説明

自動変速機用流体フィルタ及びその製造方法

【課題】必要十分な濾過面積を確保しつつ小型化を図ることができる自動変速機用流体フィルタを提供する。
【解決手段】本フィルタは、流出口2を有する上側ケース3と、前記上側ケースとの間で濾過室Sを形成し、流入口4を有する下側ケース5と、前記濾過室内に配置される濾材7と、を備える自動変速機用流体フィルタであって、前記濾材は、筒状に形成され、前記濾過室内を該濾材の内周側の第1室(クリーン室11)と該濾材の外周側の第2室(ダスティ室12)とに区画するように該濾材の軸方向の端部側が前記上側ケース及び前記下側ケースの間に挟持されて前記濾過室内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用流体フィルタ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、必要十分な濾過面積を確保しつつ小型化を図ることができる自動変速機用流体フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機用流体フィルタとして、流出口を有する上側ケースと、この上側ケースとの間で濾過室を形成し流入口を有する下側ケースと、これら上側ケース及び下側ケースの間に挟持されて濾過室内に配置されるフィルタエレメントと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、例えば、図13に示すように、フィルタエレメントEとして、ひだ折状の濾材107と、この濾材107の周縁部を保持し且つ上側ケース103及び下側ケース105の間に挟持される保持枠108と、を備えるものを採用することが開示されている。また、上記特許文献1には、樹脂製の上側ケース103及び下側ケース105と樹脂製の保持枠108とをレーザ溶着して両ケース103,105及びフィルタエレメントEを一体化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−68169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の自動変速機用流体フィルタでは、濾過室S内を濾材107の上側であるクリーン室111と濾材107の下側のダスティ室112とに区画するように濾材107を濾過室S内に配置しているので、濾材107と上側ケース103及び下側ケース105との間に空間a1、a2が存在する。そのため、流体フィルタの高さHは、濾材の高さh1と各空間の高さh2,h3との和より大きな値となり、流体フィルタの高さ寸法が比較的大きな値となっている。
【0006】
また、上記特許文献1の自動変速機用流体フィルタでは、上側ケース103及び下側ケース105と保持枠108とをレーザ溶着しているので、レーザ溶着が不十分であると、ケース外側の濾過前のオイルがレーザ溶着箇所からケース内に侵入して濾材を通らずにクリーン室111にバイパスされてしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、必要十分な濾過面積を確保しつつ小型化を図ることができる自動変速機用流体フィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.流出口を有する上側ケースと、
前記上側ケースとの間で濾過室を形成し、流入口を有する下側ケースと、
前記濾過室内に配置される濾材と、を備える自動変速機用流体フィルタであって、
前記濾材は、筒状に形成され、前記濾過室内を該濾材の内周側の第1室と該濾材の外周側の第2室とに区画するように該濾材の軸方向の端部側が前記上側ケース及び前記下側ケースの間に挟持されて前記濾過室内に配置されていることを特徴とする自動変速機用フィルタ。
2.前記第1室は前記流出口に連なり、前記第2室は前記流入口に連なっている上記1.記載の自動変速機用流体フィルタ。
3.前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの一方のケースは平板状に形成され、他方のケースは、平板状の底壁と該底壁の周縁側から立ち上がる周壁とを有し、該一方のケースの周縁側と該他方のケースの該周壁の先端側との当接部にはレーザによる溶着部が形成されている上記1.又は2.に記載の自動変速機用流体フィルタ。
4.前記濾材の軸方向の端部内周側には第1シール部が設けられており、
前記上側ケース及び前記下側ケースには、前記濾材の軸方向の端部内周側に挿入されて前記第1シール部に圧接する筒状の第1圧接部が設けられている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
5.前記濾材の軸方向の端面側には第2シール部が設けられており、
前記上側ケース及び前記下側ケースには、前記第2シール部に圧接する環状の第2圧接部が設けられている上記1.乃至4.のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
6.前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの少なくとも一方のケースには、前記流入口から前記第2室内に流入される流体を前記濾材の外周側を旋回するように案内する案内部が設けられている上記2.記載の自動変速機用流体フィルタ。
7.前記濾材は、ひだ折状の折曲体を筒状に形成してなされている上記1.乃至6.のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
8.上記1.乃至7.のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタの製造方法であって、
前記上側ケース及び前記下側ケースの間に前記濾材の軸方向の端部側を挟持させ、その状態より前記上側ケース及び前記下側ケースの当接部を接合することを特徴とする自動変速機用フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動変速機用流体フィルタによると、濾材は、筒状に形成され、濾過室内を濾材の内周側の第1室と濾材の外周側の第2室とに区画するように濾材の軸方向の端部側が上側ケース及び下側ケースの間に挟持されて濾過室内に配置されているので、流体フィルタの高さ寸法を濾材の軸方向長さ寸法と略同じ値に設定できる。そのため、必要十分な濾過面積を確保しつつ流体フィルタの小型化を図ることができる。
また、前記第1室が前記流出口に連なり、前記第2室が前記流入口に連なっている場合は、ケース外側の濾過前の流体が両ケースの接合箇所を介してケース内に侵入しても、その濾過前の流体は濾材で濾過されてから第1室に流入される。そのため、濾過前の流体が濾材を通らずにクリーン室にバイパスされることを防止することができる。
また、前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの一方のケースが平板状に形成され、他方のケースが、底壁と周壁とを有し、該一方のケースの周縁側と該他方のケースの該周壁の先端側との当接部にレーザによる溶着部が形成されている場合は、ケースに溶着のための外側に突出する部位を設ける必要がなく、流体フィルタの更なる小型化を図ることができる。さらに、レーザ溶着により両ケースを接合しているので、振動溶着により両ケースを接合するものに比べて、溶着バリの発生を抑制でき、濾過室内への溶着バリ等の異物の侵入を抑制できる。
また、前記濾材の軸方向の端部内周側に第1シール部が設けられており、前記上側ケース及び前記下側ケースに筒状の第1圧接部が設けられている場合は、両ケースの第1圧接部が濾材の軸方向の端部内周側に挿入されて第1シール部に圧接される。そのため、ケースに対して濾材の軸方向の端部側をより確実にシールすることができる。また、第1圧接部の濾材の軸方向の端部内周側への挿入によって、流体フィルタの組付時にケースに対して濾材を正確な取付け位置に位置決めできるとともに、流体フィルタの使用時に濾材に高圧力がかかっても濾材を位置保持できる。
また、前記濾材の軸方向の端面側に第2シール部が設けられており、前記上側ケース及び前記下側ケースに環状の第2圧接部が設けられている場合は、両ケースの第2圧接部が濾材の第2シール部に圧接されるため、ケースに対して濾材の軸方向の端部側をより確実にシールすることができる。
また、前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの少なくとも一方のケースに案内部が設けられている場合は、案内部により下側ケースの流入口から第2室内に流入される流体が濾材の外周側を旋回するように案内される。そのため、濾材の外周側の略全面域で流体が均等に濾過され、濾材の一部で集中的に流体を濾過することを防止することができる。
また、前記濾材が、ひだ折状の折曲体を筒状に形成してなされている場合は、濾過面積をより高めることができる。
【0010】
本発明の自動変速機用流体フィルタの製造方法によると、上側ケース及び下側ケースの間に濾材の軸方向の端部側が挟持され、その状態より上側ケース及び下側ケースの当接部が接合されて自動変速機用フィルタが得られる。このように得られる自動変速機用流体フィルタによると、濾材は、筒状に形成され、濾過室内を濾材の内周側の第1室と濾材の外周側の第2室とに区画するように濾材の軸方向の端部側が上側ケース及び下側ケースの間に挟持されて濾過室内に配置されているので、流体フィルタの高さ寸法を濾材の軸方向長さと略同じ値に設定できる。そのため、必要十分な濾過面積を確保しつつ流体フィルタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例に係る自動変速機用オイルフィルタの一部を破断した平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】上記オイルフィルタの分解斜視図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】実施例に係る濾材の平面図である。
【図6】上記濾材の側面図であり、中心線より右側は縦断面を示す。
【図7】その他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図8】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図9】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図10】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図11】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図12】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図13】従来の自動変速機用オイルフィルタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.自動変速機用流体フィルタ
本実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタ(以下、単に「流体フィルタ」とも略記する。)は、流出口を有する上側ケースと、この上側ケースとの間で濾過室を形成し、流入口を有する下側ケースと、この濾過室内に配置される濾材と、を備える自動変速機用流体フィルタであって、濾材は、筒状に形成され、濾過室内を濾材の内周側の第1室と濾材の外周側の第2室とに区画するように濾材の軸方向の端部側が上側ケース及び下側ケースの間に挟持されて濾過室内に配置されていることを特徴とする。なお、上記自動変速機の種類としては、例えば、トルコン式、CVT式などを挙げることができる。また、上記上側ケース及び下側ケースは、通常、互いに当接され、その当接部で接合(例えば、レーザ溶着、振動溶着、熱板溶着、接着等)される。
【0013】
上記濾材の構成としては、例えば、ひだ折状の折曲体を筒状に形成してなされている形態、筒状の発泡体からなる形態等を挙げることができる。また、この濾材の材質としては、例えば、不織布、織物、濾紙等を挙げることができる。
【0014】
上記流体フィルタとしては、例えば、上記第1室が流出口に連なり、第2室が流入口に連なっている形態(例えば、図2等参照)等を挙げることができる。この場合、例えば、上側ケース及び下側ケースのうちの少なくとも一方のケースには、流入口から第2室内に流入される流体を濾材の外周側を旋回するように案内する案内部が設けられていることができる(例えば、図1等参照)。特に、上側ケース及び下側ケースからなるケース(筐体)は、平面からみて、流出口側である一端側から流入口側である他端側に向かって先細りとなる形状に形成されていることが好ましい。流入口から流入される流体を案内部により更に効率的に案内できるとともに、流体フィルタの更なる小型化を図ることができるためである。
【0015】
上記流体フィルタとしては、例えば、上側ケース及び下側ケースのうちの一方のケースは平板状に形成され、他方のケースは、平板状の底壁とこの底壁の周縁側から立ち上がる周壁とを有し、一方のケースの周縁側と他方のケースの周壁の先端側との当接部にはレーザによる溶着部が形成されている形態(例えば、図2及び図4等参照)を挙げることができる。
【0016】
上述の形態の場合、通常、上記一方のケースはレーザ透過性樹脂を用いてなり、他方のケースはレーザ吸収性樹脂を用いてなる。これら樹脂部材としては、例えば、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂などを挙げることができる。これらのうち、レーザ透過性といった観点から、非晶性樹脂であることが好ましい。一方、レーザ吸収性といった観点から、非晶性樹脂及び結晶性樹脂のどちらであってもよい。さらに、熱膨張率を同じにして接合性を高め得るといった観点から、上側ケース及び下側ケースが同種の樹脂であることが好ましい。また、上記レーザは、通常、両ケースの当接方向に沿って一方のケース側から他方のケース側に向かって照射される。さらに、上記他方のケースは、通常、縦断面略U字状に形成される。
【0017】
上記流体フィルタとしては、例えば、(1)濾材の軸方向の端部内周側には第1シール部が設けられており、上側ケース及び下側ケースには、濾材の軸方向の端部内周側に挿入されて第1シール部に圧接する筒状の第1圧接部が設けられている形態(例えば、図4及び図8等参照)、(2)濾材の軸方向の端面側には第2シール部が設けられており、上側ケース及び下側ケースには、第2シール部に圧接する環状の第2圧接部が設けられている形態(例えば、図4及び図9等参照)等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0018】
上記(1)(2)形態では、例えば、上記圧接部には、シール部に向かって突出する突起が設けられていることができる(例えば、図7等参照)。これにより、圧接部がシール部に圧接するときに突起がシール部に食い込むため、ケースに対する濾材の軸方向の端部側のシール性を更に高めることができる。また、上記(1)(2)形態では、例えば、上記シール部は、光硬化性樹脂を硬化させてなることができる。この光硬化性樹脂は、通常、硬化性重合体(未硬化の重合体、オリゴマー等)に、光重合開始剤が配合された組成物であり、可視光、紫外光、電子線、中性子線等により光重合されるものである。
【0019】
上記流体フィルタとしては、例えば、上側ケース及び下側ケースの間に、第1室内で濾材の軸方向に延びて上側ケース及び下側ケースを連結する連結部が設けられている形態(例えば、図10及び図11等参照)を挙げることができる。この連結部により両ケースが連結されて両ケースの間隔が所定間隔に保持されるため、ケースに対する濾材の軸方向の端部側のシール性の低下を防止することができる。また、上記流体フィルタとしては、例えば、上記濾材の内周側に、周面に貫通穴が形成された筒状の補強部材が挿入されている形態(例えば、図12等参照)を挙げることができる。この補強部材により両ケースの間に挟持される濾材の軸方向の強度が補強されるため、ケースに対する濾材の軸方向の端部側のシール性の低下を防止できる。
【0020】
2.自動変速機用流体フィルタの製造方法
本実施形態2.に係る自動変速機用流体フィルタの製造方法は、上記実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタの製造方法であって、上側ケース及び下側ケースの間に濾材の軸方向の端部側を挟持させ、その状態より上側ケース及び下側ケースを接合することを特徴とする。
【0021】
上記流体フィルタの製造方法としては、例えば、上側ケース及び下側ケースのうちの一方のケースは、レーザ透過性樹脂を用いてなり且つ平板状に形成され、他方のケースは、レーザ吸収性樹脂を用いてなり且つ平板状の底壁とこの底壁の周縁側から立ち上がる周壁とを有し、一方のケースの周縁側と他方のケースの周壁の先端側との当接部に、両ケースの当接方向に沿って一方のケース側から他方のケース側に向かってレーザを照射して両ケースを接合することができる。これにより、ケースに溶着のための外側に突出する部位を設ける必要がなく、流体フィルタの更なる小型化を図ることができる。さらに、また、レーザ溶着により両ケースを接合しているので、振動溶着により両ケースを接合するものに比べて、溶着バリの発生を抑制でき、濾過室内への溶着バリ等の異物の侵入を抑制できる。
【実施例】
【0022】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「自動変速機用流体フィルタ」として、車両用の自動変速機用オイルフィルタ(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)を例示する。このオイルフィルタは、通常、オイルを貯留する容器内に貯留オイルに浸漬するように配置されて使用される。
【0023】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1〜図3に示すように、流出口2を有する上側ケース3と、この上側ケース3との間で濾過室Sを形成し流入口4を有する下側ケース5と、この濾過室S内に配置される濾材7と、を備えている。
【0024】
上記上側ケース3は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、平板状の底壁3aと、この底壁3aの周縁側から立ち上がる周壁3bとを有している。また、この底壁3a上には、流入口4から後述のダスティ室内に流入されるオイルを濾材7の外周側を旋回するように案内する湾曲板状の案内部10が立ち上げられている。一方、下側ケース5は、レーザ透過性樹脂を用いてなり、平板状に形成されている。また、この下側ケース5の周縁側は上側ケース3の周壁3aの先端側と当接され、その当接部にはレーザLによる溶着部Wが形成されている(図4参照)。
【0025】
上記濾材7は、その軸方向の端部側が上側ケース3及び下側ケース5の間に挟持されている。この濾材7によって、上記濾過室Sは、濾材7の内周側であり且つ流出口2に連なるクリーン室11(本発明に係る「第1室」として例示する。)と、濾材7の外周側であり且つ流入口4に連なるダスティ室12(本発明に係る「第2室」として例示する。)と、に区画されている。
【0026】
また、上記濾材7は、図5及び図6に示すように、不織布製でひだ折状の折曲体7aを筒状に形成してなされている。この濾材7の有する多数のひだ7bにおいて互いに隣り合うひだ7bの濾材7の軸方向の端部側は接着剤により接着され、この端部側には接着層14が形成されている。また、この濾材7の軸方向の端部内周側15a及び端面側15bには、図4に示すように、縦断面略L字状のシール部17(本発明に係る「第1シール部」及び「第2シール部」として例示する。)が設けられている。このシール部17は、光硬化性樹脂を硬化させてなされている。
【0027】
上側ケース3の底壁3aには、図2及び図4に示すように、流出口2を形成する筒状部18に連なり、且つ、濾材7の軸方向の端部内周側15aに挿入されてシール部17に圧接する筒状の第1圧接部21aが設けられている。また、上側ケース3の底壁3aには、第1圧接部21aの外周側であり、且つ、濾材7の軸方向の端面側15bに圧接する環状の第2圧接部22aが設けられている。また、下側ケース5には、濾材7の軸方向の端部内周側15aに挿入されてシール部17に圧接する筒状の第1圧接部21bが設けられている。また、下側ケース5には、第1圧接部21bの外周側であり、且つ、濾材7の軸方向の端面側15bに圧接する環状の第2圧接部22bが設けられている。
【0028】
ここで、上記オイルフィルタ1の製造方法について説明する。先ず、上側ケース3の第1圧接部21a又は下側ケース5の第1圧接部21bに濾材7の軸方向の端部内周側15aを挿入した状態で、上側ケース3の周壁3aの先端側と下側ケース5の周縁側とを当接させて両ケース3,5の間に濾材7の軸方向の端部側を挟持させる。次に、その状態より両ケース3,5の当接部に、両ケース3,5の当接方向に沿って下側ケース5側から上側ケース3側に向かってレーザL(図2及び図4参照)を照射して両ケース3,5を接合して上記オイルフィルタ1が得られる。
【0029】
(2)オイルフィルタの作用
次に、上記構成のオイルフィルタ1の作用について説明する。図1に示すように、流入口4からダスティ室12内に流入されるオイルは、案内部10により濾材7の外周側を旋回して流れるように案内される。そして、その旋回するオイルは、濾材7の略全面域を通って均一に濾過されてクリーン室11に至り流出口2から外部に流出される。
【0030】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の自動変速機用オイルフィルタ1によると、濾材7は、筒状に形成され、濾過室S内を濾材7の内周側のクリーン室11と濾材7の外周側のダスティ室12とに区画するように濾材7の軸方向の端部側が上側ケース3及び下側ケース5の間に挟持されて濾過室S内に配置されているので、オイルフィルタ1の高さ寸法を濾材7の軸方向長さ寸法と略同じ値に設定できる。そのため、必要十分な濾過面積を確保しつつオイルフィルタ1の小型化を図ることができる。
【0031】
また、本実施例では、クリーン室11を流出口2に連絡し、ダスティ室12を流入口4に連絡したので、ケース3,5の外側の濾過前のオイルが両ケース3,5の接合箇所を介してケース3,5内に侵入しても、その濾過前のオイルは、濾材7で濾過されてからクリーン室11に流入される。そのため、濾過前のオイルが濾材7を通らずにクリーン室11にバイパスされることを防止することができる。
【0032】
また、本実施例では、下側ケース5を平板状に形成し、上側ケース3を、底壁3aと周壁3bとを有して構成し、下側ケース5の周縁側と上側ケース3の周壁3aの先端側との当接部にレーザLによる溶着部Wを形成するようにしたので、ケース3,5に溶着のための外側に突出する部位を設ける必要がなく、オイルフィルタ1の更なる小型化を図ることができる。さらに、レーザ溶着により両ケース3,5を接合しているので、振動溶着により両ケースを接合するものに比べて、溶着バリの発生を抑制でき、濾過室S内への溶着バリ等の異物の侵入を抑制できる。なお、振動溶着を採用すると、濾材7の軸方向の端部側と振動されるケース3,5との摺動により、ケース3,5に対する濾材7の軸方向の端部側のシール性が低下してしまう恐れがある。
【0033】
また、本実施例では、濾材7の軸方向の端部内周側15aにシール部17を設け、上側ケース3及び下側ケース5に筒状の第1圧接部21a,21bを設けたので、両ケース3,5の第1圧接部21a,21bが濾材7の軸方向の端部内周側15aに挿入されてシール部17に圧接される。そのため、ケース3,5に対して濾材7の軸方向の端部側をより確実にシールすることができる。また、第1圧接部21a,21bの濾材7の軸方向の端部内周側15aへの挿入によって、オイルフィルタ1の組付時にケース3,5に対して濾材7を正確な取付け位置に位置決めできるとともに、オイルフィルタ1の使用時に濾材7に高圧力がかかっても濾材7を位置保持できる。
【0034】
また、本実施例では、濾材7の軸方向の端面側15bにシール部17を設け、上側ケース3及び下側ケース5に環状の第2圧接部22a,22bを設けたので、両ケース3,5の第2圧接部22a,22bが濾材7のシール部17に圧接される。そのため、ケース3,5に対して濾材7の軸方向の端部側をより確実にシールすることができる。
【0035】
また、本実施例では、上側ケース3の底壁3aに案内部10を設けたので、案内部10により下側ケース5の流入口4からダスティ室12内に流入されるオイルが濾材7の外周側を旋回するように案内される。そのため、濾材7の外周側の略全面域でオイルが均等に濾過され、濾材7の一部で集中的にオイルを濾過することを防止することができる。特に、本実施例では、上側ケース3及び下側ケース5からなるケース(筐体)を、平面からみて、流出口2側である一端側から流入口4側である他端側に向かって先細りとなる形状(図1参照)に形成したので、流入口4から流入されるオイルを案内部10により更に効率的に案内できるとともに、オイルフィルタ1の更なる小型化を図ることができる。
【0036】
さらに、本実施例では、濾材7を、ひだ折状の折曲体7aを筒状に形成したので、濾過面積をより高めることができる。
【0037】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例において、例えば、図7に示すように、第1圧接部21a,21b及び/又は第2圧接部22a,22bにシール部17に向かって突出する突起24を設けるようにしてもよい。この場合、圧接部21a,21b、22a,22bがシール部17に圧接するときに突起24がシール部17に食い込むため、ケース3,5に対する濾材7の軸方向の端部側のシール性を更に高めることができる。
【0038】
また、上記実施例では、上側ケース3及び下側ケース5に、濾材7の軸方向の端部内周側15a及び端面側15bに設けたシール部17に圧接する第1圧接部21a,21b及び第2圧接部22a,22bを設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、上側ケース3及び下側ケース5に、濾材7の軸方向の端部内周側15aに設けたシール部26に圧接する第1圧接部27a,27bのみを設けるようにしてもよい。また、例えば、図9に示すように、上側ケース3及び下側ケース5に、濾材7の軸方向の端面側15bに設けたシール部28に圧接する第2圧接部29a,29bのみを設けるようにしてもよい。この場合、上側ケース3及び下側ケース5には、濾材7の内周側及び/又は外周側に係合して濾材の位置決めをする係合突起30を設けることが好ましい。
【0039】
また、上記実施例において、例えば、図10に示すように、上側ケース3の筒状部18の内周側に横方に延びるリブ32を設け、このリブ32に上下方向に延びる支持柱33(本発明に係る「連結部」として例示する。)を設け、この支持柱33の下端側と下側ケース5との当接部をレーザ溶着等により接合するようにしてもよい。この場合、支持柱33により両ケース3,5の間隔が所定間隔に保持されるため、ケース3,5に対する濾材7の軸方向の端部側のシール性の低下を防止することができる。
【0040】
また、上記実施例において、例えば、図11に示すように、上側ケース3の流出口2を形成する筒状部35(本発明に係る「連結部」として例示する。)を下側ケース3と当接するように形成し、この筒状部35の外周側にオイル流通用の複数の貫通穴36を形成し、この筒状部35の下端側と下側ケース5との当接部をレーザ溶着等により接合するようにしてもよい。この場合、筒状部35により両ケース3,5の間隔が所定間隔に保持されるため、ケース3,5に対する濾材7の軸方向の端部側のシール性の低下を防止することができる。
【0041】
また、上記実施例において、例えば、図12に示すように、濾材7の内周側に、周面に貫通穴39が形成された金属製で筒状の補強部材38を挿入するようにしてもよい。この場合、補強部材38により両ケース3,5の間に挟持される濾材7の軸方向の強度が補強されるため、ケース3,5に対する濾材7の軸方向の端部側のシール性の低下を防止できる。
【0042】
また、上記実施例では、上側ケース3を底壁3a及び周壁3bを有する縦断面略U字状とし、下側ケース5を平板状に形成する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、上側ケースを平板状に形成し、下側ケースを底壁及び周壁を有する縦断面略U字状としたり、上側ケース及び下側ケースを底壁及び周壁を有する縦断面略U字状としたりしてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、濾過室S内において、濾材7の内周側を流出口2に連なるクリーン室11とし、濾材7の外周側を流入口4に連なるダスティ室12としたが、これに限定されず、例えば、濾過室S内において、濾材7の内周側を流入口4に連なるダスティ室12とし、濾材7の外周側を流出口2に連なるクリーン室11としてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、シール部17に対する圧接部21a,21b、22a,22bの圧接により濾材7の軸方向の端部側をシールするようにしたが、これに限定されず、例えば、濾材7の軸方向の端部側を接着剤で両ケース3,5に接着するよういしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
車両等の自動変速機で用いられる流体を濾過する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0046】
1;オイルフィルタ、2;流出口、3;上側ケース、4;流入口、5;下側ケース、7;濾材、10;案内部、11;クリーン室、12;ダスティ室、15a;濾材の軸方向の端部内周側、15b;濾材の軸方向の端面側、17,26,28;シール部、21a,21b,27a,27b;第1圧接部、22a,22b,29a,29b;第2圧接部、33;支持柱、35;筒状部、L;レーザ、S;濾過室、W;溶着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出口を有する上側ケースと、
前記上側ケースとの間で濾過室を形成し、流入口を有する下側ケースと、
前記濾過室内に配置される濾材と、を備える自動変速機用流体フィルタであって、
前記濾材は、筒状に形成され、前記濾過室内を該濾材の内周側の第1室と該濾材の外周側の第2室とに区画するように該濾材の軸方向の端部側が前記上側ケース及び前記下側ケースの間に挟持されて前記濾過室内に配置されていることを特徴とする自動変速機用フィルタ。
【請求項2】
前記第1室は前記流出口に連なり、前記第2室は前記流入口に連なっている請求項1記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項3】
前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの一方のケースは平板状に形成され、他方のケースは、平板状の底壁と該底壁の周縁側から立ち上がる周壁とを有し、該一方のケースの周縁側と該他方のケースの該周壁の先端側との当接部にはレーザによる溶着部が形成されている請求項1又は2に記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項4】
前記濾材の軸方向の端部内周側には第1シール部が設けられており、
前記上側ケース及び前記下側ケースには、前記濾材の軸方向の端部内周側に挿入されて前記第1シール部に圧接する筒状の第1圧接部が設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項5】
前記濾材の軸方向の端面側には第2シール部が設けられており、
前記上側ケース及び前記下側ケースには、前記第2シール部に圧接する環状の第2圧接部が設けられている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項6】
前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの少なくとも一方のケースには、前記流入口から前記第2室内に流入される流体を前記濾材の外周側を旋回するように案内する案内部が設けられている請求項2記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項7】
前記濾材は、ひだ折状の折曲体を筒状に形成してなされている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタの製造方法であって、
前記上側ケース及び前記下側ケースの間に前記濾材の軸方向の端部側を挟持させ、その状態より前記上側ケース及び前記下側ケースの当接部を接合することを特徴とする自動変速機用フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−112090(P2011−112090A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266752(P2009−266752)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】