説明

自動分析装置

【課題】試薬庫内の試薬容器を交換可能するために開けられた断熱蓋によって装置が損傷することを防止した自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置は、試薬が入った試薬容器又は複数の該試薬容器を収納した試薬ラックが載置される試薬庫と、試薬庫上に移動して前記試薬を吸引させるとアームとを有する。この試薬庫を固定蓋と可動蓋に分割された断熱蓋で覆う。固定蓋は、少なくとも試薬容器一つ分若しくは試薬ラック一つ分の大きさで拡がり試薬庫内に連通する試薬の交換用の開口を有する。可動蓋は、開口が拡がる平面に沿ってスライド可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検試料と試薬とを分注して撹拌し、混合液を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検試料と試薬とを分注して混合液を測定する装置である。反応管に血液や尿等の被検試料と試薬とを分注してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を光測定することにより検体中の被測定物質または酵素の濃度や活性を測定する。または、被検試料の電位を検出することで被検試料中に存在するNaイオン、Kイオン、Clイオン等の各種イオンの濃度を測定する。
【0003】
この自動分析装置には、筐体の上面にステージが設定される。そして、ステージ上には、被検試料を収納した試料容器を搬送するラックサンプラ、試薬を収納した試薬容器が収容される試薬庫、反応管を搬送する反応ディスク、試料容器から被検試料を吸引して反応管に吐出するために回転及び伸縮する試料分注アーム、試薬容器から第1試薬を吸引して反応管に吐出するために回転及び伸縮する第1試薬分注アーム、試薬容器から第2試薬を吸引して反応管に吐出するために回転及び伸縮する第2試薬分注アーム、反応管内を撹拌する撹拌ユニット、混合液を測定する測定ユニット、及び各アームに支持されているプローブや反応管を洗浄する各洗浄ユニットが配置される。
【0004】
試薬庫は、第1試薬及び第2試薬の温度を調整する恒温槽となっている。そのため、試薬庫の上面は、断熱蓋で覆われている(例えば、「特許文献1」参照。)。
【0005】
図14に示すように、断熱蓋200は、円筒形状の試薬庫1に合わせて円形を有しており、固定蓋201と可動蓋202とに半月状に2分割されている。固定蓋201と可動蓋202とは、弦の部分でヒンジ203により接続されており、固定蓋201は試薬庫の縁にラッチされて取り付けられる一方で、可動蓋202はその周縁を固定蓋201側へ持ち上げることで試薬庫上に立設可能となっている。可動蓋202を立設させることで、試薬庫内の試薬容器が交換可能となる。
【0006】
第1試薬分注アームと第2試薬分注アームは、それぞれ試薬庫上に移動して試薬容器から第1試薬と第2試薬をそれぞれ吸引し、反応ディスク上に移動して反応管へ吐出する。そのため、可動蓋202と第1試薬分注アームや第2試薬分注アームとの物理的な干渉を防ぎ、自動分析装置の故障を防止するため、固定蓋201と可動蓋202とを接続するヒンジ203の可動範囲は、可動蓋が試薬庫に立設する範囲に留められている。
【0007】
しかし、固定蓋201と可動蓋202とを接続するヒンジ203が壊れたり緩んだりすると、可動蓋202が固定蓋201側に倒れるおそれがある。そうすると、試薬庫上に移動していた第1試薬分注アームや第2試薬分注アーム上に可動蓋202が落ち、第1試薬分注アームや第2試薬分注アームを破損させてしまうおそれがある。即ち、可動蓋202が迫り上げられることで試薬庫内が開かれる断熱蓋200では、試薬庫上に位置し、又は試薬庫上に移動する第1試薬分注アーム、第2試薬分注アーム他の部材と物理的に干渉し、自動分析装置を故障させてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3808895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、試薬庫内の試薬容器を交換可能するために開かれた断熱蓋によって装置が損傷することを防止した自動分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動分析装置の態様は、試薬が入った試薬容器、又は複数の該試薬容器を収納した試薬ラックが載置される試薬庫と、前記試薬庫上に移動して前記試薬を吸引させるとアームとを有し、被検試料に試薬を分注してその混合液を分析する自動分析装置であって、前記試薬庫を覆うとともに、固定蓋と可動蓋に分割された断熱蓋を備え、前記固定蓋は、少なくとも前記試薬容器一つ分若しくは前記試薬ラック一つ分の大きさで拡がり前記試薬庫内に連通する前記試薬の交換用の開口を有し、前記可動蓋は、前記開口が拡がる平面に沿って前記固定蓋に被るようにスライド可能であること、を特徴とする。
【0011】
前記可動蓋は、前記試薬庫の中心軸に軸支されて周方向に回転しながらスライドするようにしてもよい。
【0012】
前記可動蓋をスライドさせる駆動手段を更に備えるようにしてもよい。
【0013】
前記駆動手段は、前記試薬庫の外周位置に歯車を有し、前記可動蓋は、外周に沿って穿設されたラックギアを有し、前記歯車と前記ラックギアとが噛み合うことで、前記駆動手段の駆動に従動してスライドするようにしてもよい。
【0014】
前記可動蓋は、外周に突出する突出片を有し、前記スライドに伴う前記突出片の移動軌跡上に前記突出片を検知するセンサを2箇所に備え、前記一のセンサは、前記可動蓋が前記開口から前記試薬容器一つ分若しくは前記試薬ラック一つ分を露出させた位置にスライドしたときに前記突出片が存在する位置に配され、前記他のセンサは、前記可動蓋が前記開口を完全に覆った位置にスライドしたときに前記突出片が存在する位置に配されるようにしてもよい。
【0015】
前記開口を閉じたときの前記可動蓋の閉じ方向先端の位置よりも閉じ方向奥側、及び前記開口を開ききったときの前記可動蓋の開き方向先端の位置よりも開き方向奥側にそれぞれ前記可動蓋の軌跡上に突出するメカストッパを更に備えるようにしてもよい。
【0016】
前記駆動手段は、前記開口と異なる位置に立設し、前記突出片は、前記可動蓋の蓋部が前記開口を完全に覆ったときに前記駆動手段の立設位置よりも奥まで前記蓋部の外周一端から周方向に延設された位置で前記外周に突出するようにしてもよい。
【0017】
前記可動蓋は、前記ラックギアに沿って前記ラックギアと前記歯車の歯に被さる鍔を有するようにしてもよい。
【0018】
前記試薬容器は、上面に内部に連通する口を有し、前記固定蓋は、前記試薬庫の中心軸を中心として前記口を通る周方向の軌跡と前記開口の縁とが交差する位置に樋を有するようにしてもよい。
【0019】
前記試薬庫上に架設されたレールと、前記レールに沿って移動して前記開口に前記試薬容器を出し入れする試薬交換手段と、を更に有するようにしてもよい。
【0020】
前記試薬交換手段の移動と前記可動蓋のスライドとを制御する制御手段を更に備え、前記制御手段は、遅くとも前記可動蓋が前記開口から前記試薬容器一つ分若しくは前記試薬ラック一つ分を露出させた位置にスライドしたときに前記試薬交換手段を交換対象の前記試薬容器上に位置させるようにしてもよい。
【0021】
また、被検試料と試薬とを分注してその混合液を分析する自動分析装置であって、前記試薬が入った試薬容器を収納する試薬庫と、前記試薬を吸引及び吐出するプローブを有し、前記プローブを前記試薬の吸引位置に移動及び上下動させるアームと、前記試薬庫内に設けられ、前記吸引位置を決定するための目印と、前記アームに設けられ、前記試薬庫内に降ろされて移動することで前記目印を探索する目印探索手段と、前記位置決定手段が探索した前記目印の位置に基づき、前記吸引位置を決定する位置決定手段と、前記試薬庫を覆い、前記吸引位置を含み前記試薬庫に連通する孔領域を有する蓋と、を備え、前記蓋は、前記孔領域を含む一部領域を覆う蓋とその他の領域を覆う蓋とに少なくとも分割され、前記一部領域を覆う蓋は、前記目的探索手段が前記試薬庫内に降ろされるときに着脱可能であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明よって、可動蓋が試薬庫上のアームに倒れ込むことはなく、この倒れ込みによる自動分析装置の故障要因を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自動分析装置のステージ上の構成を示す。
【図2】自動分析装置が備える断熱蓋の詳細構成を示す。
【図3】自動分析装置が備える断熱蓋の斜視図である。
【図4】自動分析装置が備える可動蓋を裏面から見た様子を示す。
【図5】自動分析装置が備える閉じ検知センサの構成を示す。
【図6】断熱蓋の開口を開けたときの斜視図である。
【図7】自動分析装置を側面から見た斜視図である。
【図8】自動分析装置が備えるレールと試薬交換部を示す。
【図9】試薬交換部と可動蓋の制御動作の一例を示すタイムチャートである。
【図10】試薬交換部と可動蓋の制御動作の他の例を示すタイムチャートである。
【図11】自動分析装置が備える試薬ラックを示す。
【図12】着脱可能蓋を取り付けた状態を示す。
【図13】着脱可能蓋を取り外した状態を示す。
【図14】従来の自動分析装置が備える断熱蓋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る自動分析装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1に示す自動分析装置100は、被検試料と試薬とを吸引して一つの容器に吐出し、その混合液の反応を分析することにより、被検試料に含まれる化学成分を測定する装置である。
【0026】
被検試料は、血液や尿等である。試薬は、被検試料の測定項目に応じた種類が採用される。自動分析装置100は、これら被検試料と試薬とを反応管31に移して反応させた後、光測定や電解質測定を行う。光測定では、反応によって生じる色調の変化を捉えて検体中の被測定成分または酵素の濃度や活性を測定する。電解質測定では、被検試料の電位を検出することで被検試料中に存在するNaイオン、Kイオン、Clイオン等の各種イオンの濃度を測定する。
【0027】
この自動分析装置100は、筐体の上面に一つのステージ110を有する。このステージ110上に分注、撹拌、測定、及び洗浄を行う各種ユニットが配置される。具体的には、自動分析装置100は、反応ディスク3、ラックサンプラ4、試料分注アーム5、試薬庫1、第1試薬分注アーム6、第2試薬分注アーム7、撹拌ユニット8、測定ユニット9、及び洗浄ユニット10をステージ110上に配する。また、自動分析装置100は、CPUやROMやスイッチ等を含む制御部101を有し、各ユニットの駆動を制御する。
【0028】
反応ディスク3は、複数の反応管31を搬送する円形の搬送路である。反応管31は、中空の直方体形状を有し上面が開口したセルである。反応ディスク3は、この反応管31を周方向に一列に並べて1サイクル毎に所定角度回転する。反応ディスク3の1サイクル毎の角度は、例えば、1周−1セル分である。即ち、反応ディスク3は、1サイクル毎に反応管31の載置位置を1セル分変位させる。
【0029】
反応ディスク3上には、被検試料の吐出位置5b、第1試薬の吐出位置6b、第2試薬の吐出位置7b、撹拌位置、測定位置、及び洗浄位置が配されている。反応ディスク3が回転することで、反応管31に分注された被検試料は、これら位置に順に移送されて分析の各工程を経る。
【0030】
ラックサンプラ4は、ステージ110の一端辺の縁に沿って面して設けられている。このラックサンプラ4は、試料ラック4aとハンドラ4bとを有し、被検試料を収容した試料容器を被検試料の吸引位置5aに搬送する。
【0031】
試料ラック4aは、試料容器がセットされる所謂棚である。この試料ラック4aは、ステージ110の一端辺に面してその端辺が延びる方向に複数に区画されている。試料ラック4aには、この各区画に試料容器がセットされる。試料容器は、カードリッジに複数載置されており、試料ラック4aには、このカードリッジを各区画に奥行き方向に入れ込むようにセットされる。
【0032】
ハンドラ4bは、試料容器を被検試料の吸引位置5aに搬送する。このハンドラ4bは、試料ラック4aと隣接している。このハンドラ4bは、例えば3つのモータを有し、2軸方向の移動及び回転が可能となっている。具体的には、ハンドラ4bは、試料ラック4aの各区画に沿ってステージ110の左右方向へ移動可能となっている。また、ハンドラ4bは、ステージ110が拡がる面と直交する上下方向に移動可能となっている。また、ハンドラ4bは、ステージ110が拡がる面と平行な面上を一端を軸として軸回転可能となっている。
【0033】
ラックサンプラ4は、ハンドラ4bを左右方向に移動させることで試料ラック4aにセットされた試料容器の前に位置させ、ハンドラ4bを上方に移動させることで試料容器をすくい上げて試料ラック4aから取り出させ、ハンドラ4bを回転及び下方に移動させることで試料容器を吸引位置5aにセットする。
【0034】
試料分注アーム5は、反応ディスク3とラックサンプラ4との間に介在して設置される。この試料分注アーム5は、ラックサンプラ4で吸引位置5aに搬送された試料容器から被検試料を吸引し、反応ディスク3上の吐出位置5bに位置している反応管31内に吐出する。
【0035】
試料分注アーム5は、ステージ110上に立設する支柱とその支柱上部から水平方向に延びた保持部とを有する逆L字形状を有し、保持部先端には、図示しないプローブを下方に垂れ下げて支持している。試料分注アーム5の支柱は軸回転可能に保持され、また2重筒構造を有して伸縮自在となっている。
【0036】
試料分注アーム5の回転可動領域の両端は、それぞれ吸引位置5aと吐出位置5bに位置する。試料分注アーム5は、吸引位置5aの試料容器上にプローブを位置させて下降させ、試料容器内にプローブを差し込む。また、試料分注アーム5は、被検試料の吸引後、吐出位置5bの反応管31上にプローブを位置させて下降させ、反応管31内にプローブを差し込む。
【0037】
プローブは、所謂ストローであり、筒内に負圧がかけられることで被検試料を吸引位置5aの試料容器から吸引し、筒内に正圧がかけられることで被検試料を吐出位置5bの反応管31に吐出する。
【0038】
試料分注アーム5の回転可動領域の途中には、洗浄ユニット10が配されている。試料分注アーム5は、洗浄ユニット10の洗浄位置5cにプローブを位置させて、被検試料が付着したプローブの内壁及び外壁を洗浄する。
【0039】
試薬庫1は、ラックサンプラ4の奥及びステージ110の正面から見て左側面側にその高さの大部分をステージ110に埋没させて配置される。この試薬庫1は、有底及び上面が開口した円筒形状を有し、内部に試薬容器11がセットされる。
【0040】
この試薬庫1には、複数の試薬ラック12が半径方向に2段及び周方向に一列に並べて収容されている。試薬ラック12は、所謂籠であり、各試薬ラック12には、第1試薬を収容した複数の試薬容器11又は第2試薬を収容した複数の試薬容器11が収納される。
【0041】
第1試薬を収容した試薬容器11は、試薬庫1の最外部に周方向に沿って並べられた試薬ラック12に収容される。第2試薬を収容した試薬容器11は、試薬庫1の内周部に周方向に沿って並べられた試薬ラック12に収容される。
【0042】
試薬庫1は、円筒中心を中心軸1aとしてこれら試薬ラック12を周方向に軸回転させる。試薬ラック12は、中心軸1aで軸回転するディスク上に載置されており、中心軸1aを回転させるモータやギアを含む駆動機構の駆動に従動して軸回転する。試薬ラック12を回転させることで、測定項目に応じた第1試薬の試薬容器11を吸引位置6aに移動させ、測定項目に応じた第2試薬の試薬容器11を吸引位置7aに移動させ、又は第1試薬や第2試薬の試薬容器11を交換可能位置に移動させる。
【0043】
試薬庫1は、第1試薬及び第2試薬の温度を調整する恒温槽となっている。そのため、試薬庫1の上面は、断熱蓋13で覆われている。この断熱蓋13は、固定蓋14と可動蓋16とで構成されている。
【0044】
固定蓋14は、一部が扇形状に切り欠かれることで試薬庫1内に連通する一つの開口15を有する。この開口15が試薬の交換可能位置である。開口15は、試薬庫1の円筒中心から周縁まで所定の角度の範囲で拡がっている。開口15の拡がり範囲は、少なくとも試薬容器11一つ分か試薬ラック12一つ分の拡がり角度と同一かそれよりも広い。試薬ラック12一つ分の拡がり角度と同一かそれより広い場合、試薬ラック12ごと試薬を交換することが可能となる。
【0045】
可動蓋16は、その裏面が固定蓋14の上面よりも高くなるように位置し、少なくとも試薬庫1の中心軸1aから外周縁まで拡がる天井壁と固定蓋14の外周よりも外側でステージ110へ向けて折れ曲がった側壁とで一体的に形成されている。可動蓋16の大きさは、開口15の拡がり範囲と同一かそれよりも大きい。
【0046】
この可動蓋16は、試薬庫1の中心軸1aに軸支されており、この中心軸1aを中心に固定蓋14の上面に沿って試薬庫1の周方向にスライド可能となっている。従って、可動蓋16をスライドさせて開口15を露出させ、試薬ラック12を回転させることにより、断熱蓋13の部材を迫り上げることなく所望の第1試薬又は第2試薬が交換可能となる。
【0047】
第1試薬分注アーム6は、反応ディスク3と試薬庫1との間に介在して設置される。この第1試薬分注アーム6は、試薬庫1内の最外部に並ぶ試薬容器11から第1試薬を吸引し、反応ディスク3上の反応管31に吐出する。第2試薬分注アーム7は、反応ディスク3と試薬庫1との間に介在して設置される。この第2試薬分注アーム7は、試薬庫1内の内周部に並ぶ試薬容器11から第2試薬を吸引し、反応ディスク3上の反応管31に吐出する。
【0048】
これら第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7も逆L字形状を有し、プローブを下方に垂れ下げて支持している。また、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7もそれぞれ軸回転可能及び伸縮自在となっている。
【0049】
これら第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7の回転可動領域の両端も、それぞれ試薬庫1上の吸引位置6a,7a、反応ディスク3上の吐出位置6b,7bとなり、図示しないポンプによって第1試薬及び第2試薬をそれぞれ吸引及び吐出する。固定蓋14の吸引位置6a及び7aに該当する位置には、孔14aが穿設されており、この孔14aにプローブが出し入れされる。
【0050】
尚、第1試薬分注アーム6の吐出位置6bは、試料分注アーム5の吐出位置5bよりも反応ディスク3の搬送方向奥側に設定される。また、第2試薬分注アーム7の吐出位置7bは、第1試薬分注アーム6の吐出位置6bよりも反応ディスク3の搬送方向奥側に設定される。そのため、試料分注アーム5、第1試薬分注アーム6、第2試薬分注アーム7は、正面から見てこの順に奥側に設けられている。
【0051】
第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7の回転可動領域の途中には、洗浄ユニット10が配され、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7は、モータやギア等の駆動装置の駆動に従動して洗浄ユニット10の洗浄位置6c,7cにプローブを位置させて、第1試薬又は第2試薬が付着したプローブを洗浄させる。
【0052】
撹拌ユニット8は反応ディスク3上に位置し、第2試薬分注アーム7の吐出位置7bよりも反応ディスク3の搬送方向奥側に設けられる。この撹拌ユニット8は、1サイクル毎に、撹拌位置に停止した反応管31内における被検試料+第1試薬や被検試料+第1試薬+第2試薬などの混合液を撹拌する。具体的には、撹拌ユニット8は、圧電素子と当接してこの圧電素子の弾性変化等で揺動される撹拌棒を有している。該撹拌棒を反応管31内に挿入させた上で制御部101から入力された信号を変換して圧電素子を駆動することで、混合液内で撹拌棒を揺動させる。
【0053】
測定ユニット9は反応ディスク3上に位置し、反応管31内の混合液を測定する。測定ユニット9が測光ユニットの場合は、反応管31を挟んで配置される光源と受光部を有し、例えば、混合液の吸光度を測光した後、その測定結果データを出力する。測定ユニット9が電解質測定ユニットの場合は、各電解質に選択的に応答するイオン選択性電極と一定の電位を発生する参照電極の間を計測することにより、混合液中における電解質の濃度を測定した後、その測定結果データを出力する。
【0054】
洗浄ユニット10は、反応ディスク3上、試料分注アーム5、第1試薬分注アーム6、及び第2試薬分注アーム7の洗浄位置5c,6c,7cに配置され、反応管31と各プローブを洗浄及び乾燥する。
【0055】
このような自動分析装置100における試薬の交換態様について、図2乃至図6に基づき断熱蓋13の詳細構成とともに説明する。
【0056】
図2は、断熱蓋13の詳細構成を示す図であり、(a)は可動蓋16を閉じた状態、(b)は、可動蓋16を開いて開口15を露出させた状態を示す。また、図3は、断熱蓋13の斜視図である。
【0057】
図2に示すように、可動蓋16は、モータ17の駆動に従動して試薬庫1の周方向にスライドする。モータ17は、試薬庫1の縁、可動蓋16の上方、且つ開口15の邪魔にならないように開口15とは離れた位置に配される。
【0058】
図3に示すように、このモータ17は、モータ軸に歯車17aが取り付けられている。一方、可動蓋16は、その外周が試薬庫1の中心軸1aを中心とする円弧形状を有しており、周方向に歯切りがされることによりラックギア16cが穿設されている。この歯車17aとラックギア16cとは噛み合わされている。この可動蓋16は、モータ17の駆動によって歯車17aが回転し、この回転する歯車17aとラックギア16cとの噛み合うことによって試薬庫1の中心軸1aを中心に周方向にスライドする。
【0059】
例えば、電源とモータ17との間には、これらを電気的に繋ぐHブリッジ回路のような切替スイッチが介在している。例えば、この切替スイッチを切り替えてモータ17に一方の向きに電圧を印加すると、可動蓋16が開口15から離れるようにモータ17に電流が流され、また、切替スイッチを更に切り替えてモータ17に他方の向きに電圧を印加すると、可動蓋16が開口15に向けて移動するようにモータ17に電流が逆に流される。
【0060】
図4は、可動蓋16を裏面から見た図である。また、図5は、閉じ検知センサ29bの構成を示す図である。尚、開き検知センサ29aについては閉じ検知センサ29bと同一構成につき詳細を省略する。
【0061】
可動蓋16のスライド可能範囲は、開口15の一方の半径方向に沿った縁から他方の縁までの距離である。可動蓋16は、開口15を覆う蓋部16aにスライド範囲を規制する突出片16bを一体に成型した形状を有する。スライド可能範囲は、この突出片16bと開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bとによって規制される。
【0062】
蓋部16aは、開口15と同一かそれよりも周方向に拡がった扇形状を有する。突出片16bは、可動蓋16の外周面から突出し、ステージ110の方向に折り曲げられている。この突出片16bは、モータ17の歯車17aと干渉しないように、可動蓋16の開き方向にモータ17よりも奥側に設けられている。従って、可動蓋16は、蓋部16aの外周一端から可動蓋16の開き方向に周に沿って板が延設され、突出片16bは、その先端から突出している。板の延設の長さは、可動蓋16の蓋部16aが開口15を完全に覆ったときにモータ17の立設位置よりも奥まで延びる。
【0063】
開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bは、突出片16bを検出するセンサである。図2に示すように、開き検知センサ29aは、可動蓋16の蓋部16aが開口15から完全に離れることで開口15が完全に開かれたときに突出片16bが位置する箇所に配されている。閉じ検知センサ29bは、可動蓋16の蓋部16aが開口15を完全に覆うことで開口15が完全に閉じられたときに突出片16bが位置する箇所に配されている。
【0064】
図5に示すように、この開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bは、LED等の発光素子29cと光を電気信号に変換する受光素子29dとを有する。発光素子29cと受光素子29dとは、突出片16bの軌跡を挟んで対向して配される。
【0065】
この開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bは、発光素子29cが発光した光の受光素子29dへの到達が遮られることで突出片16bを検出する。モータ17は、開き検知センサ29a又は閉じ検知センサ29bが突出片16bを検知すると、その駆動を停止する。
【0066】
即ち、可動蓋16は、蓋部16aが完全に開口15の上空を離れることで開口15を完全に露出させたとき、及び蓋部16aが完全に開口15の上空に覆い被さったときにスライドを停止する。
【0067】
図2に示すように、開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bの故障に対する備えとして、断熱蓋13は、メカストッパ機構を有する。固定蓋14は、その外周面の2箇所がメカストッパ14bとして、可動蓋16の側壁の軌跡の延長線上に突出するように膨らんでいる。このメカストッパ14bは、開口15を閉じたときの可動蓋16の閉じ方向先端の位置よりも閉じ方向奥側、開口15を開ききったときの可動蓋16の開き方向先端の位置よりも開き方向奥側に形成される。
【0068】
メカストッパ14bは、開き検知センサ29aや閉じ検知センサ29bが故障によって突出片16bを検知できなかったときに、可動蓋16の側壁と当接することで可動蓋16のスライドを物理的に止める。そして、モータ17には、開き検知センサ29aと閉じ検知センサ29bが突出片16bを検知しない限りは、開口15の開閉が十分に可能な一定時間だけ電力を供給するようにすればよい。
【0069】
図6は、断熱蓋13の開口15を開けたときの斜視図である。更に、図6に示すように、固定蓋14の開口15の半径方向に沿って延びる縁には、樋14cが設けられている。この樋14cは、可動蓋16が開くことにより開口15の縁に発生した結露が試薬容器11内に滴下することを防止する。従って、樋14cは、固定蓋14と可動蓋16のうち、より下方に位置する固定蓋14に設けることが望ましい。
【0070】
この樋14cは、試薬庫1の中心軸1aから内周及び外周の試薬容器11の吸引口の中心までの距離と同じ位置にそれぞれ設けられ、その長さは、試薬容器11の吸引口の直径と同一かそれよりも長い。樋14cは、外周及び内周の試薬容器11の各吸引口に対応して設けられてもよいし、一体としてもよい。
【0071】
また、図6に示すように、可動蓋16の外周面には鍔16dが立設している。この鍔16dは、ラックギア16cが穿設されている箇所よりも可動蓋16の上面寄りにラックギア16cに沿って立設している。この鍔16dは、歯車17aとラックギア16cの噛み合いによって押し出されようとするグリスが可動蓋16の上面に漏れ出ることを防止する。
【0072】
このような断熱蓋13の開閉は、手動又は自動のいずれにおいても制御可能となっている。まず、手動で断熱蓋13を開閉する態様について図7に基づき説明する。
【0073】
図7に示すように、自動分析装置100には、ステージ110の全体を覆う全体カバー21が取り付けられている。更に、全体カバー21には、L字状の小窓23が穿設され、L字状のサイドカバー24で開閉可能に覆われている。
【0074】
この小窓23は、第1試薬又は第2試薬の交換の際に使用される。従って、小窓23は、全体カバー21が閉じられたときに試薬庫1の開口15の上方に該当する天井壁の一部領域とその領域に隣接する側壁の一部領域が一体に切り欠かれることで形成されている。
【0075】
小窓23の開口は、試薬を出し入れ可能な面積を有する。具体的には、小窓23は、試薬を収容した試薬容器11又は試薬容器11が載置された試薬ラック12の大きさよりも広く開口している。全体カバー21の天井壁と側壁の一部を一体に切り欠くことで、即ちL字状に切り欠くことで、小窓23は、その開口面積が広く採られる。
【0076】
小窓23の直下の領域には、試薬庫1の開口15の他、ステージ110上に2つのボタンが配置されている。開閉ボタン27は、可動蓋16をスライドさせて開口15を開閉するスイッチである。ラック回転ボタン28は、試薬ラック12を回転させるボタンである。試薬の交換の際には、サイドカバー24を開いて、小窓23から開閉ボタン27を押下することにより断熱蓋13を開き、ラック回転ボタン28を押下することにより所望の試薬容器11を開口15に位置させる。
【0077】
開閉ボタン27は、上述したHブリッジ回路の切替スイッチとなる。開閉ボタン27を押下すると、モータ17に一方の向きに電圧が印加されて、可動蓋16が開口15から離れるようにモータ17に電流が流され、また、再び開閉ボタン27を押下すると、モータ17に他方の向きに電圧が印加されて、可動蓋16が開口15に向けて移動するようにモータ17に電流が逆に流される。
【0078】
ラック回転ボタン28は、例えば電源と試薬ラック12の駆動機構とを繋ぐ信号線に介在するスイッチである。ラック回転ボタン28が押下されている間、スイッチがオンとなって試薬ラック12が回転する。
【0079】
次に、自動で断熱蓋13を開閉する態様について図8乃至図10に基づき説明する。
【0080】
図8に示すように、自動分析装置100は、試薬交換部102を備えている。この試薬交換部102は、試薬を交換するローダである。試薬交換部102は、下部にステージ110へ向けて板形状の2枚のパドル102aを所定間隔へ立てて対向して有する。試薬交換部102は、この2枚のパドル102aを閉じることで、間の試薬容器11を挟み込み、この2枚のパドルを開くことで、挟み込んでいた試薬容器11を放す。
【0081】
この試薬交換部102は、レール103に沿って移動し、交換対象の試薬容器11上に位置する。レール103は、試薬庫1の開口15上を越えて中心軸1aを通るように架設されている。試薬交換部102のパドル102aの位置とレール103に取り付けられる位置がステージ110と直交する方向においてずれている場合には、その分だけレール103の架設位置は中心軸1aからずれる。
【0082】
試薬交換部102とレール103は、試薬庫1上を通るが、可動蓋16は、スライドにより開口15を開閉させるため、可動蓋16と試薬交換部102及びレール103が物理的に干渉することはない。
【0083】
可動蓋16の開閉と試薬交換部102の移動とは、そのタイミングにおいて自動分析装置100の制御部101により制御されている。図9及び図10は、この制御部101による試薬交換制御の一例を示すタイムチャートである。
【0084】
まず、交換対象の試薬容器11が試薬庫1の内周部に載置され、この交換対象の試薬容器11上に試薬交換部102が到達するまでにT1秒かかり、可動蓋16がスライドにより開口15を完全に開閉するのにT2秒かかり、T1>T2であるものとする。一方、交換対象の試薬容器11が試薬庫1の外周部に載置され、この交換対象の試薬容器11上に試薬交換部102が到達するまでにT3秒かかり、T2>T3であるものとする。また、試薬ラック12を回転させて空の試薬容器11を開口15内のレール103直下に移動させるためには、最大でT4秒かかり、T1>T3>T4であるものとする。
【0085】
図9に示すように、第1試薬分注アーム6が試薬庫1の外周部から空の試薬容器11を検出する(S01)。この空の試薬容器11の検出は、静電容量方式や電気抵抗方式等の液面検出手段を用いる。例えば、第1試薬分注アーム6のプローブと試薬容器11を載置したディスクとを電極として、プローブが液面に到達したことを電極間の電気量の変化で検知し、そのときのプローブの下降量と空と認定できる閾値とを比較する。
【0086】
空の試薬容器11が検出されると、制御部101は、可動蓋16を開く方向にスライドを開始させる(S02)。その後、(T2−T3)秒経過すると、制御部101は、試薬交換部102の移動を開始させる(S03)。更に、その後、(T3−T4)秒経過すると、制御部101は、試薬ラック12の回転を開始させる(S04)。
【0087】
そして、可動蓋16のスライド開始からT2秒が経過したときには可動蓋16の開きが開き検知センサ29aにより検知され(S05)、制御部101は、可動蓋16のスライドを停止させる(S06)。このとき、交換対象の試薬容器11はちょうど開口15内のレール103の直下に移動されて停止し(S07)、試薬交換部102はちょうど交換対象の試薬容器11上に移動して停止する(S08)。
【0088】
そうすると、制御部101は、試薬交換部102に試薬容器11を交換させ(S09)、試薬容器11の交換が終了すると、可動蓋16を閉じる方向にスライドさせる(S10)。
【0089】
また、図10に示すように、第2試薬分注アーム7が試薬庫1の内周部から空の試薬容器11を検出すると(S011)、制御部101は、試薬交換部102の移動を開始させる(S12)。
【0090】
その後、(T1−T2)秒経過すると、制御部101は、可動蓋16を開く方向にスライドを開始させる(S13)。更に、その後、(T1−T4)秒経過すると、制御部101は、試薬庫1の回転を開始させる(S14)。
【0091】
そして、可動蓋16のスライド開始からT2秒が経過したときには可動蓋16の開きが開き検知センサ29aにより検知され(S15)、制御部101は、可動蓋16のスライドを停止させる(S16)。このとき、交換対象の試薬容器11はちょうど開口15内のレール103の直下に移動されて停止し(S17)、試薬交換部102はちょうど交換対象の試薬容器11上に移動して停止する(S18)。
【0092】
そうすると、制御部101は、試薬交換部102に試薬容器11を交換させ(S19)、試薬容器11の交換が終了すると、可動蓋16を閉じる方向にスライドさせる(S20)。
【0093】
即ち、制御部101は、可動蓋16が開ききるのと同時に試薬交換部102を交換対象の試薬容器11上に位置させるタイミングで可動蓋16と試薬交換部102の駆動を開始させる。できるだけ、試薬庫1内を解放しないためである。そのため、例えば、先に試薬交換部102を交換対象上の試薬容器11上に位置させておいてから可動蓋16のスライドを開始させるようにしてもよい。
【0094】
以上のように、試薬庫1を覆う断熱蓋13を固定蓋14と可動蓋16とに分割し、固定蓋14は、少なくとも試薬容器11一つ分若しくは前記試薬ラック12一つ分の大きさで拡がり試薬庫1内に連通する試薬の交換用の開口15を有し、可動蓋16は、開口15が拡がる平面に沿ってスライド可能とした。例えば、可動蓋16は、試薬庫1の中心軸1aに軸支されて周方向にスライドする。これにより、可動蓋16が第1試薬分注アーム6や第2試薬分注アーム7側に倒れることはなく、この倒れ込みによる自動分析装置100の故障要因を回避することができる。
【0095】
試薬庫1上にレール103と該レール103に沿って移動して開口15に試薬容器11を出し入れする試薬交換部102とを自動分析装置100が有する場合、可動蓋16がこのレール103へ向けて迫り上がることはないので、このレール103や試薬交換部102と可動蓋16とが物理的に干渉することはなく、この干渉による自動分析装置100の故障要因を回避することができる。
【0096】
また、前記試薬交換手段の移動と前記可動蓋のスライドとを制御する制御手段を更に備え、試薬庫1上にレール103と該レール103に沿って移動して開口15に試薬容器11を出し入れする試薬交換部102とを自動分析装置100が有する場合、制御部101は、遅くとも可動蓋16が開口15から試薬容器11一つ分若しくは試薬ラック12一つ分を露出させた位置にスライドしたときに試薬交換部102を交換対象の試薬容器11上に位置させるようにタイミングをコントロールする。これにより、試薬交換時においても試薬庫1内の保温性を保つことができる。
【0097】
次に、断熱蓋13の変形例を説明する。まず、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7の吸引位置6a、7aの調整について説明する。図11に示すように、試薬ラック12には、金属性のピン12aが目印として定位置に立てられている。一方、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7が有するプローブの先端は電極になっており、静電容量の変化を検出することにより目印を探索する目印探索手段となっている。
【0098】
制御部101は、プローブの先端が探索したピン12aの位置から吸引位置6a、7aを決定する位置決定手段となる。
【0099】
具体的には、制御部101は、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7を縮ませて、それぞれが有するプローブを試薬庫1内に下降させた後、ピン12aが検出されるまで第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7を縦横に移動させる。
【0100】
また、制御部101は、ピン12aと試薬容器11の口の相対的な位置関係を示す情報を予め記憶しており、ピン12aが検出されると、そこから予め記憶している相対的な位置関係を示す情報が示す位置を吸引位置6a、7aとして決定し、以後、第1試薬又は第2試薬の吸引の際は、この決定した吸引位置6a、7aに第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7を移動させる。
【0101】
このように、第1試薬分注アーム6及び第2試薬分注アーム7の吸引位置6a、7aの調整のためには、プローブの先端が試薬庫1内で縦横に移動できる必要がある。
【0102】
このため、図12乃至図13に示すように、固定蓋14の吸引位置6a及び7aに該当する孔14aを含む領域は、着脱可能蓋14dとなっている。固定蓋14は、吸引位置6a及び7aに該当する領域が切り欠かれている。着脱可能蓋14dは、この切り欠きと同一形状を有しており、切り欠きに嵌め込み可能となっている。
【0103】
試薬吸引のための下降位置合わせのときには、着脱可能蓋14dを取り外すことで、プローブを試薬庫1内に下降させて移動させることによってピン12aの位置を探索させる。そして、位置合わせが終わると、断熱のために着脱可能蓋14dを切り欠きに再び嵌め込む。
【0104】
以上のように、断熱蓋13は、孔14aの領域を含む一部領域とその他の領域とに少なくとも分割され、一部領域を着脱可能蓋14dとする。これにより、断熱蓋13をまるごと取り外す必要はなくなり、試薬交換時の試薬庫1内の保温性を保つことができるとともに、作業性に優れる。
【符号の説明】
【0105】
1 試薬庫
1a 中心軸
11 試薬容器
12 試薬ラック
12a ピン
13 断熱蓋
14 固定蓋
14a 孔
14b メカストッパ
14c 樋
14d 着脱可能蓋
15 開口
16 可動蓋
16a 蓋部
16b 突出片
16c ラックギア
16d 鍔
17 モータ
17a 歯車
21 全体カバー
23 小窓
24 サイドカバー
27 開閉ボタン
28 ラック回転ボタン
29a 開き検知センサ
29b 閉じ検知センサ
29c 発光素子
29d 受光素子
3 反応ディスク
31 反応管
4 ラックサンプラ
4a 試料ラック
4b ハンドラ
5 試料分注アーム
5a 吸引位置
5b 吐出位置
5c 洗浄位置
6 第1試薬分注アーム
6a 吸引位置
6b 吐出位置
6c 洗浄位置
7 第2試薬分注アーム
7a 吸引位置
7b 吐出位置
7c 洗浄位置
8 撹拌ユニット
9 測定ユニット
10 洗浄ユニット
100 自動分析装置
101 制御部
102 試薬交換部
103 レール
110 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬が入った試薬容器、又は複数の該試薬容器を収納した試薬ラックが載置される試薬庫と、前記試薬庫上に移動して前記試薬を吸引させるとアームとを有し、被検試料に試薬を分注してその混合液を分析する自動分析装置であって、
前記試薬庫を覆うとともに、固定蓋と可動蓋に分割された断熱蓋を備え、
前記固定蓋は、少なくとも前記試薬容器一つ分若しくは前記試薬ラック一つ分の大きさで拡がり前記試薬庫内に連通する前記試薬の交換用の開口を有し、
前記可動蓋は、前記開口が拡がる平面に沿って前記固定蓋に被るようにスライド可能であること、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記可動蓋は、前記試薬庫の中心軸に軸支されて周方向に回転しながらスライドすること、
を特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記可動蓋をスライドさせる駆動手段を更に備えること、
を特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記試薬庫の外周位置に歯車を有し、
前記可動蓋は、外周に沿って穿設されたラックギアを有し、前記歯車と前記ラックギアとが噛み合うことで、前記駆動手段の駆動に従動してスライドすること、
を特徴とする請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記可動蓋は、外周に突出する突出片を有し、
前記スライドに伴う前記突出片の移動軌跡上に前記突出片を検知するセンサを2箇所に備え、
前記一のセンサは、前記可動蓋が前記開口から前記試薬容器一つ分若しくは前記試薬ラック一つ分を露出させた位置にスライドしたときに前記突出片が存在する位置に配され、
前記他のセンサは、前記可動蓋が前記開口を完全に覆った位置にスライドしたときに前記突出片が存在する位置に配されること、
を特徴とする請求項3又は4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記開口を閉じたときの前記可動蓋の閉じ方向先端の位置よりも閉じ方向奥側、及び前記開口を開ききったときの前記可動蓋の開き方向先端の位置よりも開き方向奥側にそれぞれ前記可動蓋の軌跡上に突出するメカストッパを更に備えること、
を特徴とする請求項5記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記開口と異なる位置に立設し、
前記突出片は、前記可動蓋の蓋部が前記開口を完全に覆ったときに前記駆動手段の立設位置よりも奥まで前記蓋部の外周一端から周方向に延設された位置で前記外周に突出すること、
を特徴とする請求項5又は6記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記可動蓋は、前記ラックギアに沿って前記ラックギアと前記歯車の歯に被さる鍔を有すること、
を特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記試薬容器は、上面に内部に連通する口を有し、
前記固定蓋は、前記試薬庫の中心軸を中心として前記口を通る周方向の軌跡と前記開口の縁とが交差する位置に樋を有すること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記試薬庫上に架設されたレールと、
前記レールに沿って移動して前記開口に前記試薬容器を出し入れする試薬交換手段と、
を更に有すること、
を特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記試薬交換手段の移動と前記可動蓋のスライドとを制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段は、遅くとも前記可動蓋が前記開口から前記試薬容器一つ分若しくは前記試薬ラック一つ分を露出させた位置にスライドしたときに前記試薬交換手段を交換対象の前記試薬容器上に位置させること、
を特徴とする請求項10記載の自動分析装置。
【請求項12】
被検試料と試薬とを分注してその混合液を分析する自動分析装置であって、
前記試薬が入った試薬容器を収納する試薬庫と、
前記試薬を吸引及び吐出するプローブを有し、前記プローブを前記試薬の吸引位置に移動及び上下動させるアームと、
前記試薬庫内に設けられ、前記吸引位置を決定するための目印と、
前記アームに設けられ、前記試薬庫内に降ろされて移動することで前記目印を探索する目印探索手段と、
前記位置決定手段が探索した前記目印の位置に基づき、前記吸引位置を決定する位置決定手段と、
前記試薬庫を覆い、前記吸引位置を含み前記試薬庫に連通する孔領域を有する蓋と、
を備え、
前記蓋は、前記孔領域を含む一部領域を覆う蓋とその他の領域を覆う蓋とに少なくとも分割され、
前記一部領域を覆う蓋は、前記目的探索手段が前記試薬庫内に降ろされるときに着脱可能であること、
を特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−249601(P2010−249601A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98033(P2009−98033)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】