説明

自動車のためのフロント部分

【課題】自動車のためのフロント部分を改良して、先行技術から公知の欠点を回避し、達成したい冷却出力に関して改良された冷却空気ガイドをもたらす、自動車のためのフロント部分を提供する。
【解決手段】フロント部分(4)が中央の空気入口(1)から側方に配置された冷却体(7a,7b)への空気ガイドを有しており、該空気ガイドがフロント部分(4)の壁により画成されているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側方に配置された冷却体を備えた、自動車のためのフロント部分であって、フロント部分が中央の空気入口と、少なくとも2つの側方の空気入口とを有しており、側方の空気入口が側方に配置された冷却体に対応して配置されている、自動車のためのフロント部分に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに相並んでいる全部で3つの冷却体が配置されているフロントスペースを有する自動車が、DE10159783A1において公知となっている。この自動車において、1つの比較的大きな中央の冷却体と、2つの比較的小さな側方の冷却体とが設けられている。車両車体のフロント壁部には、DE10159783A1に基づき、各冷却体にそれぞれ前置されている冷却空気進入開口が設けられている。この構成においては配置された冷却体は、比較的小さな側方の冷却空気開口に基づき、不十分な冷却能力しかもたらすことができない。側方の冷却空気開口は、一般的に例えばパークセンサもしくは補助ヘッドランプ及び/又はフォグヘッドランプのような組込み部材により規定されてしまう。側方の冷却空気進入開口の横断面の内側にもよく挿入式ヘッドランプが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE10159783A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、自動車のためのフロント部分を改良して、先行技術における公知の欠点を回避し、達成したい冷却能力に関して改良された冷却空気ガイドをもたらす、自動車のためのフロント部分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明に係る側方に配置された冷却体を備えた、自動車のためのフロント部分は、フロント部分が中央の空気入口と少なくとも2つの側方の空気入口とを有しており、側方の空気入口が側方に配置された冷却体に対応して配置されており、フロント部分が中央の空気入口から側方に配置された冷却体への空気ガイドを有しており、空気ガイドがフロント部分の壁により画成されているようになっている。
【0006】
本発明に係る自動車のためのフロント部分は、好ましくは、側方に配置された冷却体への空気ガイドが、それぞれバイパスと拡幅部とを有しており、該拡幅部が側方に配置された冷却体に向かって拡幅されている。
【0007】
更に好ましくは、中央の空気入口に中央冷却体が対応して配置されている。
【0008】
更に好ましくは、中央の空気入口とは反対側に位置する、フロント部分の境界壁が、中央の空気入口に向かって凸状に湾曲された閉鎖された面を形成する。
【0009】
更に好ましくは、中央の空気入口から側方に配置された冷却体への空気ガイドを閉鎖するための可動な遮断装置が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるフロント部分により、より多くの冷却空気を側方に配置された冷却体に供給することが可能になる。これにより冷却能力は、付加的な組込みスペースを、フロント部分の側方の領域、特に目に見える領域に必要とすることなく改良される。更にフロント部分の中央から側方に配置された冷却体への冷却空気供給部は、エアロダイナミクス的に特に有利である。なぜならばフロント部分の中央における特に高い動圧を、側方に配置された冷却体への空気供給時に使用することもできるからである。
【0011】
有利には、側方に配置された冷却体への空気ガイドはそれぞれバイパス及び拡幅部を有していてよい。この構成では、拡幅部は側方に配置された冷却体に向かって拡幅される。バイパスにおける側方に配置された冷却体への空気ガイドの狭幅個所に接続している拡幅部により、空気ガイドを通って側方に配置された冷却体へ、特に高い冷却空気流量がもたらされる。
【0012】
中央の空気入口に対応して配置されている中央冷却体を設けることは有利となる。このように側方に配置された冷却体の冷却能力に関して付加的に、中央冷却体による更なる冷却能力を提供することができる。
【0013】
有利には、中央の空気入口に相対しているフロント部分の境界壁は、中央の空気入口に対して凸状に湾曲された閉鎖された面を形成できる。これにより側方に配置された冷却体への空気ガイドは更に改良される。この構成では、中央冷却体の省略により重量削減が可能になり、特にエンジンルームにおけるより良好なスペース利用が可能になる。
【0014】
有利には、中央の空気入口から側方に配置された冷却体への空気ガイドを閉鎖するために、可動な遮断装置が設けられていてよい。こうして、自動車の走行速度に基づく冷却空気ガイドを最適化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動車のためのフロント部分及び自動車のホイールを示した図である。
【図2】自動車のためのフロント部分の部分図である。
【図3】開放された遮断装置を備えた、自動車のためのフロント部分の部分図である。
【図4】閉鎖された遮断装置を備えた、自動車のためのフロント部分の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1には自動車のためのフロント部分4と、自動車のホイール5a,5b、つまりフロントホイールとが概略的且つ例示的に示されている。図示のフロント部分4は中央の空気入口1と、2つの側方の空気入口2a,2bとを有している。図示の実施の形態では中央の空気入口1に中央冷却体6が対応して配置されている。側方の空気入口2a,2bの各々には、側方に配置された冷却体7a,7bがそれぞれ対応して配置されている。自動車が走行方向Fに運動すると、空気が中央の空気入口1と側方の空気入口2a,2bとを通って進入し、中央冷却体6もしくは側方に配置された冷却体7a,7bに向かって流れる。
【0018】
図示のフロント部分4は、中央の空気入口1から側方に配置された冷却体7a,7bへの空気ガイドを有している。空気ガイドはフロント側でもボディ側でも、フロント部分4の壁により画成されている。図示の実施の形態において、中央の空気入口1から側方に配置された冷却体7a,7bへの空気ガイドは、バイパス8a,8bとして形成されている。側方に配置された冷却体7a,7bに、中央に配置された入口開口、つまり中央の空気入口1から冷却空気が空気ガイドによって供給される。バイパス8a,8bは、側方に配置された冷却体7a,7bへ夫々の空気ガイドが、フロント側の境界壁とボディ側の境界壁との間に狭幅個所を有するように形成されている。狭幅個所の領域では、有利には、可動な遮断装置3(図3,4参照)によってバイパス空気流の必要に応じた絞りを行うことができる。図1〜4に記載の実施の形態では、バイパス8a,8bは側方に配置された冷却体7a,7bに向かって拡幅されている。拡幅部は、可能な限り高い圧力上昇、ひいては比較的大きな冷却空気流量をもたらすためにディフューザの形式で形成されている。
【0019】
図1に示された実施の形態では、フロント部分4は少なくとも空気ガイドに関連して、自動車の中央長手方向平面Aに対して対称的に形成されている。
【0020】
図2〜4にはフロント部分4の部分図が示されている。図2〜4では図面を見やすくするために、フロント部分4の半部及び自動車の1つのホイール5b、つまり1つのフロントホイールだけしか示されていない。図2〜4にはフロント部分4の中央の空気入口1と、側方の空気入口2bとが示されていて、後側、つまり自動車のフロント側とは反対の側には側方に配置された冷却体7bが配置されている。有利には、フロント部分4の中央長手方向平面Aに対して相対している半部は、それぞれ図2〜4に示されている半部に対して鏡像的に形成されている。
【0021】
図2にはフロント部分4の部分図が示されている。図示のフロント部分4は中央冷却体6(図1,3,4参照)を備えておらず、2つの冷却体アッセンブリを有している。有利には、側方に配置された冷却体7a(図1参照)と7bとは、フェンダの下側に配置されている。図2記載のフロント部分は、中央の空気入口1とは反対の側にある境界壁9を有している。境界壁9は、中央の空気入口1に向かって凸状に湾曲された閉鎖された面を形成する。ボディ側の境界壁9は、走行方向に凸状に湾曲された境界壁9の面に基づき、側方に配置された冷却体7a,7bへの特に効果的な冷却空気案内を行う。こうして車両中央の領域における特に高い動圧を、側方に配置された冷却体7a,7bによる冷却のために使用することができる。
【0022】
図3及び図4には中央冷却体6を備えたフロント部分4の部分図が示されている。中央冷却体6は、有利には、ファンサポートなしで作動する。有利には、バイパス8a,8b(図3,4では図面を見やすくするためにバイパス8bのみを示す)における、フロント部分4のフロント側の境界壁とボディ側の境界壁との間の空気ガイドの狭幅個所には、遮断装置3が設けられている。
【0023】
遮断装置3によって、中央の空気入口1から側方に配置された冷却体7a,7bへの空気ガイドを閉鎖することができる。有利には、側方に配置された冷却体7a,7bへのバイパス流は、走行速度が増すにつれて絞られる。図4に示されているように、所定の走行速度からバイパス流を遮断装置3の完全な閉鎖により完全に阻止することも有利となる。こうして比較的速い走行速度時にエアロダイナミクス特性、例えば抵抗及び/又はフロントアクスル揚力を改善することができる。走行速度が比較的遅い場合及び遮断装置3が開放されている場合、側方に配置された冷却体7a,7bは冷却機能の特に大きな部分を担うことができる。図3には開放された遮断装置3を備えたフロント部分4が示されている。有利には、側方に配置された冷却体7a,7bは、吸気を改善するファン装置を有している。
【0024】
中央の空気入口1から側方に配置された冷却体7a,7bへの空気ガイドを閉鎖するための可動な遮断装置3は、例えばリターンスプリングを備えた押圧力負荷された遮断フラップとして形成することができる。有利にはこの構成では、リターンスプリングのばね定数は、バイパス断面の閉鎖が規定の走行速度から始まり、更に速い走行速度に達した時に閉鎖が終了しているように選択されている。可動な遮断装置3は択一的又は付加的に、モータによる調整機構を備えていてよい。
【符号の説明】
【0025】
1 空気入口、 2a,2b 側方の空気入口、 3 遮断装置、 4 フロント部分、 5a,5b ホイール、 6 中央冷却体、 7a,7b 側方に配置された冷却体、 8a,8b バイパス、 9 境界壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方に配置された冷却体(7a,7b)を備えた、自動車のためのフロント部分(4)であって、該フロント部分(4)が中央の空気入口(1)と、少なくとも2つの側方の空気入口(2a,2b)とを有しており、該側方の空気入口(2a,2b)が側方に配置された冷却体(7a,7b)に対応して配置されている、自動車のためのフロント部分(4)において、当該フロント部分(4)が中央の空気入口(1)から側方に配置された冷却体(7a,7b)への空気ガイドを有しており、該空気ガイドがフロント部分(4)の壁により画成されていることを特徴とする、自動車のためのフロント部分。
【請求項2】
前記側方に配置された冷却体(7a,7b)への空気ガイドが、それぞれバイパス(8a,8b)と拡幅部とを有しており、該拡幅部が側方に配置された冷却体(7a,7b)に向かって拡幅されている、請求項1記載のフロント部分。
【請求項3】
中央の空気入口(1)に中央冷却体(6)が対応して配置されている、請求項1又は2記載のフロント部分。
【請求項4】
中央の空気入口(1)とは反対側に位置する、フロント部分(4)の境界壁(9)が、中央の空気入口(1)に向かって凸状に湾曲された閉鎖された面を形成する、請求項1又は2記載のフロント部分。
【請求項5】
前記中央の空気入口(1)から側方に配置された冷却体(7a,7b)への空気ガイドを閉鎖するための可動な遮断装置(3)が設けられている、請求項1から4までのいずれか一項記載のフロント部分。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269599(P2009−269599A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111209(P2009−111209)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】