説明

自動車のドア構造

【課題】 自動車の軽量化と組立作業性の向上を図ることができ、かつ、シール性に優れたドア構造を提供する。
【解決手段】
自動車のベルトラインより下部分であるドア本体部Dに、ベルトラインより上部分であるピラー部Pとルーフ部Rが一体化されたドアにおいて、少なくとも、車外側に位置するアウターパネル2と室内側に位置するインナーパネルの組合せで構成し、アウターパネル2を合成樹脂材で形成する。アウターパネル2のルーフ部Rとピラー部Pに、グラスラン10を形成する合成樹脂製のアウターシールを一体化する。また、アウターパネル2のベルトライン部Lに、ウエザーストリップ20を形成する合成樹脂製のアウターリップを一体化する。さらに、アウターシールとアウターリップを連続的に一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化や遮音性等の向上を図った自動車のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1乃至図5を参照して説明する。従来の自動車のドア構造30は、通常、車外側に位置する金属製のアウターパネル31と、室内側に位置する同じく金属製のインナーパネル32を組合わせて構成されている。また、このドア構造30には、ベルトラインa−aより下部分であるドア本体部Dに、ベルトラインより上部分であるピラー部Pとルーフ部Rを一体化したもの(いわゆるパネル型ドア)が多く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうしたドア構造30のルーフ部Rおよびピラー部Pには、底壁部33cから立設され、ドアガラス5の車外側面に摺接するアウターシール33aと室内側面に摺接するインナーシール33bを備えたグラスラン33が取付けられている。
【0004】
また、ベルトライン部Lには、ドアガラス5の車外側面に摺接するアウターリップ34aと室内側面に摺接するインナーリップ34bを備えたウエザーストリップ34が取付けられている。また、ドア本体内部においてはピラー部Pから連続してドアガラス5をガイドするようにグラスラン33が取付けられている。例えばコ字状のサッシュが設置され、これにグラスランが組付けられているか、又はグラスラン自体にサッシュ相当の剛性を持たせることで、ドアガラス5をスムーズに昇降することができている。
【0005】
このグラスラン33とウエザーストリップ34によって、ドアガラス5との間のシール性を確保して水の侵入を防止すると共に、遮音性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−329768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した従来のドア構造30には解決すべき問題がある。すなわち、近年、燃費向上を目的として自動車の軽量化が積極的に進められており、その目的を達成するために他の部材同様にドア構造30の軽量化も求められている。
【0008】
また、従来のドア構造30は、そのルーフ部Rとピラー部Pにグラスラン33を取付ける作業と、ベルトライン部Lにウエザーストリップ34を取付ける作業を必要としている。こうした取付けはいずれも手作業で行われるため、手間が掛かり、自動車の組立作業を効率化させる上での大きな問題となっている。
【0009】
さらに、グラスラン33とウエザーストリップ34はそれぞれ別体成形された後、ドアパネル(アウターパネル31とインナーパネル32)に取付けられている。従って、両者の間には隙間Gや段差が形成され、そこから水や音が侵入してしまうといった問題もある。
【0010】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、自動車の軽量化と組立作業性の向上を図ることができ、かつ、シール性に優れたドア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1および図6乃至図10を参照して説明する。請求項1に記載の自動車のドア構造1は、自動車のベルトラインより下部分であるドア本体部Dに、前記ベルトラインより上部分であるピラー部Pとルーフ部Rが一体化され、少なくとも、車外側に位置するアウターパネル2と室内側に位置するインナーパネル3の組合せで構成されたものである。
【0012】
そして、前記アウターパネル2が合成樹脂材で形成されている。また、前記アウターパネル2のルーフ部Rとピラー部Pに、グラスラン10を形成する合成樹脂製のアウターシール11が一体化されている。また、前記アウターパネル2のベルトライン部Lに、ウエザーストリップ20を形成する合成樹脂製のアウターリップ21が一体化されている。さらに、前記アウターシール11とアウターリップ21が連続的に一体化されている。
【0013】
なお、上記「一体化」には、各部材を別体成形した後に、接着テープ、接着剤あるいは溶着手段などによって固定することを含む。
【0014】
請求項2に記載の自動車のドア構造1は、自動車のベルトラインより下部分であるドア本体部Dに、前記ベルトラインより上部分であるピラー部Pとルーフ部Rが一体成形され、少なくとも、車外側に位置するアウターパネル2と室内側に位置するインナーパネル3の組合せで構成されている。
【0015】
そして、前記アウターパネル2が硬質の合成樹脂材で形成されている。また、前記アウターパネル2のルーフ部Rとピラー部Pに、グラスラン10を形成する軟質合成樹脂製のアウターシール11が一体成形されている。さらに、前記アウターパネル2のベルトライン部Lに、ウエザーストリップ20を形成する軟質合成樹脂製のアウターリップ21が一体成形され、前記アウターシール11とアウターリップ21が連続的に一体成形されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の自動車のドア構造1は、アウターパネル2が合成樹脂材で形成されているので、従来の金属製と比較して、大幅な軽量化を図ることができる。これにより、このドア構造1を組付ける自動車の軽量化に貢献することができる。
【0017】
また、アウターパネル2のルーフ部Rとピラー部Pにグラスラン10のアウターシール11を一体化し、ベルトライン部Lにウエザーストリップ20のアウターリップ21を一体化しているので、グラスラン10およびウエザーストリップ20の取付け作業を簡素化することができる。これにより、自動車の組立作業の効率化を図ることができる。
【0018】
請求項2に記載の自動車のドア構造1は、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮することができる。また、アウターパネル2を硬質の合成樹脂材で形成しているので、アウターパネル2としての十分な剛性を与えることができる。
【0019】
また、グラスラン10のアウターシール11とウエザーストリップ20のアウターリップ21を軟質合成樹脂製としているので、ドアガラス5に密着させることができる。これにより、シール性を高めて、水の侵入を効果的に防ぐと共に、遮音性の向上を図ることができる。
【0020】
さらに、グラスラン10のアウターシール11とウエザーストリップ20のアウターリップ21を連続的に一体成形しているので、両者の間(接続部J)に隙間や段差を生じさせない。これによって、シール性の向上を図り、水の侵入をさらに確実に防止すると共に、遮音性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ドア構造を備えた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るドア構造を示す側面図である。
【図3】従来例に係るドア構造を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図4】従来例に係るドア構造を示すもので、図1のY−Y線断面図である。
【図5】従来例に係るドア構造を示すもので、図1のZ−Z線断面図である。
【図6】本発明に係るドア構造の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明に係るドア構造の実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図8】本発明に係るドア構造の実施形態を示すもので、図1のY−Y線断面図である。
【図9】本発明に係るドア構造の実施形態を示すもので、図1のZ−Z線断面図である。
【図10】本発明に係るドア構造の実施形態におけるアウターシールとアウターリップとの接続状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る自動車のドア構造1を、図1および図6乃至図10に示す。これは、自動車のベルトラインa−aより下部分であるドア本体部Dに、ベルトラインa−aより上部分であるピラー部Pとルーフ部Rが一体成形され、少なくとも、車外側に位置するアウターパネル2と室内側に位置するインナーパネル3の組合せで構成されたドア構造1である。
【0023】
こうした構成において、ドア本体部Dにおけるアウターパネル2の室内側には金属製又は合成樹脂製の補強パネル4を設け、アウターパネル2の上端部をこの補強パネル4の上端部に組付けて、アウターパネル2を補強している(図9参照)。また、インナーパネル3は金属製とし、その取付部にボディパネル6に弾接するドアウエザーストリップ7を、クリップ8で取付けている(図7,8)。
【0024】
このドア構造1は、アウターパネル2が硬質の合成樹脂材で形成されている。また、アウターパネル2のルーフ部Rとピラー部Pの窓側側端に、グラスラン10を形成する軟質合成樹脂製のアウターシール11が一体成形されている(図7,8)。さらに、アウターパネル2のベルトライン部Lの窓側側端に、ウエザーストリップ20を形成する軟質合成樹脂製のアウターリップ21が、支持部23を介して一体成形されている(図9)。
【0025】
このように、アウターパネル2とアウターシール11およびアウターリップ21を一体成形すると共に、アウターシール11とアウターリップ21を長手方向に連続的に一体成形して接続部Jを設けることによって、窓開口部に沿って連続した矩形状とし、各部材間に隙間や段差を生じさせることがない(図6参照)。これにより、シール性をさらに高めて、水や音の侵入を効果的に防止することができる。
【0026】
なお、本実施形態において、ルーフ部Rにおけるアウターシール11の肉厚はアウターパネル2の肉厚の数分の一程度に設定して、ドアガラス5に摺接した際に十分に弾性変形できるように形成している。また、ピラー部Pにおけるアウターシール11は、先端部に向かって先細り状としており、ドアガラス5に摺接した際に柔軟に弾性変形できるように形成している。
【0027】
なお、本実施形態におけるグラスラン10は、このアウターパネル2に一体成形されたアウターシール11と、当該アウターシール11とは別体成形され、インナーパネル3に、取付基部13を介して取付けられるインナーシール12とで構成される。
【0028】
従って、このグラスラン10には、従来技術のグラスラン33のような底壁部33cが存在しない。これにより、閉じられたドアガラス5が底壁部に突き当たって発生する底付き音の発生を未然に防止することができる。また、底壁部が存在しないので、グラスラン10およびそれが取付けられる自動車の軽量化をさらに促進することができる。しかし、さらなるシール性(遮音性)を高めるには、底壁部を設置することが望ましく、その場合はアウターシール11と同様にアウターパネル2の適宜位置から突出して設けられるか、もしくはインナーシール12取付基部13から突出して設けることが可能である。
【0029】
また、アウターパネル2のベルトライン部Lに一体成形されたアウターリップ21は、上下に二つ設け、それぞれの肉厚をアウターパネル2とほぼ等しく設定している。なお、本実施形態におけるウエザーストリップ20は、このアウターリップ21と、それとは別体成形され、把持部24を介してインナーパネル3に取付けられたインナーリップ22とで構成される。インナーリップ22の肉厚はアウターリップ21より大きく設定し、ドアガラス5を車外側へ押圧するように形成している。
【0030】
本実施形態に係るドア構造1は、アウターパネル2が合成樹脂材で形成されているので、金属製の場合と比較して、大幅な軽量化を図ることができる。これにより、当該ドア構造1が取付けられる自動車の軽量化を図ることができる。
【0031】
また、このドア構造1は、少なくともベルトラインa−aを含めこれよりも高い車高位置の車外側のドアガラスに接触するシール部材はアウターパネル2に備わっているため、アウターパネル2とインナーパネル3を組付けることによって、グラスラン10のアウターシール11とウエザーストリップ20のアウターリップ21を車体に組付けることができる。また、グラスラン10のインナーシール12とウエザーストリップ20のインナーリップ22は、それぞれインナーパネル3のみに装着することによって取付けることができる。従って、自動車の組立作業の大幅な簡素化を図ることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、アウターパネル2を合成樹脂で成形しているためアウターシール11およびアウターリップ21をアウターパネル2にその成形時に一体成形によって一体化しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、アウターシール11とアウターリップ21との一体物をアウターパネル2と別体成形した後、アウターパネル2に接着テープや接着剤などによって取付けて一体化することもできる。また、アウターシール11とアウターリップ21をそれぞれ別個に、又はそれら自体を複数に分割して成形した後、それぞれをアウターパネル2に接着テープなどで取付けることもできる。
【0033】
また、上記実施形態では、アウターパネル2と一体成形したアウターシール11とアウターリップ21を、長手方向に連続的に一体成形しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、アウターシール11とアウターリップ21を相互に独立した状態で形成し、両者の長手方向の端部同士を接着テープなどで接続して一体化することもできる。
【0034】
また、グラスラン10のインナーシール12とウエザーストリップ20のインナーリップ22とを一体成形して窓開口部に沿った矩形状とすることもできる。これにより、両者の間に隙間や段差が形成されるのを防ぐことができるので、水や音の侵入をさらに効果的に防止することができる。そしてベルトラインa−aより下部分であるドア本体部Dにおいては、従来と同様な構造が取られ、ベルトラインa−aよりも車高位置の高い部位におけるグラスラン相当部品とは連続しないもののドアガラスをスムーズに昇降することを可能としている。
【符号の説明】
【0035】
1 ドア構造
2 アウターパネル
3 インナーパネル
4 補強パネル
5 ドアガラス
6 ボディパネル
7 ドアウエザーストリップ
8 クリップ
10 グラスラン
11 アウターシール
12 インナーシール
13 取付基部
20 ウエザーストリップ
21 アウターリップ
21a 上リップ部
21b 下リップ部
22 インナーリップ
23 支持部
24 把持部
30 ドア構造
31 アウターパネル
32 インナーパネル
33 グラスラン
33a アウターシール
33b インナーシール
33c 底壁部
34 ウエザーストリップ
34a アウターリップ
34b インナーリップ
D ドア本体部
J 接続部
G 隙間
L ベルトライン部
P ピラー部
R ルーフ部
S サッシュ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のベルトラインより下部分であるドア本体部(D)に,前記ベルトラインより上部分であるピラー部(P)とルーフ部(R)が一体化され,少なくとも,車外側に位置するアウターパネル(2)と室内側に位置するインナーパネル(3)の組合せで構成されたドア構造であって、前記アウターパネルが合成樹脂材で形成され、前記アウターパネルのルーフ部(R)とピラー部(P)に,グラスラン(10)を形成する合成樹脂製のアウターシール(11)が一体化され、前記アウターパネルのベルトライン部(L)に,ウエザーストリップ(20)を形成する合成樹脂製のアウターリップ(21)が一体化され、前記アウターシールとアウターリップが連続的に一体化されたことを特徴とする自動車のドア構造。
【請求項2】
自動車のベルトラインより下部分であるドア本体部(D)に,前記ベルトラインより上部分であるピラー部(P)とルーフ部(R)が一体成形され,少なくとも,車外側に位置するアウターパネル(2)と室内側に位置するインナーパネル(3)の組合せで構成されたドア構造であって、前記アウターパネルが硬質の合成樹脂材で形成され、前記アウターパネルのルーフ部(R)とピラー部(P)に,グラスラン(10)を形成する軟質合成樹脂製のアウターシール(11)が一体成形され、前記アウターパネルのベルトライン部(L)に,ウエザーストリップ(20)を形成する軟質合成樹脂製のアウターリップ(21)が一体成形され、前記アウターシールとアウターリップが連続的に一体成形されたことを特徴とする自動車のドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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