説明

自動車のブレーキ用負圧ブースタ

【課題】マスタシリンダ側のフランジに締結される平坦な前部取付け部を有して後方に開いた椀状に形成される前部シェル半体と、車体に締結される平坦な後部取付け部を有して前方に開いた椀状に形成される後部シェル半体とが相互に結合されてブースタシェルが構成される自動車のブレーキ用負圧ブースタにおいて、前部および後部シェル半体の少なくとも一方の強度を確保しつつ板厚を薄くして軽量化を図る。
【解決手段】前部取付け部53および後部取付け部の少なくとも一方が、中央円板部分53aと、該中央円板部分53aの周囲に間隔をあけて配置されて前記中央円板部分53aに連なる複数の側方円板部分53bとを有して平坦に形成され、複数の側方円板部分53bのうち少なくとも一対の側方円板部分53bに、ボルト6が挿通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタシリンダの倍力作動のために用いられる自動車のブレーキ用負圧ブースタに関し、特に、マスタシリンダのシリンダボディがその後部に備えるフランジに締結される平坦な前部取付け部を有して後方に開いた椀状に形成される前部シェル半体と、車体に締結される平坦な後部取付け部を有して前方に開いた椀状に形成される後部シェル半体とが相互に結合されてブースタシェルが構成され、前記シリンダボディの後端部を嵌合せしめる嵌合筒部が、前記前部取付け部の中央部から後方に延びるようにして前部シェル半体に一体に設けられ、前記ブースタシェル内に前後往復動可能に収容されるブースタピストンならびに該ブースタピストンの後面に重ねて結着されるダイヤフラムの中心部に結合される弁筒を摺動可能に支承するようにして前記嵌合筒部と同軸に配置される支持筒部が、前記後部取付け部の中央部から後方に延びるようにして前記後部シェル半体に一体に設けられる自動車のブレーキ用負圧ブースタに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなブレーキ用負圧ブースタは、特許文献1等で既に知られており、このものでは、後部シェル半体に後端部が結合される円筒状の周壁部と、前方に向かうにつれて小径となるように形成されて周壁部の前端に連なる端壁部と、該端壁部の前端に連なって平坦に形成される取付け部と、マスタシリンダのシリンダボディの後端部を嵌合せしめるようにして前記取付け部の中央部から後方に延びる嵌合筒部とを前部シェル半体が一体に備え、前記取付け部および前記端壁部の連設部の構造が、シリンダボディに設けられたフランジに締結するための一対のボルトの軸線を結ぶ仮想線上での断面では段差をなすように形成され、前記仮想線と直交する方向での端壁部の断面形状が直線状となるようにして、前部シェル半体の強度を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3759451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されるようなシェル構造では、平坦である取付け部が基本的には4つの角部を丸めた菱形状に形成されており、その取付け部をシリンダボディに設けられたフランジに締結するボルトに局所的な引っ張り荷重が作用したときには、そのボルトによる締結部周辺の平面部分の面積が比較的大きいことから塑性変形する可能性があり、それを防止するためには取付け部の板厚を比較的大きく設定する必要があり、重量の増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、前部シェル半体のマスタシリンダへの締結部および後部シェル半体の車体への締結部の少なくとも一方の強度を確保しつつ板厚を薄くして軽量化を図り得るようにした自動車のブレーキ用負圧ブースタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、マスタシリンダのシリンダボディがその後部に備えるフランジに締結される平坦な前部取付け部を有して後方に開いた椀状に形成される前部シェル半体と、車体に締結される平坦な後部取付け部を有して前方に開いた椀状に形成される後部シェル半体とが相互に結合されてブースタシェルが構成され、前記シリンダボディの後端部を嵌合せしめる嵌合筒部が、前記前部取付け部の中央部から後方に延びるようにして前部シェル半体に一体に設けられ、前記ブースタシェル内に前後往復動可能に収容されるブースタピストンならびに該ブースタピストンの後面に重ねて結着されるダイヤフラムの中心部に結合される弁筒を摺動可能に支承するようにして前記嵌合筒部と同軸に配置される支持筒部が、前記後部取付け部の中央部から後方に延びるようにして前記後部シェル半体に一体に設けられる自動車のブレーキ用負圧ブースタにおいて、前記前部取付け部および前記後部取付け部の少なくとも一方が、前記嵌合筒部と同軸の中央円板部分と、該中央円板部分の周囲に間隔をあけて配置されて前記中央円板部分に連なる複数の側方円板部分とを有して平坦に形成され、複数の側方円板部分のうち少なくとも一対の側方円板部分に、ボルトが挿通されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、複数の前記側方円板部分および前記中央円板部分間を結ぶ複数の連結部分が、当該連結部分の両側側縁を相互に近接させるようにくびれた形状に形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記連結部分のくびれ形状が滑らかな湾曲形状で形成されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記前部取付け部が有する複数の側方円板部分の内面側に、それらの側方円板部分にそれぞれ挿通されるボルトと同軸であるリング状の補強板が固着され、前記側方円板部分が、前記補強板の外形形状に沿うように形成されることを第4の特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記嵌合筒部の一直径線上に中心軸線が配置される一対のボルトで前記前部取付け部が前記フランジに締結され、前記前部取付け部が有する一対の前記側方円板部分の一方の外側方かつ前記直径線上に配置される平坦な管取付け部と、前記側方円板部分および前記管取付け部よりも幅を狭くして前記一方の側方円板部分および前記管取付け部間を連結する平坦な首部とが、前記前部取付け部と面一にして前記前部シェル半体に形成され、前記ブースタピストンおよび前記ダイヤフラムと、前記前部シェル半体との間に形成される負圧室に負圧を導入するための負圧導入管の基端部が、前記管取付け部に固着されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、マスタシリンダがその後部に備えるフランジに締結されるようにして平坦に形成される取付け部が、嵌合筒部と同軸の中央円板部分に、該中央円板部分の周囲に間隔をあけて配置される複数の側方円板部分が連設されて成り、複数の側方円板部分のうち少なくとも一対の側方円板部分にボルトが挿通されるので、側方円板部分に挿通されるボルトに局所的な引っ張り荷重が作用したときには、そのボルトによる締結部周辺の平面部の面積すなわち側方円板部分の面積を小さなものとして、側方円板部分の塑性変形を極力防止することができ、取付け部すなわち前部シェル半体の強度を確保したまま前部シェル半体ひいてはブースタシェルの軽量化を図ることができる。
【0012】
また本発明の第2の特徴によれば、複数の側方円板部分および中央円板部分間が、くびれた形状に形成される連結部分で連結されるので、ボルトによる締結部周辺の平面部の面積すなわち側方円板部分の面積をより小さなものとして、側方円板部分の塑性変形をより効果的に防止することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば、連結部分のくびれ形状が滑らかな湾曲形状であるので、側方円板部分および中央円板部分を結ぶ連結部分の強度も確保することができる。
【0014】
本発明の第4の特徴によれば、ボルトと同軸であるリング状の補強板が側方円板部分の内面側に固着されており、側方円板部分が補強板の外形形状に沿うように形成されるので、補強板によって側方円板部分の強度をより高めつつ、補強板の周囲の平面部の面積を最小限とすることによって塑性変形を効果的に防止することができる。
【0015】
さらに本発明の第5の特徴によれば、前部取付け部が有する一対の側方円板部分の一方の外側方かつ一対のボルトの中心軸線を通過する直線上に配置される管取付け部と、側方円板部分および管取付け部よりも幅を狭くして一方の側方円板部分および管取付け部間を連結する平坦な首部とが、前部取付け部と面一にして前部シェル半体に形成され、負圧導入管の基端部が管取付け部に固着されるので、負圧導入管に局所的な引っ張り荷重が作用したときには、その負圧導入管の前部シェル半体への取付け部周辺の平面部の面積すなわち管取付け部の面積を小さなものとして、管取付け部の塑性変形を極力防止することができ、前部シェル半体の強度を確保したまま前部シェル半体ひいてはブースタシェルの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態の負圧ブースタの縦断面図である。
【図2】前部シェル半体の斜視図である。
【図3】前部シェル半体の正面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】後部シェル半体の斜視図である。
【図6】後部シェル半体の正面図である。
【図7】第2の実施の形態の前部シェル半体の図3に対応した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図6を参照しながら説明すると、先ず図1において、負圧ブースタBのブースタシェル1は、対向端を相互に結合する椀状の前部シェル半体1aと、後部シェル半体1bとで構成される。前部シェル半体1aおよび後部シェル半体1bは鋼板製であり、後部シェル半体1bは、自動車の車体Fに4本のボルト7…(図1には1本のみを示す。)によって固着される。またマスタシリンダMにおけるシリンダボディMaの後部に設けられるフランジ45が一対のボルト6…(図1には1本のみを示す。)によって前部シェル半体1aに締結される。上記ボルト6…,7…は、後部シェル半体1bおよび前部シェル半体1aにそれぞれかしめて固設される。
【0019】
ブースタシェル1にはブースタピストン4が前後往復動可能に収容されており、前記ブースタシェル1内は、前記ブースタピストン4と、該ブースタピストン4の後面に重ねて結着されるとともに前部および後部シェル半体1a,1b間に挟止されるダイヤフラム5とによって、前側の負圧室2と後側の作動室3とに区画される。また前記負圧室2は前部シェル半体1aに固着される負圧導入管14を介して負圧源V(たとえば内燃機関の吸気マニホールド内)に接続される。
【0020】
ブースタピストン4は鋼板により環状に成形されており、このブースタピストン4および前記ダイヤフラム5の中心部に、合成樹脂製の弁筒10が結合される。後部シェル半体1bの中心部には後方に延出される支持筒部12が一体に設けられ、前記弁筒10は、前記支持筒部12に軸受部材9およびシール部材13を介して摺動自在に支承される。
【0021】
弁筒10内には、弁ピストン18と、この弁ピストン18に連結される入力杆20と、該入力杆20の前後動に応じて作動室3を負圧室2と大気とに連通切換えする制御弁38とが配設され、入力杆20の後端にはブレーキペダルPが連結される。
【0022】
弁ピストン18は、弁筒10に設けられたガイド孔11に摺動自在に嵌合されており、この弁ピストン18の前端には頸部18aを介して反力ピストン17が、また弁ピストン18の後端にはフランジ状の大気導入弁座31がそれぞれ形成され、その大気導入弁座31を囲繞するように同心配置される環状の負圧導入弁座30が前記弁筒10に形成される。弁ピストン18には、入力杆20がボールジョイント20aを介して首振り可能に連結される。
【0023】
また弁筒10には、前記負圧導入弁座30および大気導入弁座31と協働する環状の弁部34aを有する伸縮可能な筒状の弁ホルダ35によって弁体34が取付けられ、該弁体34はその全体がゴム等の弾性材で成形されている。弁部34aは大気導入弁座31および負圧導入弁座30に着座可能に対向して配置される。この弁部34aと入力杆20との間には、弁部34aを前記負圧導入弁座30および前記大気導入弁座31との着座方向へ付勢する弁ばね36が縮設される。而して前記負圧導入弁座30、大気導入弁座31、弁体34および弁ばね36によって制御弁38が構成される。
【0024】
前記弁ホルダ35および前記入力杆20間には入力戻しばね41が縮設され、この入力戻しばね41によって前記入力杆20は後退方向へ付勢され、前記弁ホルダ35は弁筒10内の固定位置に保持される。
【0025】
弁筒10には、一端が負圧室2に開口するとともに他端が負圧導入弁座30の外周部に開口するように形成される第1ポート28と、一端が作動室3に開口するとともに他端が負圧導入弁座30および大気導入弁座31間に開口するように形成される第2ポート29とが設けられる。
【0026】
前記支持筒部12の後端と入力杆20とに、弁筒10を被覆する伸縮可能のブーツ40の両端が取付けられ、このブーツ40の後端部に、前記弁体34の内側に連通する大気導入口39が設けられる。この大気導入口39に流入する空気を濾過するフィルタ42が入力杆20の外周面と弁筒10の内周面との間に介裝される。このフィルタ42は、入力杆20および弁筒10の相対移動を阻害することがないように柔軟性を有する。
【0027】
また弁筒10には、前記支持筒部12に設けられたストッパ壁19の前面に当接してブースタピストン4および入力杆20の後退限を規定するキー32が一定距離の範囲で軸方向移動可能に取付けられる。
【0028】
さらにまた弁筒10には、前方に突出する作動ピストン15と、この作動ピストン15の中心部を貫通する小径シリンダ孔16とが設けられ、この小径シリンダ孔16に前記反力ピストン17が摺動自在に嵌合される。作動ピストン15の外周にはカップ体21が摺動自在に嵌合され、このカップ体21には作動ピストン15および反力ピストン17に対向する偏平な弾性ピストン22が充填される。その際、反力ピストン17および弾性ピストン22間には、負圧ブースタBの非作動時に一定の間隙ができるようになっている。
【0029】
カップ体21の前面には出力杆25が連設される。したがって、出力杆25は、カップ体21を介して弁筒10に摺動可能に支持されることになる。一方、前記マスタシリンダMが備えるマスタピストンMbの後端部は、前部シェル半体1aの中心部に設けられる嵌合筒部55に摺動可能に嵌合されており、このマスタピストンMbに前記出力杆25が連接される。
【0030】
而して前記作動ピストン15、前記反力ピストン17、前記弾性ピストン22および前記カップ体21は、出力杆25の出力の一部を入力杆20にフィードバックする反力機構24を構成する。
【0031】
カップ体21および弁筒10の前端面にリテーナ26が当接するように配設され、このリテーナ26とブースタシェル1の前壁との間にブースタピストン4および弁筒10を後退方向へ付勢するブースタ戻しばね27が縮設される。
【0032】
次に、前記ブースタシェル1のうち前部シェル半体1aの構造と、マスタシリンダMのシリンダボディMaへの前部シェル半体1aの締結構造とについて、図2〜図4を参照しながら説明する。
【0033】
図2〜図4において、前部シェル半体1aは、その後端側から段付きの連結筒部50と、この連結筒部50の前端に連なる円筒状の周壁部51と、該周壁部51の前端から半径方向内方および前方に向かって傾斜して延びる端壁部52と、該端壁部52の前端に連なって平坦に形成されるとともにマスタシリンダMのシリンダボディMaがその後部に備えるフランジ45に締結される前部取付け部53と、前記シリンダボディMaの後端部を嵌合せしめるようにして前記前部取付け部53の中央部から前記後部シェル半体1b側に延びる嵌合筒部55とを一体に備え、前記連結筒部50は、図1で明示するように、前記後部シェル半体1bの前端部と連結しつつ、該前部シェル半体1bとの間に前記ダイヤフラム5の外周部を挟持する。
【0034】
前記周壁部51は、この実施の形態では、前記連結筒部50に連なる円筒部分51aと、この円筒部分51aの前端に連なり、前方に向かって小径となる截頭円錐部分51bとで構成される。また前記端壁部52も、この実施の形態では、前方に向かって小径となる截頭円錐状に形成される。
【0035】
また前記端壁部52および前記前部取付け部53間には、前記端壁部52および前記前部取付け部53の両方に対して角度をなして前記前部取付け部53の剛性を強化する補強壁部54が形成される。
【0036】
さらにマスタシリンダMにおけるシリンダボディMaの後部には、前記前部取付け部53に重ねられるフランジ45と、このフランジ45の後端面から突出して前記嵌合筒部55に嵌合される位置決め筒部46とが一体に設けられ、位置決め筒部46の外周に前記嵌合筒部55の内周に弾発的に摺接する環状のシール部材56が装着される。
【0037】
前記シリンダボディMaが後部に備えるフランジ45に締結される前記前部取付け部53は、前記嵌合筒部55と同軸の中央円板部分53aと、該中央円板部分53aの周囲に間隔をあけて配置される複数の側方円板部分53b…と、複数の側方円板部分53b…および前記中央円板部分53a間を結ぶ複数の連結部分53c…とを有して平坦に形成されるものであり、この第1の実施の形態では、前記中央円板部分53aの一直径線La上に配置される一対の前記側方円板部分53b…の中央部に前記ボルト6…が挿通される。
【0038】
しかも前記連結部分53c…は、当該連結部分53cの両側側縁を相互に近接させるようにくびれた形状に形成されるものであり、そのくびれ形状が滑らかな湾曲形状となるように形成される。
【0039】
また前記前部取付け部53における側方円板部分53b…の内面側には、前記ボルト6…と同軸である一対のリング状の補強板58,58が固着されており、前記側方円板部分53b…は、前記補強板58…の外形形状に沿うように形成される。而して前記ボルト6…は、その拡径頭部6a…を前記補強板58…に当接、係合せしめるとともに前記前部取付け部53の側方円板部分53b…に挿通されるようにして前記側方円板部分53b…にかしめて固定され、前記側方円板部分53b…から前方に突出する。
【0040】
而してマスタシリンダMのマスタピストンMbを嵌合筒部55からブースタシェル1内に突入させ、フランジ45に設けられたボルト孔47…にボルト6…を挿通させつゝフランジ45を前記前部取付け部53に重ね、ボルト6…にナット57…を螺合緊締することにより、前記前部取付け部53がフランジ45に締結される。
【0041】
次に、前記ブースタシェル1のうち後部シェル半体1bの構造と、車体Bへの後部シェル半体1aの締結構造とについて、図5および図6を参照しながら説明する。
【0042】
図5および図6において、後部シェル半体1bは、前記前部シェル半体1aの連結筒部50に嵌合されて該連結筒部50との間に前記ダイヤフラム5の外周部を挟む段付きの連結筒部60と、この連結筒部60の内側に配置されるようにして連結筒部60の前端に連なる円筒状の周壁部61と、該周壁部61の後端から半径方向内方および後方に向かって傾斜して延びる端壁部62と、該端壁部62の後端に連なって平坦に形成されるとともに車体Fに締結される後部取付け部63と、前記弁筒10を支承するようにして前記取付け部63の中央部から後方に延びる支持筒部12とを一体に備える。
【0043】
前記後部取付け部63は、前記支持筒部12と同軸の中央円板部分63aに、該中央円板部分63aの周囲に間隔をあけて複数ずつ配置される第1および第2の側方円板部分63b…,63c…が連設されるようにして平坦に形成される。一対である第1の側方円板部分63b…は、前記支持筒部12の一直径線Lb上で中央円板部分63aの外側方に配置されており、第1の側方円板部分63b…相互間に3個ずつ配置される合計6個の第2の側方円板部分63c…が、前記中央円板部分63aの周囲に間隔をあけて配置され、第2の側方円板部分63c…は第1の側方円板部分63b…よりも小さく形成される。
【0044】
第2の側方円板部分63c…相互間と、第1の側方円板部分63b…および第2の側方円板部分63c…相互間とには、後部シェル半体1bの半径方向内方側に凹む凹部64…,65…が形成されるものであり、それらの凹部64…,65…に対応して前記端壁部62は周方向に沿って波打つように形成される。
【0045】
第1の側方円板部分63b…および第2の側方円板部分63c…のうち、前記中央円板部分63aの周囲に等間隔に配置される4個の第2の側方円板部分63c…の中央部にボルト7…が挿通される。これらのボルト7…は、その拡径頭部7a…を前記第2の側方円板部分63c…の内面に当接、係合せしめた状態で前記第2の側方円板部分63c…に挿通されるようにして第2の前記側方円板部分63c…にかしめて固定され、第2の前記側方円板部分63c…から後方に突出する。
【0046】
而して車体Fに設けられたボルト孔68…にボルト7…を挿通させつゝ前記後部取付け部63を車体Fを重ね、ボルト7…にナット69…を螺合緊締することにより、前記後部取付け部63が車体Fに締結される。
【0047】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、負圧ブースタBの休止状態では、弁筒10に取付けられたキー32が後部シェル半体1bにおけるストッパ壁19の前面に当接し、このキー32に反力ピストン17の後端面が当接することにより、ブースタピストン4および入力杆20が後退限に位置している。このとき、大気導入弁座31は弁体34の弁部34aに密着しながら、この弁部34aを押圧して負圧導入弁座30からわずかに離座させている。これによって大気導入口39および第2ポート29間の連通が遮断されるとともに第1および第2ポート28,29間が連通され、負圧室2の負圧が第1および第2ポート28,29を通して作動室3に伝達され、負圧室2および作動室3が同圧となり、ブースタピストン4および弁筒10はブースタ戻しばね27の付勢力により後退位置に保持される。
【0048】
車両を制動すべくブレーキペダルPを踏み込んで、入力戻しばね41のセット荷重に抗して入力杆20を弁ピストン18と共に前進させると、弁ばね36の付勢力が弁部34aを負圧導入弁座30に着座させると同時に、大気導入弁座31が弁体34から離れ、これにより第1および第2ポート28,29間の連通が遮断されると共に、第2ポート29が弁体34の内側を通して大気導入口39に連通される。
【0049】
その結果、大気導入口39から弁筒10内に流入した大気が大気導入弁座31を通過し、第2ポート29を経て作動室3に導入され、作動室3を負圧室2より高圧にするので、それらの気圧差に基づく前方推力を得てブースタピストン4は、弁筒10、作動ピストン15、弾性ピストン22、カップ体21および出力杆25を伴いながらブースタ戻しばね27の力に抗して前進する。こうして、入力杆20の操作入力は増幅されて出力杆25に伝達され、マスタピストンMbを倍力作動することができる。
【0050】
このとき、ブースタシェル1の後部シェル半体1bは、ボルト5…を介して車体Fに固着されており、出力杆25のマスタピストンMbに対する前向きの駆動推力が、シリンダボディMaのフランジ45からボルト6…を介して前部シェル半体1aの取付け部53に作用するため、ブースタシェル1には、その軸線に沿って大なる引っ張り荷重が加わることになる。
【0051】
ところで、前部シェル半体1aの前部取付け部53および端壁部52間には、その両方に対して角度をなす補強壁部54が形成されるので、その補強壁部54により前部取付け部53の剛性が強化され、前記引っ張り荷重に抗して、前部取付け部53とフランジ45との強固な締結状態を確保することができる。
【0052】
しかも前部取付け部53は、シリンダボディMaの後端部を嵌合せしめる嵌合筒部55と同軸の中央円板部分53aに、該中央円板部分53aの周囲に等間隔に配置される一対の側方円板部分53b,53bが連設されて成り、両側方円板部分53b…にボルト6…が挿通されるので、側方円板部分53b…に挿通されるボルト6…に局所的な引っ張り荷重が作用したときには、そのボルト6…による締結部周辺の平面部の面積すなわち側方円板部分53b…の面積を小さなものとして、側方円板部分53b…の塑性変形を極力防止することができ、前部取付け部53すなわち前部シェル半体1aの強度を確保したまま前部シェル半体1aひいてはブースタシェル1の軽量化を図ることができる。
【0053】
また一対の側方円板部分53b…および中央円板部分53a間が、くびれた形状に形成される連結部分53c…で連結されるので、ボルト6…による締結部周辺の平面部の面積すなわち側方円板部分53bd…の面積をより小さなものとして、側方円板部分53b…の塑性変形をより効果的に防止することができる。
【0054】
しかも連結部分53c…のくびれ形状が滑らかな湾曲形状であるので、側方円板部分53b…および中央円板部分53aを結ぶ連結部分53c…の強度も確保することができる。
【0055】
また前記前部取付け部53における一対の側方円板部分53b…の内面側には、前記ボルト6…と同軸であるリング状の補強板58…が固着され、前記両側方円板部分53b…が、前記補強板58…の外形形状に沿うように形成されるので、補強板58…によって側方円板部分53b…の強度をより高めつつ、補強板58の周囲の平面部の面積を最小限とすることによって塑性変形を効果的に防止することができる。
【0056】
さらに後部取付け部63は、支持筒部12および嵌合筒部55と同軸の中央円板部分63aに、該中央円板部分63aの周囲に間隔をあけて複数ずつ配置される第1および第2の側方円板部分63b…,63c…が連設されて平坦に形成され、第1の側方円板部分63b…および第2の側方円板部分63c…のうち、前記中央円板部分63aの周囲に等間隔に配置される4個の第2の側方円板部分63c…の中央部にボルト7…が挿通されるので、第2の側方円板部分63c…に挿通されるボルト7…に局所的な引っ張り荷重が作用したときには、そのボルト7…による締結部周辺の平面部の面積すなわち第2の側方円板部分63c…の面積を小さなものとして、第2の側方円板部分63c…の塑性変形を極力防止することができ、後部取付け部63すなわち後部シェル半体1bの強度を確保したまま後部シェル半体1bひいてはブースタシェル1の軽量化を図ることができる。
【0057】
上記第1の実施の形態では、前部シェル半体1aの前部取付け部53および後部シェル半体1bの後部取付け部63のいずれもが、中央円板部分53a,63aと、該中央円板部分53a,63aの周囲に間隔をあけて配置されて前記中央円板部分53a,63aに連なる複数の側方円板部分53b…;63b…,63c…とを有して平坦に形成され、複数の側方円板部分53b…;63b…,63c…のうち少なくとも一対の側方円板部分53b…,63c…に、ボルト6…,7…が挿通されるようにしたが、前部取付け部53および後部シェル半体1bのいずれか一方が上述の形状に形成されるようにしてもよい。
【0058】
本発明の第2の実施の形態について図7を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0059】
前記嵌合筒部55の一直径線La上に中心軸線を配置する一対のボルト6,6で前部シェル半体1aの前部取付け部53が、マスタシリンダMにおけるシリンダボディMaのフランジ45(第1の実施の形態参照)に締結されるのであるが、前部取付け部53が有する一対の側方円板部分53b,53bの一方の外側方かつ前記直径線La上に配置される平坦な管取付け部70と、側方円板部分53b…および前記管取付け部70よりも幅を狭くして前記一方の側方円板部分53bおよび管取付け部70間を連結する平坦な首部71とが、前部取付け部53と面一にして前部シェル半体1aに形成され、負圧導入管14の基端部が、前記管取付け部70に固着される。
【0060】
この第2の実施の形態によれば、負圧導入管14に局所的な引っ張り荷重が作用したときには、その負圧導入管14の前部シェル半体1aへの取付け部周辺の平面部の面積すなわち管取付け部70の面積を小さなものとして、管取付け部70の塑性変形を極力防止することができ、前部シェル半体1aの強度を確保したまま前部シェル半体1aひいてはブースタシェル1の軽量化を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0062】
たとえば前記ボルト6…,7…に代えて、ナットを前部取付け部53および後部取付け部63の少なくとも一方に埋設、固定することもできる。また前部シェル半体1aの周壁部51は、截頭円錐部51bが無い単純な円筒状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・ブースタシェル
1a・・・前部シェル半体
1b・・・後部シェル半体
2・・・負圧室
4・・・ブースタピストン
5・・・ダイヤフラム
6,7・・・ボルト
10・・・弁筒
12・・・支持筒部
14・・・負圧導入管
45・・・フランジ
53・・・前部取付け部
53a,63a・・・中央円板部分
53b,63b,63c・・・側方円板部分
53c・・・連結部分
55・・・嵌合筒部
58・・・補強板
63・・・後部取付け部
70・・・管取付け部
71・・・首部
F・・・車体
M・・・マスタシリンダ
Ma・・・シリンダボディ
La・・・直径線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタシリンダ(M)のシリンダボディ(Ma)がその後部に備えるフランジ(45)に締結される平坦な前部取付け部(53)を有して後方に開いた椀状に形成される前部シェル半体(1a)と、車体(F)に締結される平坦な後部取付け部(63)を有して前方に開いた椀状に形成される後部シェル半体(1b)とが相互に結合されてブースタシェル(1)が構成され、前記シリンダボディ(Ma)の後端部を嵌合せしめる嵌合筒部(55)が、前記前部取付け部(53)の中央部から後方に延びるようにして前部シェル半体(1a)に一体に設けられ、前記ブースタシェル(1)内に前後往復動可能に収容されるブースタピストン(4)ならびに該ブースタピストン(4)の後面に重ねて結着されるダイヤフラム(5)の中心部に結合される弁筒(10)を摺動可能に支承するようにして前記嵌合筒部(55)と同軸に配置される支持筒部(12)が、前記後部取付け部(63)の中央部から後方に延びるようにして前記後部シェル半体(1b)に一体に設けられる自動車のブレーキ用負圧ブースタにおいて、前記前部取付け部(53)および前記後部取付け部(63)の少なくとも一方が、前記嵌合筒部(55)と同軸の中央円板部分(53a,63a)と、該中央円板部分(53a,63a)の周囲に間隔をあけて配置されて前記中央円板部分(53a,63a)に連なる複数の側方円板部分(53b;63b,63c)とを有して平坦に形成され、複数の側方円板部分(53b,63b,63c)のうち少なくとも一対の側方円板部分(53b,63c)に、ボルト(6,7)が挿通されることを特徴とする自動車のブレーキ用負圧ブースタ。
【請求項2】
複数の前記側方円板部分(53b)および前記中央円板部分(53a)間を結ぶ複数の連結部分(53c)が、当該連結部分(53c)の両側側縁を相互に近接させるようにくびれた形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の自動車のブレーキ用負圧ブースタ。
【請求項3】
前記連結部分(53c)のくびれ形状が滑らかな湾曲形状で形成されることを特徴とする請求項2記載の自動車のブレーキ用負圧ブースタ。
【請求項4】
前記前部取付け部(53)が有する複数の前記側方円板部分(53b)の内面側に、それらの側方円板部分(53b)にそれぞれ挿通されるボルト(6)と同軸であるリング状の補強板(58)が固着され、前記側方円板部分(53b)が、前記補強板(58)の外形形状に沿うように形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車のブレーキ用負圧ブースタ。
【請求項5】
前記嵌合筒部(55)の一直径線(La)上に中心軸線が配置される一対のボルト(6)で前記前部取付け部(53)が前記フランジ(45)に締結され、前記前部取付け部(53)が有する一対の側方円板部分(53b)の一方の外側方かつ前記直径線(La)上に配置される平坦な管取付け部(70)と、前記側方円板部分(53b)および前記管取付け部(70)よりも幅を狭くして前記一方の側方円板部分(53b)および前記管取付け部(70)間を連結する平坦な首部(71)とが、前記前部取付け部(53)と面一にして前記前部シェル半体(1a)に形成され、前記ブースタピストン(4)および前記ダイヤフラム(5)と、前記前部シェル半体(1a)との間に形成される負圧室(2)に負圧を導入するための負圧導入管(14)の基端部が、前記管取付け部(70)に固着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動車のブレーキ用負圧ブースタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250663(P2012−250663A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126406(P2011−126406)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】