説明

自動原稿送り装置及びそれを備える原稿読取装置

【課題】原稿の裏表を反転させる経路を設けることで両面を読取可能であって、コンパクトであり、かつ製造コストを抑えた構成の自動原稿送り装置を提供する。
【解決手段】ADF(自動原稿送り装置)は、導入経路と、第1反転経路及び第2反転経路と、両面用排出経路と、を備える。導入経路は、読取位置の左側から右側へ原稿を案内する。第1反転経路及び第2反転経路は、導入経路と接続され、原稿を反転させて読取位置の右側から左側へ原稿を案内する。両面用排出経路は、第1反転経路及び第2反転経路と接続され、第2面の画像情報が読み取られた原稿が、読取位置よりも右側で排出されるように、当該原稿を案内する。また、導入経路は、左側に膨らむように湾曲した導入湾曲経路を読取位置よりも左側に有している。導入経路と両面用排出経路との共通部分である共通湾曲経路421は、読取位置から導入湾曲経路の最も膨らんだ箇所までを少なくとも含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動原稿送り装置、及び、当該自動原稿送り装置で原稿を搬送しながら画像情報の読み取りを行う原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿の画像情報を読み取る原稿読取装置において、自動原稿送り装置を備える構成が知られている。自動原稿送り装置とは、複数枚重ねられた原稿を1枚ずつ分離して搬送を行い、画像情報を読み取る読取位置を原稿が通過するように案内するものである。
【0003】
この自動原稿送り装置を備えた原稿読取装置において、自動で原稿の両面(第1面及び第2面)を読み取るための様々な構成が知られている。例えば、第1面用と第2面用にそれぞれ読取部を備え、ワンパスで両面読取りを行う構成、及び、原稿の搬送方向を逆転させる、いわゆるスイッチバック機能を備えた構成等が知られている。上記の他にも、原稿の裏表を反転させる経路を設けることで1つの読取部で原稿の両面を読み取らせる構成が知られている。特許文献1は、この種の自動原稿送り装置を開示する。
【0004】
特許文献1が開示する自動原稿送り装置は、導入パスと反転パスと排出パスとを備えている。導入パスは、一側に膨らんだ逆U字状の経路であり、原稿載置台(給紙トレイ)にセットされた原稿を、当該原稿載置台の下方に位置する読取位置まで案内する経路である。この導入パスによって読取位置に案内されて第1面が読み取られた原稿は、次に、反転パスに沿って搬送される。反転パスは、他側に膨らんだ逆U字状の経路を有しており、原稿の裏表を反転させて再び読取位置まで案内する経路である。この反転パスによって読取位置に案内されて第2面が読み取られた原稿は、次に、排出パスに沿って搬送される。排出パスは、導入パスと同一方向(一側)に膨らんだ経路を有しており、導入パスよりも小さいカーブを描きながら読取位置の上方を通過するように原稿を案内し、更に反転パスの上方を通過させて当該原稿を排紙トレイまで案内する経路である。
【0005】
この構成により、1つの読取部で、かつスイッチバック機能を備えることなく、原稿の両面を読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2828866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、原稿の裏表を反転させる経路を設けることで両面を読取可能な構成は、一般的には、他の構成(2つの読取部を備える構成及びスイッチバック機能を備える構成)に比べて経路が長くなる。
【0008】
そのため、搬送ローラ及び伝達部材を多数備える必要があり、製造コストが高くなる。また、この構成は、経路が複雑になることが多く、経路が重ねて配置されることがある。
【0009】
例えば、特許文献1で示す自動原稿送り装置は、読取位置の左側において、導入パスと排出パスが前記一側に重ねて(並列で)配置されている。そのため、この自動原稿送り装置は、装置の左右方向のサイズが大きくなってしまう。また、読取位置の近傍の経路が大きく湾曲していると読取精度が低下することがあり、この読取精度の低下を防止するために導入パス及び排出パスの曲率をある程度大きくする必要がある。しかし、経路の曲率を大きくした場合、前記一側に膨らんでしまうため、装置の左右方向のサイズを小さくする際の妨げとなっている。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、原稿の裏表を反転させる経路を設けることで両面を読取可能であって、コンパクトであり、かつ製造コストを抑えた構成の自動原稿送り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の自動原稿送り装置が提供される。即ち、この自動原稿送り装置は、導入経路と、反転経路と、排出経路と、を備える。前記導入経路は、供給された原稿の第1面が読み取られるように、読取位置の一側から他側へ原稿を案内する。前記反転経路は、前記導入経路と接続され、第1面の画像情報が読み取られた原稿の第2面が読み取られるように、当該原稿を反転させて前記読取位置の前記他側から前記一側へ原稿を案内する。前記排出経路は、前記反転経路と接続され、第2面の画像情報が読み取られた原稿が、前記読取位置よりも前記他側で排出されるように、当該原稿を案内する。前記導入経路は、前記一側に膨らむように湾曲した導入湾曲経路を前記読取位置よりも前記一側に有している。前記導入経路と前記排出経路は一部が共通であり、当該共通部分である共通湾曲経路は、前記読取位置から前記導入湾曲経路の最も膨らんだ箇所までを少なくとも含んでいる。
【0013】
これにより、導入経路と排出経路とで構成部材を一部共通にすることができるため、自動原稿送り装置を低コストにすることができる。また、導入湾曲経路の少なくとも一部において、導入経路と排出経路とが重ねて配置されていないため、導入湾曲経路が膨らむ方向での自動原稿送り装置のサイズを小さくすることができる。
【0014】
前記の自動原稿送り装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記排出経路は、前記一側に膨らむように湾曲した排出湾曲経路を前記読取位置よりも前記一側に有している。そして、前記排出湾曲経路は、前記導入湾曲経路よりも短い。
【0015】
これにより、排出湾曲経路に対して共通湾曲経路が占める割合が大きくなるため、自動原稿送り装置を一層低コストにすることができる。
【0016】
前記の自動原稿送り装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この自動原稿送り装置は、1つの駆動ローラと、前記駆動ローラに従動して回転する2つの従動ローラと、で構成された三連ローラを備える。前記三連ローラは、前記共通湾曲経路から前記導入経路と前記排出経路とに分岐する箇所に配置される。そして、前記共通湾曲経路と連続しており、かつ原稿の導入にのみ用いられる経路を導入専用経路と称し、前記共通湾曲経路と連続しており、かつ原稿の排出にのみ用いられる経路を排出専用経路と称したときに、前記三連ローラは、前記共通湾曲経路から前記導入専用経路と前記排出専用経路とに分岐する箇所に配置される。
【0017】
これにより、経路の分岐箇所は配置スペースが限られていることから、1つの駆動ローラのみで2つの経路の原稿を搬送可能な三連ローラを有効に活用することができる。更に、導入専用経路と排出専用経路とでは原稿搬送方向が互いに逆方向であるため、2つの従動ローラの回転方向が互いに逆方向となる三連ローラを用いることが好適である。
【0018】
前記の自動原稿送り装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この自動原稿送り装置は、前記共通湾曲経路から前記導入経路と前記排出経路とに分岐する箇所に可撓性のガイドフィルムを備える。そして、前記共通湾曲経路と連続しており、かつ原稿の導入にのみ用いられる経路を導入専用経路と称したときに、前記ガイドフィルムは、前記共通湾曲経路から前記導入専用経路に原稿が導入されないように案内する。
【0019】
これにより、簡単な構成で、共通湾曲経路を搬送される原稿を適切な方向に案内することができる。
【0020】
本発明の第2の観点によれば、前記の自動原稿送り装置と、前記読取位置を通過する原稿の画像情報を読み取る読取部と、を備えた構成の原稿読取装置が実現できる。
【0021】
これにより、コンパクトであって、かつ製造コストを抑えた構成の原稿読取装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の外観斜視図。
【図2】イメージスキャナ装置の構成を示す正面断面図。
【図3】導入経路及び片面用排出経路を説明する模式図。
【図4】第1反転経路を説明する模式図。
【図5】第2反転経路を説明する模式図。
【図6】両面用排出経路を説明する模式図。
【図7】共通湾曲経路を説明する模式図。
【図8】共通湾曲経路に沿って搬送される原稿を案内する部材及びこの部材に形成されるパーティングラインを示す正面拡大図。
【図9】共通湾曲経路に沿って搬送される原稿を案内する部材を示す斜視図。
【図10】ガイドフィルムの構成を示す正面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る複合機1の外観斜視図である。
【0024】
複合機1は、コピー機能及びファクシミリ機能を備えており、ブックスキャナ及びオートドキュメントフィードスキャナとして機能するイメージスキャナ装置(原稿読取装置)11を、当該複合機1の上部に備えている。また、複合機1は、コピー部数、ファクシミリ送信先及び原稿読取等を指示するための操作パネル12を備える。
【0025】
更に、複合機1は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成部等を内蔵した複合機本体13と、前記用紙を順次供給する給紙カセット14と、を備えている。なお、複合機本体13は、通信回線を介して画像情報を伝送するための図略の送受信部等を備える。
【0026】
次に、図2を参照して、複合機1が備えるイメージスキャナ装置11について説明する。図2は、イメージスキャナ装置11の構成を示す正面断面図である。なお、本実施形態における正面図は、搬送される原稿の幅方向で見た図と表現することもできる。
【0027】
図2に示すように、イメージスキャナ装置11は、原稿台カバー21と、プラテンガラス22と、コンタクトガラス23と、を備えている。この原稿台カバー21には自動原稿送り装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)24が備えられている。また、イメージスキャナ装置11は、プラテンガラス22及びコンタクトガラス23の下方に、原稿100の画像情報を読み取るためのスキャナユニット25を備えている。
【0028】
スキャナユニット25は、原稿台の内部で左右方向に移動可能なキャリッジ110を備えている。このキャリッジ110には、光源111と、複数の反射ミラー112と、集光レンズ113と、電荷結合素子(CCD)114と、が配置されている。光源111は読取原稿に対して光を照射し、読取原稿からの反射光は、複数の反射ミラー112で反射した後、集光レンズ113を通過して収束してCCD114の表面に結像する。そして、CCD114は、入射された収束光を電気信号に変換して出力する。
【0029】
また、前記原稿台カバー21が備えるADF24は、図2に示すように、当該原稿台カバー21の上部に設けられた給紙トレイ52と、この給紙トレイ52の下方に設けられた排紙トレイ53と、を備える。また、ADF24の内部には、給紙トレイ52と排紙トレイ53とを繋ぐ原稿搬送経路40が構成されている。
【0030】
ユーザが図1に示す操作パネル12を操作して、イメージスキャナ装置11をオートドキュメントフィードスキャナとして使用するように指示すると、給紙トレイ52に重ねてセットされた原稿100が、原稿搬送経路40に沿って1枚ずつ搬送される。そして、原稿搬送経路40に沿って搬送される原稿100がコンタクトガラス23のガラス面(読取位置)を通過するときに、この原稿100の画像情報がスキャナユニット25によって読み取られる。その後、原稿100は、原稿搬送経路40に沿って搬送されて、排紙トレイ53へ排出される。
【0031】
一方、イメージスキャナ装置11をブックスキャナとして使用する場合は、読み取るべきブック原稿をユーザがプラテンガラス22上に載置する。そして、ADF24の下部に配置されたプラテンシート51によって、ブック原稿を上側から押圧して、動かないように固定する。この状態で、左右方向に移動しながらスキャナユニット25が読取りを行うことで、ブック原稿の画像情報が読み取られる。
【0032】
次に、ADF24の内部の構成を詳細に説明する。なお、以下の説明において、正面視でみたときに給紙トレイ52がある側を単に「右側」と称し、正面視におけるその反対側を単に「左側」と称することがある。
【0033】
本実施形態のADF24は、原稿100の片面(第1面)のみを読み取るときと、原稿100の両面(第1面及び第2面)を読み取るときと、で原稿100の搬送される経路が異なるように構成されている。初めに、原稿100の片面のみを読み取るときの経路と、その経路に配置される部材について、図2及び図3を参照して説明する。図3は、導入経路41及び片面用排出経路43を説明する模式図である。
【0034】
原稿100の片面のみを読み取るときは、図3に示すように、原稿100を読取位置まで案内するための導入経路41と、原稿100を読取位置から排紙トレイ53まで案内するための片面用排出経路43と、に沿って原稿100が搬送される。
【0035】
導入経路41には、上流側から順に、ピックアップローラ30と、分離ローラ31と、レジストローラ32と、三連ローラ33と、搬送ローラ34と、が配置されている。以下に、上流側から下流側の順で、導入経路41の経路上に配置される各部の構成について説明する。
【0036】
導入経路41の上流側の端部近傍には、ピックアップローラ30及び分離ローラ31が配置されている。ピックアップローラ30は、分離ローラ31の回転軸を中心にして回動可能に構成されており、ADF24の非動作時においては、図2における上側にピックアップローラ30が保持されている。一方、原稿100を繰り込む際はピックアップローラ30が下方に回動し、給紙トレイ52に重ねてセットされている原稿100のうち、最上層にある原稿100の端部に接触する。この状態でピックアップローラ30が回転することによって、給紙トレイ52上の最上層の原稿100が分離ローラ31へ搬送される。
【0037】
ピックアップローラ30の駆動によって分離ローラ31へ送られた原稿100は、回転駆動する分離ローラ31によって1枚ずつ分離された後に、下流側に配置されたレジストローラ32へ搬送される。
【0038】
レジストローラ32は、対向するローラとともに、搬送されてくる原稿100の先端部を一時的に止めて弛ませ、所定時間後に弛みを除去しつつ下流側に搬送する。これにより、原稿100の斜行が矯正される。レジストローラ32を通過した原稿100は、下流側に配置された三連ローラ33へ搬送される。
【0039】
なお、分離ローラ31から三連ローラ33のやや上流側までの導入経路41は、直線状の経路となっている。
【0040】
三連ローラ33は、中央に配置される駆動ローラ331と、この駆動ローラ331を挟み込むように上下に配置される従動ローラ332,333と、で構成されている。導入経路41に沿って搬送される原稿100は、駆動ローラ331とその上方に配置される従動ローラ332との間を通過して左斜め下側へ搬送される。三連ローラ33を通過した原稿100は、下流側に配置された搬送ローラ34へ搬送される。なお、駆動ローラ331の下方に配置される従動ローラ333は、従動ローラ332と回転方向が逆となっており、駆動ローラ331と従動ローラ333との間を通過する原稿100を右側へ搬送することができる。
【0041】
搬送ローラ34は、対向するローラとともに原稿100をニップして回転することで、この原稿100を右斜め下側(読取位置側)へ搬送する。そして、原稿100が前記読取位置を通過するときに、スキャナユニット25によって第1面の画像情報が読み取られる。なお、この搬送ローラ34は回転方向を切替可能に構成されており、逆方向に回転することで、原稿100を左斜め上側(三連ローラ33側)へ搬送することができる。
【0042】
なお、三連ローラ33のやや上流側から読取位置までの導入経路41は、左側に膨らんだ(左側に凸となるように湾曲した)経路(図3に示す導入湾曲経路411)となっている。
【0043】
次に、片面用排出経路43について説明する。片面用排出経路43には、上流側から順に、三連ローラ35と、搬送ローラ36と、共通ローラ38及び対向ローラ39と、が配置されている。以下に、上流側から下流側の順で、片面用排出経路43の経路上に配置される各部の構成について説明する。
【0044】
読取位置のやや下流側には上下に分岐する箇所があり、この分岐箇所の近傍には三連ローラ35が配置されている。この三連ローラ35は、中央に配置されるレジストローラ351と、レジストローラ351を挟み込むように上下に配置される従動ローラ352,353と、で構成されている。スキャナユニット25によって画像情報が読み取られた原稿100は、レジストローラ351とその上方に配置される従動ローラ352との間を通過して右斜め上側へ搬送される。この三連ローラ35を通過した原稿100は、下流側に配置された搬送ローラ36によって、この搬送ローラ36の右斜め下側に位置する共通ローラ38へ搬送される。なお、このレジストローラ351は、前記レジストローラ32と同等の構成となっており、レジストローラ351とその下方に配置される従動ローラ353との間を左斜め下側へ搬送される原稿100の斜行を矯正することができる。
【0045】
共通ローラ38は、対向するように配置された対向ローラ39とともに原稿100をニップして回転することで、この原稿100を右側へ搬送して、排紙トレイ53に排出する。以上のようにして、給紙トレイ52にセットされた原稿100の片面のみの画像情報が読み取られる。なお、この共通ローラ38は回転方向を切替可能に構成されており、原稿100の排出を行うときと逆方向に回転することで、原稿100を左側(読取位置側)へ搬送することができる。
【0046】
次に、原稿100の両面を読み取るときの経路について、図2、及び図4から図6までを参照して説明する。図4は、第1反転経路45を説明する模式図である。図5は、第2反転経路46を説明する模式図である。図6は、両面用排出経路47を説明する模式図である。
【0047】
原稿100の両面を読み取るときにおいても、原稿100の片面のみを読み取るときと同様に、給紙トレイ52にセットされた原稿が前記導入経路41に沿って読取位置まで搬送される。そして、原稿100の第1面の画像情報がスキャナユニット25によって読み取られる。また、本実施形態のADF24は、原稿100の搬送方向の長さ(原稿長さ)を検出可能に構成されており、検出された原稿長さに基づいて図略の経路ガイド等を操作することで、導入経路41の次に原稿100が搬送される経路を切替可能に構成されている。
【0048】
初めに、原稿長さが短い場合に原稿100が搬送される経路について説明する。この場合の原稿100は、導入経路41に沿って読取位置まで搬送された後に、図4に示す第1反転経路(反転経路)45に沿って搬送されるように構成されている。この第1反転経路45は、上流側から順に、第1反転前経路451と、第1反転中経路452と、第1反転後経路453と、から構成されている。
【0049】
第1反転前経路451には、上流側から順に、三連ローラ35と搬送ローラ36とが配置されている。第1反転前経路451に沿って搬送される原稿100は、片面用排出経路43と同様に、レジストローラ351とその上方に配置される従動ローラ352との間を通過して右斜め上側へ搬送される。そして、原稿100は、搬送ローラ36によって、右方向へ搬送されて第1反転中経路452へ搬送される。
【0050】
第1反転中経路452は、途中までは片面用排出経路43と同様に、右斜め下方へ原稿100を案内する。しかし、その途中の分岐箇所から後は、原稿100が左斜め下方へ搬送されるように案内する。この第1反転中経路452は、右側に膨らんだ(右側に凸となるように湾曲した)経路となっている。この第1反転中経路452に沿って搬送されることで、原稿100の裏表が反転する。つまり、第1反転中経路452に沿って搬送される前までは下側(スキャナユニット25側)を向いていた第1面が、第1反転中経路452に沿って搬送された後は、上側を向くようになる。そして、第1反転中経路452に沿って搬送された原稿100は、第1反転後経路453へ搬送される。
【0051】
第1反転後経路453には、上流側から順に、搬送ローラ37と三連ローラ35とが配置される。第1反転後経路453に沿って搬送される原稿100は、搬送ローラ37によって左側へ搬送されて、三連ローラ35のレジストローラ351によって斜行が矯正された後に、読取位置を通過する。このようにして、原稿長さが短い場合の原稿100を反転させている。
【0052】
次に、原稿長さが長い場合の原稿100を反転させる経路について説明する。ここで、原稿長さが長い場合とは、原稿長さが第1反転経路45の長さと同等か、原稿長さの方が長い場合を意味する。仮に、原稿長さが長い原稿100を第1反転経路45に沿って搬送した場合、原稿100の後端部が読取位置にまだ残っている状態で反転後の原稿100の先端部が読取位置を通過しようとするため、原稿100が重なってしまい、紙詰まりを起こしてしまう。そのため、図5に示すように、原稿長さが長い場合における原稿100が通過する第2反転経路(反転経路)46は、第1反転経路45よりも長く構成されている。
【0053】
第2反転経路46は、第2反転前経路461と、第2反転中経路462と、第2反転後経路463と、から構成される。第2反転前経路461は、第1反転前経路451よりも更に右側へ延びている。第2反転中経路462は、第1反転中経路452と同様に、右側に膨らんだ(右側に凸となるように湾曲した)経路を有している。第2反転後経路463は、第1反転後経路453よりも更に右側へ延びている。
【0054】
なお、第2反転後経路463が原稿100を左側へ搬送するときに共通ローラ38を経由するが、前述のように共通ローラ38は回転方向を切替可能であるため、共通ローラ38を左側へ搬送することができる。このように共通ローラ38は、排出ローラとしての機能と搬送ローラとしての機能とを備えている。このようにして、原稿長さが長い場合の原稿100を反転させている。
【0055】
そして、第1反転経路45又は第2反転経路46によって反転され、第2面の画像情報が読み取られた原稿100は、図6に示す両面用排出経路(排出経路)47へ搬送される。
【0056】
両面用排出経路47に沿って搬送される原稿100は、読取位置を左側へ通過した後に、搬送ローラ34によって左斜め上側へ搬送される。そして、原稿100は、駆動ローラ331とその下方に配置される従動ローラ333との間を通過して右方向へ搬送される。
【0057】
なお、読取位置から三連ローラ33までの両面用排出経路47は、左側に膨らんだ(左側に凸となるように湾曲した)経路(図6に示す排出湾曲経路471)となっている。なお、導入湾曲経路411に沿って搬送される原稿100と、排出湾曲経路471に沿って搬送される原稿100とでは、原稿100の搬送方向が互いに逆方向となっている。この点、本実施形態の搬送ローラ34は回転方向を切替可能であり、更に、従動ローラ332と従動ローラ333の回転方向が互いに逆方向となるため、上記の双方向搬送に対応している。
【0058】
そして、両面用排出経路47に沿って搬送され、三連ローラ33を通過した原稿100は、右方向に搬送され、搬送ローラ36を経由した後に、右斜め下方へ搬送される。そして、片面用排出経路43に沿って搬送される原稿100と同様に、共通ローラ38及び対向ローラ39によって、排紙トレイ53に排出される。なお、搬送ローラ36のやや下流の分岐箇所から共通ローラ38のやや上流の分岐箇所までの両面用排出経路47は、第2反転前経路461と第2反転後経路463とを接続している(図6に示す接続経路472)。以上のように、給紙トレイ52にセットされた原稿100の両面の画像情報が読み取られる。
【0059】
次に、導入経路41と両面用排出経路47とで共通する部分の経路について、主に図7を参照して説明する。図7は、共通湾曲経路421を説明する模式図である。
【0060】
図3及び図6から明らかなように、導入経路41と両面用排出経路47とは、共通する経路(図7に示す共通湾曲経路421)を有している。図7に示すように、この共通湾曲経路421は、読取位置から、導入湾曲経路411の最も左側に膨らんだ箇所を超えて、三連ローラ33の手前にある分岐箇所に至るまでの経路として構成されている。この分岐箇所では、図7に示すように、共通湾曲経路421から、導入専用経路491と排出専用経路492とに分岐している。導入専用経路491とは、導入経路41のうち、原稿100の導入にのみ用いられる部分である。排出専用経路492とは、両面用排出経路47のうち、原稿100の排出にのみ用いられる部分である。なお、共通湾曲経路421は、導入湾曲経路411と排出湾曲経路471とで共通する経路と表現することもできる。
【0061】
次に、この共通湾曲経路421に沿って搬送される原稿100を案内する構成について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、共通湾曲経路421に沿って搬送される原稿100を案内する部材及びこの部材に形成されるパーティングライン615を示す正面拡大図である。図9は、共通湾曲経路421に沿って搬送される原稿100を案内する部材を示す斜視図である。
【0062】
図8(a)に示すように、共通湾曲経路421の左側(外側)には、原稿100を案内するための外ガイド部材65,66が配置される。外ガイド部材65,66のそれぞれは図略の突起及び溝を備え、この突起が相手側の外ガイド部材の溝に入り込むことで、2つの外ガイド部材65,66が一部重複するように配置されている。
【0063】
また、図8(a)及び図9に示すように、共通湾曲経路421の右側(内側)には、原稿100を案内するために、上ガイド部材61と、中央ガイド部材62と、下ガイド部材63と、が互いに重なり合うように配置される。なお、この上ガイド部材61と下ガイド部材63とは重なり合わせる必要はなく、上ガイド部材61と下ガイド部材63とを離して配置しても良い。
【0064】
上ガイド部材61及び下ガイド部材63は、中央ガイド部材62の上方及び下方を搬送される原稿100を案内するための合成樹脂製のガイドである。上ガイド部材61及び下ガイド部材63の接続箇所においてそれぞれのガイド部材は図略の突起及び溝を備え、この突起が相手側のガイド部材の溝に入り込むことで、2つのガイド部材が一部重複するように配置され、原稿100の損傷及びジャム等を防止している。
【0065】
また、この上ガイド部材61及び下ガイド部材63は、金型を用いて成形されており、その抜き方向が上下方向となっている。従って、この上ガイド部材61及び下ガイド部材63のパーティングライン615,635は、その大部分が、共通湾曲経路421の幅方向に平行な方向に向けられる。
【0066】
図8(b)には、上ガイド部材61のパーティングライン615の例が示されている。図8(b)に示すように、パーティングライン615の部分には成形過程でバリ等の突起物が形成されることがあり、この突起物に原稿100が引っ掛かると、原稿100の損傷及びジャム等の原因となる。一方で、パーティングライン615のバリ取り等の処理を共通湾曲経路421の幅方向全体にわたって行うこととすると、製造コストを増大させる原因となってしまう。
【0067】
なお、図8(b)の鎖線のように、上ガイド部材61においてパーティングライン615に相当する位置に段差を形成するように構成すると、上記の突起物が原稿搬送に悪影響を与えることは少なくなる。しかしながら、共通湾曲経路421は原稿を双方向に搬送する経路であるため、段差をどの向きに付けたとしても、原稿100が上向き又は下向きに搬送されるときに、当該段差に引っ掛かる場合が発生してしまう。例えば、図8(b)の鎖線のように段差を形成した場合は、下から上に原稿100が搬送されるときに、原稿100の先端が段差に引っ掛かるおそれがある。
【0068】
この点、本実施形態では、上ガイド部材61と下ガイド部材63を覆うように中央ガイド部材62が配置されている。この中央ガイド部材62は、共通湾曲経路421の最も左側に膨らんだ箇所の近傍を搬送される原稿100をガイドするための、合成樹脂製のガイドとして構成されている。そして、中央ガイド部材62は、上ガイド部材61及び下ガイド部材63のパーティングライン615,635よりも、共通湾曲経路421側(左側)へ向かって突出するように配置されている。従って、原稿100が上ガイド部材61及び下ガイド部材63のパーティングライン615,635に接触することを中央ガイド部材62によって防止できるので、原稿100が上下の何れの向きに搬送されても引っ掛かりを生じない構成を実現することができる。
【0069】
なお、中央ガイド部材62も金型を用いて成形されているが、その抜き方向は図8における左右方向に設定されており、また、そのパーティングライン(図示せず)は共通湾曲経路421の内周側に配置されている。即ち、中央ガイド部材62のパーティングラインが、上ガイド部材61及び下ガイド部材63よりも共通湾曲経路側に出ることがないレイアウトとなっている。従って、原稿100が中央ガイド部材62のパーティングラインに引っ掛かることも防止されている。
【0070】
中央ガイド部材62の上側には、複数の溝621が形成されている。一方、上ガイド部材61には、共通湾曲経路421側に突出するリブ611が形成されている。このリブ611の間隔は溝621が形成されている間隔と一致しており、リブ611が上側の溝621に入り込んでいる。これにより、上ガイド部材61と中央ガイド部材62とを一部重複させて配置することができる。なお、同様に、中央ガイド部材62の下側には複数の溝621が形成されており、この溝621に、下ガイド部材63に形成されたリブ631が入り込むことで、下ガイド部材63と中央ガイド部材62とを一部重複させて配置することができる。
【0071】
次に、共通湾曲経路421から導入専用経路491と排出専用経路492とに分岐する箇所で原稿100を適切に案内する構成について、図10を参照して説明する。図10は、ガイドフィルム69の構成を示す正面拡大図である。
【0072】
この分岐箇所には、可撓性のガイドフィルム69が取り付けられている。具体的には、図10に示すように、排出専用経路492の上側をガイドする部材にガイドフィルム69の端部が貼り付けられている。
【0073】
このガイドフィルム69は、通常は図10に実線で示す位置に配置されている。そのため、共通湾曲経路421に沿って右斜め上側に搬送される原稿100がガイドフィルム69に当たった場合においても、ガイドフィルム69に沿って搬送されるため、原稿100が導入専用経路491に入ることを防止できる。一方、導入専用経路491に沿って左斜め下側に搬送される原稿100は、このガイドフィルム69を図10に2点鎖線で示す位置に押しのけることができるため、原稿100を共通湾曲経路421に導入させることができる。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態のADF24は、導入経路41と、第1反転経路45及び第2反転経路46と、両面用排出経路47と、を備える。導入経路41は、供給された原稿100の第1面が読み取られるように、読取位置の左側から右側へ原稿100を案内する。第1反転経路45及び第2反転経路46は、導入経路41と接続され、第1面の画像情報が読み取られた原稿100の第2面が読み取られるように、原稿100を反転させて読取位置の右側から左側へ原稿100を案内する。両面用排出経路47は、第1反転経路45及び第2反転経路46と接続され、第2面の画像情報が読み取られた原稿100が、読取位置よりも右側で排出されるように、当該原稿100を案内する。また、導入経路41は、左側に膨らむように湾曲した導入湾曲経路411を読取位置よりも左側に有している。導入経路41と両面用排出経路47は一部が共通であり、当該共通部分である共通湾曲経路421は、読取位置から導入湾曲経路411の最も膨らんだ箇所までを少なくとも含んでいる。
【0075】
これにより、共通湾曲経路421に沿って搬送される原稿100を案内する部材、搬送ローラ34及びその駆動伝達部材を、導入経路41と、両面用排出経路47と、で共通にすることができるため、ADF24を低コストにすることができる。また、導入湾曲経路411の少なくとも一部において、導入経路41と両面用排出経路47とが重ねて(並列で)配置されていないため、幅方向(左右方向)でのADF24のサイズを小さくすることができる。
【0076】
また、本実施形態のADF24において、両面用排出経路47は、左側に膨らむように湾曲した排出湾曲経路471を読取位置よりも左側に有している。そして、排出湾曲経路471は、導入湾曲経路411よりも短い。
【0077】
これにより、排出湾曲経路471に対して共通湾曲経路421が占める割合が大きいため、ADF24を一層低コストにすることができる。
【0078】
また、本実施形態のADF24において、ADF24は、駆動ローラ331と、駆動ローラ331に従動して回転する従動ローラ332,333と、で構成された三連ローラ33を備える。三連ローラ33は、共通湾曲経路421から導入専用経路491と排出専用経路492とに分岐する箇所に配置される。
【0079】
これにより、分岐箇所は配置スペースが限られていることから、1つの駆動ローラ331のみで2つの経路の原稿100を搬送可能な三連ローラ33を有効に活用することができる。更に、導入専用経路491と排出専用経路492とでは原稿100搬送方向が互いに逆方向であるため、2つの従動ローラ332,333の回転方向が互いに逆方向となる三連ローラ33を用いることが好適である。
【0080】
また、本実施形態のADF24においては、共通湾曲経路421から導入専用経路491と排出専用経路492とに分岐する箇所に可撓性のガイドフィルム69を備える。ガイドフィルム69は、共通湾曲経路421から導入専用経路491に原稿100が導入されないように案内する。
【0081】
これにより、簡単な構成で、共通湾曲経路421を搬送される原稿100を適切な方向に案内することができる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0083】
上記実施形態では、上ガイド部材61、中央ガイド部材62、及び下ガイド部材63は導入湾曲経路411の内側に配置されている。しかし、上記の部材が配置される箇所は、双方向に通紙が行われかつ湾曲する経路であれば良く、導入湾曲経路411の内側に限定されない。
【0084】
上記実施形態では、中央ガイド部材に溝621が形成されているが、これに代えて、中央ガイド部材62をリブが形成される構成にして、このリブが入るような溝を上ガイド部材61及び下ガイド部材63に形成する構成にしても良い。
【0085】
上記実施形態では、読取部に縮小光学系のスキャナユニット25を採用しているが、この構成に代えて、読取部として例えば密着型イメージセンサ等を使用する構成に変更することができる。
【0086】
上記実施形態では、イメージスキャナ装置11は複合機1の一部として備えられているが、この構成に代えて、単体のイメージスキャナ装置として構成することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 複合機
11 イメージスキャナ装置(原稿読取装置)
24 ADF(自動原稿送り装置)
33 三連ローラ
41 導入経路
45 第1反転経路(反転経路)
46 第2反転経路(反転経路)
47 両面用排出経路(排出経路)
411 導入湾曲経路
421 共通湾曲経路
471 排出湾曲経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された原稿の第1面が読み取られるように、読取位置の一側から他側へ原稿を案内する導入経路と、
前記導入経路と接続され、第1面の画像情報が読み取られた原稿の第2面が読み取られるように、原稿を反転させて前記読取位置の前記他側から前記一側へ当該原稿を案内する反転経路と、
前記反転経路と接続され、第2面の画像情報が読み取られた原稿が、前記読取位置よりも前記他側で排出されるように、当該原稿を案内する排出経路と、
を備え、
前記導入経路は、前記一側に膨らむように湾曲した導入湾曲経路を前記読取位置よりも前記一側に有しており、
前記導入経路と前記排出経路は、一部が共通であり、
当該共通部分である共通湾曲経路は、前記読取位置から前記導入湾曲経路の最も膨らんだ箇所までを少なくとも含むことを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動原稿送り装置であって、
前記排出経路は、前記一側に膨らむように湾曲した排出湾曲経路を前記読取位置よりも前記一側に有しており、
前記排出湾曲経路は、前記導入湾曲経路よりも短いことを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動原稿送り装置であって、
1つの駆動ローラと、前記駆動ローラに従動して回転する2つの従動ローラと、で構成された三連ローラを備え、
前記共通湾曲経路と連続しており、かつ原稿の導入にのみ用いられる経路を導入専用経路と称し、前記共通湾曲経路と連続しており、かつ原稿の排出にのみ用いられる経路を排出専用経路と称したときに、
前記三連ローラは、前記共通湾曲経路から前記導入専用経路と前記排出専用経路とに分岐する箇所に配置されることを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自動原稿送り装置であって、
前記共通湾曲経路から前記導入経路と前記排出経路とに分岐する箇所に可撓性のガイドフィルムを備え、
前記共通湾曲経路と連続しており、かつ原稿の導入にのみ用いられる経路を導入専用経路と称したときに、
前記ガイドフィルムは、前記共通湾曲経路から前記導入専用経路に原稿が導入されないように案内することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自動原稿送り装置と、
前記読取位置を通過する原稿の画像情報を読み取る読取部と、
を備えることを特徴とする原稿読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−225328(P2011−225328A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96484(P2010−96484)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】