説明

自動分析装置

【課題】攪拌部の超音波振動を利用して反応槽の液体を脱気する自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応容器9の保温を目的とした液体で満たされた反応槽10と、反応容器9に注入された試料と試薬を混合する超音波振動発生素子7とその制御部1を備える自動分析装置において、超音波振動発生素子7を使用し、反応槽内の液体を超音波により脱気する。制御部1は、試料と試薬を混合するための超音波振動発生素子7の制御とともに、反応槽10内の液体の脱気を目的とした超音波振動発生素子7の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器の保温を目的とした液体で満たされた反応槽と、反応容器内の検体と試薬等を超音波により攪拌する攪拌部と、攪拌部等を統括制御する制御部等を備えた自動分析装置において、超音波発生源を音源とし、超音波による液体の脱気効果を利用して反応槽内の液体を脱気する機能を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、反応槽内の液体の気泡を除去する手段として、気泡除去槽を流路内に設け、水と気泡の比重差により気泡除去する方式が特許文献1に記載されている。この方式により反応槽内の測光軸上の気泡が除去されるため、安定した分析結果が得られる。
また、試薬を検体に混合する機構にピエゾ素子を用いて超音波攪拌を適用している自動分析装置が、特許文献2に記載されている。この機構により攪拌棒に付着した試薬または検体が、次の分析結果に影響を与えるクロスコンタミネーションを防止し、装置全体の小型化を図ることが可能である。
【特許文献1】特開2005−181087号公報
【特許文献2】特開平08−146007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、反応槽内の液体を脱気して反応槽内に気泡を発生し難くすることで、気泡による測光データへの影響を防ぎ、安定した測定結果が得られる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、反応容器の保温を目的とした液体で満たされた反応槽と、反応容器に注入された試料と試薬を混合する超音波振動発生素子とその制御部を備える自動分析装置において、攪拌部の超音波振動を利用して反応槽の液体を脱気することを特徴とする自動分析装置である。
【0005】
すなわち、本発明は、反応容器の保温を目的とした液体で満たされた反応槽と、反応容器に注入された試料と試薬を混合する超音波振動発生素子とその制御部を備える自動分析装置において、前記超音波振動発生素子を使用し、反応槽内の液体を超音波により脱気する自動分析装置である。
【0006】
また、本発明は、前記制御部は、試料と試薬を混合するための前記超音波振動発生素子の制御とともに、前記反応槽内の液体の脱気を目的とした前記超音波振動発生素子の制御を行う自動分析装置である。
【0007】
そして、本発明は、前記反応容器に超音波振動発生素子を複数備え、前記制御部は、個々の前記超音波振動発生素子に対して制御を行う自動分析装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応槽内液中の溶存気体を除去することにより脱気を行うため、反応槽を使用する自動分析装置において、気泡による測光データへの影響を防ぎ、安定した測定結果が得られ、信頼性の高い自動分析装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
以下本発明の自動分析装置の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1を説明する。図1から図3により、本発明の自動分析装置の第一の実施例を説明する。図1は、本実施例の自動分析装置の一部を断面した概略構成図であり、図2は図1の要部の平面図である。図1、図2において、制御部1はCPU・メモリ・I/O等を有する情報処理装置等で構成され、メモリに格納された自動分析及び診断のプログラムおよびデータを利用して、自動分析装置5の動作及び分析動作に必要な情報をCPUで処理又は統括制御する。また、制御部1は図3に示すマイコン21、ラッチ22を含む。
【0011】
攪拌部は、検体容器12から検体分注機構14を介して反応セル9に送られた検体と、試薬容器13から試薬分注機構15を介して反応セル9に送られた試薬を、超音波発生器7から発生した超音波8による振動で混合及び攪拌を行う。反応セル9は、反応槽10にためられた水を代表とする保温媒体16に浸っており、一定の温度に保たれている。
【0012】
超音波素子駆動回路6は、図3に示す発振器17、アンプ18、分配器19等からなり、超音波発生器7が超音波8を発生する周波数を有する電圧を発生する回路で、制御部1によって制御され、超音波発生器7を振動させ超音波8を発生させる。
【0013】
制御部1には、商用電源3に接続された電源部2から電力が供給される。また、処理結果は表示部4に画面表示される。
【0014】
次に、超音波攪拌の構成概要と基本動作を図3により説明する。
ピエゾ素子20に超音波を発生させ、超音波の振動によって検体と試薬を混合し攪拌する超音波攪拌を適用した場合、検体と試薬の混合及び攪拌に十分な超音波の音圧を発生させるには、ピエゾ素子20を構成する要素である電極に、ピエゾ素子の変位が最大になる周波数を有し、さらに十分な変位量を発生させる電圧を持った電力を供給するようにする。よって、発振器17は基本周波数をFM変調(スイープ)した正弦波を発生する。アンプ18は発振器17の信号を増幅し、ピエゾ素子20を駆動する。ピエゾ素子20は照射位置により側方照射素子24、気泡除去素子、逆方向照射素子に分けられ、さらに、側方照射素子24、気泡除去素子はセグメントとよばれる単位に分けられる。分配器19はリレーで構成され、セル内部の反応液量に応じて側方照射素子24の照射位置を駆動セグメントにより切替える。
【0015】
攪拌部は装置動作とともにマイコン21により行われる自己診断の結果を確認し、正常であれば電源をONにし、初期値として攪拌パラメータの半固定となるパラメータを設定する。
【0016】
超音波発生器7は初めに照射(1)により液面を振動させて液中に気泡を取り込み、反射板23で反射した超音波で気泡をセル底に押し入れる。気泡の動きで液中に旋回流が発生し、攪拌を行う。攪拌中にセル壁に付いた気泡は、照射(2)の正方向からの照射と照射(3)の逆方向からの照射により剥がされる。
【0017】
次に、反応槽内の液体の脱気方法を以下に説明する。
反応槽内の液体中にキャビテーションが発生し易いよう超音波素子駆動回路6の発振器17の周波数を1MHz以下に設定する。この周波数にて超音波発生器7を振動させ超音波9を持続的に発生させる。ピエゾ素子20は反応液の攪拌に使用しないセグメントを駆動する。この際、測光データに影響がないよう測光中の時間を除いて常に行う。また、ピエゾ素子20の強度(振動速度)が強くなるほど素子が破壊され易くなるため、超音波素子駆動回路6により適宜制御する。これにより液体中の溶存気体を除去し、脱泡・脱気効果を得る。
【0018】
本実施例によると、自動分析装置における攪拌機構に使用しているピエゾ素子から発生させる超音波を用いて、反応液の攪拌だけでなく、反応槽内の液体を脱気することが可能となる。これにより、反応槽内の気泡による測光データへの影響を防ぎ、安定した測定結果が得られ、信頼性の高い自動分析装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の自動分析装置の構成概要図。
【図2】実施例の自動分析装置の構成概要平面図。
【図3】実施例における超音波攪拌構成概要図。
【符号の説明】
【0020】
1・・・制御部
2・・・電源部
3・・・商用電源
4・・・表示部
5・・・自動分析装置
6・・・超音波素子駆動回路
7・・・超音波発生器
8・・・超音波
9・・・反応セル
10・・・反応槽
11・・・検体
12・・・検体容器
13・・・試薬容器
14・・・検体分注機構
15・・・試薬分注機構
16・・・保温媒体
17・・・発振器
18・・・アンプ
19・・・分配器
20・・・ピエゾ素子
21・・・マイコン
22・・・ラッチ
23・・・反射板
24・・・側方素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器の保温を目的とした液体で満たされた反応槽と、反応容器に注入された試料と試薬を混合する超音波振動発生素子とその制御部を備える自動分析装置において、
前記超音波振動発生素子を使用し、反応槽内の液体を超音波により脱気することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載された自動分析装置において、
前記制御部は、試料と試薬を混合するための前記超音波振動発生素子の制御とともに、前記反応槽内の液体の脱気を目的とした前記超音波振動発生素子の制御を行うことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された自動分析装置において、
前記反応容器に超音波振動発生素子を複数備え、
前記制御部は、個々の前記超音波振動発生素子に対して制御を行うことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−168652(P2009−168652A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7685(P2008−7685)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】