説明

自動車の動力伝達系および自動エンジンクラッチの制御方法

本発明は、内燃機関として形成されたエンジン(2)と、車軸駆動装置(5)に結合された伝達比可変式変速機(4)と、エンジン(2)と変速機(4)との間の動力経路に配置された自動エンジンクラッチ(3)とを有し、このエンジンクラッチ(3)が能動式に係合可能な摩擦クラッチとして形成され、その伝達可能なトルク(クラッチトルク)が圧力媒体式制御によって設定可能な、自動車の動力伝達系(1)に関する。エンジンクラッチの制御性を向上し、応答性を迅速にするために改良するため、エンジンクラッチ(3)が加圧ばねを伴わずに形成され、圧力媒体作動式加圧装置(6)を有し、この加圧装置(6)は、エンジンクラッチ(3)が:不作動状態において、最大圧力による加圧装置(6)の作用によって係合され;並びに、より小さいクラッチトルクを設定するためあるいは該エンジンクラッチ(3)を解放するための作動状態において、低減された作用圧力による加圧装置(6)の作用によって少なくとも部分的に解放される、ように圧力媒体源(7)に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関として形成されたエンジンと、車軸駆動装置に結合された伝達比可変式変速機と、エンジンと変速機との間の動力経路に配置された自動エンジンクラッチとを有し、このエンジンクラッチが能動式に係合可能な摩擦クラッチとして形成され、その伝達可能なトルク(クラッチトルク)が圧力媒体式制御によって設定可能な、自動車の動力伝達系に関する。
【0002】
本発明はまた、自動車の動力伝達系において内燃機関として形成されたエンジンと車軸駆動装置に結合された伝達比可変式変速機との間の動力経路に配置された自動エンジンクラッチの制御方法であって、そのエンジンクラッチが、能動式に係合可能な摩擦クラッチとして形成され、その伝達可能なトルク(クラッチトルク)が圧力媒体式制御によって設定可能な、自動エンジンクラッチの制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エンジンクラッチは受動式あるいは能動式に係合可能な摩擦クラッチとして知られている。受動式係合可能な摩擦クラッチは、不作動状態において、即ち、運転者により与えられるかアクチュエータによって発生される外部操作力が存在しない休止状態において、通常、ばね支援式の加圧装置を介して自動的に係合され、その加圧装置に作用的に接続された脱圧装置の作用による作動状態において、適値調整可能な操作力によって少なくとも部分的に解放される。能動式係合可能な摩擦クラッチは、不作動状態において、即ち、外部操作力が存在しない休止状態において、完全に解放され、その加圧装置の作用による作動状態において、適値調整可能な操作力によって少なくとも部分的に係合される。
【0004】
液圧式アクチュエータにより自動制御可能な受動式係合可能なエンジンクラッチは、例えば独国特許出願公開第4309901号明細書に記載されている。そのエンジンクラッチはそれ自体公知のように、単板乾式クラッチとして形成され、その加圧装置は、エンジンのフライホィールに固定されたクラッチカバーと変速機側の加圧板との間に配置されたダイヤフラムスプリングを有している。その液圧式アクチュエータは、液圧管を介して液圧送りシリンダに接続された液圧受けシリンダにより形成されている。その送りシリンダは液圧式制御装置のサーボシリンダの構成部品であり、電磁比例弁を介して、あるいは2つの電磁位置弁を介して制御される。
【0005】
エンジンクラッチの開度制御、従って、伝達可能なトルクの制御は、サーボシリンダに配置された行程センサを介して行われる。従ってここでは、自動摩擦クラッチの比較的複雑な行程制御が問題となる。
【0006】
かかるクラッチ構造の場合、液圧式制御装置における圧力喪失を伴う故障時に、エンジンクラッチが係合されたままにされるか、自動的に係合状態に移行される、という利点がある。これにより、運転者は、走行中に車両を少なくとも安全な停車場所まで、あるいは修理工場まで走らせることができる。
【0007】
しかし、かかるクラッチ構造の場合、特に加圧装置と脱圧装置に対して高価な部品費がかかり、且つ、ダイヤフラムスプリングの非比例ばね特性のために非常に複雑なクラッチ制御が必要とされる、という欠点がある。そのほかに、所定のクラッチトルクを設定するために、不作動休止状態から出発して、アクチュエータによってまず、遊び行程を乗り越え、続いて、過剰加圧を消滅させねばならず、これは、かなりの遅延を生じさせ、全体として、クラッチ制御装置の応答性を悪くさせる。
【0008】
これに対して、例えば独国特許出願公告第10240679号明細書において、液圧式アクチュエータにより自動制御可能な能動式に係合可能なクラッチが知られている。そのクラッチは、負荷切換クラッチとして、あるいは遊星歯車式自動変速機における負荷切換ブレーキとして利用できるほかに、エンジンクラッチとしても利用できる。そのクラッチは、それ自体公知の様式で、油溜めに浸かる多板クラッチ(湿式クラッチ)として形成され、その加圧装置は液圧サーボシリンダから成り、そのピストンは片側が多板クラッチの第1ディスクに接触でき、その圧力室はケースとピストンとの間に密封形成されている。
【0009】
そのクラッチの場合、特別なばね配置構造によって、一方では、不作動状態において、ばね支援式復帰操作力により、ピストンを第1ディスクから離された位置に押圧することが達成され、これにより、全ディスク板が無負荷にされ、多板クラッチが完全に解放される。他方では、そのばね配置構造によって、ピストンの作動時、ピストンが第1ディスクに到達することによって、即ち、トルク伝達が開始されることにより、ばね支援式復帰力が大きく増大させられ、これにより、設定されたクラッチトルクの良好な適値調整、特に、エンジンクラッチの伝達可能トルクの単純で安価に実現できる圧力制御式調整も可能とされる。
【0010】
もっとも、かかるクラッチ構造の場合、液圧式制御装置における圧力喪失に伴って通常生ずる故障時に、エンジンクラッチが漏れのために自然に解放される、という大きな欠点がある。このため、運転者は、走行中にその自動車を少なくとも安全な停車場所まで、あるいは修理工場まで走らせることができず、運転者では決められない場合により危険な場所に、自動車を停めざるを得ず、レッカー車で移動させねばならない。かかる構造様式の場合も同様に、所定のクラッチトルクを設定するために、不作動休止状態から出発して、アクチュエータによってまず、遊び行程を乗り越えねばならず、これは、クラッチ制御装置の応答挙動において或る遅延を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の問題を背景として、本発明の課題は、単純で安価な構造において、向上された制御性および迅速な応答性を有する、冒頭に述べた形式の動力伝達系の自動エンジンクラッチを提供することにある。また、かかるエンジンクラッチの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このエンジンクラッチについての課題は、請求項1の上位概念部分に記載の特徴と組み合わせて、エンジンクラッチが加圧ばねを伴わずに形成され、圧力媒体作動式加圧装置を有し、この加圧装置が、エンジンクラッチが:不作動状態において、最大圧力による加圧装置の作用によって係合され;並びに、より小さいクラッチトルクを設定するため、あるいは該エンジンクラッチを解放するための作動状態において、低減された作用圧力による加圧装置の作用によって少なくとも部分的に解放される、ように圧力媒体源に接続されている、ことによって解決される。
【0013】
本発明の有利な実施態様および発展形態は請求項2〜14に記載されている。
【0014】
乾式クラッチとしても湿式クラッチとしても形成できる本発明に基づくエンジンクラッチは、確かに、その伝達可能なトルクが圧力媒体作動式加圧装置の作用圧力に比例している能動式に係合可能な摩擦クラッチである。しかし、そのエンジンクラッチは不作動状態において圧力媒体源の十分な系統圧力を前提として完全に係合されるので、制御原理は受動式に係合可能な摩擦クラッチに相当している。
【0015】
エンジンクラッチは、ここでは、長い停止時間後、自動車の運転開始により、圧力媒体源から最高圧力で加圧装置を付勢することによってまず自動的に係合される。そして、必要に応じて、加圧装置における作用圧力の制御低減によって、より小さいクラッチトルクが設定され、あるいはエンジンクラッチが加圧装置の無圧状態への切換によって完全に解放される。その場合、クラッチトルクが加圧装置の作用圧力に比例するので、公知のクラッチ構造に比べて、向上された制御性が生ずる。従って特に、エンジンクラッチの単純で安価に実現できる圧力制御も可能となる。
【0016】
エンジンクラッチの設定過程および解放過程は、遊び行程を乗り越えることなしに行われ、これにより、クラッチ制御の迅速な応答性能が生ずる。従って、発進過程および操縦過程はダイナミックに実施でき、手動切換変速機として形成された変速機の場合、切換過程の切換時間が短縮される。
【0017】
同様に本発明に基づくクラッチの形成によって、ばね支援式加圧装置を備えたエンジンクラッチに比べて、構造空間および構造部品が節約される。特に加圧装置における作用圧力の(発生および消滅)時間経過に関連して向上されたエンジンクラッチの制御性によって、エンジンクラッチが乾式クラッチとして形成されている場合、通常のダイヤフラムスプリングが省かれる。
【0018】
加圧装置は、好適には、サーボシリンダと、このサーボシリンダ内に軸方向移動可能に支持されたサーボピストンと、サーボシリンダとサーボピストンとにより密閉形成された圧力室とを有し、この圧力室が接続管とクラッチ制御弁とを介して圧力媒体源に接続され、サーボシリンダ又はサーボピストンのいずれか一方の部品が、エンジンクラッチの支持要素に結合され、他方の部品(サーボピストン又はサーボシリンダ)が、エンジンクラッチの加圧要素に結合されている。
【0019】
加圧装置の押圧力の支持は、確かに、エンジンのクランクケースに対してあるいは変速機ケースに対して行われる。しかしこれはそれぞれ支持構造部品の経費のかかる回転可能な支持を必要とするので、押圧力の支持は、目的に適って、エンジンクラッチの内部で行われ、例えば乾式クラッチにおいてクラッチカバーを介して行われる。そのクラッチカバーはエンジン側においてエンジンのフライホィールに結合され、変速機側において加圧装置を支え、この加圧装置は、押圧要素としての加圧板にエンジンの方向に実効的に接続されている。
【0020】
そのように乾式クラッチとして形成されたエンジンクラッチにおいて、サーボシリンダは、好適には、クラッチカバーの環状ポット形に形成された部分によって形成され、これに相応して環状に形成されたサーボピストンが加圧板に結合されている。この形態において、複雑な係合装置を不要とした状態で、特に単純で場所を節約した加圧装置が実現される。
【0021】
利用される圧力媒体源は、圧力媒体ポンプから供給されるアキュムレータを備えた圧力供給装置として形成され、その場合、好適には、他の目的に既に存在する圧力供給装置が利用される。それに応じて、加圧装置は空気圧作動式に形成され、自動車の既存の圧縮空気供給装置に接続される。また加圧装置は、液圧作動式に形成され、自動車ないし変速機における例えば変速機の液圧式切換制御装置あるいは変速比制御装置に供給するための既存の液圧供給装置に接続されるようにもできる。
【0022】
そのクラッチ制御弁は、目的に適って、不作動状態において、接続管と圧力媒体源との接続部が全開され、接続管と圧力放出管との接続部が全閉され、作動状態において、接続管と圧力媒体源との接続部が少なくとも部分的に閉じられ、接続管と圧力放出管との接続部が少なくとも部分的に開かれている、ように形成されている。相応したクラッチ制御弁は、例えば、圧力媒体源に通じる供給管との接続口と、接続管と加圧装置の圧力室との接続口と、圧力放出管との接続口とを備えた1つの3ポート2位置弁の形態の圧力調整弁として形成されている。
【0023】
有利な実施態様において、クラッチ制御弁は1つの3ポート2位置弁ではなく、2つの2ポート2位置弁によって形成されている。その第1の2ポート2位置弁は、供給管を介して圧力媒体源に接続され且つ接続管を介して圧力室に接続されている。これに対して、第2の2ポート2位置弁は、接続管を介して圧力室に接続され且つ他の接続口を介して圧力放出管に接続されている。かかる構造は、3ポート2位置弁に比べて、エンジンクラッチの良好な調整を可能にする。
【0024】
これらの両2ポート2位置弁の制御は、好適には、エンジンクラッチの圧力室における圧力を検出して制御装置に伝える圧力センサの情報により行われる。この制御装置は、両2ポート2位置弁の目的に適った作動によってエンジンクラッチの伝達トルクを制御する。
【0025】
圧力媒体源における圧力喪失時にクラッチ制御を維持するために、有利に、圧力媒体源方向への遮断機能を有する逆止め弁が、クラッチ制御弁と圧力媒体源との間に配置されている。この目的のために、目的に適って、クラッチ制御弁と圧力媒体源との間に配置された別個のアキュムレータも利用される。これにより、エンジンクラッチの望ましくない解放が防止され、故障時に少なくとも一時的に、安全な停車場所あるいは修理工場まで、走行が継続できる。
【0026】
圧力媒体源の系統圧力が運転上から或る変動を生ずるか、あるいは負荷に依存して制御されるので、クラッチ制御を簡単にするために、クラッチ制御の系統圧力を制限するために、圧力制限弁がクラッチ制御弁(例えば3ポート2位置弁又は2つの2ポート2位置弁)と圧力媒体源との間に配置されている、ことが有利である。
【0027】
望ましくないトルククリープを防止するためおよび無負荷切換過程を可能にするために、変速機が手動切換変速機として形成されている場合、エンジンクラッチおよび/又は加圧装置(エンジンクラッチと加圧装置の少なくとも一方)が、目的に適って、加圧装置の無圧時にエンジンクラッチを完全解放するための復帰ばねを備えている。
【0028】
制御方法に関する課題は、請求項15の上位概念部分に記載の特徴と組み合わせて、加圧ばねを伴わずに形成されたエンジンクラッチにおいて、圧力媒体源に接続された圧力媒体作動式加圧装置が、不作動状態において、最大圧力による加圧装置の作用によって係合され、より小さいクラッチトルクを設定するためあるいはエンジンクラッチを解放するための作動状態において、低減された作用圧力による加圧装置の作用によって少なくとも部分的に解放される、ことによって解決される。
【0029】
これは具体的には、加圧装置が接続管とクラッチ制御弁とを介して圧力媒体源に接続されている場合、好適には、クラッチ制御弁における不作動状態において接続管と圧力媒体源との接続部が全開され且つ接続管と圧力放出管との接続部が全閉され、クラッチ制御弁における作動状態において、接続管と圧力媒体源との接続部が少なくとも部分的に閉じられ、接続管と圧力放出管との接続部が少なくとも部分的に開かれる、ことによって行われる。その場合、エンジンクラッチのクラッチトルクの設定は、加圧装置を介して、制御技術的に簡単に実現できる圧力制御の形態で好適に実施される。
【0030】
この方法において、クラッチ制御弁として、1つの3ポート2位置弁並びに2つの2ポート2位置弁が組み合わせて、エンジンクラッチの圧力室に圧力を供給するために利用される。またその場合、圧力室に対する最大圧力を設定する圧力制限弁が、クラッチ制御弁に前置されて利用される。
【0031】
さらに、本発明に基づく方法の他の実施態様において、圧力室の実際圧力が、圧力センサによって検出され、クラッチ制御弁ないし両2ポート2位置弁あるいはエンジンクラッチの伝達トルクを制御するために利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下図に示した実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0033】
それに応じて自動車の動力伝達系1は、内燃機関として形成されたエンジン2と、車軸駆動装置(差動装置)5に結合されている変速機4と、エンジン2と変速機4との間の動力経路に配置された自動エンジンクラッチ3とを有している。その変速機4は変速比(伝達比)が変更でき、即ち、段階式あるいは無段式に変更でき、エンジンクラッチ3は、ここでは、能動式に係合可能な摩擦クラッチとして形成され、その伝達可能なトルク(クラッチトルク)は圧力媒体式制御によって設定できる。
【0034】
エンジンクラッチ3は、通常解放され、加圧ばねを伴わずに形成され、圧力媒体作動式加圧装置6を有している。この加圧装置6は次のように圧力媒体源7に接続されている。即ち、エンジンクラッチ3が、不作動状態において、最大圧力による加圧装置6の作用によって係合され、より小さいクラッチトルクを設定するため、あるいはエンジンクラッチ3を解放するための作動状態において、低減された作動圧力による加圧装置6の作用によって少なくとも部分的に解放される、ように圧力媒体源7に接続されている。
【0035】
ここでエンジンクラッチ3は、好例として単板乾式クラッチ8として形成されている。従って、それ自体公知のように、回転板9が、変速機4の入力軸10に相対回転不能で且つ軸方向移動可能に支持され、エンジン2のクランクシャフト11に固く結合されたフライホィール12と変速機側の加圧板13との間に配置されている。
【0036】
この加圧板13は、フライホィール12に固く結合されたクラッチカバー14内に、相対回転不能で且つ軸方向移動可能に支持されている。クラッチカバー14は変速機側に、相応した環状のポット(一方向に開口した容器)形に形成された部分によって形成されたサーボシリンダ15を有し、このサーボシリンダ15内に、同様に環状に形成され加圧板13に結合されたサーボピストン16が、軸方向移動可能に支持されている。
【0037】
サーボシリンダ15とサーボピストン16は、環状圧力室17を密閉形成し、エンジンクラッチ3の加圧装置6を形成している。その圧力室17は接続管18とクラッチ制御装置19とを介して圧力媒体源7に接続されている。
【0038】
圧力室17における作動圧力の形成によって、押圧要素として作用する加圧板13は、サーボピストン16によってエンジン2の方向に押圧され、これにより、回転板9がフライホィール12と加圧板13との間に挟み込まれ、これによって、エンジン2のクランクシャフト11から変速機4の入力軸10にトルクが摩擦伝達される。その場合、クラッチカバー14がサーボシリンダ15を介して、加圧装置6により発生された押圧力を支持するための支持要素として作用する。
【0039】
圧力室17が無圧状態にある場合、エンジンクラッチ3が解放され、その解放は、ここでは、摩擦抵抗を克服するためにフライホィール12と加圧板13との間に配置された復帰ばね20によって確保されている。
【0040】
図示された実施例において、加圧装置6は空気圧式に実効的に形成されている。それに従って、圧力媒体源7として自動車の圧縮空気供給装置21が利用される。この圧縮空気供給装置21はエンジンで駆動される圧縮機22から成り、この圧縮機22によって、圧縮空気が可制御圧力制限弁23を介して、アキュムレータ24を備えた系統圧力管25に供給される。その系統圧力管25に負荷(図示せず)が接続されている。
【0041】
クラッチ制御弁19は、圧力媒体源7に通じている供給管26に対する接続口と、加圧装置6の圧力室17に通じている接続管18に対する接続口と、圧力放出管27に通じている接続口とを備えた圧力調整弁として形成されている。
【0042】
唯一の図に示された実施例において、クラッチ制御弁19は、2つの個々の2ポート2位置弁で実現されている。そのうちの第1の2ポート2位置弁34は、供給管26を介して圧力媒体源7に接続され、他の接続管18を介して上述の圧力室17に接続されている。これに対して、第2の2ポート2位置弁35は、接続管18を介して圧力室17に接続され、他の接続口を介して圧力放出管27に接続されている。
【0043】
これらの両2ポート2位置弁34、35を制御するために、好適には、エンジンクラッチ3、8の圧力室17の圧力を検出して制御装置に伝える圧力センサ33が設けられている。その制御装置は、両2ポート2位置弁34、35の目的に適った作動によって、エンジンクラッチの伝達トルクを制御する。
【0044】
クラッチ制御弁19ないし両ポート2位置弁34、35における中間位置の設定によって、加圧装置6の圧力室17における作動圧力、従って、エンジンクラッチ3の伝達可能なトルクが無段調整できる。
【0045】
圧力媒体源7における圧力喪失時にクラッチ制御を維持するために、供給管26に、圧力媒体源7方向への遮断機能を有する逆止め弁30と、別個のアキュムレータ31とが配置されている。また、供給管26は、クラッチ制御の系統圧力を制限するために、可調整圧力制限弁32、例えば比例弁を備えている。
【0046】
本発明に基づくエンジンクラッチ3は、部品の比較的より低い負荷と、ほとんど遊びのない形成と、可能な圧力制御とにより、単純で安価な構造において向上された制御性と迅速な応答性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に基づくエンジンクラッチとその制御装置とを備えた動力伝達系の概略構成図。
【符号の説明】
【0048】
1 動力伝達系
2 エンジン
3 エンジンクラッチ
4 変速機
5 車軸駆動装置(差動装置)
6 加圧装置
7 圧力媒体源
8 単板乾式クラッチ
9 回転板
10 入力軸
11 クランクシャフト
12 フライホィール
13 加圧板、押圧要素
14 クラッチカバー、支持要素
15 サーボシリンダ
16 サーボピストン
17 圧力室
18 接続管
19 クラッチ制御弁
20 復帰ばね
21 圧縮空気供給装置
22 圧縮機、圧力媒体ポンプ
23 圧力制限弁
24 アキュムレータ
25 系統圧力管
26 供給管
27 圧力放出管
30 逆止め弁
31 アキュムレータ
32 圧力制限弁
33 圧力センサ
34 2ポート2位置弁
35 2ポート2位置弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関として形成されたエンジン(2)と、車軸駆動装置(5)に結合された伝達比可変式変速機(4)と、エンジン(2)と変速機(4)との間の動力経路に配置された自動エンジンクラッチ(3)とを有し、該エンジンクラッチ(3)が能動式に係合可能な摩擦クラッチとして形成され、該エンジンクラッチ(3)の伝達可能なトルク(クラッチトルク)が圧力媒体式制御によって設定可能な、自動車の動力伝達系(1)において、
エンジンクラッチ(3)が加圧ばねを伴わずに形成され、圧力媒体作動式加圧装置(6)を有し、
該加圧装置(6)は、エンジンクラッチ(3)が:
不作動状態において、最大圧力による加圧装置(6)の作用によって係合され;
より小さいクラッチトルクを設定するため、あるいは該エンジンクラッチ(3)を解放するための作動状態において、低減された作用圧力による加圧装置(6)の作用によって少なくとも部分的に解放される、
ように圧力媒体源(7)に接続されている、ことを特徴とする自動車の動力伝達系。
【請求項2】
加圧装置(6)が、サーボシリンダ(15)と、該サーボシリンダ(15)内に軸方向移動可能に支持されたサーボピストン(16)と、サーボシリンダ(15)とサーボピストン(16)とにより密閉形成された圧力室(17)とを有し、該圧力室(17)が接続管(18)とクラッチ制御弁(19)とを介して圧力媒体源(7)に接続され、サーボシリンダ(15)又はサーボピストン(16)のいずれか一方の部品が、エンジンクラッチ(3)の支持要素(14)に結合され、他方の部品(サーボピストン(16)又はサーボシリンダ(15))が、エンジンクラッチ(3)の加圧要素(13)に結合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達系。
【請求項3】
エンジンクラッチ(3)が、エンジン(2)のフライホィール(12)に結合されたクラッチカバー(14)と変速機側の加圧板(13)とを備えた単板ないし多板乾式クラッチとして形成されている場合において、サーボシリンダ(15)がクラッチカバー(14)の環状ポット形に形成された部分によって形成され、これに相応して環状に形成されたサーボピストン(16)が加圧板(13)に結合されている、ことを特徴とする請求項2に記載の動力伝達系。
【請求項4】
圧力媒体源(7)が、圧力媒体ポンプ(22)から供給されるアキュムレータ(24)を備えた圧力供給装置(21)として形成されている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の動力伝達系。
【請求項5】
加圧装置(6)が空気圧作動式に形成され、自動車の圧縮空気供給装置(21)に接続されている、ことを特徴とする請求項4に記載の動力伝達系。
【請求項6】
加圧装置(6)が液圧作動式に形成され、自動車あるいは変速機の液圧供給装置に接続されている、ことを特徴とする請求項4に記載の動力伝達系。
【請求項7】
クラッチ制御弁(19)によって:
不作動状態において、接続管(18)と圧力媒体源(7)との接続部が全開され、接続管(18)と圧力放出管(27)との接続部が全閉され;
作動状態において、接続管(18)と圧力媒体源(7)との接続部が少なくとも部分的に閉じられ、接続管(18)と圧力放出管(27)との接続部が少なくとも部分的に開かれる、ことを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の動力伝達系。
【請求項8】
クラッチ制御弁(19)が、圧力媒体源(7)に通じている供給管(26)との接続口と、加圧装置(6)の圧力室(17)に通じている接続管(18)との接続口と、圧力放出管(27)との接続口とを備えた圧力調整弁として形成されている、ことを特徴とする請求項7に記載の動力伝達系。
【請求項9】
クラッチ制御弁(19)が、1つの3ポート2位置弁によって形成され、あるいは2つの2ポート2位置弁(34、35)によって形成されて、第1の2ポート2位置弁(34)が、供給管(26)を介して圧力媒体源(7)に接続され且つ接続管(18)を介して圧力室(17)に接続され、第2の2ポート2位置弁(35)が、接続管(18)を介して圧力室(17)に接続され且つ他の接続口を介して圧力放出管(27)に接続されている、ことを特徴とする請求項8に記載の動力伝達系。
【請求項10】
圧力室(17)の圧力が、圧力センサ(33)によって検出され、クラッチ制御弁(19)、両2ポート2位置弁(34、35)、ないしクラッチ伝達トルクを制御するために利用される、ことを特徴とする請求項8に記載の動力伝達系。
【請求項11】
圧力媒体源(7)における圧力喪失時にクラッチ制御を維持するために、圧力媒体源(7)方向への遮断機能を有する逆止め弁(30)が、クラッチ制御弁(19)と圧力媒体源(7)との間に配置されている、ことを特徴とする請求項2ないし10のいずれか1つに記載の動力伝達系。
【請求項12】
圧力媒体源(7)における圧力喪失時にクラッチ制御を維持するために、別個のアキュムレータ(31)がクラッチ制御弁(19)と圧力媒体源(7)との間に配置されている、ことを特徴とする請求項2ないし11のいずれか1つに記載の動力伝達系。
【請求項13】
クラッチ制御の系統圧力を制限するために、可調整圧力制限弁(32)がクラッチ制御弁(19;34、35)と圧力媒体源(7)との間に配置されている、ことを特徴とする請求項2ないし12のいずれか1つに記載の動力伝達系。
【請求項14】
エンジンクラッチ(3)および/又は加圧装置(6)が、加圧装置(6)の無圧時にエンジンクラッチ(3)を完全解放するための復帰ばね(20)を備えている、ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の動力伝達系。
【請求項15】
自動車の動力伝達系において内燃機関として形成されたエンジン(2)と車軸駆動装置(5)に結合された伝達比可変式変速機(4)との間の動力経路に配置された自動エンジンクラッチの制御方法であって、そのエンジンクラッチが、能動式に係合可能な摩擦クラッチとして形成され、該エンジンクラッチの伝達可能なトルク(クラッチトルク)が圧力媒体式制御によって設定可能な、自動エンジンクラッチの制御方法であって、
加圧ばねを伴わずに形成されたエンジンクラッチ(3)において、圧力媒体源(7)に接続された圧力媒体作動式加圧装置(6)が:
不作動状態において、最大圧力による加圧装置(6)の作用によって係合され;
より小さいクラッチトルクを設定するためあるいは該エンジンクラッチ(3)を解放するための作動状態において、低減された作用圧力による加圧装置(6)の作用によって少なくとも部分的に解放される、ことを特徴とする自動エンジンクラッチの制御方法。
【請求項16】
加圧装置(6)が接続管(18)とクラッチ制御弁(19)とを介して圧力媒体源(7)に接続されている場合において、クラッチ制御弁(19)によって:
不作動状態において、接続管(18)と圧力媒体源(7)との接続部が全開され、且つ接続管(18)と圧力放出管(27)との接続部が全閉され;
作動状態において、接続管(18)と圧力媒体源(7)との接続部が少なくとも部分的に閉じられ、接続管(18)と圧力放出管(27)との接続部が少なくとも部分的に開かれる、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
エンジンクラッチ(3)のクラッチトルクの設定が、加圧装置(6)を介して圧力制御として実施される、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
圧力室(17)における圧力が、検出され、クラッチ制御弁(19;34、35)ないしエンジンクラッチ(3、8)の伝達トルクを制御するために利用される、ことを特徴とする請求項15ないし17のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540949(P2008−540949A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510434(P2008−510434)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003635
【国際公開番号】WO2006/119848
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】