説明

自動演奏装置

【課題】簡単な構成で、同時制御操作子数の制約を受けることなく、多数の操作子をリアルタイムでフィードバック制御する。
【解決手段】シリアル接続された6つのASIC52がDSP51に接続される。各ASIC52は、検出信号SD、PWM値のパラレル入力、出力、及びPWM値、A/D値のシリアル転送を行える。DSP51は、演奏データとA/D値とに基づきPWM値を生成する。シリアルクロック信号SCKに同期して、96チャンネル分のシフトレジスタ54に、DSP51からPWM値がシリアル転送されると共に、シフトレジスタ54のA/D値がDSP51にシリアル転送される。一方、ワードシンク信号WSの立ち下がりタイミングで、シフトレジスタ54に検出信号SDがパラレル入力されると共に、シフトレジスタ54のPWM値がパラレル出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏情報に従って、ペダルや鍵等の操作子を個別にフィードバック制御する自動ピアノ等の演奏装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵あるいはペダル等の操作子の変位を検出すると共に、その検出値と演奏情報とに基づくフィードバック制御により操作子を個々に駆動し、自動演奏を実現する自動ピアノ等の演奏装置が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1の演奏装置では、一般の自動ピアノにおける同時発音チャンネル数が16個程度に限られていることに着目し、並列にサーボ制御が実行されるべきアクチュエータのうち、実用上支障がない限られた数のアクチュエータを選択して、時分割でサーボ制御処理を行うことで、所望の機能を確保しつつ、簡単な構成でサーボ処理回路の負担乃至回路数の削減を可能にしている。
【特許文献1】特開平6−214560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されるような演奏装置では、同時制御可能な操作子数は限定されており、近年の同時発音数の増大に対応が困難である。また、時分割処理によると、厳密には各操作子間で制御タイミングのずれが生じ得るが、制御操作子数が多くなるとそれがより顕著になるため、改善が望まれる。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構成で、同時制御操作子数の制約を受けることなく、多数の操作子をリアルタイムでフィードバック制御することができる演奏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の演奏装置は、複数の演奏操作子(31)と、前記複数の演奏操作子の各々に対応して設けられ、各々独立に制御されて、対応する演奏操作子を駆動する複数の駆動手段(20)と、前記複数の演奏操作子の各々に対応して設けられ、各演奏操作子の変位に基づく物理情報(SD)を検出する物理情報検出手段(37)と、演奏情報を入力する演奏情報入力手段(40)と、クロック情報(SCK)を発生させるクロック情報発生手段(51)と、前記演奏情報入力手段により入力された演奏情報と駆動情報生成用の物理情報とに基づいて、前記複数の演奏操作子の各々を駆動するための駆動情報(PWM)を生成すると共に、該生成した駆動情報を、前記クロック情報発生手段により発生したクロック情報に基づいてシリアルに出力する駆動情報生成出力手段(51)と、前記駆動情報生成出力手段とは別個に設けられ、前記駆動情報生成出力手段により出力される駆動情報を前記クロック情報に基づいてシリアルに入力し、該入力された駆動情報を、対応する駆動手段に前記クロック情報に基づく所定のタイミング(WS立ち下がり)で一括して出力する一方、前記物理情報検出手段により検出された物理情報を前記所定のタイミング(WS立ち下がり)で一括して取り込み、該取り込んだ物理情報を、前記駆動情報生成出力手段に対して前記駆動情報生成用の物理情報として前記クロック情報に基づいてシリアルに出力する入出力制御手段(52)とを有し、前記所定のタイミングは、前記クロック情報に同期したタイミングであって、且つ、前記入出力制御手段が、前記検出された物理情報を一括して取り込んでから、該一括して取り込んだ物理情報のすべてを前記駆動情報生成出力手段に対してシリアルに出力することが完了するまでの間隔で訪れるタイミングであり、前記駆動情報生成出力手段は、前記入出力制御手段により前記所定のタイミング毎に一括して出力される分の駆動情報を、隣接する所定のタイミングの間隔内に生成し、前記駆動情報及び前記物理情報はいずれも、複数ビットの情報であることを特徴とする。
【0007】
なお、上記括弧内の符号等は例示である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で、同時制御操作子数の制約を受けることなく、多数の操作子をリアルタイムでフィードバック制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る演奏装置の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。本演奏装置は、例えば自動演奏ピアノ(以下、「鍵盤装置」と称する)30として構成される。鍵盤装置30は、通常のアコーステックピアノと同様、鍵31の運動をハンマ32に伝達するアクションメカニズム33と、ハンマ32により打撃される弦34と、弦34の振動を止めるためのダンパ36とを備えている。以降、鍵31の奏者側を「前方」と称する。
【0011】
また、不図示のソレノイドコイルを有するキードライブユニット20が、鍵31ごとに設けられ、鍵31の後端部側の下方に配置されている。また、キーセンサユニット37が各鍵31に対応して設けられる。キーセンサユニット37は、各鍵31の前部下方に配置され、鍵31のストローク中における位置を示すアナログ信号である検出信号SDを出力する。
【0012】
演奏データ中の発音イベントデータで規定される音高に対応するキードライブユニット20に駆動信号が供給されると、そのプランジャが上昇し、該プランジャの頂部が対応する鍵31の後端部裏面に当接して該鍵31を突き上げる。これにより鍵31が押下され、弦34がハンマ32により叩かれることによりピアノ音が発音されるようになっている。また、各キードライブユニット20には、そのプランジャの移動速度を検出する速度センサ(図示せず)が設けられている。
【0013】
鍵盤装置30にはまた、ダンパ36を駆動するためのペダルPDが設けられる。また、ペダルPDを駆動するためのペダルアクチュエータ26と、ペダルPDの位置を検出する位置センサ27とが設けられている。詳細は図示しないが、ペダルアクチュエータ26は公知の構成のもので、ペダルPDに連結されたプランジャ29と、該プランジャ29に巻装されたソレノイドコイル28とを有し(いずれも図2参照)、駆動信号が供給されると、上記プランジャ29が動作してペダルPDが駆動されるようになっている。
【0014】
鍵盤装置30はまた、コントロールユニット40、I/O(入出力)ユニット50を備える。コントロールユニット40は、I/Oユニット50との間で各種信号をやりとりし、例えば、I/Oユニット50に、演奏データ、同期信号等を送る。この演奏データは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)コードで構成され、鍵31及びペダルPDの動作を規定する。
【0015】
I/Oユニット50には、上述したキーセンサユニット37からの検出信号SDが入力されるほか、位置センサ27の検出信号Py(p)が供給され、各キードライブユニット20の上記速度センサからも、同様に速度検出信号Vy(k)が供給される。本実施の形態では、I/Oユニット50は、上記演奏データと、検出信号Py(p)及び検出信号SDとに基づき励磁電流として電流指示値u(p)、u(k)を生成し、それぞれペダルアクチュエータ26、キードライブユニット20に供給する。これら電流指示値u(p)、u(k)は、実際には、ペダルアクチュエータ26、キードライブユニット20のそれぞれのソレノイドコイルに流すべき平均電流の目標値に応じたデューティ比となるようにパルス幅変調を施したPWM信号である。
【0016】
演奏データに基づく自動演奏においては、I/Oユニット50が、上記演奏データに応じて生成される各時刻におけるペダルPD及び鍵31の各位置に対応した位置制御データと、検出信号Py(p)、及び検出信号SDのデジタルデータ変換値(後述するA/D値)とをそれぞれ比較し、両者がそれぞれ一致するように電流指示値u(p)、u(k)を随時更新して出力することでサーボ制御を行う。これにより、演奏データに従って、ペダルPD及び鍵31が駆動されて、自動演奏がなされる。なお、本実施の形態では、鍵31のフィードバック駆動制御に検出信号SDを用いるが、これに代えて、あるいはこれに加えて、上記速度検出信号Vy(k)を用いるようにしてもよい。I/Oユニット50の詳細は後述する。
【0017】
図2は、鍵盤装置30の制御機構の構成を示すブロック図である。
【0018】
鍵盤装置30の制御機構は、CPU11に、バス15を通じて、上記キードライブユニット20、ペダルアクチュエータ26、位置センサ27、キーセンサユニット37のほか、鍵盤部KB、ROM12、RAM13、MIDIインターフェイス(MIDII/F)14、タイマ16、表示部17、外部記憶装置18、操作部19、音源回路21、効果回路22及び記憶部25が接続されて構成される。音源回路21には効果回路22を介してサウンドシステム23が接続されている。
【0019】
CPU11は、本装置30全体の制御を司る。ROM12は、CPU11が実行する制御プログラムやテーブルデータ等の各種データを記憶する。RAM13は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。MIDII/F14は、不図示のMIDI機器等からの演奏データをMIDI信号として入力する。タイマ16は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。表示部17は、例えばLCDを含んで構成され、楽譜等の各種情報を表示する。外部記憶装置18は、フレキシブルディスク等の不図示の可搬記憶媒体に対してアクセス可能に構成され、これら可搬記憶媒体に対して演奏データ等のデータを読み書きすることができる。操作部19は、不図示の各種操作子を有し、自動演奏のスタート/ストップの指示、曲選択等の指示、各種設定等を行う。記憶部25は、フラッシュメモリ等の不揮発メモリで構成され、演奏データ等の各種データを記憶することができる。鍵盤部KBには、上記鍵31が含まれる。
【0020】
音源回路21は、演奏データを楽音信号に変換する。効果回路22は、音源回路21から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム23が、効果回路22から入力される楽音信号等を音響に変換する。
【0021】
なお、上記コントロールユニット40及びI/Oユニット50の機能は、実際には、CPU11、タイマ16、ROM12、RAM13等の協働作用によって実現される。
【0022】
図3は、コントロールユニット40及びI/Oユニット50の構成を示すブロック図である。
【0023】
I/Oユニット50には、デジタルシグナルプロセッサ(以下、「DSP」と称する)51と、DSP51とは別個に設けられる6個のASIC(Application Specific Integrated Circuit)52(52(1)〜52(6))とが実装されている。
【0024】
各ASIC52はいずれも同様に構成され、検出信号SDのパラレル入力のための16個の入力端子itm(itm(1)〜itm(16)、図4参照)、及び電流指示値u(p)、u(k)のパラレル出力のための16個の出力端子otm(otm(1)〜otm(16)、図4参照)を有している。以降、駆動情報である電流指示値u(k)を「PWM値」とも称する。鍵31に駆動制御に関し、各入力端子itmは、キーセンサユニット37と配線接続され、各出力端子otmは、キードライブユニット20に配線接続されている。
【0025】
ASIC52はまた、外部へシリアルデータを出力するデータ送信端子(データエクスクルーシブ)DX、外部からシリアルデータを入力するデータ受信端子(データレシーブ端子)DRを有している。そして、図3に示すように、これら端子DX、端子DRでASIC52同士がカスケード接続されて、6つのASIC52がシリアル接続されている。ASIC52の詳細は後述する。
【0026】
本実施の形態では、鍵31を88個制御することを想定し、6個のASIC52で96チャンネル分に対応できるようになっている。すなわち、ASIC52(1)〜52(6)には、1つのASIC52に対して16鍵が低音域の鍵31から順に割り当てられている。なお、余るチャンネルの一部はペダルPD用に割り当てられ、検出信号Py(p)に基づいてペダルPDが駆動制御されるが、制御態様は鍵31の場合と同様であるので、以下では鍵31についてのみ説明し、ペダルPDの制御の詳細説明は省略する。
【0027】
コントロールユニット40は、記憶媒体(外部記憶装置18等)に記憶されている、または外部からMIDII/F14を介して入力される演奏データをDSP51に送る。DSP51は、シリアルクロック信号SCK(8MHz)及びワードシンク信号WSを生成し、これらを各ASIC52(1)〜52(6)に個々に送る。
【0028】
図4は、1つのASIC52の内部構成を示す回路図である。ASIC52は、16段のブロックBL(1)〜BL(16)を有する。1つのブロックBLが、1つの入出力チャンネルに対応し、従って、ブロックBL(1)〜BL(16)が16個の鍵31に対応する。
【0029】
ASIC52は、上記入力端子itm、出力端子otm、データ送信端子DX、データ受信端子DRのほか、不図示の各種端子を有し、例えば、それぞれワードシンク信号WS、シリアルクロック信号SCKが入力される端子「WS」、端子「SCK」、電源やグランド電位を入力するための端子等を有する。
【0030】
ブロックBL(1)は、入力端子itm(1)に、A/D変換器53(1)、シフトレジスタ(SHIFT)54(1)、ラッチ回路(PWM)55(1)及び出力端子otm(1)が直列に接続されて構成される。ブロックBL(2)〜BL(16)もブロックBL(1)と同様に構成される。A/D変換器53、シフトレジスタ54、ラッチ回路55は、それぞれ10bit、16bit、9bitのデータを扱えるようになっている。
【0031】
ブロックBL(2)〜BL(15)においては、隣接するブロックBLのシフトレジスタ54が直列に接続されている。ブロックBL(1)のシフトレジスタ54(1)の入力側はデータ受信端子DRに、ブロックBL(16)のシフトレジスタ54(1)の出力側はデータ送信端子DXに、それぞれ接続されている。
【0032】
シリアルクロック信号SCKの立ち下がりのタイミングで、シフトレジスタ54内でデータが1bitずつシフトし、最後のbitのデータは後続のシフトレジスタ54の先頭bitに転送される。A/D変換器53は、対応する入力端子itmから入力される検出信号SDをA/D変換して保持する。ワードシンク信号WSの立ち下がりのタイミング(所定のタイミング)で、A/D変換器53、シフトレジスタ54が保持しているデータ(全bitのデータ)が、それぞれ対応するシフトレジスタ54、ラッチ回路55に転送されると共に、ラッチ回路55が保持しているデータ(全bitのデータ)が、対応する出力端子otmに出力される。
【0033】
本実施の形態では、各ASIC52は、シリアル入出力を行うと共に16チャンネルでパラレル入力及びパラレル出力を行う入出力制御を行うようになっている。次に、この入出力制御動作を説明する。
【0034】
シリアルクロック信号SCKの立ち下がりが16(チャンネル)×6(個)×16(bit)=1536回発生する毎にワードシンク信号WSの立ち下がりが1回発生する。データの流れは次のようになる。すなわち、図3に示すように、シリアルクロック信号SCKの立ち下がりタイミングに従って、DSP51は、その出力端子dxから、PWM値をASIC52(1)のデータ受信端子DRに1bitずつシリアルに供給すると共に、ASIC52(6)のデータ送信端子DXからの、アナログの物理情報である検出信号SDをA/D変換したデジタルの物理情報(以下、「A/D値」と称する)を1bitずつシリアルに受信端子drで受信する。上述のように、PWM値は、電流指示値u(k)であって、演奏データとA/D値とに基づきDSP51により生成される。このことを、時系列的に説明すると、次のようになる。
【0035】
図5は、I/Oユニット50内のデータ処理を示すタイムチャートである。同図(a)〜(f)の各処理は、時間tの進行に従って同図右方に進む。同図(a)はワードシンク信号WSの立ち下がりタイミングを示す。同図(b)はA/D変換器53における処理内容、同図(c)〜(e)はDSP51における処理内容、同図(f)はラッチ回路55における処理内容をそれぞれ示す。図6は、I/Oユニット50におけるデータの流れを示す模式図である。同図において、「A/D」、「SHIFT」、「PWM」はそれぞれ、6個分のASIC52のA/D変換器53、シフトレジスタ54、ラッチ回路55をひとかたまりにした集合要素に相当する。
【0036】
図5、図6において、n番目のワードシンク信号WSの立ち下がりタイミングにDSP51で制御演算(演奏データとA/D値とに基づくPWM値の生成)の対象となるデータ群を「n」で示す。また、図6において、n等の下の(A/D)、(PWM)の表記はそれぞれ、そのデータ群「n」がA/D値、PWM値であることを示している。
【0037】
図6(a)に示すように、データ群「n」がDSP51で制御演算されているとき(図5(d)のn)、それと並行して、以下の動作がシリアルクロック信号SCKに同期してなされる。まず、既に制御演算を終えてPWM値となっているデータ群「n−1」が、DSP51の出力端子dxからASIC52(1)のデータ受信端子DRに1bitずつシリアルに転送される(図5(e)のn−1)。データ受信端子DRに受信されたデータ群「n−1」は、シフトレジスタ54内を1bitずつシフトすると共に、シフトレジスタ54に既に保持されていたA/D値であるデータ群「n+1」が、1bitずつシフトしつつASIC52(6)のデータ送信端子DXからDSP51の受信端子drへ1bitずつシリアルに転送される(図5(c)のn+1)。
【0038】
また、これらと並行して、各ASIC52のA/D変換器53は、対応する入力端子itm(1)〜itm(16)(図4参照)からアナログの検出信号SDをパラレルに一括して受信しつつそれらをA/D変換し、次の(n+1番目の)ワードシンク信号WSの立ち下がりまでにA/D値であるデータ群「n+2」を準備する(図5(b)のn+2)。さらに、各ASIC52のラッチ回路55は、既に保持しているPWM値であるデータ群「n−2」を、次のワードシンク信号WSの立ち下がりまでに、対応する出力端子otm(1)〜otm(16)(図4参照)からパラレルに一括して出力する(図5(f)のn−2)。
【0039】
このようにして、次のワードシンク信号WSの立ち下がりが発生するまでには、図6(b)に示すように、DSP51にデータ群「n」、「n+1」が、A/D変換器53にデータ群「n+2」が、シフトレジスタ54のデータ群「n−1」が、それぞれ保持された状態となる。そして、n+1番目のワードシンク信号WSの立ち下がりのタイミングで、図6(b)、(c)に示すように、シフトレジスタ54のデータ群「n−1」が対応するラッチ回路55に転送されると同時に、A/D変換器53のデータ群「n+2」が対応するシフトレジスタ54に転送される。従って、ワードシンク信号WSの立ち下がり毎に、キードライブユニット20を制御する電流指示値u(k)(のデューティ比)が更新されることになる。
【0040】
その後は、図6(d)に示すように、処理対象のデータ群が1つ新しくなるだけであり、その次のワードシンク信号WSの立ち下がりまでにおける動作の態様は、図6(a)で説明したのと全く同様である。
【0041】
本実施の形態によれば、シリアルクロック信号SCKに同期して、96チャンネル分のシフトレジスタ54に、DSP51からPWM値がシリアル転送されると共に、シフトレジスタ54に保持されていたA/D値が、DSP51に対してシリアル転送され、その一方、ワードシンク信号WSの立ち下がりタイミングでは、シフトレジスタ54に検出信号SDがパラレル入力、すなわち一括して取り込まれると共に、シフトレジスタ54に保持されていたPWM値がパラレル出力、すなわち、一括して出力される。これらにより、シフトレジスタ54におけるA/D値のシリアル/パラレル転送動作が同時にPWM値のシリアル/パラレル転送動作にもなっているので、シフトレジスタ54がA/D値転送とPWM値転送の2機能を兼ねる。従って、A/D値転送用とPWM値転送用とでシフトレジスタ54を別個に設ける構成に比し、回路構成が簡単で済む。また、時分割処理のように、個々の鍵31間で検出、駆動のタイミングのずれが生じないことから、和音同時発音時等、同時制御する操作子数が多数となっても、精度の高いリアルタイム演奏を行うことができる。よって、簡単な構成で、同時制御する操作子数の制約を受けることなく多数の操作子をリアルタイムでフィードバック制御することができる。
【0042】
また、制御可能なチャンネル数は、ASIC52におけるブロックBLの段数を変更するか、またはI/Oユニット50に実装されるASIC52の数を変更することで、任意に変更でき、しかも、DSP51における制御アルゴリズムの変更等によっても容易に改変可能であることから、汎用性が高い。このことから、本発明は、鍵盤装置30だけでなく、演奏操作子を有する各種の演奏装置へ適用可能である。
【0043】
なお、ASIC52におけるPWM値とA/D値のパラレル転送は、所定のタイミングで一括してなされればよく、ワードシンク信号WSの立ち下がりタイミングに限定されるものではない。
【0044】
なお、検出信号SDは鍵31の押下位置を示す位置データであるが、フィードバック制御に用いるデータはこれに限られず、例えば、速度、加速度等の、鍵31の変位に基づく物理量のデータであってもよい。また、ASIC52を用いて処理されるデータとして例示した、検出信号SD乃至A/D値、PWM値は一例であり、他のデータについても広く処理対象にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る入出力制御回路が適用される鍵盤装置の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。
【図2】鍵盤装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図3】コントロールユニット及びI/Oユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】1つのASICの内部構成を示す回路図である。
【図5】I/Oユニット内のデータ処理を示すタイムチャートである。
【図6】I/Oユニットにおけるデータの流れを示す模式図である。
【符号の説明】
【0046】
11 CPU、 20 キードライブユニット(駆動手段)、 30 鍵盤装置(演奏装置)、 31 鍵(演奏操作子)、 37 キーセンサユニット(物理情報検出手段)、 40 コントロールユニット(演奏情報入力手段)、 50 I/Oユニット、 51 DSP(駆動情報生成出力手段、クロック情報発生手段)、 52 ASIC(入出力制御手段)、 53 A/D変換器、 54 シフトレジスタ、 55 ラッチ回路、 itm 入力端子、 otm 出力端子、 DR データ受信端子、 DX データ送信端子、 BL ブロック、 u(k) 電流指示値(駆動情報(PWM値))、 SD 検出信号(物理情報)、 SCK シリアルクロック信号(クロック情報)、 WS ワードシンク信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演奏操作子と、
前記複数の演奏操作子の各々に対応して設けられ、各々独立に制御されて、対応する演奏操作子を駆動する複数の駆動手段と、
前記複数の演奏操作子の各々に対応して設けられ、各演奏操作子の変位に基づく物理情報を検出する物理情報検出手段と、
演奏情報を入力する演奏情報入力手段と、
クロック情報を発生させるクロック情報発生手段と、
前記演奏情報入力手段により入力された演奏情報と駆動情報生成用の物理情報とに基づいて、前記複数の演奏操作子の各々を駆動するための駆動情報を生成すると共に、該生成した駆動情報を、前記クロック情報発生手段により発生したクロック情報に基づいてシリアルに出力する駆動情報生成出力手段と、
前記駆動情報生成出力手段とは別個に設けられ、前記駆動情報生成出力手段により出力される駆動情報を前記クロック情報に基づいてシリアルに入力し、該入力された駆動情報を、対応する駆動手段に前記クロック情報に基づく所定のタイミングで一括して出力する一方、前記物理情報検出手段により検出された物理情報を前記所定のタイミングで一括して取り込み、該取り込んだ物理情報を、前記駆動情報生成出力手段に対して前記駆動情報生成用の物理情報として前記クロック情報に基づいてシリアルに出力する入出力制御手段とを有し、
前記所定のタイミングは、前記クロック情報に同期したタイミングであって、且つ、前記入出力制御手段が、前記検出された物理情報を一括して取り込んでから、該一括して取り込んだ物理情報のすべてを前記駆動情報生成出力手段に対してシリアルに出力することが完了するまでの間隔で訪れるタイミングであり、
前記駆動情報生成出力手段は、前記入出力制御手段により前記所定のタイミング毎に一括して出力される分の駆動情報を、隣接する所定のタイミングの間隔内に生成し、
前記駆動情報及び前記物理情報はいずれも、複数ビットの情報であることを特徴とする演奏装置。
【請求項2】
前記複数の演奏操作子には、鍵盤操作子及びペダルの双方が含まれることを特徴とする請求項1記載の演奏装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−15342(P2009−15342A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236414(P2008−236414)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【分割の表示】特願2004−127143(P2004−127143)の分割
【原出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】