説明

自動倉庫の荷保管方法

【課題】 出庫時の荷繰り作業を確実に不要にすることが可能な自動倉庫の荷保管方法を提供する。
【解決手段】 手前棚と奥棚とで異なる種類の荷が格納された棚組がある場合は、その手前棚の荷を移動対象荷とする。そして、手前棚が空で、移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された棚組があるときは、その手前棚に移動対象荷を移動させ、当該棚組がないときは、手前棚も奥棚も空いた棚組の奥棚に移動対象荷を移動させる。手前棚と奥棚とで同一種類の荷が格納され、手前棚の荷の出庫優先順が奥棚の荷の出庫優先順よりも低い棚組がある場合は、その手前棚の荷を移動対象荷とする。そして、手前棚が空で、移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された棚組があるときは、その手前棚に移動対象荷を移動させ、当該棚組がないときは、手前棚も奥棚も空いた棚組の奥棚に移動対象荷を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手前棚及び奥棚を有する保管棚を備えた自動倉庫の荷保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫の保管棚には、例えば特許文献1に記載されているように、手前棚及び奥棚を有するダブルリーチ式と称されるものがある。ところで、自動倉庫では、先に入庫した物品から順番に出庫するという、いわゆる先入れ先出しの制御を行うことがある。しかし、ダブルリーチ式の保管棚では、始めに保管される物品が奥棚に格納され、後に保管される物品が手前棚に格納されることが避けられないため、先入れ先出しの制御が困難になる。
【0003】
そこで、そのようなダブルリーチ式の保管棚を備えた自動倉庫において、物品の先入れ先出しを厳守可能とする従来技術として、例えば特許文献2に記載されているような物品入出庫方法が提案されている。特許文献2は、出庫対象物品が奥棚に存在するときに、その奥棚に対応する手前棚に存在する物品を空の前後組棚の奥棚へ退避してから出庫対象物品を出庫し、その後で再入庫棚選択プロセスに基づき再入庫棚を決定し、その再入庫棚に出庫対象物品を再入庫するというものである。
【特許文献1】特開昭63−97504号公報
【特許文献2】特開2007−238302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献2に記載の物品入出庫方法では、一旦出庫済みの物品を再入庫した後は、次の出庫時における物品の退避を防止することができる。しかし、前後組棚の手前棚及び奥棚の両方に物品が存在している状態で、奥棚の物品を最初に出庫する際には、手前棚の物品を一旦取り出して別の棚へ退避させるという荷繰り作業を行う必要がある。
【0005】
本発明の目的は、出庫時の荷繰り作業を確実に不要にすることが可能な自動倉庫の荷保管方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、荷を保管するための手前棚及び奥棚からなる棚組を複数有する自動倉庫の荷保管方法であって、複数の棚組のうち手前棚と奥棚とで異なる種類の荷が格納された第1移動元棚組があるかどうかを判断し、第1移動元棚組があると判断されたときに、第1移動元棚組の手前棚に格納された荷を第1移動対象荷として他の棚組に移動させる第1工程と、複数の棚組のうち手前棚と奥棚とで同一種類の荷が格納されていると共に手前棚に格納された荷の出庫優先順が奥棚に格納された荷の出庫優先順よりも低い第2移動元棚組があるかどうかを判断し、第2移動元棚組があると判断されたときに、第2移動元棚組の手前棚に格納された荷を第2移動対象荷として他の棚組に移動させる第2工程とを含み、第1工程においては、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に第1移動対象荷と同一種類で第1移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された第1移動先棚組があるかどうかを判断し、第1移動先棚組があると判断されると、第1移動対象荷を第1移動先棚組の手前棚に移動させ、第1移動先棚組がないと判断されたときには、複数の棚組のうち手前棚も奥棚も空いている第2移動先棚組があるかどうかを判断し、第2移動先棚組があると判断されると、第1移動対象荷を第2移動先棚組の奥棚に移動させるようにし、第2工程においては、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に第2移動対象荷と同一種類で第2移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された第3移動先棚組があるかどうかを判断し、第3移動先棚組があると判断されると、第2移動対象荷を第3移動先棚組の手前棚に移動させ、第3移動先棚組がないと判断されたときには、複数の棚組のうち手前棚も奥棚も空いている第4移動先棚組があるかどうかを判断し、第4移動先棚組があると判断されると、第2移動対象荷を第4移動先棚組の奥棚に移動させることを特徴とするものである。
【0007】
このような自動倉庫の荷保管方法においては、複数の棚組のうち手前棚と奥棚とで異なる種類の荷が格納された第1移動元棚組がある場合には、その第1移動元棚組の手前棚に格納された荷を第1移動対象荷として他の棚組に移動させる。このとき、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に第1移動対象荷と同一種類で第1移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された第1移動先棚組がある場合には、第1移動対象荷を第1移動先棚組の手前棚に移動させる。その結果、第1移動先棚組の手前棚には、同奥棚に格納された荷よりも出庫優先順の高い第1移動対象荷が存在することとなる。これにより、第1移動対象荷を出庫する際には、第1移動先棚組の手前棚から第1移動対象荷を取り出してそのまま入出庫位置まで搬送すれば良いので、出庫時の荷繰り作業が不要となる。
【0008】
また、複数の棚組のうち手前棚と奥棚とで同一種類の荷が格納されていると共に手前棚に格納された荷の出庫優先順が奥棚に格納された荷の出庫優先順よりも低い第2移動元棚組がある場合には、その第2移動棚組の手前棚に格納された荷を第2移動対象荷として他の棚組に移動させる。このとき、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に第2移動対象荷と同一種類で第2移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された第3移動先棚組がある場合には、第2移動対象荷を第3移動先棚組の手前棚に移動させる。その結果、第3移動先棚組の手前棚には、同奥棚に格納された荷よりも出庫優先順の高い第2移動対象荷が存在することとなる。これにより、第2移動対象荷を出庫する際には、第3移動先棚組の手前棚から第2移動対象荷を取り出してそのまま入出庫位置まで搬送すれば良いので、出庫時の荷繰り作業が不要となる。
【0009】
好ましくは、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に奥棚に荷が格納された第3移動元棚組があるかどうかを判断し、第3移動元棚組があると判断されたときに、第3移動元棚組の奥棚に格納された荷を第3移動対象荷として他の棚組に移動させる第3工程を更に含み、第3工程においては、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に第3移動対象荷と同一種類で第3移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚に格納された第5移動先棚組があるかどうかを判断し、第5移動先棚組があると判断されると、第3移動対象荷を第5移動先棚組の手前棚に移動させる。
【0010】
この場合には、第5移動先棚組の手前棚には、同奥棚に格納された荷よりも出庫優先順の高い第3移動対象荷が存在することとなる。これにより、第3移動対象荷を出庫する際には、第5移動先棚組の手前棚から第3移動対象荷を取り出してそのまま入出庫位置まで搬送すれば良いので、出庫時の荷繰り作業が不要となる。また、第3移動元棚組の手前棚及び奥棚がいずれも空の状態となるため、入庫するための棚組が増加することになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、出庫時の荷繰り作業を確実に不要にすることができる。これにより、出庫時における荷の搬送回数を必要最小限に抑え、サイクルタイムを向上させることが可能となる。また、荷を一時退避させるための空棚を設ける必要が無いため、荷の保管量を十分維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係わる自動倉庫の荷保管方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる自動倉庫の荷保管方法の一実施形態が適用される自動倉庫を示す概略平面図である。同図において、自動倉庫1は、多数の荷Wを保管するための1対の保管棚(ラック)2A,2Bと、荷保管棚2A,2B間に往復移動可能に設置され、荷保管棚2A,2Bに対する荷Wの出し入れ及び荷Wの搬送を行うスタッカクレーン3とを備えている。
【0014】
荷保管棚2A,2Bは、荷Wを保管するための複数の棚組4を有するダブルリーチ式の荷保管棚である。棚組4は、スタッカクレーン3側に配置された手前棚5と、この手前棚5の後側(奥側)に配置された奥棚6とからなっている。これらの棚組4は、スタッカクレーン3の移動方向に沿って複数段にわたって設けられている。
【0015】
荷保管棚2Aの一端側には、例えばコンベア式の入出庫ステーション7が設置されている。入出庫ステーション7は、自動倉庫1における荷Wの出入口である。具体的には、入出庫ステーション7は、出庫する荷Wをスタッカクレーン3から積み降ろしたり、入庫する荷Wをスタッカクレーン3へ積み込む場所である。
【0016】
入出庫ステーション7に隣接した個所には、在庫管理コンピュータ8が設置されている。在庫管理コンピュータ8は、荷保管棚2A,2Bに保管されている荷Wの在庫管理、入出庫の引き当て、スタッカクレーン3による荷Wの出し入れ及び搬送の指示等を行う。在庫管理コンピュータ8については、後で詳述する。
【0017】
スタッカクレーン3は、荷保管棚2A,2B間に敷設された走行レール9に沿って走行可能である。スタッカクレーン3は、上下方向に延びる2本のマスト10と、各マスト10に昇降自在に支持され、荷Wが載置されるキャリッジ11とを有している。キャリッジ11には、荷保管棚2A,2B及び入出庫ステーション7に対して荷Wを移載するためのスライドフォーク(図示せず)が設けられている。
【0018】
また、スタッカクレーン3は、クレーン制御コントローラ12を有している。クレーン制御コントローラ12は、在庫管理コンピュータ8と接続され、在庫管理コンピュータ8からの指示信号に従ってスタッカクレーン3の各部を制御する。
【0019】
図2は、在庫管理コンピュータ8の機能ブロックを示す図である。同図において、在庫管理コンピュータ8には、作業者が入出庫の指示操作等を行うための入力操作部13が接続されている。
【0020】
在庫管理コンピュータ8は、入庫棚設定部14と、移動棚設定部15とを有している。入庫棚設定部14は、在庫情報データベース16に登録されている自動倉庫1の在庫情報に基づいて、入庫すべき入庫対象荷を格納する棚(入庫棚)を設定し、この入庫棚データをクレーン制御コントローラ12に送出する。すると、クレーン制御コントローラ12は、入庫対象荷を入出庫ステーション7から入庫棚まで搬送して入庫棚に格納するようにスタッカクレーン3の駆動系を制御する。
【0021】
ここで、自動倉庫1の在庫情報としては、荷保管棚2A,2Bの全ての手前棚5及び奥棚6における荷Wの有無情報や、これらの手前棚5及び奥棚6に格納されている荷Wの品物、種別、品番、数量及び出庫優先順等の情報がある。出庫優先順は、出庫する時の優先順のことであり、例えば品物が食料品の場合には製造年月日によって決まる。この場合、製造年月日が古いものほど、出庫優先順が高くなる。
【0022】
移動棚設定部15は、在庫情報データベース16に登録されている自動倉庫1の在庫情報に基づいて、移動させるべき移動対象荷が格納されている棚(移動元棚)と移動対象荷を移す棚(移動先棚)とを設定し、これらの設定データをクレーン制御コントローラ12に送出する。すると、クレーン制御コントローラ12は、移動対象荷を移動元棚から移動先棚まで搬送して移動先棚に格納するようにスタッカクレーン3の駆動系を制御する。
【0023】
図3は、入庫棚設定部14により実行される入庫棚設定処理手順の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理手順は、公知技術に相当するものである。
【0024】
同図において、まず入力操作部13によって入庫の指示操作が行われたかどうかを判断し(手順S51)、入庫の指示操作が行われたときは、引き続いて在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5が空いている棚組4があるかどうかを判断する(手順S52)。
【0025】
手前棚5が空いている棚組4があるときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、入庫対象荷と同一の種類で入庫対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚6に格納されている棚組4があるかどうかを判断する(手順S53)。そのような棚組4があるときは、当該棚組4の手前棚5を入庫棚とし、この入庫棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S54)。
【0026】
手順53において入庫対象荷と同一の種類で入庫対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚6に格納されている棚組4がないと判断されたときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5も奥棚6も空いている棚組4があるかどうかを判断する(手順S55)。そのような棚組4があるときは、当該棚組4の奥棚5を入庫棚とし、この入庫棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S56)。
【0027】
手順S55において手前棚5も奥棚6も空いている棚組4がないと判断されたときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、入庫対象荷と同一の種類で入庫対象荷よりも出庫優先順の高い荷が奥棚6に格納されている棚組4があるかどうかを判断する(手順S57)。そのような棚組4があるときは、当該棚組4の手前棚5を入庫棚とし、この入庫棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S58)。
【0028】
手順S57において入庫対象荷と同一の種類で入庫対象荷よりも出庫優先順の高い荷が奥棚6に格納されている棚組4がないと判断されたときは、入庫対象荷と異なる種類の荷が格納されている奥棚6に対応する手前棚5を入庫棚とし、この入庫棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S59)。
【0029】
図4は、図3に示すフローチャートに従って入庫棚を決定する具体例を示したものである。同図において、入庫対象荷と同一の種類Aで入庫対象荷よりも出庫優先順の低い荷WALが奥棚6に格納されている棚組4がある場合には、当該棚組4の手前棚5に入庫対象荷を格納する(図中P参照)。この場合には、当該棚組4の手前棚5に存在する荷の出庫優先順が同奥棚6に存在する荷WALの出庫優先順よりも高いため、手前棚5に存在する荷を出庫する際には、スタッカクレーン3により手前棚5から荷を取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良い。従って、奥棚6の荷を取り出すために手前棚5の荷を一旦取り出して別の棚へ退避させるという荷繰り作業が不要となる。
【0030】
入庫対象荷と同一の種類Aで入庫対象荷よりも出庫優先順の低い荷WALが奥棚6に格納されている棚組4は無いが、手前棚5も奥棚6も空いている棚組4がある場合には、当該棚組4の奥棚6に入庫対象荷を格納する(図中P参照)。この場合には、当該棚組4の手前棚5は空であるため、同奥棚6に存在する荷を出庫する際には、スタッカクレーン3により奥棚6から荷を取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良く、荷繰り作業が不要となる。
【0031】
入庫対象荷と同一の種類Aで入庫対象荷よりも出庫優先順の低い荷WALが奥棚6に格納されている棚組4と、手前棚5も奥棚6も空いている棚組4とが無いが、入庫対象荷と同一の種類Aで入庫対象荷よりも出庫優先順の高い荷WAHが奥棚6に格納されている棚組4がある場合には、当該棚組4の手前棚5に入庫対象荷を格納する(図中P参照)。この場合には、当該棚組4の奥棚6に存在する荷WAHの出庫優先順が同手前棚5に存在する荷の出庫優先順よりも高いため、先に奥棚6に存在する荷WAHを出庫する必要がある。従って、出庫時の荷繰り作業が必要となる。
【0032】
上記3つの棚組4は全て無いが、入庫対象荷と異なる種類Bの荷Wが奥棚6に格納されている棚組4がある場合には、当該棚組4の手前棚5に入庫対象荷を格納する(図中P参照)。この場合には、当該棚組4の手前棚5と奥棚6とで異なる種類の荷が存在することとなる。このため、奥棚6に存在する荷Wを先に出庫する際には、荷繰り作業が必要となる。
【0033】
このように図3に示す公知の処理手順に従って入庫を行うだけでは、どうしても出庫時の荷繰り作業が必要となる場合が発生してしまう。そこで本実施形態では、上記の移動棚設定部15を設け、出庫時の荷繰り作業を全く行わなくて済むように、一旦入庫された荷を別の棚に適宜移動させるようにする。
【0034】
図5は、移動棚設定部15により実行される移動棚設定処理手順の詳細を示すフローチャートであり、本発明に相当する処理手順を示したものである。
【0035】
同図において、まず荷を移動させるタイミングになったかどうかを判断する(手順S61)。ここで、荷の移動は、出入庫作業を実施しない夜間(例えば深夜12時)に毎日または数日おきに行うものとする。この場合には、例えば在庫管理コンピュータ8に内蔵された時計機能(タイマ)に基づいて、荷を移動させるタイミングになったかどうかを判断する。
【0036】
荷を移動させるタイミングになったときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5と奥棚6とで異なる種類の荷が格納されている棚組4(第1移動元棚組)があるかどうかを判断する(手順S62)。そのような第1移動元棚組があるときは、その第1移動元棚組の手前棚5に格納されている荷を移動対象荷(第1移動対象荷)とする(手順S63)。
【0037】
続いて、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5が空いている棚組4があるかどうかを判断する(手順S64)。手前棚5が空いている棚組4があるときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、第1移動対象荷と同一の種類で第1移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚6に格納されている棚組4(第1移動先棚組)があるかどうかを判断する(手順S65)。そのような第1移動先棚組があるときは、その第1移動先棚組の手前棚5を移動先棚とし、この移動先棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S66)。
【0038】
すると、クレーン制御コントローラ12は、その移動先棚のデータに従ってスタッカクレーン3の駆動系を制御することにより、第1移動元棚組の手前棚5に存在する第1移動対象荷を第1移動先棚組の手前棚5に移動させる。
【0039】
手順S65において上記の第1移動先棚組がないと判断されたときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5も奥棚6も空いている棚組4(第2移動先棚組)があるかどうかを判断する(手順S67)。そのような第2移動先棚組があるときは、その第2移動先棚組の奥棚6を移動先棚とし、この移動先棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S68)。
【0040】
すると、クレーン制御コントローラ12は、その移動先棚のデータに従ってスタッカクレーン3の駆動系を制御することにより、第1移動元棚組の手前棚5に存在する第1移動対象荷を第2移動先棚組の奥棚6に移動させる。
【0041】
手順S62において上記の第1移動元棚組がないと判断されたときは、手前棚5と奥棚6とで同一の種類の荷が格納されていると共に、手前棚5に格納された荷の出庫優先順が奥棚6に格納された荷の出庫優先順よりも低い棚組4(第2移動元棚組)があるかどうかを判断する(手順S69)。そのような第2移動元棚組があるときは、その第2移動元棚組の手前棚5に格納されている荷を移動対象荷(第2移動対象荷)とする(手順S70)。
【0042】
続いて、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5が空いている棚組4があるかどうかを判断する(手順S71)。手前棚5が空いている棚組4があるときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、第2移動対象荷と同一の種類で第2移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚6に格納されている棚組4(第3移動先棚組)があるかどうかを判断する(手順S72)。そのような第3移動先棚組があるときは、その第3移動先棚組の手前棚5を移動先棚とし、この移動先棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S73)。
【0043】
すると、クレーン制御コントローラ12は、その移動先棚のデータに従ってスタッカクレーン3の駆動系を制御することにより、第2移動元棚組の手前棚5に存在する第2移動対象荷を第3移動先棚組の手前棚5に移動させる。
【0044】
手順S72において上記の第3移動先棚組がないと判断されたときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5も奥棚6も空いている棚組4(第4移動先棚組)があるかどうかを判断する(手順S74)。そのような第4移動先棚組があるときは、その第4移動先棚組の奥棚6を移動先棚とし、この移動先棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S75)。
【0045】
すると、クレーン制御コントローラ12は、その移動先棚のデータに従ってスタッカクレーン3の駆動系を制御することにより、第2移動元棚組の手前棚5に存在する第2移動対象荷を第4移動先棚組の奥棚6に移動させる。
【0046】
手順S69において上記の第2移動元棚組がないと判断されたときは、手前棚5が空いていて奥棚6に荷が格納されている棚組4(第3移動元棚組)があるかどうかを判断する(手順S76)。そのような第3移動元棚組があるときは、その第3移動元棚組の奥棚6に格納されている荷を移動対象荷(第3移動対象荷)とする(手順S77)。
【0047】
続いて、在庫情報データベース16の在庫情報から、手前棚5が空いている棚組4があるかどうかを判断する(手順S78)。手前棚5が空いている棚組4があるときは、在庫情報データベース16の在庫情報から、第3移動対象荷と同一の種類で第3移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が奥棚6に格納されている棚組4(第5移動先棚組)があるかどうかを判断する(手順S79)。そのような第5移動先棚組があるときは、その第5移動先棚組の手前棚5を移動先棚とし、この移動先棚のデータをクレーン制御コントローラ12に送出する(手順S80)。
【0048】
すると、クレーン制御コントローラ12は、その移動先棚のデータに従ってスタッカクレーン3の駆動系を制御することにより、第3移動元棚組の奥棚6に存在する第3移動対象荷を第5移動先棚組の手前棚5に移動させる。
【0049】
以上において、上記手順S62〜S68は、複数の棚組のうち手前棚と奥棚とで異なる種類の荷が格納された第1移動元棚組があるかどうかを判断し、第1移動元棚組があると判断されたときに、第1移動元棚組の手前棚に格納された荷を第1移動対象荷として他の棚組に移動させる第1工程の一部処理を行う。上記手順S69〜S75は、複数の棚組のうち手前棚と奥棚とで同一種類の荷が格納されていると共に手前棚に格納された荷の出庫優先順が奥棚に格納された荷の出庫優先順よりも低い第2移動元棚組があるかどうかを判断し、第2移動元棚組があると判断されたときに、第2移動元棚組の手前棚に格納された荷を第2移動対象荷として他の棚組に移動させる第2工程の一部処理を行う。上記手順S76〜S80は、複数の棚組のうち手前棚が空いていると共に奥棚に荷が格納された第3移動元棚組があるかどうかを判断し、第3移動元棚組があると判断されたときに、第3移動元棚組の奥棚に格納された荷を第3移動対象荷として他の棚組に移動させる第3工程の一部処理を行う。
【0050】
図6は、図5に示すフローチャートに従って移動元棚及び移動先棚を決定する具体例を示したものである。例えば図6(A)に示すように、手前棚5に種類Aの荷WAHが格納され、奥棚6に種類Bの荷Wが格納されている棚組4がある場合には、当該棚組4の手前棚5が最優先して移動元棚となり、その手前棚5に格納されている荷WAHが移動対象荷となる。
【0051】
このとき、手前棚5が空になっており、奥棚6に荷WAHよりも出庫優先順の低い種類Aの荷WALが格納されている他の棚組4があれば、当該棚組4の手前棚5が移動先棚となり、その手前棚5に荷WAHを移動させる(図中のQ参照)。この場合には、移動先棚の手前棚5に存在する荷WAHを出庫する際には、スタッカクレーン3により当該手前棚5から荷WAHを取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良く、荷繰り作業が不要となる。また、同じ種類Aの荷WAH,WALを同じ棚組4に保管しておくので、在庫管理が行いやすくなる。
【0052】
一方、そのような棚組4がなくても、手前棚5及び奥棚6の両方が空になっている他の棚組4があれば、当該棚組4の奥棚6が移動先棚となり、その奥棚6に荷WAHを移動させる(図中のQ参照)。この場合には、移動先棚の奥棚6に対応する手前棚5は空であるため、当該奥棚6に存在する荷WAHを出庫する際には、スタッカクレーン3により奥棚6から荷WAHを取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良く、荷繰り作業が不要となる。
【0053】
例えば最も低い優先度(図4中のP参照)で入庫されたために、図6(A)に示すように、同じ棚組4の手前棚5及び奥棚6に異なる種類の荷が存在することになっても、入出庫作業を行っていない間に、上記のように荷を移動させることにより、出庫時に荷繰り作業を行わなくて済むようになる。
【0054】
手前棚5と奥棚6とで異なる種類の荷が格納されている棚組4は無いが、例えば図6(B)に示すように、手前棚5に種類Aの荷WANが格納され、奥棚6に荷WANよりも出庫優先順の高い種類Aの荷WAHが格納されている棚組4がある場合には、当該棚組4の手前棚5が優先して移動元棚となり、その手前棚5に格納されている荷WANが移動対象荷となる。
【0055】
このとき、手前棚5が空になっており、奥棚6に荷WANよりも出庫優先順の低い種類Aの荷WALが格納されている他の棚組4があれば、当該棚組4の手前棚5が移動先棚となり、その手前棚5に荷WANを移動させる(図中のR参照)。この場合には、移動先棚の手前棚5に存在する荷WANを出庫する際には、スタッカクレーン3により当該手前棚5から荷WANを取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良く、荷繰り作業が不要となる。
【0056】
一方、そのような棚組4がなくても、手前棚5及び奥棚6の両方が空になっている他の棚組4があれば、当該棚組4の奥棚6が移動先棚となり、その奥棚6に荷WANを移動させる(図中のR参照)。この場合には、移動先棚の奥棚6に対応する手前棚5は空であるため、当該奥棚6に存在する荷WANを出庫する際には、スタッカクレーン3により奥棚6から荷WANを取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良く、荷繰り作業が不要となる。
【0057】
例えば2番目に低い優先度(図4中のP参照)で入庫されたために、図6(B)に示すように、棚組4の手前棚5に存在する荷の出庫優先順が同奥棚6に存在する荷の出庫優先順よりも低くなったとしても、入出庫作業を行っていない間に、上記のように荷を移動させることにより、出庫時に荷繰り作業を行わなくて済むようになる。
【0058】
手前棚5と奥棚6とで異なる種類の荷が格納されている棚組4と、手前棚5に格納された荷の出庫優先順が奥棚6に格納された荷の出庫優先順よりも低くなっている棚組4とが無いが、例えば図6(C)に示すように、手前棚5が空になっており、奥棚6に種類Aの荷WAHが格納されている棚組4がある場合には、当該棚組4の奥棚6が移動元棚となり、その奥棚6に格納されている荷WAHが移動対象荷となる。
【0059】
このとき、手前棚5が空になっており、奥棚6に荷WAHよりも出庫優先順の低い種類Aの荷WALが格納されている他の棚組4があれば、当該棚組4の手前棚5が移動先棚となり、その手前棚5に荷WAHを移動させる(図中のS参照)。この場合には、移動先棚の手前棚5に存在する荷WAHを出庫する際には、スタッカクレーン3により当該手前棚5から荷WAHを取り出してそのまま入出庫ステーション7まで搬送すれば良く、荷繰り作業が不要となる。また、手前棚5及び奥棚6がいずれも空となる棚組4が増えるため、例えば荷WAH,WALとは異なる種類の荷を入庫するための棚組が確保されることになり、入庫にとって有利な条件となる。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、入出庫作業を行っていない間に、出庫時に荷繰りを行う可能性がある荷を別の棚に移しておくので、出庫時の荷繰り作業を確実に不要にすることができる。これにより、スタッカクレーン3による荷の出庫搬送回数が低減されるため、出庫のサイクルタイムを向上させることが可能となる。また、荷繰り作業に必要な一時退避用の空棚を荷保管棚2A,2Bに追加しなくて済むため、荷の保管量を十分確保することが可能となる。
【0061】
また、入庫棚の決定の優先順(図4参照)とは逆の順番で、移動対象荷が格納された移動元棚を選択していくので、移動対象荷を移す移動先棚の決定の繰り返し回数を抑えることができる。また、移動元棚及び移動先棚を決定する際には、現在の在庫情報だけを確認すれば良く、入出庫予定や過去の履歴の情報等は不要である。以上により、移動棚設定処理の簡素化を図ることができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、毎日または数日おきに所定の時刻になると、自動的に移動棚設定部15による移動棚設定処理を実行するものとしたが、特にこれに限られず、例えば作業者が入力操作部13で荷の移動を指示操作したときにも、移動棚設定部15による移動棚設定処理を実行するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係わる自動倉庫の荷保管方法の一実施形態が適用される自動倉庫を示す概略平面図である。
【図2】図1に示した在庫管理コンピュータの機能ブロックを示す図である。
【図3】図2に示した入庫棚設定部により実行される入庫棚設定処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図4】図2に示した入庫棚設定部により入庫棚を決定する具体例を示す概念図である。
【図5】図2に示した移動棚設定部により実行される移動棚設定処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図2に示した移動棚設定部により移動元棚及び移動先棚を決定する具体例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0064】
1…自動倉庫、4…棚組、5…手前棚、6…奥棚、8…在庫管理コンピュータ、12…クレーン制御コントローラ、15…移動棚設定部、W…荷。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を保管するための手前棚及び奥棚からなる棚組を複数有する自動倉庫の荷保管方法であって、
前記複数の棚組のうち前記手前棚と前記奥棚とで異なる種類の荷が格納された第1移動元棚組があるかどうかを判断し、前記第1移動元棚組があると判断されたときに、前記第1移動元棚組の前記手前棚に格納された荷を第1移動対象荷として他の棚組に移動させる第1工程と、
前記複数の棚組のうち前記手前棚と前記奥棚とで同一種類の荷が格納されていると共に前記手前棚に格納された荷の出庫優先順が前記奥棚に格納された荷の出庫優先順よりも低い第2移動元棚組があるかどうかを判断し、前記第2移動元棚組があると判断されたときに、前記第2移動元棚組の前記手前棚に格納された荷を第2移動対象荷として他の棚組に移動させる第2工程とを含み、
前記第1工程においては、
前記複数の棚組のうち前記手前棚が空いていると共に前記第1移動対象荷と同一種類で前記第1移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が前記奥棚に格納された第1移動先棚組があるかどうかを判断し、前記第1移動先棚組があると判断されると、前記第1移動対象荷を前記第1移動先棚組の前記手前棚に移動させ、
前記第1移動先棚組がないと判断されたときには、前記複数の棚組のうち前記手前棚も前記奥棚も空いている第2移動先棚組があるかどうかを判断し、前記第2移動先棚組があると判断されると、前記第1移動対象荷を前記第2移動先棚組の前記奥棚に移動させるようにし、
前記第2工程においては、
前記複数の棚組のうち前記手前棚が空いていると共に前記第2移動対象荷と同一種類で前記第2移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が前記奥棚に格納された第3移動先棚組があるかどうかを判断し、前記第3移動先棚組があると判断されると、前記第2移動対象荷を前記第3移動先棚組の前記手前棚に移動させ、
前記第3移動先棚組がないと判断されたときには、前記複数の棚組のうち前記手前棚も前記奥棚も空いている第4移動先棚組があるかどうかを判断し、前記第4移動先棚組があると判断されると、前記第2移動対象荷を前記第4移動先棚組の前記奥棚に移動させることを特徴とする自動倉庫の荷保管方法。
【請求項2】
前記複数の棚組のうち前記手前棚が空いていると共に前記奥棚に荷が格納された第3移動元棚組があるかどうかを判断し、前記第3移動元棚組があると判断されたときに、前記第3移動元棚組の前記奥棚に格納された荷を第3移動対象荷として他の棚組に移動させる第3工程を更に含み、
前記第3工程においては、
前記複数の棚組のうち前記手前棚が空いていると共に前記第3移動対象荷と同一種類で前記第3移動対象荷よりも出庫優先順の低い荷が前記奥棚に格納された第5移動先棚組があるかどうかを判断し、前記第5移動先棚組があると判断されると、前記第3移動対象荷を前記第5移動先棚組の前記手前棚に移動させることを特徴とする請求項1記載の自動倉庫の荷保管方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220986(P2009−220986A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69658(P2008−69658)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】