説明

自動分析装置

【課題】パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合に、再検査の処理の待ち時間を少なくできる自動分析装置を提供することにある。
【解決手段】ラック供給部1は、検体ラック2を供給する。サンプリング部8,16は、ラック供給部1から供給された検体ラックに収容した検体容器からサンプルを採取する。分析部6,14は、サンプリング部8,16により採取したサンプルを分析する。設定部190は、分析結果の異常を検出するための判定基準であるパニック値(クリティカル値)を分析項目ごとに設定し、また、異常が検出されたときの分析装置の動作を設定する。制御部100は、分析部6,14による分析結果が、設定部190により設定された判定基準により異常であると判定されると、設定部190により設定された分析装置の動作に従って、ラック供給部1からの検体ラックの供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体サンプルの成分分析を行う自動分析装置に係り、特に、検体ラックに収容した検体容器から分析部にサンプルを採取して分析し、分析結果の異常を検出した時に検体容器を自動搬送して再検査する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査のための自動分析装置では、血液,血漿,血清,尿,その他の体液等の検体(サンプル)に対して、ビリルビン,蛋白質,AST,ALT等の分析項目を自動的に分析検査する。自動分析装置は、サンプルと試薬を混合、反応させた反応液を分析する分析部を有するが、その分析部にサンプルを供給する方法として回転によって各検体容器をターンテーブルに載置し完結回転によって各検体容器をサンプリング部に位置づける方法や、検体容器を収容した検体ラックを搬送ラインを経由して分析部のサンプリング部に位置づける方法がある。これらの自動分析装置には、分析の結果を判定して、自動分析装置内から検体を取り出すことなく再検査を行う機能を有しているものがある。
【0003】
再検査は、初回の分析結果が分析装置の測定濃度レンジを超えた場合や、測定濃度レンジ内であっても臨床的に確認するために再度分析を行い、初回の分析結果を検証するために実施するものである。
【0004】
臨床的に確認するために再度分析を行うのは、サンプルを採取した患者の疾患,病態により異常値を示している場合である。異常値であっても、治療を必要とする場合や、経過観察の参考にする場合など、その利用は医師の判断に委ねられる。特に、その異常値の中で、サンプルを採取した患者の生命の危機に関わる値をパニック値,若しくは、重大値(クリティカル値:critical value)と称している。パニック値(クリティカル値)を示した検体の分析結果について臨床検査室は、担当の医師に即時報告するとともに、検査結果の検証(再検査)を実施しなければならない。これは、報告した分析結果が分析プロセスの要因でないことを検証するためである。
【0005】
従来、パニック値と、パニック値以外の異常値の区別は自動分析装置ではされていなかった。そのため、パニック値を示した検体も、パニック値ではないが異常値の検体も、一緒に再検査処理を実施していた。
【0006】
従来の自動分析装置では、再検査の可能性がある検体ラックを搬送ラインの入り口へ帰還させ、再度サンプリング部に位置づける方法により再検査を実施するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この方式は、検査が完了し、再検要否が決定した検体ラックを、検体ラック待機部の任意の位置から抜き出して目的位置へ移送することで、再検要否判定待ちの検体ラックを効率よく自動的に処理できる。
【0007】
また、分析項目の結果が遅れた場合に、診療側への異常値の報告が遅れることを危惧し、特定の項目で異常な測定結果が出力された場合に、オペレータに異常結果の通知を行い、オペレータの判断で医師に分析結果を送信する手段を備えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この方式は、医師が分析を依頼してから結果が出力されるまでのターンアラウンドタイムを低減することに寄与している
【特許文献1】特開2008−185597号公報
【特許文献2】特開2005−351777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の自動分析装置は、再検の検体が発生した場合には、帰還ラインを用いて再度サンプリング部に位置づける方法を採用している。その結果、帰還ラインを搬送中にも、ラック供給部、緊急検体ラック投入部から新しい検体ラックが自動分析装置に供給され続けている。そのため、帰還ラインから再度サンプリング部に位置づけるまでには、既に供給された検体の後方に位置しなければならなくなり、再検の分析に時間を要する結果となる。
【0009】
また、新しい検体ラックの投入を停止しても、サンプリング部で検体の採取が行われていると、検体ラックに収容されている全検体容器のサンプリングが完了することを待たなければならない。その結果、再検の分析に時間を要する結果となる。
【0010】
特許文献2に記載の自動分析装置は、医師が分析を依頼してから結果が出力されるまでのターンアラウンドタイムを低減することには寄与しているが、分析結果の検証を完了するまでの時間を低減するまでには至っていない。分析結果が分析プロセスの異常により発生した場合、医師への伝達が遅れる可能性を持っている。
【0011】
本発明の目的は、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合に、再検査の処理の待ち時間を少なくできる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、検体ラックを供給するためのラック供給部と、該ラック供給部から供給された検体ラックに収容した検体容器からサンプルを採取するためのサンプリング部と、該サンプリング部により採取したサンプルを分析する分析部とを有する自動分析装置であって、分析結果の異常を検出するための判定基準であるパニック値(クリティカル値)を分析項目ごとに設定し、また、異常が検出されたときの分析装置の動作を設定する設定部と、前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、前記ラック供給部からの検体ラックの供給を停止する制御部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合に、再検査の処理の待ち時間を少なくできる。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、検体ラックを識別する識別部を備え、前記制御部は、前記識別部からの信号により、前記分析部にパニック値を示した検体が搬送されたことを感知すると、前記ラック供給部からの検体ラックの供給を再開するようにしたものである。
【0014】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記制御部は、前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、サンプリング部での検体からサンプルの採取を中断するようにしたものである。
【0015】
(4)上記(3)において、好ましくは、検体ラックを識別する識別部を備え、前記制御部は、前記識別部からの信号により、前記分析部にパニック値を示した検体が搬送されたことを感知すると、前記サンプリング部における検体からのサンプル採取を中断した検体を、分析部まで再搬送し、中断されたサンプルの採取を再開するようにしたものである。
【0016】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記制御部は、前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、前記緊急検体ラック投入部からの緊急検体の搬入を停止するようにしたものである。
【0017】
(6)上記(5)において、好ましくは、検体ラックを識別する識別部を備え、前記制御部は、前記識別部からの信号により、前記分析部にパニック値を示した検体が搬送されたことを感知すると、前記緊急検体ラック投入部からの緊急検体ラックの搬入を再開するようにしたものである。
【0018】
(7)また、上記目的を達成するために、本発明は、検体ラックを供給するためのラック供給部と、前記ラック供給部から供給された検体容器を収容した検体ラックをサンプリング部に搬送する搬送ラインと、該搬送ラインにより供給された検体ラックに収容した検体容器からサンプルを採取するためのサンプリング部と、該サンプリング部により採取したサンプルを分析する分析部と、サンプルが採取された検体ラックを再度前記サンプリング部に搬送するための帰還ラインとを有する自動分析装置であって、分析結果の異常を検出するための判定基準であるパニック値(クリティカル値)を分析項目ごとに設定し、また、異常が検出されたときの分析装置の動作を設定する設定部と、前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、前記ラック供給部からの検体ラックの供給を停止する制御部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合に、再検査の処理の待ち時間を少なくできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の目的は、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合に、再検査の処理の待ち時間を少なくできる自動分析装置を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の一実施形態による自動分析装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による自動分析装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による自動分析装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【0021】
本実施形態の自動分析装置は、自動分析装置本体と、この自動分析装置本体を制御する制御部100と、所定の条件等を設定する設定部190とを備えている。制御部100は、記憶部110を備えている。設定部190は、マウスやキーボードなどの入力部と、モニター等の表示部からなり、GUIを構成している。設定部190により設定された条件等は、記憶部110に記憶される。
【0022】
次に、自動分析装置本体の構成及び動作について説明する。ここでは、自動分析装置本体の通常の全体的な動作について説明する。
【0023】
ラック供給部1には、複数の検体ラック2が並べられる。検体ラック2には、複数の検体容器が収容されており、各検体容器内には、検査のためのサンプル(試料)が保持されている。検体ラック2および検体ラック2に収容される検体容器には、バーコードラベル等の識別媒体が貼り付けられており、検体ラックの番号や、検体容器の番号が付与されている。
【0024】
検体ラック2は、ラック供給部1によって、順次、搬送ライン3に移送される。搬送ライン3の途中には、識別装置5を備えた識別部4が配置されている。識別装置5は、バーコードリーダ等が構成される。識別部4の識別装置5が、検体ラック2および検体ラック2に収容される検体容器に貼り付けられたバーコードラベル等の識別媒体を読み取ることで、検体ラック番号および検体容器番号が認識される。
【0025】
識別装置5によって認識された検体ラック番号および検体容器番号は、制御部100に伝達される。制御部100は、検体ラック2の種別、各検体容器に対し指示されている分析項目の種類等を、検体受付番号と対応させて設定部190から予め指示されている分析情報と照合する。制御部100は、その照合結果に基づいて、検体ラック2の送り先を決定するとともに、記憶部110に記憶されて、その後の検体ラック2の処理に利用される。第1分析部6、第2分析部14は、搬送ライン3に沿って配置されている。第1分析部6と第2分析部14とは、それぞれ異なる分析項目の分析が可能であるため、制御部100は、各サンプル毎の検査項目に応じて、検体ラック2の送り先として、第1分析部6若しくは第2分析部14を決定する。なお、第1分析部6と第2分析部14とが同じ分析項目の分析を行うものである場合には、ラック単位で、交互に、第1分析部6と第2分析部14とに振り分けるように、制御部100が検体ラック2の送り先を決定するようにすることもできる。
【0026】
ラック供給部1の上流部には、緊急検体ラック投入部32が備えられている。緊急検体ラック投入部32に検体ラック2が置かれた場合には、制御部100は、ラック供給部1にある検体ラック2に優先して緊急検体ラック投入部32にある検体ラック2が、搬送ライン3に移送するように、緊急検体ラック投入部32及びラック供給部1を制御する。
【0027】
搬送ライン3に沿って配置される第1分析部6は、搬送ライン3から検体ラック2を受け取りサンプリング処理後の検体ラック2を再び搬送ライン3に戻すサンプリング部8と、円周上に並べて配置された各反応容器内で各種の分析項目に応じたサンプルと試薬の反応を進める反応ディスク10と、各種の分析項目に応じた試薬を試薬吸入位置に位置づけるように動作する試薬ディスク11を備えている。また、第1分析部6は、サンプリング部8から反応ディスク10上の反応容器へ検体容器内のサンプルを分注する検体分注機構9と、試薬ディスク11上の試薬ボトルから反応ディスク10上の反応容器へ分析項目に応じた試薬を分注する試薬分注機構12を備えている。
【0028】
また、搬送ライン3に沿って配置される第2分析部14は、搬送ライン3から検体ラック2を受け取りサンプリング処理後の検体ラック2を再び搬送ライン3に戻すサンプリング部16と、円周上に並べて配置された各反応容器内で各種の分析項目に応じたサンプルと試薬の反応を進める反応ディスク18と、各種の分析項目に応じた試薬を試薬吸入位置に位置づけるように動作する試薬ディスク19を具備する。また、第2分析部14は、サンプリング部16から反応ディスク18上の反応容器へ検体容器内のサンプルを分注する検体分注機構17と、試薬ディスク19上の試薬ボトルから反応ディスク18上の反応容器へ分析項目に応じた試薬を分注する試薬分注機構20を備えている。
【0029】
なお、試薬ディスク11に設置された試薬の種類と、試薬ディスク19に設置された試薬の種類とは、異なる種類とすれば、分析装置本体によって分析可能な分析項目を増やすことができる。また、試薬ディスク11に設置された試薬の種類と、試薬ディスク19に設置された試薬の種類とを、同じ種類とすれば、分析装置本体の単位時間に分析可能なサンプル数を増加して、スループットを向上できる。
【0030】
第1分析部6によって分析検査される項目が指示されているサンプルを保持する検体ラック2は、ラック取込機構7により搬送ライン3上からサンプリング部8に移送される。移送された検体ラック2は、サンプリング部8内のサンプル採取位置に移動され、必要な検体容器内に検体分注機構9の分注ノズルが挿入されて反応容器への分注がなされる。同じ検体容器について2項目以上の検査が指示されている場合、および同じ検体ラック2上の他の検体容器に対し検査項目が指示されている場合は、引き続いてサンプル採取動作が繰り返される。
【0031】
指示されているすべての分析項目に関するサンプルの採取が終了した検体ラック2は、ラック排出機構13の対応位置まで移動され、ラック排出機構13によって搬送ライン3上へ移送される。一方、反応ディスク10上の反応容器に採取されたサンプルは、試薬分注機構12によって分注された試薬と反応される。反応開始から所定時間後に検出器によって測定された各分析項目に対応するデータは、制御部100に出力する。制御部100は、設定部190から予め記憶部110に設定されている分析結果の異常を検出するための判定規準と分析検査データを照合し、測定データが不適性な場合は、再検査が必要な検体であることを検体ラック番号および検体容器番号と対応させて記憶部110に記憶する。
【0032】
ラック排出機構13によって搬送ライン3上に移送された検体ラック2に対し、第2分析部14に設定されている分析項目を分析検査する必要があるサンプルが収容されているか否かが制御部100によって判断される。制御部100は、検体ラック2上に検査すべきサンプルがあれば、該検体ラック2をラック取込機構15の対応位置まで搬送ライン3によって運ぶ。搬送ライン3上に停止された検体ラック2は、ラック取込機構15によりサンプリング部16内に移送され、次いでサンプル採取位置にて反応ディスク18上の反応容器にサンプルを分注する。必要な検体容器のすべてのサンプル採取を終えた検体ラック2は、ラック排出機構21により搬送ライン3上に移送される。そして、検体ラック2は、搬送ライン3出口直後にあるラック振分機構22まで搬送される。
【0033】
搬送された検体ラック2の検体ラック番号は記憶部110に記憶されている為、コントロール検体用ラック、標準試料用ラック、および洗浄液用ラック等の再検査が不要な検体ラック2か、再検査の可能性のある検体ラック2かは、制御部100により既に判断されている。検体ラック2は、その判断に基づいて制御部100の制御信号を受けたラック振分機構22により、再検査が不要で有ればラック引込機構28に移送され、ラック引込機構28によりラック収納部23入り口に送られ、ラック押込機構29により検体ラック収納部23へ収納される。検体ラック2に再検査の可能性が有れば、ラック待機部24へ運ばれ、再検査の要否が決定するまで待機する。
【0034】
再検査が必要と判断された検体ラック2は、ラック分配機構25で搬出ライン26に移送され、搬出ライン26で帰還ライン30まで運ばれ、帰還ライン30の出口に移送される。そして、再検査が必要と判断された検体ラック2は、ラック戻し機構31により検体投入部1にある検体ラック2と緊急検体ラック投入部32に優先して搬送ライン3に移送され、前述の手順で再び検査を行う。
【0035】
再検査が不要と判定された検体ラック2は、ラック分配機構25で搬出ライン26に移送され、搬出ライン26でラック引込機構28まで搬送される。さらに、再検査が不要と判定された検体ラック2は、ラック収納部23入り口に引き込まれ、ラック押込機構29でラック収納部23に収納される。第1回目の分析検査データおよび再検査の分析検査データは、設定部190の中の表示部に表示される。
【0036】
次に、図2〜図4を用いて、本発明の一実施形態による自動分析装置における、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合の再検査処理のための構成及び動作について説明する。
最初に、図2を用いて、本実施形態による自動分析装置における、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合の再検査処理のための構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による自動分析装置における、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合の再検査処理のための構成を示すブロック図である。
【0037】
設定部190は、判定基準設定部192と、動作設定部194とを備えている。判定基準設定部192は、検体の各分析項目毎に、分析値に対するパニック値(クリティカル値)等を設定する。動作設定部194は、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合の、自動分析装置本体の動作条件を設定する。判定基準設定部192及び動作設定部194の設定動作については,図3を用いて後述する。
【0038】
ここで、図3を用いて、本実施形態による自動分析装置に用いる設定部の動作について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる設定部の動作を説明するための表示画面の表示例である。
【0039】
前述したように、設定部190は、マウスやキーボードなどの入力部と、モニター等の表示部からなり、GUIを構成している。設定部190により設定された条件等は、記憶部110に記憶される。
【0040】
自動分析装置の各機能は、ルーチン操作201をはじめとして、試薬管理202、キャリブレーション203、精度管理204、ユーティリティ205などがある。ユーティリティー205は、自動分析装置全体のメンテナンス設定を行うメンテナンス207や、分析項目ごとの設定を行うアプリケーション206などがある。
【0041】
アプリケーション206は、分析項目ごとに再検の判定基準に係る設定を行う判定基準設定部192及び動作設定部194としての機能を備えている。
【0042】
図3の例では、項目名209の欄のASTの検体種別210が血清の時のパラメータを表示している。自動再検211の欄は、ASTについて自動再検の要否を設定する。図3の例では“Y”の登録により自動再検を行う設定となっている。テクニカルリミット212の欄、リピートリミット213の欄は再検を行うための閾値を登録する。例えば、分析項目ASTにおいては、検出値の正常範囲が0〜40とすると、図3の例では、リピートリミット213の欄には、検出値が0未満若しくは40以上の場合、再検査するという設定が登録されている。また、分析値が2000を超えることや0未満となることが無い場合には、分析値が2000以上を示したときは、自動分析装置の故障等が考えられるため、テクニカルリミット212の欄には、図3の例では、0未満及び2000以上が設定され、登録されている。
【0043】
パニックリミット214の欄はパニック値(クリティカル値)と判定するための閾値を登録するものである。分析値が正常値の上限である40を超え、さらに、それよりも高い,例えば、300となると、生命の危険があるため再検査が必要である値,すなわち、パニック値(クリティカル値)として登録する。パニックリミット214の欄が、判定基準設定部192に相当する。
【0044】
ラック供給停止215の欄、緊急ラック供給停止216の欄、及びサンプリング停止217の欄は、パニック値が検出された場合に、自動分析装置本体の動作条件を設定するための、動作設定部194である。
【0045】
ラック供給停止215の欄は、分析値がパニックリミット213未満の場合か超えた場合にラック供給部1からのラック供給を停止要否を設定する。図3の例では、“Y”の登録によりラック供給部1からのラック供給を停止する設定となっている。
【0046】
緊急ラック供給停止216の欄は、分析値がパニックリミット213未満の場合か超えた場合に緊急検体ラック投入部32からのラック供給を停止要否を設定する。図2の例では、“Y”の登録により緊急検体ラック投入部32からのラック供給を停止する設定となっている。
【0047】
サンプリング停止217の欄は、分析値がパニックリミット213未満の場合か超えた場合にサンプリング部8もしくはサンプリング部16内での検体容器内から反応容器への分注停止要否を設定する。図3の例では、“N”の登録により、サンプリング部8もしくはサンプリング部16内での検体容器内から反応容器への分注を停止しない設定となっている。
【0048】
判定基準や動作条件等の設定が完了した後は、登録218のボタンを押すことにより、記憶部110に入力値が設定される。図3に示すパラメータは、自動分析装置がスタンバイ状態の時のみ登録が可能である。
【0049】
ここで、動作設定部のラック供給停止215の欄,緊急ラック供給停止216の欄,サンプリング停止217の欄について、詳述する。
【0050】
ラック供給停止215の欄は、”Y”に固定設定している。従来の装置において、再検査時には、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2が帰還ライン30を介して、ラック戻し機構31の位置まで戻ると、ラック供給部1から供給される予定の検体ラック2よりも優先して、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2が搬送ライン3に供給される。従って、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2がラック戻し機構31の位置まで戻るまでは、ラック供給部1から検体ラック2が供給されている。その結果、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2がラック戻し機構31により搬送ライン3に供給された時点では、ラック戻し機構31と検体分注機構9、17の間には、検査待ちの複数の検体ラック2が残存していることにある。そのため、これらの残存している検体ラック2の複数の検体の分析が終了した後でないと、再検査の必要なサンプルの再検査を行えないことになり、再検査まで長時間を要することになる。
【0051】
それに対して、ラック供給停止215の欄は、”Y”にすると、パニック値を示したサンプルが検出された時点で、ラック供給部1からの新規の検体ラック2の供給を停止する。その結果、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2がラック戻し機構31により搬送ライン3に供給された時点では、ラック戻し機構31と検体分注機構9、17の間には、検査待ちの検体ラック2が残存しないことになる。そのため、パニック値を示したサンプルの載った検体ラック2は、速やかに、搬送ライン3により検体分注機構9、17に搬送でき、再検査の必要なサンプルの再検査を直ちに行えることになる。
【0052】
緊急ラック供給停止216の欄は、”Y”か、”N”のいずれかを選択可能である。緊急ラック供給停止216の欄を、”Y”に設定すると、緊急検体ラック投入部32からのラック供給を停止する。その結果、緊急検体に優先して、パニック値を示したサンプルの載った検体ラック2を、搬送ライン3により検体分注機構9、17に搬送でき、再検査の必要なサンプルの再検査を直ちに行えることになる。緊急ラック供給停止216の欄を、”N”に設定すると、緊急検体ラック投入部32からのラック供給は可能であるため、緊急検体がある場合には、緊急検体を優先して、搬送ライン3により検体分注機構9、17に搬送でき、緊急検体の検査を直ちに行えることになる。また、緊急検体に引き続いて、パニック値を示したサンプルの載った検体ラック2を、搬送ライン3により検体分注機構9、17に搬送でき、再検査の必要なサンプルの再検査を直ちに行えることになる。
【0053】
サンプリング停止217の欄は、”Y”か、”N”のいずれかを選択可能である。サンプリング停止217の欄を、”Y”に設定すると、検体分注機構9、17における検体の分注を停止する。
【0054】
従来の装置では、パニック値を示したサンプルが検出された時点では、サンプリング部8,16には、複数の検体ラック2が載置され、順次、分注が行われている。再検査時に、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2が帰還ライン30及び搬送ライン3を介して、検体分注機構9、17に到達するまで、その途中に搬送ライン3やサンプリング部8,16に残存している複数の検体ラック2の検体の分析が終了した後でないと、再検査の必要なサンプルの再検査を行えないことになり、再検査まで長時間を要することになる。
【0055】
それに対して、サンプリング停止217の欄は、”Y”にすると、パニック値を示したサンプルが検出された時点で、検体分注機構9、17における検体の分注を停止する。例えば、検体ラック2に、5個の検体容器が収納され、第1番目のサンプルについて10項目の分析項目が設定され、5項目分の分注が終了した時点で、パニック値を示したサンプルが検出されると、第1番目の6〜10番目の分析項目に対する分注が停止されるとともに、この検体ラック2に収納されている第2〜5場面目の検体の分注も停止する。また、搬送ライン3やサンプリング部8,16に残存している複数の検体ラック2に収納された検体容器に対する分注も停止する。これら分析の完了していない検体ラック2は、全て一旦搬送ライン3により搬送され、帰還ライン30により、ラック戻し機構31の位置まで戻り、再度搬送ライン3に乗せられるように循環する。その間に、再検査の必要なサンプルの載った検体ラック2が、帰還ライン30と搬送ライン3により、検体分注機構9、17の位置に速やかに搬送され、再検査の必要なサンプルの再検査を直ちに行えることになる。
【0056】
サンプリング停止217の欄を、”N”に設定すると、検体分注機構9、17における検体の分注は停止しないものである。
【0057】
動作設定部のラック供給停止215の欄を”Y”とした場合,緊急ラック供給停止216の欄を”Y”とした場合,サンプリング停止217の欄を”Y”とした場合の3者で比べると、再検査までに要する時間を最も短縮できるのは、サンプリング停止217の欄を”Y”とした場合である。次は、緊急ラック供給停止216の欄を”Y”とした場合である。最後は、ラック供給停止215の欄を”Y”とした場合である。
【0058】
動作設定部のラック供給停止215の欄は”Y”に固定設定しているが、緊急ラック供給停止216の欄や、サンプリング停止217の欄を、”Y”に設定するか、”N”に設定するかは、緊急性との兼ね合いである。例えば、心停止に関連する分析項目であるKの場合には、緊急性が大であるため、動作設定部のラック供給停止215の欄を”Y”に設定し、緊急ラック供給停止216の欄及びサンプリング停止217の欄を、”Y”に設定する。図3に示した分析項目であるAST,ALT,LD,GGT等は肝機能に関する分析項目である。肝機能の場合には、心停止に比べると緊急性が小さいので、動作設定部のラック供給停止215の欄を”Y”に設定し、緊急ラック供給停止216の欄を”Y”に設定し、サンプリング停止217の欄を、”N”に設定する。その他、分析項目の緊急性に応じて、動作設定部のラック供給停止215の欄を”Y”に設定し、緊急ラック供給停止216の欄を”N”に設定し、サンプリング停止217の欄を、”N”に設定したり、また、動作設定部のラック供給停止215の欄を”Y”に設定し、緊急ラック供給停止216の欄を”N”に設定し、サンプリング停止217の欄を、”Y”に設定したりする。
【0059】
次に、図2に示した制御部100の構成及び動作について説明する。
【0060】
制御部100は、記憶部110と、判定部120と、動作制御部130とを備えている。記憶部110には、前述のように、判定基準設定部192により設定された判定基準や、動作設定部194により設定された動作条件を記憶されている。
【0061】
判定部120は、記憶部110に記憶された判定基準を用いて、自動分析装置本体から得られた分析値が、パニック値に相当するか否かを判定する。
【0062】
判定部120がパニック値に相当すると判定すると、動作制御部130は、記憶部110に記憶された動作条件に基づいて、ラック供給部1の停止や、緊急検体ラック投入部32の停止や、検体分注機構9,17の停止を制御する。また、動作制御部130は、識別装置5からの信号により、新たな検体ラックの搬送ライン3への投入が検知されると、新たな検体の搬送を開始する。
【0063】
ここで、図4を用いて、本実施形態による自動分析装置に用いる制御部の動作について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる制御部の動作を説明するフローチャートである。
【0064】
ステップS10において、制御部100は、検体ラックに収容されている検体の1分析ごとの検査結果完了をトリガーとして判定処理を実行する。
【0065】
そして、ステップS20において、判定部120は、分析結果が記憶部110に設定されているパニックリミット以内であるか否かを判定する。判定の結果、パニックリミットの範囲内であれば、ステップS80において、制御部100は、残りの分析結果の判定を継続して行う。
【0066】
ステップS20における判定の結果、パニックリミットの範囲外であった場合には、ステップS30において、動作制御部130は、記憶部110に記憶されている各分析項目毎の動作条件を読み出し、緊急ラック供給停止に設定されているか否かを判定する。緊急ラック供給停止設定が”Y”の場合には、ステップS90において、動作制御部130は、ただちに緊急ラック供給部32の動作を停止する。
【0067】
次に、ステップS40において、動作制御部130は、記憶部110に記憶されている各分析項目毎の動作条件を読み出し、ラック供給停止に設定されているか否かを判定する。ラック供給停止設定が”Y”の場合には、ステップS100において、動作制御部130は、ただちにラック供給部1の動作を停止する。
【0068】
次に、ステップS50において、動作制御部130は、記憶部110に記憶されている各分析項目毎の動作条件を読み出し、サンプリング停止に設定されているか否かを判定する。サンプリング停止設定が”Y”の場合には、ステップS110において、動作制御部130は、ただちにサンプリング部8,16内での検体容器内から反応容器への分注を停止する。
【0069】
ステップS60において、制御部100は、ラック2上のすべての検体のチェックが完了したか否かを判定する。ラック2上のすべての検体のチェックが完了すると、再検査が必要と判断された検体ラック2は、ステップS70において、ラック分配機構25は、検体ラック2を搬出ライン26に移送し、搬出ライン26で帰還ライン30まで運ばれ、帰還ライン30出口に移送され、再検査が行われる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、動作設定部に設定された動作条件に応じた各部の制御をすることで、パニック値を検出した検体の再検を迅速に実施することができる。
【0071】
なお、分析部としては、血液、血漿、血清、尿、その他の体液中の特定成分の量を定量的、定性的に分析する生化学分析装置、あるいは特定の抗原・抗体の量を測定する免疫分析装置、DNA分析装置など、生体サンプルを分析可能なものであればよいものである。
【0072】
また、検体ラックの搬送は、ベルトコンベア方式、ラックの後端部を押し出して移送する押し出しアーム方式、クレーン等によりラックを搬送する方式等、ラックを移動させることができるものであればどのような方法でも適用可能である。また、搬送ラインが帰還ラインを兼ねてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態による自動分析装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による自動分析装置における、パニック値(クリティカル値)を示した検体が発生した場合の再検査処理のための構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる設定部の動作を説明するための表示画面の表示例である。
【図4】本発明の一実施形態による自動分析装置に用いる制御部の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1…ラック供給部
2…検体ラック
3…搬送ライン
4…識別部
5…識別装置
6…第1分析部
7,15…ラック取込機構
8,16…サンプリング部
9,17…検体分注機構
10,18…反応ディスク
11,19…試薬ディスク
12,20…試薬分注機構
13,21…ラック排出機構
14…第2分析部
22…ラック振分機構
23…ラック収納部
24…ラック待機部
25…ラック分配機構
26…搬出ライン
27,29…ラック押込機構
28…ラック引込機構
30…帰還ライン
31…ラック戻機構
32…緊急検体ラック投入部
100…制御部
110…記憶部
120…判定部
130…動作制御部
190…設定部
192…判定基準設定部
194…動作設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体ラックを供給するためのラック供給部と、
該ラック供給部から供給された検体ラックに収容した検体容器からサンプルを採取するためのサンプリング部と、
該サンプリング部により採取したサンプルを分析する分析部とを有する自動分析装置であって、
分析結果の異常を検出するための判定基準であるパニック値(クリティカル値)を分析項目ごとに設定し、また、異常が検出されたときの分析装置の動作を設定する設定部と、
前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、前記ラック供給部からの検体ラックの供給を停止する制御部を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
検体ラックを識別する識別部を備え、
前記制御部は、前記識別部からの信号により、前記分析部にパニック値を示した検体が搬送されたことを感知すると、前記ラック供給部からの検体ラックの供給を再開することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において
前記制御部は、前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、サンプリング部での検体からサンプルの採取を中断することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項記載3の自動分析装置において、
検体ラックを識別する識別部を備え、
前記制御部は、前記識別部からの信号により、前記分析部にパニック値を示した検体が搬送されたことを感知すると、前記サンプリング部における検体からのサンプル採取を中断した検体を、分析部まで再搬送し、中断されたサンプルの採取を再開することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項記載1の自動分析装置において、
前記制御部は、前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、前記緊急検体ラック投入部からの緊急検体の搬入を停止することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項記載5の自動分析装置において、
検体ラックを識別する識別部を備え、
前記制御部は、前記識別部からの信号により、前記分析部にパニック値を示した検体が搬送されたことを感知すると、前記緊急検体ラック投入部からの緊急検体ラックの搬入を再開することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
検体ラックを供給するためのラック供給部と、
前記ラック供給部から供給された検体容器を収容した検体ラックをサンプリング部に搬送する搬送ラインと、
該搬送ラインにより供給された検体ラックに収容した検体容器からサンプルを採取するためのサンプリング部と、
該サンプリング部により採取したサンプルを分析する分析部と、
サンプルが採取された検体ラックを再度前記サンプリング部に搬送するための帰還ラインとを有する自動分析装置であって、
分析結果の異常を検出するための判定基準であるパニック値(クリティカル値)を分析項目ごとに設定し、また、異常が検出されたときの分析装置の動作を設定する設定部と、
前記分析部による分析結果が、前記設定部により設定された判定基準により異常であると判定されると、前記設定部により設定された分析装置の動作に従って、前記ラック供給部からの検体ラックの供給を停止する制御部を備えることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−122124(P2010−122124A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297379(P2008−297379)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】