説明

自動車に用いる亜鉛めっきの金属薄板の中空体を製造する方法

本発明は、亜鉛めっきの金属薄板の中空体(10)を製造する方法であって、中空体(10)は、第2の金属薄板パネル(14)とともに組み立てられた少なくとも1つの第1の金属薄板パネル(12)を含み、前記第1のパネル(12)は、平行な端部(18)に対して垂直であり、曲率半径部(20)によって接続された主要部(16)を含み、前記方法は、少なくとも1つのレーザ溶接ステップを含み、その間、第1のパネル(12)は、所定の間隙(J)を設けて、第2のパネル(14)にレーザ溶接される、方法であって、本発明は、少なくとも1つの事前配置ステップであって、その間、パネル(12、14)は間隙を設けずに互いの上面に設置されるステップを含み、レーザ溶接ステップの間、「透明」溶接を実施するために、レーザビーム(27)は、第1のパネル(12)と第2のパネル(14)との間の所定の間隙(J)に対応する第1のパネル(12)の曲率半径部(20)の領域に位置決めされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いる亜鉛めっきの金属薄板の中空体を製造する方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、自動車に用いる亜鉛めっきの金属薄板の中空体を製造する方法に関し、前記中空体は、第2の金属薄板パネルとともに組み立てられた少なくとも1つの第1の金属薄板パネルを含み、前記第1の金属薄板パネルは、第2のパネルに対して垂直な少なくとも1つの主要部と、第2のパネルに対して平行な端部と、前記端部を主要部に接続する所定の曲率半径部とを含み、前記方法は、少なくとも1つのレーザ溶接ステップを含み、その間、第1のパネルは、第2のパネルにレーザ溶接されるとともに、亜鉛蒸気を除去するために、前記第1のパネルと第2のパネルとの間の所定の間隙が保持される。
【背景技術】
【0003】
この種類の製造法の多数の例が知られている。
【0004】
従来、亜鉛めっきの金属薄板パネルは、透明レーザ溶接によって組み立てられる。
【0005】
延伸によって得られるパネルの製造差異が大きくなると、レーザビームの位置の十分なトラッキングを確保することが難しいため、すみ肉溶接および放射溶接、即ち、第1のパネルの曲率半径部と第2のパネルの間に位置を合わせるレーザビームによる溶接は、実施困難である。
【0006】
透明溶接は、製造されるアセンブリの強度については良好な結果をもたらすが、亜鉛めっきの部品の溶接については重大な制約がある。
【0007】
具体的には、溶接時に、亜鉛蒸気を溶接ビードから横方向に漏出させて、溶接部の毛細管流動を妨げないようにするために、2つのパネルの間の所定の間隙が約0.2mmで存在するように維持する必要がある。
【0008】
また、延伸公差が所望の間隙0.2mmより大きいため、この操作を、第2のパネルに対して平行な第1のパネルの端部と前記第2のパネルとの間で実施することは特に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、間隙を設けずに第1のパネルの端部と第2のパネルを組み立て、第1のパネルの曲率半径部に透明溶接作業を実施することによってこの欠点を克服し、所定の間隙に合わせて溶接を実施する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、上に記載する種類の方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの事前配置ステップであって、その間、第1のパネルの端部は第2のパネル上に間隙を設けずに設置されるステップを含み、レーザ溶接ステップの間、レーザビームは、第1のパネルと第2のパネルとの間の所定の間隙に対応する第1のパネルの曲率半径部の領域に位置決めされ、レーザヘッドが、2つのパネルの一側面に配置され、レーザビームを放出して、いわゆる「透明」溶接を実施することを特徴とする。
【0011】
この方法の他の特徴によれば、
−レーザ溶接ステップの間、レーザヘッドは、所定の曲率半径部の凹部の側面に配置され、所定の曲率半径部の中心と、第1のパネルの所定の曲率半径部に対する垂線とをビームが通過するような所定の角度で傾けられており、
−レーザ溶接ステップの間、レーザビームは、第1のパネルの所定の曲率半径部と第2のパネルとの間の接合部から所定の距離に配置され、これにより、第1のパネルと第2のパネルとの間の所定の間隙に対応する第1のパネルの曲率半径部の領域で溶接を実施し、
−この方法は、レーザ溶接ステップと同時に実施される継手トラッキングステップを含み、その間、溶接ビードの位置は、連続して測定され、
−この方法は、レーザヘッドの位置決めを補正するステップを含み、その間、接合部トラッキングステップの間に測定された溶接ビードの位置に応じて、レーザヘッドの位置決めは、所定の距離を調整するためにスレーブ操作され、第1のパネルと第2のパネルとの間の所定の間隙に対応する第1のパネルの曲率半径部の領域で溶接を実施することを可能にする。
【0012】
以下の詳しい記載を読めば、本発明の他の特徴および利点が明らかとなるが、これを理解するために添付の図面を参照するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の溶接方法を示す、中空体の一端部の断面概略図である。
【図2】本発明に関する溶接方法を示す、中空体の一端部の断面概略図である。
【図3】本発明に関する溶接方法による再較正原理の例を示す、図2による中空体の一端部の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の記載では、同一の符号は、同一の、または類似の機能を備える部品を意味する。
【0015】
図1は、自動車の中空体10を詳細に表す。
【0016】
周知のように、中空体10は、第2の金属薄板パネル14とともに組み立てられた少なくとも1つの第1の金属薄板パネル12を含む。
【0017】
たとえば、第1の金属薄板パネル12は、第2のパネル14に対して垂直な少なくとも1つの主要部16と、第2のパネル14に対して平行な端部18と、前記端部18を主要部16に接続する所定の曲率半径部20とを含む。
【0018】
周知のように、第1のパネル12を第2のパネル14に溶接するのに複数の方法を使用してもよい。
【0019】
本願明細書の残りの部分では、特に亜鉛めっきの金属薄板パネル12、14を溶接する操作を取り上げるが、この操作においては、パネルを加熱することによって放出される亜鉛蒸気を除去できるようにするために、溶接されるパネルの間に所定の間隙を維持する必要があり、このような蒸気の除去は、溶接部の毛細管流動をこの蒸気が妨げないようにするために不可欠である。
【0020】
図1に示すように、まず、第1のパネル12の縁部領域22で「すみ肉」溶接を実施することができる。しかし、この種類の溶接では、剛性が最良のアセンブリが得られない。
【0021】
また、第1のパネル12の端部18の中間領域24で「透明」溶接を実施することができ、レーザヘッドが、2つのパネル12、14の一側面に配置され、レーザビームを放出する。
【0022】
この構成では、溶接時に、亜鉛蒸気を溶接ビードから横方向に漏出させるために、2つのパネル12、14の間に所定の間隙(図示せず)が約0.2mmで存在するように維持する必要がある。
【0023】
従って、2つのパネル12、14の延伸公差は所望の間隙0.2mmより大きいことから、第1のパネル12の中間部分24と第2のパネル14の間でこの操作を実施することは特に困難である。
【0024】
最後に、第1のパネル12の曲率半径部20に近接する領域25で溶接することはできるが、第1のパネル12の曲率半径部20と第2のパネル14との間の溶接ビードの製造を実施するためには、レーザビームの精確な位置決めを実施する必要がある。
【0025】
本発明は、第1のパネル12の曲率半径部20と第2のパネル14との間にある間隙を利用して、透明溶接の操作を実施することを提案する。
【0026】
この目的を達成するために、本発明は、上に記載するパネル12、14を溶接する方法を提供し、前記方法は、少なくとも1つのレーザ溶接ステップを含み、その間、第1のパネルは、第2のパネルにレーザ溶接されるとともに、亜鉛蒸気を除去するために、前記第1のパネル12と第2のパネル14との間の所定の間隙が保持される。
【0027】
本発明によれば、図2に示すように、この方法は、少なくとも1つの事前位置決めステップを含み、第1のパネル12の端部18は第2のパネル14に間隙を設けずに設置される。さらに、レーザ溶接ステップの間、レーザビーム27は、第1のパネル12および第2のパネル14との間にある通常0.2mmほどの所定の間隙「J」に対応する第1のパネル12の曲率半径部20の領域に位置を合わせられる。
【0028】
従って、この構成によって、第1のパネル12および第2のパネル14の延伸から生じる寸法差異を克服することが可能であり、亜鉛蒸気を除去するのに必要な間隙「J」を確実に保持することも可能である。
【0029】
最後に、本発明による方法は、レーザビームを放出するレーザヘッド26が、2つのパネル12、14の一側面に配置され、いわゆる「透明」溶接を実施することを特徴とする点で有利である。
【0030】
より詳細には、レーザヘッド26は曲率半径部の凹部の側面に配置されるのが好ましい。
【0031】
図2に、この構成を表している。
【0032】
本発明は、水平方向「L」に沿ったレーザヘッド26の位置が、第1のパネルの曲率半径部20と第2のパネル14との間の間隙を決定し、これにより、溶接が実施される点で有利である。
【0033】
従って、第1のパネル12の曲率半径部20と第2のパネル14との間の接合部から測定されるレーザヘッド26の長手位置「X」を変えることによって、間隙「J」を変えることができ、また、その逆、つまり、理想的には0.2mmの値に一致する間隙「J」を得るために、レーザヘッド26の長手位置「X」を調整することができる。
【0034】
単純な幾何学的関係によって、レーザヘッド26の理論位置を計算することができる。
【0035】
具体的には、図2に示すように、曲率半径部20の外半径「R」上の間隙「J」を得るために、レーザヘッド26の位置「X」から開始して、次の関係:
cosα=(R−J)/Rかつsinα=X/R
が得られ、これにより、
X=Rsin[arccos((R−J)/R)]
となる。
【0036】
この計算値は、問題になっている金属シートにおいて得られる寸法差異に応じて、明らかに減少したり、増大したりする。
【0037】
ここに、一例として、厚さが1.5mmの標準的な金属シートに関しては、屈曲部「r」の内径は3〜6mmであり、これは、外半径「R」が4.5〜6mmに相当する。0.17〜0.23mmの間隙値「J」に関しては、レーザヘッドの理論上の位置決め値「X」が、1.33〜1.72mmで得られる。
【0038】
本発明の別の有利な特徴では、この方法は、レーザ溶接ステップと同時に実施される継手トラッキングステップを含み、その間、溶接ビードの位置は、連続して測定されるのが好ましい。
【0039】
また、この測定によって、生成された半径の値も読み取ってもよく、これにより、理想的な溶接位置を再計算してもよい。この測定は、光学測定であるのが好ましい。
【0040】
このようにして、レーザヘッド26の位置決めを補正するステップを有利に含んでもよく、その間、継手トラッキングステップの間に測定された溶接ビードの位置に応じて、レーザヘッド26の位置決めは、所定の距離を調整するためにスレーブ操作され、第1のパネル12と第2のパネル14との間の所定の間隙「J」に対応する第1のパネル12の曲率半径部20の領域で溶接を実施することを可能にする。
【0041】
一例として、上記の補正ステップは、たとえば、観測カメラと、レーザヘッドに用いられるガイドテーブルと、ガイドテーブルに接続され、様々な観測アルゴリズムで管理される制御装置とを含む再較正システムによって実施されてもよい。
【0042】
特に、用いられるアルゴリズムの第1の実施例は、平面をトラッキングする原理に基づいてもよい。このアルゴリズムの原理は、平面の端部を検出することにあり、左側端部または右側端部からの直線補間(アルゴリズムに入力されるパラメータ)によって構成される。次に、トラッキングポイントは、その部分とトラッキング直線の点間距離が、ソフトウェアに入力された値を超えている場合に設定される。
【0043】
用いるアルゴリズムの別の例は、金属シートの2つの縁部を検出すること、つまり、半径を有する部分20を検出し、次に中心を推定することによる再較正原理に基づいている。
【0044】
図2に表すように、第1のパネル12の端部18が段差を形成する場合、再較正時に、この段差を考慮に入れる原理に基づくアルゴリズムの別の例を用いてもよい。アルゴリズムは、段差を検出し、上に記載するのと同じ原理、つまり、平面をトラッキングする原理を用いる。
【0045】
使用されるアルゴリズムのさらに別の実施例では、上に記載するさまざまな原理の組み合わせに基づいて、つまり、第1のパネル12の端部で段差を考慮に入れつつ、反対側で縁部を用いてもよい。図3に、この最後の実施例を概略表示する。ここで、アルゴリズムは、図3の点Aで段差を検出することを考慮に入れ、図3の点Bの半径に基づいて計算されるトラッキングポイントを求める。従って、この再較正によって、レーザヘッド26、結果的には、Y軸およびZ軸に沿ったレーザ光27(図3の実線で概略表示する)の位置を最適に調整することが可能となる。
【0046】
従って、本発明は、パネルの曲率半径部に実施する透明レーザ溶接によって、簡単かつ効率的に亜鉛めっきの金属薄板の中空パネルを組み立てることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に用いる亜鉛めっきの金属薄板の中空体(10)を製造する方法であり、前記中空体は、第2の金属薄板パネル(14)とともに組み立てられた少なくとも1つの第1の金属薄板パネル(12)を含み、前記第1の金属薄板パネル(12)は、第2のパネル(14)に対して垂直な少なくとも1つの主要部(16)と、前記第2のパネル(14)に対して平行な端部(18)と、前記端部(18)を前記主要部(16)に接続する所定の曲率半径部(20)とを含み、前記方法は、少なくとも1つのレーザ溶接ステップを含み、その間、前記第1のパネル(12)は前記第2のパネル(14)にレーザ溶接されるとともに、亜鉛蒸気を除去するために、前記第1のパネル(12)と前記第2のパネル(14)との間の所定の間隙(J)を保持する方法であって、
少なくとも1つの事前配置ステップであって、その間、前記第1のパネル(12)の前記端部(18)は前記第2のパネル(14)上に間隙を設けずに設置されるステップを含み、前記レーザ溶接ステップの間、前記レーザビームは、前記第1のパネル(12)と前記第2のパネル(14)との間の所定の間隙(J)に対応する前記第1のパネル(12)の曲率半径部(20)の領域に位置決めされ、レーザヘッド(26)が、前記2つのパネル(12、14)の一側面に配置され、前記レーザビーム(27)を放出して、いわゆる「透明」溶接を実施することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記レーザ溶接ステップの間、前記レーザヘッド(26)は、前記曲率半径部(20)の凹部の側面に配置され、前記曲率半径部の中心と、前記第1のパネル(12)の前記曲率半径部(20)に対する垂線とを前記ビームが通過するような所定の角度(α)で傾けられていることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ溶接ステップの間、前記レーザビーム(27)は、前記第1のパネル(12)の前記曲率半径部(20)と前記第2のパネル(14)との間の接合部から所定の距離(X)に配置され、これにより、前記第1のパネル(12)と前記第2のパネル(14)との間の所定の間隙(J)に対応する前記第1のパネル(12)の前記曲率半径部(20)の領域で溶接を実施することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ溶接ステップと同時に実施される継手トラッキングステップを含み、その間、前記溶接ビードの位置は、連続して測定されることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記レーザヘッド(26)の位置決めを補正するステップを含み、その間、前記継手トラッキングステップの間に測定された前記溶接ビードの位置に応じて、前記レーザヘッド(26)の位置決めは、所定の距離(X)を調整するためにスレーブ操作され、前記第1のパネル(12)と前記第2のパネル(14)との間の所定の間隙に対応する前記第1のパネル(12)の前記曲率半径部(20)の領域で溶接を実施することを可能にすることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509773(P2012−509773A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538035(P2011−538035)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052307
【国際公開番号】WO2010/061138
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】