自動搬送システム
【課題】導線によらない自律走行区間を含む自動搬送システムにおいて、シンプルなシステム構成によりコストを抑えたシステムを提供すること。
【解決手段】自動搬送システム1は、自動搬送車2が追従可能なガイドライン11、12が経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、第1の追従区間と第2の追従区間との間に配置され、自動搬送車2が自律走行する自律走行区間と、自律走行区間の自動搬送車2を第2の追従区間のガイドライン12に復帰させるための復帰パターン100が敷設された復帰走行区間と、を含み、自動搬送車2は、復帰パターン100の外縁101が検出されたときに追従走行制御に切り換えられる。
【解決手段】自動搬送システム1は、自動搬送車2が追従可能なガイドライン11、12が経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、第1の追従区間と第2の追従区間との間に配置され、自動搬送車2が自律走行する自律走行区間と、自律走行区間の自動搬送車2を第2の追従区間のガイドライン12に復帰させるための復帰パターン100が敷設された復帰走行区間と、を含み、自動搬送車2は、復帰パターン100の外縁101が検出されたときに追従走行制御に切り換えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められた経路に沿って自動搬送車を自動走行させて物品等を搬送する自動搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、工場内の予め設定された経路に沿って走行する自動搬送車が知られている。自動搬送車は、駆動用のモータやバッテリ等を備えているほか、床面に敷設された磁気テープ等の導線を検出するための検出センサを備えている。このような自動搬送車にワークを積載すれば、導線が敷設された所定の経路に沿って無人でワークを搬送できる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
さらに、自動搬送車を走行させる経路中に、導線が敷設されていない自律走行領域を含み、その自律走行領域から導線へ復帰させる自動搬送システムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この自動搬送システムでは、自律走行領域を挟み込むように導線への誘導路が延設されている。このシステムでは、自律走行領域側から見て右側の誘導路と左側の誘導路とで発信電波の周波数が相違しており、自動搬送車側で受信電波の周波数を検知することで導線に復帰するための進路を判断可能である。
【0004】
しかしながら、前記従来の自動搬送システムでは、次のような問題がある。すなわち、2種類の誘導路を敷設する必要があると共に、自動搬送車側でも2種類の誘導路を区別するためのセンサ等が必要となるので、システム構成が複雑化となりコストアップが招来されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−177508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、導線によらない自律走行区間を含む自動搬送システムにおいて、シンプルなシステム構成の低コストのシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、予定された経路に沿って自動搬送車を自動走行させるための自動搬送システムであって、
前記自動搬送車が追従可能な導線が前記経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、
前記経路中、前記第1の追従区間と前記第2の追従区間との間に配置され、前記自動搬送車が自律走行する自律走行区間と、
前記自律走行区間の自動搬送車を前記第2の追従区間の導線に復帰させるためのパターンであって、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向の両外側に当たる外縁が前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる復帰パターンが敷設された復帰走行区間と、を含み、
前記自動搬送車は、前記導線又は前記復帰パターンに追従して走行するための追従走行制御、及び前記導線にも前記復帰パターンにもよらずに自律走行するための自律走行制御を実行可能な走行制御手段と、
前記復帰パターン及び前記導線を検出する検出センサと、
前記復帰パターンの外縁を検出する外縁検出手段と、
前記検出センサにより前記復帰パターンが最初に検出された後、前記外縁検出手段により前記外縁が検出されたときに前記自律走行制御から前記追従走行制御に切り換える制御切換手段と、を備えた自動搬送システムにある(請求項1)。
【0008】
本発明の自動搬送システムでは、前記第2の追従区間と前記自律走行区間との間に前記復帰パターンが敷設された復帰走行区間が設けられている。この復帰パターンでは、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向の両外側に位置する前記外縁が、前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がっている。
【0009】
一方、本発明の自動搬送システムの自動搬送車は、前記復帰パターン及び前記導線を検出する前記検出センサと、前記復帰パターンの外縁を検出する前記外縁検出手段と、走行制御のモードを切り換える前記制御切換手段と、を備えている。この制御切換手段は、前記復帰パターンが検出されたのみでは、前記追従走行制御への切換を実行しない。前記自律走行区間を経て前記復帰パターンが検出されたのみで直ちに前記追従走行制御に切り換えると、被検出部分のパターン形状等に応じて追従走行制御による挙動が大きくなり、前記自動搬送車の走行状態が不安定に陥るおそれがあるからである。
【0010】
そこで、前記制御切換手段は、前記復帰パターンが検出されたのみでは前記追従走行制御への切換を実行することなく、その後、前記外縁が検出されたときに初めて前記追従走行制御への切換を実行する。例えば、前記復帰パターンの検出状態を経由して、前記第2の追従区間の導線を見込んで左側に当たる外縁に到達したときに前記追従走行制御への切換を実行すれば、前記復帰パターンの左側に逸脱しないように右方向に正しく操舵され得る。
【0011】
このように、本発明の自動搬送システムの自動搬送車は、前記復帰パターンを最初に検出した後、前記外縁を検出したときに前記追従走行制御への切換を実行することで、前記第2の追従区間に向かって正しく操舵され得る。それ故、前記第2の追従区間に向かう進路が左方向か右方向かを表す情報を、例えば、発信電波の周波数や磁極性等により表して前記復帰パターンに仕込んでおく必要がない。また、前記自動搬送車側では、前記進路が左方向か右方向かを表す情報を前記復帰パターンから取り込むための特別な機能をセンサ等に具備させる必要がない。
【0012】
このように、本発明の自動搬送システムは、前記自律走行区間を含むシステムであっても、複雑なシステム構成とはならず、低コストの優れた特性のシステムとなっている。
【0013】
本発明の自動搬送システムにおける導線及び復帰パターンとしては、例えば、磁気や、電波や、光等を発生するパターンであっても良いが、色や反射率や模様等が周囲とは異なるパターンであっても良い。前記検出センサとしては、磁気や電波や光を検出するセンサ等を採用できる。特に、色や模様等によるパターンであれば、光の強度分布を1次元的に検出するラインセンサや、2次元的に検出する撮像素子等の検出センサを採用できる。
【0014】
なお、前記導線及び前記復帰パターンの検出方法として、同一仕様の検出方法を採用することは必須ではない。一方、同一仕様の検出方法を採用すれば、前記検出センサを共用できるため、コスト的に有利となる。
【0015】
また、前記検出センサは、横方向に幅広く延設された検出エリアを備え、該検出エリアのどの部分が前記導線又は前記復帰パターンを検出しているかを検知可能であり、
前記外縁検出手段は、前記検出センサが前記復帰パターンを最初に検出した後、前記検出エリアの一方の端部側から非検出状態に移行したときに前記外縁を検出することが好ましい(請求項2)。
この場合には、前記検出エリアによる検出情報に基づいて、効率良く前記外縁を検出できるようになる。
【0016】
また、前記復帰パターンは、前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる略V字状をなすように復帰導線が敷設されたパターンであることが好ましい(請求項3)。
前記復帰導線を末広がり状に延設すれば、前記復帰パターンの面積を抑制できるので、設置容易性を向上できると共に設置コストを抑制できる。なお、前記復帰導線は、前記導線と同じ仕様であっても良い。
【0017】
また、前記自動搬送車は、自律航法による自律走行を可能にする自律航法手段を備えていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、前記自律走行区間において前記自動搬送車に作用する外乱、例えば、前記自動搬送車の車体の向きを変動させるような外力、床面のスベリや起伏等に対してある程度、対応できるようになる。なお、前記自律航法手段は、前記自動搬送車の現在位置等の測位手段、及び測位に必要な各種情報を検出するためのセンサ等により構成される。センサとしては、例えば、角速度センサ、加速度センサ、速度センサ、GPSセンサ等を利用可能である。これらのセンサは、システムの適用環境や、要求される測位精度等に応じて、適宜、選択的に組み合わせ可能である。
【0018】
また、前記自動搬送車は、個別に駆動される2本1組の駆動輪が同軸に配置されていると共に当該2本1組の駆動輪の回転差に応じて旋回して操舵される駆動ユニットが前後方向の2箇所に配置されていると共に、
前記自律走行区間では、2基の駆動ユニットの操舵角が逆相で制御されることが好ましい(請求項5)。
【0019】
この場合には、前記自律走行区間において前記自動搬送車の姿勢等を迅速に制御できるようになり、位置的な誤差の累積を抑制できる。前記自動搬送車が前記復帰パターンに到達したときの位置ズレ量を抑制できるので、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向において必要となる前記復帰パターンの形成幅を抑制できる。
【0020】
また、前記自律走行区間は、前記自動搬送車が前後を入れ替える反転動作を実行する区間であることが好ましい(請求項6)。
前記自動搬送車が反転動作を実行するに当たっては、前記経路を跨ぐ必要が生じる。前記導線が敷設された走路であると、前記自動搬送車の車輪によって前記導線にダメージが生じるおそれがある。一方、前記導線を敷設する必要がない前記自律走行区間で反転動作を実行すれば、前記導線等のダメージを未然に回避できる。したがって、シンプルなシステム構成により、前記自律走行区間を組み込むことができるという本発明の作用効果が特に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例における、自動搬送システムの概要を示す説明図。
【図2】実施例における、自動搬送車を模式的に示す上面図。
【図3】実施例における、ラインセンサの検出エリアを説明する説明図。
【図4】実施例における、自動搬送車のシステム構成を示すブロック図。
【図5】実施例における、自動搬送車の制御手順を示すフロー図。
【図6】実施例における、復帰走行区間における自動搬送車の走行パターンを例示する説明図。
【図7】実施例における、復帰ガイドラインの外縁が検出される様子を示す説明図。
【図8】実施例における、その他の復帰パターンを示す正面図。
【図9】実施例における、その他の復帰パターンを示す正面図。
【図10】実施例における、その他の復帰パターンを示す説明図。
【図11】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図12】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図13】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図14】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図15】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、予め定められた経路に沿って自動搬送車2を自動で走行させる自動搬送システム1に関する。本例の内容について、図1〜図15を用いて説明する。
【0023】
本例の自動搬送システム1は、図1〜図4に示すごとく、自動搬送車2が追従可能なガイドライン(導線)11、12が経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、第1の追従区間と第2の追従区間との間に配置され、自動搬送車2が自律走行する自律走行区間と、自律走行区間の自動搬送車2を第2の追従区間のガイドライン12に復帰させるための復帰パターン100が敷設された復帰走行区間と、を含むシステムである。
【0024】
自動搬送車2は、追従走行制御及び自律走行制御を選択的に実行可能な走行制御手段510と、復帰パターン100及びガイドライン11、12を検出可能なラインセンサ(検出センサ)351と、復帰パターン100の両外側の外縁101を検出する外縁検出手段511と、復帰パターン100の外縁101が検出されたときに自律走行制御から追従走行制御に切り換える制御切換手段512と、を備えている。
以下、この内容について詳しく説明する。
【0025】
本例の自動搬送システム1は、例えば、自動車等の組立て工場等に導入される無人の搬送システムである。自動車部品等のワークの積み込み、あるいは積み下ろしの拠点となるワークステーション間で自動搬送車2を自動走行させる自動搬送システム1を導入すれば、極めて高効率の搬送システムを実現できる。特に、本例の自動搬送システム1は、ガイドライン11、12等によらずに自動搬送車2が自律走行する自律走行区間を含むシステムである。
【0026】
まず、本例の自動搬送システム1に適用される自動搬送車2について説明する。自動搬送車2は、図2のごとく、自動車部品等のワークを積載する荷台(図示略)を含む前後方向に長い車体20を備えている。車体20の大きさは、前後方向に約1.4mで、幅約0.5mとなっている。車体20には、前後方向の2箇所に駆動ユニット3が配置されているほか、制御ユニット50(図4)及び図示しないバッテリが搭載されている。2基の駆動ユニット3の前後方向の中間に当たる底面には、自在車輪よりなる補助輪(図示略)が左右両側に取り付けられている。
【0027】
駆動ユニット3は、図1〜図4に示すごとく、同軸上に並列配置された2本1組の駆動輪331と、これらの駆動輪331に個別に対応し、それぞれ独立に回転制御可能な2基の駆動モータ310と、を備えている。駆動ユニット3は、個別に駆動される両側の駆動輪331の回転差に応じて操舵される。本例の駆動ユニット3では、360度全周をカバーできるように操舵範囲が設定されている。
【0028】
駆動ユニット3の前面部分には、ラインセンサ351が中央に配設されていると共に、ラインセンサ351からオフセットする位置にマーカセンサ352が配置されている。これらのセンサは、常時、駆動ユニット3の前進側の正面に位置するよう、駆動ユニット3の操舵と共に回動するように取り付けられている。
【0029】
ラインセンサ351は、磁気テープであるガイドライン11、12等の磁気を検出する検出センサである。本例のラインセンサ351は、図3に示すごとく、磁気検出素子360を横方向に複数配列したセンサであり、駆動ユニット3の進行方向に直交する方向に幅広の横幅約8cmの検出エリア36を備えている。ラインセンサ351は、検出エリア36内の各磁気検出素子360について、磁気を検出しているか否か個別に検知可能である。
マーカセンサ352は、床面に適宜、配置されたガイドマーカから番地情報等を読み取るセンサである。本例では、第1の追従区間の終点となる位置に、その番地情報を表すガイドマーカ115が配置されている。
【0030】
自動搬送車2の内部システムは、図4に示すごとく構成されている。自動搬送車2の制御ユニット50に対しては、2基の駆動ユニット3のほか、バンパースイッチ220、障害物センサ26、非常停止スイッチ231、操作スイッチ232、表示ランプ233、LED表示器234、スピーカ235、通信ユニット25、角速度センサ281等が電気的に接続されている。
【0031】
駆動ユニット3の内部的な構成は、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて駆動輪331(図2)を駆動する駆動部31と、各種センサの検出信号を取り込んで制御ユニットに送信する検出部35と、に区分けされる。駆動部31は、駆動モータ310と、駆動モータ310を制御するモータドライバ315と、を含んで構成されている。モータドライバ315は、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて駆動モータ310の回転を制御する。このモータドライバ315は、駆動モータ310の制御値に基づいて、対応する駆動輪331の走行速度を把握可能である。
【0032】
検出部35は、ラインセンサ351、マーカセンサ352、操舵角を検出する操舵角検知部350等の検出手段のほか、制御ユニット50に対して検出信号等を送信する際のインターフェースとなるI/F回路38を備えている。
【0033】
制御ユニット50は、各種のスイッチ等と信号のやり取りをするためのインターフェースであるI/F回路55と、駆動ユニット3に向けて各種の制御信号を出力する主制御回路51と、を含むユニットである。主制御回路51は、自動搬送車2の走行を制御する走行制御手段510、復帰ガイドライン10の外縁101を検出する外縁検出手段511、走行制御のモードを切り換える制御切換手段512、自動搬送車2の位置等の測位情報を演算する測位手段513としての機能を備えている。
【0034】
走行制御手段510は、ガイドライン11、12及び復帰ガイドライン10に対する追従走行制御、及び自律走行制御を実行可能な制御手段である。追従走行制御としては、前後の各駆動ユニット3を個別制御するモードと、各駆動ユニット3の操舵角を同様に制御する同相制御のモードと、がある。個別制御は、追従区間を走行する際の制御モードである。同相制御は、復帰ガイドライン10に沿って斜行して追従走行する際の制御モードである。
【0035】
一方、自律走行制御は、自律走行区間について予めティーチングされた経路に沿って走行するための制御である。この自律走行制御では、測位手段513による測位情報に基づき自律航法により各駆動ユニット3が制御される。本例の自律走行制御では、各駆動ユニット3の操舵角が逆位相に制御される(逆相制御)。
【0036】
外縁検出手段511は、復帰ガイドライン10の外側のエッジである外縁101を検出する手段である。本例の外縁検出手段511は、自律走行区間を経て復帰ガイドライン10が最初に検出されたとき、外縁101の検出を待機する状態に移行する。例えば、図5及び図7を参照して後述するごとく、ラインセンサ351の検出エリア36の左端の磁気検出素子360で復帰ガイドライン10が最初に検出された場合であれば、その後、磁気検出素子360が左側から未検出状態へ移行したときに外縁101を検出する。
【0037】
制御切換手段512は、自律走行区間を経てきた自動搬送車2の制御モードを自律走行制御から追従走行制御に切り換える手段である。本例の制御切換手段512は、ラインセンサ351により復帰パターン100が最初に検出されても、直ちに追従走行制御に切り換えることはない。例えば、図4及び図7を参照して後述するごとく、第2の追従区間を見込んで左側の復帰ガイドライン10に自動搬送車2が到達した場合(左ズレの場合)、先ず、ラインセンサ351の検出エリア36の左側の磁気検出素子360から復帰ガイドライン10が検出され始める。このときに直ちに追従走行制御に切り換えると、本来の進行方向が右方向であるにも関わらず、復帰ガイドライン10を検出エリア36の中央で検出できるように左方向の逆ステアが生じ、走行が不安定となるおそれがあるからである。
【0038】
そこで、本例の制御切換手段512は、復帰ガイドライン10が最初に検出されても、そのまま、自律走行制御を継続し、その後、外縁検出手段511により外縁101が検出されたタイミングで追従走行制御に切り換える。復帰ガイドライン10の外縁101が検出された後で追従走行制御に切り換えれば、復帰ガイドライン10から逸脱しないように正しい方向に操舵できる。
【0039】
測位手段513は、自律航法に必要となる自動搬送車2の位置、姿勢等の測位情報を演算する手段である。測位手段513は、角速度を検出する角速度センサ281、及び駆動輪331の走行速度を検出するモータドライバ315と共に自律航法手段28を構成している。測位手段513は、角速度センサ281の検出角速度やモータドライバ315による走行速度等に基づいて測位情報を演算する。演算された測位情報は、前記走行制御手段510による自律走行制御の入力値となる。
【0040】
次に、自動搬送システム1における追従区間、自律走行区間、復帰走行区間の仕様について説明する。
追従区間は、図1に示すごとく、幅約2.5cmの磁気テープよりなるガイドライン11、12が経路に沿って敷設された区間である。本例の自動搬送システム1では、自律走行区間の上流側に位置する第1の追従区間と、自律走行区間の下流側に位置する第2の追従区間と、が設定されている。なお、自律走行区間に連なる第1の追従区間の終点には、その番地情報を表すガイドマーカ115が配置されている。
【0041】
自律走行区間は、ガイドラインが敷設されていない導線レス区間であり、自動搬送車2が自律航法により自律走行する区間である。本例の自律走行区間については、自動搬送車2に走行させる経路として予め、直進経路がティーチングされている。
【0042】
復帰走行区間は、自律走行区間の自動搬送車2を第2の追従区間のガイドライン12へ復帰させるための区間である。この復帰走行区間には、所定の復帰パターン100が敷設されている。本例の復帰パターン100では、自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がって略V字状をなすように2本の復帰ガイドライン10(復帰導線)が敷設されている。2本の復帰ガイドライン10は、第2の追従区間のガイドライン12の仮想的な延長方向の両側に位置している。なお、本例の復帰ガイドライン10は、前記ガイドライン11、12と同じ仕様となっている。
【0043】
なお、本例の復帰パターン100では、2本の復帰ガイドライン10の開き角が約70度に設定されている。また、2本の復帰ガイドライン10の最大幅である復帰幅Wcは約0.5mとなっている。復帰ガイドライン10の開き角については、90度、120度、60度など様々な角度を設定できる。開き角が小さいほど、ガイドライン12への乗り移りが容易となるが、前記復帰幅Wcに直交する方向における復帰パターン100の形成長が長くなる。開き角は、自動搬送車2の制御仕様や設置側の都合等に応じて適宜、決定するのが良い。一方、復帰幅Wcについても本例の約0.5mには限定されず、自律走行区間において発生し得る自動搬送車2の位置ズレ量を見越して適宜、決定するのが良い。
【0044】
以上のように構成された自動搬送システム1の各区間における自動搬送車2の走行動作について説明する。
<第1の追従区間>
第1の追従区間では、ガイドライン11に追従して走行するように自動搬送車2が制御される。第1の追従区間では、2基の駆動ユニット3がそれぞれ個別に制御される前記個別制御による追従走行制御が適用される。各駆動ユニット3は、各ラインセンサ351の検出エリア36の中央でガイドライン11を検出できるように操舵される。例えば、ラインセンサ351の検出エリア36の左側にずれてガイドライン11が検出されているときには左方向に操舵され、右側にずれているときには右方向に操舵される。
【0045】
<自律走行区間>
自律走行区間では、第1の追従区間から進入したときの姿勢のまま直進するよう、自律航法により自動搬送車2が走行する。この自律航法では、第1の追従区間の終点でガイドマーカ115が検知されたときの検出角速度や走行速度等が基準となる。この自律走行区間では、2基の駆動ユニット3の操舵角が逆位相に設定される逆相制御による自律走行制御が実行される。逆相制御の目的は、制御の時定数を短くして自律航法による位置偏差の累積を抑制して復帰パターン100への到達時の位置ズレ量を抑えることにある。
【0046】
<復帰走行区間>
復帰走行区間では、前後の操舵ユニット3の操舵角が同様に制御される同相制御による追従走行制御で自動搬送車2が走行する。この同相制御では、前側の駆動ユニット3が復帰ガイドライン10を追従するように操舵され、後ろ側の駆動ユニット3が前側と同じ操舵角で制御される。自動搬送車2は、前側の駆動ユニット3を復帰ガイドライン10に沿わせるように斜行走行する。なお、復帰走行区間に同相制御を適用する目的は、復帰パターン100の復帰ガイドライン10に沿って走行して第2の追従区間のガイドライン12に到達するためには、復帰ガイドライン100に沿う斜行走行が適切であることにある。
【0047】
<第2の追従区間>
第2の追従区間では、前記第1の追従区間と同様に自動搬送車2が制御される。第2の追従区間の制御は、復帰走行区間を走行してきた自動搬送車2の後ろ側の駆動ユニット3がガイドライン12を検出できたときに開始される。
【0048】
次に、自律走行区間から第2の追従区間に渡る自動搬送車2の制御内容について、図5のフローチャートに沿って説明する。
復帰パターン100の復帰ガイドライン10を未検出の状態では、図6中の自動搬送車2(A)のごとく、自律航法による自律走行により自動搬送車2が復帰走行区間に向けて走行する(S101)。その後、検出状態の磁気検出素子360を黒丸で表す図7中の検出エリア36(A)のごとく、前側の駆動ユニット3のラインセンサ351により最初に復帰ガイドライン10が検出されたとき、復帰処理が開始される(S102:YES)。
【0049】
復帰処理が開始された場合には、復帰するべき第2の追従区間のガイドライン12に対して左ズレか右ズレかが判断される。図7中の検出エリア36(A)のごとく、ラインセンサ351の検出エリア36の左側で復帰ガイドライン10が最初に検出された場合には、左ズレと判断され(S103:YES)、左分岐処理の準備がなされる(S114)。
【0050】
ここでいう左分岐処理とは、最初に検出された復帰ガイドライン10を上流として、V字状をなす他方の復帰ガイドライン10と、第2の追従区間のガイドライン12と、による分岐のうち、左分岐に当たる第2の追従区間のガイドライン12に分岐する処理である旨を意味している。
一方、ラインセンサ351の検出エリア36の右側で復帰ガイドライン10が最初に検出された場合には、右ズレと判断され(S104:YES)、右分岐処理の準備がなされる(S125)。
【0051】
その後、復帰ガイドライン10の外縁101を検出できたか否かが判断される(S126)。図7中の検出エリア36(B)のごとく、復帰ガイドライン10の外縁101が検出された場合には(S126:YES)、前記同相制御による追従走行制御に切り替えられ(S127)、図6中の自動搬送車2(B)のごとく、復帰ガイドライン10に沿って自動搬送車2が斜行する。その後、前側の駆動ユニット3が第2の追従区間のガイドライン12に到達したとき、前記左分岐処理、あるいは前記右分岐処理によりこのガイドライン12に追従するよう前側の駆動ユニット3が操舵される。
【0052】
このとき、前記同相制御によって後ろ側の駆動ユニット3が前側と同じ操舵角で制御されるので、自動搬送車2は第2の追従区間のガイドライン12に沿って前進することになる。そうすると、その後、後ろ側の駆動ユニット3のラインセンサ351によって第2の追従区間のガイドライン12が検出される。このように後ろ側のラインセンサ351によって第2の追従区間のガイドライン12を検出できたとき(S105:YES)、ONライン処理が実行され(S106)、図6中の自動搬送車2(C)のごとく追従区間下の個別制御による追従走行制御に切り替えられる。
【0053】
以上のような構成の自動搬送システム1では、自律走行区間において自動搬送車2の到達位置にある程度の誤差が生じた場合であっても、進行方向に直交する方向に幅広いV字状の復帰パターン100によって自動搬送車2を捕捉可能である。自律走行区間において要求される自律航法の精度が緩和されるため、例えば、角速度センサ281に要求される検出精度を抑制できコストを低減できる。
【0054】
さらに、この自動搬送システム1では、V字状の復帰ガイドライン10の内側の縁部(エッジ)が検出されても直ちには追従走行制御に切り換えられず、外縁101の検出が待機されるのみである。これにより、例えば、図7の検出エリア36(A)のごとく左端の磁気検出素子360で最初に復帰ガイドライン10を検出したときに起こり得る逆ステア(左操舵)を未然回避している。その後、同図の検出エリア36(B)のごとく復帰ガイドライン10の外縁101が検出されたときに追従走行制御(本例では、同相制御による追従走行制御。)に切り換えれば、進行方向に対して右側に存在している第2の追従区間のガイドライン12に対する正しい操舵方向である右操舵を実現できる。
【0055】
本例の自動搬送システム1では、自律走行区間において生じ得る自動搬送車2の位置ズレ量を見越して復帰パターン100を形成すれば良い。例えば、自律走行区間が長かったり、滑りやすかったり、コンベア等の搬送面を跨ぐ経路を含んでいたりする場合であれば、復帰パターン100をより幅広に形成すれば良い。
【0056】
このように本例の自動搬送システム1は、ガイドラインによらない自律走行区間に対応可能な自動搬送システムであって、低コスト、かつ、ロバスト性の高いシステムである。
【0057】
なお、復帰パターン100の形状としては、復帰ガイドライン10がV字状に敷設された本例のパターンのほか、図8のような形状の復帰パターン100や、図9のような形状の復帰パターン100等を採用することができる。本例の復帰パターン100を元にして、V字状の復帰ガイドライン10の末窄まりの谷底を底上げして平面部分を設けたごとき図8の復帰パターン100であっても、本例と同様の制御が可能である。また、本例のV字状の復帰ガイドライン10の間隙に磁気パターンを隙間なく敷設したような図9の復帰パターン100であっても、本例と同様の制御が可能である。
【0058】
なお、図10のごとく、復帰パターン100の手前の位置に、幅方向全域に渡って横方向に延びる線状のガイドマーカ135を敷設しておくことも良い。復帰走行区間への進入位置を表す復帰番地としてこのガイドマーカ135を取り扱えば、復帰パターン100の周辺に紛らわしい他のガイドラインが敷設されているような複雑な環境にも適切に対応できるようになる。
【0059】
なお、本例では、直進経路により構成された自律走行区間を採用した例である。図11に示すごとく、進行方向を反転させる半周の円周経路により構成された自律走行区間であっても良く、図12に示すごとく、S字状の経路により構成された自律走行区間であっても良い。さらには、図13に示すごとく、自律走行区間内に斜行走行区間を設定することも良い。このような斜行走行区間を設定すれば、段差のある壁面に沿うクランク状の経路への対応が可能になる。斜行走行区間では、自動搬送車2の到達位置を包含できるよう、進行方向に直交する方向に幅広く斜行導線15を敷設すると良い。また、斜行導線15の終点には、自律走行区間が再開する位置を示すガイドマーカ155を配置しておくのが良い。
【0060】
さらに、自律走行区間が長く位置ズレ量が大きくなると予測されるような場合や、経路幅が狭い場合等では、図14に示すごとく、自律走行区間の途中にV字状の復帰パターン100のみを配置しておくことも有効である。この場合には、自律走行区間の途中で自動搬送車2の位置ズレを一旦、解消でき、復帰走行区間への到達時の最終的な位置ズレ量を抑制できる。
【0061】
また、図15のごとく、自律走行区間における自律走行に反転動作を含めることも良い。反転動作のタイミングとしては、第1の追従区間を離脱して自律走行区間に進入してから所定距離を走行したタイミングや、自律走行区間に進入してから所定時間が経過したタイミング等を設定できる。一般に、自動搬送車2を反転動作させると、駆動輪331がガイドライン等の導線を跨ぐ必要が生じる。自律走行区間において反転動作を実行すれば、導線の損傷を未然に防止できる。これにより、必要となるメンテナンス頻度を抑制でき、システムのランニングコストを低減できる。
【0062】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0063】
1 自動搬送システム
10 復帰ガイドライン(復帰導線)
11、12 ガイドライン(導線)
100 復帰パターン
101 外縁
2 自動搬送車
28 自律航法手段
281 角速度センサ
20 車体
3 駆動ユニット
331 駆動輪
351 ラインセンサ(検出センサ)
352 マーカセンサ
36 検出エリア
360 磁気検出素子
50 制御ユニット
510 走行制御手段
511 外縁検出手段
512 制御切換手段
513 測位手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められた経路に沿って自動搬送車を自動走行させて物品等を搬送する自動搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、工場内の予め設定された経路に沿って走行する自動搬送車が知られている。自動搬送車は、駆動用のモータやバッテリ等を備えているほか、床面に敷設された磁気テープ等の導線を検出するための検出センサを備えている。このような自動搬送車にワークを積載すれば、導線が敷設された所定の経路に沿って無人でワークを搬送できる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
さらに、自動搬送車を走行させる経路中に、導線が敷設されていない自律走行領域を含み、その自律走行領域から導線へ復帰させる自動搬送システムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この自動搬送システムでは、自律走行領域を挟み込むように導線への誘導路が延設されている。このシステムでは、自律走行領域側から見て右側の誘導路と左側の誘導路とで発信電波の周波数が相違しており、自動搬送車側で受信電波の周波数を検知することで導線に復帰するための進路を判断可能である。
【0004】
しかしながら、前記従来の自動搬送システムでは、次のような問題がある。すなわち、2種類の誘導路を敷設する必要があると共に、自動搬送車側でも2種類の誘導路を区別するためのセンサ等が必要となるので、システム構成が複雑化となりコストアップが招来されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−177508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、導線によらない自律走行区間を含む自動搬送システムにおいて、シンプルなシステム構成の低コストのシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、予定された経路に沿って自動搬送車を自動走行させるための自動搬送システムであって、
前記自動搬送車が追従可能な導線が前記経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、
前記経路中、前記第1の追従区間と前記第2の追従区間との間に配置され、前記自動搬送車が自律走行する自律走行区間と、
前記自律走行区間の自動搬送車を前記第2の追従区間の導線に復帰させるためのパターンであって、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向の両外側に当たる外縁が前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる復帰パターンが敷設された復帰走行区間と、を含み、
前記自動搬送車は、前記導線又は前記復帰パターンに追従して走行するための追従走行制御、及び前記導線にも前記復帰パターンにもよらずに自律走行するための自律走行制御を実行可能な走行制御手段と、
前記復帰パターン及び前記導線を検出する検出センサと、
前記復帰パターンの外縁を検出する外縁検出手段と、
前記検出センサにより前記復帰パターンが最初に検出された後、前記外縁検出手段により前記外縁が検出されたときに前記自律走行制御から前記追従走行制御に切り換える制御切換手段と、を備えた自動搬送システムにある(請求項1)。
【0008】
本発明の自動搬送システムでは、前記第2の追従区間と前記自律走行区間との間に前記復帰パターンが敷設された復帰走行区間が設けられている。この復帰パターンでは、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向の両外側に位置する前記外縁が、前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がっている。
【0009】
一方、本発明の自動搬送システムの自動搬送車は、前記復帰パターン及び前記導線を検出する前記検出センサと、前記復帰パターンの外縁を検出する前記外縁検出手段と、走行制御のモードを切り換える前記制御切換手段と、を備えている。この制御切換手段は、前記復帰パターンが検出されたのみでは、前記追従走行制御への切換を実行しない。前記自律走行区間を経て前記復帰パターンが検出されたのみで直ちに前記追従走行制御に切り換えると、被検出部分のパターン形状等に応じて追従走行制御による挙動が大きくなり、前記自動搬送車の走行状態が不安定に陥るおそれがあるからである。
【0010】
そこで、前記制御切換手段は、前記復帰パターンが検出されたのみでは前記追従走行制御への切換を実行することなく、その後、前記外縁が検出されたときに初めて前記追従走行制御への切換を実行する。例えば、前記復帰パターンの検出状態を経由して、前記第2の追従区間の導線を見込んで左側に当たる外縁に到達したときに前記追従走行制御への切換を実行すれば、前記復帰パターンの左側に逸脱しないように右方向に正しく操舵され得る。
【0011】
このように、本発明の自動搬送システムの自動搬送車は、前記復帰パターンを最初に検出した後、前記外縁を検出したときに前記追従走行制御への切換を実行することで、前記第2の追従区間に向かって正しく操舵され得る。それ故、前記第2の追従区間に向かう進路が左方向か右方向かを表す情報を、例えば、発信電波の周波数や磁極性等により表して前記復帰パターンに仕込んでおく必要がない。また、前記自動搬送車側では、前記進路が左方向か右方向かを表す情報を前記復帰パターンから取り込むための特別な機能をセンサ等に具備させる必要がない。
【0012】
このように、本発明の自動搬送システムは、前記自律走行区間を含むシステムであっても、複雑なシステム構成とはならず、低コストの優れた特性のシステムとなっている。
【0013】
本発明の自動搬送システムにおける導線及び復帰パターンとしては、例えば、磁気や、電波や、光等を発生するパターンであっても良いが、色や反射率や模様等が周囲とは異なるパターンであっても良い。前記検出センサとしては、磁気や電波や光を検出するセンサ等を採用できる。特に、色や模様等によるパターンであれば、光の強度分布を1次元的に検出するラインセンサや、2次元的に検出する撮像素子等の検出センサを採用できる。
【0014】
なお、前記導線及び前記復帰パターンの検出方法として、同一仕様の検出方法を採用することは必須ではない。一方、同一仕様の検出方法を採用すれば、前記検出センサを共用できるため、コスト的に有利となる。
【0015】
また、前記検出センサは、横方向に幅広く延設された検出エリアを備え、該検出エリアのどの部分が前記導線又は前記復帰パターンを検出しているかを検知可能であり、
前記外縁検出手段は、前記検出センサが前記復帰パターンを最初に検出した後、前記検出エリアの一方の端部側から非検出状態に移行したときに前記外縁を検出することが好ましい(請求項2)。
この場合には、前記検出エリアによる検出情報に基づいて、効率良く前記外縁を検出できるようになる。
【0016】
また、前記復帰パターンは、前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる略V字状をなすように復帰導線が敷設されたパターンであることが好ましい(請求項3)。
前記復帰導線を末広がり状に延設すれば、前記復帰パターンの面積を抑制できるので、設置容易性を向上できると共に設置コストを抑制できる。なお、前記復帰導線は、前記導線と同じ仕様であっても良い。
【0017】
また、前記自動搬送車は、自律航法による自律走行を可能にする自律航法手段を備えていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、前記自律走行区間において前記自動搬送車に作用する外乱、例えば、前記自動搬送車の車体の向きを変動させるような外力、床面のスベリや起伏等に対してある程度、対応できるようになる。なお、前記自律航法手段は、前記自動搬送車の現在位置等の測位手段、及び測位に必要な各種情報を検出するためのセンサ等により構成される。センサとしては、例えば、角速度センサ、加速度センサ、速度センサ、GPSセンサ等を利用可能である。これらのセンサは、システムの適用環境や、要求される測位精度等に応じて、適宜、選択的に組み合わせ可能である。
【0018】
また、前記自動搬送車は、個別に駆動される2本1組の駆動輪が同軸に配置されていると共に当該2本1組の駆動輪の回転差に応じて旋回して操舵される駆動ユニットが前後方向の2箇所に配置されていると共に、
前記自律走行区間では、2基の駆動ユニットの操舵角が逆相で制御されることが好ましい(請求項5)。
【0019】
この場合には、前記自律走行区間において前記自動搬送車の姿勢等を迅速に制御できるようになり、位置的な誤差の累積を抑制できる。前記自動搬送車が前記復帰パターンに到達したときの位置ズレ量を抑制できるので、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向において必要となる前記復帰パターンの形成幅を抑制できる。
【0020】
また、前記自律走行区間は、前記自動搬送車が前後を入れ替える反転動作を実行する区間であることが好ましい(請求項6)。
前記自動搬送車が反転動作を実行するに当たっては、前記経路を跨ぐ必要が生じる。前記導線が敷設された走路であると、前記自動搬送車の車輪によって前記導線にダメージが生じるおそれがある。一方、前記導線を敷設する必要がない前記自律走行区間で反転動作を実行すれば、前記導線等のダメージを未然に回避できる。したがって、シンプルなシステム構成により、前記自律走行区間を組み込むことができるという本発明の作用効果が特に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例における、自動搬送システムの概要を示す説明図。
【図2】実施例における、自動搬送車を模式的に示す上面図。
【図3】実施例における、ラインセンサの検出エリアを説明する説明図。
【図4】実施例における、自動搬送車のシステム構成を示すブロック図。
【図5】実施例における、自動搬送車の制御手順を示すフロー図。
【図6】実施例における、復帰走行区間における自動搬送車の走行パターンを例示する説明図。
【図7】実施例における、復帰ガイドラインの外縁が検出される様子を示す説明図。
【図8】実施例における、その他の復帰パターンを示す正面図。
【図9】実施例における、その他の復帰パターンを示す正面図。
【図10】実施例における、その他の復帰パターンを示す説明図。
【図11】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図12】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図13】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図14】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【図15】実施例における、その他の自律走行区間を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、予め定められた経路に沿って自動搬送車2を自動で走行させる自動搬送システム1に関する。本例の内容について、図1〜図15を用いて説明する。
【0023】
本例の自動搬送システム1は、図1〜図4に示すごとく、自動搬送車2が追従可能なガイドライン(導線)11、12が経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、第1の追従区間と第2の追従区間との間に配置され、自動搬送車2が自律走行する自律走行区間と、自律走行区間の自動搬送車2を第2の追従区間のガイドライン12に復帰させるための復帰パターン100が敷設された復帰走行区間と、を含むシステムである。
【0024】
自動搬送車2は、追従走行制御及び自律走行制御を選択的に実行可能な走行制御手段510と、復帰パターン100及びガイドライン11、12を検出可能なラインセンサ(検出センサ)351と、復帰パターン100の両外側の外縁101を検出する外縁検出手段511と、復帰パターン100の外縁101が検出されたときに自律走行制御から追従走行制御に切り換える制御切換手段512と、を備えている。
以下、この内容について詳しく説明する。
【0025】
本例の自動搬送システム1は、例えば、自動車等の組立て工場等に導入される無人の搬送システムである。自動車部品等のワークの積み込み、あるいは積み下ろしの拠点となるワークステーション間で自動搬送車2を自動走行させる自動搬送システム1を導入すれば、極めて高効率の搬送システムを実現できる。特に、本例の自動搬送システム1は、ガイドライン11、12等によらずに自動搬送車2が自律走行する自律走行区間を含むシステムである。
【0026】
まず、本例の自動搬送システム1に適用される自動搬送車2について説明する。自動搬送車2は、図2のごとく、自動車部品等のワークを積載する荷台(図示略)を含む前後方向に長い車体20を備えている。車体20の大きさは、前後方向に約1.4mで、幅約0.5mとなっている。車体20には、前後方向の2箇所に駆動ユニット3が配置されているほか、制御ユニット50(図4)及び図示しないバッテリが搭載されている。2基の駆動ユニット3の前後方向の中間に当たる底面には、自在車輪よりなる補助輪(図示略)が左右両側に取り付けられている。
【0027】
駆動ユニット3は、図1〜図4に示すごとく、同軸上に並列配置された2本1組の駆動輪331と、これらの駆動輪331に個別に対応し、それぞれ独立に回転制御可能な2基の駆動モータ310と、を備えている。駆動ユニット3は、個別に駆動される両側の駆動輪331の回転差に応じて操舵される。本例の駆動ユニット3では、360度全周をカバーできるように操舵範囲が設定されている。
【0028】
駆動ユニット3の前面部分には、ラインセンサ351が中央に配設されていると共に、ラインセンサ351からオフセットする位置にマーカセンサ352が配置されている。これらのセンサは、常時、駆動ユニット3の前進側の正面に位置するよう、駆動ユニット3の操舵と共に回動するように取り付けられている。
【0029】
ラインセンサ351は、磁気テープであるガイドライン11、12等の磁気を検出する検出センサである。本例のラインセンサ351は、図3に示すごとく、磁気検出素子360を横方向に複数配列したセンサであり、駆動ユニット3の進行方向に直交する方向に幅広の横幅約8cmの検出エリア36を備えている。ラインセンサ351は、検出エリア36内の各磁気検出素子360について、磁気を検出しているか否か個別に検知可能である。
マーカセンサ352は、床面に適宜、配置されたガイドマーカから番地情報等を読み取るセンサである。本例では、第1の追従区間の終点となる位置に、その番地情報を表すガイドマーカ115が配置されている。
【0030】
自動搬送車2の内部システムは、図4に示すごとく構成されている。自動搬送車2の制御ユニット50に対しては、2基の駆動ユニット3のほか、バンパースイッチ220、障害物センサ26、非常停止スイッチ231、操作スイッチ232、表示ランプ233、LED表示器234、スピーカ235、通信ユニット25、角速度センサ281等が電気的に接続されている。
【0031】
駆動ユニット3の内部的な構成は、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて駆動輪331(図2)を駆動する駆動部31と、各種センサの検出信号を取り込んで制御ユニットに送信する検出部35と、に区分けされる。駆動部31は、駆動モータ310と、駆動モータ310を制御するモータドライバ315と、を含んで構成されている。モータドライバ315は、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて駆動モータ310の回転を制御する。このモータドライバ315は、駆動モータ310の制御値に基づいて、対応する駆動輪331の走行速度を把握可能である。
【0032】
検出部35は、ラインセンサ351、マーカセンサ352、操舵角を検出する操舵角検知部350等の検出手段のほか、制御ユニット50に対して検出信号等を送信する際のインターフェースとなるI/F回路38を備えている。
【0033】
制御ユニット50は、各種のスイッチ等と信号のやり取りをするためのインターフェースであるI/F回路55と、駆動ユニット3に向けて各種の制御信号を出力する主制御回路51と、を含むユニットである。主制御回路51は、自動搬送車2の走行を制御する走行制御手段510、復帰ガイドライン10の外縁101を検出する外縁検出手段511、走行制御のモードを切り換える制御切換手段512、自動搬送車2の位置等の測位情報を演算する測位手段513としての機能を備えている。
【0034】
走行制御手段510は、ガイドライン11、12及び復帰ガイドライン10に対する追従走行制御、及び自律走行制御を実行可能な制御手段である。追従走行制御としては、前後の各駆動ユニット3を個別制御するモードと、各駆動ユニット3の操舵角を同様に制御する同相制御のモードと、がある。個別制御は、追従区間を走行する際の制御モードである。同相制御は、復帰ガイドライン10に沿って斜行して追従走行する際の制御モードである。
【0035】
一方、自律走行制御は、自律走行区間について予めティーチングされた経路に沿って走行するための制御である。この自律走行制御では、測位手段513による測位情報に基づき自律航法により各駆動ユニット3が制御される。本例の自律走行制御では、各駆動ユニット3の操舵角が逆位相に制御される(逆相制御)。
【0036】
外縁検出手段511は、復帰ガイドライン10の外側のエッジである外縁101を検出する手段である。本例の外縁検出手段511は、自律走行区間を経て復帰ガイドライン10が最初に検出されたとき、外縁101の検出を待機する状態に移行する。例えば、図5及び図7を参照して後述するごとく、ラインセンサ351の検出エリア36の左端の磁気検出素子360で復帰ガイドライン10が最初に検出された場合であれば、その後、磁気検出素子360が左側から未検出状態へ移行したときに外縁101を検出する。
【0037】
制御切換手段512は、自律走行区間を経てきた自動搬送車2の制御モードを自律走行制御から追従走行制御に切り換える手段である。本例の制御切換手段512は、ラインセンサ351により復帰パターン100が最初に検出されても、直ちに追従走行制御に切り換えることはない。例えば、図4及び図7を参照して後述するごとく、第2の追従区間を見込んで左側の復帰ガイドライン10に自動搬送車2が到達した場合(左ズレの場合)、先ず、ラインセンサ351の検出エリア36の左側の磁気検出素子360から復帰ガイドライン10が検出され始める。このときに直ちに追従走行制御に切り換えると、本来の進行方向が右方向であるにも関わらず、復帰ガイドライン10を検出エリア36の中央で検出できるように左方向の逆ステアが生じ、走行が不安定となるおそれがあるからである。
【0038】
そこで、本例の制御切換手段512は、復帰ガイドライン10が最初に検出されても、そのまま、自律走行制御を継続し、その後、外縁検出手段511により外縁101が検出されたタイミングで追従走行制御に切り換える。復帰ガイドライン10の外縁101が検出された後で追従走行制御に切り換えれば、復帰ガイドライン10から逸脱しないように正しい方向に操舵できる。
【0039】
測位手段513は、自律航法に必要となる自動搬送車2の位置、姿勢等の測位情報を演算する手段である。測位手段513は、角速度を検出する角速度センサ281、及び駆動輪331の走行速度を検出するモータドライバ315と共に自律航法手段28を構成している。測位手段513は、角速度センサ281の検出角速度やモータドライバ315による走行速度等に基づいて測位情報を演算する。演算された測位情報は、前記走行制御手段510による自律走行制御の入力値となる。
【0040】
次に、自動搬送システム1における追従区間、自律走行区間、復帰走行区間の仕様について説明する。
追従区間は、図1に示すごとく、幅約2.5cmの磁気テープよりなるガイドライン11、12が経路に沿って敷設された区間である。本例の自動搬送システム1では、自律走行区間の上流側に位置する第1の追従区間と、自律走行区間の下流側に位置する第2の追従区間と、が設定されている。なお、自律走行区間に連なる第1の追従区間の終点には、その番地情報を表すガイドマーカ115が配置されている。
【0041】
自律走行区間は、ガイドラインが敷設されていない導線レス区間であり、自動搬送車2が自律航法により自律走行する区間である。本例の自律走行区間については、自動搬送車2に走行させる経路として予め、直進経路がティーチングされている。
【0042】
復帰走行区間は、自律走行区間の自動搬送車2を第2の追従区間のガイドライン12へ復帰させるための区間である。この復帰走行区間には、所定の復帰パターン100が敷設されている。本例の復帰パターン100では、自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がって略V字状をなすように2本の復帰ガイドライン10(復帰導線)が敷設されている。2本の復帰ガイドライン10は、第2の追従区間のガイドライン12の仮想的な延長方向の両側に位置している。なお、本例の復帰ガイドライン10は、前記ガイドライン11、12と同じ仕様となっている。
【0043】
なお、本例の復帰パターン100では、2本の復帰ガイドライン10の開き角が約70度に設定されている。また、2本の復帰ガイドライン10の最大幅である復帰幅Wcは約0.5mとなっている。復帰ガイドライン10の開き角については、90度、120度、60度など様々な角度を設定できる。開き角が小さいほど、ガイドライン12への乗り移りが容易となるが、前記復帰幅Wcに直交する方向における復帰パターン100の形成長が長くなる。開き角は、自動搬送車2の制御仕様や設置側の都合等に応じて適宜、決定するのが良い。一方、復帰幅Wcについても本例の約0.5mには限定されず、自律走行区間において発生し得る自動搬送車2の位置ズレ量を見越して適宜、決定するのが良い。
【0044】
以上のように構成された自動搬送システム1の各区間における自動搬送車2の走行動作について説明する。
<第1の追従区間>
第1の追従区間では、ガイドライン11に追従して走行するように自動搬送車2が制御される。第1の追従区間では、2基の駆動ユニット3がそれぞれ個別に制御される前記個別制御による追従走行制御が適用される。各駆動ユニット3は、各ラインセンサ351の検出エリア36の中央でガイドライン11を検出できるように操舵される。例えば、ラインセンサ351の検出エリア36の左側にずれてガイドライン11が検出されているときには左方向に操舵され、右側にずれているときには右方向に操舵される。
【0045】
<自律走行区間>
自律走行区間では、第1の追従区間から進入したときの姿勢のまま直進するよう、自律航法により自動搬送車2が走行する。この自律航法では、第1の追従区間の終点でガイドマーカ115が検知されたときの検出角速度や走行速度等が基準となる。この自律走行区間では、2基の駆動ユニット3の操舵角が逆位相に設定される逆相制御による自律走行制御が実行される。逆相制御の目的は、制御の時定数を短くして自律航法による位置偏差の累積を抑制して復帰パターン100への到達時の位置ズレ量を抑えることにある。
【0046】
<復帰走行区間>
復帰走行区間では、前後の操舵ユニット3の操舵角が同様に制御される同相制御による追従走行制御で自動搬送車2が走行する。この同相制御では、前側の駆動ユニット3が復帰ガイドライン10を追従するように操舵され、後ろ側の駆動ユニット3が前側と同じ操舵角で制御される。自動搬送車2は、前側の駆動ユニット3を復帰ガイドライン10に沿わせるように斜行走行する。なお、復帰走行区間に同相制御を適用する目的は、復帰パターン100の復帰ガイドライン10に沿って走行して第2の追従区間のガイドライン12に到達するためには、復帰ガイドライン100に沿う斜行走行が適切であることにある。
【0047】
<第2の追従区間>
第2の追従区間では、前記第1の追従区間と同様に自動搬送車2が制御される。第2の追従区間の制御は、復帰走行区間を走行してきた自動搬送車2の後ろ側の駆動ユニット3がガイドライン12を検出できたときに開始される。
【0048】
次に、自律走行区間から第2の追従区間に渡る自動搬送車2の制御内容について、図5のフローチャートに沿って説明する。
復帰パターン100の復帰ガイドライン10を未検出の状態では、図6中の自動搬送車2(A)のごとく、自律航法による自律走行により自動搬送車2が復帰走行区間に向けて走行する(S101)。その後、検出状態の磁気検出素子360を黒丸で表す図7中の検出エリア36(A)のごとく、前側の駆動ユニット3のラインセンサ351により最初に復帰ガイドライン10が検出されたとき、復帰処理が開始される(S102:YES)。
【0049】
復帰処理が開始された場合には、復帰するべき第2の追従区間のガイドライン12に対して左ズレか右ズレかが判断される。図7中の検出エリア36(A)のごとく、ラインセンサ351の検出エリア36の左側で復帰ガイドライン10が最初に検出された場合には、左ズレと判断され(S103:YES)、左分岐処理の準備がなされる(S114)。
【0050】
ここでいう左分岐処理とは、最初に検出された復帰ガイドライン10を上流として、V字状をなす他方の復帰ガイドライン10と、第2の追従区間のガイドライン12と、による分岐のうち、左分岐に当たる第2の追従区間のガイドライン12に分岐する処理である旨を意味している。
一方、ラインセンサ351の検出エリア36の右側で復帰ガイドライン10が最初に検出された場合には、右ズレと判断され(S104:YES)、右分岐処理の準備がなされる(S125)。
【0051】
その後、復帰ガイドライン10の外縁101を検出できたか否かが判断される(S126)。図7中の検出エリア36(B)のごとく、復帰ガイドライン10の外縁101が検出された場合には(S126:YES)、前記同相制御による追従走行制御に切り替えられ(S127)、図6中の自動搬送車2(B)のごとく、復帰ガイドライン10に沿って自動搬送車2が斜行する。その後、前側の駆動ユニット3が第2の追従区間のガイドライン12に到達したとき、前記左分岐処理、あるいは前記右分岐処理によりこのガイドライン12に追従するよう前側の駆動ユニット3が操舵される。
【0052】
このとき、前記同相制御によって後ろ側の駆動ユニット3が前側と同じ操舵角で制御されるので、自動搬送車2は第2の追従区間のガイドライン12に沿って前進することになる。そうすると、その後、後ろ側の駆動ユニット3のラインセンサ351によって第2の追従区間のガイドライン12が検出される。このように後ろ側のラインセンサ351によって第2の追従区間のガイドライン12を検出できたとき(S105:YES)、ONライン処理が実行され(S106)、図6中の自動搬送車2(C)のごとく追従区間下の個別制御による追従走行制御に切り替えられる。
【0053】
以上のような構成の自動搬送システム1では、自律走行区間において自動搬送車2の到達位置にある程度の誤差が生じた場合であっても、進行方向に直交する方向に幅広いV字状の復帰パターン100によって自動搬送車2を捕捉可能である。自律走行区間において要求される自律航法の精度が緩和されるため、例えば、角速度センサ281に要求される検出精度を抑制できコストを低減できる。
【0054】
さらに、この自動搬送システム1では、V字状の復帰ガイドライン10の内側の縁部(エッジ)が検出されても直ちには追従走行制御に切り換えられず、外縁101の検出が待機されるのみである。これにより、例えば、図7の検出エリア36(A)のごとく左端の磁気検出素子360で最初に復帰ガイドライン10を検出したときに起こり得る逆ステア(左操舵)を未然回避している。その後、同図の検出エリア36(B)のごとく復帰ガイドライン10の外縁101が検出されたときに追従走行制御(本例では、同相制御による追従走行制御。)に切り換えれば、進行方向に対して右側に存在している第2の追従区間のガイドライン12に対する正しい操舵方向である右操舵を実現できる。
【0055】
本例の自動搬送システム1では、自律走行区間において生じ得る自動搬送車2の位置ズレ量を見越して復帰パターン100を形成すれば良い。例えば、自律走行区間が長かったり、滑りやすかったり、コンベア等の搬送面を跨ぐ経路を含んでいたりする場合であれば、復帰パターン100をより幅広に形成すれば良い。
【0056】
このように本例の自動搬送システム1は、ガイドラインによらない自律走行区間に対応可能な自動搬送システムであって、低コスト、かつ、ロバスト性の高いシステムである。
【0057】
なお、復帰パターン100の形状としては、復帰ガイドライン10がV字状に敷設された本例のパターンのほか、図8のような形状の復帰パターン100や、図9のような形状の復帰パターン100等を採用することができる。本例の復帰パターン100を元にして、V字状の復帰ガイドライン10の末窄まりの谷底を底上げして平面部分を設けたごとき図8の復帰パターン100であっても、本例と同様の制御が可能である。また、本例のV字状の復帰ガイドライン10の間隙に磁気パターンを隙間なく敷設したような図9の復帰パターン100であっても、本例と同様の制御が可能である。
【0058】
なお、図10のごとく、復帰パターン100の手前の位置に、幅方向全域に渡って横方向に延びる線状のガイドマーカ135を敷設しておくことも良い。復帰走行区間への進入位置を表す復帰番地としてこのガイドマーカ135を取り扱えば、復帰パターン100の周辺に紛らわしい他のガイドラインが敷設されているような複雑な環境にも適切に対応できるようになる。
【0059】
なお、本例では、直進経路により構成された自律走行区間を採用した例である。図11に示すごとく、進行方向を反転させる半周の円周経路により構成された自律走行区間であっても良く、図12に示すごとく、S字状の経路により構成された自律走行区間であっても良い。さらには、図13に示すごとく、自律走行区間内に斜行走行区間を設定することも良い。このような斜行走行区間を設定すれば、段差のある壁面に沿うクランク状の経路への対応が可能になる。斜行走行区間では、自動搬送車2の到達位置を包含できるよう、進行方向に直交する方向に幅広く斜行導線15を敷設すると良い。また、斜行導線15の終点には、自律走行区間が再開する位置を示すガイドマーカ155を配置しておくのが良い。
【0060】
さらに、自律走行区間が長く位置ズレ量が大きくなると予測されるような場合や、経路幅が狭い場合等では、図14に示すごとく、自律走行区間の途中にV字状の復帰パターン100のみを配置しておくことも有効である。この場合には、自律走行区間の途中で自動搬送車2の位置ズレを一旦、解消でき、復帰走行区間への到達時の最終的な位置ズレ量を抑制できる。
【0061】
また、図15のごとく、自律走行区間における自律走行に反転動作を含めることも良い。反転動作のタイミングとしては、第1の追従区間を離脱して自律走行区間に進入してから所定距離を走行したタイミングや、自律走行区間に進入してから所定時間が経過したタイミング等を設定できる。一般に、自動搬送車2を反転動作させると、駆動輪331がガイドライン等の導線を跨ぐ必要が生じる。自律走行区間において反転動作を実行すれば、導線の損傷を未然に防止できる。これにより、必要となるメンテナンス頻度を抑制でき、システムのランニングコストを低減できる。
【0062】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0063】
1 自動搬送システム
10 復帰ガイドライン(復帰導線)
11、12 ガイドライン(導線)
100 復帰パターン
101 外縁
2 自動搬送車
28 自律航法手段
281 角速度センサ
20 車体
3 駆動ユニット
331 駆動輪
351 ラインセンサ(検出センサ)
352 マーカセンサ
36 検出エリア
360 磁気検出素子
50 制御ユニット
510 走行制御手段
511 外縁検出手段
512 制御切換手段
513 測位手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予定された経路に沿って自動搬送車を自動走行させるための自動搬送システムであって、
前記自動搬送車が追従可能な導線が前記経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、
前記経路中、前記第1の追従区間と前記第2の追従区間との間に配置され、前記自動搬送車が自律走行する自律走行区間と、
前記自律走行区間の自動搬送車を前記第2の追従区間の導線に復帰させるためのパターンであって、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向の両外側に当たる外縁が前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる復帰パターンが敷設された復帰走行区間と、を含み、
前記自動搬送車は、前記導線又は前記復帰パターンに追従して走行するための追従走行制御、及び前記導線にも前記復帰パターンにもよらずに自律走行するための自律走行制御を実行可能な走行制御手段と、
前記復帰パターン及び前記導線を検出する検出センサと、
前記復帰パターンの外縁を検出する外縁検出手段と、
前記検出センサにより前記復帰パターンが最初に検出された後、前記外縁検出手段により前記外縁が検出されたときに前記自律走行制御から前記追従走行制御に切り換える制御切換手段と、を備えた自動搬送システム。
【請求項2】
前記検出センサは、横方向に幅広く延設された検出エリアを備え、該検出エリアのどの部分が前記導線又は前記復帰パターンを検出しているかを検知可能であり、
前記外縁検出手段は、前記検出センサが前記復帰パターンを最初に検出した後、前記検出エリアの一方の端部側から非検出状態に移行したときに前記外縁を検出する請求項1に記載の自動搬送システム。
【請求項3】
前記復帰パターンは、前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる略V字状をなすように復帰導線が敷設されたパターンである請求項1又は2に記載の自動搬送システム。
【請求項4】
前記自動搬送車は、自律航法による自律走行を可能にする自律航法手段を備えている請求項1〜3の何れか1項に記載の自動搬送システム。
【請求項5】
前記自動搬送車は、個別に駆動される2本1組の駆動輪が同軸に配置されていると共に当該2本1組の駆動輪の回転差に応じて旋回して操舵される駆動ユニットが前後方向の2箇所に配置されていると共に、
前記自律走行区間では、2基の駆動ユニットの操舵角が逆相で制御される請求項1〜4の何れか1項に記載の自動搬送システム。
【請求項6】
前記自律走行区間は、前記自動搬送車が前後を入れ替える反転動作を実行する区間である請求項1〜5の何れか1項に記載の自動搬送システム。
【請求項1】
予定された経路に沿って自動搬送車を自動走行させるための自動搬送システムであって、
前記自動搬送車が追従可能な導線が前記経路に沿って敷設された第1及び第2の追従区間と、
前記経路中、前記第1の追従区間と前記第2の追従区間との間に配置され、前記自動搬送車が自律走行する自律走行区間と、
前記自律走行区間の自動搬送車を前記第2の追従区間の導線に復帰させるためのパターンであって、前記自動搬送車の進行方向に直交する方向の両外側に当たる外縁が前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる復帰パターンが敷設された復帰走行区間と、を含み、
前記自動搬送車は、前記導線又は前記復帰パターンに追従して走行するための追従走行制御、及び前記導線にも前記復帰パターンにもよらずに自律走行するための自律走行制御を実行可能な走行制御手段と、
前記復帰パターン及び前記導線を検出する検出センサと、
前記復帰パターンの外縁を検出する外縁検出手段と、
前記検出センサにより前記復帰パターンが最初に検出された後、前記外縁検出手段により前記外縁が検出されたときに前記自律走行制御から前記追従走行制御に切り換える制御切換手段と、を備えた自動搬送システム。
【請求項2】
前記検出センサは、横方向に幅広く延設された検出エリアを備え、該検出エリアのどの部分が前記導線又は前記復帰パターンを検出しているかを検知可能であり、
前記外縁検出手段は、前記検出センサが前記復帰パターンを最初に検出した後、前記検出エリアの一方の端部側から非検出状態に移行したときに前記外縁を検出する請求項1に記載の自動搬送システム。
【請求項3】
前記復帰パターンは、前記自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる略V字状をなすように復帰導線が敷設されたパターンである請求項1又は2に記載の自動搬送システム。
【請求項4】
前記自動搬送車は、自律航法による自律走行を可能にする自律航法手段を備えている請求項1〜3の何れか1項に記載の自動搬送システム。
【請求項5】
前記自動搬送車は、個別に駆動される2本1組の駆動輪が同軸に配置されていると共に当該2本1組の駆動輪の回転差に応じて旋回して操舵される駆動ユニットが前後方向の2箇所に配置されていると共に、
前記自律走行区間では、2基の駆動ユニットの操舵角が逆相で制御される請求項1〜4の何れか1項に記載の自動搬送システム。
【請求項6】
前記自律走行区間は、前記自動搬送車が前後を入れ替える反転動作を実行する区間である請求項1〜5の何れか1項に記載の自動搬送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−89077(P2012−89077A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237587(P2010−237587)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(593018208)株式会社シンテックホズミ (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(593018208)株式会社シンテックホズミ (8)
【Fターム(参考)】
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