説明

自動製パン器

【課題】ケーキ調理メニュー選定時に最適な粉落とし期間を報知するとともに、粉落としをユーザーの選択に任せて実行できるようにした自動製パン器を提供すること。
【解決手段】被調理材が投入される調理容器と、被調理材を攪拌する攪拌手段と被調理材を加熱する加熱手段とこれらを制御する制御手段を有する製パン器本体と、各種調理コースを表示する表示装置と、各種調理コースを選定するコース選定手段とを備えた自動製パン器において、ケーキ調理コースは、調理容器内の被調理材を混練する捏ね工程および捏ね工程の終了後に被調理材を焼き上げる焼成工程を有し、コース選定手段によりケーキ調理コースが選定されたときに、制御手段は捏ね工程中において所定の粉落とし期間を設定し、粉落とし期間中に粉落とし工程への移行を可能とするとともにこの期間を表示装置に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭において手軽にパン焼きができる自動製パン器に関し、特に食パン、グルメパン、フランスパン等の製パンメニューに加えてケーキも焼くことができるケーキメニューを備えた自動製パン器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭において、食パン、グルメパン、フランスパン等の各種のパンを手軽に焼くことができるとともに、ケーキも焼くことができる自動製パン器が市販されている。
【0003】
ところがこのような自動製パン器は、ケーキ調理工程において容器の側壁にケーキ材料、特に粉が付着し、焼き上がったケーキ生地にそのまま付着してしまい、ケーキの見栄えを悪くするという課題がある。
【0004】
そこで、この種の自動製パン器は、ケーキ調理工程中に容器側面に付着した粉等を落とす工程を追加した自動製パン器が開発されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0005】
下記特許文献1に記載された自動製パン器は、ケーキ調理工程の混練工程を一定時間中断して、その間に粉落とし工程が行えるようにしたものである。この粉落としは、混練工程を一時中断して行うことから、製パン器をスタートしてから、どの時点で混練工程を中断して粉を落とせばよいのか、そのタイミングが難しくなっている。
【0006】
そこで、このような操作性を改善した自動製パン器が下記特許文献2に記載されている。この自動製パン器は、スタート後(直後)に粉落とし工程までの所要時間を表示し、粉落とし時には粉落とし工程であることを表示するようにしたものである。なお、この自動製パン器は、粉落とし工程の開始後、一定時間が経過すると、ケーキ調製工程へ自動的に復帰移行するようになっている。
【0007】
また、粉落とし工程を追加すると、粉落としに費やす時間によって調理時間が違ってくる。そこで、下記特許文献3に記載された自動製パン器は、粉落とし工程に要した時間に応じて、次工程の混練時間を調整し、調理シーケンスの時間が略一定になるようにしている。また、この自動製パン器は、粉落とし中に、入力装置を操作しなくとも、所定時間経過後に、粉落とし工程が終了することを知らせ、自動的に次の工程に移行するようになっている。
【0008】
具体的には、製パン器のスタート時に、表示装置に粉落としまでの時間を表示し、この時間が経過するとアラームで報知して、表示装置に粉落とし文字を表示する。この状態でユーザーにより粉落としが行われるが、この粉落としは、ユーザーが容器内に手を入れて側壁面に付着した粉を、ゴムベラを使用して掻き落とし、粉落とし終了後はスタートスイッチをオンして調理シーケンスが再開される。しかしながら、ユーザーが粉落としを行わない場合がある。この場合は、所定時間、たとえば15分まで待機させ、この時間が経過してもスタートスイッチがオンされないときは、自動的に調理シーケンスが再開される。この場合、調理シーケンスが再開される前に、報知装置で調理が再開されることを報知させると同時に表示装置に練りの文字を点滅表示させるようになっている。
【特許文献1】特開2004−305477号(段落〔0033〕、〔0035〕、図2)
【特許文献2】特開2005−95486号(段落〔0024〕〜〔0027〕、図2)
【特許文献3】特開2005−118250号(段落〔0021〕〜〔0023〕、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜3に記載された自動製パン器は、いずれも、粉落としのために、混練工程を一定時間中断させるものである。しかしながら、自動的にケーキ調理工程を一時中断させてしまうと、ユーザーによっては粉落としが不要で一刻も速く焼き上げたいというユーザーもいることから、このようなユーザーにとっては、調理工程の中断は時間の浪費となってしまい結局調理時間が長く掛ることになる。
【0010】
また、上記特許文献2の自動製パン器のように、粉落とし工程の開始後、一定時間が経過すると、ケーキ調製工程へ自動的に復帰移行させると、ユーザーが予期していない状況で練り羽根が回転し、このとき容器内に手等を入れていると怪我をしてしまう危険がある。さらに、上記特許文献3の自動製パン器は、ユーザーが粉落としを行わない場合、所定時間、たとえば15分まで待機させ、この時間が経過してもスタートスイッチがオンされないときは、自動的に調理シーケンスを再開するようにしているが、このような場合は、粉落としが不要なユーザーにとっては、所要時間の待機は時間の浪費となってしまうことになる。また、待機時間経過後、自動的に調理シーケンスが再開されると、上記の危険性が発生する。
【0011】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、ケーキ調理メニュー選定時に最適な粉落とし期間を報知するとともに、粉落としをユーザーの選択に任せて実行できるようにした自動製パン器を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、粉落とし後に再スタートされないときに、再スタートの要請を報知して再スタートの忘れをなくするようにした自動製パン器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は以下の手段によって達成できる。すなわち、請求項1に記載された自動製パン器の発明は、被調理材が投入される調理容器と、前記調理容器を収容して被調理材を攪拌する攪拌手段および前記調理容器内の被調理材を加熱する加熱手段並びにこれらの攪拌手段および加熱手段を制御する制御手段を有する製パン器本体と、前記製パン器本体又は蓋体に装着されて各種調理コースを表示する表示装置と、前記表示装置に表示された製パン調理コース又はケーキ調理コースを選定するコース選定手段とを備えた自動製パン器において、
前記ケーキ調理コースは、前記調理容器内の被調理材を混練する捏ね工程および前記捏ね工程の終了後に被調理材を焼き上げる焼成工程を有し、前記コース選定手段によりケーキ調理コースが選定されたときに、前記制御手段は前記捏ね工程中において所定の粉落とし期間を設定し、該粉落とし期間中に粉落とし工程への移行を可能とするとともにこの期間を前記表示装置に表示することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動製パン器において、警報装置をさらに備え、前記制御手段は、前記ケーキ調理コースがスタートされてから所定時間経過後に前記表示装置に粉落とし期間を表示すると共に、前記警報装置に報知音を発せさせることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の自動製パン器において、前記制御手段は、前記粉落とし期間中に前記粉落とし工程への移行がなされなかったときには、そのまま前記ケーキ調理コースを続行させる制御を行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の自動製パン器において、前記制御手段は、前記粉落とし期間中に前記粉落とし工程へ移行した後、所定時間を経過しても前記捏ね工程への復帰操作が行われなかったときには、前記警報装置に復帰要請警報を発せさせることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の自動製パン器において、前記制御手段は、前記粉落とし工程中は前記攪拌手段の作動を停止させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の自動製パン器において、前記攪拌手段の作動を停止させる停止手段をさらに備え、前記停止手段は、前記蓋体が開いた時に前記攪拌手段の作動を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、各種調理コースのうち、ケーキ調理コース(工程)において最適な時期を見計らって粉落とし期間を設定しておき、この期間中にはその旨を表示するように構成している。すなわち、ケーキ調理コースをスタートさせた後、被調理材の量および攪拌スピード等から、調理容器壁に多量の粉が付着した時点を基点として、所定の粉落とし期間を表示することができるので、被調理材の混練に特に影響を与えることなく、効率よく粉落としの実行が可能になる。したがって、粉落としが実行された場合は、見栄えのよいケーキ生地を作ることができる。加えて、粉落としの実行をユーザーの選択によって行うので、無駄な時間を浪費することなく調理を行うことができるようになる。
【0020】
請求項2の発明によれば、制御手段は、ケーキ調理コースがスタートされてから所定時間経った後(この時間は、最適な粉落とし期間の基点となっており、実験によって求められる)に前記表示装置に前記粉落とし期間を表示すると共に、前記警報装置に報知音を発せさせるので、粉落としのタイミングをユーザーへ的確に知らせることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、制御手段は、粉落とし期間に粉落とし工程へ移行しなかった場合には、そのまま調理コース、つまりは捏ね工程を継続させるような制御を行うので、粉落としを必要としないユーザーに対しては調理時間のロスをなくすることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、制御手段は、粉落とし期間に粉落としに移行し、かつ所定時間を経過しても調理コースへの復帰がなされない場合には、警報装置で復帰要請警報を発せさせるので、復帰し忘れを低減できる。また、この製パン器は、自動的に捏ね工程に復帰することがないので、例えば粉落とし作業中に練り羽根が突然回転して、手等を損傷させるような危険性がない。
【0023】
請求項5の発明によれば、粉落とし実行時に攪拌手段の作動が停止されるので、安全に粉落としを実行できる。
【0024】
請求項6の発明によれば、停止手段により、蓋体が開いた時に攪拌手段の作動が停止されるので、安心して調理容器内に手等を入れて粉落とし作業等をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための自動製パン器を例示するものであって、本発明をこの自動製パン器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0026】
図1は本発明の一実施例に係る自動製パン器に調理容器を装着した状態での縦断正面図、図2は図1の自動製パン器の操作表示パネルを示す平面図、図3は図1の自動製パン器の制御ブロック図である。
【0027】
この自動製パン器1は、図1に示すように、所定量の製パン或いはケーキ材料と水等の被調理材が投入される調理容器30と、この調理容器30を収容し被調理材を攪拌する攪拌手段および加熱調理する加熱手段並びにこれらの攪拌手段および加熱手段を制御し被調理材の混合から焼成までを自動的に行う制御手段20を有する製パン器本体2とで構成されている。
【0028】
製パン器本体2は、箱型の容器からなるケース3、開閉蓋4、操作表示パネル5、焼成槽6、焼成ヒータ7、ボイラ8、モータ19、動力伝達ユニット13、および制御手段20等で構成されている。また、調理容器30は、焼成槽6の内部でボイラ8の上方に取り外し可能に装着されるようになっている。
【0029】
ケース3は、ほぼ直方体形状の箱型容器からなり、その上部に容器を挿入する開口3aが設けられ、この開口3aに開閉蓋4が開閉可能に取り付けられている。また、この開口3aに近接した箇所に、操作表示パネル5が装着されている。
【0030】
また、操作表示パネル5には、図2に示すように、米粉や小麦粉、天然酵母等の米粉の種類を選択するとともに調理メニューの選択を行うコースボタン5a、コースボタン5aによって選択されるメニューを表示するメニュー表示部5b、時刻または予約タイマー時刻を設定するための時刻・予約設定ボタン5c、時刻・予約設定ボタン5cによって設定された時刻・予約時刻を表示する時刻・予約時刻表示部5d、及び粉落とし表示部5eが設けられる。
【0031】
焼成槽6は、パン生地を焼き上げる雰囲気を作るもので、ケース3の上方開口部3aに対応する領域に配設されている。この焼成槽6の外周壁には、図1に示すように、焼成槽6内部の雰囲気温度を検出する雰囲気温度センサ6aが設けられている。焼成ヒータ7は、焼成槽6の内部の雰囲気温度を調節するもので、焼成槽6の底部寄りの内周壁に設けられている。また、この焼成ヒータ7は、予備加熱ヒータにも兼用されるが、別途予熱用ヒータを設けてもよい。
【0032】
ボイラ8は、図1に示すように、焼成槽6の底部に設置され且つ平面視でほぼ小判形に形成されて上方が開口した水を収容する水容器8aと、この水容器8aの底部外周壁に取り付けられて水容器8a内の水を蒸発させるボイラヒータ8bとからなる。水容器8aの中心領域には、円筒壁9が設けられており、この円筒壁9の上下方向中間の水平壁にスピンドル軸10が回転可能に上下に貫通されている。このスピンドル軸10の上方突出端には駆動ギヤ12が固定されている。また、この製パン器本体2は、各種製パン、ケーキ生地、餅の作成、および被調理物の蒸し器としても使用可能とした多機能器であって、ボイラ8は主にこの餅の作成および被調理物の蒸しに使用される。
【0033】
モータ19は、ボイラ8に設けられるスピンドル軸10を、動力伝達ユニット13を介して回転駆動するもので、操作表示パネル5の下方の領域に配設されている。動力伝達ユニット13は、ケース3の内底部のほぼ全域にわたって設けられ、モータ19の回転動力をスピンドル軸10に伝達するもので、モータ19の出力軸に固定されるプーリ13cと、スピンドル軸10の下端に取り付けられるプーリ13cと、両プーリ13a、13cに巻き掛けられる無端ベルト13bとで構成されている。
【0034】
調理容器30は、1斤の食パンを焼成できる大きさの僅かに縦長な長方体形状をなしている。この調理容器30の底部中心には、回転軸31が上下貫通する状態で設けられている。この回転軸31の上方突出端には、パン材料を混合・捏ねるための攪拌ブレード32が着脱可能に設けられ、また、回転軸31の下方突出端には、スピンドル軸10の駆動ギヤ12に対して噛合する従動ギヤ14が取り付けられている。
【0035】
また、調理容器30の底部外壁面には、ボイラ8の水容器8aに対して固定するための台座15が設けられている。この台座15は、上述したボイラ8の水容器8aを覆い、水容器8aを密封する蓋の役割をなす形状に形成されている。
【0036】
制御手段20は、操作表示パネル5および雰囲気温度センサ6a等から種々の情報が入力されて製パン制御をするためのもので、ケース3内の操作表示パネル5とモータ19との間に設けられている。この制御手段20は、図3に示すように、CPU、ROM、RAMおよび入出力用の通信ポート等を1チップ上に集積したマイコンであるMCU(Micro Controller Unit)21からなり、これに雰囲気温度センサ6a、操作表示パネル5に設けられたコースボタン5a、スタートボタン、とりけしボタン、時刻・予約設定ボタン5c等のスイッチと、操作表示パネル5のメニュー表示部5b、時刻・予約表示部5dおよび粉落とし表示部5e等の電光表示を行うためのLCDと、スタート表示、とりけし表示、予約表示を行うためのLEDと、モータ19と、焼成ヒータ7、ボイラヒータ8bを含むヒータ回路と、アラームとが接続される。MCU21は、スタートボタン、とりけしボタン、時刻・予約設定ボタン5c等のスイッチから入力された設定・制御指示と、雰囲気温度センサ6a等から入力される情報に基づき焼成ヒータ7、ボイラヒータ8bの動作を制御するとともに、操作表示パネル5の種々のLCD、LED表示を制御する。
【0037】
次に、MCU21の制御による自動製パン器1の動作について説明する。この自動製パン器1は、図2に示すように、操作表示パネル5から、パンやケーキを焼き上げる粉の種類と、焼き上げるパンその他の生地の種類を選択できるようになっている。図4は、これらのメニューを選択し、それぞれのパンまたはケーキ等を焼き上げるフローチャートを示している。
【0038】
容器内に生地の材料および水等を投入した後に、操作表示パネル5上で、コースボタン5aを押すことによってメニューを選択すると、ステップSで表示パネルに各種メニューが表示される。例えば、コースボタン5aの「小麦」ボタンを1回押すと、メニュー表示部5bの「食パン」の部分のLCDが点灯し、食パンを焼き上げるコースが選択できる状態になる。コースボタン5aの「小麦」ボタンをもう1回押すと、今度はメニュー表示部5bの「食パン」の部分に加えて「おいそぎ」の部分が点灯する。さらに「小麦」ボタンを押していくと、順に「食パン」と「焼色濃」、「グルメパン」、「フランスパン」、「パン生地」、「ピザ生地」、「ヌードル」、「ケーキ」の部分が点灯し、それぞれの調理コースを決定できる状態になる。
【0039】
同様に、コースボタン5aの「米粉」ボタンを押すと、順番に、「食パン」と「小麦0」、「パン生地」と「小麦0」、「食パン」、「パン生地」、「ピザ生地」、「ヌードル」、「ケーキ」の各部分が点灯し、それぞれの調理コースを決定できる状態になる。
【0040】
コースボタン5aの「天然酵母」ボタンを押した場合は、順番に、「食パン」、「パン生地」、「生種おこし」の各部分が点灯する。
【0041】
また、コースボタン5aの「調理」ボタンを押した場合には、「ジャム」、「スープ」の部分が順番に点灯し、それぞれの調理コースを選択決定できる状態となる。
【0042】
この表示に基づいて、ステップSで以下のメニューを選択決定する。
【0043】
ユーザーはステップSにおいてコースボタン5aを複数回押すことによって所望の調理コースを選択し、その状態で操作表示パネル5のスタートボタンを押すことによってパンまたはケーキ等の生地と調理コースを決定することができ、次いで図4に示されるような各調理が開始される。図4には、特に材料として小麦粉が選択された場合におけるパンの製造工程と、米粉が選択された場合におけるパンの製造工程と、米粉または小麦粉におけるケーキの製造工程が概略的に示されている。
【0044】
なお、以下には「米粉」ボタンまたは「小麦」ボタンを数回押して「ケーキ」コースが選択された場合の自動製パン器の動作について説明する。
【0045】
「ケーキ」調理コースが選択されると、小麦粉または米粉の初めの捏ね工程が開始される。この捏ね工程では粉落としへの移行ができないようになっており、この捏ね工程が終わると、続いて粉落とし可能な捏ね工程に移行する。この粉落とし可能な捏ね工程中には、ユーザーは開閉蓋を開けて調理容器30の内壁面に付着した小麦粉や米粉などの材料を落とすことが可能である。さらに、この粉落とし可能な捏ね工程が終了すると再び粉落としへの移行ができない捏ね工程となり、この捏ね工程に続いて焼成工程が開始され、ケーキが焼き上げられる。
【0046】
図5は捏ね工程中における粉落とし工程を説明するフローチャートである。
【0047】
捏ね工程がスタートすると、ステップS51において、捏ね工程が所定の時間(例えば5分)経過したかどうかを判別する。所定時間が経過していれば、ステップS52に進み、操作表示パネル5の粉落とし表示部5eを点灯させるかアラーム等を鳴らすかしてユーザーに開閉蓋4を開けて粉落としが可能であることを知らせる。尚、この粉落とし表示部5eを点灯させている間も捏ね工程は継続して行われる。すなわち、粉落とし表示部5eに粉落としが可能であることを報知している点以外は捏ね工程を継続した状態となる。次に、ステップS53では、粉落とし可能な期間(1〜3分)が終了したかどうかを判別し、粉落とし可能な期間が終了した場合には、ステップS59に移行して粉落とし表示部5eの表示またはアラームによる報知を終了し、ステップS60において捏ね工程を継続して行う。次いでステップS61において捏ね工程完了時間が経過したか判別し、捏ね工程完了時間を経過していなければ捏ね工程を継続し、捏ね工程完了時間を経過していれば捏ね工程を終了する。
【0048】
ステップS53において、粉落とし工程に移行可能な期間が終了していないと判別された場合には、こね動作は継続したままステップS54においてユーザーがスタートボタンを押すのを待機し、スタートボタンが押された場合にはステップS55の粉落とし工程に移行する。尚、ステップS55ではモータ19を停止し、粉落とし工程であることを示す操作表示パネル5の粉落とし表示部5eを点灯させる。これにより練り羽根が停止するのでユーザーは開閉蓋4を開けて羽根の停止を確認し、調理容器30の内側にこびりついている粉をヘラなどで落とすことができる。ステップS54においてユーザーがスタートボタンを押さない場合にはステップS53に戻り、粉落とし移行可能時間が終了するまで捏ね工程を継続させながらユーザーがスタートキーを押すのを受付ける状態を保つ。
【0049】
ステップS56〜ステップS58では、ユーザーが粉落とし工程を開始させてから所定時間が経過しても再スタートの指示をしない場合に対処することのできる処理が行われる。先ず、ステップS56では、粉落とし工程が開始されてから所定時間、例えば2分間が経過したか否かを判別し、経過していなければステップS58に移行し、所定時間が経過していればステップS57において30秒間隔でアラームを鳴らし、再スタートをユーザー要請する。ステップ58ではユーザーがスタートボタンを押すのを待機し、スタートボタンが押されない場合にはステップS56に戻って上記の処理を繰り返す。スタートボタンが押された場合にはステップS59において粉落とし表示部5eのLCD表示またアラームによる報知を停止し、ステップS60において捏ね工程を継続して行う。次いでステップS61において捏ね工程完了時間が経過したか判別し、捏ね工程完了時間を経過していなければ捏ね工程を継続し、捏ね工程完了時間を経過していれば捏ね工程を終了する。
【0050】
なお、粉落としの際、練り羽根のオン/オフは、スタート釦のオン/オフでされているが、蓋体に開閉スイッチを設け、蓋体の開閉に連動させてオン/オフしてもよい。
【0051】
上述のように、「ケーキ」調理コースが選択された場合の粉落とし可能な捏ね工程を含む処理について説明したが、操作表示パネル5の「米粉」ボタンを押すことによって小麦粉を使用せずにパンを焼き上げるコースを選択した場合の粉落とし可能な捏ね工程の処理ついても同様の処理が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例に係る自動製パン器の、調理容器を装着した状態の縦断正面図である。
【図2】図1の自動製パン器の操作表示パネルを示す平面図である。
【図3】図1の自動製パン器の制御ブロック図である。
【図4】メニューを選択し、パンまたはケーキ等を焼き上げるフローチャートである。
【図5】捏ね工程中における粉落とし工程を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 自動製パン器
2 製パン器本体
3 ケース
3a 開口
3a 上方開口部
4 開閉蓋
5 操作表示パネル
5a コースボタン
5b メニュー表示部
5c 時刻・予約設定ボタン
5d 時刻・予約表示部
5e 粉落とし表示部
6 焼成槽
6a 雰囲気温度センサ
7 焼成ヒータ
8 ボイラ
8a 水容器
8b ボイラヒータ
9 円筒壁
10 スピンドル軸
12 駆動ギヤ
13 動力伝達ユニット
13a 両プーリ
13b 無端ベルト
13c プーリ
14 従動ギヤ
15 台座
19 モータ
20 制御手段
30 調理容器
31 回転軸
32 攪拌ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理材が投入される調理容器と、前記調理容器を収容して被調理材を攪拌する攪拌手段および前記調理容器内の被調理材を加熱する加熱手段並びにこれらの攪拌手段および加熱手段を制御する制御手段を有する製パン器本体と、前記製パン器本体又は蓋体に装着されて各種調理コースを表示する表示装置と、前記表示装置に表示された製パン調理コース又はケーキ調理コースを選定するコース選定手段とを備えた自動製パン器において、前記ケーキ調理コースは、前記調理容器内の被調理材を混練する捏ね工程および前記捏ね工程の終了後に被調理材を焼き上げる焼成工程を有し、前記コース選定手段によりケーキ調理コースが選定されたときに、前記制御手段は前記捏ね工程中において所定の粉落とし期間を設定し、該粉落とし期間中に粉落とし工程への移行を可能とするとともにこの期間を前記表示装置に表示することを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
警報装置をさらに備え、前記制御手段は、前記ケーキ調理コースがスタートされてから所定時間経過後に前記表示装置に粉落とし期間を表示すると共に、前記警報装置に報知音を発せさせることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記粉落とし期間中に前記粉落とし工程への移行がなされなかったときには、そのまま前記ケーキ調理コースを続行させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記粉落とし期間中に前記粉落とし工程へ移行した後、所定時間を経過しても前記捏ね工程への復帰操作が行われなかったときには、前記警報装置に復帰要請警報を発せさせることを特徴とする請求項2に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記粉落とし工程中は前記攪拌手段の作動を停止させることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記攪拌手段の作動を停止させる停止手段をさらに備え、前記停止手段は、前記蓋体が開いた時に前記攪拌手段の作動を停止させることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−119158(P2008−119158A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304784(P2006−304784)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】