説明

自動車のフロントガラスの着霜防止方法および着霜防止装置

【課題】 着霜現象の原因となる結露の発生を防止することによって結果的に着霜現象を防止することができる自動車のフロントガラスの着霜防止方法および着霜防止装置を提供する。
【解決手段】 車両のメインキーがOFFにされ、エンジンが停止していることを前提条件として、照度センサS4またはタイマによって結露が発生する夜間または発生する時間帯を検出しまたは設定しておき、この時間帯に、フロントガラス11の室内側面に、外気、エンジンルーム空気、室内空気のいずれかを吹き付けて、結露発生の原因となるフロントガラス温度と環境温度との温度差を解消する。このような着霜防止方法は、ダッシュボード18上に配置するダクトファンユニット21その制御回路による簡単な着霜防止装置20として提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラスの着霜防止方法および着霜防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自家用車通勤を利用する勤め人にとって、出勤時間帯における自動車のフロントガラスにおける着霜現象は、即時に解消することができず、そのまま運転開始すれば交通事故誘発の原因ともなりかねない極めて深刻かつ苛立たしい気象現象である。
【0003】
自動車のフロントガラスにおける着霜現象は、夜間から明け方にかけてフロントガラスに生じた結露による水分が、明け方近くの放射冷却現象によって、特有の繊細な成長模様を伴う氷の結晶へと態様変化することによって形成される。フロントガラスに着霜が発生した場合は、この繊細な成長模様によって光が乱反射される結果、自動車の運転に必要な前方視界が略完全に失われる。
【0004】
フロントガラスにおける着霜の態様は、着霜の程度によって異なる。軽微な程度の着霜は、フロントガラスの周辺部を除くガラス面全般に薄膜状に生じ、フロントガラス下辺の待機位置に停止していたワイパーは、正常に作動することができる。従来、この程度の着霜に対しては、一般的には、エンジンを暖気運転し、エアコンのデフロスタが有効に作動するのを待ってワイパーを作動させることによって、フロントガラスの下辺側から徐々に着霜を削り取るようにして除去することができる。この間の所要時間は、そのときの外気温にもよるが、通常6分ないし8分程度である。この所要時間が長いか短いかについては、基準となる時間指標が存在しないため言及することはできないものの、短いと感じる人は皆無に近いと思われる。
【0005】
一方、重度の着霜は、フロントガラス全体に結露の流下模様が混ざった圧膜状に生じ、ワイパーは、ガラス面から流下した大量の結露によってフロントガラスに凍結された状態となって全く作動することができない。従来、このような態様の着霜に対しては、寒冷地仕様の車両において、ワイパーの待機位置にヒータを貼着する対策が採られている。この場合は、エンジンを暖気運転するとともにヒータに通電しながらエアコンのデフロスタが有効に作動するのを待ち、ワイパーが作動可能となった時点で、ワイパーによって着霜を削り取るようにして除去することができる。この間の所要時間は、ヒータを備える寒冷地仕様車で15分程度、ヒータを備えない一般仕様車で20分程度である。
【0006】
いずれの態様の着霜においても、これを十分に除去することなく、つまり前方視界が不十分なまま運転を開始することは、重大な交通事故に直結する極めて危険な行為であるが、自動車のフロントガラスにおける翌朝の着霜状態が必ずしも予測できないこともあって、着霜を十分に除去することなく運転を開始するマイカー通勤者が少なからずいることは、想像に難くない。
【0007】
すなわち、自動車のフロントガラスにおける着霜は、エアコンのデフロスタモードの利用や一部の寒冷地仕様車両に備えられている凍結防止ヒータの併用によって使用時間後に除去することは可能ではある。しかし、これによって出勤を急ぐマイカー通勤者の不便が解消されているとは言えず、フロントガラスにおける着霜問題は、十分に視界を確保することなく運転を開始する者が何時現れても不思議とは言えない日常的危険を内包している。このことは、自動車産業分野および関連機器産業分野においても認識されており、上記寒冷地仕様車のヒータやデフロスタのほかに、各種の対策提案がなされている(下記、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−17913号公報
【特許文献2】特開2004−189155号公報
【特許文献3】特開2002−105915号公報
【特許文献4】特許第4382870号公報
【特許文献5】特開平8−209637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、最終的には最小限のエネルギ消費量で自動車のフロントガラスに着霜現象が生じることを未然に防止することを目的とする。この目的においては、上記従来技術のような着霜現象が生じてからの対症療法的な対応では足りず、着霜現象が生じることのメカニズムを解明しての原因療法的な対応の仕方が必要となる。なぜなら、液相である水がフロントガラスに厚く堆積することはありえないが、固相である霜は、時間の経過とともに厚く成長するのであり、したがって、合理的な方法で液相の段階で着霜を防止しえるのであれば、その防止に要するエネルギ消費量は、生じた着霜の除去に要するエネルギ消費量を大幅に下回るものとできる可能性がある。
【0010】
本発明は、霜の前態である水分がどのような経路でフロントガラスに到来するのかを解明し、この水分を除去することを通じてフロントガラスにおける着霜現象を防止するという着霜防止策を提供するものである。
【0011】
水分の到来経路に関し、降雨による雨滴については、上空の低高度に雨雲が存在し、放射冷却現象が起きる可能性は極めて低いことにより、これが霜の原因になることはないと言える。また、降雪による雪の結晶がフロントガラスにそのまま堆積すれば積雪となり、これは、ワイパーを作動させることにより簡単に除去できる。
【0012】
また、降雪による雪がフロントガラスの熱によって部分的に溶け、これが明け方の冷え込みによって凍結した場合、および、さらに、その上に積雪があった場合には、フロントガラス上に水滴形の氷粒を含んだ特有の氷層ないし氷雪層が形成され、これらは、着霜と同様に即時に除去することが難しい態様のものであるが、経験則的にこのような態様の出現頻度は低く、本発明の扱う対象ではない。
【0013】
残る可能性は、結露に由来する水分である。自動車のフロントガラスにおける着霜現象が晴天時の無風、微風、弱風条件下という結露発生の条件と同一の気象条件下で頻発することや、着霜の成長模様等の観察から、着霜は、フロントガラスの存在した水分が氷結したものではなく、フロントガラスに事後的に生じた水分、つまり結露が氷結したものであると言うことができる。したがって、着霜を予防するためには結露を予防すればよいのである。
【0014】
結露の予防に関しては、当社は永年、道路のカーブミラーの技術分野において独自の研究開発を進め、いくつかの結論を得ている(特許文献3,4,5参照)。この研究開発の内容は、カーブミラーの鏡面温度を露点以上に維持する手段であって、カーブミラーに適用することが最適であるものの模索であるということができる。すなわち、結露を防止するには、対象物体の表面温度を露点以上に維持することが基本となるのである。そして、そのための手段は、対称物体の表面温度とその周囲に存在する空気の温度との間に温度差ができるだけ存在しないようにすることができる手段であることが基本となる。
【0015】
本発明は、上記研究成果に基づき、自動車のフロントガラスの着霜問題に関し、直接に着霜を防止するのではなく、あくまでもフロントガラスにおける結露を防止することを通じてのエネルギ消費の少ない自動車のフロントガラスの着霜防止方法、およびそのための手段であって、車両の所有者において簡単に自己車両にセットすることができる自動車のフロントガラスの着霜防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明は、次のような構成を採用する。
【0017】
(解決手段1)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法は、日没から夜明けまでの時刻範囲内において車両のメインキーがOFF状態である際に、外気とエンジンルーム空気と室内空気とのいずれかの空気をフロントガラスの室内側面に連続的にまたは間欠的に吹き付けることによってフロントガラスの結露発生を防止または発生した結露を除去することを特徴とする。
【0018】
上記発明について説明する。日没から夜明けまでとは、日常的な気象の一般論として、結露が発生することがある時間範囲であり、メインキーがOFF状態であることの条件とともに、この発明が適用される条件を示している。なお、メインキーがOFF状態であるとは、車両のエンジンが停止していることをも意味する。また、夜間においては、エンジンが停止した後の一定期間を除き、外気とエンジンルーム空気と室内空気との間には、顕著な温度差がないことが普通である。そこで、この3箇所に存在するいずれかの空気をフロントガラスに吹き付けることによって、実質的にフロントガラスの温度と外気温とを同化させることができる。すなわち、外気温との温度差を発生メカニズムとする結露は、フロントガラスに発生しないこととなる。これによって、結露の固相化現象であるフロントガラスにおける着霜を未然に防止することができる。なお、空気をフロントガラスの室内側面に吹き付けることには、室内空気を対流または撹拌させて、室内の空気全体及び空気に触れる室内部材の熱容量全体を利用する趣旨である。また、間欠的に吹き付けるのは、それでフロントガラスの温度と外気温とを同化させることができる場合いには、必ずしも連続して吹きつける必要がないことを示し、省エネルギー化を意図するものである。
【0019】
(解決手段2)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法は、解決手段1に記載の発明を基本発明として、日没から夜明けまでの時刻範囲内において車両のメインキーがOFF状態である際に、外気温とエンジンルーム温度と室内温度とを比較し、室内温度より温度が高い箇所の空気をエアコンディショナ用のダクト内の開閉弁を切り替えて選択し、選択した空気をフロントガラスの室内側面に連続的にまたは間欠的に吹き付けることによってフロントガラスの結露発生を防止または発生した結露を除去することを特徴とする。
【0020】
上記発明について説明する。上記発明では、外気とエンジンルーム空気と室内空気とのうち、最も温度が高い箇所の空気を選択して利用することで結露防止効果を一層高める趣旨である。例えば、夜間に車を利用してエンジンルームの予熱が利用できる場合には、エンジンルームの暖気をフロントガラスに室内側面に吹き付けることによってフロントガラスの温度低下に時間的余裕を持たせることができるとともに、室内に熱を蓄熱しておくことができる。なお、暖気と寒気とが急速に入れ替わり、室内に暖気が取り残されているような場合には、当然に室内空気が選択されることとなる。
【0021】
(解決手段3)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法は、解決手段1または解決手段2に記載の発明を基本発明として、日没から夜明けまでの時刻範囲内であることを照度センサによって検出することを特徴とする。
【0022】
上記発明について説明する。日没から夜明けまでの時刻範囲内であることを照度センサによって検出することの理由は、日照時に結露が発生することは稀であることと、今日の車両の制御系には、照度センサが備わっていることが多く、この照度センサを利用して本発明を構成することができることに基づく。
【0023】
(解決手段4)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法は、解決手段1ないし解決手段3のいずれかに記載の発明を基本発明として、フロントガラスの室内側面に連続的にまたは間欠的に空気を吹付ける条件として、雨滴センサがフロントガラスの結露を検出することを含むことを特徴とする。
【0024】
上記発明について説明する。本発明の着霜防止方法は、原因となる結露の発生の蓋然性が高まる場合の諸条件に基づいて予測的に予防措置を講ずるものであるが、予測措置としての限界、すなわち現実には結露が発生しないかもしれない場合にも、空気を吹き付けるためのエネルギを消費する可能性がある。この点に関し、雨滴センサがフロントガラスの結露を検出すること条件とすることによって、無駄なエネルギ消費の可能性を完全に排除することができる。
【0025】
(解決手段5)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止装置は、ダッシュボード上に配置する少なくとも1基の電動ファンと、照度センサまたはタイマを備え車載電源を外部電源として電動ファンを駆動するファン制御回路とを備えてなり、この際のファン制御回路は、車両のメインキーがOFF状態であって照度センサが日没を検出した後夜明けを検出するまでの期間内またはタイマに予め設定された期間内であることを条件として電動ファンを連続的にまたは間欠的に駆動し、室内空気を撹拌することを特徴とする。
【0026】
上記発明について説明する。電動ファンは、ファン制御回路によって駆動される。ファン制御回路は、車両のメインキーがOFF状態であって、換言すれば、エンジンが停止している状態であって、結露が発生する蓋然性が認められる照度センサが日没を検出した後夜明けを検出するまでの期間内に限り、またはタイマに予め設定された期間内に限り電動ファンを駆動する。ここでタイマに予め設定される期間は、任意であるが、通常は、日没後から夜明けに至る期間内におけるさらに限られた期間であって、経験則的に結露が発生することの蓋然性が高いと判断される期間である。駆動された電動ファンは、ダッシュボード上において室内空気を撹拌することによって室内空気の温度とフロントガラスの温度とを同化させ、着霜の原因となる結露の発生を防止することができる。なお。結露は、外気温との温度差によって生じるのであるが、室温が外気温より低いことは稀であり、室温に同化されたフロントガラスの温度は、外気温を上回るのが通常である。
【0027】
(解決手段6)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止装置は、ダッシュボード上に配置する少なくとも1基の電動ファンと、充放電回路を伴う内蔵バッテリと、照度センサまたはタイマを備え内蔵バッテリを電源として電動ファンを駆動するファン制御回路とを備えてなり、この際の充放電回路は、電動ファンが駆動されていないことを条件として車載電源を電源として内蔵バッテリを充電し、ファン制御回路は、車両のメインキーがOFF状態であって照度センサが日没を検出した後夜明けを検出するまでの期間内またはタイマに予め設定された期間内であることを条件として電動ファンを連続的にまたは間欠的に駆動し、室内空気を撹拌することを特徴とする。
【0028】
上記発明について説明する。本発明の着霜防止装置と先に解決手段5として説明した着霜防止装置との違いは、本装置が充放電回路を伴う内蔵バッテリを備える点である。内蔵バッテリによって車載電源に依存することなく、また、車載電源に負担をかけることなく電動ファンを駆動することができる。なお、この内蔵バッテリは、電動ファンが駆動されていないこと、つまり電動ファンが駆動される条件から逆に換言すれば、車のエンジンが稼動している昼間時に車載電源を電源として充電されるのである。
【0029】
(解決手段7)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止装置は、解決手段5または解決手段6に記載の発明を基本発明として、電動ファンが、ダッシュボード上にフロントガラスの下縁部に沿って設置することが可能であって、設置した状態においてフロントガラスの下縁部に沿って上向きとなるスリット状の吹出口を形成したダクトの両端部の少なくとも一方の端部に電動ファンを吸い込み方向に向けて取り付けてなるダクトファンユニットとして構成されていることを特徴とする。
【0030】
上記発明について説明する。電動ファンがダクトファンユニットとして構成されている場合のダクトは、電動ファンの設置部材としての機能と電動ファンによって駆動される空気流の規制部材としての機能を有している。具体的に、ダクトを伴うことによって電動ファンをダッシュボード上に載せ置くように簡単に設置することができるとともに、その設置状態において電動ファンによって駆動された空気流をフロントガラスに対して効率的な態様に変換して吹き付けることができるのである。
【0031】
(解決手段8)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止装置は、解決手段7に記載の発明を基本発明として、前記ダクトが、ゴム系材料または軟質樹脂材料を素材とする可撓性材料から形成され、車両ごとのダッシュボードの形状およびフロントガラスの屈曲形状に応じて屈曲させることができることを特徴とする。
【0032】
上記発明について説明する。ダクトファンユニットを構成するダクト可撓性材料から形成するのは、利用者においてある程度自由にまげて使用することを可能にする趣旨である。これにより、設置の自由度と安定性およびフロントガラスの屈曲形状に対する適応性を高めることができる。
【0033】
(解決手段9)
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止装置は、解決手段5ないし解決手段8のいずれかに記載の発明を基本発明として、さらに、室内温度を検出する室内温度センサと、フロントガラスの温度を検出するガラス温度センサとを備え、そのファン制御回路は、検出された室内温度が零度以上であって、検出されたフロントガラスの温度を下回らないことを条件に前記電動ファンを駆動することを特徴とする。
【0034】
上記発明について説明する。上記発明は、室内温度を検出する室内温度センサと、フロントガラスの温度を検出するガラス温度センサとを付加することにより、電動ファンが無駄に駆動される機会をなくし、バッテリの不必要な消耗を防止する趣旨である。すなわち上記、検出された室内温度が零度以上であって、検出されたフロントガラスの温度を下回らないとの条件は、他の条件が成就していると仮定して、基本的に室内温度がフロントガラスの温度より高く、かつ室内温度が零度以上である場合に限り、電動ファンが駆動されることを意味している。その他の場合は、他の条件の結果にかかわらず電動ファンは駆動されないのである。例えば、室温が零度以上であっても、フロントガラス温度がさらに高いような場合には、結露発生の可能性がないため電動ファンは駆動されないのである。逆にフロントガラスの温度が室温より低い場合であっても、室温自体が零度未満であるときにも電動ファンは駆動されないのである。このような場合には、フロントガラスの温度を室温に同化させても着霜現象を防止することはできないからである。
【発明の効果】
【0035】
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法は、日没から夜明けまでの時刻範囲内において車両のエンジンが停止している際に、外気とエンジンルーム空気と室内空気とのいずれか1カ所または2カ所以上の空気をフロントガラスの室内側面に吹き付け、フロントガラスの温度とその周囲環境の空気の温度との温度差を解消することによって、温度差によって発生するフロントガラスの結露を未然に防止することができるので、結果的に、結露の固相化現象であるフロントガラスの着霜現象を防止することができる。
【0036】
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止装置は、ダッシュボード上に配置する少なくとも1基の電動ファンと、照度センサまたはタイマを備え車載電源を外部電源として、または、内蔵バッテリを電源として電動ファンを駆動するファン制御回路とを備え、ファン制御回路は、車両が停止していることを前提として結露が発生する夜間にダッシュボード上に配置された電動ファンを連続的にまたは間欠的に駆動することによって、室内空気を撹拌し、フロントガラスの温度を室内空気の温度と同化させ、フロントガラスの温度と周辺環境の温度との温度差によって生じる結露を防止することができるので、その結果として、結露の固相化現象であるフロントガラスの着霜現象を防止することができる。また、電動ファンとファン制御回路との極めて簡単な構成であることにより、車両の所有者において簡単に自己車両にセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の着霜防止方法の実施の形態を模式的に示す概念図である。
【図2】上記着霜防止方法の動作を示すブロック図である。
【図3】本発明の着霜防止装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】上記着霜防止装置の使用状態を示す斜視図である。
【図5】上記着霜防止装置の動作を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を引用しながら本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法および着霜防止装置の実施の形態を説明する。
【0039】
本発明の自動車のフロントガラスの着霜防止方法は、既成の車両10に通常使用されているエアコンディショナ部材および各種のセンサ類をそのまま流用して実施することができる(図1)。不足のセンサは、新規に設置することができる。
【0040】
具体的には、外気温センサS1、エンジンルーム温度センサS2、室内温度センサS3、照度センサS4、雨滴センサS5およびエアコンディショナのダクト装置14を流用し、本発明に固有の霜予防制御回路C1を組み込んで使用する(図2)。この際、外気温センサS1その他のセンサS2〜S5は、それぞれ適所に設置されているものとする。
【0041】
なお、本実施の形態におけるダクト装置14は、冷風熱風共用の電動ファンFと、ヒータコア16とクーラコア17を組み込んだ分岐ダクトと、分岐ダクトを通過する空気を切り替える開閉弁15,15…と、ダッシュボード18上に開口するデフロスタモードの吹出口Hとを備え、ヒータコア16またはクーラコア17に熱媒体を流さない場合には、単に外気を吸い込むことができる構成になっているものとする。また、本実施の形態においては、特に、ダクト装置14のエンジンルームR2側に、エンジンルームR2の空気を吸い込むための開閉弁15が増設されている。
【0042】
フロントガラスの着霜防止方法は、日没から夜明けまでの時刻範囲内において車両のメインキーがOFF状態であることを条件として霜予防制御回路C1に通電されることによって作動開始する(図2)。この際、日没から夜明けまでの時刻範囲内であるか否かの判断は、本実施の形態においては、照度センサS4によって行なうが、車両に備え付けの時計用のカレンダチップやタイマの信号を流用して昼夜の大まかな判別をしてもよい。また、車両のメインキーがOFF状態であることは、メインキーのOFFを条件として能動的または受動的に作動する例えばリレー類等に霜予防制御回路C1のスイッチを連動させておくことによって実行することができる。
【0043】
霜予防制御回路C1が作動することによって各種のセンサS1〜S5も同時に立ち上り、霜予防制御回路C1に検出信号が送られる。霜予防制御回路C1の機能は、各種のセンサS1〜S5からの信号を受けて設定された条件が成就するか否かを判別し、その結果に応じて電動ファンFおよびダクト装置14内の吸入空気を切り替えるための開閉弁15…に作動信号を発する内容である。
【0044】
吸入空気を切替えは、外気温センサS1、エンジンルーム温度センサS2、室内温度センサS3からの温度信号を比較し、霜予防制御回路C1は、最も温度の高い空気を選択するように開閉弁15…を制御し、電動ファンFを駆動する。ただし、本実施の形態では、さらに、雨滴センサS5からの結露情報が霜予防制御回路C1に入力されており、雨滴センサS5が現実に結露を検出したことも条件とされる。したがって、雨滴センサS5が結露を検出しないときには他の条件が成就しても電動ファンFは駆動されない。
【0045】
上記条件の成就によって最終的に、室内R1の空気とエンジンルームR2の空気と外気とのうちで最も温度の高い空気が開閉弁15…によって選択され、電動ファンFによってダッシュボード18の吹出口Hからフロントガラス11の室内側面に向けて連続的または、霜予防制御回路C1に対する設定によっては間欠的吹き付けられる(図1)。この結果、フロントガラス11の温度は、徐々に選択された最も温度の高い空気の気温に同化することとなる。すなわち、周辺環境の気温との関係においてフロントガラス11に新たに結露が発生しえない状態となり、既に発生していた結露も徐々に消失させることができる。
【0046】
なお、上記着霜防止方法における開閉弁15…に対する制御および雨滴センサS5による条件付けは、室内空気とエンジンルーム空気と外気の気温との間に有意の温度差がないことも稀ではなく、結露が検出される以前に電動ファンFを作動させておくことにも、予防措置としての大きな意義があるからである。さらに、結露の固相化を防ぐ観点から外気温を電動ファンFの駆動条件とすることもできる。例えば、気温が5℃ないし3℃以下であることを条件とすることによって、電動ファンFによるエネルギー消費を大きく削減することができる。
【0047】
本発明の着霜防止装置20は、ダッシュボード18上に配置するダクトファンユニット21と電源ユニット24とからなる(図3)。ダクトファンユニット21には、照度センサS4とガラス温度センサS6とが付属する。また、電源ユニット24には、内蔵バッテリBを電源とする充電回路26Aおよび放電回路26Bとからなるファン制御回路26が格納され(図5)、車両のシガーライタ用の電源ソケット19に適合するプラグ25が外付けされている。
【0048】
ダクトファンユニット21は、断面形状に三角形状を採用した筒体状のダクト22の両端部に、それぞれ電動ファンF,Fを吸い込み方向に向けて取り付けるとともに、三角形の長辺を底面として設置した際に緩慢な傾斜となる一面にスリット上の吹出口23をほぼ全長に及ぶように形成したものである。すなわち、ダクト22の両端から吸い込まれた空気が、略上向きに吹き出されるようにする構成である。
【0049】
ダクト22はゴム系の可撓性材料からなり、ダッシュボード18の形状およびフロントガラス11に沿って屈曲させて安定に設置することができる(図4)。ダクト22の全長は、普通自動車のダッシュボード18の幅を想定した長さに設定され、ダクト22の高さは、ダッシュボード18上において運転視界を害さない高さに設定されている。設置に際しては、ガラス温度センサS6をフロントガラス11の適所に貼着する。なお、設置上、フロントガラス11側となるダクト22の稜部は、左右部分を除いて切り欠かいた切欠部Dとされ、車両10のデフロスタ用の吹出口H…を塞がないようにされている。
【0050】
着霜防止装置20の基本的動作は、本発明の着霜防止方法におけると同様である。すなわち、ファン制御回路26は、車両のメインキーがOFF状態であって照度センサS4が日没を検出した後夜明けを検出するまでの期間内であることを条件として電動ファンF,Fを連続的にまたは間欠的に駆動し、室内R1の空気を撹拌してフロントガラス11における結露の発生を防止し、この結果として着霜を阻止する仕組みである。
【0051】
なお、照度センサS4に代えてタイマTを用いて時間制御をすることもできる(図5)。また、ファン制御回路26の充電回路26Aは、電動ファンF,Fが駆動されていないことを条件として車載電源を電源として内蔵バッテリBを充電する機能内容である。
【0052】
本発明の着霜防止装置20は、室内温度センサS3やガラス温度センサS6によってさらに作動条件を限定することもできる。例えば、ファン制御回路26は、検出された室内温度が零度以上であって、検出されたフロントガラス11の温度を下回らないことを条件に電動ファンF,Fを駆動することができる。この条件を満たさない場合は、電動ファンF,Fを駆動しても事実上着霜現象を防止することができず、いたずらにバッテリを消耗させる結果になるからである。つまり、本発明は、万能ではないということである。
【0053】
なお、上記着霜防止装置20は、内蔵バッテをBを有するのであるが、これを省略し、直接に車載電源を利用する態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
T タイマ
F 電動ファン
B 内蔵バッテリ
S1 外気温センサ
S2 エンジンルーム温度センサ
S3 室内温度センサ
S4 照度センサ
S5 雨滴センサ
S6 ガラス温度センサ
10 車両
11 フロントガラス
14 ダクト装置
15 開閉弁
18 ダッシュボード
20 着霜防止装置
21 ダクトファンユニット
22 ダクト
23 吹出口
26 ファン制御回路
26A 充電回路
26B 放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日没から夜明けまでの時刻範囲内において車両のメインキーがOFF状態である際に、外気とエンジンルーム空気と室内空気とのいずれか1カ所または2カ所以上の空気をフロントガラスの室内側面に連続的にまたは間欠的に吹き付けることによってフロントガラスの結露発生を防止または発生した結露を除去することを特徴とする自動車のフロントガラスの着霜防止方法。
【請求項2】
日没から夜明けまでの時刻範囲内において車両のメインキーがOFF状態である際に、外気温とエンジンルーム温度と室内温度とを比較し、最も温度が高い箇所の空気をエアコンディショナ用のダクト内の開閉弁を切り替えて選択し、選択した空気をフロントガラスの室内側面に連続的にまたは間欠的に吹き付けることによってフロントガラスの結露発生を防止または発生した結露を除去することを特徴とする請求項1に記載の自動車のフロントガラスの着霜防止方法。
【請求項3】
日没から夜明けまでの時刻範囲内であることを照度センサによって検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車のフロントガラスの着霜防止方法。
【請求項4】
フロントガラスの室内側面に連続的にまたは間欠的に空気を吹付ける条件として、雨滴センサがフロントガラスの結露を検出することを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車のフロントガラスの着霜防止方法。
【請求項5】
ダッシュボード上に配置する少なくとも1基の電動ファンと、照度センサまたはタイマを備え車載電源を外部電源として前記電動ファンを駆動するファン制御回路とを備えてなり、
前記ファン制御回路は、車両のメインキーがOFF状態であって前記照度センサが日没を検出した後夜明けを検出するまでの期間内または前記タイマに予め設定された期間内であることを条件として前記電動ファンを連続的にまたは間欠的に駆動し、室内空気を撹拌することを特徴とする自動車のフロントガラスの着霜防止装置。
【請求項6】
ダッシュボード上に配置する少なくとも1基の電動ファンと、充放電回路を伴う内蔵バッテリと、照度センサまたはタイマを備え前記内蔵バッテリを電源として前記電動ファンを駆動するファン制御回路とを備えてなり、
前記充放電回路は、前記電動ファンが駆動されていないことを条件として車載電源を電源として前記内蔵バッテリを充電し、前記ファン制御回路は、車両のメインキーがOFF状態であって前記照度センサが日没を検出した後夜明けを検出するまでの期間内または前記タイマに予め設定された期間内であることを条件として前記電動ファンを連続的にまたは間欠的に駆動し、室内空気を撹拌することを特徴とする自動車のフロントガラスの着霜防止装置。
【請求項7】
前記電動ファンが、ダッシュボード上にフロントガラスの下縁部に沿って設置することが可能であって、設置した状態においてフロントガラスの下縁部に沿って上向きとなるスリット状の吹出口を形成したダクトの両端部の少なくとも一方の端部に電動ファンを吸い込み方向に向けて取り付けてなるダクトファンユニットとして構成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の自動車のフロントガラスの着霜防止装置。
【請求項8】
前記ダクトが、ゴム系材料または軟質樹脂材料を素材とする可撓性材料から形成され、車両ごとのダッシュボードの形状およびフロントガラスの屈曲形状に応じて屈曲させることができることを特徴とする請求項7に記載の自動車のフロントガラスの着霜防止装置。
【請求項9】
室内温度を検出する室内温度センサと、フロントガラスの温度を検出するガラス温度センサとを備え、
前記ファン制御回路は、検出された室内温度が零度以上であって、検出されたフロントガラスの温度を下回らないことを条件に前記電動ファンを駆動することを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の自動車のフロントガラスの着霜防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173444(P2011−173444A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37045(P2010−37045)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(597069741)株式会社ブイオーシーダイレクト (16)
【Fターム(参考)】