説明

自動車のバッテリートレイ

【課題】金属製の外枠フレームと、その内側に配置される樹脂製のシールドフレームからなる自動車のバッテリートレイ。バッテリーの取り付けに支障のない形でシールドフレームの防水性を確保し、同時にバッテリー取り付けのための工数を減らしてコスト低減を図る。
【解決手段】外枠フレーム1は金属製で、矩形状に配置された外枠3と、外枠3の底を塞ぐ底板と、底板の上面に配置され外枠3内を4個の矩形状の領域に仕切る仕切枠を有する。シールドフレーム2はプラスチックの射出成形体で、外枠3に沿って形成された周側壁8と、外枠フレーム1底板及び仕切枠の上を被う底壁9を有し、底壁9の仕切部13(仕切枠を被う部分)に、バッテリー固定用のボルト頭部又はナットが挿入固定される複数個のボス部11が上方に突出して一体成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバッテリーを収容固定するバッテリートレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製の外枠フレームと、その内側に配置されるシールドフレームからなるバッテリートレイが記載されている。シールドフレームは周側壁とその内部を複数の領域に仕切る格子状の中間フレームからなり、全体が樹脂(繊維強化プラスチック)で一体成形されたもので、前記各領域にバッテリーを収容するようになっている。
このような2層構造のバッテリートレイは、内側のシールドフレームによりトレイ底部の防水性が確保されることから、次のような利点があるとされている。
金属製の外枠フレームに防水性を持たせる必要がないため、外枠フレームの底を塞ぐ底板が不要であり、仮に底板を設ける場合でも外枠フレームと底板の全周溶接が不要となり、溶接作業工数を削減できる。外枠フレーム自体の溶接も、防水性が不要であるため簡素で済む。また溶接作業工数が減るため、溶接時の熱歪みによる外枠フレームの変形を抑制できる。
【0003】
一方、この種のバッテリートレイにおいて、シールドフレーム内に収容するバッテリーは、シールドフレームに形成した取付穴を通して外枠フレームにボルト締結される。このため、取付穴を形成する工程が別途必要なだけでなく、樹脂の一体成形によって得られたシールドフレームの防水性が損なわれ、また、外枠フレームの前記取付穴に対応する箇所にボルト締結用の座を形成する工程も必要となる。
特許文献2,3のバッテリートレイでも、樹脂製のシールドフレームに取付穴を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開10−6785号公報
【特許文献2】特開5-193366号公報
【特許文献3】特開5-193376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属製の外枠フレームと、その内側に配置される樹脂製のシールドフレームからなる自動車のバッテリートレイにおいて、バッテリーの取り付けに支障のない形でシールドフレームの防水性を確保すること、同時にバッテリー取り付けのための工数を減らしてコスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動車のバッテリートレイは、矩形状に配置された外枠と、前記外枠の底を塞ぐ底板と、前記底板の上面に配置され前記外枠内を複数個の矩形状の領域に仕切る仕切枠を有する金属製の外枠フレーム、及び前記外枠フレームの内部に嵌入するシールドフレームからなり、前記シールドフレームはプラスチックの射出成形体で、前記外枠の内側面形状に沿って形成された周側壁と、前記底板及び仕切枠のなす凹凸に沿って形成され該底板及び仕切枠の上を被う底壁を有し、前記底壁の前記仕切枠を被う部分に、バッテリー固定用のボルト頭部又はナットが挿入固定される複数個のボス部が上方に突出して成形されていることを特徴とする。
前記外枠フレームの外枠と仕切枠がアルミニウム合金中空押出形材からなり、前記底板がアルミニウム合金板からなることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るバッテリートレイは、シールドフレームにバッテリーの取付穴を開ける必要がないため防水性が損なわれることがなく、また、シールドフレームにボルト頭部又はナットが挿入固定されるボスが一体成形されているため、バッテリーの取り付けに支障は生じない。このボスは、シールドフレームの射出成形時に周側壁及び底壁と同時に成形することができるから、バッテリーの取り付けを可能とするために余分な工程が必要でなく、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るバッテリートレイの斜視図である。
【図2】同バッテリートレイの外枠フレームの斜視図である。
【図3】同バッテリートレイの外枠フレームの底面側斜視図である
【図4】同バッテリートレイのシールドフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係るバッテリートレイについて説明する。
図1にバッテリートレイを示す。このバッテリートレイは、外枠フレーム1と、外枠フレーム1の内部に密着状態で嵌入するシールドフレーム2からなる。外枠フレーム1とシールドフレーム2は、いずれもいわゆるトレイ形状を有する。
外枠フレーム1は、図2,3に示すように、矩形状に配置された外枠3と、外枠3の底を塞ぐ底板4と、底板4の上面側に配置され外枠3内を均等な複数個(この例では4個)の矩形状の領域に仕切る仕切枠5と、外枠3の底面側に形成した切り欠きに嵌められ、外枠3外に突出する取付部材6と、取付部材6及び底板4の下面側に配置された補強部材7からなる。これらの部材はアーク溶接やスポット溶接等の接合手段により組み付けられている。
【0010】
外枠3は、自動車の車体幅方向に向く前後フレーム3a,3bと車体前後方向に向く左右フレーム3c,3dからなる。各フレームはいずれもアルミニウム合金中空押出材からなり、コーナーにおいて互いに接合されている。
仕切枠5は全体として格子状をなし、左右フレーム3c,3dに沿って配置された端部仕切枠5a,5b(左右フレーム3cに沿って配置された端部仕切枠5aは図示されず)と、十字形に組み付けられた中間仕切枠5c〜5eからなり、各仕切枠はいずれもアルミニウム合金中空押出材からなる。端部仕切枠5a,5bは、側面が左右フレーム3c,3dに、両端が前後フレーム3a,3bにそれぞれ接合されている。中間仕切枠5cは両端が端部仕切壁5a,5bに、中間仕切枠5d,5eは両端が前後フレーム3a,3bと中間仕切枠5cにそれぞれ接合されている。
【0011】
取付部材6は、アルミニウム合金中空押出材からなり、左右フレーム3c,3dの底面側に形成した切り欠きに底面が面一になるように嵌められ、左右フレーム3c,3dに接合されている。
補強部材7は、アルミニウム合金中空押出材からなり、両端が左右の取付部材6の底面に接合されている。
底板4は、アルミニウム合金板からなり、外枠3及び補強部材7に、必要に応じて仕切枠5にも接合されている。
【0012】
外枠フレーム1には防水性が必要とされないから、各部材の溶接は全周溶接でなく、強度的に必要な箇所のみの溶接で済ませることができる。
外枠フレーム1において、前後フレーム3a,3b、中間仕切枠5c、取付部材6及び補強部材7が車体幅方向に平行に配置され、左右フレーム3c,3d、端部仕切枠5a,5b及び中間仕切壁5d,5eが車体前後方向に平行に配置され、これらはいずれもアルミニウム合金中空押出材からなるから、この外枠フレーム1は剛性、強度が高く、車体前後方向及び車体幅方向の衝突に対する耐圧壊性も高い。
【0013】
シールドフレーム2(図4参照)はプラスチック製で、外枠3の内側面形状に沿って形成された矩形状の周側壁8と、周側壁8の底を塞ぐ底壁9、及び底壁9の上面に突出して成形された複数個のボス部11からなり、全体が射出成形体で一体成形されたものである。
底壁9は、外枠フレーム1の底板4と仕切枠5のなす凹凸に沿って形成され、全体としてほぼ均一の肉厚を有するシート状の部材であり、底壁9の上下面側とも底板4と仕切枠5のなす凹凸を反映した形状に成形されている。底壁9は、底板4を被う底板部12と仕切枠5を被う仕切部13からなり、上面側から見れば底板部12が凹部、仕切部13が凸部となっていて、仕切部13は底板部12より上方に膨出し、そこに外枠フレーム1の仕切枠5が嵌入する。仕切部13は、外枠フレーム1の仕切枠5の形状を反映した形状とされ、全体として格子状をなし、周側壁8内を複数個の矩形状の領域に仕切っている。
【0014】
底壁9の仕切部13に、複数個のボス部11が上方に突出して一体成形されている。ボス部11は、バッテリー固定用のボルトの頭部又はナットが挿入保持される部材で、この例では、両側壁11a,14bと、上壁11c、及び中壁11dからなり、これら4壁に囲まれるボス11eに前記ボルトの頭部又はナットが嵌め入れられ、プラスチックの弾性によりその位置に保持される。11fはボルトの軸部が入る穴である。
【0015】
本発明に係るバッテリートレイは、強度及び剛性は主として外枠フレーム1が担い、シールドフレーム2は主として防水性を担う。そして外枠フレーム1が底板4を有することもあり、シールドフレーム2自体に高い強度及び剛性は特に必要とされない。従って、シールドフレーム2のプラスチック材料は、通常運転時の防水性と衝突時の変形による耐割れ性(衝突時の防水性)を中心に考慮して選択すればよく、射出成形に用いられる汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック材料を適宜用いることができる。具体的には例えばポリプロピレン等を用いることができる。なお、特許文献1のバッテリートレイでは、シールドフレーム自体が高い強度及び剛性を担っており、そのためシールドフレームを繊維強化プラスチックで成形している。
【0016】
シールドフレーム2は、外枠フレーム1内に挿入され、必要に応じて接着剤等により外枠フレーム1に対し固定される。
バッテリーは、シールドフレーム2の格子状の仕切部13内に載置され、シールドフレーム2に対しボルト締結される。ボルト締結に際し、ボス部14に保持されたボルト又はナットが利用できるため、締結作業を容易に進めることができる。ボス部14はシールドフレーム2の射出成形時に同時に成形でき、また、シールドフレーム2にボルト締結のための取付穴等を形成する必要がないため、工程数を削減でき、かつシールドフレーム2の防水性が損なわれることがない。
【0017】
なお、上記の例では、仕切枠5により外枠3内を4個の領域に分割したが、必要に応じて、より少数の領域(特許文献1では3個の領域)に分割し、あるいは特許文献2,3のように、より多数の領域に分割することもできる。
【符号の説明】
【0018】
1 外枠フレーム
2 シールドフレーム
3 外枠
4 底板
5 仕切枠
6 取付部材
7 補強部材
8 周側壁
9 底壁
11 ボス部
12 底板部
13 仕切部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状に配置された外枠と、前記外枠の底を塞ぐ底板と、前記底板の上面に配置され前記外枠内を複数個の矩形状の領域に仕切る仕切枠を有する金属製の外枠フレーム、及び前記外枠フレームの内部に嵌入するシールドフレームからなり、前記シールドフレームはプラスチックの射出成形体であり、前記外枠の内側面形状に沿って形成された周側壁と、前記底板及び仕切枠のなす凹凸に沿って形成され該底板及び仕切枠の上を被う底壁を有し、前記底壁の前記仕切枠を被う部分に、バッテリー固定用のボルトの頭部又はナットが挿入固定される複数個のボス部が上方に突出して一体成形されていることを特徴とする自動車のバッテリートレイ。
【請求項2】
前記外枠フレームの外枠と仕切枠がアルミニウム合金中空押出形材からなり、前記底板がアルミニウム合金板からなることを特徴とする請求項1に記載された自動車のバッテリートレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−255705(P2011−255705A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129401(P2010−129401)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】