説明

自動保管庫

【課題】バーコードの貼付位置のズレを吸収して全被保管物に貼付されたバーコードを正確且つ確実に読み取ることができる自動保管装置を提供すること。
【解決手段】複数のマイクロプレート(被保管物)12を格納可能な棚4を収納する保管庫2と、保管庫2内の3次元空間を移動してマイクロプレート12を搬送及び位置決めする搬送手段3と、マイクロプレート12を保管庫2の内外に出し入れするための出入口を自動開閉するシャッタ6と、マイクロプレート12に貼付されたバーコードを読み取るバーコードリーダ(読取手段)5と、前記搬送手段3と前記シャッタ6及び前記バーコードリーダ5を制御する制御装置(制御手段)7を備える自動保管装置1において、前記バーコードリーダ5を前記シャッタ6に取り付け、シャッタ6による前記出入口の開閉動作時に前記バーコードリーダ5による前記バーコードの読み取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬、ゲノム、医療、バイオリソース、農業、食品、科学関係等において使用されるマイクロプレートやマイクロチューブ等の被保管物を自動保管するための自動保管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学、薬学、農学、臨床、生物学等のバイオ技術に関連する様々な分野での技術革新に伴い、数多くの試料を迅速に扱う作業が増加し、それらの試料を本管管理することが重要になってきている。このため、複数の試料を自動保管するための自動保管庫が提案されている。
【0003】
ところで、従来の自動保管庫においては、入出庫するマイクロプレート等の被保管物の種別の判別は、該被保管物に貼付されたバーコードをバーコードリーダによって読み取ることによって行われていた。この場合、バーコードは、被保管物を搬送するキャリアに設けられたバーコードリーダによって読み取られたり(特許文献1参照)、或はバーコードが貼付された被保管物がキャリアによってバーコードリーダ取付位置のバーコード読取可能範囲に搬送されて静止された後、これに貼付されたバーコードがバーコードリーダによって読み取られ、その種別が判別される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−075363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動保管庫内に入出庫するマイクロプレート等の被保管物の数は増加する傾向にあるが、この被保管物に貼付されたバーコードを従来のようにキャリアに設けられたバーコドリーダで読み取る方法では、キャリアと共にバーコードリーダが振動し、読み取りの信頼性に欠ける可能性があった。
【0006】
又、被保管物をバーコードリーダ取付位置のバーコードリーダ読取可能範囲に搬送して静止させた後、該被保管物の側面に水平に貼られたバーコードを読み取る方法では、バーコードリーダの読取可能範囲はバーコードに対して水平方向には広い反面、垂直方向には狭いため、バーコードの貼付位置は、バーコードリーダとの関係で、垂直方向に厳密に決まっている。
【0007】
ところが、マイクロプレート等の被保管物へのバーコードの貼付作業は専ら人手によっているため、作業者によっては貼付位置にズレが生ずる場合があり、読み取り不能となる場合があった。
【0008】
又、バーコードリーダを設置し、バーコードを読み取るための専用スペースも必要となり、自動保管庫で重要となる収納スペースを圧迫し、収納スペースの有効利用を阻害する結果となっていた。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、バーコードの貼付位置のズレを吸収して全被保管物に貼付されたバーコードを正確且つ確実に読み取ることができるとともに、入出庫時の被保管物の搬送作業の単純化と搬送時間の短縮化を図ることができる自動保管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、複数の被保管物を格納可能な棚を収納する保管庫と、保管庫内の3次元空間を移動して被保管物を搬送及び位置決めする搬送手段と、被保管物を保管庫の内外に出し入れするための出入口を自動開閉するシャッタと、被保管物に貼付されたバーコードを読み取る読取手段と、前記搬送手段と前記シャッタ及び前記読取手段を制御する制御手段を備える自動保管装置において、前記読取手段を前記シャッタに取り付け、シャッタによる前記出入口の開閉動作時に前記読取手段による前記バーコードの読み取りを行うことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記シャッタは上下動して前記出入口を開閉し、前記読取手段はシャッタと共に上下動しながら前記バーコードを読み取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シャッタに取り付けられた読取手段は、シャッタと共に移動しながら各被保管物に貼付されたバーコードを読み取るため、バーコードの貼付位置のズレを吸収して全被保管物に貼付されたバーコードを常に正確且つ確実に読み取ることがでる。特に、シャッタが上下動するものである場合には、バーコードリーダ等の読取手段の垂直方向に狭い読取範囲を特別な装置を追加することなく拡大することができ、読取手段の貼付位置のズレによる読み取りエラーの問題を解消することができる。
【0013】
又、読取手段をシャッタに取り付けたため、バーコード読み取り及び種別の判断工程とシャッタの開閉工程を同時に実施することができ、入出庫時の被保管物の搬送作業の単純化と搬送時間の短縮化を図ることができ、被保管物の入出庫作業の効率を高めることができる。
【0014】
更に、読取手段の取付場所を別に設ける必要がないため、保管庫内の空いた有効スペースを活用して収納スペースを増やしたり、或は空いたスペースを削除することによって保管庫の小型・コンパクト化を実現することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を貼付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係る自動保管装置の一部を破断して示す斜視図、図2は同自動保管装置のシャッタ部分の側断面図である。
【0017】
本実施の形態に係る自動保管装置1は、矩形ボックス状の保管庫2とこれを制御する制御装置7とで構成されている。ここで、制御装置7は、表示手段としてのモニタ11と入力手段としてのしてキーボード10及びマウス9を備える汎用パーソナル・コンピュータ等で構成され、保管庫2とはシリアル通信やLAN等の通信ケーブル8で接続されており、該制御装置7からの工程入力は、キーボード10やマウス9を用いて行われる。
【0018】
又、前記保管庫2内には、被保管物としての複数のマイクロプレート12を格納することができる複数の棚4が着脱可能に配置されるとともに、3次元空間を移動してマイクロプレート12を搬送及び位置決めするための搬送手段3が設けられている。ここで、搬送手段3は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸方向に移動可能であって、その先端部には、マイクロプレート12を把持してこれを搬送するためのハンド3aが設けられている。尚、図示しないが、搬送手段3は、これをX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させるためのステッピングモータやサーボモータ等の駆動源と、該駆動源を駆動するための駆動回路を備えている。
【0019】
又、保管庫2には、マイクロプレート12を当該保管庫2の内外に出し入れするための出入口2a(図2参照)が形成されており、この出入口2aは、マイクロプレート12の保管庫2に対する入出庫が感知されると、不図示の駆動手段によって上下動せしめられるシャッタ6によって自動的に開閉される。
【0020】
ところで、保管庫2に対して入出庫される各マイクロプレート12にはIDが付されており、このIDや当該マイクロプレート12の種別等の各種情報は不図示のバーコードに記録されており、バーコードはマイクロプレート12の側面に貼付されている。
【0021】
而して、本実施の形態においては、図2に示すように、前記シャッタ6の庫内内側にはバーコードリーダ5が取り付けられており、このバーコードリーダ5は、シャッタ6による出入口2aの開閉に同期して起動及び停止され、起動時にはシャッタ6と共に上下動しながらマイクロプレート12に貼付されたバーコードを読み取る。
【0022】
即ち、バーコードが貼付されたマイクロプレート12を図2に示すように搬送手段3によって出入口2aの近くの搬送位置まで搬送した後、これを静止させ、シャッタ6による出入口2aの開閉を開始するタイミングに合わせてバーコードリーダ5を起動し、シャッタ6が上下動して出入口2aを開閉動作する間、該シャッタ6と共に上下動するバーコードリーダ5によってバーコードを読み取る。このようにバーコードリーダ5をシャッタ6と共に上下動させ、マイクロプレート12に貼付されたバーコードをバーコードリーダ5によって上下に走査しながら読み取るようにしたため、個々のマイクロプレート12においてバーコードの貼付位置に上下方向のズレがあっても、全てのマイクロプレート12に貼付されたバーコードに記録された各種情報を正確且つ確実に読み取ることができる。
【0023】
本実施の形態では、バーコードをバーコード形式Code:128、高さ約8mmで作成し、これをマイクロプレート12の側面に貼り付けた。貼り付けの際、故意に貼付位置を上下左右にずらしたマイクロプレート12を数種類用意し、これらのマイクロプレート12の入出庫作業を実施した。
【0024】
而して、シャッタ6に取り付けられたバーコードリーダ5は、前述のようにシャッタ6と共に上下動しながら各マイクロプレート12に貼付されたバーコードを上下に走査しながら読み取るため、バーコードの貼付位置のズレを吸収して全マイクロプレート12のバーコードを正確且つ確実に読み取ることができた。即ち、本実施の形態によれば、バーコードリーダ5の垂直方向に狭い読み取り範囲を特別な装置を追加することなく拡大することができ、バーコードの貼付位置のズレによる読み取りエラーの問題を解消することができる。
【0025】
又、本実施の形態では、バーコードリーダ5をシャッタ6に取り付けたため、バーコード読み取り及び種別の判断工程とシャッタ6の開閉工程を同時に実施することができ、入出庫時のマイクロプレート12の搬送作業の単純化と搬送時間の短縮化を図ることができ、入出庫作業の効率を高めることができる。
【0026】
更に、バーコードリーダ5の取付場所を別に設ける必要がないため、保管庫2内の空いた有効スペースを活用して収納スペースを増やしたり、或は空いたスペースを削除することによって保管庫2の小型・コンパクト化を実現することもできる。
【0027】
次に、本実施の形態に係る自動保管装置1におけるマイクロプレート12の出庫作業の手順を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0028】
先ず、オペレータは、出庫したいマイクロプレート12の種別を制御装置7のキーボード10とマウス9を用いてモニタ11の表示画面によって選択し、出庫開始を指示する(図3のステップS30)。
【0029】
すると、搬送手段3は、保管庫2内を移動し、選択されたマイクロプレート12をハンド3aで把持してこれを棚4から取り出し、これを図2に示すように出入口2aの近傍の搬送位置へ搬送して静止させる(ステップS31)。
【0030】
次に、制御装置7は、シャッタ6を駆動制御し、これを上動させて出入口2aを開き始めるが(ステップS32)、この動作に連動してバーコードリーダ5が起動され(ステップS33)、バーコードリーダ5は、シャッタ6と共に上動しながらバーコードを上方に向かって走査してこれを読み取る。そして、シャッタ6によって出入口2aが全開されると同時にバーコードリーダ5が停止され(ステップS34)、該バーコードリーダ5によって読み取られた種別データは制御装置7に送られる。
【0031】
制御装置7は、オペレータによって予め選択されたマイクロプレート12の種別データとバーコードリーダ5から送られてきた種別データ(実際に出庫されるマイクロプレート12の種別データ)とを突き合わせ、両者が一致するか否かを判断する(ステップS35)。そして、判断の結果、両データが一致すれば(つまり、出庫指示されたマイクロプレート12と実際の出庫しようとするマイクロプレート12とが一致した場合には)、搬送手段3が再度駆動され、該搬送手段3によってマイクロプレート12が全開状態にある出入口2aから保管庫2外へと搬出され(ステップS36)、出庫動作が終了する(ステップS37)。
【0032】
他方、出庫指示されたマイクロプレート12と実際の出庫しようとするマイクロプレート12とが一致しない場合には、制御装置7は、アラーム処理を行って、モニタ11にてその旨をオペレータに知らせ(ステップS38)、作業を終了する(ステップS37)。
【0033】
尚、以上はマイクロプレート12の出庫作業の手順について説明したが、マイクロプレート12の入庫作業も出庫作業と同様になされるため、これについての図示及び説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、マイクロプレートやマイクロチューブ等の他、任意の被保管物を自動保管するための自動保管装置に対して同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る自動保管装置の一部を破断して示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自動保管装置のシャッタ部分の側断面図である。
【図3】本発明に係る自動保管装置におけるマイクロプレートの出庫作業の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 自動保管装置
2 保管庫
2a 出入口
3 搬送手段
3a ハンド
4 棚
5 バーコードリーダ(読取手段)
6 シャッタ
7 制御装置(制御手段)
8 通信ケーブル
9 マウス
10 キーボード
11 モニタ
12 マイクロプレート(被保管物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被保管物を格納可能な棚を収納する保管庫と、保管庫内の3次元空間を移動して被保管物を搬送及び位置決めする搬送手段と、被保管物を保管庫の内外に出し入れするための出入口を自動開閉するシャッタと、被保管物に貼付されたバーコードを読み取る読取手段と、前記搬送手段と前記シャッタ及び前記読取手段を制御する制御手段を備える自動保管装置において、
前記読取手段を前記シャッタに取り付け、シャッタによる前記出入口の開閉動作時に前記読取手段による前記バーコードの読み取りを行うことを特徴とする自動保管装置。
【請求項2】
前記シャッタは上下動して前記出入口を開閉し、前記読取手段はシャッタと共に上下動しながら前記バーコードを読み取ることを特徴とする請求項1記載の自動保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−256722(P2006−256722A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73400(P2005−73400)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】