説明

自動車のための動力取り出し装置

自動車の動力取り出し装置(PTO)のための駆動装置が開示される。この装置は、動力被駆動器具に結合されることを意図する既知の形式のPTOシャフト104、158、207を有する。入力シャフトは、エンジンのような回転駆動機に結合されるように構成される。10のような連続可変トランスミッションは、入力シャフトとPTOシャフトとの間において連続可変比で駆動力を伝達するように入力シャフトとPTOシャフトとの間で結合される。本発明によれば、連続可変トランスミッションはトルクを規制し、その駆動比の変化によるPTOシャフトにおける速度変化を自動的に調節するように構成され配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のための動力取り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで使用するような「動力取り出し装置(power take off arrangement)」とは、自動車のエンジン(又は電気モータのような他の回転駆動機)から車両の被駆動車輪以外のある動力使用地点へ回転駆動力を伝達するための装置を言う。用語としては「PTO」と略記する。トラクタのような農業車両は従来収穫機、草刈機、被駆動車輪トレーラ等のような動力被駆動器具に接続されるようになったPTOを具備する。PTOは、典型的には、ある形のトランスミッションを介してエンジンに結合され、器具のシャフトに対して解放可能な結合を形成するための手段を具備する駆動シャフトを有する。PTOは農業車両においては単独で使用されない。軍事車両はまた被駆動車輪トレーラ及び他の器具を駆動するためのPTOを使用し、PTOが実際的又は潜在的な応用を有するような他の分野が存在する。
【0003】
従来の農業用PTOは、典型的には固定の速度で作動するようになっている。典型的には車両のトランスミッションとは別個の固定比歯車箱は1つの又は一組の駆動比を提供し、車両の速度管理ディーゼルエンジンは必要なPTO出力速度を提供するように固定速度に設定される。駆動力がPTOにおいて必要ではない場合に2つを切り離すために、エンジンとPTOとの間にクラッチが必要となる。
【0004】
この従来のPTO技術はいくつかの欠点に悩む。1つの欠点は「発進」時即ち静止状態から所要の作動速度へ加速するために駆動力をPTOシャフトに適用した時に体験する。被駆動器具はしばしば大きな慣性モーメントを有し、これは、その作動速度を達成するためにかなりの時間期間にわたって加速を必要とする。クラッチが最初に係合している場合は、エンジンとPTOシャフトとの間の速度の不適合が急激で望ましくない衝撃を生じさせ、エンジンを停止させることがある。オペレータは発進を行わせるためにクラッチを繰り返し係合及び係合解除することを学習するが、未熟なアプローチは器具を損傷させることがある。一層制御された発進が望ましい。
【0005】
別の問題は被駆動車輪トレーラに関連して生じる。多くの農業及び軍事車両は動力取り出しを通してトレーラの車輪に駆動力を与え、例えば粗面での車両の運行を補助する。路面上でのトレーラ車輪の速度は被駆動車輪と常に同じとは限らない。コーナリングの場合は、例えば、異なる車輪は異なる半径の経路を追従し、従って異なる速度で路面を走行する。しかし、車輪の相対回転速度はこれらを駆動するトランスミッション(単数又は複数)により提供される比率のため一定であり、差動歯車は通常設けられない。その結果、車輪のスリップは避けられないが、トランスミッション(単数又は複数)を通しての極めて大きな望ましくない動力再循環を伴う。その結果、農業車両の頑丈な構造にも拘らず、高価な故障が生じる。問題はコーナリングのためのみならず、車輪の寸法の不適合、不規則な地面等のためにも生じる。必要なトレーラ車輪トルクを提供しながら、その速度を車両の被駆動車輪の速度に適合させることのできる、PTOを駆動するある手段を提供するのが望ましい。
【0006】
既知のPTOの別の問題はエネルギ効率に関する。通常一定の駆動比は、エンジンが高速で作動するか又はそのピーク動力を提供できるような速度又はその近傍で作動することに基づいて、選択される。このため、必要な場合に、その所要の駆動速度から逸脱することなく、高動力を被駆動器具に提供することができる。その結果、器具により要求される動力が比較的小さい場合でさえ、エンジンは同じ固定の高速度で運転しなければならず、これは不必要に燃料を燃焼させてしまう。
【0007】
最後の困難は、PTO上の負荷が変化したときに遭遇する。例としては、刈り取った材料を収集するように車両に装着され、高動力を消費する器具であるまぐさ収穫機を使用する場合である。まぐさ収穫機が材料の特に密度の高い領域に遭遇したとき、これを駆動するのに必要なトルクは増大する。PTO速度を維持するのに必要な動力はエンジンから利用できる動力を越えることがある。この状況においては、エンジンを停止させるのではなく、PTOの減速を許容するのが望ましい。好ましくは、そうする場合、高エンジン動力を提供するために高いエンジン速度を維持すべきである。
【0008】
PTOを駆動するために、連続可変トランスミッション即ち駆動比の無段変化を提供できるトランスミッションを使用することが先に提案されている。これに関し、公告された国際特許出願US2003/0070819号としての出願番号第10/236589号明細書を参照する。改善された発進及び駆動エンジンの速度の融通性を含む、CVTの使用から生じる利点はその中で認識される。制御の問題が残っている。例えば、従来のCVTはそれ自体負荷により生じる過剰な負荷に応答してエンジンを停止から保護することができない。
【特許文献1】国際特許出願US2003/0070819号明細書
【0009】
本発明についてのヨーロッパ特許庁により行われたサーチでは、EP1106870号(川崎重工株式会社)を見つけ出した。その明細書は一定の速度でジェットエンジンから航空機発電機を駆動するための装置を記載している。この装置は発電機の速度を規制するために完全トロイダル状又は部分トロイダル状の変動器を使用するが、これは比制御装置であることは明らかである。これに関し、パラグラフ55における関連する記述において図10を参照している。同じサーチでは、これまた航空機の同期発電機を駆動することを意図したトランスミッションに関するUS4186616号(シャープ)に注意を促している。これはトロイダル形式の変動器を使用するが、これがトルク制御されるか否かは特定されていない。もちろん、航空機のための同期発電機の駆動はそのフレーズがここで使用されているような意味において、自動車のための動力取り出しではない。
【特許文献2】EP1106870号明細書
【特許文献3】US4186616号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、自動車動力取り出し装置(PTO)のための駆動装置が提供され、この駆動装置は動力被駆動器具に結合されるように配列されそれに適するPTOシャフトと、回転駆動機に結合されるように配列されそれに適する入力シャフトと、連続可変駆動比で入力シャフトとPTOシャフトの間で駆動力を伝達するように入力シャフトとPTOシャフトの間を結合する連続可変トランスミッションとを有し、その特徴とするところは、連続可変トランスミッションが、トランスミッションの反力トルクを規制し、その駆動比の変化によるPTOシャフトの速度変化を自動的に調節するように、構成され配列されることである。
【0011】
回転駆動機は、内燃エンジン特にディーゼルエンジンとすることができるが、本発明は回転駆動力を提供するために代わりに電気モータ、外燃エンジン等を使用する車両に適用できることが考えられる。トランスミッションは、回転変動器入力部及び回転変動器出力部を備え、且つ、その入力部及び出力部でのトルクの合計として定義される変動器反力トルクを規制するように構成され配列された比変更ユニット(「変動器」)を有することが特に好ましい。この形式の機能性はトロイダルレース転がり牽引形式の変動器により提供することができる。
【0012】
変動器は、通常の作動中に一定のPTO速度を提供するように変動器の反力トルクを制御するためのコントローラに関連するのが好ましい。この関係において使用するような「通常」とは、もちろん、PTO速度が漸進的に変化しなければならず、PTO負荷が過剰になるような状態の場合は、発進を除外する。反力トルクの制御はPTOシャフト速度に基づくことができる。
【0013】
本発明は、PTO負荷が過剰になり、既知のPTOでは、エンジンをオーバーロードさせ、エンジンを停止させるような状況の取り扱いに関して、特に有利である。このようなオーバーロードについてのトルクを規制するトランスミッションの自然の応答は駆動比の変化によりPTOシャフトを減速させ、これは、(エンジンの動力を維持できるようにその速度を強制的に変えることなく)エンジンの動力要求を減少させ、PTOシャフトにおいて利用できるトルクを増大させる。事実、トランスミッションの応答はPTO被駆動器具及びエンジンの機能性の双方を適正に保つのに必要な事項と精確に合致する。たとえば、PTOシャフトの速度を維持する傾向を有するコントローラを設けるような場合、状況は僅かに複雑になる。この関係において、コントローラの方策は好ましくは可能性のあるオーバーロードに応じて幾分修正される。
【0014】
コントローラは、好ましくは、PTOシャフトに適用される過剰な負荷に応答して、反力トルクがコントローラにより制限され、それに適用される負荷によるPTOシャフトの減速が駆動比の変化により自動的に調節されるように、過剰なエンジン負荷を回避すべく反力トルクを制限する。トランスミッションは、更に変動器及びPTOに作動的に結合された遊星シャント歯車を有することが特に好ましい。
【0015】
1つのそのような実施の形態においては、シャント歯車のそれぞれの入力は、ある変動器比において2つのシャント入力が互いに相殺し合い、運動する入力シャフトに機械的に結合されているにも拘らずPTOシャフトを静止にするような歯車中立状態を提供するように、変動器及び固定比の歯車チェーンを介して入力シャフトに結合される。あるこのような実施の形態においては、入力シャフトからPTOを係合解除するためのクラッチを無しで済ませることができる。
【0016】
クラッチが無い場合、PTOシャフトを惰走させることのできるような「中立状態」をある方法で提供するのが望ましい。これはまた本発明により提供することができる。好ましい実施の形態は変動器の反力トルクをゼロに設定し、それによって、入力シャフトに機械的に結合されているにも拘らずPTOシャフトが惰走できるような擬似中立状態を提供する手段を有する。好ましくは、PTOシャフトにおいて駆動トルクを生じさせるように変動器の反力トルクを上昇させることにより擬似中立状態からのPTOの発進を制御する手段を設け、変動器はその駆動比の変更によるPTOシャフトの結果としての加速を自動的に調節する。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、動力被駆動器具に結合されるように配列されそれに適するPTOシャフトと、回転駆動機に結合されるように配列されそれに適する入力シャフトと、入力シャフトとPTOシャフトとの間で駆動力を伝達するように入力シャフトとPTOシャフトとの間で結合される連続可変トランスミッションとを有する、自動車動力取り出しを制御する方法が提供され、その特徴とするところは、トランスミッションの反力トルクを規制する工程と、PTOシャフトに関連する慣性負荷に対する結果としてのトランスミッション出力トルクの適用に由来する出力速度の変化に従ってトランスミッション比の変更を許容する工程と、を有することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面を参照しながら、単なる例として、本発明の特定の実施の形態をここで説明する。以下に述べる本発明の実施の形態においては、動力取出しは、比ではなくトルクを規制するように作動する、トランスミッション及び特に連続可変比装置(「変動器」)を介して回転駆動機(典型的には自動車のディーゼルエンジン)により駆動される。このようなトランスミッションは以下「トルク制御」形式として参照する。概念は本出願人及び他人による種々の公報(番号1606135として公告されたEP04723989号明細書を含む)から既知であるが、一層普通のトランスミッションに精通した読者にとっては直観的ではないので、トロイダルレース転がり牽引形式の例示的なトランスミッションを参照して以下に説明する。しかし、例えば公告されたヨーロッパ特許出願第0736153号明細書に見られるように、トルク制御により作動する他の形式のトランスミッションを構成できることに留意すべきである。
【特許文献4】EP04723989号明細書
【特許文献5】ヨーロッパ特許出願第0736153号明細書
【0019】
図1、図2に示す変動器10は、それ自体新規ではない。図面は極めて概略的で、単にその作動原理を示すことを意図する。構造上の更なる詳細は、例えば公告されたヨーロッパ特許出願第0894210号明細書及び同第1071891号明細書を含む、本出願人による種々の公報において見ることができる。図1は変動器入力シャフト12及び変動器出力シャフト14を示し、これらのシャフト間で、入力レース16、出力レース18及び一組のローラ20(図1に1つのみを示す)を備えた構成により駆動力が伝達される。入力及び出力レースは共通軸線(変動器軸線21)のまわりで回転するように装着され、ローラ20を収容するほぼトロイダル状の空洞26を一緒に画定するように形状づけられた対面する表面22、24を有する。
【0020】
ローラ20は、両方のレースの形状付けられた表面上を走行し、一方のレースから他方のレースへ駆動力を伝達するのに役立つ。「牽引流体」のフィルムは対面における磨耗を最少にするようにローラとレースとの間に維持され、駆動力はこのフィルムのせん断により伝達される。この駆動力の伝達を可能にするのに必要な圧力を対面において提供するように、レースは典型的には液圧アクチュエータ(図示せず)により互いに向かって偏倚される。
【0021】
各ローラ20は、3つの自由度を許容するような方法で装着される:すなわち、(1)ローラはレースにより駆動されたときに自軸のまわりで回転できる;(2)ローラは変動器軸線21のまわりで円周方向の経路に沿って前後に移動できる;(3)ローラは「転頭運動」できる、即ち、ローラの傾斜を変更するようにローラ軸線及び変動器軸線の双方に平行でない転頭軸線28のまわりで回転できる。これは、図示の変動器においては、ピストンロッド32を介してピストン34に結合されたキャリッジ30内でジャーナル運動させることにより、達成される。ピストン34は運行27のその円周方向に沿った成分を備えた制御された偏倚力をローラに適用するための液圧アクチュエータを形成するようにシリンダ36内に収容される。
【0022】
転頭軸線28は、変動器軸線21に対して垂直ではないが、その垂直に対してキャスタ角度CAだけ傾斜していることに留意されたい。更に、ローラはその運動時にレースにより操舵効果を受け、ローラ及び隣接するレースの運動がその対面において平行になることを保証する傾向を有する。これは、操舵効果が変動器軸線21と交差するようにローラ軸線を維持する傾向を有すると言うことと等価である。その結果、ローラの円周方向位置とその傾斜との間に関係が存在する。ローラが前後に移動すると、ローラはまた転頭運動し、即ちその傾斜度を変える。
【0023】
ローラは、一体となって運動する傾向を有し、ローラの傾斜は変動器駆動比に対応する。ローラの傾斜度が変化すると、1つのレース上でローラが追従する経路の半径は減少し、一方、他方のレース上で追従される経路の半径は増大し、それによって、2つのレースの相対速度を変化させ、即ち駆動比を変更する。
【0024】
ここで、変動器軸線21のまわりで作用するトルクを考察する。エンジンは入力レース16を駆動し、このレースに入力トルクTinを適用する。ローラは入力レース16により駆動されて、出力レース18を駆動し、それによって、出力レースに出力トルクToutを適用する。ローラ自体は、その円周方向の経路に沿って押圧し、(反対方向に作用する)入力及び出力トルクの合計により決定される反力トルクを受ける。反力トルクはまた現在のローラの傾斜に依存する。ローラを適所に保つため、この反力トルクに対して対抗しなければならず、図示の実施の形態では、液圧アクチュエータ8、34、36により対抗トルクが適用される。
【0025】
単一のローラを上述したが、同じ議論を全体の組のローラに集合的に適用することに留意されたい。レースは変動器軸線のまわりでの円においてローラを駆動する傾向を有する。これは、それぞれのアクチュエータによりローラに適用される正味のトルクにより抵抗される。ローラ組立体を加速させるいかなるトルクをも無視すれば、反力トルクTin+Toutはアクチュエータにより適用される正味のトルクと等しくなければならない。アクチュエータトルク(等価的には、各アクチュエータにより適用される円周方向の力と言うことができる)を制御することにより、反力トルクが制御される。図示の例においては、液圧アクチュエータを使用して、共通の流体圧力が各アクチュエータの両側に適用され、2つの流体圧力の差が変動器の反力トルクを決定する。
【0026】
図1は、単一のトロイダル空洞を画定するたった一対のレースを示すが、実際の変動器は典型的には2つの空洞を画定する2対のレースを有し、各々がそれぞれの組のローラを含む。図2はこのような装置を示し、大半の素子は図1のバージョンに対して直接の相対物であり、同じ符号で示すが、付加的な入力及び出力レースは16a、18aでそれぞれ示す。出力シャフト14は2つの出力レース16a、18a間に位置することに留意されたい。このシャフトからの駆動力は、周知のように、レイシャフトへのチェーンを介して又はある共軸の構造を介して、取り出すことができる。
【0027】
トランスミッションは、ある駆動比を提供するように設定され、それに従ってそれ自体調整されるものと仮定することは普通であり、その作動モードは「比制御」として参照することができる。これは、上述のトルク制御変動器を使用するトランスミッションの場合ではない。代わりに、変動器はトルク(特に反力トルク)を規制し、駆動比のその後の変化を調節するようにそれ自体自動的に調整を行う。図3は原理を示すことを意図するものである。再度、変動器10を極めて概略的な形で示し、入力及び出力レース16、18並びに単一のローラ20のみを示す。変動器の入力は伝動装置を介してエンジンに結合され、図面においては、伝動装置及びエンジンはボックス50により簡単に表され、このボックスは(エンジン、伝動装置及び変動器自体の一部により与えられる)慣性モーメントJeを有し、変動器上に駆動エンジントルクTeを作用させる。変動器の出力は伝動装置を介して動力取り出しシャフト及びある外部の器具に結合される。
【0028】
ボックス52は(伝動装置、変動器の一部及び器具の運動部分の慣性のため)変動器出力として参照される正味の慣性モーメントJv及び器具により行われる仕事及び摩擦損失のために変動器出力上に作用する後退トルクTvの双方を表す。反力トルクTin+Toutは変動器により規制されることを思い出そう。比率Tin/Toutは現在の変動器比により決定される。それ故、Tin及びToutの値は(変動器の非効率性を無視した場合)変動器の反力トルク及び現在の変動器比により決定される。変動器の出力においては、正味のトルクTout−Tvは出力慣性Jvを加速するために利用できる。
【0029】
この正味のトルクがゼロでない場合、出力速度が変化する。変動器は(ローラの並進及び転頭運動による)その駆動比の変化のためこの変化を自動的に調節し、出力速度及び変動器比の変化は、ToutがTvに等しくなるような平衡に達するまで、続く。原理においては、同じことが必要な変更を加えて変動器の入力側に適用される:その入力において変動器により生じる、エンジントルクTeとトルクTinとの間のいかなる不平衡もが変動器の入力速度を変化させて、平衡を回復させる傾向を与える。しかし、PTOはしばしば、選択されたエンジン速度を維持するようにその出力トルクを自動的に調整する速度管理ディーゼルエンジンにより駆動され、そのため、実際は、エンジン自体は変動器の入力において実質上一定の速度を達成するようにそのトルクTeを調整することができる。
【0030】
変動器は、その入力及び出力トルクを規制し、(大半の他のCVTのように)その駆動比を規制し且つその比を達成するのに必要なトルクを入力部及び出力部において生じさせるのではなく、入力及び出力慣性についてのこれらのトルクの作用から由来する比にそれ自体自動的に調整する。
【0031】
上述のように、エンジンと動力取り出しシャフトとの間で変動器に結合される伝動装置を設ける。図4は、変動器10がエンジン100から固定比伝動装置R1を介して駆動され、クラッチ102及び伝動装置R2を介して動力取り出し104に結合されるような極めて簡単な構造を示す。クラッチ102は必要時にPTO104からエンジンを切り離して、発進を生じさせるために使用される。
【0032】
一層精巧な構造は、図5に示され、ここでは「シャント」150として参照される遊星歯車構造を使用する。この一般的な形式の構造は自動車の車輪の駆動のためのトランスミッションという面において知られている。遊星歯車の一般的な構造は極めて周知であり、ここでは詳細に述べない。この構造は、(1)サンギヤ;(2)リングギヤ;及び(3)サンギヤ及びリングギヤに係合する遊星歯車を装着したキャリヤにそれぞれ接続された3つの入力シャフトを有する。図示の構造においては、シャントシャフトの1つ152は伝動装置R1を介してエンジン153に結合される。別のシャントシャフト154は変動器10及び伝動装置R2、R3を介してエンジンに結合される。第3のシャントシャフト156は最終の伝動装置R4を介してPTO158に結合される。
【0033】
この形式の構造は時として「動力再循環」形式として参照される。その理由は、動力がシャント及び変動器により形成されるループ内で循環するからである。これは、無限速度減少即ち「歯車中立」のための便宜を与えるという重要な利点を有する。ある変動器比においては、シャントへの入力152、154は互いに相殺し合い、そのため、その出力156は、運動するエンジンに物理的に結合されているにも拘らず、静止状態となる。この歯車中立の便宜さのため、この構造はエンジンからPTOを切り離すためのクラッチを必要としない。
【0034】
もちろん、使用者は、PTOが惰走するような「中立」状態を達成するためにこのようなクラッチを係合解除できることに慣れる。しかし、等価の状態は、ゼロの反力トルクを提供するように変動器を設定することにより、トルク制御変動器の使用のため、図示の構造において容易に達成することができる。この場合、摩擦損失を無視すると、変動器の入力及び出力トルクは対応的にゼロになる。出力は惰走し、一方、変動器比はPTO速度のその結果の変化を調節するように必要に応じて変化する。
【0035】
従って、例えば、PTOが梱包機械のような運動する負荷に接続されている間に、この構造がこの擬似中立状態に置かれた場合、駆動力は負荷から取り除かれて中立停止状態となり、一方、変動器比は歯車中立比へ自動的に移動し、エンジンが連続的に運転するのを許容する。上述の液圧的に制御される変動器においては、擬似中立状態はピストン34の両側の圧力を等しくするだけで達成される。
【0036】
図6に示す代わりの構造は、歯車中立を提供せず、その結果クラッチ200を必要とする。変動器を通る全体動力の比率を減少させることができる方が有利である。PTOへ送給されるトルク及び動力は大きくすることができる。伝動装置を通してできる限り多くの動力を送給し、変動器自体を通してできる限り少ない動力を送給するのが望ましく、これら両方は効率を改善し、変動器の重量及び嵩を減少させるのを許容する。
【0037】
この構造では、シャント201は伝動装置R1を介してエンジン203に結合された第1のシャフト202と;伝動装置R2を介して変動器10の入力側に結合された第2のシャフト204と;伝動装置R3を介してPTO207に結合された第3のシャフト206とを有する。第3のシャフト206は更にクラッチ200の係合により変動器の出力側に結合することができる。クラッチ200が係合解除されたときに、変動器及び第2のシャフト204は惰走する。その結果、シャントは全体として、同様に、惰走することができる。駆動力はその第1のシャフト202からその第3のシャフト206へ伝達されず、従って構造体は中立となる。クラッチが係合したとき、変動器は全体の駆動比を指令し、一部の動力は変動器を通して必然的に循環させられるが、歯車比を適当に選択することにより、この動力は伝達される全体の動力のほんの一部となることを保証できる。
【0038】
PTOの制御は、単純に機械的/液圧的な装置を介して多分達成することができるが、制御の好ましいモードは、瞬間的な入力及び出力速度を表示する入力を受け取り、変動器を制御する液圧弁に出力を提供するマイクロプロセッサを使用し、この場合、適当なクラッチが関連する。変動器制御弁は変動器ピストン34の2つの側部に適用される圧力を規制し、このようにして反力トルクを決定する。
【0039】
使用者に提供される制御は、簡単にすることができる。典型的な実施の形態は中立(ニュートラル)と駆動(ドライブ)との間で切換えを行うためにオン/オフ制御を使用し、変動器(及び、この場合はクラッチ)はマイクロプロセッサにより対応的に制御される。農業用PTOは最も頻繁に1000rpmのような一定速度で作動することを必要とする。使用者が作動できる制御はレンジから又は一組の別個の代替物から速度を選択するために提供することができる。最後に、制御は、使用者が発進時に出力トルクのレベルを規制し、実際、迅速発進をどのように制御するかを許容するために提供することができる。
【0040】
上述のように、多くの場合、PTOを駆動するために使用されるエンジンは速度管理され、即ち、設定速度を維持することができる。また、多くの場合、PTOにおける要求は固定の速度に対してのものである。従来のトランスミッションでは、必要な出力速度は入力速度及び駆動比の選択から由来する。しかし、ここで述べる形式のトルク制御変動器は比の直接制御を提供しないことに留意されたい。それ故、必要な出力速度を維持するためには、PTOの出力速度を維持するのに必要なような変動器の反力トルクを調整するためのコントローラが必要となる。これは、例えば、遠心ガバナーにより達成することができるが、好ましい解決策はマイクロプロセッサにより実行されるこの機能を有することである。最も簡単なアプローチは、例えば比例積分差動(PID)コントローラを使用して、出力速度のフィードバックに基づき反力トルクを調整することである。一定のPTO速度のための制御に対する平凡な代替はPTO速度を車両の路面速度にリンクさせることである。これは、車両の路面速度をコントローラに供給することにより又は同じトランスミッションからPTO及び車両車輪を駆動することにより、達成できる。
【0041】
トルク制御変動器の使用は、PTOの発進のための有利な方策を可能にする。図5に示す形式の構造を制御するための簡単な方策は、発進時に、ゼロ反力トルクから変動器制御弁を使用して設定されたある固定の反力トルクへの切換えを単に行うことである。これは、エンジン速度及びPTO速度の不適合によるエンジンの停止の危険性を伴う従来のPTOにおけるクラッチの突然の係合解除と等価ではないことに留意されたい。反力トルクが上昇すると、PTO出力においてトルクを生じさせ、エンジンに適用すべき対応するトルクを生じさせるが、駆動比におけるいかなる瞬間的な変化をも必要としない。代りに、PTO負荷はその慣性により要求される割合で休止状態から加速することができ、一方、エンジンはその設定速度で運転し続け、変動器は駆動比における結果としての漸進的な変化を自動的に調節する。
【0042】
更に、図5の構造は、エンジンに適用される負荷が漸進的に増大するような「穏やかな始動」を自動的に提供する。その理由を理解するために、歯車中立が実際エンジンからPTOへの無限の速度減少であることを思い出そう。(摩擦効果を無視した)歯車中立においては、PTO出力において生じるトルクに関係なく、エンジンに適用される負荷はゼロである。出力速度が増大すると、変動器は反力トルクの一定値を維持するが、PTO出力トルクに対するエンジン負荷トルクの比率は徐々に増大する。それゆえ、エンジンの停止の問題を伴わずに、負荷を最初に加速するために高トルクを適用できる。負荷の加速の制御を含む、一層精巧な発進方策はマイクロプロセッサを使用して容易に履行することができる。PTOがクラッチを組み込んでいる場合、クラッチ適用圧力及び変動器制御圧力を制御するための別個の液圧手段を設けることができる。代りに、同じ液圧圧力を変動器及びクラッチの双方に適用することができ、穏やかな始動を提供するように発進時にこの圧力を徐々に増大させることができる。
【0043】
発進と対照的に、通常の作動におけるエンジン停止の問題はまた本発明により容易に対処できる。PTOで駆動される器具上の負荷は、例えば処理している材料の特性の変化のため、劇的に変化することがある。例えば、まぐさ収穫機により体験する草の特に湿った又は厚い領域は(固定の駆動比を使用する従来のPTOにおいては)エンジンをオーバーロードさせることがあり、そのため、エンジンはその速度を維持するのに不十分な動力を有することとなり、停止する。トルク制御PTOが同じ状況を体験する場合に発生することを考察しよう。変動器の反力トルクが調整されない場合、これはPTOを駆動するために利用できるトルクを越えるPTO負荷を招く。
【0044】
その結果、PTOは減速し、変動器は、設定反力トルクを維持しながら、その結果としての駆動比の変化を自動的に調節する。エンジン速度は維持することができる。駆動比の減少はPTO出力トルクの増大を生じさせ、そのため、ある地点において、エンジンが一定のたとえ減少した速度でPTOを駆動できるような平衡に達することができる。一定のPTO出力を維持しようとするコントローラを設けることにより状況は多少複雑になるが、この関係において、エンジンに適用できる最大負荷に基づき反力トルクを単に制限する方策を履行することが簡単なことであり、必要な場合に変動器を上述のように作動させることができる。
【0045】
車輪速度に不適合がある場合にトレーラ又は連接車両の車輪を駆動するために使用されるPTOに関連する問題を以上において参照した。このような問題はここで遭遇する形式のPTOにより容易に回避される。その理由は、PTO従ってこれを駆動する車輪の速度を設定する必要が必ずしもないからである。代わりに、反力トルクの設定は(与えられた駆動比に対して)車輪に適用されるトルクを決定する。このような速度は全体の車両速度を適合させるように必要に応じて自由に変化し、その結果としての駆動比の変化は変動器により自動的に調節される。地面、運転手の要求等に応じての車輪トルクの調整を含む精巧な方策もまた履行することができる。
【0046】
エンジンの効率に関して、エンジン及びPTOを駆動するトランスミッションの調和された制御により、従来のPTO駆動装置に比べて改善を行うことができる。従って、例えば、動力要求が小さい場合にエンジン速度を減少させることができ、変動器は出力速度を維持するように調整され、燃料消費を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に使用されるトロイダルレース転がり牽引形式の変動器の一部の概略簡単図である。
【図2】同じ形式の変動器の斜視図である。
【図3】本発明に係る動力取出しを駆動するトランスミッションの極めて概略的な図である。
【図4】本発明を具体化した、PTOを駆動するためのトランスミッションの極めて概略的な図である。
【図5】本発明を具体化した、PTOを駆動するための別のトランスミッションの極めて概略的な図である。
【図6】本発明を具体化した、PTOを駆動するための更に別のトランスミッションの極めて概略的な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の動力取り出し装置(PTO)であって、
動力被駆動器具に結合されるように配列されたPTOシャフトと、回転駆動機に結合されるように配列されそれに適する入力シャフトと、連続可変駆動比で入力シャフトとPTOシャフトの間で駆動力を伝達するように入力シャフトとPTOシャフトの間を結合する連続可変トランスミッションと、を含み、
連続可変トランスミッションが、トルクを規制し駆動比の変化によるPTOシャフトの速度変化を自動的に調節するように構成され配列されることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記トランスミッションが、比変更ユニット(「変動器」)を含み、該変動器が、回転変動器入力部及び回転変動器出力部を有し、且つ変動器の反力トルクを規制するように構成され配列されることを特徴とする請求項1の駆動装置。
【請求項3】
前記変動器がトロイダルレース形式であることを特徴とする請求項2の駆動装置。
【請求項4】
請求項2又は3の駆動装置であって、通常の作動中に一定のPTO速度を提供するように変動器の反力トルクを制御するためのコントローラを含むことを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
前記反力トルクが動力取り出し速度のフィードバックに基づき制御されることを特徴とする請求項4の駆動装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかの駆動装置であって、コントローラを含み、該コントローラが、動力取り出しシャフトに適用される過剰な負荷に応答して、反力トルクがコントローラにより制限され、それに適用される負荷による動力取り出しシャフトの減速が駆動比の変化により自動的に調節されるように、過剰なエンジン負荷を回避すべく反力トルクを制限することを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
前記変動器及びPTOに作動的に結合された遊星シャント歯車を含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかの駆動装置。
【請求項8】
前記シャント歯車のそれぞれの入力は、ある変動器比において2つのシャント入力が互いに相殺し合い、運動する入力シャフトに機械的に結合されているにも拘らずPTOシャフトを静止にするような歯車中立状態を提供するように、変動器及び固定比の歯車チェーンを介して入力シャフトに結合されることを特徴とする請求項7の駆動装置。
【請求項9】
前記変動器の反力トルクをゼロに設定して、入力シャフトに機械的に結合されているにも拘らずPTOシャフトを惰走させることのできるような擬似中立状態を提供する手段を有することを特徴とする請求項2乃至8のいずれかの駆動装置。
【請求項10】
前記PTOシャフトにおいて駆動トルクを生じさせるように変動器の反力トルクを上昇させることにより擬似中立状態からのPTOの発進を制御する手段を含み、変動器がその駆動比の変更によるPTOシャフトの結果としての加速を自動的に調節することを特徴とする請求項9の駆動装置。
【請求項11】
請求項10の駆動装置であって、与えられた反力トルク及びエンジン速度に対して、出力トルクが増大する出力速度で減少するように、構成され配列されることを特徴とする駆動装置。
【請求項12】
前記入力シャフトとPTOシャフトとの間での作動的な結合を形成及び破棄するように配列されたクラッチを含むことを特徴とする請求項2乃至11のいずれかの駆動装置。
【請求項13】
前記変動器の反力トルク及びクラッチの双方が液圧的に制御され、同じ液圧圧力をこれら双方に供給する手段を設けたことを特徴とする請求項12の駆動装置。
【請求項14】
自動車動力取り出し装置(PTO)を制御する方法であって、PTOが、動力被駆動器具に結合されるように配列されそれに適するPTOシャフトと、回転駆動機に結合されるように配列されそれに適する入力シャフトと、入力シャフトとPTOシャフトの間で駆動力を伝達するように入力シャフトとPTOシャフトの間を結合する連続可変トランスミッションとを含むものであり、
前記方法が、トランスミッションの反力トルクを規制する工程と、PTOシャフトに関連する慣性負荷に対する結果としてのトランスミッション出力トルクの適用に由来する出力速度の変化に従ってトランスミッション比の変更を許容する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14の方法であって、回転変動器入力及び回転変動器出力を有し、その入力及び出力におけるトルクの合計として規定される反力トルクを規制するように構成され配列された比変更ユニット(「変動器」)を前記トランスミッションに組み込む工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記変動器の反力トルクをゼロに設定することにより擬似中立状態を提供する工程を含むことを特徴とする請求項15の方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、擬似中立状態が使用者の要求に応答して提供されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれかの方法であって、
PTOシャフトにおいて駆動トルクを生じさせるように反力トルクを上昇させることにより、反力トルクがゼロに設定されるような静的状態から、PTOに結合された器具を発進させる工程と、
PTOシャフトの結果としての加速を調節するように変動器の駆動比を自動的に変更できるようにする工程と、を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−543643(P2008−543643A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516256(P2008−516256)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061769
【国際公開番号】WO2006/133987
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(504290859)トロトラク・(ディヴェロプメント)・リミテッド (33)
【Fターム(参考)】