーされる。バッテリホルダ81には、プラス電極82を保護することができるように張り出した庇814が設けられる。リヤフェンダ18は底板181から上面に突き出させたボス84を有しており、バッテリホルダ81は、このボス84に対して、正面に張り出したステー811を止めネジ85で取り付けてリヤフェンダ18に固定される。さらに、バッテリホルダ81は、バッテリ19の上面を覆う部分の車体前方側に延在させた爪812を有しており、この爪812が前壁183に設けられる孔184に係合されることによって、リヤフェンダ18とバッテリホルダ81との結合をより確実にしている。
【0039】
リヤフェンダ18の前部は下方でリヤクッション13の上部(ボルト62の頭やナット64)と干渉するので、前壁183の前方延長部にはナット64が貫通できる程度の開口185を設けている。
【0040】
なお、リヤフェンダ18の底板181には、その上面側に車両の前後方向に延びる2本のリブ187が設けられており、このリブ187の途中には車幅方向に整列した位置にV字形状の切り欠き58が形成される。この切り欠き58は、メンテナンスのためにバッテリ19をリヤフェンダ18の奥から引き出した状態で、リヤフェンダ18の底板181上に仮置きするために用いられる。したがって、切り欠き58の上面部58aは、バッテリ19を安定して保持できるように、水平または若干後方に傾斜するように設けられるのが望ましい。図4において、符号191は物品収納部100の奥に設定されているバッテリ固定部190から引き出して切り欠き58に仮置きした姿勢のバッテリ19の輪郭を示す。
【0041】
図5はエアクリーナ4を含むリヤフェンダ18を左後方から見た斜視図、図6は図5の要部上面図、図7はエアクリーナ4を取り除いた状態での要部上面図、図8はリヤフェンダ18の左側壁を取り除いた図であり、図4と同符号は同一または同等部分を示す。図5では、エアクリーナ4の上ケース70は取り外して内部が見えるように図示している。切り欠き58を設けたリブ187はリヤフェンダ18の底板181の上面に、車体前後方向に沿って、車幅方向において互いに平行に2本設けられる。バッテリカバー81は、プラス電極82およびマイナス電極88が露出する窓89、90を除いてバッテリ19の上面を覆う。リヤフェンダ18の前下部にはドレーン91が設けられており、リヤフェンダ18内に水が溜まるのを防止している。
【0042】
図5〜図8に示すように、ステー811を止めている止めネジ85はその頭の正面を上部から見通せる位置にあり、物品収納部100の蓋として機能する乗員シート17を取り外すと、作業員は、ほぼ真上から止めネジ85の取り付け・取り外し作業を容易に行える。また、エアクリーナ吸気ダクト75は、図6に示すようにバッテリカバー81の庇814から車体左側に距離L1だけ偏って配置されている。このように偏りを有しているので、庇814が吸気の妨げにならないし、止めネジ85への接近の際にもエアクリーナ吸気ダクト75が邪魔になりいくい。
【0043】
図9はバッテリ19を手前(乗員シート17側)に引き出してリヤフェンダ18に仮置きした状態の側面断面図であり、左側壁を取り除いた図である。図10は同斜視図である。図9、図10に示すように、リヤフェンダ18の底部奥に収容されているバッテリ19は、バッテリカバー81を取り外すことによって物品収納部100の手前側、つまりリヤフェンダ18の上部開口110側に引き出して、切り欠き58を使って、その上にバッテリ19を仮置きできる。
【0044】
したがって、バッテリ19のメンテナンスの際には、乗員シート17を取り外せば、作業員は、物品収納部100を上方から容易に見渡すことができるので、バッテリカバー81を、止めネジ85を緩めて取り外すことができる。そして、止めネジ85を取り外してバッテリカバー81を取り除けば、物品収納部100の奥に設定されたバッテリ固定部190にあるバッテリ19を手前に引き出すことができる。そこで、バッテリ19を持ち上げてバッテリ仮置き部(リブ181の切り欠き58)にバッテリ19の底部角を係止させて仮置きし、その位置で電極82、88に接続されるハーネス92、93を取り外す作業を行う。仮置きされているバッテリ19はリヤフェンダ18の開放側に寄せられているので、電極82、88からハーネス92、93を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0045】
図9において、バッテリ19に接続されているハーネス92、93は、バッテリ固定部190にあるバッテリ19を少なくともバッテリ仮置き部58まで、最大でも物品収納部100の開口110をバッテリ19が脱する位置まで引き出すことができるように長さが設定される。すなわち、バッテリ固定部190からバッテリ仮置き部58までの距離dに相当する長さで以上であって、かつバッテリ19を物品収納部100の開口110まで引き出すことができる長さ未満の余裕をもった長さがあればよい。
【0046】
このように、本実施形態によれば、リヤフェンダ18の奥のバッテリ固定位置190に搭載されているバッテリ19をメンテナンスする際には、手や工具が届きやすく、かつ、明かりが確保されるバッテリ仮置き部までバッテリ19を引き出して作業を行うことができる。バッテリ19をリヤフェンダ18の物品収納部100から完全に引き出すことなくバッテリ仮置き部で作業できるので、少なくとも、所定のバッテリ固定部190からバッテリ仮置き部58までの短い距離を移動できる分だけの余裕をもった比較的短いハーネス92、93を使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…自動二輪車、 2…エンジン、 3…車体フレーム、 4…エアクリーナ、 9…枢軸、 10…スイングアーム、 13…クッションユニット、 14…リンク機構、 16…燃料タンク、 17…乗員シート、 18…リヤフェンダ、 19…バッテリ、 24…吸気管、 33…シートフレーム、 35…ハンガブラケット、 50…クロスメンバ、 53…クロスパイプ、 58…切り欠き(バッテリ仮置き部)、 70…上ケース、 71…下ケース、 72…エアフィルタ、 73…吸気室、 74…排気室、 75…エアクリーナ吸気ダクト、 76…エアクリーナ排気ダクト、 82…電極、 84…ボス、 85…止めネジ、 100…物品収納部、 110…開口、 141…第1リンク、 142…第2リンク、 187…リブ、 190…バッテリ固定部、 200…スイング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(2)と、電源としてのバッテリ(19)と、エンジン(2)の後方に配置されてエンジン(2)の燃焼室に送る空気を浄化するエアクリーナ(4)と、前記エアクリーナ(4)の上方に位置して運転者が着座するシート(17)と、後輪(RW)の上方に配置されるリヤフェンダ(18)と、前記シート(17)の下方で前記リヤフェンダ(18)の上部に設けられていて、前記シート(17)で覆われる開口(110)が上部に形成され、前記エアクリーナ(4)の下方位置で電極(82、88)を上方に位置させて前記バッテリ(19)を搭載するバッテリ固定部(190)を設定した物品収納部(100)と、前記バッテリ(19)の電極(82、88)に接続されるハーネス(92、93)とを備えている自動二輪車において、
前記エアクリーナ(4)より後方であって前記物品収納部(100)の開口(100)よりも下方位置で前記電極(82、88)を上方に位置させた姿勢で前記バッテリ(19)を保持するため前記物品収納部(100)内に形成されるバッテリ仮置き部(58)を設けたことを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記リヤフェンダ(18)の底板(181)の上面には、前記バッテリ固定部(190)より車両後方位置で車両前後方向に沿って延在する複数本のリブ(187)が設けられ、
前記リブ(187)の途中に前記バッテリ仮置き部(58)として、バッテリ(19)の下部が係合するように切り欠き(58)が形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記ハーネス(92、93)の長さが、前記バッテリ(19)を、前記バッテリ固定部(190)から前記バッテリ仮置き部(58)まで移動できる長さ以上であって、かつ前記物品収納部(100)の開口(110)まで移動できる長さ未満に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記エアクリーナ(4)が車体後方に指向する吸気ダクト(75)を備え、該吸気ダクト(75)の吸入口端面(751)が、車体に対して前下方に傾いた後傾面となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記後輪(RW)が上下に揺動自在なスイングアーム(10)を介して車体に枢支されているとともに、前記スイングアーム(10)の揺動量を規制するクッションユニット(13)を備えており、該クッションユニット(13)の上端部が前記エアクリーナ(4)の下方かつ前記バッテリ固定部(190)の前方で車体フレーム(3)に支持され、下端部が前記スイングアーム(10)より下方に配置されて前記スイングアーム(10)と前記車体フレーム(3)とを連結するリンク機構(14)に連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動二輪車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−95232(P2013−95232A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238674(P2011−238674)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】