説明

自動製パン機

【課題】製パンメニューに基づいて調理コースを制御する自動製パン機において、室温の影響を受けやすいタイマー調理設定時の調理性能を確保すること。
【解決手段】ヒータ3を有する焼成室2内にパン焼き型4を着脱自在に載置し、制御手段9によって制御される製パンメニューを入力手段10により選択し、選択された製パンメニューや調理終了時間等を表示手段11に表示する。制御手段9は、室温温度検知手段8の検知温度と入力手段10によって設定されたタイマー調理時間に応じて、表示手段11に調理性能への影響があることを知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製パンメニューに基づいて調理コースを制御する自動製パン機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動製パン機は調理開始前に、室温が25℃以上の場合には、パンの出来栄えを良くする為に、表示手段に冷水使用表示を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、特許文献1に記載された従来の自動製パン機のブロック図を示すものである。図1に示すように、自動製パン機本体1は、内部にヒータ(加熱手段)3を有する焼成室2を設け、焼成室2内にパン焼き型4を着脱自在に載置している。パン焼き型4の内部にパン生地を捏ね上げる練り羽根6を配設している。モータ5はベルトとプーリーを介して練り羽根6を駆動するようにしている。蓋7は焼成室2を開閉するものであり、焼成室2内及び自動製パン機本体1が設置された室内の温度をサーミスタで構成した温度検知手段8及び室内温度検知手段13により検知するようにしている。制御手段9は、マイクロコンピュータで構成し、温度検知手段8の検知温度やメニューの選択を表示する表示手段11、調理スタートを行う入力手段10によって、ヒータ3やモ−タ5を制御駆動するようにしている。
【0004】
調理開始前に、室内温度検知手段13により検知された室温が25℃以上の場合には、パンの出来栄えを良くする為に、表示手段に冷水使用表示を行って調理性能(パンの出来映え)に影響が出ないよう使用者に冷水を使用するよう促していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−215057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、室温が高くて、タイマー調理時間のタイマー時間が長い場合には冷水を使用してもタイマー調理時間が長いため、冷水を使用する効果が無くなり、パンの出来映えに影響するという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、室温が高くかつタイマー調理時間のタイマー時間が長いときには、調理性能への影響があることを知らせる表示を行うことで、使用者はタイマー調理時間を短く再設定して、室温の影響を受けにくい自動製パン機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動製パン機は、調理開始前に室温およびタイマー調理時間の調理時間に応じて、表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行うとしたものである。
【0009】
これによって、使用者は、室温が高いときでかつタイマー調理時間のタイマー時間が長いときには、表示手段に表示することで、タイマー調理時間を短く再設定して、調理性能を落とさずに製パン調理をすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動製パン機は、調理性能に影響を及ぼす条件時に利用者に、タイマー調理時間を短くしてもらうための表示を行い、簡単な構成で室温の影響を受けにくい製パン調理をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における自動製パン機のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における自動製パン機の操作表示部の正面図
【図3】本発明の実施の形態1における自動製パン機の操作表示部の(a)はメニュースイッチ操作直後の表示状態を示す図(b)はメニュースイッチ操作後の第一遷移表示状態を示す図(c)はメニュースイッチ操作直後の第二遷移表示状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は加熱手段を有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に載置したパン焼き型と、前記パン焼き型の内部に配設した練り羽根と、前記練り羽根を駆動するモータと、前記焼成室を開閉する蓋と、前記焼成室内の温度を検知する温度検知手段と、室内の温度を検知する室内温度検知手段と、前記加熱手段や前記モータを制御する制御手段と、前記制御手段によって制御される製パンメニューの選択やタイマー調理の入力を行う入力手段と、選択された製パンメニューや調理終了時間等を表示する表示手段とを備え、前記制御手段は、調理開始前に前記室内温度検知手段の検知温度により検知した室温およびタイマー調理時間の調理時間に応じて、前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行うことにより、使用者は、室温が高くかつタイマー調理時間が長いときに表示手段によって室温が高すぎることを認識し、タイマー調理時間を短く再設定することで室温の影響を受けにくい製パン調理をすることができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、選択している製パンメニューに応じて、表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行うことにより、製パンメニューに応じて、室温が高いときに表示手段によって室温が高すぎることを認識することで、製パンメニューに応じてタイマー調理時間を短く再設定することで室温の影響を受けにくい製パン調理をすることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の入力手段は、パンの副材料投入を行う副材料投入有無選択機能を備え、副材料投入有の場合には、タイマー調理時間に応じて前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を、副材料投入無の場合と変えることにより、室温の影響を受け易い副材料投入設定時においては、タイマー調理時間をさらに短くして、室温の影響を受けにくい製パン調理をすることができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の制御手段は、前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行っている時には、調理スタートしないことにより、より確実に室温の影響を受けにくい製パン調理をすることができる。
【0016】
第5の発明は、加熱手段を有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に載置したパン焼き型と、前記パン焼き型の内部に配設した練り羽根と、前記練り羽根を駆動するモータと、前記焼成室を開閉する蓋と、前記焼成室内の温度を検知する温度検知手段と、室内の温度を検知する室内温度検知手段と、前記加熱手段や前記モータを制御する制御手段と、前記制御手段によって制御される製パンメニューの選択やタイマー調理の入力を行う入力手段と、選択された製パンメニューや調理終了時間等を表示する表示手段とを備え、前記制御手段は、調理開始前に前記室内温度検知手段の検知温度により検知した室温および選択しているメニューに応じて、設定できるタイマー調理時間の上限を変更することにより、
使用者は、室温が高いときには、設定できるタイマー調理時間の上限値を規定することで、使い勝手がよく室温の影響を受けにくい製パン調理をすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における自動製パン機のブロック図、図2は、本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の操作表示部の正面図を示し、図3は、本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の操作表示部の(a)はメニュースイッチ操作直後の表示状態を示す図、(b)はメニュースイッチ操作後の第一遷移表示状態を示す図、(c)はメニュースイッチ操作直後の第二遷移表示状態を示す図を示すものである。
【0019】
図1において、制御手段9は、マイクロコンピュータで構成し、温度検知手段8及び室内温度検知手段13の検知温度や入力手段10によって、ヒータ3やモータ5を制御して、入力手段10により選択された製パンメニューに基づいて調理コースを制御する。他の構成は従来例と同じであり、説明を省略する。
【0020】
レーズン、ナッツ類、チーズ等の製パン副材料を加えたレーズンパン、ナッツパン、チーズパン等をつくる場合には、パン材料の混練工程のうち約17分間程度を終了した時点で、使用者に製パン副材料投入の時期の報知を行い、使用者が自分で副材料の投入を行い、その後残り約3分間の混練により製パン主材料と副材料の混合を行う場合や、別途設けた副材料投入手段から副材料を自動的に投入する場合がある。本実施の形態の自動製パン機では、副材料の代表例としてレーズンと表示することで、使用者に分かりやすい表示としている。以降、副材料の代表としてレーズンと記載するものである。
【0021】
入力手段10と表示手段11は、図2に示すように構成しており、液晶表示装置31は選択しているメニューや調理残時間、レーズン設定有無などを表示するもので、図2の液晶表示装置31は、全セグメントを表示している状態を示している。ここで、選択可能な製パンメニューは、食パンとフランスパン、天然酵母食パンの3メニューとなっている。尚、調理残時間とはパンの焼き上がり(調理終了)までにかかる時間を示すものであり、例えば、食パンメニューを選択すると、パンの焼き上がり(調理終了)までにかかる時間は標準時間である4時間であり、調理残時間4時間0分と表示される。タイマーを使用して、6時間後に焼き上がるよう設定すると調理残時間6時間0分と表示され、例えば、メニュー選択後、2時間経過してから調理が開始され、4時間後(メニュー選択から6時間後)にパンが焼き上がるものである。
【0022】
メニュースイッチ32は製パンメニューのメニュー選択をするもので、レーズンスイッチ33はレーズン投入の選択をするもので、タイマースイッチ34は調理時間を延長するもので、調理終了までの残時間を増加できるようにしている。また、残時間が調理最大時間を越えると標準調理時間に戻る。スタートスイッチ35は調理スタートを行うもので、設定しているメニューおよび調理残時間で調理スタートするものである。取消スイッチ36は設定していたメニューや調理実行中をキャンセルするものである。
【0023】
ここで、制御手段9は、選択された製パンメニューに基づいて調理コースを制御し、製パンメニュー内に、(表1)に示すような食パンメニューの調理シーケンスを有している。
【0024】
【表1】

【0025】
上記構成において、(表1)および図3を参照しながら食パンを調理する場合の動作を説明する。
【0026】
まず、パン焼き型4に練り羽根6を取り付け、強力粉とバター、砂糖、粉ミルク、卵、ドライイースト、水をセットする。メニュースイッチ32を操作して、食パンメニューを選択すると、図3(a)に示すように、標準時間である調理残時間4時間0分後が表示される。ここで、タイマースイッチ34を操作して、調理残時間を増やしていくと、室温温度検知手段13の検知温度が30℃を超えた場合には、調理残時間10時間0分後より、図3(b)に示すように、「調理影響あり」が表示される。これによって、使用者は、室温が高くかつタイマー調理時間が長いので室温が高すぎることが調理性能(パンの出来映え)が影響を受けることを認識し、タイマー調理時間を短く再設定する必要があることに気付く。
【0027】
ここで、使用者は、再度、タイマースイッチ34を操作して、例えば、調理時間残時間9時間50分後の表示に変更すると、「調理影響あり」の表示が消え、図3(c)に示す表示となる。ここで、スタートスイッチ34を操作すると、調理がスタートする。
【0028】
調理がスタートすると、まず、(表1)に示すように、まず、タイマー工程(1)を実行する。ここでは、ヒータ3およびモータ5は停止して、標準時間4時間から、今回の調理時間の9時間50分の差の時間分である5時間50分経過するまで待機する。
【0029】
5時間50分経過すると、次の練り工程(2)に移行する。練り工程(2)では、モータ5を駆動して練り羽根6を回転させることで粉と水状態からパン生地状態に捏ね上げていく。また、制御温度を27℃としているので、室温温度検知手段13の検知温度が27℃未満の場合には、ヒータ3を通電率20%で通電し、室温温度検知手段13の検知温度が27℃以上の場合には、ヒータ3への通電をオフする。
【0030】
18分経過すると、つぎの発酵工程(3)に移行する。発酵工程(3)では、室温温度検知手段13の検知温度が27℃未満の場合には、ヒータ3を通電率10%で通電する。室温温度検知手段13の検知温度が27℃以上の場合には、ヒータ3への通電をオフする。また、モータ5は停止した状態となる。
【0031】
2分経過すると、つぎの練り工程(4)に移行する。練り工程(4)では、練り工程(2)と同様に、モータ5を駆動するとともに、室温温度検知手段13の検知温度に応じて、ヒータ3の制御を行う。
【0032】
4分経過すると、発酵工程(5)に移行して、発酵工程(3)と同じような動作を行う。
【0033】
66分経過すると、ガス抜き工程(6)に移行する。ガス抜き工程(6)では、モータ5を駆動してガス抜きを行う。
【0034】
1分経過すると、つぎの発酵工程(7)に移行して、発酵工程(3)と同じような動作を行う。
【0035】
59分経過すると、ガス抜き工程(8)に移行して、ガス抜き工程(6)と同じような動作を行う。
【0036】
1分経過すると、成形発酵工程(9)に移行する。成型発酵工程(9)では、発酵工程(3)と同じような動作を行い、パン焼き型4にセットされているパン生地の発酵を行う。
【0037】
49分経過すると、焼き上げ工程(10)に移行する。焼き上げ工程(10)では、室温温度検知手段13の検知温度が160℃に達するまでは、ヒータ3を通電率100%で通電し、室温温度検知手段13の検知温度が160℃以上になると、ヒータ3への通電率40%で通電して、パン焼き型4内のパン生地を焼き上げる。40分経過すると調理終了となる。
【0038】
ここで、各製パンメニューおよび室温の影響による最大調理時間は、(表2)に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
(表2)のように、食パンのレーズン無しでは、室温26℃未満か、26℃以上30℃未満か、30℃以上かにより、最大調理時間が13時間から10時間となっていて、食パンのレーズン有りでは、同様に室温の値により、最大調理時間が10時間から8時間としている。同様に、フランスパンや天然酵母食パンも最大調理時間を室温に応じて決定して
いる。
【0041】
また、制御手段9は、液晶表示装置31に「調理影響有り」の表示を行っているが、表示する場合には、スタートスイッチ35の操作ができないようにしてもより確実に調理性能を落とさないで製パン調理をすることができる。
【0042】
なお、上記実施の形態での調理シーケンスの時間や温度、再調理可能時間は、本体構成によって決まるもので、この数値に限定されるものではない。
【0043】
更に、本実施の形態では、室温を独立した室内温度検知手段13によって室温をより正確に検知しているが、「調理影響あり」か否かの判定をするのは調理開始前であるため、室内温度と焼成室2内の温度はほぼ同じであると考えられるため、焼成室2内の温度を検知する温度検知手段8の温度値を室温として制御してもよい。その場合、同温としてもよいし、一定の補正を行ってもよい。
【0044】
また、(表3)に示すように室温範囲と最大調理時間の組み合わせを変えてもよい。温度検知手段を兼用し、組み合わせを簡易にすることによって、部品数やメモリーを削減することで安価に本発明を実現することができるものである。
【0045】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる自動製パン機は、室温の影響を受けるときには、使用者に調理性能への影響があることを知らせる簡単な構成で、室温の影響を受けない製パンを行う自動製パン機として有用である。
【符号の説明】
【0047】
2 焼成室
3 ヒータ(加熱手段)
4 パン焼き型
5 モータ
6 練り羽根
7 蓋
8 温度検知手段
9 制御手段
10 入力手段
11 表示手段
13 室内温度検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に載置したパン焼き型と、前記パン焼き型の内部に配設した練り羽根と、前記練り羽根を駆動するモータと、前記焼成室を開閉する蓋と、前記焼成室内の温度を検知する温度検知手段と、室内の温度を検知する室内温度検知手段と、前記加熱手段や前記モータを制御する制御手段と、前記制御手段によって制御される製パンメニューの選択やタイマー調理の入力を行う入力手段と、選択された製パンメニューや調理終了時間等を表示する表示手段とを備え、前記制御手段は、調理開始前に前記室内温度検知手段の検知温度により検知した室温およびタイマー調理時間の調理時間に応じて、前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行う自動製パン機。
【請求項2】
前記制御手段は、選択している製パンメニューに応じて、前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行う請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
前記入力手段は、パンの副材料投入を行う副材料投入有無選択機能を備え、副材料投入有の場合には、タイマー調理時間に応じて前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を、副材料投入無の場合と変える請求項1または2に記載の自動製パン機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記表示手段に調理性能への影響があることを知らせる表示を行っている時には、調理スタートしない請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項5】
加熱手段を有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に載置したパン焼き型と、前記パン焼き型の内部に配設した練り羽根と、前記練り羽根を駆動するモータと、前記焼成室を開閉する蓋と、前記焼成室内の温度を検知する温度検知手段と、室内の温度を検知する室内温度検知手段と、前記加熱手段や前記モータを制御する制御手段と、前記制御手段によって制御される製パンメニューの選択やタイマー調理の入力を行う入力手段と、選択された製パンメニューや調理終了時間等を表示する表示手段とを備え、前記制御手段は、調理開始前に前記室内温度検知手段の検知温度により検知した室温および選択しているメニューに応じて、設定できるタイマー調理時間の上限を変更する自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−284241(P2010−284241A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138883(P2009−138883)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】