説明

自動焦点調節カメラ

【課題】光電変換センサにおいて検討されている特性の好適な活用を提案する。
【解決手段】可視光域において60%以上の量子効率を有するCIGSセンサ70の出力に基づいてカメラの撮像部への焦点調節を行う。赤外カットフィルタ68によりCIGSセンサ70における赤外域の60%以上の量子効率の感度域をカットする。赤外カットフィルタ68を可視光カットフィルタ76に差し替えることで赤外領域撮像用の焦点検出センサとして活用する。CIGSセンサ70と減光手段66により広いダイナミックレンジでの焦点検出を可能にする。減光分は測光等に活用する。赤外域の感度における検出情報を可視光域での焦点検出に活用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換センサとしては日々、種々の特性のものが提案されている。例えば、以下の特許文献等において、CIGS系薄膜を利用した光電変換センサに関する提案がなされている。
【特許文献1】特開2007−123720号公報
【特許文献2】特開2007−123721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、光電変換センサにおいて検討されている種々の特性は、まだ充分活用されているとは言えず、さらに検討すべき課題は多い。
【0004】
本発明の課題は、上記に鑑み、光電変換センサにおいて検討されている特性の好適な活用を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本発明は、撮像部と、撮像部への焦点調節状態の検出するための可視光域において60%以上の量子効率を有するセンサと、センサの出力に基づいて前記撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部とを有する自動焦点調節カメラを提供する。上記のような、可視光域において60%以上の量子効率を有するセンサとしては、CIGSセンサ(銅、インジウム、ガリウムおよびセレンを材料とする光センサ)等が提案されており、このような高感度のセンサの出力に基づいて焦点調節の制御信号を出力するよう構成することにより、従来では焦点検出が不可能であった暗い被写体に対しても焦点調節が可能となる。これによって、暗い被写体に対する焦点検出の速度、信頼性が向上するとともに、従来必要であった、焦点調節のための補助光照明等も不要となる。
【0006】
本発明の具体的な特徴によれば、センサは赤外域においても60%以上の量子効率を有するものであるとともに、赤外域の光の入射をカットするための赤外カットフィルタを有する。これによって、焦点検出性能への支障なしに、センサの可視光における高感度特性を活用できる。本発明のさらに具体的な特徴によれば、赤外カットフィルタは前記センサへの光路から除去可能であるとともに、センサの赤外域における60%以上の量子効率は前記赤外カットフィルタ除去時において利用される。より具体的には、赤外カットフィルタと差し替えて使用する可視光カットフィルタを用いることによってセンサの赤外域においても60%以上の量子効率が利用され、赤外領域での撮像における焦点検出センサとして活用できるようになる。
【0007】
本発明の他の具体的な特徴によれば、センサへの入射光量を制限する減光手段が設けられる。これによって、可視光域において60%以上の量子効率を有するセンサを広いダイナミックレンジにおいて活用することができる。なお、さらに具体的な特徴によれば、センサはゲインコントロール手段を有するとともに、減光手段およびゲインコントロール手段によりセンサの感度が調整される。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、撮像部と、撮像部への焦点調節状態の検出するための可視光域から赤外にわたる広い感度領域を有するセンサと、センサの出力に基づいて撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部と、センサの感度域を切り替えるために互いに差し替え可能にセンサへの光路に挿入される赤外カットフィルタおよび可視光カットフィルタとを有する自動焦点調節カメラが提供される。これによって、広い感度領域を有するセンサを活用し、撮像部の状況に合わせた可視光域または赤外域での焦点検出が可能となる。
【0009】
上記本発明のより具体的な特徴によれば、撮像部が可視光域から赤外にわたる広い感度領域を有するようにし、このような撮像部が可視光領域において撮像を行う時はセンサへの光路に前記赤外カットフィルタを挿入するとともに、撮像部が赤外領域において撮像を行う時はセンサへの光路に前記可視光カットフィルタを挿入するよう構成される。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、撮像部と、撮像部への焦点調節状態の検出するためのセンサと、センサの出力に基づいて撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部と、センサへの入射光量を制限する減光手段を有することを特徴とする自動焦点調節カメラが提供される。これによって、高感度のセンサを用いつつ広いダイナミックレンジにおいて焦点検出を行うことが可能となる。
【0011】
上記本発明のより具体的な特徴によれば、減光手段によってセンサに入射しなくなった光量を活用する活用手段が設けられる。活用の例としては測光手段または被写体領域中における焦点検出領の推定手段が挙げられる。また、このような活用手段の出力はより好適な焦点調節のために組み合わせて活用することも可能である。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、可視光領域に感度をもつ撮像部と、撮像部への焦点調節状態の検出するための可視光領域に感度を持つ可視光センサと、赤外領域に感度を有する赤外センサと、赤外センサの出力に基づいて被写体領域中において可視光センサにより焦点検出すべき部分を推定する処理部と、可視光センサの出力に基づいて撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部とを有することを特徴とする自動焦点調節カメラが提供される。これによってより適切な焦点検出が可能となる。
【0013】
上記本発明のより具体的な特徴によれば、可視光センサと、赤外領域に感度を有する赤外センサは必ずしも別に設けるものに限らず、可視光から赤外にわたる感度領域をもつ一つのセンサを切り替えて利用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るオートフォーカスデジタル一眼レフカメラの第1実施例を示すブロック図である。オートフォーカスデジタル一眼レフカメラはカメラボディ2およびこれに交換可能に着脱される交換レンズ4を有している。交換レンズ4のレンズ光学系6から入射した被写体光は、観察位置にあるミラー8で上方に反射され、焦点板10の位置に結像する。この像はペンタリズム12で反射された後、アイピース14で観察され、撮像ための構図決めなどが行われる。
【0015】
撮影の際には、操作部15のシャッタレリーズボタンを操作することによって、ミラー8がオートフォーカス用サブミラー16とともに撮影位置に退避するとともにフォーカルプレーンシャッタ18が開き、交換レンズ4のレンズ光学系6から入射した被写体光が撮像部20に結像して撮像される。撮像部20によって撮像された画像情報は、画像処理部22で画像処理された後、カメラ制御部24の制御により画像記憶部26に記憶される。画像記憶部26に記憶された画像情報は、適宜媒体スロット28に挿入されたメモリーカードなどの記憶媒体に転送される。また、画像記憶部26に記憶された画像情報は、カメラ制御部24の制御により、適宜入出力部30から外部に転送することができる。なお、撮影直後の画像情報は、カメラ制御部24から表示部32に送られて自動的に表示されるので、操作者は撮像した画像を確認することができる。
【0016】
画像再生の際には、操作部15の操作により、画像記憶部26または媒体スロット28に記憶された画像情報がカメラ制御部24によって読み出され、カメラボディ2の背面に設けられた液晶等からなる表示部32に表示される。以上が、図1のオートフォーカスデジタル一眼レフカメラにおける撮像および再生に関する基本構成および基本機能である。なお、上記から明らかなように、ミラー8が観察位置にあるときは、撮像部20による被写体像の撮像は行われないので、以上の構成だけではアイピース14で観察できるリアルタイムの被写体像は表示部32に表示されることはなく、撮影後に確認ができるだけである。この点が、デジタル一眼レフカメラの特殊性であり、表示部32の画像を観察しながら構図決めができる通常のコンパクトデジタルカメラと異なるところである。
【0017】
次に、図1のオートフォーカスデジタル一眼レフカメラにおけるオートフォーカスに関する構成と機能について説明する。交換レンズ4のレンズ光学系6から入射した被写体光の一部は、観察位置にあるミラー8中央にある半透過部を透過し、サブミラー16で下方に反射されて測光兼用オートフォーカス(以下「AF」)センサに導かれる。測光兼用AFセンサ34はサブミラー16から入射する光をAFセンサ上に再結像して分析し結果をカメラ制御部24に送る。この分析は、例えば、よく知られている瞳分割による位相差検出方式などによって撮像部20の撮像面とレンズ光学系6による結像位置のずれ方向およびその程度を分析することによって行われる。カメラ制御部24は、測光兼用AFセンサ34から得られたレンズ光学系6による結像位置のずれ方向およびその程度の情報に基づき、結像位置のずれを解消するためのレンズ光学系6の駆動量および駆動方向の情報を、AF制御部36に送る。AF駆動部38は、カメラボディ2と交換レンズ4との機械的または電気的インターフェースによってAF制御部36から伝えられる駆動量および駆動方向の情報に基づいてレンズ光学系6を駆動し、自動焦点合わせを行う。なお、測光兼用AFセンサ34の構成の詳細については後述する。
【0018】
ライブビューセンサ40は、デジタル一眼レフカメラにおいて、通常のコンパクトデジタルカメラと同様にして、表示部32の画像を観察しながら構図決めができるようにするための「ライブビュー」機能のための構成である。ペンタプリズム12の反射面12a全体が半透過性になっており、ライブビューセンサ40は、焦点板10の画像をCIGS撮像センサ上に再結像させることにより、焦点版10の画像全体を撮像できるようになっている。CIGS撮像センサは、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)およびセレン(Se)を材料とする光センサであり、その詳細は後述する。
【0019】
ペンタプリズム12の反射面12aは、可視光領域以外はほぼ全面的に光を透過させるとともに、可視光領域では、わずかに光を透過させるだけで大半が反射する分光透過特性になっており、アイピース14で焦点版10の像を観察する際に実質的に像が暗くなることはない。また、ライブビューセンサ40に採用されているCIGS撮像センサは、後述するように可視光領域において高い感度を有しているので、可視光領域での反射面12aの光透過率がわずかであっても、可視光領域における焦点版10の像を充分撮像することが可能である。このライブビューセンサ40への可視光の配分は、アイピース14により光学的に被写体を観察し難い暗さになったとき、CIGS撮像センサによるライブビュー用の撮像についても光量不足となるレベルとする。CIGS撮像センサを用いたライブビューセンサ40の詳細については後述する。ライブビューセンサ40で撮像された画像はカメラ制御部24に送られ、これが表示部32で表示されるので、図1のオートフォーカスデジタル一眼レフカメラは、被写体が通常の明るさである限り、通常のコンパクトデジタルカメラと同様にして、表示部32の画像を観察しながら構図決めが可能である。
【0020】
図2は、図1のオートフォーカスデジタル一眼レフカメラの第1実施例における測光兼用AFセンサ34およびライブビューセンサ40の構成を関連する部分とともに詳細に示したブロック図である。ペンタプリズム12の反射面12aは、すでに述べたように可視光領域以外はほぼ全面的に光を透過させるとともに、可視光領域では、わずかに光を透過させるだけで大半が反射する分光透過特性を有するが、多層膜52はこのような分光透過特性を実現するために反射面12aにコーティングされたものである。
【0021】
ライブビューセンサ40は、このような多層膜52を透過した焦点面10からの光束をCIGS撮像センサ54の撮像面に再結像させるための再結像レンズ56を備えている。赤外カットフィルタ58は、多層膜52を透過してきた可視光領域以外の光を実質的にカットしてCIGS撮像センサ54の波長感度特性を撮像部20の波長感度特性に近似させるものであり、視感度に一致した被写体像を撮像してカメラ制御部24に送り、図1の表示部32でのライブビューを可能にする。なお、本発明にいう「赤外」とは主に「近赤外」と称される比較的可視光に近い領域の赤外線を指すが、学会により定義が必ずしも一定でないので、以下「赤外」と略称する。
【0022】
ライブビューセンサ40は、さらに焦点板10における明るさを測定する全画面測光を可能にしている。つまり、CIGS撮像センサ54から出力される画像情報は、全画面にわたる測光情報としてもカメラ制御部24で処理され、必要に応じAF対応部分測光センサ72の出力と組合せ慮利される。そして、これら処理結果に基づいて交換レンズ4の絞り径、フォーカルプレーンシャッタ18によるシャッタ速度、および撮像部20の感度などをコントロールする自動露出制御が行われる。
【0023】
可視光カットフィルタ60は赤外カットフィルタ58と差し替えてCIGS撮像センサ54への光路中に挿入されるもので、「長波長モード」にて使用されるものである。多層膜52からは可視光領域以外がほぼ全面的に透過してくるので、長波長モードの設定で赤外カットフィルタ58に替えて可視光カットフィルタ60が光路に挿入された場合は、可視光よりも長波長側域の光がCIGS撮像センサ54に入射するようになる。CIGS撮像センサ54は、後述するように、長波長側が1300nmにおよぶ分光感度を持っている。従って、可視光カットフィルタ60の挿入によってライブビューセンサ40はこれら長波長域の光での撮影に好適な撮像センサとなる。そして、このような長波長域の画像出力を表示部32でリアルタイムに観察したり、画像記憶部26に記録したりすることが可能となる。
【0024】
ミラー/フィルタ駆動部62は、操作部15によるモード切換に応じたカメラ制御部24の制御により、上記の可視光カットフィルタ60と赤外カットフィルタ58の差し替えを駆動する。なお、図2では、撮影位置に退避したミラー8aおよびサブミラー16aが二点鎖線で図示されているが、このようなミラー8とサブミラー16における観察位置と撮影位置の間の駆動も、カメラ制御部24の制御によりラー/フィルタ駆動部62が行う。
【0025】
測光兼用AFセンサ34の再結像レンズ64は、交換レンズ4から入射して観察位置にあるミラー8中央にある半透過部を透過し、サブミラー16で下方に反射される被写体光を再結像させるためのものである。再結像レンズ64からの光束は、波長選択性のない可動半透ミラー66および赤外カットフィルタ68を透過してCIGSAFセンサ70上に結像する。CIGSAFセンサも、後述するように可視光領域において高い感度を有しており、暗い被写体であっても補助光なしに自動焦点検出が可能である。なお、赤外カットフィルタ68は、CIGSAFセンサ70をAFセンサとして働かせるために有害な赤外領域の波長をカットするものであり、CIGS撮像センサ54のための赤外カットフィルタ58とは必ずしも特性が同じものではない。例えば、赤外カットフィルタ8は赤外カットフィルタ58よりも狭い透過分光特性に設定される。
【0026】
このため、被写体が通常の明るさのときに減光のために可動半透ミラー66を図示の位置に挿入し、CIGSAFセンサへの入射光量をCIGSAFセンサの感度ダイナミックレンジに合わせこむ。一方、被写体が通常のAFセンサでは補助光を必要とするような暗さになったときには可動半透ミラーを64aの位置に退避させ、減光なしに被写体像をCIGSセンサに結像させる。なお、このとき可動半透ミラー66の有無による光路長の補償が必要である。例えば、可動半透ミラー66を退避させたときには、これと光路長が等しい全透過性の並行平板を代わりに光路中に挿入する。また、当然ながら、可動半透ミラーが64aの位置に退避した状態では、AF対応部分測光センサ72による測光はできなくなる。
【0027】
CIGSAFセンサ70への減光のために再結像光路中に可動半透ミラー66が挿入されている時、これを反射した光は、AF対応部分測光センサ72に入射する。AF対応部分測光センサ72は、CIGSAFセンサによって焦点検出が行われている部分の明るさを測光するものであり、全画面のうちで焦点検出の対象となっている部分の明るさを選択的に測光することにより、撮影において関心の高い部分が適正露出になるよう自動露出制御するための情報として用いられる。このように、被写体が明るい時に過剰となるCIGSAFセンサ70への減光部分は、捨てられるのではなく、測光情報として有効に利用される。
【0028】
AF対応部分測光センサ72からの部分測光情報は、ライブビューセンサ40のCIGS撮像センサ54からの全画面に関する測光情報と組合せてカメラ制御部24で処理され、最終的に、交換レンズ4の絞り径、フォーカルプレーンシャッタ18によるシャッタ速度、および撮像部20の感度などがコントロールされる。
【0029】
センサ制御部74は、可動半透ミラー66が挿入されている時および退避しているときのいずれの場合においても、CIGSAFセンサ70の受光積分時間やゲインコントロールなどを行って、自動焦点調節を制御する。この受光積分時間やゲインコントロールを混乱なく行うためには、可動半透ミラー66が挿入されているのか退避しているのかの情報も用いられる。センサ制御部74は、また、CIGSAFセンサ70およびAF対応部分測光センサ72に指示を出し、全画面のうちで焦点検出の対象とすべき部分と選択的に測光する部分を一致させる制御を行い、それぞれ対応する焦点検出情報と測光情報をカメラ制御部24に出力させる。
【0030】
一方、ライブビューセンサ40が「長波長モード」に設定され、多層膜52からCIGS撮像センサ54への光路に赤外カットフィルタ58に替えて可視光カットフィルタ60が光路に挿入された場合は、測光兼用AFセンサ34でも、これに対応したフィルタの差し替え等が行われる。具体的には、「長波長モード」の場合、半透ミラー66の退避を前提として赤外カットフィルタ68が可視光カットフィルタ76に差し替えられる。これによって、CIGS撮像センサ54による長波長域での撮像のための焦点検出が、減光なしに、CIGSAFセンサ70によって行われるようになる。なお、このとき、波長感度域あわせだけでなく、波長の違いによる光路長の変化および焦点検出の際の色収差の違い等の補償を行う。
【0031】
以上のような可動半透ミラー66の移動および赤外カットフィルタ68と可視光カットフィルタ76との差し替えは、操作部15によるモード切換操作に基づくカメラ制御部24の制御により、ミラー/フィルタ駆動部78が司る。
【0032】
図1および図2の第1実施例は、上記のような基本機能に加え、「複合AF機能」が可能である。操作部15の操作により、「複合AF機能」が選択されると、ライブビュー機能が停止され、「複合AF機能」の開始が指示される。具体的には、操作部15の操作により、「複合AF機能」が選択されると、カメラ制御部24は、赤外カットフィルタ58に替えて可視光カットフィルタ60をCIGS撮像センサ54への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部62に対して行うとともにCIGS撮像センサ54の出力に基づく表示部32でのライブビュー表示を停止する。
【0033】
これに替わり、可視光カットフィルタ60により長波長側の感度域となったCIGS撮像センサ54の画像信号は、赤外カットフィルタ68により可視光の感度域にあるCIGSAFセンサの出力と組み合わされ、「複合AF機能」が実行される。具体的には、CIGS撮像センサ54の画像信号に基づく画像処理により被写体の画像分析が行われ、その結果に基づいて、CIGSAFセンサによる焦点検出領域が決定される。
【0034】
図3は、図2のCIGS撮像センサ54およびCIGSAFセンサに用いられるCIGSセンサの分光感度(量子効率)をシリコンのCMOSセンサと比較したものである。図3(A)は、各波長におけるCIGSセンサの量子効率(%)を示すものであり、図3(B)におけるシリコンのCMOSセンサについての同様の量子効率(%)と比較して、明らかな高感度および広帯域の特性を示している。具体的には、図3(A)のCIGSセンサは、波長1300nm近くにわたる広い感度域を持つ。さらに、400nm付近から1200nm付近の広い波長域に渡り量子効率50%を超える分光感度を有しており、可視光およびこれに隣接する近赤外領域では特に顕著な高量子効率を示している。このような可視光域および赤外域において60%以上の量子効率を有する高感度および広帯域の分光感度特性は、図3(B)におけるようなシリコンのCMOSセンサでは期待できないものである。
【0035】
図4は、図1および図2の第1実施例におけるカメラ制御部24の動作のフローチャートである。操作部15によってカメラのメインスイッチがオンになるとフローがスタートし、ステップS2においてオートフォーカスデジタル一眼レフカメラが操作部15によって再生モードに設定されているかどうかチェックする。再生モード設定が検出されなければ撮影モードなのでステップS4に進み、可動半透ミラー66をCIGSAFセンサ70への光路内に設定して入射光量を減光する指示をミラー/フィルタ駆動部78に行う。
【0036】
なお、ステップS4の指示に応答するミラー/フィルタ駆動部78による可動半透ミラー66設定の機械的実行には遅延期間が設けられており、例えば可動半透ミラー66がCIGSAFセンサ70への光路にセットされている状態で可動半透ミラー66を光路から退避させる減光解除の指示が行われ、その後遅延時間内に、これを取り消す関係にある可動半透ミラー66を光路内にセットする指示が続いて行われたような場合には、ミラー/フィルタ駆動部78は実際には可動半透ミラー66の駆動を実行せず、可動半透ミラー66が光路内に設定されている状態が継続する。換言すれば、ミラー/フィルタ駆動部78は遅延時間内に可動半透ミラー66を異なる状態に駆動する指示が繰返し行われて初めて可動半透ミラー66の駆動を実行することになる。なお、既に可動半透ミラー66がCIGSAFセンサ70の光路に設定されている状態でステップS4の指示が行われた時は、当然ながら、ミラー/フィルタ駆動部78は可動半透ミラー66に対する何の駆動も行わない。これらのことは、以下の各ステップにおける種々の「指示」に共通である。
【0037】
次いでステップS6に進み、ライブビュー用の赤外フィルタ58をCIGS撮像センサ54への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部62に行う。なお、ミラー/フィルタ駆動部62のミラー差し替え動作についても、上記でミラー/フィルタ駆動部78において説明したのど同様の指示に対する駆動実行への遅延時間が設けられている。
【0038】
次いで、ステップS8でAF用の赤外カットフィルタ68をCIGSAFセンサ70への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部78に行う。そして、ステップS10に進み、CIGSAFセンサ70の出力に基づき、減光を解除すべきレベルまで被写体が暗いかどうかのチェックを行う。該当すればステップS12に進んで、可動半透ミラー66を光路から退避させる減光解除の指示を行ってステップS14に移行する。一方、被写体が充分明るい場合は直接ステップS14に移行する。
【0039】
ステップS14では、操作部15によって「複合AFモード」が選択されたかどうかのチェックを行う。そして選択があればステップS16に進み、複合AFを行うために赤外フィルタ58に替えて可視光カットフィルタ60をCIGS撮像センサ54への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部62に対して行う。さらに、ステップS18でCIGS撮像センサ54の出力に基づく表示部32でのライブビュー表示を停止するとともに、長波長側の感度域のCIGS撮像センサ54の画像信号と可視光の感度域にあるCIGSAFセンサの出力とを組み合わせる「複合AF機能」の開始が指示してステップS20に移行する。一方、ステップS14で「AFモード」の選択が検出されない場合は、直接ステップS20に移行する。
【0040】
ステップS20では、撮像部20による撮像が光量不足となるほど暗いかどうかのチェックを行う。通常、このレベルまで被写体が暗くなるとフラッシュなどの補助光を用いた撮影が必要となる。ステップS20で光量不足が検知されるとステップS22に進み、操作部15の操作によって「長波長モード」が選択されているかどうかチェックする。そして該当すればステップS24に進み、赤外フィルタ58に替えてライブビュー用の可視光カットフィルタ60をCIGS撮像センサ54への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部62に対して行う。さらに、ステップS26で、赤外カットフィルタ68に替えてAF用の可視光カットフィルタ76をCIGSAFセンサ70への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部78に対して行ってステップS28に移行する。
【0041】
一方、ステップS20で撮像部の光量不足が検出されない場合は、直接ステップS28に移行する。このように、撮像部の光量不足となるような暗さでない場合、通常はステップS22に進むことができず、「長波長モード」は禁止される。これは設定の混乱を防止するためである。なお、被写体が明るい場合でも特に「長波長モード」を選択したい場合は、操作部15で特別の操作を行うことによってステップS22に進むことも可能である。また、ステップS22で「長波長モード」設定が検出されない場合も、直接ステップS28に移行する。
【0042】
ステップS28では、操作部15のシャッタレリーズボタンによるレリーズ操作が行われたかどうかチェックする。レリーズ操作が検知できなければステップS30に進み、操作部15によってカメラのメインスイッチをオフする操作が行われたかどうかチェックする。そしてカメラオフ操作が検出されなければフローはステップS2に戻り、以下、ステップS2で再生モード操作が検出されるかステップS28でレリーズ操作が検出されない限り、ステップS2からステップS30を繰り返す。
【0043】
上記の繰返しは充分高速で行われ、上記したミラー/フィルタ駆動部62、78に設けられる遅延時間内に何度も繰り返される。従って、ステップS10、ステップS14、ステップS20およびステップS22に基づく検知結果が変化するとミラー/フィルタ駆動部62、78の遅延時間内にこの変化基づく同一の指示が繰返し行われ、ミラー/フィルタ駆動部62、78による適切な指示の実行が行われる。これによって、被写体の明るさの変化に基づく減光の設定/解除と波長域カットフィルタの切り替え、およびモード切り替えに基づく波長域カットフィルタの切り替えがスムーズに実行される。
【0044】
なお、ステップS2で操作部15による再生モード設定操作が検出された時はステップS32の再生モード処理に移行する。そして、再生モード処理内部の機能によって撮影モードが選択されたときには、フローはステップS4に戻る。また、再生モード処理内部の機能によってカメラオフ操作が検出されたときにはフローを終了する。
【0045】
一方、ステップS28で操作部15のシャッタレリーズボタンによるレリーズ定操作が検出された時はステップS34の撮像記録処理に移行する。そして、撮像記録および表示部での撮像結果表示が終わると、フローは自動的にステップS2に戻る。なお、ステップS30でカメラオフ操作が検出されたときは、図4のフローが終了となる。
【0046】
図5は、本発明の実施の形態に係るオートフォーカスデジタル一眼レフカメラの第2実施例を示すブロック図である。その構成の大部分は図1の第1実施例と同様なので、共通する部分には同一の番号を付し、特に必要がない限り説明を省略する。図5の第2実施例が図1の第1実施例と異なるのは、カメラボディ100であり、特にそのライブビューセンサ102およびこれに関連する構成および機能が第1実施例と異なる。
【0047】
第1実施例のライブビューセンサ40では、半透過性の反射面12aを介して光を受けるよう構成され、反射面12aを透過する可視光領域の光が抑えられている。これは、アイピース14で光学的に被写体像を支障なく観察することができるようにするとともに、同時にライブビューも常に可能とするためである。ライブビューセンサ40にはCIGS撮像センサが用いられているので、反射面12aを透過する可視光領域の光が抑えられていても、通常の明るさの被写体をライブビューするには充分である。しかしながら、アイピース14で充分観察できないような暗い被写体の場合は、ライブビューセンサ40でも光量が不足する。これに対し、図5の第2実施例は、アイピース14で充分観察できないような暗い被写体の場合でも、ライブビューセンサ102に採用したcIGS撮像センサによってライブビューが可能となるよう構成している。なお、図5のライブビューセンサ102の詳細構造は、図2におけるライブビューセンサ40と基本的には同様であって、再結像光学系およびCIGS撮像センサを有する。但し、ペンタプリズム104に対するライブビューセンサ102の配置場所が異なるので、その再結像光学系は図2の再結像レンズ56とは異なったものとなる。
【0048】
上記の考え方に基づき、第2実施例では、通常のペンタプリズム104が採用されており、ライブビューモードに設定しない場合は、ペンタプリズム104からの光はすべてアイピースに向かう。このとき可動全反射ミラー106は図5のようにアイピース14への光路から退避している。従ってこの状態ではライブビューができない。
【0049】
操作部15の操作によってライブピューモードを選択すると、可動全反射ミラーが106aの位置に下がり、ペンタプリズム104からの光を全てライブビューセンサ102の方向に反射する。従って、アイピース14による光学的なファインダー像の観察はできなくなる。可動減光フィルタ108は、被写体が通常の明るさのときに図5のようにライブビューセンサへの光路中に挿入され、ライブピューセンサ102への入射光量をCIGS撮像センサの感度ダイナミックレンジに合わせこむ。一方、被写体がアイピースでは観察し難い程度の暗さになったときには可動減光フィルタ108がライブビューセンサ102への光路から退避し、減光なしに被写体像をライブビューセンサに導く。なお、このとき可動減光フィルタ108の有無による光路長の補償が必要であり、例えば、可動減光フィルタを退避させたときには、これと光路長が等しい全透過性の並行平板を代わりに光路中に挿入する。このようにして、光学的には観察し難い暗い被写体の場合でも、図5の第2実施例の場合にはCIGS撮像センサによりライブビューが可能となる。このライブビューセンサ102からの可視光域の画像は表示部32でのライブビューだけでなく、画像記憶部26に記録することも可能である。したりすることが可能となる。
【0050】
赤外カットフィルタ110は、ライブビューモードにおいて可動全反射ミラー106aから反射される可視光領域以外の光をカットし、CIGS撮像センサの波長感度特性を撮像部20の波長感度特性に近似させるものであり、視感度に一致した被写体像を撮像してカメラ制御部116に送り、自然なライブビューを可能にする。
【0051】
可視光カットフィルタ112は、赤外カットフィルタ110と差し替えてライブビューセンサ102への光路中に挿入されるもので、「長波長モード」にて使用されるものである。可動全反射ミラー106aからは可視光領域以外もほぼ全面的に反射されてくるので、長波長モードの設定で赤外カットフィルタ110に替えて可視光カットフィルタ112がライブビューセンサ102への光路に挿入された場合は、可視光よりも長波長側域の光がライブビューセンサ102のCIGS撮像センサに入射するようになる。従って、第1実施例と同様、長波長域の画像についてその画像出力を表示部32でリアルタイムに観察したり、画像記憶部26に記録したりすることが可能となる。なお、可視光カットフィルタ112を用いる長波長モードにおいては、可動減光フィルタ108をライブビューセンサへの光路から退避させる。以上のような可動全反射ミラーが106、可動減光フィルタ108、赤外カットフィルタ110および可視光カットフィルタ112の駆動は、カメラ制御部116によって制御されるミラー/フィルタ駆動部114によって行われる。
【0052】
図6は、図5の第2実施例におけるカメラ制御部116の動作のフローチャートである。第1実施例と同様にして操作部15によってカメラのメインスイッチがオンになるとフローがスタートし、ステップS42においてオートフォーカスデジタル一眼レフカメラが操作部15によって再生モードに設定されているかどうかチェックする。再生モード設定が検出されなければ撮影モードなのでステップS44に進み、光学ファインダ光路に設定する指示を行う。具体的には、可動全反射ミラー106がアイピース14への光路中から退避するようミラー/フィルタ駆動部114に指示する。ステップS44ではさらに、可動減光フィルタ108をライブビューセンサ102への光路中に挿入して入射光量を減光する指示をミラー/フィルタ駆動部114に行とともに、図2における可動半透ミラー66をCIGSAFセンサ70への光路内に設定して入射光量を減光する指示をミラー/フィルタ駆動部78に行う。
【0053】
次いでステップS46に進み、操作部15によって「ライブピューモード」が設定されているかどうかチェックする。該当すればステップS48に進み、ライブビューへの光路切り替えの指示が行われる。具体的には、可動全反射ミラー106をアイピース14への光路中に進出させるようミラー/フィルタ駆動部114に指示してステップS50に移行する。この指示が実行されると、ファインダ像をアイピース14から光学的に観察することはできなくなり、代わりにライブビューセンサ102の出力に基づく表示部32でのライブビューが可能となる。ステップS48ではさらに、ライブビュー用の赤外カットフィルタ110をライブビューセンサ102への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部114に行う。なお、ミラー/フィルタ駆動部114についても、第1実施例で説明したのと同様の、指示に対する駆動実行への遅延時間が設けられている。一方、ステップS46で「ライブビューモード」への設定が検知されない場合は、直接ステップS50に移行する。
【0054】
ステップS50では、AF用の赤外カットフィルタ68をCIGSAFセンサ70への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部78に行う。そして、ステップS52に進み、CIGSAFセンサ70の出力に基づき、減光を解除すべきレベルまで被写体が暗いかどうかのチェックを行う。該当すればステップS54に進み、操作部15によって「ライブピューモード」が設定されているかどうかチェックする。該当すればステップS56に進み、可動減光フィルタ108をライブビューセンサ102への光路から退避させる減光解除の指示を行ってステップS58に移行する。一方、ステップS54で「ライブビューモード」の設定が検知されなければ直接ステップS58に移行する。そして、ステップS58では、可動半透ミラー66をCIGSAFセンサ70への光路から退避させてAF用の減光を解除する指示を行う。このように、ステップS52で被写体が暗いことが検知された場合は、「ライブビューモード」の設定如何にかかわらずAF用の減光を解除する。
【0055】
次いで、ステップS60では、撮像部20による撮像が光量不足となるほど暗いかどうかのチェックを行う。そして該当すればステップS62に進み、操作部15の操作によって長波長モードが選択されているかどうかチェックする。そして該当すればステップS64に進み、赤外フィルタ110に替えてライブビュー用の可視光カットフィルタ112をライブビューセンサ102への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部114に対して行う。さらに、ステップS66で、赤外カットフィルタ68に替えてAF用の可視光カットフィルタ76をCIGSAFセンサ70への光路に設定する指示をミラー/フィルタ駆動部78に対して行う。
【0056】
以上のステップを経て、フローはステップS68に進む。一方、ステップS52で減光を解除すべきレベルまで被写体が暗いことが検知されなかった場合、ステップS60で撮像部20による撮像が光量不足となるほど被写体が暗いことが検知されなかった場合、およびステップS62で長波長モードへの選択が検知されなかった場合は、いずれも直接ステップS68に移行する。
【0057】
ステップS68では、操作部15のシャッタレリーズボタンによるレリーズ操作が行われたかどうかチェックする。レリーズ操作が検知できなければステップS70に進み、操作部15によってカメラのメインスイッチをオフする操作が行われたかどうかチェックする。そしてカメラオフ操作が検出されなければフローはステップS42に戻り、以下、ステップS42で再生モード操作が検出されるかステップS68でレリーズ操作が検出されない限り、ステップS42からステップS70を繰り返す。
【0058】
第1実施例と同様にして、上記の繰返しは充分高速で行われ、上記したミラー/フィルタ駆動部78、114に設けられる遅延時間内に何度も繰り返される。従って、ステップS46、ステップS52、ステップS54、ステップS60およびステップS62に基づく検知結果が変化するとミラー/フィルタ駆動部78、114の遅延時間内にこの変化基づく同一の指示が繰返し行われ、ミラー/フィルタ駆動部78、114による適切な指示の実行が行われる。これによって、被写体の明るさの変化に基づく減光の設定/解除と波長域カットフィルタの切り替え、およびモード切り替えに基づく波長域カットフィルタの切り替えがスムーズに実行される。
【0059】
なお、第1実施例と同様にして、ステップS42で操作部15による再生モード設定操作が検出された時はステップS72の再生モード処理に移行する。そして、再生モード処理内部の機能によって撮影モードが選択されたときには、フローはステップS44に戻る。また、再生モード処理内部の機能によってカメラオフ操作が検出されたときにはフローを終了する。
【0060】
また、ステップS68で操作部15のシャッタレリーズボタンによるレリーズ定操作が検出された時はステップS74の撮像記録処理に移行する。そして、撮像記録および表示部での撮像結果表示が終わると、フローは自動的にステップS42に戻る。なお、ステップS70でカメラオフ操作が検出されたとき、図6のフローは終了となる。
【0061】
上記における本発明の種々の特徴は、実施例に限らず、広く活用できるものである。例えば、第1実施例においては、可視光カットフィルタ60により長波長域に感度を有するCIGS撮像センサ54と赤外カットフィルタ68により可視光に感度域を有するCIGSAFセンサの出力とを組合せて「複合AF機能」は実施するものとして説明した。しかしながら、「複合AF機能」の実施はこのようなものに限るものではない。例えば、図2における波長選択性のない可動半透ミラー66をダイクロイックミラーで構成し、可視光透過させてCIGSAFセンサ70上に導くとともに、長波長域を反射させてAF対応部分測光センサ72に導くようにする。そして、AF対応部分測光センサ72にも、CIGSセンサを用いるようにする。なお、この場合、赤外カットフィルタ68は不要となる。
【0062】
以上のように構成すれば、長波長域に感度を有するAF対応部分測光センサ72によりAF対応部分のうちのどこに人物が存在するかの推定が可能となり、その部分に対してCIGSAFセンサ70による焦点検出を行うことが可能となる。
【0063】
さらに「複合AF機能」の実施は以上のように二つのCIGSセンサを用いるものに限るものではない。例えば図2において、可視光カットフィルタ76がCIGSAFセンサの光路中に挿入された状態においてCIGSAFセンサ自体でAF対応部分のうちのどこに人物が存在するかの推定を行うとともに、赤外カットフィルタ18が光路中に挿入された状態においてその部分に対してCIGSAFセンサ70による焦点検出を行うことも可能である。このように広い感度領域を有する一つのCIGSを時分割で異なる感度領域にて使い分け、それらの出力を組合せることによって「複合AF機能」を実現することも可能である。
【0064】
また、以上の実施例では、減光のために可動半透ミラーまたはフィルタを光路中に出し入れするものとして説明したが、入射光量の調節はこのような二段階のものに限るものではない。例えば、透過率が段階的に異なる複数の減光フィルタを用意し、これらの一つを光路に挿入することにより、減光の度合いをきめ細かく段階的に変化させるよう構成してもよい、また、透過率が連続的に変化する減光手段を用い、減光の度合いを連続的に変化させるよう構成してもよい。
【0065】
上記の実施例においては、可視光域および赤外域において60%以上の量子効率を有する高感度および広帯域の分光感度特性をもつセンサとしてCIGSセンサを用いている。CIGSセンサは銅、インジウム、ガリウムおよびセレンよりなる多結晶のCIGS系薄膜を用いた光電センサであるが、その組成制御によりバンドギャップを変化させることで吸収波長域を制御することができる。このうちガリウムの含有率をゼロとしたものは「CIS系薄膜」とも称されるが、本明細書で「CIGSセンサ」という場合は、このようなガリウムを含まない「CIS系薄膜」を用いた光電センサをも意味するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の測光兼用AFセンサおよびライブビューセンサの構成を関連する部分とともに詳細に示したブロック図である
【図3】図2のCIGS撮像センサおよびCIGSAFセンサに用いられるCIGSセンサの分光感度をシリコンのCMOSセンサと比較したグラフである。
【図4】第1実施例におけるカメラ制御部の動作のフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施例を示すブロック図である。
【図6】第2実施例におけるカメラ制御部の動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
20 撮像部
70 センサ
24 制御部
68 赤外カットフィルタ
76 可視光カットフィルタ
66 減光手段
72 活用手段
72 測光手段
70、72 推定手段
68、70、可視光センサ
54、60、70、76 赤外センサ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、前記撮像部への焦点調節状態の検出するための可視光域において60%以上の量子効率を有するセンサと、前記センサの出力に基づいて前記撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部とを有することを特徴とする自動焦点調節カメラ。
【請求項2】
前記センサは赤外域においても60%以上の量子効率を有するものであるとともに、赤外域の光の入射をカットするための赤外カットフィルタを有することを特徴とする請求項1記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項3】
前記赤外カットフィルタは前記センサへの光路から除去可能であるとともに、前記センサの赤外域における60%以上の量子効率は前記赤外カットフィルタ除去時において利用されることを特徴とする請求項2記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項4】
前記赤外カットフィルタと差し替えて使用する可視光カットフィルタを有することを特徴とする請求項3記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項5】
前記センサへの入射光量を制限する減光手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項6】
前記センサはゲインコントロール手段を有するとともに、前記減光手段および前記ゲインコントロール手段により前記センサの感度を調整することを特徴とする請求項5記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項7】
撮像部と、前記撮像部への焦点調節状態の検出するための可視光域から赤外にわたる広い感度領域を有するセンサと、前記センサの出力に基づいて前記撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部と、前記センサの感度域を切り替えるために互いに差し替え可能に前記センサへの光路に挿入される赤外カットフィルタおよび可視光カットフィルタとを有することを特徴とする自動焦点調節カメラ。
【請求項8】
前記撮像部が可視光域から赤外にわたる広い感度領域を有するとともに、前記撮像部が可視光領域において撮像を行う時は前記センサへの光路に前記赤外カットフィルタを挿入するとともに、前記撮像部が赤外領域において撮像を行う時は前記センサへの光路に前記可視光カットフィルタを挿入することを特徴とする自動焦点調節カメラ。
【請求項9】
前記センサへの入射光量を制限する減光手段を有することを特徴とする請求項7または8記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項10】
撮像部と、前記撮像部への焦点調節状態の検出するためのセンサと、前記センサの出力に基づいて前記撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部と、前記センサへの入射光量を制限する減光手段を有することを特徴とする自動焦点調節カメラ。
【請求項11】
前記減光手段によってセンサに入射しなくなった光量を活用する活用手段を有することを特徴とする請求項10記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項12】
前記活用手段は、測光手段であることを特長とする請求項11記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項13】
前記活用手段は、被写体領域中における焦点検出領の推定手段であることを特長とする請求項11記載の自動焦点調節カメラ。
【請求項14】
可視光領域に感度をもつ撮像部と、前記撮像部への焦点調節状態の検出するための可視光領域に感度を持つ可視光センサと、赤外領域に感度を有する赤外センサと、前記赤外センサの出力に基づいて被写体領域中において前記可視光センサにより焦点検出すべき部分を推定する処理部と、前記可視光センサの出力に基づいて前記撮像部への焦点調節を行う制御信号を出力する制御部とを有することを特徴とする自動焦点調節カメラ。
【請求項15】
前記可視光センサと前記赤外センサは、可視光から赤外にわたる感度領域をもつ一つのセンサが切り替えられたものであることを特徴とする請求項14記載の自動焦点調節カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−48857(P2010−48857A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210456(P2008−210456)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】