説明

自動分析装置及び自動分析方法

【課題】混合溶液の液量に応じて、検査項目毎に集光点調整部の集光点位置を可変制御す
ることで、単一の自動分析装置で、透過光による比濁測定と比色測定の双方の測定を高精
度におこなうことができる自動分析装置及び自動分析方法を提供する。
【解決手段】被検試料と試薬との混合溶液が収容された反応管の光軸上前方若しくは後方
、或いは両方向に集光点調整部22,24を備え、混合溶液の反応の種類、混合液量及び
/若しくは測定波長の分析条件に応じて、反応管への照射光集光点若しくは検出光集光点
を可変調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料と試薬との混合溶液に含まれる所望の検査項目を測定する自動分析
装置及び自動分析方法に係り、特に、ヒトの血液や尿などの被検試料に含まれる検査項目
毎の分析条件に応じて反応管への照射領域若しくは検出領域を可変調整できる自動分析装
置及び自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、ヒトの血液や尿などの被検試料に試薬を添加し、被検試料中に含まれ
る所望の検査項目の濃度を測定する。自動分析装置には、主に生化学検査項目の色度変化
を測定する比色測定法と、免疫血清検査項目の濁度変化を測定する比濁測定法とが採用さ
れている。比色測定法は生化学検査項目の被検試料と試薬との混合反応液中で吸収される
特定波長成分を検出する。一方、比濁測定法は、被検試料中の抗原と試薬中の抗体との反
応で生じる凝集に起因する散乱光による混合液の濁度(turbidity)変化、或いは透過度を
測定する。
【0003】
比濁測定法には、免疫比濁法(Turbidimetric immunoassay)とラテックス凝集免疫比濁
法がある。ラテックス凝集免疫比濁法は、被検試料中の抗原と試薬中のラテックス粒子に
抗体を感作させた抗体感作ラテックスとを反応させて生じる凝集による濁度変化若しくは
透過光変化を測定する。比色測定法及び比濁測定法のいずれの場合も、使用する自動分析
装置に合わせて測定が可能になるように試薬が調整される。
【0004】
近年、生化学検査及び免疫血清検査の高効率化、コスト削減及び反応液の微量化が要求
されている。このため、より少ない自動分析装置で、できるだけ多くの検査項目を高速か
つ正確に検査することが望まれている。このような状況下で、生化学検査の自動分析装置
は多項目を高速に処理できるので、免疫血清検査項目への適用を図って、一台の自動分析
装置で生化学検査項目及び免疫血清検査項目を含む多数の検査項目の測定を行うことが求
められている。
【0005】
しかしながら、生化学検査用自動分析装置で、混合液の免疫血清検査項目の濁度変化を
測定すると、反応管内の混合液中に存在する散乱体の多重散乱により測定精度が低下する
問題がある。即ち、生化学検査項目の比色測定と同様に透過光を利用して、免疫血清検査
項目の濁度変化を測定すると、反応管の混合液内に存在するラテックス凝集散乱体による
散乱光の影響で、混合液の透過光から吸光度を算出する際の有効光路長が異なってしまい
測定精度が低下するのである。
【0006】
この不要な散乱体による散乱光の影響を低下させて、透過光による測定精度を改善し、
反応液を微量化するために、出願人は、反応管の前方及び後方に集光レンズを配置する自
動分析装置を発明した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−149157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1の装置では、反応管前方に配置した集光レンズの集光点が、反応管の中
心位置よりも所定距離だけ反応管の後方の位置になるように設定し、且つ反応管後方に配
置した集光レンズの集光点位置を、前記前方集光レンズの集光点位置と合致するように設
定する。即ち、集光レンズの集光点位置を反応管後方に設定することで、反応管の混合液
内に存在するラテックス 凝集散乱体によって生じた散乱光が検出されることを制御散乱
光の影響を低下させるものである。これにより透過光による比濁測定の測定精度を改善す
ると共に、反応液の微量化を図るのである。
【0009】
しかし、特許文献1の自動分析装置では、ある特定の検査項目の分析条件に対応して必
要な混合液の最少液量を高精度に測定可能なだけの光スポット径が得るように集光レンズ
の集光点位置を決める方式である。したがって、一旦設定された集光レンズの集光点位置
はそのまま固定される。このため、分析条件の異なる他の検査項目の測定も、特定の分析
条件で設定された集光点位置のままで行なわれることになる。そのため、透過光を利用し
て濁度変化の測定する場合、集光レンズの集光点位置を混合液の最少液量に適した照射領
域に設定したままで測定すると、測定に必要な反応液量などの分析条件が異なる他の検査
項目によっては、反応管をカバーする恒温槽中に存在する気泡などの障害物の影響を受け
て測定精度が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、被検試料と試薬との混合溶液
を収容する反応管への照射光学系又は反応管からの検出光学系のいずれか若しくは双方に
、検査項目毎の分析条件である反応の種類及び混合溶液の液量に応じて最適な照射領域で
測定できるように、照射光の集光点(結像位置)を調整できる集光点調整部を具備し、複
数の検査項目毎の測定精度を向上させると共に液量の微小化を達成することのできる自動
分析装置及び自動分析方法を提供することを目的とする。
【0011】
即ち、本発明は、比色変化の測定を行う自動分析装置において、比色測定と同様に透過
光を利用して比濁変化の測定を行い、且つ、反応液の液量を含む検査項目の分析条件に応
じて反応管への照射領域を最適化するように、入射光の集光点を調整することで、気泡な
どの不要散乱体の影響を除去すると共に、検査項目毎に要求される比色測定性能又は比濁
測定性能と反応液量の微量化の両立を図る自動分析装置及び自動分析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の自動分析装置の一態様は、被検試料及びこの被検
試料の検査項目に該当する試薬を反応管に分注し、その混合液が収容された反応管に光を
照射し、前記混合液内の透過光を検出光学部により検出して前記混合液に含まれる前記検
査項目の成分を測定する自動分析装置において、当該分析装置の測定部における光軸上で
、前記反応管に照射するための光を発する光源と前記反応管の間、若しくは前記反応管と
前記検出光学部との間に離間して配置され、前記検査項目の分析条件に基づいて、前記反
応管への照射領域を最適にするように、照射光の前記光軸上の集光点位置を可変調整でき
る集光点調整部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また本発明の自動分析装置は、被検試料及びこの被検試料の検査項目に該当する試薬を
反応管に分注し、その混合液が収容された反応管に光を照射し、前記混合液内の透過光を
検出光学部により検出することで前記反応液に含まれる前記検査項目の成分を測定する自
動分析装置において、前記反応管に照射する光を発する光源と、前記光源と前記検出光学
部との間に配置され、屈折率の異なる複数の溶液からなる液体レンズと、前記液体レンズ
の前記複数の溶液間の界面曲率を変更する変更部と、前記反応管に照射する光の集光点を
調整するために、前記検査項目の分析条件に応じて、前記変更部を制御する制御部とを有
することを特徴とする。
【0014】
また本発明の自動分析方法は、被検試料及びこの被検試料の検査項目に該当する試薬を
反応管に分注し、混合された反応液が収容された反応管に光源からの光を照射し、前記反
応液内の透過光を検出光学部により検出することで前記反応液に含まれる前記検査項目の
成分を測定する自動分析方法において、分析装置の測定部における光軸上で、前記光源と
前記反応管の間、若しくは前記反応管と前記検出光学部との間に離間して配置された集光
点調整部により、前記検査項目の分析条件に基づいて前記反応管への照射光の前記光軸上
の集光点の位置を可変調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、混合溶液の液量に応じて、検査項目毎に集光点調整部の集光点位置を
可変制御することで、単一の自動分析装置で、透過光による比濁測定と比色測定の双方の
測定を高精度におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る自動分析装置の分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る自動分析装置の測光部の構成を示す図。
【図4A】本発明の実施例に係る自動分析装置に配置される集光点調整部の構成を示し、反応管に光軸に略平行な光路を供給するレンズ内の界面状態を示す図。
【図4B】最少液量の測定が可能な光集光点が得られるように、集光点調整部のレンズ内の界面曲率が調整され、反応管の中心に集光点が位置することを示す図。
【図5】本発明の実施例に係る自動分析装置の表示部に表示される濁度測定の分析条件設定画面の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る自動分析装置の集光点調整部のレンズ内の界面調整により反応管の中心に光路の集光点位置を設定する例を示す側面図及び反応管上面図。
【図7A】本発明の実施例に係る自動分析装置の集光点調整部のレンズ内の界面調整により反応管から無限遠に光路の集光点位置を設定し、恒温槽内の反応管に平行光を供給する一例を示す側面図及び反応管上面図。
【図7B】図7Aの光軸方向から見た反応管と光路面の関係図。
【図8】本発明の実施例に係る自動分析装置の集光点調整部のレンズ内の界面調整により反応管後方に光路の集光点位置を設定する例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係る自動分析装置の集光点調整部のレンズ内の界面調整により反応管前方に光路の集光点位置を設定する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置100の構成を示すブロック図である。図
1に示すように、分析部18、分析制御部40、データ処理部50、出力部60、操作部
70及びシステム制御部80を備える。分析部18は、図2で詳述するが、種々の測定項
目の標準試料や被検試料を項目毎に測定する複数の測定部を有する。分析制御部40は、
分析部18における各測定部を駆動する機構部41と、各機構部の駆動を制御する駆動制
御部42を有する。データ処理部50は、分析部18からの標準試料データや被検試料デ
ータから検量線の作成や分析データの生成を行う演算部51と、演算部51で作成された
検量線や生成された分析データなどを保存する記憶部52とを備える。
【0019】
自動分析装置100は、更に、出力部60と操作部70とシステム制御部80とを備え
る。出力部60は、データ処理部50で作成された検量線や生成された分析データを出力
する印刷部61と表示部62を備える。操作部70は、各項目の標準試料や検量線に関す
る分析条件の入力や、各種コマンド信号の入力などを行う。システム制御部80は、分析
制御部40、データ処理部50、及び出力部60の動作を統括制御する。
【0020】
図2は、分析部18の構成を示した斜視図である。この分析部18は、標準試料や被検
試料等のサンプルを収容する試料容器17と、サンプルを収容した試料容器17を回動可
能に保持するディスクサンプラ5と、サンプルに含まれる各検査項目の成分と反応する第
1試薬(前方試薬)を収容する試薬容器6と、第1試薬を収容した試薬容器6を回動可能
に保持する第1ラック1aが収納された第1試薬庫1とを備えている。
【0021】
分析部18は、更に、ディスクサンプラ5に保持された試料容器17からサンプルを吸
引して反応管3に吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、第1試薬庫1の試薬
容器6から第1試薬を吸引して反応管3に吐出する分注を行う第1分注プローブ14と、
第2試薬庫2の試薬容器7から第2試薬を吸引して反応管3に吐出する分注を行う第2試
薬分注プローブ15とを備えている。そして、各分注プローブ14,15及び16は、分
注アームで夫々、回動及び上下動可能に保持される。即ち、サンプル分注プローブ16は
サンプル分注アーム10で回動及び上下動可能に保持され、第1試薬分注プローブ14と
第2試薬分注プローブ15は夫々第1及び第2試薬分注アーム8,9で回動及び上下動可
能に保持される。
【0022】
分析部18は、更に、第1試薬庫1の外周に配置される反応管3を回転移動可能に保持
する反応ディスク4と、撹拌部11と、測光部13と、洗浄部12とを備えている。撹拌
部11は、反応管3内に分注されたサンプル及び第1試薬の混合液や、サンプル、第1試
薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する。測光部13は、各混合液を収容した反応管3を測
定する。洗浄部12は、反応管3内の測定を終えた各混合液を吸引すると共に反応管3内
を洗浄する洗浄ノズル、及び反応管3内を乾燥する乾燥ノズルを上下移動可能に保持する

【0023】
測光部13は、回転移動している反応管3に測光位置Pで光を照射し、標準試料を含む
混合液を透過した光を吸光度に変換した標準試料データを生成して、データ処理部50に
出力する。また、被検試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換した被検試料データ
を生成した後、データ処理部50に出力する。測定後の反応管3、サンプル分注プローブ
16、第1及び第2試薬分注プローブ14,15、撹拌ユニット11などの各分析ユニッ
トは、洗浄ユニット12で洗浄された後、再び測定に使用される。
【0024】
分析制御部40は、分析部18の各測定部を駆動する機構を備えた機構部41と、機構
部41の各機構を駆動させて分析部18の各部を制御する制御部42とを備える。機構部
41は、第1試薬庫1の第1ラック1a、第2試薬庫2の第2ラック2a、及びディスク
サンプラ5を夫々回動する機構、反応ディスク4を回転する機構、サンプル分注アーム1
0、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及び撹拌部11を夫々回動及び上下
移動する機構、洗浄部12を上下移動する機構等を備える。
【0025】
機構部41は、更に、サンプルの吸引及び吐出をサンプル分注プローブ16に行わせる
サンプル分注ポンプを吸引及び吐出駆動する機構、第1及び第2試薬の吸引及び吐出を第
1及び第2試薬分注プローブ14,15に行わせる第1及び第2試薬ポンプを夫々吸引及
び吐出駆動する機構、撹拌ユニット11の撹拌子を撹拌駆動する機構、測光部13の各光
学ユニットを駆動する機構、洗浄ユニット12の洗浄ノズルから混合液の吸引や洗浄液の
吐出及び吸引を行う洗浄ポンプを駆動する機構、洗浄ユニット12の乾燥ノズルから吸引
を行う乾燥ポンプを駆動する機構等を備えている。
【0026】
データ処理部50は、演算部51と記憶部52とを備える。演算部51は、分析部18
の測光部13から出力された各測定項目の標準試料データから検量線を作成して記憶部5
2に保存すると共に出力部60に出力する。記憶部52は、ハードディスクなどで構成さ
れており、演算部51から出力された検量線を測定項目毎に保存する。演算部51は、更
に、記憶部52から読み出した被検試料データの測定項目に対応する検量線を用いて濃度
や活性値などの分析データを生成する。演算部51で生成された分析データは、被検試料
毎に記憶部52のハードディスクに保存されると共に出力部60に出力される。
【0027】
データ処理部50から出力された検量線、分析データaなどは、出力部60の印刷部6
1で印刷出力される。印刷部61は、プリンタを備えており、検量線、分析データなどを
予め設定されたフォーマットに基づいて、プリンタ用紙に印刷出力する。出力部60は表
示部62も備えている。表示部62は、CRT(cathode ray tube)や液晶パネルなどのモ
ニタを有し、データ処理部50から出力された検量線や分析データの表示を行うと共に、
測定項目毎にサンプル量、試薬量、波長などの分析条件を設定する分析条件設定画面、被
検体IDや被検体名などを設定する被検体情報設定画面、及び被検試料毎に測定項目を選
択する測定項目選択画面などの表示を行う。
【0028】
操作部70は、図示しないキーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力
デバイスを備え、各検査項目の分析条件、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情
報、被検試料毎の検査項目等を入力する。
【0029】
システム制御部80は、CPUと記憶回路を備え、操作部70から供給されるコマンド
信号、各検査項目の分析条件、被検体情報、被検試料毎に測定する検査項目などの情報を
記憶する。そして、これらの情報に基づいて、分析部18の各ユニットを一定分析サイク
ルの所定の条件で動作させる制御などシステム全体の制御を行なう。
【0030】
図3は、測光部13の構成を示した図である。測光部13は、光源部20、照射光学部
21、検出光学部23、分光分析部25、光検出部26、及び信号処理部27を備える。
光源部20は、白色光を照射する白色光源部を備えている。白色光源部は、近紫外から近
赤外に亘る波長域の光線からなる白色光を発するハロゲンランプ等の白色光源201と、
白色光源201からの熱線等の不用な光線を遮断するフィルタ202とにより構成される
。白色光源201は白色光を発する光源中心が第1の光軸30上に配置される。
【0031】
照射光学部21は、光源部20からの光を集光して例えば光軸30に対して平行な平行
光にするコリメータレンズ等の第1のレンズ211と、この第1のレンズ211と反応管
3の間に離間して配置され、反応管3に照射する光の結像(集光点)位置を可変できる照
射光学系集光点調整部22とにより構成される。集光点調整部22は、後述するように、
反応管3への照射光の集光点位置を可変調整する。なお、集光点又は結像位置は、画像情
報ポイントとも言うが、以下の説明では、集光点(optical convergence point)に統一し
て使用する。
【0032】
図4A、及び図4Bは、集光点調整部22の2つの異なる形態を示す実施例である。即
ち、図4Aと図4Bは同じ集光点調整部22であって、界面曲率を変更した2つの異なる
ケースを例示している。集光点調整部22は、ケース225内に封入される屈折率の異な
る少なくとも1つの層間界面228を形成する水溶液層221と、オイル層222との2
層の液体レンズと、この液体レンズの少なくとも1つの界面曲率を変更する一対の電極2
23,224とにより構成され変更部とを有する。変更部の一対の電極223,224は
、液体レンズ部を照射光が透過できるように開口を有する環状若しくは矩形状に形成され
る。液体レンズは、屈折率が夫々異なる第1のオイル層と第2のオイル層で構成する2層
液体レンズにすることもできる。
【0033】
集光点調整部22の2層液体レンズを介して対向配置される一対の電極223,224
は、分析制御部40から制御電圧によってレンズ内の界面曲率を変更する。即ち、印加電
圧を調整することで、水溶液層221とオイル層222の層間界面228の曲率を変更で
き、反応管3への入射光の光軸上の集光点の位置を可変調整することができる。
【0034】
集光点調整部22は、照射光学部21の第1のレンズ211側にはケース225の第1
の透過窓226が設けられ、反応管3側にはケース225の第2の透過窓227が設けら
れている。第1のレンズ211を介して第1の光透過窓226に入射した光Lは、液体レ
ンズの水溶液層221とオイル層222、第2の透過窓227を透過して、分析部18を
図3の矢印R1方向に回転移動して測光位置に到達した反応管3に照射される。
【0035】
反応管3に収容された混合液の検査項目毎の分析条件に基づいて、分析制御部40の制
御部42により、反応管3への照射光の集光点位置C.P.が可変制御される。実施例で
は、測定部の光軸30上での反応管3の中心位置Oから集光点位置C.P.までの距離情
報をパラメータとして、集光点調整部22の対向する一対の電極223,224への印加
電圧を制御することで、水溶液層221とオイル層222の層間界面228の曲率が変化
する。尚、液体レンズの界面曲率の変化は、光線の開口数(NA)をパラメータとして調
整してもよい。
【0036】
図4Aは、反応管3の中心位置から集光点位置までの距離を無限大にして、反応管3へ
の照射光Lが、反応管3内では光軸30に略平行な光路PLを形成する場合を示す。図4
Bは、反応管3の中心位置Oから集光点位置C.P.までの距離を「0」にして、反応管
3への照射光が、反応管3内の中心位置Oに集光するように界面228の曲率を変化させ
た場合を示す。照射光の集光点位置C.P.を反応管3内の中心位置Oに設定することで
、最少の混合液を測定することができる。反応管3内の混合液の液量が最少液量よりも多
い場合、反応管3の中心位置Oから照射光の集光点位置C.P.までの距離を0以外の有
限値にすることで、反応管3の中心位置以外の光軸上に集光点位置を変更できる。
【0037】
集光点調整部22を、第1のレンズ211からの平行光を光軸30上に集光点する複数
のレンズ、及び一部のレンズを光軸30方向に移動する移動機構により構成し、この移動
機構を制御して、反応管3に照射する光スポットの集光点位置C.P.を可変にしてする
ように構成してもよい。
【0038】
検出光学部23は、照射光学部21からの照射光を遮断するシャッタ231と、反応管
3に収容された混合液の透過光を集光するための集光点位置を可変調整する集光点調整部
24と、集光点調整部24で集光した光を分光部25に照射する第2のレンズ232によ
り構成される。検出光学部23において、集光点調整部24がシャッタ231と第2のレ
ンズ232の間に離間して配置されている。
【0039】
検出光学部23のシャッタ231は、分析制御部40における機構部41の開閉駆動に
より作動し、光検出部26からの出力信号を求めるために使用される。透過率0%の出力
信号にするときには、シャッタ231を閉じて照射光学部21からの照射光を遮断する。
サンプル測定をするときには、シャッタ231を開放して、反応管3に収容された混合液
内の透過光を通過させる。
【0040】
検出光学部23の集光点調整部24の構成は、図4A,図4Bに示す照射光学部21の
集光点調整部22の同一構成であるが、透過窓が前後逆向きに配置される。即ち、照射光
学部21の集光点調整部22のオイル層222側の第2の透過窓227に対応する透過窓
が、検出光学部23の集光点調整部24では反応管3側に向くように配置される。分析制
御部40の制御部42は、照射光学部21の集光点調整部22に連動させて検出光学部2
3の集光点調整部24の集光点位置を決定する。
【0041】
照射光学部21の集光点調整部22の集光点位置が反応管3の中心位置から光軸上の有
限の距離である場合、検出光学部23の集光点調整部24の集光点位置は、照射光学部2
1の集光点調整部22の集光点位置と同じ位置になるように調整される。照射光学部21
の集光点調整部22からの照射光が平行光の場合、検出光学部23の集光点調整部24は
照射光学部21の集光点調整部22からの平行光に一致させる光路に調整する。この場合
、検出光学部23の第2のレンズ232が、検出光学部23の集光点調整部24からの平
行光を分光部25に集束させる。
【0042】
図3の説明に戻り、分光分析部25は、検出光学部23の第2のレンズ232からの光
を所定の範囲に絞り込むスリット251と、このスリット251を通過した光を回折する
回折格子252とにより構成される。スリット251は、第2のレンズ232からの光が
集束位置若しくは集束位置近傍に配置されて、第2のレンズ232からの光が回折格子2
52の有効範囲内に入るように絞り込む。回折格子252は、スリット251から入射し
た光を波長毎に所定の方向に分離する。
【0043】
光検出部26は、迷光を除去するフィルタアレイ261と、このフィルタアレイ261
を透過した複数波長の光を予め設定された波長毎に検出する複数の受光素子を有するフォ
トダイオードアレイ262とにより構成される。フォトダイオードアレイ262は、分光
分析部25の回折格子252により波長毎に分離された複数波長の光を検出して電気信号
に変換し、その変換した電気信号を検出信号として信号処理部27に出力する。
【0044】
信号処理部27は、光検出部26のフォトダイオードアレイ262から出力された各検
出信号を増幅及びアナログデジタル変換後、吸光度で表される標準試料データや被検試料
データを生成してデータ処理部50に出力する。
【0045】
図5は、出力部60の表示部62に表示される分析条件設定画面の一例である。
分析条件設定画面63は、「項目名」、「サンプル量」、「試薬量」、「波長」、及び
「測光ポイント」の各欄と、各欄に情報を設定するためのダイアログボックス631乃至
638とにより構成される。操作部70から検査項目毎に分析条件設定画面63の各欄に
対応する各ダイアログボックスへの入力操作が行われる。本実施例では、検査項目が入力
されると、各検査項目に対応して、反応の種類が比濁測定か比色測定かのいずれかに自動
的に設定される。入力された検査項目毎の分析条件設定情報が、システム制御部80の記
憶回路に保存される。
【0046】
図5には、検査項目として血清分析項目であるC反応性蛋白(CRP)が入力設定され
た例を示す。即ち、「項目名」欄には、予め設定された複数の検査項目の中から、C反応
性蛋白を選択入力することで、ダイアログボックス631内に「CRP」が表示される。
検査項目「CRP」の入力に対応して、「反応の種類」は比濁測定に自動的に設定される
ので図示していない。「サンプル量」欄には、C反応性蛋白の測定に使用する被検試料量
として、例えば2.4μLが入力されると、ダイアログボックス632内に「2.4」が
表示される。
【0047】
「試薬量」欄には、「第1試薬」欄と「第2試薬」欄が表示され、「項目名」欄に設定
した検査項目を測定するときに用いる試薬が1試薬系である場合には、「第1試薬」欄に
のみ反応管3に分注する試薬の量が設定される。検査項目の測定に用いる試薬が2試薬系
である場合は、「第1試薬」欄と「第2試薬」欄とに反応管3に夫々分注する第1試薬と
第2試薬の量が設定される。図5の例では、2試薬系のC反応性蛋白の測定のために、第
1試薬と第2試薬の量が夫々「120μL」が入力設定され、ダイアログボックス633
,634内に夫々「120」が表示される。
【0048】
「波長」欄には、「波長1」欄及び「波長2」欄が表示され、「項目名」欄に設定した
検査項目の反応の種類(色調又は濁りの変化)に応じた波長を設定される。予め設定され
た波長の中から1つ又は異なる2つの波長を選択して設定する。「波長1」欄に「項目名
」欄に設定した検査項目「CRP」の反応種類に応じた、例えば「572nm」が選択操
作で入力されると、ダイアログボックス635内に「572」が表示される。同様に、「
波長2」欄に検査項目「CRP」の反応種類に応じた、例えば「804nm」を選択操作
で入力されることにより、ダイアログボックス636内に「804」が表示される。
【0049】
「測定ポイント」欄には、「項目名」欄に設定した検査項目「CRP」の混合液を測定
するタイミングである測定ポイントが設定される。例えば、第33測定ポイント〜第35
測定ポイントまでを選択操作により入力することで、ダイアログボックス637内に「3
3」、ダイアログボックス638内に「35」が表示される。即ち、被検試料を反応管3
に分注後、その反応管3が回転移動して1回目に分析部18の測定位置を通過するときを
第1測定ポイントとする。従って、被検試料を含む混合液を包含した反応管3が測定ポイ
ントを33回目乃至35回目に通過した際に、測光部13により生成される3個の被検試
料データに基づいて「CRP」の分析データが生成される。
【0050】
図6乃至図9は、検査項目毎に設定された分析条件に基づいて、測光部13における照
射光学部21の集光点調整部22及び検出光学部23の集光点調整部24の集光点位置が
可変制御される態様例である。以下の説明では、照射光学部21の集光点調整部22の集
光点位置についてのみ説明するが、いずれの場合も、検出光学部23の集光点調整部24
の集光点位置は、照射光学部21の集光点調整部22と同じ位置に調整されるものとする

【0051】
図6は、集光点調整部22の集光点位置C.P.が反応管3の中心位置Oにある場合を
示す。図7Aは、集光点調整部22の集光点位置C.P.が反応管3から無限遠にある場
合を示す。図7Bは、図7Aの光軸30方向から見た平行光PLの反応管3への光照射面
を示す。図8は、集光点調整部22の集光点位置C.P.が反応管3の中心位置Oよりも
外側後方の光軸上有限距離に設定した場合を示す。図9は、集光点調整部22の集光点位
置C.P.が、反応管3の中心位置Oよりも外側前方の光軸上有限距離に設定した場合を
示す。
【0052】
集光点調整部22は、図5に示す分析条件設定画面63で設定された分析条件であるサ
ンプル量、試薬量、波長の情報や、検査項目毎に予め設定された分析条件である反応の種
類、試薬液性の情報の中から少なくとも1つの情報に基づいて、集光点位置C.P.を可
変調整する。以下、図5の免疫血清検査項目「CPR」の比濁度測定の分析条件での集光
点調整部22の動作例を説明する。
【0053】
分析条件設定画面63で設定された検査項目毎に予め設定された反応の種類、試薬液等
の分析条件情報がシステム制御部80の記憶回路に保存されている。即ち、分析条件設定
画面63で設定された検査項目が「CRP」の場合、システム制御部80の記憶回路には
「CRP」の「反応の種類」である比濁測定の設定情報が保存されている。分析制御部4
0の制御部42は、システム制御部80から供給される「CRP」の分析条件に基づいて
、照射光学部21の集光点調整部22の界面曲率を制御する。集光点調整部22は、制御
部42の制御により分析条件設定画面63の「サンプル量」欄に設定されたサンプル量、
並びに「試薬量」欄に設定された第1試薬量又は2試薬系の場合には第1試薬と第2試薬
の合計量である反応液量に応じて反応管3への照射光を集光する。
【0054】
図6に示すように、照射光学部21の集光点調整部22が、照射光を反応管3の中心位
置Oに集光するように調整する場合、照射光学部21の第1のレンズ211からの平行光
Lは、集光点調整部22内の層間界面228の中心と光軸30との交点から距離Lmin
離れた反応管3の中心位置Oの光軸30上に集光した後、反応管3内を透過する。反応管
3内における光路領域は、最も高い部分で反応管3内の底面から最低光路高Hminにな
る。図6の下面図に示すように、反応管3内の底面は、例えば正方形又は長方形の四角形
状をしているものとし、反応管3の底面積を面積Aと仮定する。
【0055】
反応管3に収容された混合液の上面は表面張力で反応管面が盛り上がり、測定可能な中
央水平部分は混合液量から算出した液高よりも低い。このため、混合液上部における表面
張力等により光路内へ空気などが含まれるのを避けるための余裕高Hmgを必要とする。
即ち、最低光路高Hminに余裕高Hmgを加えた高さ(Hmin+Hmg)が測定に必
要な最低液高となる。従って、測光部13で測定可能な混合液の最少液量Vminは最低
液高(Hmin+Hmg)と面積Aの積((Hmin+Hmg)×A)となる。即ち、分
析条件設定画面63で設定された反応液量が最少液量Vminである場合、分析制御部4
0により集光点調整部22の集光点位置C.P.が反応管3の中心位置Oに位置するよう
に制御される。
【0056】
分析条件設定画面63で設定された検査項目に対応した反応の種類が比濁測定で、分析
条件設定画面63で設定されたサンプル量及び試薬量の総和である反応液量が最少液量V
minであれば、反応管3の中心位置Oに集光させることで、透過光による比濁測定が可
能となる。
【0057】
図7A、及び図7Bは、分析条件設定画面63で設定された反応液量に応じて集光点調
整部22が反応管3の中心位置Oから無限遠に集光点位置を設定する場合を示す。
【0058】
集光点調整部22が反応管3から無限遠に集光点を調整すると、照射光学部21内の第
1のレンズ211からの照射光Lは、集光点調整部22内を透過後、平行光路PLを形成
したまま直進して反応管3内を通過する。このとき、反応管3内における光路領域は、反
応管3内の底面からの高さが最も高い位置Hmaxに形成される。この場合も、表面張力
による影響を避けるための余裕高Hmgが必要となるので、最高光路高Hmaxに余裕高
Hmgを加えた高さ(Hmax+Hmg)の液高が必要となる。この最高液高(Hmax
+Hmg)と反応管3も面積Aの積((Hmax+Hmg)×A)で表される液量Vma
x以上であれば、平行光での測定が可能となる。即ち、分析条件設定画面63で設定され
た反応液量が最大液量Vmax以上である場合、集光点調整部22の集光点位置を反応管
3から無限遠に制御して、反応管3には平行光PLが照射される。
【0059】
即ち、本発明の自動分析装置では、分析条件に含まれる反応液量に応じて、照射光学部
21の集光点調整部22及び検出光学部23の集光点調整部24の集光点位置C.P.を
可変制御することで照射投影面積を最大化できる。分析条件設定画面63で設定された反
応液量が最大液量Vmax以上である場合は、反応管3に平行光を照射し、混合液内を透
過した平行光を集光して測定することが可能になり、透過光を利用して濁度変化を測定す
る場合の誤差要因となる散乱光の影響を抑制でき、更には、恒温槽中を透過する光の単位
面積当たりの光エネルギー量を低減できる為、恒温槽19a中に存在する気泡の影響を軽
減できるので測定精度を向上することができる。
【0060】
図7Bでは、反応管3は恒温槽19aに反応液された恒温水19bの循環により、一定
の温度に保たれている。図7Bに示すように、反応管3の光路LSを光軸30方向から見
た場合、集光点調整部22からの光は、集光点調整部22側の恒温槽19aの外周壁に設
けられた第1の透過窓19c及び恒温水19bを透過し、光軸30を中心とした直径Dの
円形光路面を反応管3面に形成する。この光路面で混合液S内を透過した光は、同一形状
のまま反応管3を透過して、恒温槽19aの検出光学部23側外周壁に設けられた第2の
透過窓19dを透過する。第2の透過窓19dを透過した光は検出光学部23の集光点調
整部24に集光される。
【0061】
サンプル測定中に、恒温槽19aの第1の透過窓19cと反応管3の一方の光路面の間
、若しくは反応管3の他方の光路面と恒温槽19aの第2の透過窓19dの間の光路内に
、例えば大気中の浮遊物や恒温水19bに含まれる気泡等の障害物が突発的に流入した場
合、光路内の透過光が散乱して測定精度に影響がでる恐れがある。しかし、集光点調整部
22、24の集光点位置が反応管3から無限遠に制御され平行光PLのときは、反応管3
前面の恒温槽の光透過面積及び反応管3後面の恒温槽の光透過面積が最大となり、光透過
面積に対する障害物の占める割合を相対的に低く抑えることができるので、障害物の影響
を除去できる。
【0062】
図8は、分析条件設定画面63上で反応液量が、前記測定に必要な最少液量Vminよ
りも多く、且つ前記最大液量Vmaxよりも少ない中間液量Vbに設定された場合に、そ
の設定された中間液量に応じて、集光点が反応管3の後方で、図6の距離Lminより遠
くの位置なるように集光調整部22を制御する例である。分析制御部40の制御信号に基
づいて、集光点調整部22の2層レンズの層間界面228の曲率が変更制御される。これ
により、集光点調整部22から反応管3内を通過した透過光CLが反応管3の後方で、液
体レンズの界面中心から光軸上の有限距離Lbに集光点位置C.P.が位置する変更制御
される。
【0063】
分析制御部40の制御部42は、中間液量Vbを反応管3の面積Aで除算(Vb/A)
することにより、反応管3内に分注された混合液の可変液高Hbを求める。更に、可変液
高Hbから余裕高Hmgを差し引いて可変光路高(Hb−Hmg)を求める。可変光路高
(Hb−Hmg)が、反応管3内における光路領域の集光点位置の上限を決定する。即ち
、中間液量Vbの混合液の測定可能範囲で反応管3の中心から最も後方に離れた有限の距
離に決定する。集光点調整部22は、制御部42の制御により、集光点調整部22内の界
面と光軸30の交点から距離Lb(Lb>Lmin)離れた光軸30上に集光点する。
【0064】
分析条件設定画面63で設定された反応液量が最少液量Vminよりも多く、最大液量
Vmaxよりも少ない中間液量Vfである場合、図9に示すように、反応管3よりも前方
で集光点調整部22側に集光するように制御してもよい。このとき、集光点調整部22内
の界面と光軸30の交点から光軸30上の距離Lf(0<Lf<Lmin)離れた位置に
集光する。反応管3内における光路領域の上限は反応管3内の底面から最低光路高Hmi
nよりも高く、最高光路高Hmaxよりも低い可変光路高Hfになる。可変光路高Hfに
余裕高Hmgを加えた高さ(Hf+Hmg)と面積Aの積((Hf+Hmg)×A)が測
定可能液量Vfになる。
【0065】
このように、分析条件設定画面63で設定された検査項目の反応の種類が比濁測定であ
って、反応液量が測定可能な最少液量Vminよりも多い場合、その反応液量に応じて、
透過光の照射開口数(NAi)又は検出開口数(NAd)を最大化又は最小化するように
、集光点調整部22、24の集光点位置を反応管3の中心位置以外に可変制御することが
できる。
【0066】
分析条件設定画面63で設定された反応液量が中間液量Vbである場合、反応管3内の
混合液の測定可能な範囲内で反応管3の中心位置から光軸上できるだけ遠方に離れた有限
距離に集光点させることにより、できるだけ平行光に近い光を反応管3に照射することで
、混合液内の透過光を利用して比濁測定の誤差要因となる散乱光の影響を低減して精度よ
く測定することができる。
【0067】
分析条件設定画面63で設定された検査項目が、測光誤差要因の占める割合が大きく、
高い信号対雑音(S/N)比が要求される場合、そのS/N比情報を予め分析条件として
設定し、その分析条件で設定された反応液量に応じて集光点調整部22、24の集光点位
置を可変することで、その検査項目を精度よく測定できる。
【0068】
本発明の実施例によれば、検査項目毎に予め設定された分析条件、例えば、反応の種類
(比色測定又は比濁測定)、試薬液性(粘性及び泡立ち易さ等)毎に、その検査項目の混
合液の液量に応じて、混合液を反応液した反応管3に対する集光点調整部22、24の集
光点位置を可変できる。設定された反応液量が最少液量Vmin以上である場合は、反応
管3の中心に集光点させることにより、サンプル及び試薬の混合液量を最少にして測定す
ることができる。
【0069】
反応液量が最大液量Vmax以上である場合、反応管3から無限遠に集光点をおくこと
で、混合液内を透過した平行光を検出することで、透過光を利用して比濁測定の場合の誤
差要因となる散乱光の影響を抑制することができる。
【0070】
反応液量が中間液量Vbである場合は、混合液の測定が可能な範囲内で反応管3の中心
からできる限り遠く離れた有限の距離に集光点させて、混合液の測定が可能な範囲内で最
も平行光に近い光を反応管3に照射し、混合液内を透過した最も平行光に近い光を集光す
ることにより、透過光を利用して濁度変化を測定する場合の誤差要因となる散乱光の影響
を低減することができる。
【0071】
本発明によれば、混合液の微量測定が可能になると共に、反応の種類が比濁測定の検査
項目で、測光誤差要因の占める割合が大きく、高い信号対雑音比が要求される検査項目で
あっても、透過光を利用する測定精度が向上し、1つの自動分析装置で多数の検査項目を
精度よく測定することができる。
【0072】
上記実施例では、反応管3の前後に照射光学部21の集光点調整部22と検出光学部2
3の集光点調整部24の双方を配置したが、一方の集光点調整部22を省略することもで
きる。例えば、測光部13の照射光学部21から集光点調整部22を除いた場合、検査項
目毎に予め設定された分析条件又は分析条件設定画面63で設定された分析条件に基づい
て、反応管3内の混合液を透過した光を検出光学系の集光点調整部24で集光点調整して
集光する。
【0073】
一方、検出光学部23の集光点位置設定24を除いた場合、検査項目毎に予め設定され
た分析条件又は分析条件設定画面63で設定された分析条件に基づいて、照射光学系の集
光点調整部22により反応管3への照射光の集光点位置を可変調整する。いずれの場合も
、反応管3内の混合液の測定精度を向上できる。
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、反応管に反応液した混合液量に応じて、入射光
及び透過光の集光点位置を可変調整できるので、検査項目毎の分析条件に対応して、混合
液の測定を高精度で行なうことができ、且つ、反応液量の微量化も達成できる。
【0075】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範
囲において適宜設計変更可能である。また、各実施形態を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0076】
1‥第1試薬庫、2‥第2試薬庫、3‥反応管、5‥ディスクサンプラ、7‥試薬容器、
8,9‥第1及び第2試薬分注アーム、11‥撹拌部、12‥洗浄部、13‥測光部、1
4‥第1試薬分注プローブ、15‥第2試薬分注プローブ、16‥サンプル分注プローブ
、17‥試料容器、18‥分析部18、20‥光源部、21‥照射光学部、22‥集光点
調整部、23‥検出光学部、24‥集光点調整部、25‥分光分析部、26‥光検出部、
27‥信号処理部、40‥分析制御部、41‥機構部、42‥駆動制御部、50‥データ
処理部、51‥演算部、52‥記憶部、60‥出力部、61‥印刷部、62‥表示部、7
0‥操作部、80‥システム制御部、201‥光源、201‥白色光源、202‥フィル
タ、211‥第1のレンズ、211‥水溶液層、221‥水溶液層、222‥オイル層、
223,224‥電極、225‥ケース、226‥第1の透過窓、227‥第2の透過窓
、228‥層間界面、232‥第2のレンズ、251‥スリット、252‥回折格子、2
61‥フィルタアレイ、262‥フォトダイオードアレイ262

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料及びこの被検試料の検査項目に該当する試薬を反応管に分注し、その混合液が
収容された反応管に光を照射し、前記混合液内の透過光を検出光学部により検出して前記
混合液に含まれる前記検査項目の成分を測定する自動分析装置において、
当該分析装置の測定部における光軸上で、前記反応管に照射するための光を発する光源
と前記反応管の間、若しくは前記反応管と前記検出光学部との間に離間して配置され、前
記検査項目の分析条件に基づいて、前記反応管への照射光量を最大にするように、照射光
の前記光軸上の集光点位置を可変調整できる集光点調整部を備えたことを特徴とする自動
分析装置。
【請求項2】
前記検査項目の分析条件を設定する分析条件設定部を更に有し、
前記分析条件には、前記反応液の液量、前記検出光学部による検出光の波長、前記試薬
の粘性若しくは泡立ち易さを含む試薬液性、及び前記混合液中における反応の種類が比色
測定又は比濁測定かの各情報が含まれ、
前記集光点調整部は、少なくとも前記分析条件の1つの情報に基づいて、前記反応管へ
の照射光の集光点を可変することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記集光点調整部は、前記反応液の分析条件である反応の種類情報に基づいて、前記反
応管への照射光の集光点を可変することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記反応液の液量が当該自動分析装置によって規定される測定可能な最少液量と測定猶
予量との加算量である場合は、前記集光点調整部は、前記反応管の中心に照射光の集光点
が位置するように調整することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記反応液の液量が測定に必要な最大液量を超える場合、前記集光点調整部は、前記反
応管透過光が前記光軸に平行光となるように集光点を無限遠に設定することを特徴とする
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記分析条件である反応の種類情報が比濁測定若しくは比色測定であって、且つ前記反
応液の液量が当該自動分析装置によって測定可能に規定された最少液量と最大液量との中
間液量である場合、前記集光点調整部は、前記反応液の液量に応じて、前記光軸上で、前
記反応管の前方若しくは後方の位置に、前記照射光の集光点を調整することを特徴とする
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記光源と前記反応管の間に離間して配置され、前記反応管に照射する光の集光点位置
を可変調整できる第1の集光点調整部と、
前記反応管と前記検出光学部との間に離間して配置され、前記混合液内を透過した光を
集光するための集光点を可変調整できる第2の集光点調整部とを
更に備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記第2の集光点調整部は、前記第1の集光点調整部の集光点位置に集光点を合わせて
、前記混合液内を透過した光を集光するように配置されることを特徴とする請求項7に記
載の自動分析装置。
【請求項9】
被検試料及びこの被検試料の検査項目に該当する試薬を反応管に分注し、その混合液が
収容された反応管に光を照射し、前記混合液内の透過光を検出光学部により検出すること
で前記反応液に含まれる前記検査項目の成分を測定する自動分析装置において、
前記反応管に照射する光を発する光源と、
前記光源と前記検出光学部との間に配置され、屈折率の異なる複数の溶液からなる液体
レンズと、
前記液体レンズの前記複数の溶液間の界面曲率を変更する変更部と、
前記反応管に照射する光の集光点を調整するために、前記検査項目の分析条件に応じて
、前記変更部を制御する制御部と
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
前記液体レンズは、少なくとも1つの界面を形成するように水溶液層と前記水溶液層と
は屈折率の異なるオイル層とで構成され、
前記変更部は、前記液体レンズを挟んで対向する少なくとも一対の電極で構成され、
前記制御部は、前記一対の電極間に印加する電圧により前記界面曲率を変更することを
特徴とする請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記反応管に照射する光が前記光軸に略平行光となるように前記界面曲
率を制御することを特徴とする請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記液体レンズは、少なくとも1つの界面を形成するように第1のオイル層と前記第1
のオイル層とは屈折率の異なる第2のオイル層とで構成され、
前記変更部は、前記液体レンズを挟んで対向する少なくとも一対の電極で構成され、
前記制御部は、前記一対の電極間に印加する電圧により前記界面曲率を変更することを
特徴とする請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項13】
被検試料及びこの被検試料の検査項目に該当する試薬を反応管に分注し、混合された反
応液が収容された反応管に光源からの光を照射し、前記反応液内の透過光を検出光学部に
より検出することで前記反応液に含まれる前記検査項目の成分を測定する自動分析方法に
おいて、
分析装置の測定部における光軸上で、前記光源と前記反応管の間、若しくは前記反応管
と前記検出光学部との間に離間して配置された集光点調整部により、前記検査項目の分析
条件に基づいて前記反応管への照射光の前記光軸上の集光点の位置を可変調整することを
特徴とする自動分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−186461(P2009−186461A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3836(P2009−3836)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】