説明

自動車の後部構造

【課題】車室や荷室のスペースを犠牲にすることなく、リアパッケージトレイの後端部に形成される閉断面部の剛性をより向上させる。
【解決手段】車幅方向に伸びてリアパッケージトレイ20によって、車室3と荷室4とが上下方向に仕切られる。リアパッケージトレイ1の後端部には、リアパッケージメンバ12と共働して、車幅方向に伸びる後閉断面部22が形成される。後閉断面部22は、上下の高さに対して前後の長さが大きく形成される。また、後閉断面部22の車幅方向途中部分が、連結部41(42,43あるいは45と46)によって上下で連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、特にトランクルームを有する形式の自動車においては、車室と荷室とを上下方向に仕切るリアパッケージトレイが設けられることが多い。このリアパッケージトレイは、略水平方向に伸びると共に車幅方向に伸ばして配設されて、その剛性を向上させるために、特許文献1に示すように、前端部と後端部とにはそれぞれ車幅方向に伸びる閉断面部が形成されることが一般的となっている。リアパッケージトレイの後端部に形成される閉断面部は、リアパッケージトレイとこれに接合されたリアパッケージメンバとによって形成される。このような閉断面部の形成による剛性の向上によって、リアパッケージトレイの振動が効果的に抑制されることになる。
【特許文献1】実開平05−92064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、リアパッケージトレイの後端部に形成される閉断面部は、さらなる剛性向上のために、その断面積をより大きくすることが望まれている。しかしながら、閉断面部を上下方向に大きく形成することによって断面積を大きくすることは、事実上難しいものとなる。すなわち、閉断面部を上方に大きく拡大すると、車室スペースを小さくしたり後方視界を小さく原因となり、また下方に大きく拡大すると、荷室スペースを小さくしてしまうことになる。
【0004】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、車室や荷室のスペースを犠牲にすることなく、リアパッケージトレイの後端部に形成される閉断面部の剛性をより向上させることのできるようにした自動車の後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
車幅方向に伸びて車室と荷室とを上下方向に仕切るリアパッケージトレイと、該リアパッケージトレイの後端部との間で車幅方向に伸びる閉断面部を形成するリアパッケージメンバと、を備えた自動車の後部構造であって、
前記閉断面部は、上下の高さに対して前後の長さが大きく形成され、
前記閉断面部の車幅方向途中部分を上下で連結する連結部が形成されている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、リアパッケージトレイ後端部の閉断面部を、上下方向に比して前後方向を長く形成して極力その断面積を大きくする一方、連結部でもって上下方向の剛性をも向上させるようにしてあるので、全体として閉断面部の剛性を大きく向上させて、リアパッケージトレイの振動をより十分に抑制することができる。また、上記閉断面部は、上下方向には大きく拡大されないので、車室スペースや荷室スペースが犠牲になることもない。
【0006】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記連結部は、前記閉断面部内に充填された発泡材から構成されている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、リアパッケージトレイやリアパッケージメンバの成形性に影響を与えることなく閉断面部の剛性を容易にチューニングできる。
【0007】
前記連結部は、プレス加工によって前記リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの一方から前記閉断面部内に突出された突出部から構成されて、該突出部の突出端部が該リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの他方に連結されている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、部品点数を増加させることなく、閉断面部の剛性を大幅に向上させることができる。
【0008】
前記連結部は、プレス加工によって前記リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの双方から前記閉断面部内に突出される一対の突出部から構成されて、該各突出部の突出端部同士が互いに連結されている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの両方に突出部を形成することにより、一方側の突出量を少なくすることが可能となって、プレス加工を容易に行う上で好ましいものとなる。
【0009】
前記突出部の側面形状が円錐の側面形状とされている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、突出部に大きな屈曲部を形成しないようにしてプレス加工を容易にしつつ、突出部そのものを剛性をも十分に確保して、閉断面部の剛性を大幅に向上させる上で好ましいものとなる。
【0010】
前記連結部が、前記リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの一方から切り起こされて他方に連結されたブラケット部から構成されている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、部品点数を増加させることなく、容易に加工することができる。
【0011】
前記閉断面部の後部上にリアウインドガラスの後端部が支持され、
前記連結部は、前記閉断面部の少なくとも後部側に設けられている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、リアウインドガラスの支持剛性を向上でき、リアウインドガラスの振動抑制の上で好ましいものとなる。
【0012】
前記連結部は、前記閉断面部の後部側にのみ設けられ、
前記閉断面部内の前部には、ハーネスが配設されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、リアウインドガラスの支持剛性を向上させつつ、閉断面部内をハーネスの配設用空間として有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車室や荷室のスペースを犠牲にすることなく、リアパッケージトレイの後端部に形成される閉断面部の剛性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1において、1はリアフロアパネルであり、リアフロアパネル1の後端部は、下方に向けてへこまされたスペアタイヤの収納空間2が形成されている。リアフロアパネル1の上方には、リアパッケージトレイ20が配設されている。このリアパッケージトレイ20は、略水平に伸びると共に車幅方向に伸びている。このリアパッケージトレイ20の上方は車室3とされ、リアパッケージトレイ20の下方は荷室4とされている。
【0015】
リアパッケージトレイ20は、例えば図2に示すような平面形状とされて、その車幅方向端部は、車体側壁部に連結、一体化されている。このリアパッケージトレイ20の前端部は、リアフロアパネル1の上方でかつ収納空間2よりも若干前方位置において車幅方向に伸びるクロスメンバ11に連結されて、このクロスメンバ11と共働して前閉断面部21が形成されている。また、リアパッケージトレイ20の後端部には、リアパッケージメンバ(レインフォースメント)12が接合されて、このリアパッケージメンバ12と共働して後閉断面部22が形成されている。各閉断面部21,22は、車体側壁に連なるように車幅方向に長く形成されている。なお、リアパッケージトレイ20には、スピーカ用の開口部5や、軽量化のための開口部6が形成されている。
【0016】
リアパッケージトレイ20の後端部上、つまり後閉断面部22の後端部上には、リアウインドガラス13の後端部が支持(一体化)されている。そして、前記荷室4は、リアパッケージトレイ20およびリアウインドガラス13の後方に配設されたトランクリッド14によって開閉されるようになっている。なお、図1中、15はリアエンドパネル、16はリヤバンパ、31はハイマウントストップランプである。
【0017】
前記前閉断面部21は、上下方向と前後方向の長さが互いにほぼ等しく設定されて、大きな断面積を有するように設定されている。なお、クロスメンバ11の下方は、荷室4とその前方にある車室とを連通させる連通空間17が形成されて、この連通空間17は、図1一点鎖線で示す蓋部材18(あるいはリアシートのシートバック)によって開閉されるようになっている。
【0018】
一方、後閉断面部22は、上下の長さに対して前後方向の長さが十分に大きく設定されて、全体的に扁平形状とされている。実施形態では、後閉断面部22は、その上下長さが前後長さの1/3〜1/5程度に設定されている。後閉断面部22の上下寸法は従来と同程度に小さいものに設定しつつも、前後方向に拡大されることによって、従来よりも剛性が向上されている。
【0019】
ここで、リアパッケージトレイ20の後端部のうち車幅方向中間部には、図3にも示すように、ハイマウントストップランプ30が取付けられている。そして、ハイマウントストップランプ30の配線(電源用配線)となるハーネス31が、後閉断面部22内を車幅方向に伸ばして配設されている。
【0020】
後閉断面部22は、後述する連結部によって、その上下(上下の壁)が連結されて、剛性がさらに大きく向上されている。図4は、連結部を構成する第1の例を示すものである。すなわち、図4の例は、後閉断面部22内に充填された発泡材41によって連結部を構成するもので、後閉断面部22を上下に連結している(発泡材41は硬質合成樹脂である)。このような発泡材41は、例えば、未発泡の発泡材を車体の塗装乾燥前に後閉断面部22内に配設して、その後の塗装乾燥時の高熱によって発泡させるればよい。また、リアパッケージトレイ20に位置決め孔20aが形成されて、未発泡の充填材が位置決め孔20aを利用して位置決めされると共に、発泡後においても位置決めされる。この図4の例では、発泡材41は、後閉断面部22の後端部にのみ位置されて、後閉断面部22の前端部内には、前述したハーネス31が配設されている。図4の例では、発泡材41によって、後閉断面部22の後端部の剛性が特に向上されて、リアウインドガラス13の支持剛性を高めつつ、後閉断面部22の前端部内の空間をハーネス31配設用の空間として有効利用することができる。また、発泡材41を後閉断面部22内のほぼ全容積を発泡材41で充填する場合に比して、発泡材41の使用量を少なくすることができる。このような発泡材41は、後閉断面部22のうち少なく車幅方向中間部に存在するように配設してあるが、車幅方向に間隔をあけて複数あるいは車幅方向ほぼ全長に渡って連続的に存在させるようにしてもよい。
【0021】
図5は、連結部の第2の構成例を示すもので、図4の変形例となる。図5に示す例では、発泡材41が、後閉断面部22内のほぼ全容積部分に充填されたものとなっている。本例では、図4の場合に比して、後閉断面部22の剛性をさらに向上させることができる。なお、発泡材41は、図4の場合と同様に、後閉断面部22のうち少なく車幅方向中間部に存在するように配設してあるが、車幅方向に間隔をあけて複数あるいは車幅方向ほぼ全長に渡って連続的に存在させるようにしてもよい。
【0022】
図6,図7は、連結部の第3の構成例を示すものである。本例では、後閉断面部22の底壁部の一部を上方に前後方向から切り起こすことにより、突出部としてのブラケット部42を形成してある。そして、ブラケット部42の突出端部を、後閉断面部22の上壁部に連結してある(例えば溶接接合)。このようなブラケット部42は、少なくとも車幅方向中間部に存在するようにして、車幅方向に間隔をあけて複数形成してある。なお、図6,図7において、符合42aは、ブラケット部42を切り起こしによって形成することに伴って形成された開口部である。
【0023】
図8〜図10は、連結部の第4の構成例を示すものである。本例では、後閉断面部22の底壁部の一部を車幅方向から切り起こすことにより、突出部としてのブラケット部43(ブラケット部42に対応)を形成してある。そして、ブラケット部43の突出端部を、後閉断面部22の上壁部に連結してある(例えば溶接接合)。このようなブラケット部43は、少なくとも車幅方向中間部に存在するようにして、車幅方向に間隔をあけて複数形成してある。なお、図8〜図10において、符合43aは、ブラケット部43を切り起こしによって形成することに伴って形成された開口部である。
【0024】
図11は、連結部の第5の構成例を示すものである。本例では、後閉断面部22の底壁部から上方へ突出された下突出部45と、上壁部から下方へ突出された上突出部46とをプレス加工により形成してある。各突出部45,46は、その突出端部がそれぞれ平坦面とされて、この平坦面部分でもって互いに連結(例えば溶接接合)されている。また、各突出部45、46の側面形状は、円錐の側面形状とされている(上方から見たときに側面の外周縁が円形となる)。上下一対の突出部45、46は、少なくとも車幅方向中間部に存在するようにして、車幅方向に間隔をあけて複数形成してある。各突出部45,46はプレス加工によって形成されているが、上下から突出部45,46を形成することによって各突出部45,46の突出量を小さくすることが可能となり、また円錐の側面形状を有することから屈曲される部分も極力少なくなって、プレス加工が容易となる。勿論、突出部45あるいは46はいずれか一方のみを設けるようにしてもよい(例えば、後閉断面部22の底壁部から上方へ突出する突出部を設けて、その突出端部を後閉断面部22の上壁部に連結する構造)。
【0025】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。図6〜図10の例において、ブラケット部42あるいは43を、上方から下方に向けて後閉断面部22内に突出するように形成してもよい。後閉断面部22内に、別部材としてあらかじめ形成された金属製あるいは合成樹脂製の連結部材を配設して、この連結部材によって後閉断面部の底壁部と上壁部とを連結するようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明が適用された自動車の後部を示す側面断面図。
【図2】図1に示すリアパッケージトレイの平面図。
【図3】図2のX3−X3線相当断面図。
【図4】連結部の第1の構成例を示す要部側面断面図。
【図5】連結部の第2の構成例を示す要部側面断面図。
【図6】連結部の第3の構成例を示す要部側面断面図で、図7のX6−X6線相当断面図。
【図7】連結部として第3の構成例が適用されたリアパッケージトレイの要部平面図。
【図8】連結部の第4の構成例を示す要部側面断面図で、図9のX8−X8線相当断面図。
【図9】連結部として第4の構成例が適用されたリアパッケージトレイの要部平面図。
【図10】図9のX10−X10線相当断面図。
【図11】連結部の第5の構成例を示す要部側面断面図。
【符号の説明】
【0027】
3:車室
4:荷室
12:リアパッケージメンバ
13:リアウインドガラス
20:リアパッケージトレイ
21:前閉断面部
22:後閉断面部
31:ハーネス
41:発泡材
42:ブラケット部
43:ブラケット部
45,46:突出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に伸びて車室と荷室とを上下方向に仕切るリアパッケージトレイと、該リアパッケージトレイの後端部との間で車幅方向に伸びる閉断面部を形成するリアパッケージメンバと、を備えた自動車の後部構造であって、
前記閉断面部は、上下の高さに対して前後の長さが大きく形成され、
前記閉断面部の車幅方向途中部分を上下で連結する連結部が形成されている、
ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記連結部は、前記閉断面部内に充填された発泡材から構成されている、ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記連結部は、プレス加工によって前記リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの一方から前記閉断面部内に突出された突出部から構成されて、該突出部の突出端部が該リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの他方に連結されている、ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記連結部は、プレス加工によって前記リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの双方から前記閉断面部内に突出される一対の突出部から構成されて、該各突出部の突出端部同士が互いに連結されている、ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記突出部の側面形状が円錐の側面形状とされている、ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項6】
請求項1において、
前記連結部が、前記リアパッケージトレイとリアパッケージメンバの一方から切り起こされて他方に連結されたブラケット部から構成されている、ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記閉断面部の後部上にリアウインドガラスの後端部が支持され、
前記連結部は、前記閉断面部の少なくとも後部側に設けられている、
ことを特徴とする自動車の後部構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記連結部は、前記閉断面部の後部側にのみ設けられ、
前記閉断面部内の前部には、ハーネスが配設されている、
ことを特徴とする自動車の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−179231(P2009−179231A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21386(P2008−21386)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】