説明

自動採譜装置、音階識別プログラム、音階判別プログラム、エレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システムおよびエレクトリック三味線自動採譜システム

【課題】 三味線音楽を譜面化してその保存や再生に資することのできる自動採譜装置を提供すること。
【解決手段】 自動採譜装置は音源音階判読処理部および採譜処理部を備えて構成され、音源音階判読処理部は採譜対象とする弦楽器特有の調弦を登録して、この調弦に対応した採音された各弦の音階を周波数単位に解析し、A/D変換するという音源音階判読処理をし、採譜処理部はA/D変換後のデータ(数字表示音階)と登録周波数音階(デジタルデータ)とを比較して、比較結果が許容範囲内であれば採音された音階を正規の音階と見なし、その音階数字を譜面メモリーに保存する。かかる構成により音源から譜面を自動的に作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動採譜装置、音階識別プログラム、音階判別プログラム、エレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システムおよびエレクトリック三味線自動採譜システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
青森県は、伝統芸能の宝庫である。しかしその保存(特に音楽)方法は口承による伝承が主で、古くから譜面で子々孫々に伝える風習がほとんど無い状況にあった。このため、時代を経る毎に昔古来の節回しが正確に弟子に伝承されず誤って伝えられたり、一部では既に本来の唄い回しが消えつつあり、三味線伝承者やこれら地域伝統音楽保存会(一般市民)にとって、この伝統音楽の保存が今や切実な課題となってきている。
【0003】
本発明の元となった研究の目的は、地域伝統楽器(津軽三味線、南部三味線)の音源から、情報技術を駆使して「自動採譜」を行う装置を開発し、これらの問題を解決することにある。この採譜とは、音楽において楽曲を譜面として記述することを指す。本研究により、譜面に精通した専門家がいちいち師匠の演奏を採譜する手間が省け、地域伝統の音源さえあれば、その楽器固有の楽譜に展開することが容易となり、今後の伝統芸能の保存に一層貢献すると思われるものである。
【0004】
さて、自動採譜装置とは、楽曲の音源を入力〜分析〜解析〜譜面化の処理をするものであり、これまでも様々な研究(非特許文献[1]〜[3])がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】[1]松下史也、夏井雅典、田所嘉昭、“並列構成くし形フィルタによる広音域ピアノ楽音の音高推定法、情処研報、2007−MUS−71,pp.173−178,2007
【0006】
【非特許文献2】[2]坂内秀幸、夏井雅典、田所嘉昭、“くし形フィルタに基づく自動採譜システムの実現”、情処研報、2007−MUS−71,pp.13−18,2007
【0007】
【非特許文献3】[3]寺井優、田所嘉昭、“Resonator型くし形フィルタによる打楽器音を含む楽音の音高推定法、情処研報、2008−MUS−76,pp.119−124,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記本研究で扱おうとしている邦楽(津軽三味線、南部三味線等)楽器のような非エレクトリックの伝統的楽器においては、技術的な提案は従来特になされていない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、これら従来技術の状況を踏まえ、非エレクトリックの伝統的楽器、特に邦楽(津軽三味線、南部三味線等)楽器に着目し、それらの奏でる地域伝統音楽を譜面化してその保存や再生に資することのできる自動採譜装置、音階識別プログラム、音階判別プログラム、エレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システムおよびエレクトリック三味線自動採譜システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、後記発明を実施するための形態に詳述する過程を経て、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下のとおりである。
【0011】
(1) 音源音階判読処理部および採譜処理部を備えて構成される弦楽器用自動採譜装置であって、該音源音階判読処理部は、採譜対象とする弦楽器特有の調弦を登録して、この調弦に対応した採音された各弦の音階を周波数単位に解析し、A/D変換するという音源音階判読処理のなされる処理部であり、また該採譜処理部は、A/D変換後のデータ(数字表示音階)と登録周波数音階(デジタルデータ)とを比較して、比較結果が許容範囲内であれば、採音された音階を正規の音階と見なして、その音階数字を譜面メモリーに保存するという採譜処理のなされる処理部であり、かかる構成により音源から譜面を自動的に作成することのできる、自動採譜装置。
(2) 弦楽器の各弦の周波数範囲を予め登録しておき、採音された弦の音をスペクトル解析して他の弦との混信・共鳴を排除し、かかる単弦音のみの抽出を可能とする音源周波数解析処理のなされる音源周波数解析処理部をさらに備えていることを特徴とする、(1)に記載の自動採譜装置。
(3) 前記弦楽器は三味線であり、前記音源音階判読処理部でなされる処理は三味線音階判読処理であって、これは三味線特有の調弦たとえば本調子・2上がり・3下がり等を登録して、この調弦に対応した各弦の音階すなわち1本の弦で0〜18の度合を周波数単位に解析してA/D変換する処理であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の自動採譜装置。
【0012】
(4) 前記弦楽器は三味線であり、前記採譜処理部でなされる処理は、A/D変換後のデータ(数字表示音階)と登録周波数音階(デジタルデータ)とを比較して、比較結果が許容範囲内であれば採音された音階すなわち演奏者が弾いた正規の音階(“つぼ”:三味線譜面の音階は数字を表す)と見なし、この音階数字を譜面メモリーに保存する処理であることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の自動採譜装置。
(5) 前記弦楽器は三味線であり、前記音源周波数解析処理部でなされる処理は、三味線弦(1〜3弦)の周波数範囲を予め登録し、バチで弾いた弦の音をスペクトル解析し、他の弦との混信・共鳴を排除し、この単弦音のみの抽出を可能とする処理であることを特徴とする、(2)に記載の自動採譜装置。
【0013】
(6) 前記音源音階判読処理は、
音階識別素子を使用したマルチAgent方式により、
まず音源周波数解析処理部から送られてきた音階データが入力モジュールを経由して弦毎の音階判読処理で該当音が入っているかが判断され、単音であれば当該判別処理部が起動され、複層音の場合は複数の弦音階判別処理が同時に起動され、
その後先選択優先処理に従い、規定の音階が特定され入力順番に通信モジュールを経由して採譜処理部に移され、
この際、入力された音源周波数が音階に該当するかが、対象弦楽器特有情報の記載された所定の優先度(パラメータ)規定テーブルが参考とされて、各音階単位に機能が付加された音階判別Agentによって判断され、
Agent同士が予め登録された優先度規定テーブルを参考にして判断し、入力された音の音階を1個ずつ決める処理であることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の自動採譜装置。
【0014】
(7) 前記音階識別素子では、
<ステップA>入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルとが比較され、振動の該当弦と音階が特定され、
<ステップB>入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致と判断されれば<ステップC>に移行し、
<ステップC>音階に相当しない音、すなわちノイズと判断されてこの周波数は除去され、
<ステップD>次の音階周波数が入力され、
一方<ステップB>において当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合には<ステップE>に移行し、
<ステップE>対象弦楽器固有の奏法に該当するか否かが判別され、
<ステップF>対象弦楽器固有の奏法で無い場合(標準奏法)は<ステップH>に移行し、
<ステップH>この入力周波数該当の音階が登録され、次の音階周波数が入力され、
一方<ステップF>において対象弦楽器固有の奏法と判断された場合は<ステップG>に移行し、
<ステップG>対象弦楽器固有の奏法の所定の優先順位が比較され、この音階テーブルに準じて音符が矯正され、そして<ステップH>に移行し、
<ステップH>この矯正後の音階が登録される、
各ステップが実行されることを特徴とする、(6)に記載の自動採譜装置。
【0015】
(8) (6)に記載の自動採譜装置において前記音階識別素子により実行されるプログラムであって、
<ステップA>入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルとが比較され、振動の該当弦と音階が特定され、
<ステップB>入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致と判断されれば<ステップC>に移行し、
<ステップC>音階に相当しない音、すなわちノイズと判断されてこの周波数は除去され、
<ステップD>次の音階周波数が入力され、
一方<ステップB>において当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合には<ステップE>に移行し、
<ステップE>対象弦楽器固有の奏法に該当するか否かが判別され、
<ステップF>対象弦楽器固有の奏法で無い場合(標準奏法)は<ステップH>に移行し、
<ステップH>この入力周波数該当の音階が登録され、次の音階周波数が入力され、
一方<ステップF>において対象弦楽器固有の奏法と判断された場合は<ステップG>に移行し、
<ステップG>対象弦楽器固有の奏法の所定の優先順位が比較され、この音階テーブルに準じて音符が矯正され、そして<ステップH>に移行し、
<ステップH>この矯正後の音階が登録される、
各ステップが実行されることにより入力された音階が識別される、音階識別プログラム。
【0016】
(9) 前記三味線音階判読処理は、
音階(つぼ)識別素子を使用したマルチAgent方式により、
まず音源周波数解析処理部から送られてきた音階データが入力モジュールを経由して弦毎の音階判読処理で該当音が入っているかが判断され、単音であれば当該判別処理部が起動され、複層音の場合は複数の弦音階判別処理が同時に起動され、
その後先選択優先処理に従い、規定の音階が特定され入力順番に通信モジュールを経由して採譜処理部に移され、
この際、入力された音源周波数が音階(つぼ)に該当するかが、三味線特有情報の記載された指回し優先度(パラメータ)規定テーブルが参考とされて、各音階(つぼ)単位に機能が付加された音階判別Agentによって判断され、
入力音階情報が明らかに単音で無い場合は、予め登録されたきス(スクイ撥)またはハ(ハジキ指)等などのパターン情報によって、指回し特有の音階配列変換処理を行ない、
Agent同士が予め登録された優先度規定テーブルを参考にして判断し、その音階と種別(ス、ハ等)を1個ずつ決める処理であることを特徴とする、(3)に記載の自動採譜装置。
【0017】
(10) 前記三味線音階判読処理は、音階(つぼ)単位に前記音階(つぼ)識別素子同士の音階情報が比較される際、他のAgentと競合(相反する判断)した場合には、さらに優先度定数(パラメータ)同士を比較して音階と種別を再度決定する処理を含むことを特徴とする、(9)に記載の自動採譜装置。
(11) 前記三味線音階判読処理は、入力された音階が予め規定されたつぼより♭または♯であった場合には、不協和音の一部と判断し音階矯正機能が起動されて正規な音階に矯正される処理を含むことを特徴とする、(9)または(10)に記載の自動採譜装置。
(12) (9)ないし(11)のいずれかに記載の自動採譜装置において三味線音階判読処理を実行させるための、音階判別プログラム。
【0018】
(13) 前記音階識別素子では、
<ステップA>入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルとが比較され、振動の該当弦と音階(つぼ)が特定され、
<ステップB>入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致と判断されれば<ステップC>に移行し、
<ステップC>音階に相当しない音、すなわちノイズと判断されてこの周波数は除去され、
<ステップD>次の音階周波数が入力され、
一方<ステップB>において当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合には<ステップE>に移行し、
<ステップE>三味線固有の奏法(たとえば、指回し奏法など)に該当するか否かが判別され、
<ステップF>三味線固有の奏法で無い場合(標準奏法)は<ステップH>に移行し、
<ステップH>この入力周波数該当の音階が登録され、次の音階周波数が入力され、
一方<ステップF>において三味線固有の奏法と判断された場合は<ステップG>に移行し、
<ステップG>三味線固有の奏法(ス:スク撥、ハ:ハジキ指等)の優先順位が比較され、この音階テーブルに準じて音符が矯正され、そして<ステップH>に移行し、
<ステップH>この矯正後の音階が登録される、
各ステップが実行されることを特徴とする、(9)ないし(11)のいずれかに記載の自動採譜装置。
【0019】
(14) 本来非エレクトリックな伝統的弦楽器に弦専用独立ピックアップを備えたエレクトリック伝統的弦楽器と、(1)ないし(7)、(9)ないし(11)または(13)のいずれかに記載の自動採譜装置とからなるエレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システムであって、該エレクトリック伝統的弦楽器は弦の共振を避けるべく弦単位にピックアップマイクロフォンを装着することにより単独音階音(周波数)の抽出が可能であり、該エレクトリック伝統的弦楽器音源から譜面を自動的に作成することのできる、エレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システム。
(15) 三味線に弦専用独立ピックアップを備えたエレクトリック三味線と、(1)ないし(7)、(9)ないし(11)または(13)のいずれかに記載の自動採譜装置とからなるエレクトリック三味線自動採譜システムであって、該エレクトリック三味線は弦の共振を避けるべく弦単位にピックアップマイクロフォンを装着することにより単独音階音(周波数)の抽出が可能であり、該エレクトリック三味線音源から譜面を自動的に作成することのできる、エレクトリック三味線自動採譜システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動採譜装置、音階識別プログラム、音階判別プログラム、エレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システムおよびエレクトリック三味線自動採譜システムは上述のように構成されるため、これによれば、非エレクトリックの伝統的楽器、特に邦楽(津軽三味線、南部三味線等)楽器の奏でる地域伝統音楽を自動的に譜面化することができる。そして、伝統音楽の保存や再生に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の自動採譜装置の構成を示す説明図である。
【図2】西洋楽譜を示す説明図である。
【図3】文化譜と三味線の対応を説明する説明図である。
【図4P】本発明に係るエレクトリック三味線の全体を示す写真図である。
【図4】本発明に係る三味線音階判読処理のソフトウェア・アルゴリズムを示す説明図である。
【図5】本発明に係る音階識別素子の動作フローを示すフロー図である。
【0022】
【図6】本発明に係るエレクトリック三味線音源周波数特性(生音)を示すグラフである。
【図7】本発明自動採譜装置による採譜変換後の楽譜(生音)を示す説明図である。
【図8】改良された、本発明に係るエレクトリック三味線音源周波数特性を示すグラフである。
【図9】改良された、本発明自動採譜装置による採譜変換後の楽譜(生音)を示す説明図である。
【図10】エレキギター音源周波数特性(生音)を示すグラフである。
【図11】採譜変換後の楽譜(エレキギター)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、エレクトリック三味線とその自動採譜装置を実施例として、本発明完成の過程すなわち本研究の過程、および本発明を詳細に説明する。本発明がかかる実施例に限定されるものではない。
1.自動採譜装置
1.1 装置構成
図1に示すとおり本研究装置の構成は、三味線に弦専用独立ピックアップを備えたいわゆる“エレクトリック三味線”と、この音源から譜面を自動的に作成する“自動採譜処理部”から成る。その特徴として前者は弦の共振を避けるべく“弦単位にピックアップマイクロフォンを装着”し、単独音階音(周波数)の抽出を可能とした。
【0024】
一方「自動採譜処理部」は、
・音源周波数分析処理、
・三味線音階(つぼ)判読処理、
・採譜(文化譜や西洋楽譜に変換)処理、
・速度指定装置
などで構成される。まず、三味線で奏でた音を自動採譜装置に入力し、音源周波数分析処理で周波数を解析する。次に三味線音階判読処理で、その周波数と予め登録してある音階周波数を比較し偏差が許容範囲に入っていれば音階(つぼ)と特定し、採譜処理に移り文化譜または西洋譜面に変換する。
【0025】
1.2 西洋楽譜と三味線譜(文化譜)の比較
三味線のような純邦楽と称される日本固有の伝統音楽には元々楽譜がなく、明治42年坂上ヨウ(後の4世杵家弥七)によって「三絃楽譜」と言われる五線譜が初めて発行された。しかし、当時の邦楽愛好家には五線譜を理解する人がほとんど居なかったため、一般には中々普及しなかった。その後さらなる研究を重ね、新渡戸稲造博士の知遇を受けてようやく「三味線文化譜」が完成した経緯がある。この文化譜は初心者にも分かり易く、三味線音楽を民衆化するのに多大な貢献をした。現在では三味線音楽の主流のみならず、長唄、小唄、端唄等様々な分野で広く用いられている。ここで、西洋楽譜と三味線譜(文化譜)の違いを記載する。
【0026】
(1)西洋楽譜とは
西洋楽譜とは現在最も広く用いられている高音軸と時間軸とを持った点グラフの一種とみなされる楽譜のことである。
図2に示すとおり、主に用いられる記号として、音部記号、調合、拍子記号、音符、休符、臨時記号、演奏記号の他、言葉による標語などがある。
【0027】
(2)文化譜とは
文化譜とは、昔からあった三味線の譜面に、五線譜の要素を取り入れた一種のタブラチュア譜のことである。音程を表記する代わりに、演奏ポジション(つぼ)番号を表記する。「赤譜」とも呼ばれる。また、調弦という三味線の調律の状態がある。この状態の種類によって、一の糸、二の糸、三の糸の間の開放弦の差が違う。
図3と表1に調弦の種類と糸の対応を示す。
【0028】
【表1】







【0029】
(3)楽譜記号の対応
西洋不記号と文化譜記号の一部の対応関係を表2に示す。文化譜において、音符は押さえるつぼ番号を、休符は黒丸で表記する。また、音符、休符の長さは棒線の位置で表す。
【0030】
【表2】







【0031】
1.3 採譜対象楽器(津軽三味線、南部三味線)の指記号
津軽三味線固有の記号は様々な解説書(引用文献は文末に列挙 [4]−[8])として市販されているが、今回、代表的な指記号を表3にまとめる。津軽や南部三味線では独特の指回しや、バチと左手のコンビネーションで成り立つ奏法が少なくない。譜面だけ見ても実際に手の動きが思い浮かばない時や動きをある程度指示しておいた方が演奏者にとって極めて役に立つ反面、これらの指示記号は西洋譜面には無いもので、採譜の際極めて紛らわしく判読に難解になる点は否めない。本研究では、特に「ス」、「ハ」、トレモロ(トリル)等の検証では音符判読に難解を極めた。詳細は後述する。
【0032】
【表3】











【0033】
2.エレクトリック三味線
邦楽楽器の大半は電子的耐用に造られていない。邦楽特有の音質が損なわれるのが主な理由である。しかし、今回三味線をAcoustic音で収録しその音源を周波数分析した場合、
・騒音ノイズの影響や
・人間の耳に聞こえない微小な高周波
・低周波の影響
を遮断することが不可能なため、エレクトリック三味線を開発し、その音源をラインアウトで直接入力し譜面化することにした。
【0034】
図4Pは、本発明に係るエレクトリック三味線の全体を示す写真図である。エレクトリック三味線の特徴として図示されるとおり、
・弦毎に高性能ピックアップマイクロフォンを装着、
・絃の共振を極力排除、
・不要な倍音の排除、
さらにスケルトン仕様ではあるが、できるだけ生の三味線と同じ感覚で弾ける様に胴体構造も工夫した。その原理は、弦の振動を電気信号に変換しA/D変換後、音階(つぼ)に対応した周波数を抽出しスペクトル解析後、譜面化を行なった。
【0035】
3.自動採譜装置
3.1 自動採譜処理
図1に示したとおり、自動採譜装置は主に下記の処理から構成される。
(1)音源周波数解析処理:三味線弦(1〜3弦)の周波数範囲を予め登録し、バチで弾いた弦の音をスペクトル解析し、他の弦との混信・共鳴を排除し、この単弦音のみ抽出を可能とさせる。
(2)三味線音階判読処理:三味線特有の調弦(例・本調子、・2上がり、・3下がり)を登録し、この調弦に対応した各弦の音階(1本の弦で、0〜18の度合)を周波数単位に解析し、A/D変換する。
(3)採譜処理:A/D変換後のデータ(数字表示音階)と登録周波数音階(デジタルデータ)とを比較し、比較結果が許容範囲内であれば、演奏者が弾いた正規の音階(“つぼ”:三味線譜面の音階は数字を表す)と見なし、この音階数字を当該譜面メモリーに保存する。
【0036】
3.2 採譜における三味線特有の問題点
しかしながら、採譜処理において下記三味線特有の問題が発生した。たとえば、
(1)単音にビブラートをかけた場合、単音ではなく複数音階の束と認識する。
(2)ス(スクイ撥)とハ(ハジキ指)などの区別ができない。
(3)トレモロ(トリル)音の場合、入力音に譜面表記処理が追随できない。
などである。これらの解決のため、マルチAgentを使用して三味線音階(つぼ)判読処理を行なったので、以下記載する。
【0037】
3.3 マルチAgent方式による三味線音階(つぼ)判読処理
本処理では、入力された音階周波数を正しく認識させるために、マルチAgent(エージェント)を使用した判読処理を行なった。このエージェントとは、一般に広い意味で使用されているが、本発明においては、後述する三味線特有音を判別する優先度定数の判別や音符の配列を推定し、必要な時に必要な条件で必要な情報を動的に生成し、一弦〜三弦にまたがる音符の理想的な配列を交渉・協調処理を有する機能を指す。Agentの構成法は様々な分野で報告[9].[10]されてきているが、本研究ではマルチAgentによる三味線音階(つぼ)の判読を行なう。
【0038】
3.3.1 三味線音階判読処理
図4に特に核となる音階(つぼ)識別素子を使用したマルチAgent方式による音階判別ソフトウエア・アルゴリズムを示す。まず、音源周波数解析処理部から送られてきた音階データは、入力モジュールを経由して弦毎の音階判読処理で該当音が入っているか否かが判断される。単音であれば当該判別処理部が起動され、複層音の場合は複数の弦音階判別処理が同時に起動される。
【0039】
その後先選択優先処理に従い、規定の音階が特定され入力順番に通信モジュールを経由して採譜処理部に移る。この際、この入力された音源周波数が音階(つぼ)に該当するかを、各音階(つぼ)単位に機能が付加された音階判別Agentが判断する。この判断処理は、たとえば、3.2節にて述べた問題点(1)が発生した場合、一定時間内に音の変動が収まっているか、または継続しているかさらには次の音に移っているかなどを、音階(つぼ)単位に識別素子同士が音階情報を比較し合って解決する。この際、参考にするのは三味線特有情報を記載した表3の指回し優先度(パラメータ)規定テーブルである。
【0040】
入力音階情報が明らかに単音で無い場合、ス(スクイ撥)またはハ(ハジキ指)等などのパターン情報を予め登録しておき、指回し特有の音階配列変換処理を行なう。このようにAgent同士が予め登録された優先度規定テーブルを参考にして判断し、その音階と種別(ス、ハ等)を1個ずつ決めて行く。この比較の際、他のAgentと競合(相反する判断)した場合、さらに優先度定数(パラメータ)同士を比較して音階と種別を再度決定する。
また、この音階が所定の規定のつぼより♭または♯であった場合、あるいは1/4音または1/8音規定のつぼより♭または♯であった場合、不協和音の一部と判断し音階矯正機能が起動され、正規な音階に矯正される。
【0041】
3.3.2 音階識別素子の動作フローチャート
図5に音階識別素子の動作フローチャートを示し詳述する。まずステップAでは、入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルと比較し、振動の該当弦と音階(つぼ)を特定する。ステップBで入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致であれば、ステップCに移り、音階に相当しない音すなわちノイズと判断し、この周波数を除去し、ステップDで次の音階周波数を入力する。ステップBにおいて当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合、ステップEにおいて三味線固有の奏法(たとえば、指回し奏法など)に該当するか否かを判別する。
【0042】
ステップFにおいて、三味線固有の奏法で無い場合(標準奏法)、ステップHに移り、この入力周波数該当の音階を登録し、次の音階周波数を入力する。ステップFにおいて、三味線固有の奏法と判断した場合、ステップGに移行し(ス:スク撥、ハ:ハジキ指等)の優先順位を比較し、この音階テーブルに準じて音符を矯正する。そしてステップHに移り、この矯正後の音階を登録する。
【0043】
4.試作機による実験と検証
図4Pに示すエレクトリック三味線を使用して、図1の構成で実験を行なった。音源に使用した楽曲は「さんさ時雨」である。本曲は比較的ゆっくりした曲ではあるが、たとえばカ(返し)やス(すべり)、様々な音高、テンポ、パターンリフレインが含まれるなど、マルチAgentの有機的な動作が確認できるため、選曲した。
なお、図中「SA」は、Supervisor Agentである。
【0044】
4.1.1 三味線音源周波数の解析
図6に、エレクトリック三味線(以下、「エレキ三味線」ともいう。)音源を入力した際の音源周波数特性を示す。また、
図7は、自動採譜装置による採譜変換後の楽譜(生音)を示す説明図である。図6に示すとおり、音源周波数は帯域100Hz〜数KHzの中で倍音の山とその周波数の増減に対応して音符の塊として検出される。本発明(以下、「本研究方式」ともいう。)を使用しないでこのまま採譜化した場合、図7に示すとおり基本音の採譜はできたものの、雑音やそれに相当する不要な音符が付加され原曲の音源譜面にはほど遠い結果となった。
【0045】
この要因として、大きく2つの理由が挙げられる。
(1)津軽三味線特有の奏法:
(1)−1 対象とする該当音が振動する前に撥が先に弦に当たるため、その撥の当たる振動音が対象音前後に音符として記録される。
(1)−2 フレットレス型弦楽器であるため、目的音階に至る過程でつぼを押さえる時に発生する(人間の耳に聴こえない)微小なずれ(スベリ音)が生じ、それが記録される。
【0046】
(2)電気ノイズや共振音の影響:
(2)−1 電気楽器特有のノイズ(たとえば53Hzハム音や電源ノイズ)がハード的に含まれる。
(2)−2 ピックアップマイクロフォンの感度を上げた場合、撥で弦を振動させなくても人間の耳に聴こえない振動音が自然発生している。
【0047】
上記(2)の場合、ノイズカット用のローパスフィルターやバンドパスフィルターである程度解決できるものの、(1)は三味線やフレットレス楽器特有の奏法に相当するため、奏者の意図に反する不要な音を排除して原曲に近い譜面を自動作成するには極めて難解な問題であると考えられた。
【0048】
4.1.2 本研究方式の適用
図8は、改良された、本発明に係るエレクトリック三味線音源周波数特性を示すグラフである。また、
図9は、同じく改良された、本発明自動採譜装置による採譜変換後の楽譜(生音)を示す説明図である。本研究方式(本発明)と電気ノイズ対策用フィルターを併用し、上記と全く同じ条件で採譜化を行なった結果、図8および図9に示すとおり、約70%〜80%の認識度で原曲の譜面化が行なわれた。このように、「マルチAgent方式による三味線音階(つぼ)判読処理」の効果は優れたものであることが示された。
【0049】
4.1.3 実験結果の検討
この実験に先立ち、三味線以外のフレット型弦楽器(例:エレキギター)を使って同様に測定した。この結果、図10、図11に示すとおり音階認識の基点となる音源周波数の立ち上がり・立ち下り分解能は格段に上がったものの、弦特有に発生する安定振動迄の時間差が、ピアノ等の鍵盤楽器のそれと認識率に格段の差があることが分かった。
【0050】
やはり、フレットレス弦楽器の採譜は予想以上に難解である上、津軽三味線あるいは南部三味線特有の指回しや撥さばきに充分配慮した設計をすることが、製品化には不可欠であると考えられた。しかしながら、Agent機能に充分学習させた上で、音階認識アルゴリズムをエンハンスし、さらなる向上を図ることは充分に可能である。
【0051】
5.まとめ
本実施例では、伝統音楽(津軽・南部三味線)保存用自動採譜装置について、マルチAgent方式を使用して入力音源周波数に対応する音階(つぼ)の判別方法と津軽三味線特有の音階解析方法の効果を実証した。本方式によれば、フレットの無い多くの日本古来の伝統邦楽楽器の譜面化も可能となり、基本技術の応用範囲も楽器のみならず、将来は声楽にも適用可能と考えられる。
【0052】
引用文献
[4]木下伸市、津軽三味線スタイルブック、2005
[5]小山貢、津軽三味線小山貢民謡集第一集、2001
[6]野口啓吉、楽しい三味線曲集、2007
[7]本篠秀太郎、和の楽しみ「本篠秀太郎の三味線ちりちり連、2003
[8]上妻宏光、永遠の詩、2005
[9]J.Kosakaya,H.Tadokoro and Y.Inazumi,“Cooperative Control Technology with ITP Method for SCADA Systems”, IEICE,Vol.E91−D,NO.8,Aug.2008
[10]J.Kosakaya,K.Morisaki,“Electronic Music Stand Equipment”,IEEE 21th international conference of AI, Proceedings,pp.34−46 vol.3,Gelendzhik,Russia,Sep.,2006.
【産業上の利用可能性】
【0053】
地域伝統音楽(特に津軽三味線、南部三味線)を、次の時代を担う若年層演奏者に、口伝ではなく、未来永劫譜面として正確に記録する技術が、特に地域伝統芸能継承者や市の地域伝統音楽保存会より強く望まれている。本発明に含まれる、三味線に弦単位のピックアップマイクロフォンを備えたいわゆる“エレクトリック三味線”と、この音源から譜面を自動的に作成する自動採譜装置では、音源の解析処理、採譜処理、譜面の記録処理に関する基礎技術を確立することができた。したがって、伝統音楽に関連する各産業分野、たとえば楽器製作、エンターテインメント、観光その他の諸産業分野において利用価値の高い発明である。























【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源音階判読処理部および採譜処理部を備えて構成される弦楽器用自動採譜装置であって、該音源音階判読処理部は、採譜対象とする弦楽器特有の調弦を登録して、この調弦に対応した採音された各弦の音階を周波数単位に解析し、A/D変換するという音源音階判読処理のなされる処理部であり、また該採譜処理部は、A/D変換後のデータ(数字表示音階)と登録周波数音階(デジタルデータ)とを比較して、比較結果が許容範囲内であれば、採音された音階を正規の音階と見なして、その音階数字を譜面メモリーに保存するという採譜処理のなされる処理部であり、かかる構成により音源から譜面を自動的に作成することのできる、自動採譜装置。
【請求項2】
弦楽器の各弦の周波数範囲を予め登録しておき、採音された弦の音をスペクトル解析して他の弦との混信・共鳴を排除し、かかる単弦音のみの抽出を可能とする音源周波数解析処理のなされる音源周波数解析処理部をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の自動採譜装置。
【請求項3】
前記弦楽器は三味線であり、前記音源音階判読処理部でなされる処理は三味線音階判読処理であって、これは三味線特有の調弦たとえば本調子・2上がり・3下がり等を登録して、この調弦に対応した各弦の音階すなわち1本の弦で0〜18の度合を周波数単位に解析してA/D変換する処理であることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動採譜装置。
【請求項4】
前記弦楽器は三味線であり、前記採譜処理部でなされる処理は、A/D変換後のデータ(数字表示音階)と登録周波数音階(デジタルデータ)とを比較して、比較結果が許容範囲内であれば採音された音階すなわち演奏者が弾いた正規の音階(“つぼ”:三味線譜面の音階は数字を表す)と見なし、この音階数字を譜面メモリーに保存する処理であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の自動採譜装置。
【請求項5】
前記弦楽器は三味線であり、前記音源周波数解析処理部でなされる処理は、三味線弦(1〜3弦)の周波数範囲を予め登録し、バチで弾いた弦の音をスペクトル解析し、他の弦との混信・共鳴を排除し、この単弦音のみの抽出を可能とする処理であることを特徴とする、請求項2に記載の自動採譜装置。
【請求項6】
前記音源音階判読処理は、
音階識別素子を使用したマルチAgent方式により、
まず音源周波数解析処理部から送られてきた音階データが入力モジュールを経由して弦毎の音階判読処理で該当音が入っているかが判断され、単音であれば当該判別処理部が起動され、複層音の場合は複数の弦音階判別処理が同時に起動され、
その後先選択優先処理に従い、規定の音階が特定され入力順番に通信モジュールを経由して採譜処理部に移され、
この際、入力された音源周波数が音階に該当するかが、対象弦楽器特有情報の記載された所定の優先度(パラメータ)規定テーブルが参考とされて、各音階単位に機能が付加された音階判別Agentによって判断され、
Agent同士が予め登録された優先度規定テーブルを参考にして判断し、入力された音の音階を1個ずつ決める処理であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の自動採譜装置。
【請求項7】
前記音階識別素子では、
<ステップA>入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルとが比較され、振動の該当弦と音階が特定され、
<ステップB>入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致と判断されれば<ステップC>に移行し、
<ステップC>音階に相当しない音、すなわちノイズと判断されてこの周波数は除去され、
<ステップD>次の音階周波数が入力され、
一方<ステップB>において当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合には<ステップE>に移行し、
<ステップE>対象弦楽器固有の奏法に該当するか否かが判別され、
<ステップF>対象弦楽器固有の奏法で無い場合(標準奏法)は<ステップH>に移行し、
<ステップH>この入力周波数該当の音階が登録され、次の音階周波数が入力され、
一方<ステップF>において対象弦楽器固有の奏法と判断された場合は<ステップG>に移行し、
<ステップG>対象弦楽器固有の奏法の所定の優先順位が比較され、この音階テーブルに準じて音符が矯正され、そして<ステップH>に移行し、
<ステップH>この矯正後の音階が登録される、
各ステップが実行されることを特徴とする、請求項6に記載の自動採譜装置。
【請求項8】
請求項6に記載の自動採譜装置において前記音階識別素子により実行されるプログラムであって、
<ステップA>入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルとが比較され、振動の該当弦と音階が特定され、
<ステップB>入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致と判断されれば<ステップC>に移行し、
<ステップC>音階に相当しない音、すなわちノイズと判断されてこの周波数は除去され、
<ステップD>次の音階周波数が入力され、
一方<ステップB>において当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合には<ステップE>に移行し、
<ステップE>対象弦楽器固有の奏法に該当するか否かが判別され、
<ステップF>対象弦楽器固有の奏法で無い場合(標準奏法)は<ステップH>に移行し、
<ステップH>この入力周波数該当の音階が登録され、次の音階周波数が入力され、
一方<ステップF>において対象弦楽器固有の奏法と判断された場合は<ステップG>に移行し、
<ステップG>対象弦楽器固有の奏法の所定の優先順位が比較され、この音階テーブルに準じて音符が矯正され、そして<ステップH>に移行し、
<ステップH>この矯正後の音階が登録される、
各ステップが実行されることにより入力された音階が識別される、音階識別プログラム。
【請求項9】
前記三味線音階判読処理は、
音階(つぼ)識別素子を使用したマルチAgent方式により、
まず音源周波数解析処理部から送られてきた音階データが入力モジュールを経由して弦毎の音階判読処理で該当音が入っているかが判断され、単音であれば当該判別処理部が起動され、複層音の場合は複数の弦音階判別処理が同時に起動され、
その後先選択優先処理に従い、規定の音階が特定され入力順番に通信モジュールを経由して採譜処理部に移され、
この際、入力された音源周波数が音階(つぼ)に該当するかが、三味線特有情報の記載された指回し優先度(パラメータ)規定テーブルが参考とされて、各音階(つぼ)単位に機能が付加された音階判別Agentによって判断され、
入力音階情報が明らかに単音で無い場合は、予め登録されたきス(スクイ撥)またはハ(ハジキ指)等などのパターン情報によって、指回し特有の音階配列変換処理を行ない、
Agent同士が予め登録された優先度規定テーブルを参考にして判断し、その音階と種別(ス、ハ等)を1個ずつ決める処理であることを特徴とする、請求項3に記載の自動採譜装置。
【請求項10】
前記三味線音階判読処理は、音階(つぼ)単位に前記音階(つぼ)識別素子同士の音階情報が比較される際、他のAgentと競合(相反する判断)した場合には、さらに優先度定数(パラメータ)同士を比較して音階と種別を再度決定する処理を含むことを特徴とする、請求項9に記載の自動採譜装置。
【請求項11】
前記三味線音階判読処理は、入力された音階が予め規定されたつぼより♭または♯であった場合には、不協和音の一部と判断し音階矯正機能が起動されて正規な音階に矯正される処理を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の自動採譜装置。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかに記載の自動採譜装置において三味線音階判読処理を実行させるための、音階判別プログラム。
【請求項13】
前記音階識別素子では、
<ステップA>入力音源周波数と全ての音階周波数テーブルとが比較され、振動の該当弦と音階(つぼ)が特定され、
<ステップB>入力音階周波数がいかなる音階(M弦のN音階)にも不一致と判断されれば<ステップC>に移行し、
<ステップC>音階に相当しない音、すなわちノイズと判断されてこの周波数は除去され、
<ステップD>次の音階周波数が入力され、
一方<ステップB>において当該音階周波数(M弦のN音階)と一致した場合には<ステップE>に移行し、
<ステップE>三味線固有の奏法(たとえば、指回し奏法など)に該当するか否かが判別され、
<ステップF>三味線固有の奏法で無い場合(標準奏法)は<ステップH>に移行し、
<ステップH>この入力周波数該当の音階が登録され、次の音階周波数が入力され、
一方<ステップF>において三味線固有の奏法と判断された場合は<ステップG>に移行し、
<ステップG>三味線固有の奏法(ス:スク撥、ハ:ハジキ指等)の優先順位が比較され、この音階テーブルに準じて音符が矯正され、そして<ステップH>に移行し、
<ステップH>この矯正後の音階が登録される、
各ステップが実行されることを特徴とする、請求項9ないし11のいずれかに記載の自動採譜装置。
【請求項14】
本来非エレクトリックな伝統的弦楽器に弦専用独立ピックアップを備えたエレクトリック伝統的弦楽器と、請求項1、2、3、4、5、6、7、9、10、11または13のいずれかに記載の自動採譜装置とからなるエレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システムであって、該エレクトリック伝統的弦楽器は弦の共振を避けるべく弦単位にピックアップマイクロフォンを装着することにより単独音階音(周波数)の抽出が可能であり、該エレクトリック伝統的弦楽器音源から譜面を自動的に作成することのできる、エレクトリック伝統的弦楽器自動採譜システム。
【請求項15】
三味線に弦専用独立ピックアップを備えたエレクトリック三味線と、請求項1、2、3、4、5、6、7、9、10、11または13のいずれかに記載の自動採譜装置とからなるエレクトリック三味線自動採譜システムであって、該エレクトリック三味線は弦の共振を避けるべく弦単位にピックアップマイクロフォンを装着することにより単独音階音(周波数)の抽出が可能であり、該エレクトリック三味線音源から譜面を自動的に作成することのできる、エレクトリック三味線自動採譜システム。























【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4P】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−224430(P2010−224430A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74134(P2009−74134)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許 出願(平成20年度、総務省委託研究開発SCOPE研究補助金(082302001)、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(503116257)学校法人八戸工業大学 (5)
【Fターム(参考)】