説明

自動変速機の変速操作機構及びその組立方法

【課題】マニュアルバルブの操作部をバルブボディ上の任意の位置に配置できるようにする。
【解決手段】係合ピン18とマニュアルバルブ40とを連結する連結部材50は、係合ピン18を挿入係合させる係合穴52を設けた上部51と、マニュアルバルブ40の操作部42に係合する係合溝56を設けた下部55と、上部51と下部55とを接続してなる接続部53とを有し、接続部53の幅寸法が下部55の幅寸法よりも小さな幅寸法に設定されている。そして、バルブボディ31のバルブ収容溝35とカバープレート33の開口部37とが重なって開通している開通部38の幅寸法は、連結部材50の下部55よりも小さな幅寸法であり、連結部材50は、その下部55がバルブ収容溝35内に設置され、上部51がカバープレート33の上面側に配置され、上部51と下部55を接続する接続部53が開通部38に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアルシャフトの回動に連動してバルブボディ内のマニュアルバルブを進退移動させるように構成した自動変速機の変速操作機構及びその組立方法に関し、特に、マニュアルシャフトとマニュアルバルブとの連結部分の構造及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を備えた車両には、特許文献1に示すように、運転者のシフトレバー操作に対応して油圧供給先を切り換えて変速を行うための変速操作機構が設けられている。この種の変速操作機構は、運転者のシフトレバー操作に連動して回動するマニュアルシャフト(コントロールシャフト)と、該マニュアルシャフトに固定されて一体に回動するディテントプレートと、一端がマニュアルシャフト又はディテントプレートに係合し他端がマニュアルバルブに連結されているロッド状の連結部材(揺動アーム)とを備えて構成されている。そして、マニュアルシャフト及びディテントプレートがシフトレバーの操作に伴い回動すると、それらに係合しているロッド状の連結部材が揺動し、連結部材の先端に係合しているマニュアルバルブがバルブボディ内を進退移動することで、油圧回路における作動油の供給先が切り換えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−142167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の変速操作機構では、バルブボディ内のマニュアルバルブは、その一方の端部をバルブボディの端面に設けた開口部から突出させた状態で設置し、当該端部に設けたピンを連結部材(揺動アーム)の係合溝に係合させた構造を採用している。このように、従来構造の変速操作機構では、マニュアルバルブの端部をバルブボディの端面から突出させた状態で設置し、当該マニュアルバルブの端部に該マニュアルバルブを操作する部分(以下、「操作部」という。)を設けていた。なお、マニュアルバルブの端部に設けた操作部の具体的な構造としては、マニュアルバルブと一体に係合部を形成した構造、マニュアルバルブの端部にプレス加工や焼結加工で係合具を固定した構造などがある。
【0005】
しかしながら、上記のような従来構造では、マニュアルバルブの操作部は、バルブボディにおけるマニュアルバルブが突出する端面又はその近傍に配置しなければならず、バルブボディに対する位置を自由に配置することができない。これにより、マニュアルシャフトなど変速操作機構の構成部品の配置に制限が生じてしまい、自動変速機のケース内における構成部品のレイアウト自由度を十分に確保できないという問題があった。また、上記操作部の位置が限定されることで、変速操作機構の組立効率を向上させる妨げになるおそれもあった。さらに、上記操作部がマニュアルシャフトやディテントプレートから離れた位置にあると、ロッド状の連結部材の全長が長くなり、変速操作機構の省スペース化やマニュアルバルブの良好な操作性の妨げになるおそれがあった。
【0006】
また、従来の変速操作機構では、その組立において、マニュアルバルブに連結部材を係合させる工程が必要となる。そのため、当該工程用の作業スペースを変速機のケース内に確保する必要がある。また、ケースにバルブボディを組み付けることで、予めケース側に取り付けた連結部材をマニュアルバルブの操作部に係合させる構成を採用している場合は、操作部の視認性を確保した状態でバルブボディの組付作業を行う必要がある。しなしながら実際には、上記のような作業スペースや視認性を確保することが難しいため、変速操作機構の組立作業をスムーズに行えない場合がある。また、マニュアルバルブに連結部材を確実に係合させることができないと、変速操作機構の未組立や誤組立が生じてしまい、製品の品質向上が阻害されるおそれがある。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マニュアルバルブの操作部をバルブボディ上の任意の位置に配置できるようにすることで、自動変速機のケース内における構成部品のレイアウト自由度を確保でき、また、マニュアルバルブの操作部の組立を行い易くすることで、組立効率の向上及び製品の品質向上を図ることができる自動変速機の変速操作機構及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、シフトレバー操作に連動して回動するマニュアルシャフト(10)と、マニュアルシャフト(10)の回動に応じてその軸周りに回動する係合具(18)と、バルブボディ(31)に形成されたバルブ収容溝(35)内で進退移動可能に設置されたマニュアルバルブ(40)と、係合具(18)の回動をマニュアルバルブ(40)の進退移動に変換するように係合具(18)とマニュアルバルブ(40)とを連結する連結部材(50)と、バルブボディ(31)のバルブ収容溝(35)が開口する面(31a)に取り付けたカバー部材(33)と、該カバー部材(33)に設けたバルブ収容溝(35)に対応する開口部(37)と、を備えた自動変速機の変速操作機構(1)であって、連結部材(50)は、係合具(18)を挿入係合させる第1の係合部(52)を設けた第1の部分(51)と、マニュアルバルブ(40)に係合する第2の係合部(56)を設けた第2の部分(55)と、第1の部分(52)と第2の部分(55)とを接続してなる接続部(53)とを有し、接続部(53)の幅寸法が第2の部分(55)の幅寸法よりも小さな幅寸法に設定されており、バルブボディ(31)のバルブ収容溝(35)とカバー部材(33)の開口部(37)とが重なって開通している開通部(38)を有し、該開通部(38)の幅寸法は、連結部材(50)の第2の部分(55)よりも小さな幅寸法であり、連結部材(50)は、第2の部分(55)がバルブ収容溝(35)内に設置され、第1の部分(51)がカバー部材(33)の上面側に配置され、第1の部分(51)と第2の部分(55)を接続する接続部(53)が開通部(38)に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる自動変速機の変速操作機構によれば、マニュアルシャフト側の係合具とマニュアルバルブとを連結する連結部材は、その接続部の幅寸法がマニュアルバルブ側の第2の部分の幅寸法よりも小さな幅寸法に設定されている。そして、バルブボディのバルブ収容溝とカバー部材の開口部とが重なって開通している開通部の幅寸法は、連結部材の第2の部分よりも小さな幅寸法であり、連結部材は、第2の部分がバルブ収容溝内に設置され、接続部が開通部に配置されている。この構成によって、バルブボディ上の任意の位置に設けた開口部及びバルブ収容溝内に連結部材を配置することができ、かつ、当該連結部材をバルブボディから脱落しない状態でマニュアルバルブに係合させることができる。したがって、マニュアルバルブの操作部をバルブボディの端部だけでなく、バルブボディ上の任意の位置に配置できるようになる。そのため、自動変速機のケース内におけるバルブボディやマニュアルバルブをはじめとする変速操作機構の構成部品のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0010】
また、上記の変速操作機構では、連結部材(50)の第2の係合部(56)は、マニュアルバルブ(40)の側面(42)に当接係合する係合溝(56)を有し、該係合溝(56)に係合したマニュアルバルブ(40)をその軸方向に沿って一体に移動させる構成であってよい。
【0011】
この構成によれば、マニュアルバルブに連結部材が係合する部分(マニュアルバルブの操作部)を当該マニュアルバルブの軸方向における任意の位置に配置することが可能となる。したがって、マニュアルバルブの操作部をバルブボディの端部に限らずバルブボディ上の任意の位置に配置することがより簡単に行えるようになる。
【0012】
また、上記の変速操作機構では、連結部材(50)の第1の係合部(52)は、係合具(18)をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で係合させる長尺状の係合穴(52)であり、係合穴(52)の周縁には、係合具(18)の先端部を該係合穴(52)へ案内するための傾斜面状の面取り部(52a)が形成されているとよい。
【0013】
この構成によれば、長尺状の係合穴内を係合具が移動することができるので、マニュアルシャフトの回動によるマニュアルバルブの良好な操作性を確保できる。また、マニュアルシャフトの係合具を連結部材の係合穴に係合させる際に、傾斜面状の面取り部で係合具の先端部を係合穴へ案内することができる。したがって、連結部材の係合穴に係合具を係合させ易くなるので、変速操作機構の組立作業の効率化を図ることができる。また、変速操作機構の未組立や誤組立を防止でき、製品の品質を向上させることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明は、シフトレバー操作に連動して回動するマニュアルシャフト(10)と、前記マニュアルシャフト(10)の回動に応じてその軸周りで回動する係合具(18)と、バルブボディ(31)に形成されたバルブ収容溝(35)内で進退移動可能に設置されたマニュアルバルブ(40)と、前記係合具(18)の回動を前記マニュアルバルブ(40)の進退移動に変換可能な状態で、前記係合具(18)と前記マニュアルバルブ(40)とを連結する連結部材(50)と、前記バルブボディ(31)の前記バルブ収容溝(35)が開口する面(31a)に取り付けたカバー部材(33)と、該カバー部材(33)に設けた前記バルブ収容溝(35)に対応する開口部(37)と、を備える変速操作機構(1)の組立方法であって、前記連結部材(50)は、前記係合具(18)を挿入係合させる係合穴(52)を設けた第1の部分(51)と、前記マニュアルバルブ(40)の側面(42)に当接係合する係合溝(56)を設けた第2の部分(55)と、前記第1の部分(51)と前記第2の部分(55)とを接続してなる接続部(53)とを有し、幅方向における前記接続部(53)の寸法が前記第2の部分(55)の寸法よりも小さな幅寸法に設定されており、前記バルブボディ(31)のバルブ収容溝(35)に前記マニュアルバルブ(40)を収容する第1の工程と、前記バルブ収容溝(35)と前記開口部(37)とが重なって開通する開通部(38)の幅寸法が前記連結部材(50)における前記第2の部分(55)の幅寸法以上の寸法となるように前記バルブボディ(31)に前記カバー部材(33)を載置する第2の工程と、前記連結部材(50)の前記第2の部分(55)を前記バルブ収容溝(35)に収容して前記第2の係合部(55)を前記マニュアルバルブ(40)に係合させる第3の工程と、前記連結部材(50)の前記接続部(53)を前記開通部(38)に配置し、その状態で前記カバー部材(33)を前記バルブボディ(31)に対して前記幅方向にスライドさせることで、前記開通部(38)の幅寸法を前記第2の部分(55)の幅寸法よりも小さな幅寸法にして、前記カバー部材(33)を前記バルブボディ(31)に固定する第4の工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる変速操作機構の組立方法によれば、簡単な工程で、連結部材の第2の部分をバルブ収容溝内に設置し、第1の部分をカバー部材の上面側に配置し、第1の部分と第2の部分を接続する接続部を開通部に配置し、その上で、バルブボディのバルブ収容溝とカバー部材の開口部とが重なって開通している開通部の幅寸法を、連結部材の第2の部分よりも小さな幅寸法に設定することで、マニュアルバルブに係合する連結部材の抜け止めを施した状態で変速操作機構を組み立てることができる。特に、カバー部材をバルブボディに対してスライドさせるだけで、マニュアルバルブに係合する連結部材の抜け止めを施すことができるので、連結部材の取り付けを簡単かつ確実に行えるようになる。そして、本発明にかかる方法で組み立てた変速操作機構によれば、バルブボディ上の任意の位置に設けた開口部及びバルブ収容溝内に連結部材を配置することができ、かつ、当該連結部材をバルブボディから脱落しない状態でマニュアルバルブに係合させることができる。したがって、マニュアルバルブの操作部をバルブボディの端部に限らず、バルブボディ上の任意の位置に配置できるようになる。そのため、ケース内における変速操作機構の構成部品のレイアウト自由度が向上する。
【0016】
また、本発明にかかる上記の組立方法では、前記第1乃至第4の工程を行った後で、予め自動変速機のケース(2)に組み付けた前記マニュアルシャフト(10)をその軸周りの回動が不能となるポジション(P)にセットしておき、その状態で、前記連結部材(50)を取り付けた前記バルブボディ(31)を前記ケース(2)に組み付けることで、前記連結部材(50)の前記係合穴(52)に前記マニュアルシャフト(10)の前記係合具(18)を挿入係合させる第5の工程と、前記バルブボディ(31)から突出している前記マニュアルバルブ(40)の端部(40b)を移動させることで、前記連結部材(50)の前記係合穴(52)に前記マニュアルシャフト(10)の前記係合具(18)が正常に係合しているか否かを確認する第6の工程と、をさらに有するとよい。
【0017】
この組立方法によれば、連結部材の係合穴にマニュアルシャフトの係合具を挿入係合させた後で、連結部材の係合穴にマニュアルシャフトの係合具が正常に係合しているか否かを確認することができる。したがって、連結部材の係合穴やマニュアルシャフトの係合具の視認性を確保できない状態でバルブボディの組付作業を行う場合でも、係合穴に係合具を確実に係合させることが可能となる。これにより、変速操作機構の未組立や誤組立を減らすことができ、製品の品質向上を図ることができる。
【0018】
また、上記の組立方法では、前記第5の工程で、前記連結部材(50)の前記係合穴(52)に前記マニュアルシャフト(10)の前記係合具(18)を挿入係合させる際、前記係合穴(52)の周縁に設けた傾斜面状の面取り部(52a)で前記係合具(18)を前記係合穴(52)へ案内するとよい。
【0019】
これによれば、連結部材の係合穴に係合具をより確実に係合させることができるので、変速操作機構の組立作業の効率化を図ることができる。特に、連結部材の係合穴やマニュアルシャフトの係合具の視認性を確保できない状態でバルブボディの組付作業を行う場合でも、係合穴に係合具を確実に係合させることが可能となる。これにより、変速操作機構の未組立や誤組立を防止でき、製品の品質を向上させることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる自動変速機の変速操作機構及びその組立方法によれば、マニュアルバルブの操作部をバルブボディ上の任意の位置に配置できるようにすることで、自動変速機のケース内における構成部品のレイアウト自由度を確保でき、また、マニュアルバルブの操作部の組立を行い易くすることで、組立効率の向上及び製品の品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかる変速操作機構を備えた自動変速機の内部構造を示す概略斜視図である。
【図2】(a)は、バルブボディアッセンブリを示す斜視図であり、(b)は、連結部材及びその周辺の詳細構成を示す部分拡大図である。
【図3】マニュアルシャフトの係合ピン及びマニュアルバルブの操作部とこれらを連結する連結部材とを示す斜視図である。
【図4(a)】バルブボディアッセンブリの組立手順を説明するための図で、バルブボディの斜視図である。
【図4(b)】バルブボディアッセンブリの組立手順を説明するための図で、バルブボディの斜視図である。
【図4(c)】バルブボディアッセンブリの組立手順を説明するための図で、バルブボディの斜視図である。
【図4(d)】バルブボディアッセンブリの組立手順を説明するための図で、バルブボディの斜視図である。
【図4(e)】バルブボディアッセンブリの組立手順を説明するための図で、バルブボディの斜視図である。
【図5】変速操作機構の組立手順を説明するための図で、バルブボディのバルブ収容溝及びその周辺の概略側断面図である。
【図6】変速操作機構の組立手順を説明するための図で、横向きにした自動変速機のケースの下端部内に設置したバルブボディを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる変速操作機構1を備えた自動変速機の内部構造を示す概略斜視図である。また、図2(a)は、バルブボディアッセンブリ30を示す斜視図であり、同図(b)は、連結部材50及びその周辺の詳細構成を示す部分拡大図である。また、図3は、マニュアルシャフト10の係合ピン18及びマニュアルバルブ40の操作部42とこれらを連結する連結部材50とを示す斜視図である。なお、図1では、トランスミッションケース2の一部を切断した状態で示している。また、以下の説明では、上下、左右、水平方向というときは、図1又は図2に示す状態での上下、左右、水平方向を指すものとする。
【0023】
図1に示す変速操作機構1は、トランスミッションケース(以下、単に「ケース」と記す。)2の内部に設置され、運転者によるシフトレバー(図示せず)の操作に連動して軸中心に回動するマニュアルシャフト(コントロールシャフト)10と、該マニュアルシャフト10に支持されて一体に回動するディテントプレート12と、ディテントプレート12に弾接係合するディテントアーム14と、ディテントプレート12に連結されたパーキングロッド22と、出力軸3上のパーキングギヤ24に噛合するパーキングアーム26などを備えて構成されている。
【0024】
マニュアルシャフト10は、ケース2内でその軸方向を上下方向に向けて設置されており、軸方向の中間部分には、水平に配置した平板状のディテントプレート12が固定されている。ディテントプレート12の外周に形成されたディテント部(図示せず)は、シフトレバーが投入される各レンジに対応する複数の凹凸を有している。ディテント部には、ディテントアーム14が弾接している。ディテントアーム14は、コイルスプリング13でディテントプレート12側に付勢されている。これにより、マニュアルシャフト10の回動に伴いディテントプレート12が水平面内で回動すると、ディテントアーム14の先端がディテント部の凹部に順次に係合することで、マニュアルシャフト10が所定角度ずつ回動するようになっている。上記のディテントプレート12及びディテントアーム14などでディテント機構15が構成されている。
【0025】
また、ディテント機構15の側部には、パーキング機構20が設けられている。パーキング機構20は、ディテントプレート12に対して回動可能に連結されたパーキングロッド22と、パーキングロッド22の先端部で駆動されることで出力軸3上のパーキングギヤ24に噛合するパーキングアーム26とを備えている。
【0026】
また、図1に示すように、ケース2内のマニュアルシャフト10の下方には、バルブボディアッセンブリ30が設置されており、バルブボディアッセンブリ30には、マニュアルバルブ40が収容されている。一方、マニュアルシャフト10の下端部10bには、バルブボディアッセンブリ30内のマニュアルバルブ40を駆動するための駆動部16が設けられている。図3に示すように、駆動部16は、マニュアルシャフト10の回動に伴いマニュアルシャフト10の下端部10b近傍の水平面内で円周方向に沿って回動する細板状の取付片17と、取付片17の先端に取り付けた係合ピン(係合具)18とを備えており、マニュアルシャフト10の回動に応じてその軸周りで係合ピン18が周方向に回動するようになっている。この駆動部16は、係合ピン18の先端部が挿入係合された連結部材(マニュアルバルブガイド)50を介してマニュアルバルブ40に連結されている。これにより、マニュアルシャフト10が回動することで、マニュアルバルブ40がバルブボディアッセンブリ30内をその軸方向に沿って進退移動するようになっている。
【0027】
図2に示すように、バルブボディアッセンブリ30を構成するバルブボディ(本体部)31は、略矩形状の箱型に形成されており、その上面31aには、油路溝(図4(a)参照)32を覆うカバープレート33(カバー部材)33が被せて取り付けられている。また、バルブボディ31の内部に形成されたバルブ穴(図示せず)には、マニュアルバルブ40が設置されている。バルブ穴は、バルブボディ31内の水平方向に延在する筒型の空洞であり、該バルブ穴に収容されたマニュアルバルブ40は、バルブ穴内をその長手方向に沿って進退移動するようになっている。マニュアルバルブ40は、その一方の端部40bがバルブボディ31の側面31bに設けた開口部(図示せず)から横向きに突出しており、他方の端部40a及びその近傍の側面(以下、「操作部」という。)42がバルブボディ31の上面31aに開口するバルブ収容溝35内に配置されている。また、カバープレート33には、バルブ収容溝35に対応する開口部37が形成されている。
【0028】
図2(b)及び図3に示すように、係合ピン18とマニュアルバルブ40の操作部42とを連結する連結部材50は、その上端面51aに係合ピン18の先端側を挿入係合させる係合穴(第1の係合部)52を設けた略矩形状の上部(第1の部分)51と、その下端面55aにマニュアルバルブ40の操作部42に係合する係合溝(第2の係合部)56を設けた略矩形状の下部(第2の部分)55と、これら上部51と下部55とを接続してなる略板状の接続部53とを有している。接続部53の幅方向(図2(b)に示すX方向をいう、以下同じ。)の寸法(幅寸法)D4は、上部51及び下部55の幅寸法よりも小さな幅寸法に設定されている。また、連結部材50の上部51と下部55とは、接続部53に対する幅方向の位置が互いにオフセット配置されている。そして、図2に示すように、この連結部材50は、カバープレート33の開口部37を介してその上部51がカバープレート33の上面側に突出しており、その下部55がバルブ収容溝35内に設置されてマニュアルバルブ40に係合している。
【0029】
連結部材50の係合穴52は、係合ピン18をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で係合させる長尺状の穴からなる。係合穴52の長手方向は、マニュアルバルブ40の長手方向に沿う縦方向(図2(b)に示すY方向)に対して直交する横方向(X方向)に沿って延伸している。また、係合穴52の周縁には、該係合穴52に挿入係合される係合ピン18の先端部を案内する傾斜面状の面取り部52aが形成されている。面取り部52aは、係合穴52の周縁を上端から下側に向かって次第に小径化するようなすり鉢形状に面取りした部分である。また、図3に示す連結部材50の係合溝56は、マニュアルバルブ40における円弧面状の側面からなる操作部42に当接係合する逆向き略U字型の溝部である。マニュアルバルブ42の操作部42は、その両側の大径部41よりも小径の部分であり、連結部材50の下部55及び係合溝56は、操作部42の両側の大径部41,41に挟まれている。これにより、連結部材50は、マニュアルバルブ40をその軸方向に沿って一体に移動させるように係合している。
【0030】
また、図2(b)に示すように、バルブボディ31のバルブ収容溝35は、その幅方向の寸法D1がマニュアルバルブ40の直径以上の寸法に設定されている。一方、開口部37は、その縦方向の一端側が幅の広い幅広部37aになっており、残りの部分が幅広部37aよりも幅の狭い幅狭部37bになっている。そして、開口部37における幅広部37aの幅寸法D2は、バルブ収容溝35の幅寸法D1と同一の幅寸法(D1=D2)に設定されている。一方、開口部37の縦方向の寸法(長さ寸法)L1は、マニュアルバルブ40の進退移動量と等しい寸法に設定されている。また、バルブボディ31のバルブ収容溝35とカバープレート33の開口部37は、それらの一部が互いに重なって開通する開通部38になっている。そして、当該開通部38の幅寸法D3は、バルブ収容溝35内に設置した連結部材50の下部55よりも小さな寸法であり、かつ、連結部材50の接続部53の幅寸法D4よりも若干大きな寸法に設定されている。そして、この開通部38に連結部材50の接続部53が挿通されている。これにより、連結部材50の下部55が開通部38から上方に抜けないようになっている。したがって、連結部材50は、バルブボディ31に対して外れ止め(抜け止め)が施された状態で、バルブボディ31内のマニュアルバルブ40に係合している。
【0031】
次に、上記構成の変速操作機構1の組立手順について説明する。ここではまず、バルブボディアッセンブリ30の組立手順を説明する。図4(a)乃至(e)及び図5(a)乃至(e)は、バルブボディアッセンブリ30の組立手順を説明するための図で、図4(a)乃至(e)は、バルブボディアッセンブリ30(未完成状態を含む)の斜視図、図5(a)乃至(e)は、バルブボディ31内のバルブ収容溝35及びその周辺の概略側断面図である。
【0032】
バルブボディアッセンブリ30を組み立てるには、まず、図4(a)及び図5(a)に示すように、バルブボディ31内のバルブ収容溝35にマニュアルバルブ40を収容する(第1の工程)。これには、図4(a)に点線で示すように、マニュアルバルブ40をバルブボディ31の側面31bに設けた開口部からバルブ穴に差し込んで設置する。バルブ穴内にマニュアルバルブ40を設置した状態で、マニュアルバルブ40の端部40a及びその近傍の操作部42がバルブ収容溝35内に配置される。またこの状態では、マニュアルバルブ40の他方の端部40bがバルブボディ31の側面31bから横向きに突出している。
【0033】
次に、図4(b)及び図5(b)に示すように、バルブボディ31の上面31aにカバープレート33を載置する(第2の工程)。この際、カバープレート33の開口部37の幅広部37aとバルブ収容溝35との幅方向の位置を互いに一致させた状態で載置する。これにより、バルブ収容溝35と開口部37とが重なっている開通部38の幅寸法が連結部材50における下部55の幅寸法以上の寸法となる。またこの状態では、カバープレート33は、バルブボディ31の上面31aに対する最終的な固定位置に対して、幅方向で若干ずれた位置に配置されている。
【0034】
次に、図4(c)及び図5(c)に示すように、バルブボディ31内のマニュアルバルブ40に連結部材50を係合させる(第3の工程)。これには、カバープレート33の開口部37の幅広部37aを介して、バルブ収容溝35内に連結部材50の下部55を落とし込むようにして載置することで、下部55の下端面55aに設けた係合溝56をマニュアルバルブ40の操作部42に当接係合させる。この状態で、連結部材50の下部55がバルブ収容溝35内に配置され、接続部53がカバープレート33の開口部37とバルブ収容溝35とが重なる開通部38に配置され、上部51がカバープレート33の上面側に突出した状態で配置される。
【0035】
次に、図4(d)及び図5(d)に示すように、カバープレート33をバルブボディ31の上面31aに沿って幅方向にスライドさせて、カバープレート33をバルブボディ31に対する最終的な固定位置に配置する(第4の工程)。これにより、バルブ収容溝35と開口部37とが重なる開通部38の幅寸法が連結部材50の下部55の幅寸法よりも小さな幅寸法(具体的には、接続部53と同じかそれよりも僅かに大きな幅寸法)となる。なおこの場合、開通部38を接続部53と同じ幅寸法とするには、カバープレート33をその幅方向に沿って開口部37の幅寸法から連結部材50の接続部53の幅寸法を引いた寸法分だけずらすようにする。これにより、連結部材50の下部55がカバープレート33の開口部37及びバルブボディ31のバルブ収容溝35から抜けない状態となる。
【0036】
その状態で、図4(e)及び図5(e)に示すように、カバープレート33の上面側からボルト39を締結してカバープレート33をバルブボディ31の上面31aに固定する。これにより、バルブボディアッセンブリ30の組立が完了する。
【0037】
上記の組立方法によれば、簡単な工程で、連結部材50の下部55をバルブ収容溝35内に設置し、上部51をカバープレート33の上面側に配置し、上部51と下部55を接続する接続部53をバルブボディ31のバルブ収容溝35とカバープレート33の開口部37とが重なって開通している開通部38に配置し、その上で、開通部38の幅寸法を連結部材50の下部55よりも小さな幅寸法に設定して連結部材50の抜け止めを施し、バルブボディアッセンブリ30を組み立てることができる。特に、カバープレート33をバルブボディ31に対してスライドさせるだけで、マニュアルバルブ40に係合する連結部材50の抜け止めを施すことができるので、連結部材50の取り付けを簡単かつ確実に行えるようになる。
【0038】
次に、上記の手順で予めバルブボディアッセンブリ30に組み付けた連結部材50の係合穴52対して、マニュアルシャフト10の係合ピン18を挿入係合させてこれらを組み付ける手順について説明する。図6は、変速操作機構1の組立手順を説明するための図で、図1に示す自動変速機のケース2を横向きに配置して、ケース2の下端部2c内にバルブボディアッセンブリ30を取り付けた状態を示す図である。ここでは、上記の手順で予め組み立てたバルブボディアッセンブリ30と、予め駆動部16を含むマニュアルシャフト10を組み付けた状態のケース2とをそれぞれ用意する。そして、図6に示すように、ケース2の下端部2cを横向きにして配置する。
【0039】
そしてここでは、予め自動変速機のケース2に組み付けたマニュアルシャフト10に対応するシフトレバーのレンジをPポジションにセットしておく。この状態で、係合ピン18がマニュアルシャフト10の周りで一方(図6に示す下方向)に一杯まで回動した位置にあり、かつ、パーキング機構20によって、マニュアルシャフト10はその軸周りの回動が不能な状態となっている。その状態で、図6に示すように、バルブボディ31をケース2の下端部2cの内部に組み付ける。この際、バルブボディ31内のマニュアルバルブ40の軸方向が上下方向に延び、バルブボディ31の側面31bから突出するマニュアルバルブ40の端部40bが下側となるような向きにしてバルブボディ31を組み付ける。これにより、マニュアルバルブ40の自重で連結部材50がカバープレート33の開口部37の下端辺(縦方向の端辺)37dに当接し、その位置でマニュアルバルブ40及び連結部材50が停止する。マニュアルバルブ40のこの位置は、シフトレバーのPポジションに対応する位置である。そして、カバープレート33及び連結部材50を取り付けた面をケース2内の奥側(紙面奥側)に向けてバルブボディ31を組み付ける。
【0040】
上記のような向きに配置したバルブボディ31をケース2の下端部2c内に組み付けることで、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18の先端側が挿入係合される(第5の工程)。このとき、連結部材50の係合穴52及び係合ピン18はバルブボディ31の奥側に隠れているため、これらを視認することができず、いわゆる目暗状態での組付作業となる。しかしながら、連結部材50の係合穴52の縁部に設けた面取り部52aで係合ピン18の先端が係合穴52へと案内されるので、係合ピン18の位置と連結部材50の係合穴52の位置とが多少ずれていても構わない。したがって、組付作業を比較的簡単に行うことができる。
【0041】
しかしながら、目暗状態での作業であるため、連結部材50の係合穴52に対する係合ピン18の挿入係合を確実に行うことは難しく、わずかではあるが未組立や誤組立が生じてしまうおそれが残る。そこで、バルブボディ31をケース2に組み付けた後、バルブボディ31の下側の側面31bから下方に突出しているマニュアルバルブ40の端部40bを指などで押して上下動させることで、連結部材50の係合穴52に係合ピン18が正常に係合していることを確認する(第6の工程)。このとき、シフトレレバーがPポジションにセットされていることで、マニュアルシャフト10はその回動が規制された状態になっているので、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18が正常に係合していれば、マニュアルバルブ40の端部40bを押しても動かない。一方、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18が正常に係合していないと、マニュアルバルブ40の端部40bが上下動する。これにより、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18が正常に係合しているか否かを確認することができ、連結部材50に対する係合ピン18の未組・誤組を検出することが可能となる。
【0042】
すなわちここでは、予め自動変速機のケース2に組み付けたマニュアルシャフト10をその軸周りに回動不能となるようなポジションにセット(シフトレバーをPポジションにセット)しておき、その状態で、連結部材50を取り付けたバルブボディ31をケース2に組み付けることで、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18を挿入係合させる工程(第5の工程)と、バルブボディ31の側面31bから突出しているマニュアルバルブ40の端部40bを移動させることで、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18が正常に係合しているか否かを確認する工程(第6の工程)とを行うようになっている。
【0043】
ここで、上記構成の変速操作機構1の動作について簡単に説明する。変速操作機構1では、運転者が車室内のシフトレバーを操作すると、該シフトレバーの動作に連動して、マニュアルシャフト10及びディテントプレート12が回動する。その際、ディテント機構15の作用でディテントプレート12及びマニュアルシャフト10が所定角度ずつ回動する。このマニュアルシャフト10の回動に伴い、駆動部16の係合ピン18がマニュアルシャフト10の周りで回動する。この係合ピン18の回動が連結部材50を介してマニュアルバルブ40の直線動作に変換されることで、マニュアルバルブ40がシフトレバーの投入レンジに応じた位置に切り換えられるようになっている。また、シフトレバーがPレンジに投入されると、回動するマニュアルシャフト10及びディテントプレート12によって、パーキングアーム26がパーキング位置へ回動する。これにより、パーキングアーム26が出力軸3上のパーキングギヤ24に噛み合うことで、出力軸3がロックされるようになっている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の変速操作機構1では、マニュアルシャフト10の係合ピン18とマニュアルバルブ40とを連結する連結部材50は、その上部51と下部55を接続する接続部53の幅寸法が下部55の幅寸法よりも小さな幅寸法に設定されている。そして、バルブボディ31のバルブ収容溝35とカバープレート33の開口部37とが重なって開通している開通部38の幅寸法は、連結部材50の下部55よりも小さな幅寸法であり、連結部材50は、下部55がバルブボディ31のバルブ収容溝35内に設置され、上部51がカバープレート33の上面側に配置され、接続部53が開通部38に配置されている。この構成によって、バルブボディ31上の任意の位置に設けた開口部37及びバルブ収容溝35内に連結部材50を配置することができ、かつ、当該連結部材50をバルブボディ31から脱落しない状態でマニュアルバルブ40に係合させることができる。したがって、マニュアルバルブ40の操作部42をバルブボディ31の端部に限らず、バルブボディ31上の任意の位置に配置できるようになる。これにより、ケース2内における変速操作機構1の構成部品のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の変速操作機構1では、連結部材50の下部55は、マニュアルバルブ40の操作部42に当接係合する係合溝56を有し、係合溝56に係合したマニュアルバルブ40をその軸方向に沿って一体に移動させる構成である。この構成によって、マニュアルバルブ40に連結部材50が係合する部分(マニュアルバルブ40の操作部42)を当該マニュアルバルブ40の軸方向における任意の位置に配置することが可能となる。したがって、マニュアルバルブ40の操作部42をバルブボディ31の端部に限らず、バルブボディ31上の任意の位置に配置することがより簡単に行えるようになる。
【0046】
また、連結部材50の係合穴52は、係合ピン18をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で係合させる長尺状の係合穴52であり、係合穴52の周縁には、傾斜面状の面取り部52aが形成されている。この構成によれば、長尺状の係合穴52内を係合ピン18が移動することで、マニュアルバルブ40の良好な操作性を確保することができる。また、マニュアルシャフト10の係合ピン18を連結部材50の係合穴52に係合させる際に、係合ピン18の先端部を傾斜面状の面取り部52aで係合穴52へ案内することができる。したがって、連結部材50の係合穴52に係合ピン18を係合させ易くなるので、変速操作機構1の組立作業の効率化を図ることができる。また、変速操作機構1の未組立や誤組立を防止でき、製品の品質を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態にかかる変速操作機構1の組立方法では、バルブボディ31のバルブ収容溝35にマニュアルバルブ40を収容する第1の工程と、バルブ収容溝35と開口部37とが重なって開通する開通部38の幅寸法が連結部材50における下部55の幅寸法以上の寸法となるようにバルブボディ31にカバープレート33を載置する第2の工程と、連結部材50の下部55をバルブ収容溝35に収容して係合溝56をマニュアルバルブ40に係合させる第3の工程と、連結部材50の接続部53を開通部38に配置し、その状態でカバープレート33をバルブボディ31に対して幅方向にスライドさせることで、開通部38の幅寸法を連結部材50の下部55の幅寸法よりも小さな幅寸法にしてから、カバープレート33をバルブボディ31に固定する第4の工程とを有している。
【0048】
この組立方法によれば、簡単な工程で、連結部材50の下部55をバルブ収容溝35内に設置し、上部51をカバープレート33の上面側に配置し、上部51と下部55を接続する接続部53を開通部38に配置して、その上で、バルブボディ31のバルブ収容溝35とカバープレート33の開口部37とが重なって開通している開通部38の幅寸法を連結部材50の下部55よりも小さな幅寸法に設定して、バルブボディアッセンブリ30を組み立てることができる。したがって、カバープレート33をバルブボディ31に対してスライドさせるだけで、マニュアルバルブ40に係合する連結部材50の抜け止めを施すことができるので、バルブボディアッセンブリ30に対する連結部材50の取り付けを簡単かつ確実に行えるようになる。
【0049】
また、本実施形態における変速操作機構1の組立方法では、第1乃至第4の工程を行った後で、予め自動変速機のケース2に組み付けたマニュアルシャフト10をその軸周りの回動が不能となるポジションにセットしておき、その状態で、連結部材50を取り付けたバルブボディ31をケース2に組み付けることで、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18を挿入係合させる第5の工程と、バルブボディ31の側面31bから突出しているマニュアルバルブ40の端部40bを移動させることで、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18が正常に係合しているか否かを確認する第6の工程とをさらに行うようにしている。
【0050】
これによれば、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18を挿入係合させた後で、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18が正常に係合しているか否かを確認することができるので、連結部材50の係合穴52やマニュアルシャフト10の係合ピン18の視認性を確保できない状態でバルブボディ31の組付作業を行う場合でも、係合穴52に係合ピン18を確実に係合させることが可能となる。これにより、変速操作機構1の未組立や誤組立を減らすことができ、製品の品質向上を図ることができる。
【0051】
また、上記の組立方法では、第5の工程で、連結部材50の係合穴52にマニュアルシャフト10の係合ピン18を挿入係合させる際、係合穴52の周縁に設けた傾斜面状の面取り部52aで係合ピン18を係合穴52へ案内するようにしている。
【0052】
これによれば、連結部材50の係合穴52に係合ピン18をより確実に係合させることができるので、変速操作機構1の組立作業の効率化を図ることができる。特に、連結部材50の係合穴52やマニュアルシャフト10の係合ピン18の視認性を確保できない状態でバルブボディ31の組付作業を行う場合でも、係合穴52に係合ピン18をより確実に係合させることが可能となる。これにより、変速操作機構1の未組立や誤組立を防止でき、製品の品質を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 変速操作機構
2 トランスミッションケース(ケース)
2c 下端部
10 マニュアルシャフト
15 ディテント機構
16 駆動部
17 取付片
18 係合ピン(係合具)
20 パーキング機構
30 バルブボディアッセンブリ
31 バルブボディ(本体部)
31a 上面
31b 側面
33 カバープレート(カバー部材)
35 バルブ収容溝
37 開口部
38 開通部
40 マニュアルバルブ
40a 端部
40b 端部
42 操作部(側面)
50 連結部材
51 上部(第1の部分)
51a 上端面
52 係合穴(第1の係合部)
52a 面取り部
53 接続部
55 下部(第2の部分)
55a 下端面
56 係合溝(第2の係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバー操作に連動して回動するマニュアルシャフトと、
前記マニュアルシャフトの回動に応じてその軸周りに回動する係合具と、
バルブボディに形成されたバルブ収容溝内で進退移動可能に設置されたマニュアルバルブと、
前記係合具の回動を前記マニュアルバルブの進退移動に変換するように前記係合具と前記マニュアルバルブとを連結する連結部材と、
前記バルブボディの前記バルブ収容溝が開口する面に取り付けたカバー部材と、該カバー部材に設けた前記バルブ収容溝に対応する開口部と、を備え、
前記連結部材は、前記係合具を挿入係合させる第1の係合部を設けた第1の部分と、前記マニュアルバルブに係合する第2の係合部を設けた第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続してなる接続部とを有し、前記接続部の幅寸法が前記第2の部分の幅寸法よりも小さな幅寸法に設定されており、
前記バルブボディのバルブ収容溝と前記カバー部材の開口部とが重なって開通している開通部を有し、
該開通部の幅寸法は、前記連結部材の前記第2の部分よりも小さな幅寸法であり、
前記連結部材は、前記第2の部分が前記バルブ収容溝内に設置され、前記第1の部分が前記カバー部材の上面側に配置され、前記第1の部分と前記第2の部分を接続する接続部が前記開通部に配置されている
ことを特徴とする自動変速機の変速操作機構。
【請求項2】
前記連結部材の前記第2の係合部は、前記マニュアルバルブの側面に当接係合する係合溝を有し、該係合溝に係合した前記マニュアルバルブをその軸方向に沿って一体に移動させる構成である
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の変速操作機構。
【請求項3】
前記連結部材の前記第1の係合部は、前記係合具をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で係合させる長尺状の係合穴であり、
前記係合穴の周縁には、前記係合具の先端部を該係合穴へ案内するための傾斜面状の面取り部が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の変速操作機構。
【請求項4】
シフトレバー操作に連動して回動するマニュアルシャフトと、
前記マニュアルシャフトの回動に応じてその軸周りで回動する係合具と、
バルブボディに形成されたバルブ収容溝内で進退移動可能に設置されたマニュアルバルブと、
前記係合具の回動を前記マニュアルバルブの進退移動に変換可能な状態で、前記係合具と前記マニュアルバルブとを連結する連結部材と、
前記バルブボディの前記バルブ収容溝が開口する面に取り付けたカバー部材と、該カバー部材に設けた前記バルブ収容溝に対応する開口部と、を備える変速操作機構の組立方法であって、
前記連結部材は、前記係合具を挿入係合させる係合穴を設けた第1の部分と、前記マニュアルバルブの側面に当接係合する係合溝を設けた第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続してなる接続部とを有し、幅方向における前記接続部の寸法が前記第2の部分の寸法よりも小さな幅寸法に設定されており、
前記バルブボディのバルブ収容溝に前記マニュアルバルブを収容する第1の工程と、
前記バルブ収容溝と前記開口部とが重なって開通する開通部の幅寸法が前記連結部材における前記第2の部分の幅寸法以上の寸法となるように前記バルブボディに前記カバー部材を載置する第2の工程と、
前記連結部材の前記第2の部分を前記バルブ収容溝に収容して前記第2の係合部を前記マニュアルバルブに係合させる第3の工程と、
前記連結部材の前記接続部を前記開通部に配置し、その状態で前記カバー部材を前記バルブボディに対して前記幅方向にスライドさせることで、前記開通部の幅寸法を前記第2の部分の幅寸法よりも小さな幅寸法にして、前記カバー部材を前記バルブボディに固定する第4の工程と、
を有することを特徴とする変速操作機構の組立方法。
【請求項5】
前記第1乃至第4の工程を行った後で、
予め自動変速機のケースに組み付けた前記マニュアルシャフトをその軸周りの回動が不能となるポジションにセットしておき、その状態で、前記連結部材を取り付けた前記バルブボディを前記ケースに組み付けることで、前記連結部材の前記係合穴に前記マニュアルシャフトの前記係合具を挿入係合させる第5の工程と、
前記バルブボディから突出している前記マニュアルバルブの端部を移動させることで、前記連結部材の前記係合穴に前記マニュアルシャフトの前記係合具が正常に係合しているか否かを確認する第6の工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の変速操作機構の組立方法。
【請求項6】
前記第5の工程で、前記連結部材の前記係合穴に前記マニュアルシャフトの前記係合具を挿入係合させる際、前記係合穴の周縁に設けた傾斜面状の面取り部で前記係合具を前記係合穴へ案内する
ことを特徴とする請求項5に記載の変速操作機構の組立方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4(a)】
image rotate

【図4(b)】
image rotate

【図4(c)】
image rotate

【図4(d)】
image rotate

【図4(e)】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−241810(P2012−241810A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112927(P2011−112927)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】