説明

自動変速機

【課題】前進4速の変速段を達成しながら、小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる自動変速機を提供すること。
【解決手段】本発明の自動変速機は、シングルピニオンの遊星歯車PG1及び遊星歯車PG2を備え、入力軸INはサンギヤS1に常時連結し、出力軸OUTはキャリヤPC2に常時連結し、リングギヤR1とサンギヤS2を常時連結する。そして、サンギヤS1とリングギヤR2を連結する第1クラッチC1と、キャリヤPC1とリングギヤR2を連結する第2クラッチC2と、キャリヤPC1の回転を係止する第1ブレーキB1と、回転メンバM1の回転を係止する第2ブレーキB2と、からなる4つの摩擦要素を備え、前進4速及び後退1速を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速装置として適用される有段式の自動変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2遊星・5摩擦要素により前進4速及び後退1速の変速段を達成する自動変速機としては、2個のシングルピニオン型遊星歯車と、2個のクラッチと、3個のブレーキを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-306855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自動変速機にあっては、前進4速及び後退1速の各変速段を達成するために、5個の摩擦要素を有している。このため、摩擦要素数を少なくすることができれば部品点数が低減するため、小型化・軽量化・低コスト化を実現する余地があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、少なくとも前進4速及び後退1速の変速段を達成しながら、小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、
第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のシングルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のシングルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
前記第1のサンギヤに常時連結する入力軸と、
前記第2のキャリヤに常時連結する出力軸と、
前記第1のリングギヤと前記第2のサンギヤを、常時連結する第1の回転メンバと、
前記第1のサンギヤと前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第1のキャリヤと前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記第1のキャリヤの回転を選択的に係止する第3の摩擦要素と、
前記第1の回転メンバの回転を選択的に係止する第4の摩擦要素と、
を備え、少なくとも前進4速及び後退1速を達成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の自動変速機にあっては、2個のシングルピニオン型遊星歯車と、4個の摩擦要素によって少なくとも前進4速及び後退1速の変速段を達成する。これにより、従来の自動変速機よりも摩擦要素数が少なくなって部品点数が低減するため、前進4速及び後退1速の変速段を達成しながら、小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】実施例1の自動変速機において前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。
【図3】(a)は実施例1の自動変速機における第1速(1st)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図4】(a)は実施例1の自動変速機における第2速(2nd)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図5】(a)は実施例1の自動変速機における第3速(3rd)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図6】(a)は実施例1の自動変速機における第4速(4th)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図7】(a)は実施例1の自動変速機における後退速(Rev)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図8】従来例の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図9】従来の自動変速機において前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。
【図10】従来の自動変速機における各変速段での速度線図である。
【図11】実施例2の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図12】(a)は実施例2の自動変速機における第1速(1st)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図13】(a)は実施例2の自動変速機における第2速(2nd)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図14】(a)は実施例2の自動変速機における第3速(3rd)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図15】(a)は実施例2の自動変速機における第4速(4th)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である。
【図16】(a)は実施例2の自動変速機における後退速(Rev)の変速段での変速作用説明図であり、(b)は速度線図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦要素構成を説明する。
【0011】
実施例1の自動変速機は、図1に示すように、第1の遊星歯車PG1と、第2の遊星歯車PG2と、入力軸INと、出力軸OUTと、第1の回転メンバM1と、第1クラッチC1(第1の摩擦要素)と、第2クラッチC2(第2の摩擦要素)と、第1ブレーキB1(第3の摩擦要素)と、第2ブレーキB2(第4の摩擦要素)と、トランスミッションケースTCと、を備えている。
【0012】
前記第1の遊星歯車PG1は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第1のサンギヤS1と、該第1のサンギヤS1に噛み合う第1のピニオンP1を支持する第1のキャリヤPC1と、前記第1のピニオンP1に噛み合う第1のリングギヤR1とからなる。
【0013】
前記第2の遊星歯車PG2は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第2のサンギヤS2と、該第2のサンギヤS2に噛み合う第2のピニオンP2を支持する第2のキャリヤPC2と、前記第2のピニオンP2に噛み合う第2のリングギヤR2とからなる。
【0014】
前記入力軸INは、駆動源(エンジン等)からの回転駆動トルクがトルクコンバータ等を介して入力される軸であり、前記第1のサンギヤS1に常時連結している。
【0015】
前記出力軸OUTは、プロペラシャフトやファイナルギヤ等を介して駆動輪へ変速後の回転駆動トルクを出力する軸であり、前記第2のキャリヤPC2に常時連結している。
【0016】
前記第1の回転メンバM1は、前記第1のリングギヤR1と前記第2のサンギヤS2を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
【0017】
前記第1クラッチC1は、前記第1のサンギヤS1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第1の摩擦要素である。
【0018】
前記第2クラッチC2は、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第2の摩擦要素である。
【0019】
前記第1ブレーキB1は、前記第1のキャリヤPC1の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し選択的に係止する第3の摩擦要素である。なお、この第1ブレーキB1と並列の位置に、ドライブ時にセルフロックし、コースト時にセルフ解放するワンウェイクラッチOWCが配置されている。
【0020】
前記第2のブレーキB2は、前記第1の回転メンバM1の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し選択的に係止する第4の摩擦要素である。
【0021】
前記第1の遊星歯車PG1と前記第2の遊星歯車PG2は、図1に示すように、駆動源が接続される前記入力軸INから前記出力軸OUTに向かって順に配列している。
【0022】
図2は、実施例1の自動変速機における締結作動表を示す図である。以下、図2に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
【0023】
実施例1の自動変速機は、4つの摩擦要素C1,C2,B1,B2のうち二つの同時締結の組み合わせにより、下記に述べるように前進4速及び後退1速の各変速段を達成する。
【0024】
第1速(1st)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2と第2ブレーキB2の同時締結により達成する。
【0025】
第2速(2nd)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第1ブレーキB1(またはワンウェイクラッチOWC)の同時締結により達成する。
【0026】
第3速(3rd)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2の同時締結により達成する。
【0027】
第4速(4th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2の同時締結により達成する。
【0028】
後退速(Rev)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。
【0029】
次に、作用を説明する。
実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「従来技術との対比による有利性」、「ワンウェイクラッチによる効果」に分けて説明する。
【0030】
[各変速段での変速作用]
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図3(a)のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第2ブレーキB2が同時締結される。
【0031】
この第2クラッチC2の締結により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2が直結される。第2ブレーキB2の締結により、第1の回転メンバM1がトランスミッションケースTCに固定される。
【0032】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図3(b)に示すように、第1のサンギヤS1に入力回転数が入力される。このため、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転を減速して第1のキャリヤPC1から出力する。この第1のキャリヤPC1の回転は、第2クラッチC2を介して第2のリングギヤR2にそのまま入力される。このため、サンギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のリングギヤR2の回転をさらに減速し、第2のキャリヤPC2の回転数が決まる。この第2のキャリヤPC2からの出力回転数(=入力回転数より低い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第1速の変速段が達成される。
【0033】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図4(a)のハッチングに示すように、ドライブ時、第1クラッチC1とワンウェイクラッチOWCが同時締結され、コースト時、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が同時締結される。
【0034】
この第1クラッチC1の締結により、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2が直結される。第1ブレーキB1又はワンウェイクラッチOWCの締結により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
【0035】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図4(b)に示すように、第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2に入力回転数が入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転を逆転して第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を介して第2のサンギヤS2にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2の回転数と第2のリングギヤR2の回転数(=入力回転数)が規定されることにより、第2のキャリヤPC2の回転数が決まる。この第2のキャリヤPC2からの出力回転数(=入力回転数より低く第1速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第2速の変速段が達成される。
【0036】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図5(a)のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が同時締結される。
【0037】
この第1クラッチC1の締結により、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2が直結される。第2ブレーキB2の締結と第1の回転メンバM1により、第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2がトランスミッションケースTCに固定される。
【0038】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図5(b)に示すように、第1クラッチC1を介して第2のリングギヤR2へ入力回転数が入力される。このため、サンギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、入力回転を減速し、第2のキャリヤPC2から出力する。この第2のキャリヤPC2からの出力回転数(=入力回転数より低く第2速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第3速の変速段が達成される。
【0039】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図6(a)のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2が同時締結される。
【0040】
この第1クラッチC1と第2クラッチC2の同時締結と第1の回転メンバM1により、第1の遊星歯車PG1において二つの回転要素S1,PC1が直結されて第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素S1,PC1,R1が一体に回転する状態にされ、第2の遊星歯車PG2において二つの回転要素S2,R2が直結されて第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転する状態にされると共に、入力軸INと第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2が直結される。
【0041】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図6(b)に示すように、第1,第2の遊星歯車PG1,PG2が入力回転数により一体に回転する。この第2の遊星歯車PG2の回転は、第2のキャリヤPC2から出力する。この第2のキャリヤPC2からの出力回転数(=入力軸INからの入力回転数と同じ回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、変速比1の第4速の変速段(直結変速段)が達成される。
【0042】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図7(a)のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1が同時締結される。
【0043】
この第2クラッチC2と第1ブレーキB1の同時締結により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2がトランスミッションケースTCに固定される。
【0044】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図7(b)に示すように、第1のサンギヤS1に入力回転数が入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転を逆転して第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を介して第2のサンギヤS2にそのまま入力される。このため、リングギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2の回転を減速し、第2のキャリヤPC2の回転数が決まる。この第2のキャリヤPC2からの出力回転数(=入力回転数とは逆方向の回転)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、後退速の変速段が達成される。
【0045】
[従来技術との対比による有利性]
図8は、従来例の自動変速機を示すスケルトン図である。図9は、従来例の自動変速機において前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。図10は、従来例の自動変速機における各変速段での速度線図である。以下、図8〜図10を用いて、従来技術との対比による実施例1の自動変速機の有利性を説明する。
【0046】
実施例1の自動変速機(図1,図2)と従来例の自動変速機(図8,図9)を対比すると、下記に列挙する点について、性能は同等であるということができる。
(変速性能)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、いずれも前進4速及び後退1速の変速段を達成する。
(ギヤ比幅)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、いずれもギヤ比の変更幅を表すレシオカバレッジ(=最低変速段ギヤ比/最高変速段ギヤ比:以下、「RC」という。)が、4以上を得ている。これにより、適正な段間比を保ちながらも、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を確保することができる。ここで、「適正な段間比」とは、各変速段での段間比をプロットし、プロットした各点を線により結んだ特性を描いた場合、ローギヤ側からハイギヤ側に向かって滑らかな勾配にて低下した後、横這い状態で推移するような特性線が描けることをいう。
【0047】
しかし、実施例1の自動変速機は、下記に列挙する「(a)基本構成」「(b)変速効率」「(c)後退動力性能」「(d)摩擦要素回転数」「(e)各変速段でのフリクション損失」で、従来例の自動変速機に比べて有利性を持つ。
【0048】
(a) 基本構成
遊星歯車と摩擦要素を用いて複数の変速段を得る場合、摩擦要素数が少ないほど自動変速機を構成する部品点数が減り、自動変速機の小型化・軽量化・低コスト化を実現できるため、自動変速機において摩擦要素数は少ないほど好ましい。
【0049】
従来例の自動変速機の場合、前進4速及び後退1速の変速段を達成するために、図8に示すように、2個のシングルピニオン型遊星歯車と、5個の摩擦要素(2個のクラッチ、3個のブレーキ)を用いている。これに対し、実施例1の自動変速機は、図1に示すように、2個のシングルピニオン型遊星歯車と、4個の摩擦要素(3個のクラッチ、1個のブレーキ)により前進4速及び後退1速の変速段を達成する。
【0050】
このため、実施例1の自動変速機では、従来の自動変速機に比べて摩擦要素数が一つ減っている。これにより、自動変速機を構成する部品点数が低減し、自動変速機の小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる。
【0051】
しかも、実施例1の自動変速機では、遊星歯車が全てシングルピニオン型遊星歯車で構成されている。そのため、ダブルピニオン型遊星歯車を使用する場合よりも、部品点数が低減し、自動変速機の小型化・軽量化・低コスト化をさらに図ることができる。
【0052】
(b) 変速効率
従来例の自動変速機は、図9に示すように、第3速を直結段とし、第1速及び第2速をアンダードライブ変速段として設定している。したがって、必要トルクに対してエンジン回転数が高めになってしまい、例えば、停止と発進走行を繰り返すような市街地走行等において使用頻度が高くなるアンダードライブ変速段での効率が悪い。
【0053】
これに対し、実施例1の自動変速機は、図2に示すように、第4速を直結段とし、第1速〜第3速をアンダードライブ変速段としている。したがって、例えば、停止と発進走行を繰り返すような市街地走行等において使用頻度の高いアンダードライブ変速段であっても、必要トルクに対してエンジン回転数を抑えることができ、燃費が向上して効率良くすることができる。さらに、アンダードライブ側での変速間隔が従来例に比べて小さくなるため、段間の駆動力段差や変速ショックを抑制することができる。
【0054】
(c) 後退動力性能
1速ギヤ比と後退ギヤ比は、発進加速性と登坂性能を決定付ける値であり、例えば、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1以下である場合、すなわち、後退ギヤ比が1速ギヤ比より低い場合では、前進発進時の駆動力よりも後退発進時の駆動力が低くなり、後退発進性が劣ってしまう。
【0055】
従来例の自動変速機の場合、図9に示すように、Rev/1st=0.826である。そのため、後退ギヤ比が1速ギヤ比より低く、後退時の駆動力不足が生じ、後退発進性が劣る。
【0056】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、図2に示すように、Rev/1st=1.250である。したがって、後退ギヤ比が1速ギヤ比よりも大きくなって後退発進性が劣ることがない。このため、後退時の駆動力不足を防止することができ、後退時において発進加速性と登坂性能を損なうことなく動作させることができる。
【0057】
(d) 摩擦要素回転数
自動変速機の摩擦要素は、その回転数が高くなるほど負担が大きくなるため、回転に耐え得るだけの強度を持たせる必要があるが、強度を上げると自動変速機全体としての重量が増加し、サイズが大型化してしまう。そのため、自動変速機において摩擦要素の回転数は低く抑えたほうが好ましい。
【0058】
従来例の自動変速機の場合、図10(a)〜(e)に示すように、例えば、第2速における第1のサンギヤS1及び第2のサンギヤS2や、第4速における第2のリングギヤR2のように、入力回転数に対して回転数が大幅に高くなるギヤが存在する。そのため、回転数が高くなるギヤの強度を高くする必要があり、自動変速機全体としての重量が増加し、サイズが大型化してしまう。
【0059】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、図3(b),図4(b),図5(b),図6(b),図7(b)にそれぞれ示すように、入力回転数に対して回転数が大幅に高くなるギヤが存在しない。これにより、各ギヤ強度を必要以上に高める必要がなくなり、重量増加・大型化を抑制することができる。
【0060】
(e) 各変速段でのフリクション損失
摩擦要素を締結して各変速段を得る場合、空転する摩擦要素(解放要素)で生じるオイル引き摺り等によりフリクション損失を避けることができないが、自動変速機としては、フリクション損失が少ないほど好ましいとされる。
【0061】
従来例の自動変速機の場合、前進4速の各変速段を達成するために、図9に示すように、各変速段で摩擦要素を二つ同時締結するようにしている。ここで、従来例の自動変速機は5個の摩擦要素を有している。このため、例えば、第1速段で空転する摩擦要素は、第2クラッチC2と第1ブレーキB1と第2ブレーキB2というように、各変速段において空転する摩擦要素は3個となる。従来例の自動変速機では、この空転する3個の摩擦要素でのオイル引き摺り等によるフリクション損失が大きくなり、駆動エネルギの伝達効率の悪化を招く。つまり、例えばエンジン車に従来例の自動変速機を適用する場合、空転する3個の摩擦要素によるフリクション損失が燃費性能の悪化を招く一因となる。
【0062】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、前進4速の各変速段を達成するため、図2に示すように、従来例と同様に各変速段で摩擦要素を二つ同時締結するようにしているが、摩擦要素数が4個である。このため、例えば、第1速段で空転する摩擦要素は、第1クラッチC1と第1ブレーキB1というように、各変速段において空転する摩擦要素は2個となる。したがって、従来例に比べ、空転する摩擦要素が少なく、空転摩擦要素でのフリクション損失が小さく抑えられ、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。つまり、例えばエンジン車に実施例1の自動変速機を適用する場合、燃費性能の向上が図られる。
【0063】
[ワンウェイクラッチによる効果]
実施例1の自動変速機は、第1のキャリヤPC1の回転を選択的に係止する第1ブレーキB1と並列の位置にワンウェイクラッチOWCが配置されている。
【0064】
これにより、例えば第1速段から第2速段へ変速する場合、ドライブ走行時にはワンウェイクラッチOWCがセルフロックするため、第1クラッチC1の締結制御と第2クラッチC2及び第2ブレーキB2の解放制御を行えばよい。すなわち、ワンウェイクラッチOWCについてはセルクロックするため制御が不要となる。また、第2速段から第3速段へ変速する場合、動力伝達経路にならないワンウェイクラッチOWCはセルフ解放するため、第2ブレーキB2の締結制御だけを行えばよく、ワンウェイクラッチOWCについては制御が不要となる。
【0065】
ここで、ワンウェイクラッチOWCを設けていない場合を考えると、例えば第1速段から第2速段への変速時、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の同時締結と、第2クラッチC2及び第2ブレーキB2の同時解放を制御する必要があり、制御が困難になってしまう。
【0066】
したがって、実施例1の自動変速機では、第1ブレーキB1と並列の位置にワンウェイクラッチOWCを設けたことで、変速制御を容易にすることができる。
【0067】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0068】
(1) 第1のサンギヤS1と、第1のリングギヤR1と、前記第1のサンギヤS1と前記第1のリングギヤR1に噛み合う第1のシングルピニオンP1を支持する第1のキャリヤPC1とからなる第1の遊星歯車PG1と、第2のサンギヤS2と、第2のリングギヤR2と、前記第2のサンギヤS2と前記第2のリングギヤR2に噛み合う第2のシングルピニオンP2を支持する第2のキャリヤPC2とからなる第2の遊星歯車PG2と、前記第1のサンギヤS1に常時連結する入力軸INと、前記第2のキャリヤPC2に常時連結する出力軸OUTと、前記第1のリングギヤR1と前記第2のサンギヤS2を、常時連結する第1の回転メンバM1と、前記第1のサンギヤS1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と、前記第1のキャリヤPC1の回転を選択的に係止する第3の摩擦要素(第1ブレーキB1)と、前記第1の回転メンバM1の回転を選択的に係止する第4の摩擦要素(第2ブレーキB2)と、を備え、前進4速を達成する構成とした。
このため、前進4速の変速段を達成しながら、小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる。
【0069】
(2) 前記第3の摩擦要素(第1ブレーキB1)と並列の位置に、ワンウェイクラッチを設けた構成とした。
このため、第3の摩擦要素を締結又は解放を含む変速動作時において、変速要素の制御を容易にすることができる。
【0070】
(3) 前記4つの摩擦要素のうち、二つの同時締結の組み合わせによる前進4速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第2ブレーキB2)の同時締結により達成する第1速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第2速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第4の摩擦要素(第2ブレーキB2)の同時締結により達成する第3速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)の同時締結により達成する第4速と、からなる構成とした。
このため、アンダードライブ変速段数が多くて使用頻度の高い変速段での効率が良くなる上、段間比の間隔が小さくなり、段間の駆動力段差や変速ショックを抑えることができる。また、各摩擦要素の回転数が高くならず、重量増加・大型化を抑制することができる。さらに、空転摩擦要素が少なく、フリクション損失を小さく抑えることで、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。
【0071】
(4) 前記4つの摩擦要素のうち、二つの同時締結の組み合わせにより達成する後退1速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する構成とした。
このため、後退発進性が低下せず、後退時の駆動力不足を防止できる。
【実施例2】
【0072】
実施例2は、2つの遊星歯車の一方をダブルピニオン型遊星歯車に変更した例である。
【0073】
まず、構成を説明する。
図11は、実施例2の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図11に基づいて実施例2の自動変速機の遊星歯車配列を説明する。
【0074】
実施例2の自動変速機は、図11に示すように、第1の遊星歯車PG1と、第2の遊星歯車PG2と、入力軸INと、出力軸OUTと、第1の回転メンバM1と、第1クラッチC1(第1の摩擦要素)と、第2クラッチC2(第2の摩擦要素)と、第1ブレーキB1(第3の摩擦要素)と、第2ブレーキB2(第4の摩擦要素)と、トランスミッションケースTCと、を備えている。
【0075】
前記第1の遊星歯車PG1は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第1のサンギヤS1と、該第1のサンギヤS1に噛み合う第1のピニオンP1を支持する第1のキャリヤPC1と、前記第1のピニオンP1に噛み合う第1のリングギヤR1とからなる。
【0076】
前記第2の遊星歯車PG2は、第2のダブルピニオンP2s,P2rを有するダブルピニオン型遊星歯車であり、第2のサンギヤS2と、該第2のサンギヤS2に噛み合うピニオンP2sと該ピニオンP2sに噛み合うピニオンP2rを支持する第2のキャリヤPC2と、前記ピニオンP2rに噛み合う第2のリングギヤR2とからなる。
【0077】
前記入力軸INは、駆動源(エンジン等)からの回転駆動トルクがトルクコンバータ等を介して入力される軸であり、前記第1のサンギヤS1に常時連結している。
【0078】
前記出力軸OUTは、プロペラシャフトやファイナルギヤ等を介して駆動輪へ変速後の回転駆動トルクを出力する軸であり、前記第2のリングギヤR2に常時連結している。
【0079】
前記第1の回転メンバM1は、前記第1のリングギヤR1と前記第2のサンギヤS2を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
【0080】
前記第1クラッチC1は、前記第1のサンギヤS1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第1の摩擦要素である。
【0081】
前記第2クラッチC2は、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第2の摩擦要素である。
【0082】
前記第1ブレーキB1は、前記第1のキャリヤPC1の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し選択的に係止する第3の摩擦要素である。なお、この第1ブレーキB1と並列の位置に、ドライブ時にセルフロックし、コースト時にセルフ解放するワンウェイクラッチOWCが配置されている。
【0083】
前記第2のブレーキB2は、前記第1の回転メンバM1の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し選択的に係止する第4の摩擦要素である。
【0084】
実施例2の自動変速機における摩擦要素の締結作動については、実施例1の自動変速機と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
次に、作用を説明する。
実施例1の自動変速機における「各変速段での変速作用」について説明する。
【0086】
[各変速段での変速作用]
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図12(a)のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第2ブレーキB2が同時締結される。
【0087】
この第2クラッチC2の締結により、第1のキャリヤPC1と第2のキャリヤPC2が直結される。第2ブレーキB2の締結により、第1の回転メンバM1がトランスミッションケースTCに固定される。
【0088】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図12(b)に示すように、第1のサンギヤS1に入力回転数が入力される。このため、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転を減速して第1のキャリヤPC1から出力する。この第1のキャリヤPC1の回転は、第2クラッチC2を介して第2のキャリヤPC2にそのまま入力される。このため、サンギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のキャリヤPC2の回転をさらに減速し、第2のリングギヤR2の回転数が決まる。この第2のリングギヤR2からの出力回転数(=入力回転数より低い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第1速の変速段が達成される。
【0089】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図13(a)のハッチングに示すように、ドライブ時、第1クラッチC1とワンウェイクラッチOWCが同時締結され、コースト時、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が同時締結される。
【0090】
この第1クラッチC1の締結により、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が直結される。第1ブレーキB1又はワンウェイクラッチOWCの締結により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
【0091】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図13(b)に示すように、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2に入力回転数が入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転を逆転して第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を介して第2のサンギヤS2にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2の回転数と第2のキャリヤPC2の回転数(=入力回転数)が規定されることにより、第2のリングギヤR2の回転数が決まる。この第2のリングギヤR2からの出力回転数(=入力回転数より低く第1速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第2速の変速段が達成される。
【0092】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図14(a)のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が同時締結される。
【0093】
この第1クラッチC1の締結により、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が直結される。第2ブレーキB2の締結と第1の回転メンバM1により、第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2がトランスミッションケースTCに固定される。
【0094】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図14(b)に示すように、第1クラッチC1を介して第2のキャリヤPC2へ入力回転数が入力される。このため、サンギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、入力回転を減速し、第2のリングギヤR2から出力する。この第2のリングギヤR2からの出力回転数(=入力回転数より低く第2速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第3速の変速段が達成される。
【0095】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図15(a)のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2が同時締結される。
【0096】
この第1クラッチC1と第2クラッチC2の同時締結と第1の回転メンバM1により、第1の遊星歯車PG1において二つの回転要素S1,PC1が直結されて第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素S1,PC1,R1が一体に回転する状態にされ、第2の遊星歯車PG2において二つの回転要素S2,PC2が直結されて第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転する状態にされると共に、入力軸INと第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2が直結される。
【0097】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図15(b)に示すように、第1,第2の遊星歯車PG1,PG2が入力回転数により一体に回転する。この第2の遊星歯車PG2の回転は、第2のリングギヤR2から出力する。この第2のリングギヤR2からの出力回転数(=入力軸INからの入力回転数と同じ回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、変速比1の第4速の変速段(直結変速段)が達成される。
【0098】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図16(a)のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1が同時締結される。
【0099】
この第2クラッチC2と第1ブレーキB1の同時締結により、第1のキャリヤPC1と第2のキャリヤPC2がトランスミッションケースTCに固定される。
【0100】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、図16(b)に示すように、第1のサンギヤS1に入力回転数が入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転を逆転して第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を介して第2のサンギヤS2にそのまま入力される。このため、キャリヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2の回転を僅かに減速し、第2のリングギヤR2の回転数が決まる。この第2のリングギヤR2からの出力回転数(=入力回転数とは逆方向の回転)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、後退速の変速段が達成される。
【0101】
このように、実施例1と比べて第2の遊星歯車PG2をダブルピニオン型遊星歯車としても、2遊星・4摩擦要素である本発明の自動変速機は成立し、前進4速の変速段を達成しながら、小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる。なお、他の作用については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0102】
次に、効果を説明する。
実施例2の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0103】
(5) 第1のサンギヤS1と、第1のリングギヤR1と、前記第1のサンギヤS1と前記第1のリングギヤR1に噛み合う第1のシングルピニオンP1を支持する第1のキャリヤPC1とからなる第1の遊星歯車PG1と、第2のサンギヤS2と、第2のリングギヤR2と、前記第2のサンギヤS2と前記第2のリングギヤR2に噛み合う第2のダブルピニオンP2s,P2rを支持する第2のキャリヤPC2とからなる第2の遊星歯車PG2と、前記第1のサンギヤS1に常時連結する入力軸INと、前記第2のリングギヤR2に常時連結する出力軸OUTと、前記第1のリングギヤR1と前記第2のサンギヤS2を、常時連結する第1の回転メンバM1と、前記第1のサンギヤS1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と、前記第1のキャリヤPC1の回転を選択的に係止する第3の摩擦要素(第1ブレーキB1)と、前記第1の回転メンバM1の回転を選択的に係止する第4の摩擦要素(第2ブレーキB2)と、を備え、前進4速及び後退1速を達成する構成とした。
このため、前進4速の変速段を達成しながら、小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる。
【0104】
以上、本発明の自動変速機を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0105】
実施例では、第1の遊星歯車PG1の歯数比ρ1及び第2の遊星歯車PG2の歯数比ρ2を、それぞれについて好適の値に設定する例を示した。しかし、各遊星歯車PG1,PG2の歯数比ρ1,ρ2は、歯数比設定が可能な範囲内の値であって、RC値の高いギヤ比や適切な段間比を得るように設定したものであれば、具体的な値は、実施例の値に限られるものではない。
【0106】
また、実施例では、入出力軸を同軸配置とするFRエンジン車に適用される自動変速機の例を示したが、FRエンジン車に限らず、FFエンジン車や、ハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。また、動力源としてエンジン回転数幅がガソリンエンジンよりも狭く、同排気量で比較した場合にトルクが低いディーゼルエンジンを動力源として搭載した車両の変速機としても適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
PG1 第1の遊星歯車
S1 第1のサンギヤ
PC1 第1のキャリヤ
R1 第1のリングギヤ
PG2 第2の遊星歯車
S2 第2のサンギヤ
PC2 第2のキャリヤ
R2 第2のリングギヤ
IN 入力軸
OUT 出力軸
M1 第1の回転メンバ
C1 第1クラッチ(第1の摩擦要素)
C2 第2クラッチ(第2の摩擦要素)
B1 第1ブレーキ(第3の摩擦要素)
B2 第2ブレーキ(第4の摩擦要素)
OWC ワンウェイクラッチ
TC トランスミッションケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のシングルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のシングルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
前記第1のサンギヤに常時連結する入力軸と、
前記第2のキャリヤに常時連結する出力軸と、
前記第1のリングギヤと前記第2のサンギヤを、常時連結する第1の回転メンバと、
前記第1のサンギヤと前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第1のキャリヤと前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記第1のキャリヤの回転を選択的に係止する第3の摩擦要素と、
前記第1の回転メンバの回転を選択的に係止する第4の摩擦要素と、
を備え、前進4速及び後退1速を達成することを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のシングルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のダブルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
前記第1のサンギヤに常時連結する入力軸と、
前記第2のリングギヤに常時連結する出力軸と、
前記第1のリングギヤと前記第2のサンギヤを、常時連結する第1の回転メンバと、
前記第1のサンギヤと前記第2のキャリヤの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第1のキャリヤと前記第2のキャリヤの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記第1のキャリヤの回転を選択的に係止する第3の摩擦要素と、
前記第1の回転メンバの回転を選択的に係止する第4の摩擦要素と、
を備え、前進4速及び後退1速を達成することを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された自動変速機において、
前記第3の摩擦要素と並列の位置に、ワンウェイクラッチを設けたことを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された自動変速機において、
前記4つの摩擦要素のうち、二つの同時締結の組み合わせによる前進4速は、
前記第2の摩擦要素と前記第4の摩擦要素の同時締結により達成する第1速と、
前記第1の摩擦要素と前記第3の摩擦要素の同時締結により達成する第2速と、
前記第1の摩擦要素と前記第4の摩擦要素の同時締結により達成する第3速と、
前記第1の摩擦要素と前記第2の摩擦要素の同時締結により達成する第4速と、
からなることを特徴とする自動変速機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された自動変速機において、
前記4つの摩擦要素のうち、二つの同時締結の組み合わせにより達成する後退1速は、前記第2の摩擦要素と前記第3の摩擦要素の同時締結により達成することを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−202431(P2012−202431A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65263(P2011−65263)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】