説明

自動倉庫

【課題】移載装置の撓み補正の調節が容易で、移載装置の重量増加を抑制でき、収納棚の収納空間の上下間の距離を詰めることができる自動倉庫の提供。
【解決手段】荷Mを収納する収納棚2と、昇降ベース41に支持され、荷Mを支持して収納棚2に向かう方向に伸展するフォーク20と、を備える自動倉庫1であって、フォーク20が収納棚2に対して伸展することによって生じるフォーク20の撓み量に基づいて、昇降ベース41を傾動させる昇降ベース傾動装置40を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫においては、収納棚は、鉛直方向ならびに水平方向に複数の区画された収納空間を有しており、クレーンは、これら収納空間と対向する位置に荷を移動させ、フォークやアーム等の移載装置を用いて収納棚との間で荷の受け渡しをする構成が一般的である。
【0003】
このような構成の移載装置は、荷を支持し収納棚に向って伸展して荷の受け渡しを行うため、当該伸展に伴って荷の重量や装置自身の自重により撓みが発生する。すると、伸展前と伸展後とで、荷と収納棚との間で鉛直方向に当該撓み分だけズレが発生することとなる。したがって、従来、収納棚の収納空間の上下間の距離は、当該撓みによるズレによって荷が収納棚に衝突するのを防ぐため、荷の寸法だけでなく、当該撓み分をも考慮して設計されていた。つまり、結果的に収納棚が大きくなり、自動倉庫の省スペース化を図ることが難しいという問題があった。
【0004】
このような撓みを補正する従来技術としては、例えば、特許文献1に記載のように、フォーク先端を予め上方に傾ける構成、あるいは、当該傾きによる荷の滑りを防止するべく、フォークガイドを円弧状にしてフォークが伸展するにしたがってフォーク先端を上方に傾ける構成、が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−178411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、フォーク先端を機械的に傾ける構成であるため、取り扱う荷の種類が変わった場合等、その荷の重量による撓み量と傾ける量とを適宜調節して合わせ込む作業が必要となるといった問題があり調節が煩雑である。なお、フォーク先端にジャッキ等を設けて、荷の重量に応じてフォーク先端の傾ける量を能動的に調節する手段を採用することが考えられるが、そうすると移載装置の手先の重量が大きくなり、そのバランスをとるために移載装置本体側(荷台側)の重量を大きくしなければならず、装置全体として重量が大幅に増加してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、移載装置の撓み補正の調節が容易で、移載装置の重量増加を抑制でき、収納棚の収納空間の上下間の距離を詰めることができる自動倉庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷を収納する収納棚と、所定の支持台に支持され、上記荷を支持して上記収納棚に向かう方向に伸展する移載装置と、を備える自動倉庫であって、上記移載装置が上記収納棚に対して伸展することによって生じる上記移載装置の撓み量に基づいて、上記支持台を傾動させる支持台傾動装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、移載装置が伸展するときに生じる撓み量に基づいて支持台を傾動させ移載装置自体を傾けることによって、収納棚に対する荷の鉛直方向のズレを低減させる。
【0009】
また、本発明においては、上記支持台傾動装置は、上記撓み量に基づいて上記荷と上記収納棚との鉛直方向における相対位置の変化を相殺するように上記支持台を傾動させるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、移載装置が伸展する間において常に、収納棚に対する荷の鉛直方向における相対位置を一定とさせることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記移載装置が上記収納棚に上記荷を収納する間において、 上記支持台傾動装置は、上記収納棚に臨む側の上記支持台の端部が上昇するように上記支持台を傾動させるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、荷を収納する時は、移載装置の撓み量が漸次大きくなるので、その分、支持台の収容棚に臨む側の端部を上昇させることで撓みを相殺することができる。
【0011】
また、本発明においては、上記支持台傾動装置が上記収納棚に臨む側の上記支持台の端部を上昇させて上記移載装置が上記収納棚に収納された上記荷を支持した状態から、上記移載装置が上記収納棚から上記荷を取出する間において、上記支持台傾動装置は、上記収納棚に臨む側の上記支持台の端部が下降するように上記支持台を傾動させるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、荷を取出する時は、移載装置の撓み量が漸次小さくなるので、その分、支持台の収容棚に臨む側の端部を下降させることで撓みを相殺することができる。
【0012】
また、本発明においては、上記荷の重量を検出する検出装置と、上記検出装置の検出結果に基づいて上記支持台傾動装置の駆動を制御する制御装置と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、荷の重量に基づいて移載装置の撓み量を推定することができるため、荷の種類が変わった場合であっても、その重量に応じて支持台の傾け量を調節することで、収納棚に対する荷の鉛直方向のズレを低減させることができる。
【0013】
また、本発明においては、上記支持台傾動装置は、上記支持台を水平方向に延びる所定軸周りに回転自在に支持する基台と、上記支持台及び上記基台のうちいずれか一方側に設けられた孔部と、上記支持台及び上記基台のうち他方側に設けられ、上記孔部と鉛直方向で嵌合する偏心ピンを備えて該偏心ピンを上記水平方向に延びる軸周りに回転駆動させる偏心ピン駆動装置と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、支持台が基台に対して水平方向に延びる所定軸周りに回転自在に支持されているので、孔部と鉛直方向で嵌合している偏心ピンを該水平方向に延びる軸周りに回転させると、基台に対して支持台が上記所定軸周りに傾動する。
【0014】
また、本発明においては、上記孔部及び上記偏心ピン駆動装置は、上記所定軸を水平方向で挟んだ両側にそれぞれ設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、支持台の回転軸を水平方向で挟んだ両側に孔部及び偏心ピン駆動装置を設けるとその両側に支持台を傾けることができるため、その両側に収納棚がある場合にも対応することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、荷を収納する収納棚と、所定の支持台に支持され、上記荷を支持して上記収納棚に向かう方向に伸展する移載装置と、を備える自動倉庫であって、上記移載装置が上記収納棚に対して伸展することによって生じる上記移載装置の撓み量に基づいて、上記支持台を傾動させる支持台傾動装置を有するという構成を採用することによって、移載装置が伸展するときに生じる撓み量に基づいて支持台を傾動させ移載装置自体を傾けることによって、収納棚に対する荷の鉛直方向のズレを低減させる。このため、移載装置に特別な機構を追加することなく手先を傾けることができるため、移載装置の撓み補正の調節が容易となる。また、支持台の傾動により移載装置の撓み量を補正できるため、移載装置側の撓みに対する許容値が大きくなり、その設計時において強度中心の計算となり装置の軽量化を図ることができ、コストダウン及び省エネ化に寄与できる。また、移載装置の撓みを支持台の傾きにより補正できるため、収納棚の収納空間の上下間の距離を最小限に抑えることができる。
したがって、本発明では、移載装置の撓み補正の調節が容易で、移載装置の重量増加を抑制でき、収納棚の収納空間の上下間の距離を詰めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における自動倉庫を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態における昇降ベース傾動装置の構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態における昇降ベース傾動装置の構成を示す平面図である。
【図4】図3における線視A−A断面図である。
【図5】図4における矢視X図である。
【図6】本発明の実施形態における自動倉庫の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態における荷の収納時の機上制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態におけるスタッカークレーンが収納棚に荷を収納する動作を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態における荷の取出時の機上制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態におけるスタッカークレーンが収納棚から荷を取出する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態における自動倉庫1を示す正面図である。
自動倉庫1は、荷Mを収納する収納棚2と、収納棚2との間で荷Mを受け渡すスタッカークレーン10とを備えている。自動倉庫1の床には、図1において紙面垂直方向に直線的にレール3が敷設されており、スタッカークレーン10は、不図示の走行用モーターの駆動によって車輪11aを駆動させレール3に沿って走行する構成となっている。
【0018】
収納棚2は、レール3の幅方向両側に対となって設けられており、荷Mを収納する収納部4が鉛直方向に多段、且つ、水平方向に複数設けられる構成となっている。各収納部4は、レール3に向かう水平方向に略矩形に開口する開口部を有しており、開口部を通過してきた荷Mを収納する領域を有している。
【0019】
スタッカークレーン10は、荷Mを支持して収納棚2に向う方向に伸展するフォーク(移載装置)20と、フォーク20を支持して収納棚2の鉛直方向に移動させる昇降装置30とを有する構成となっている。
フォーク20は、昇降キャリッジ32に搭載されており、荷Mを支持するとともに、不図示のフォーク用モーターによって昇降キャリッジ32上から収納部4の奥まで略水平方向に伸展可能な構成となっている。
【0020】
昇降装置30は、レール3に跨設されてレール3に沿って走行自在の基台11上に立設された4本のマスト31(図3参照)と、各マスト31に沿って上下方向に昇降可能に配設された昇降キャリッジ32とを有する構成となっている。昇降キャリッジ32は、不図示の昇降モーターの駆動によって、マスト31に沿って昇降する構成となっている。なお、昇降装置30の昇降機構としては、ワイヤー巻取り機構、ボールねじ機構等を採用することができる。
【0021】
本実施形態の昇降キャリッジ32には、昇降ベース傾動装置(支持台傾動装置)40が設けられている。以下、この昇降ベース傾動装置40の構成について図2〜図5を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態における昇降ベース傾動装置40の構成を示す正面図である。図3は、本発明の実施形態における昇降ベース傾動装置40の構成を示す平面図である。図4は、図3における線視A−A断面図である。図5は、図4における矢視X図である。なお、図2〜図5においては、荷M及びフォーク20は視認性を向上させるため不図示としている。
【0022】
図2及び図3に示すように、昇降キャリッジ32は、フォーク20を支持固定する昇降ベース(支持台)41と、昇降ベース41を水平方向(スタッカークレーン10の走行方向)に延びる軸周りに回転自在に支持する昇降サイドベース(基台)42とから構成される。昇降サイドベース42には、マスト31のガイドレール31aを挟み込むガイドブロック43が設けられている。また、昇降サイドベース42には、昇降ベース41の中央の側部から水平方向に突出して設けられた回転軸41aを回転自在に支持する孔部42aが設けられている。この昇降サイドベース42には、巻取り機構であれば、巻取り用ロープの一端が固定される。
【0023】
昇降ベース41には、偏心ピン駆動装置44が設けられている。偏心ピン駆動装置44は、図4及び図5に示すように、偏心ピン45と、減速機46を介して偏心ピン45を回転駆動させる傾動用モーター47とを有する。傾動用モーター47は、昇降ベース41に対し固定されている。また、偏心ピン45の回転軸45aは、昇降ベース41に設けられた軸受48によって、水平方向に延びる軸周りに回転自在に支持されている。
【0024】
偏心ピン45は、図5に示すように、昇降サイドベース42に形成された長穴(孔部)42bと鉛直方向で嵌合する構成となっている。この構成によれば、昇降ベース41が昇降サイドベース42に対して水平方向に延びる軸周りに回転自在に支持されているので、長穴42bと鉛直方向で嵌合している偏心ピン45を該水平方向に延びる軸周りに回転させると、偏心ピン駆動装置44が設けられる位置において昇降サイドベース42と昇降ベース41との鉛直方向における相対位置が変化し、結果、昇降サイドベース42に対して昇降ベース41を回転軸41a周りに傾動させることができる。なお、偏心ピン45が嵌合する孔部を水平方向(スタッカークレーン10の走行方向と直交する水平方向)に延びる長穴42bとしているのは、当該傾動に伴う偏心ピン45の移動を考慮したものである。
【0025】
図3に示すように、長穴42b及び偏心ピン駆動装置44は、昇降ベース41のセンター位置に設けられた回転軸41aを水平方向(スタッカークレーン10の走行方向と直交する水平方向)で挟んだ両側にそれぞれ組みとなって設けられている。本実施形態では、図1に示すように、スタッカークレーン10を挟んだ両側に収納棚2があるので、回転軸41aを水平方向で挟んだ両側に長穴42b及び偏心ピン駆動装置44を設けて、その両側に昇降ベース41を傾けることができる構成となっている。また、当該構成を、回転軸41aを挟んで対称構造とすることで、後述する制御計算も場合分けが減り制御系の簡素化、メモリ資源の節約に寄与できる。
【0026】
次に、上記構成の自動倉庫1の制御系について図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施形態における自動倉庫1の制御装置100の構成を示すブロック図である。
制御装置100は、スタッカークレーン10の機上に備えられる機上制御装置50を有しており、機上制御装置50は、スタッカークレーン10の動作指示を受信するロケーション指示受信部51と、スタッカークレーン10の動作を制御する制御部52と、動作指示に応じてフォーク20が伸展した時のフォーク20の撓み量を漸次計算する撓み量計算部53と、撓み量計算部53が撓み量を計算する場合に参照する撓み量演算データが予め記憶された撓み量データ記憶部54とを有している。
【0027】
また、制御装置100は、フォーク20を伸展駆動するフォーク駆動部61及びフォーク20の駆動力を発生するフォーク用モーター62と、基台11を走行駆動する走行駆動部71及び基台11の走行駆動力を発生する走行用モーター72と、昇降装置30を駆動する昇降駆動部81及び昇降装置30の駆動力を発生する昇降用モーター82と、昇降ベース傾動装置40を駆動する傾動駆動部91及び傾動駆動部91の駆動力を発生する傾動用モーター47を有している。
なお、これら4種のモーター(フォーク用モーター62、走行用モーター72、昇降用モーター82、傾動用モーター47)は、4種の駆動部(フォーク駆動部61、走行駆動部71、昇降駆動部81、傾動駆動部91)により指示された回転速度で制御されるとともに、当該回転量を検出して各駆動部を介して制御部52に伝送する構成となっている。
【0028】
さらに、制御装置100は、自動倉庫1内の在庫管理処理を行う在庫管理システム101と、在庫管理システム101からの指示に応じて自動倉庫1内の荷Mを出し入れするためのロケーション指示を機上制御装置50のロケーション指示受信部51に対して送信する地上制御装置102とを有している。
【0029】
なお、ここでロケーション指示とは、図1に示すスタッカークレーン10が、不図示の荷搬入部から荷Mを受け取り、走行、昇降動作により指示された収納部4まで移動し、フォーキング動作によって指示された収納部4に荷Mを載置する一連の入庫動作指示、及び、スタッカークレーン10が、走行、昇降動作により指示された収納部4まで移動し、フォーキング動作によって指示された収納部4から荷Mを取り出して不図示の荷搬出部へ載置する一連の出庫動作指示のことをいう。
また、ロケーション指示における収納部4の指示は、スタッカークレーン10の走行方向における収納棚2の位置を「番地」と称して識別し、昇降方向における収納棚2の位置を「段」と称して識別し、さらにレール3を挟んで設けられた収納棚2それぞれを「列」と称して識別しており、例えば、「1列、3番地、4段」と指定することで、所定の収納部4の位置を一意に特定することができる。
【0030】
次に、上記構成の自動倉庫1の動作及び図7〜図10を参照して荷Mの収納、取出動作について説明する。
図7は、本発明の実施形態における荷Mの収納時の機上制御装置50の動作を示すフローチャートである。図8は、本発明の実施形態におけるスタッカークレーン10が収納棚2に荷Mを収納する動作を説明する図である。図9は、本発明の実施形態における荷Mの取出時の機上制御装置50の動作を示すフローチャートである。図10は、本発明の実施形態におけるスタッカークレーン10が収納棚2から荷Mを取出する動作を説明する図である。
【0031】
先ず、自動倉庫1の地上制御装置102は、図7に示すように、在庫管理システム101からの指示に応じてロケーション指示受信部51にロケーション指示を送信する。ロケーション指示を受信したロケーション指示受信部51は、受信したロケーション指示を制御部52に通知する。ロケーション指示には、荷Mを収納する収納部4の位置を特定するためのロケーション情報(例えば、「1列、3番地、4段」等)と、入庫または出庫を特定する入出庫情報とが含まれる。
【0032】
ロケーション指示を受けた制御部52は、それが入庫または出庫指示であるかを判断し、例えば、入庫指示であれば、スタッカークレーン10に荷Mを積載した後、ロケーション情報に基づいて、走行駆動部71及び昇降駆動部81に駆動情報を通知する。駆動情報を受けた走行駆動部71は、その情報に基づいて走行用モーター72を駆動させることで、基台11を収納棚2の所定の番地位置まで移動させる。また、駆動情報を受けた昇降駆動部81は、その情報に基づいて昇降用モーター82を駆動させることで、昇降キャリッジ32を収納棚2の所定の段位置まで移動させる。これらの駆動によって、荷Mは、図8(a)に示すように、特定の収納部4と対向する位置に位置決めされることとなる。
【0033】
荷Mを位置決めした後、制御部52は、荷Mを収納部4に収納するため、フォーク駆動部61に駆動情報を通知する(ステップS1)。駆動情報を受けたフォーク駆動部61は、その情報に基づいてフォーク用モーター62を駆動させることで、フォーク20を収納部4に対し略水平に伸展させる。なお、フォーク20は、伸展するにつれて、荷Mの重量や自身の自重により撓みが発生することとなる。
【0034】
フォーク20の伸展開始と同時に、フォーク用モーター62は、自身の回転量を検出してその検出結果を漸次、制御部52に出力する。回転量の検出結果を入力された制御部52は、その検出結果を撓み量計算部53に出力する。撓み量計算部53は、入力された回転量からフォーク20の伸展量を算出(ステップS2)するとともに、撓み量データ記憶部54に記憶されているデータを基に、当該伸展量おけるフォーク20の撓み量を算出(ステップS3)して、制御部52に出力する。
なお、撓み量データ記憶部54に記憶されているデータは、例えば、予め実験により、荷Mを積載してフォーク20を伸展したときの撓み量の変化を漸次記憶して得たデータを基に作成したフォーク20の伸展量と撓み量との対応テーブルデータであっても良いし、また、フォーク20の荷Mを積載して伸展したときの伸展量に基づいて撓み量を算出する演算式データであってもよい。また、当該撓み量を算出する位置は、フォーク20の先端部であっても、荷Mの重心Gの位置であっても良い。本実施形態では、荷Mの重心Gの位置における撓み量を算出している。
【0035】
ここで、制御部52は、算出された撓み量を相殺するように昇降ベース傾動装置40を駆動させる(ステップS4)。詳しくは、制御部52は、フォーク20撓み量に基づいて荷Mと収納部4との鉛直方向における相対位置の変化を相殺するように、収納部4に臨む側の昇降ベース41の端部を上昇させる分だけ、傾動用モーター47を回転させる駆動情報を傾動駆動部91に通知して行う。
このように、フォーク20を伸展させつつ、フォーク20が伸展するにつれて漸次大きくなる撓み量を算出して、その撓み量分だけ昇降ベース41の収納部4に臨む側の端部を漸次上昇させることで、収納部4に対する荷Mの鉛直方向のズレを修正して収納動作を行うこととなる。このような動作を、フォーク20が収納部4内の所定の位置まで荷Mを移動させるまで繰り返す(ステップS5)ことで、フォーク20が伸展する間において常に、収納部4に対する荷Mの高さ方向における相対位置を一定とさせることができる(図8(b)参照)。より詳しくは、伸展前と伸展後とで、荷Mの重心Gの高さ方向の位置の変化を相殺させることができる。
【0036】
そして、収納部4に荷Mを載置した後、フォーク20を昇降キャリッジ32上まで戻し、一連の入庫動作は終了する。
【0037】
一方、ロケーション指示が出庫指示である場合、制御部52は、特定の収納部4から荷Mを取出するため、ロケーション情報に基づいて、走行駆動部71及び昇降駆動部81に駆動情報を通知する。駆動情報を受けた走行駆動部71は、その情報に基づいて走行用モーター72を駆動させることで、基台11を収納棚2の所定の番地位置まで移動させる。また、駆動情報を受けた昇降駆動部81は、その情報に基づいて昇降用モーター82を駆動させることで、昇降キャリッジ32を収納棚2の所定の段位置まで移動させる。これらの駆動によって、フォーク20は、荷Mを収容している特定の収納部4と対向する位置に位置決めされることとなる。そして、フォーク20は、収納部4内の荷Mの下を通り所定位置まで伸展した後、昇降ベース傾動装置40によって上昇して、図10(a)に示すように、荷Mを持ち上げ、自身は撓んでいる状態となる。
【0038】
このとき、フォーク用モーター62は、上記伸展による自身の回転量を検出しており、その検出結果を制御部52に出力している。制御部52は、その検出結果を撓み量計算部53に出力して、図10(a)の状態におけるフォーク20の撓み量を基に、以下に説明する荷Mの取出動作(図9参照)をすることとなる。
【0039】
フォーク20が伸展している状態から収縮すると、撓み量は漸次小さくなり、取出前と取出後とで、荷Mは収納部4に対して相対的に上昇することとなってしまう。したがって、制御部52は、図10(a)の状態におけるフォーク20の撓み量から減少した撓み量だけを相殺するように昇降ベース傾動装置40を駆動させる。
【0040】
詳しくは、先ず、制御部52は、荷Mを取出するため、フォーク駆動部61に収縮駆動情報を通知する(ステップS6)。フォーク20の収縮開始と同時に、フォーク用モーター62は、自身の回転量を検出してその検出結果を漸次、制御部52に出力する。回転量の検出結果を入力された制御部52は、その検出結果を撓み量計算部53に出力する。撓み量計算部53は、入力された回転量からフォーク20の伸展量を算出(ステップS2)するとともに、撓み量データ記憶部54に記憶されているデータを基に、当該伸展量おけるフォーク20の撓み量を算出(ステップS3)する。そして、撓み量計算部53は、図10(a)の状態におけるフォーク20の撓み量と現在の撓み量との差分を算出(ステップS7)し、当該差分を制御部52に出力する。
【0041】
ここで、制御部52は、算出された差分の撓み量を相殺するように昇降ベース傾動装置40を駆動させる(ステップS4)。詳しくは、制御部52は、図10(a)の状態におけるフォーク20の撓み量と現在の撓み量との差分だけ、昇降ベース41の収納部4に臨む側の端部を下降させるように傾動用モーター47を回転させる駆動情報を傾動駆動部91に通知して行う。
このように、フォーク20を収縮させつつ、フォーク20が収縮するにつれて漸次小さくなる撓み量を算出して、基の撓み量から当該撓み量の差分だけ昇降ベース41の収納部4に臨む側の端部を漸次下降させることで、収納部4に対する荷Mの鉛直方向のズレを修正して取出動作を行うこととなる。このような動作を、フォーク20が昇降キャリッジ32上の所定の位置まで荷Mを移動させるまで繰り返す(ステップS8)ことで、フォーク20が収縮する間において常に、収納部4に対する荷Mの高さ方向における相対位置を一定とさせることができる(図10(b)参照)。
【0042】
そして、荷Mを取出した後、スタッカークレーン10から不図示の荷搬出部に荷Mを載置することで一連の出庫動作は終了する。
【0043】
したがって、上述の本実施形態によれば、荷Mを収納する収納棚2と、昇降ベース41に支持され、荷Mを支持して収納棚2に向かう方向に伸展するフォーク20と、を備える自動倉庫1であって、フォーク20が収納棚2に対して伸展することによって生じるフォーク20の撓み量に基づいて、昇降ベース41を傾動させる昇降ベース傾動装置40を有するという構成を採用することによって、フォーク20が伸展するときに生じる撓み量に基づいて昇降ベース41を傾動させフォーク20自体を傾けることによって、収納棚2に対する荷Mの鉛直方向のズレを低減させる。このため、フォーク20に特別な機構を追加することなくその手先を傾けることができるため、フォーク20の撓み補正の調節が容易となる。また、昇降ベース41の傾動によりフォーク20の撓み量を補正できるため、フォーク20側の撓みに対する許容値が大きくなり、その設計時において強度中心の計算となり装置の軽量化を図ることができる。また、昇降キャリッジ32の軽量化に繋がり、コストダウン及び省エネ化に寄与できる。また、フォーク20の撓みを昇降ベース41の傾きにより補正できるため、収納棚2の収納空間の上下間の距離を最小限に抑えることができる。
したがって、本実施形態では、フォーク20の撓み補正の調節が容易で、フォーク20の重量増加を抑制でき、収納棚2の収納空間の上下間の距離を詰めることができる。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、フォーク20の撓み量は、フォーク20の伸展量だけでなく、積載する荷Mの重量によっても変動するものであるから、自動倉庫1に荷Mの重量を検出するロードセル等の検出装置を設けて荷Mの重量を検出し、上記検出装置の検出結果に基づいて昇降ベース傾動装置40を駆動させる制御装置100を有するという構成であってもよい。なお、ロードセルを設ける位置は、例えば、フォーク20上であっても良いし、荷Mの搬送途中に設けられる構成であっても良い。
このような構成を採用することによって、荷Mの重量に基づいてフォーク20の撓み量を推定することで、荷Mの種類が変わった場合であってもその都度、制御装置100の設定を変更するという作業効率の低下を抑制することができる。
この場合、撓み量データ記憶部54は、例えば、フォーク20の伸展量及び荷Mの重量と撓み量との各種対応テーブルデータを有する構成や、伸展量及び荷Mの重量を変数として撓み量を算出する演算式データを用いる構成等であることが好ましい。
【0046】
また、例えば、フォーク20の撓み量は演算により求めると説明したが、フォーク20の撓み量を検出する位置検出装置により、撓み量を直接求める構成であっても良い。
【0047】
また、例えば、本実施形態では、昇降ベース傾動装置40は、漸次算出される撓み量に基づいて駆動すると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではない。
例えば、フォーク20の伸展に合わせて、予め昇降ベース傾動装置40の傾動動作を設定しておき、フォーク20及び昇降ベース傾動装置40の駆動を同時にスタートさせて同期を取る構成であっても良い。
【0048】
また、例えば、上記実施形態では、長穴42b及び偏心ピン駆動装置44は、昇降ベース41の回転軸41aを水平方向で挟んだ両側にそれぞれ設けられている構成について説明したが、その片側のみに設ける構成であっても良い。この場合、回転軸41aの位置は、バランスをとるためその片側と逆側に移動させることが好ましい。
【0049】
また、例えば、上記実施形態では、長穴42bに鉛直方向で嵌合する偏心ピン45を回転駆動させて、昇降ベース41を傾動させると説明したが、電動ジャッキ等で昇降ベース41を傾動させる構成であっても良い。なお、本実施形態のように長穴42b及び偏心ピン45の構成を採用すれば、偏心ピン45の外形がなだらかな円形であるから、傾動に伴う昇降ベース41の振動を抑制でき、また、回転軸45aの角度変位で昇降ベース41の姿勢を微小に調節できるため傾動に関する精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…自動倉庫、2…収納棚、10…スタッカークレーン、20…フォーク(移載装置)、40…昇降ベース傾動装置、41…昇降ベース(支持台)、42…昇降サイドベース(基台)、42b…長穴(孔部)、44…偏心ピン駆動装置、45…偏心ピン、100…制御装置、M…荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を収納する収納棚と、所定の支持台に支持され、前記荷を支持して前記収納棚に向かう方向に伸展する移載装置と、を備える自動倉庫であって、
前記移載装置が前記収納棚に対して伸展することによって生じる前記移載装置の撓み量に基づいて、前記支持台を傾動させる支持台傾動装置を有することを特徴とする自動倉庫。
【請求項2】
前記支持台傾動装置は、前記撓み量に基づいて前記荷と前記収納棚との鉛直方向における相対位置の変化を相殺するように前記支持台を傾動させることを特徴とする請求項1に記載の自動倉庫。
【請求項3】
前記移載装置が前記収納棚に前記荷を収納する間において、
前記支持台傾動装置は、前記収納棚に臨む側の前記支持台の端部が上昇するように前記支持台を傾動させることを特徴とする請求項1または2に記載の自動倉庫。
【請求項4】
前記支持台傾動装置が前記収納棚に臨む側の前記支持台の端部を上昇させて前記移載装置が前記収納棚に収納された前記荷を支持した状態から、前記移載装置が前記収納棚から前記荷を取出する間において、
前記支持台傾動装置は、前記収納棚に臨む側の前記支持台の端部が下降するように前記支持台を傾動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動倉庫。
【請求項5】
前記荷の重量を検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて前記支持台傾動装置の駆動を制御する制御装置と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動倉庫。
【請求項6】
前記支持台傾動装置は、
前記支持台を水平方向に延びる所定軸周りに回転自在に支持する基台と、
前記支持台及び前記基台のうちいずれか一方側に設けられた孔部と、
前記支持台及び前記基台のうち他方側に設けられ、前記孔部と鉛直方向で嵌合する偏心ピンを備えて該偏心ピンを前記水平方向に延びる軸周りに回転駆動させる偏心ピン駆動装置と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動倉庫。
【請求項7】
前記孔部及び前記偏心ピン駆動装置は、前記所定軸を水平方向で挟んだ両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項6に記載の自動倉庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−236011(P2011−236011A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109282(P2010−109282)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】