説明

自動車の後部車体構造

【課題】同相横力に対する剛性の確保のみならず、異相横力に対しても剛性を確保することができ、加えて、周波数300H前後の面共振をなくすことができる自動車の後部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】クロスメンバ部23が左右のサイドメンバ部22,22から車幅方向内側下方に延びる車幅方向側部23Sと、両車幅方向側部23S,23Sを連結する中央部23Cとを有してパイプ材から構成され、該中央部23Cが上下方向でアッパアーム支持部28とロアアーム支持部29間であって、両者28,29間の上下中央よりも下方に配設されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右のサイドメンバ部と、クロスメンバ部とを有し、リヤサスペンションを支持するリヤサブフレームを備えたような自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リヤ側のサスペンションを支持するリヤサブフレーム(リヤサスペンションクロスメンバと同意)は、左右のサイドメンバ部と、クロスメンバ部とを有しており、このリヤサブフレームを備えた自動車の後部車体構造としては、図16,図17に示すような構造のものが知られている。
【0003】
図16に底面図にて模式的に示す従来構造(特許文献1参照)は、左右のサイドメンバ部81,81と、前後のクロスメンバ部82,83とを有するサブフレーム80を設け、左右の各サイドメンバ部81,81における前後両側の車体取付部81a,81bをそれぞれ左右のリヤサイドフレーム84,84に連結し、サイドメンバ部81,81の前部81cと車体クロスメンバ85とを延長部材86,86で連結している。
【0004】
図16において、上述のサイドメンバ部81は、平面視で車幅方向内方に略円弧状に湾曲している。この湾曲構造は、サスペンションのスプリング(コイルスプリング)をリヤサイドフレーム84の台座で支持するため、該スプリングの配置スペースを確保する目的と、アーム長(アーム88の長さ参照)を長くして後輪87上下動に対するトー角などのジオメトリ変化を抑制する目的と、を達成するためである。
なお、図16において、88は前側ロアアーム、89は後側ロアアームであり、また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0005】
図16に示す従来構造においては、次のような問題点があった。
すなわち、サイドメンバ部81の前後の車体取付部81a,81b間の距離が長く、かつ湾曲しているので、横力の入力に対して剛性を確保するために、該サイドメンバ部81の板厚を大きくする必要があり、重量が大となる。
また、後突時に、リヤサイドフレーム84後部が受けた後突荷重は、同図に矢印で示すように、リヤサイドフレーム84の前部に集中するので、リヤサイドフレーム84前方のサイドシル周辺の車体変形が増加する問題点があった。
さらに、前側車体取付部81aと前側ロアアーム88の支持部88aとの間の距離が長く、剛性的に不利であった。
加えて、上述の延長部材86でサイドメンバ部81の前部81cを車体クロスメンバ85に接続した分、サブフレーム80の剛性は幾分向上するが、該延長部材86の長さ分だけ変形しやすくなると共に、延長部材配置スペースが必要となるうえ、重量が増加する問題点があった。
【0006】
図17に底面図にて模式的に示す従来構造(特許文献2参照)は、左右のサイドメンバ部81,81と、前後のクロスメンバ部82,83とを有するサブフレーム80Aを設け、左右の各サイドメンバ部81,81における前後両側の車体取付部81a,81bをそれぞれ左右のリヤサイドフレーム84,84に連結し、上述のサイドメンバ部81を、図16の従来構造と同様の目的で、平面視で車幅方向内方に略円弧状に湾曲形成させている。
【0007】
図17において、サブフレーム80Aの前側の車体取付部81aをリヤサイドフレーム84に連結すべく、サイドメンバ部81,81を車幅方向内方へ湾曲させることは、サブフレーム80Aの前部が、前後方向に延びる車体強度部材としてのリヤサイドフレーム84に強固に支持されるので、サブフレーム80Aと車体との連結強度の観点でも、また後突時のサブフレーム80Aの前方移動抑制の観点でも好ましく、さらにサイドメンバ部81の湾曲形状が変形しやすい点も前方移動抑制の観点で好ましいと思われていた。
【0008】
しかしながら、図17に示す従来構造においても、図16の従来構造と同様に、前側車体取付部81aと前側ロアアーム88の支持部88aとの間の距離を短くすることができず、剛性的に不利であった。
さらに、図17に示す従来構造においては、前側ロアアーム88の支持部88aと前側アッパアーム(図示せず)の支持部とを前後方向の同一位置に配置し、正面視において、右上アッパアームと左下ロアアームとの間、および、左上アッパアームと右下ロアアームとの間で、タスキ掛け状に荷重を相殺すべく構成して、旋回時等において左右の後輪87,87が同じ側に倒れるような同相横力を相殺できるように構成している。
【0009】
しかしながら、図17に示す従来構造においては、同相横力は相殺できるものの、凹凸路(凸凹道)走行時等において左右の後輪87,87が異なる側に倒れるような異相横力では、クロスメンバ部82がパネル製であり、かつ前側のロアアーム88の支持部88aとクロスメンバ部82の中央部との上下オフセット量が大きいので、剛性改善の余地があり、さらに、パネル製のクロスメンバ部82が周波数300H前後で面共振するという問題点があった。なお、図17において、図16と同一の部分には、同一符号を付している。
そこで、従来から自動車の後部車体構造には、同相横力および異相横力に対する剛性の確保と、面共振の抑制を図ることが要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−247622号公報
【特許文献2】特開2009−255902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、クロスメンバ部が左右のサイドメンバ部から車幅方向内側下方に延びる車幅方向側部と、両車幅方向側部を連結する中央部とを有してパイプ材から構成され、該中央部が上下方向でアッパアーム支持部とロアアーム支持部間であって、両者間の上下中央よりも下方に配設されることにより、左右輪が同じ側に倒れる旋回時等に入力される同相横力に対する剛性の確保のみならず、左右輪が異なる側に倒れる凹凸路走行時等に入力される異相横力に対しても剛性を確保することができ、加えて、周波数300H前後の面共振をなくすことができる自動車の後部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による自動車の後部車体構造は、左右のサイドメンバ部と、クロスメンバ部とを有するリヤサブフレームを備えた自動車の後部車体構造であって、上記サイドメンバ部は車体取付部を備え、平面視で前側車体取付部近傍に、該前側車体取付部よりも上方のアッパアーム支持部と、サイドメンバ部から下方に離間したロアアーム支持部とが設けられ、これら両アーム支持部と上記クロスメンバ部とが前後に重なる位置に配置されており、該クロスメンバ部は、上記左右サイドメンバ部からそれぞれ車幅方向内側下方に延びる左右の車幅方向側部と、これら両車幅方向側部を連結する中央部を有するパイプ材から形成された部位を有し、アッパアーム支持部とロアアーム支持部との上下方向間において、上下方向中央よりも上方で上記サイドメンバ部がアッパアーム支持部にブラケットを介して連結され、上記ロアアーム支持部よりも上方で、かつ上下方向中央よりも下方に、上記中央部の位置が設定され、上記ロアアーム支持部は、上記中央部または該中央部に隣接した車幅方向側部の中央部隣接部位にブラケットを介して連結されたものである。
【0013】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、前側車体取付部近傍にアッパアーム支持部とロアアーム支持部とが設けられており、各アーム支持部と前側車体取付部との車幅方向距離の短縮を図ることができるので、アーム支持部が車体に対して強固に取付けられ、アーム支持剛性と軽量高剛性化との両立を図ることができる。
また、両アーム支持部とクロスメンバ部とが平面視で前後方向に重なる位置に配置されるので、前後位置が異なるものと比較して、横力によるサイドメンバ部への車幅方向曲げモーメントを抑制することができ、好ましくないジオメトリ変化を防止することができる。
さらに、ロアアーム支持部はサイドメンバ部から下方に離間しているが、クロスメンバ部の側部における中央部隣接位置または中央部に取付けられており、横方向の荷重(横力)は中央部を介して反対側に伝えられるので、剛性を確保することができる。
【0014】
加えて、クロスメンバ部の中央部は、ロアアーム支持部よりも上方に設定されているので、旋回時等に入力される同相横力は、右上アッパアームと左下ロアアームとの間、左上アッパアームと右下ロアアームとの間で、タスキ掛け状に荷重相殺でき、また左右反対側のサイドメンバ部へ略直線的に荷重伝達でき、剛性の向上を図ることができると共に、上述のクロスメンバ部をパイプ材で構成したので、周波数300H前後での面共振をなくすことができる。
しかも、クロスメンバ部の中央部は、アッパアーム支持部とロアアーム支持部との上下方向間における中央よりも下方に設定されており、アッパアーム支持部に対して作用する横力よりも大きい横力が作用する左右のロアアーム支持部とクロスメンバ部の中央部との上下距離短縮を図っているので、異相横力(左右輪が異なる側に倒れる時に入力される力)を、上述の中央部で水平方向に相殺することができる。
要するに、同相横力に対する剛性の確保のみならず、異相横力に対しても剛性を確保することができ、加えて、周波数300H前後の面共振をなくすことができるものである。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記サイドメンバ部は、パイプ材から形成されると共に、上記ロアアーム支持部と連結されたものである。
上記構成によれば、サイドメンバ部を、捻りに強いパイプ材(閉断面構造部材)で形成し、上記ロアアーム支持部をサイドメンバ部にも支持させたので、横力に対してさらに軽量高剛性化を図ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記アッパアーム支持部は、上記サイドメンバ部におけるクロスメンバ部の延長方向と反対側の部位に連結されたものである。
上記構成によれば、左右同相の横力に対し、アッパアームと反対側のロアアームの横力相殺量を増加することができ、また、両アーム支持部をサイドメンバ部下方に設ける構造に対して、両アーム支持部とサイドメンバ部や車体取付部との距離を短縮することで、軽量高剛性化を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記リヤサブフレームは、上記ロアアーム支持部から後方向に離間した位置で後側ロアアームを支持する後側クロスメンバ部を有し、該後側クロスメンバ部の左右両側部は、後側ロアアーム支持部から前後方向に分岐して上記サイドメンバ部に連結されたものである。
上記構成によれば、後側クロスメンバ部の左右側部を分岐してサイドメンバ部に連結したので、分岐した部分とサイドメンバ部とでトラス構造を形成することができ、後側クロスメンバ部の前後左右方向の剛性向上を図ることができ、このような構成の後側クロスメンバ部と、パイプ材にて形成した前側クロスメンバ部とにより、リヤサブフレームを平面視で平行四辺形的な変形荷重に対して高剛性化することができる。
また、後側ロアアーム支持部の前後剛性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クロスメンバ部が左右のサイドメンバ部から車幅方向内側下方に延びる車幅方向側部と、両車幅方向側部を連結する中央部とを有してパイプ材から構成され、該中央部を上下方向でアッパアーム支持部とロアアーム支持部間であって、両者間の上下中央よりも下方に配設したので、左右輪が同じ側に倒れる旋回時等に入力される同相横力に対する剛性の確保のみならず、左右輪が異なる側に倒れる凹凸路走行時等に入力される異相横力に対しても剛性を確保することができ、加えて、周波数300H前後の面共振をなくすことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明の自動車の後部車体構造を示す底面図
【図2】図1からリヤサブフレームおよびサスペンションアームを取外した状態の底面図
【図3】図1のA‐A線矢視断面図
【図4】リヤサブフレームの斜視図
【図5】リヤサブフレームを下方から見上げた状態で示す斜視図
【図6】リヤサブフレームの平面図
【図7】リヤサブフレームの正面図
【図8】リヤサブフレームの背面図
【図9】リヤサブフレームの側面図
【図10】図6のB‐B線矢視断面図
【図11】自動車の後部車体構造を模式的に示す底面図
【図12】同相横力入力時の説明図
【図13】異相横力入力時の説明図
【図14】自動車の後部車体構造の他の実施例を示す平面図
【図15】図14のC‐C線矢視断面図
【図16】従来の自動車の後部車体構造を模式的に示す底面図
【図17】従来の自動車の後部車体構造の他の例を模式的に示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
左右輪が同じ側に倒れる旋回時等に入力される同相横力に対する剛性の確保のみならず、左右輪が異なる側に倒れる凹凸路走行時等に入力される異相横力に対しても剛性を確保することができ、加えて、周波数300H前後の面共振をなくすという目的を、左右のサイドメンバ部と、クロスメンバ部とを有するリヤサブフレームを備えた自動車の後部車体構造において、上記サイドメンバ部は車体取付部を備え、平面視で前側車体取付部近傍に、該前側車体取付部よりも上方のアッパアーム支持部と、サイドメンバ部から下方に離間したロアアーム支持部とが設けられ、これら両アーム支持部と上記クロスメンバ部とが前後に重なる位置に配置されており、該クロスメンバ部は、上記左右サイドメンバ部からそれぞれ車幅方向内側下方に延びる左右の車幅方向側部と、これら両車幅方向側部を連結する中央部を有するパイプ材から形成された部位を有し、アッパアーム支持部とロアアーム支持部との上下方向間において、上下方向中央よりも上方で上記サイドメンバ部がアッパアーム支持部にブラケットを介して連結され、上記ロアアーム支持部よりも上方で、かつ上下方向中央よりも下方に、上記中央部の位置が設定され、上記ロアアーム支持部は、上記中央部または該中央部に隣接した車幅方向側部の中央部隣接部位にブラケットを介して連結されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1は自動車の後部車体構造を示す底面図、図2は図1からリヤサブフレームおよびサスペンションアーム等を取外した状態の底面図、図3は図1のA‐A線矢視断面図である。
【0022】
<車体構造の説明>
図2,図3において、センタフロアパネル1の後部には、リヤシートパン2と、前低後高状に傾斜して後方に延びるスラント部3と、を介してリヤフロア4(フロアパネル)を連設している。
上述のセンタフロアパネル1および図示しないフロントフロアパネルにはその車幅方向中央において車室内へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部5を一体または一体的に形成すると共に、センタフロアパネル1およびフロントフロアパネルの車幅方向両端部には、サイドシル6を接合固定している。
【0023】
このサイドシル6は、サイドシルインナとサイドシルアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体強度部材であり、サイドシル閉断面内には必要に応じてサイドシルレインフォースメントが設けられる。
上述のリヤシートパン2からスラント部3およびリヤフロア4にかけて、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム7を設けている。
【0024】
このリヤサイドフレーム7はホイールハウス8の車幅方向内側において、車両の左側と右側とにそれぞれ設けられており、該リヤサイドフレーム7は、リヤシートパン2、スラント部3およびリヤフロア4の上面側に位置するリヤサイドフレームアッパ7Uと、リヤシートパン2、スラント部3およびリヤフロア4の下面側に位置するリヤサイドフレームロア7Lと、を備えており、これら上下のリヤサイドフレームアッパ7Uおよびリヤサイドフレームロア7Lと、各要素2,3,4との間には車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面が形成されている。
上述のリヤサイドフレーム7は車体強度部材であって、このリヤサイドフレーム7の前部は、キックアップ部(後述するクロスメンバ9が配置された部分に対応)においてサイドシル6と連結され、この連結部に対応して左右のリヤサイドフレーム7,7の前部相互間には、車幅方向に延びるクロスメンバ9(いわゆるNo.3クロスメンバ)を張架し、該クロスメンバ9と車体フロアパネルとの間には、車幅方向に延びる閉断面が形成されている。
また、上述のスラント部3の後部に対応するリヤサイドフレーム7の前後方向中間部には、左右のリヤサイドフレーム7,7間に掛け渡される車体クロスメンバ10(いわゆるNo.4クロスメンバ)を設けている。
【0025】
この車体クロスメンバ10は、スラント部3の上面側に位置して左右のリヤサイドフレームアッパ7U,7Uを車幅方向に連結する車体クロスメンバアッパ10Uと、スラント部3の下面側に位置して左右のリヤサイドフレームロア7L,7Lを車幅方向に連結する車体クロスメンバロア10Lと、を備えており、車体クロスメンバアッパ10Uとスラント部3との間には車幅方向に延びる閉断面11が形成されており、車体クロスメンバロア10Lとスラント部3との間にも車幅方向に延びる閉断面12が形成されている。
つまり、上下の各閉断面11,12が、図3に示すように上下方向に重なり合うように形成されている。また、この車体クロスメンバロア10Lのリヤサイドフレーム7よりも車幅方向内側には、後述するサブフレーム21の前側車体取付部25(図1参照)の取付けポイント10Pが設けられている。
図2に示すように、上述のリヤシートパン2およびスラント部3の下部車外側には、一対のタンクバンド13,13を用いて、車両補機としての燃料タンク14が取付けられている。
【0026】
一方、図2に示すように、左右一対のリヤサイドフレーム7,7の後端部には、衝撃エネルギ吸収部材としてのクラッシュカン15,15を取付け、これら左右のクラッシュカン15,15相互間には車幅方向に延びるようにバンパレインフォースメント16が横架されている。
また、図2に示すように、前後のクロスメンバ9,10間に対応して上述のリヤサイドフレームロア7Lには、トレーリングアーム取付部17を形成し、車体クロスメンバ10よりもさらに後方位置に対応して該リヤサイドフレームロア7Lには、後述するサスペンション用のスプリング27(図1参照)のバネ座18を設け、このバネ座18よりもさらに後方位置に対応して該リヤサイドフレームロア7Lには、後側車体取付部26(図1参照)の取付けポイント19を設けている。
さらに、図2に示すように、ホイールハウス8内にはリヤサスペンションのダンパ取付部20を設けている。
【0027】
<サブフレームの説明>
図2,図3で示した車体構造に対して、図1に底面図で示すようにリヤサブフレーム21(以下単に、サブフレームと略記する)を取付けるものである。
【0028】
図4はサブフレーム21を上方から見た状態で示す斜視図、図5はサブフレーム21を下方から見上げた状態で示す斜視図、図6はサブフレーム21の平面図、図7はサブフレーム21の正面図、図8はサブフレーム21の背面図、図9はサブフレーム21の側面図である。
図4〜図9に示すように、リヤサスペンションを支持するサブフレーム21は、左右のサイドメンバ部22,22と、前側クロスメンバ部23と、後側クロスメンバ部24とを備え、平面視で左右略対称(図6参照)に形成されている。
【0029】
左右のサイドメンバ部22,22は、パイプ状に形成、つまり、パイプ部材にて形成されると共に、該サイドメンバ部22の前後両端部には前側車体取付部25(いわゆる前側マウント部)と後側車体取付部26(いわゆる後側マウント部)とが設けられている。
そして、図1に示すように、左右のサイドメンバ部22,22の後部が、後側車体取付部26,26を介してそれぞれ左右のリヤサイドフレーム7(詳しくは、リヤサイドフレームロア7Lの取付けポイント19)に取付けられる一方、左右のサイドメンバ部22,22の前部が、前側車体取付部25,25を介して車体クロスメンバ10(No.4クロスメンバ)のリヤサイドフレーム7よりも車幅方向内側に取付けられている。詳しくは、前側車体取付部25,25を車体クロスメンバロア10Lの取付けポイント10P(図2参照)に取付けている。
これにより、リヤサイドフレーム7の後部が受けた後突荷重を、サイドメンバ部22を介して車体クロスメンバ10に伝達し、この車体クロスメンバ10からリヤサイドフレーム7以外のフロアパネル等の部材に荷重分散して、後突荷重の分散を図り、サブフレーム21の前進や、その前方に位置する車体の変形を抑制し、後突安全性の向上を図るように構成している。
また、上述の各サイドメンバ部22,22は、図1に示すように、その前方にサスペンション用のスプリング27(コイルスプリング)が配設できるように、サブフレーム21の後側車体取付部26から車幅方向内側前方に延びており、これにより、後突荷重の分散とサスペンション用スプリング27のレイアウトとの両立を図るように構成したものである。
【0030】
図4,図6に示すように、平面視で前側車体取付部25の近傍に、該前側車体取付部25よりも上方のアッパアーム支持部28と、サイドメンバ部22から下方に離間したロアアーム支持部29とが設けられている。この実施例では、これら上下の各支持部28,29は後述するブラケット30,31により構成されるものである。
上述のアッパアーム支持部28と、ロアアーム29と、前側クロスメンバ部23とは前後に重なる位置、この実施例では前後方向の略同一位置に配置されている。
また、図4,図7に示すように、上述の前側クロスメンバ部23は、左右の各サイドメンバ部22,22(特に、該サイドメンバ部22において前後方向に直線的に延びるその前部)からそれぞれ車幅方向内側下方に延びる左右の車幅方向側部23S,23Sと、これら左右の両車幅方向側部23S,23Sを車幅方向に水平に連結する中央部23Cとを有するパイプ材から形成された部位を有する。
【0031】
図7に示すように、上述のアッパアーム支持部28とロアアーム支持部29との上下方向間において、その上下方向中央(図7の仮想ラインL1参照)よりも上方でサイドメンバ部22がアッパアーム支持部28にブラケット30(詳しくは、アッパアーム支持ブラケット30)を介して連結されている。
さらに、ロアアーム支持部29よりも上方で、かつ上下方向中央(ラインL1参照)よりも下方に、上述の中央部23Cの位置が設定され、ロアアーム支持部29は上述の中央部23Cまたは該中央部23Cに隣接した車幅方向側部23Sの中央部23C隣接部位にブラケット31(詳しくは、ロアアーム支持ブラケット31)を介して連結されている。
【0032】
ここで、上述のサイドメンバ部22は、既述したようにパイプ材から形成されると共に、該サイドメンバ部22はブラケット31を介してロアアーム支持部29と連結されている。
また、上述のアッパアーム支持部28は、サイドメンバ部22における前側クロスメンバ部23の延長方向、詳しくは、車幅方向内側下方に延びる車幅方向側部23Sの延長方向と反対側の部位に連結されている。
つまり、サイドメンバ部22の前側車体取付部25の後方で、かつ車幅方向近傍には、サスペンションの前側アーム(図12に示す前側のアッパアーム32、前側のロアアーム33参照)を枢支する支持部28,29が設けられたものであり、サスペンションの前側アッパアーム32の支持部28を構成するブラケット30と、その下方において前側ロアアーム33の支持部29を構成するブラケット31とが、前後に重なる位置で車幅方向に延設されたものである。
【0033】
図6〜図9に示すように、上述のブラケット30は平面視でコ字状断面を有するように形成され、該ブラケット30の基部および前後のフランジ部30a,30aが前後方向に間隔をおいてサイドメンバ部22に接合固定されると共に、基部から車幅方向の内側に延びる延設部30bが前側クロスメンバ部23における車幅方向側部23Sの上部に接合固定されている。
上述のブラケット30をこのように構成することで、該ブラケット30の前後方向への倒れを阻止すると共に、横力に対する充分な接合強度を確保したものである。
【0034】
ロアアーム支持部29を構成するブラケット31は、図4〜図9に示すように、L字断面をもった前側パネル34と、L字断面をもつ後側パネル35と、側部パネル36とを有し、前後の各パネル34,35をサイドメンバ部22下部から前側クロスメンバ部23の中央部23C端部にかけて接合固定し、これら前後の両パネル34,35の横方向の開口を側部パネル36で閉塞して閉断面構造と成している。
上述のブラケット31は、図7に示すように、正面視で略三角形状に形成されており、図9に示すように、側面視で略四角形状に形成されており、前後の各パネル34,35に一体形成されたフランジ部34a,35aはサイドメンバ部22に前後方向に幅広く接合固定されている。
上述のブラケット31をこのように構成することで、該ブラケット31の前後方向への倒れを阻止すると共に、横力に対する充分な接合強度を確保したものである。
【0035】
一方、上述のサブフレーム21は、図4に示すように、ロアアーム支持部29および前側クロスメンバ部23から後方向に離間した位置で後側ロアアーム37(図1,図3参照)を支持する後側クロスメンバ部24を備えている。
【0036】
図4〜図9に示すように、上述の後側クロスメンバ部24は、サブフレーム21の後側車体取付部26よりも前方に中央部24Cが設けられ、この中央部24Cの左右の後側ロアアーム支持部38,38に図1,図3で示したサスペンションの後側ロアアーム37,37が枢支されている。この後側ロアアーム37は後輪の上下動をコントロールするものである。
【0037】
図4,図6に示すように、上述の後側クロスメンバ部24の側部は、平面視で上述の中央部24Cからサブフレーム21の後側車体取付部26側に傾斜して延びる後方傾斜部位24Rと、前方側に傾斜して延びる前方傾斜部位24Fと、に分岐している。
上述の後側クロスメンバ部24の左右両側部に相当する後方傾斜部位24Rおよび前方傾斜部位24Fは、後側ロアアーム支持部38,38から前後方向に分岐しており、この分岐した各傾斜部位24R,24Fの車幅方向両端部が上述のサイドメンバ部22に連結されており、該サイドメンバ部22と前方傾斜部位24Fと後方傾斜部位24Rとの三者により、トラス構造を形成しており、このトラス構造により、後側クロスメンバ部24それ自体、および、サブフレーム21を補強して、重量増加を抑えながら後側ロアアーム37の支持剛性を前後左右方向に補強すべく構成している。
【0038】
図10は図6のB‐B線矢視断面図であって、上述の後側クロスメンバ部24は板材を逆L字状に折曲げたフロントメンバ39と、同様に板材を逆L字状に折曲げたリヤメンバ40と、を接合固定して構成しており、特に、図10に断面図で示す後側クロスメンバ部24の中央部24Cにおいては、両メンバ39,40の下部に補強部材としてのスティフナ41を接合固定して、これら三者39,40,41で車幅方向に延びる閉断面42を形成し、この閉断面構造により、重量増加を抑制しつつ、中央部24Cの剛性向上を図っている。
この実施例では、図5に斜視図で示すように、上述のスティフナ41は中央部24Cのみならず、前方傾斜部位24Fおよび後方傾斜部位24Rの車幅方向中途位置まで分岐して延びており、このスティフナ41の延出構造により、部品点数の増加を招くことなく、前後の各傾斜部位24F,24Rの強度向上を図っている。
【0039】
図3に示すように、サブフレーム21の前側車体取付部25は、車体クロスメンバロア10Lの閉断面12内にレインフォースメント43で支持されたナット44に対して、ボルト45を用いて下方から締結固定されており、同様に後側車体取付部26もリヤサイドフレームロア7Lに対して、ボルト46を用いて、下方から締結固定されている。
また、図1,図3に示すように、上述の後側ロアアーム37はスプリング27のバネ座を兼ねるように、リヤサイドフレームロア7L側のバネ座18(図2参照)と上下方向に対向する部分が、スプリング27に対応して膨出形成されている。
【0040】
図1において、47は後輪48(図11〜図13参照)を保持するディスクホイール、49はトレーリングアーム取付部17(図2参照)とホイールサポートとの間に取付けられたトレーリングアームである。
【0041】
図11は上記構成を模式的に示す底面図であって、左右のサイドメンバ部22,22の後部(後側車体取付部26参照)をリヤサイドフレーム7に取付け、左右のサイドメンバ部22,22の前部(前側車体取付部25参照)を車体クロスメンバ10のリヤサイドフレーム7よりも内側に取付けているので、前側車体取付部をリヤサイドフレームに取付ける構造に対して、アーム支持部、特に前側ロアアーム支持部29と前側車体取付部25との間の左右距離を短縮することができ、これによって、アーム長を確保しつつ、サブフレーム21を軽量高剛性化することができる。
また、後突時には図11に矢印で示すように、リヤサイドフレーム7に後突荷重が入力するが、このリヤサイドフレーム7後部が受けた後突荷重を、サイドメンバ部22を介して車体クロスメンバ10に伝達して、荷重分散を図ることができる。
さらに、図11および図1からも明らかなように、トーイン(後輪48の前側がその後側に対して車幅方向内側となるトー角)を確保するために前側のアーム(アッパアーム32、ロアアーム33ともに)のアーム長は、後側ロアアーム37のアーム長よりも短く設定されている。
【0042】
図12は同相横力入力時の説明図、図13は異相横力入力時の説明図であるが、アッパアーム32とロアアーム33の各アーム長の比較において、ネガティブキャンバ(正面視で左右の後輪48,48が八の字状となるキャンバ角)を確保する目的で、アッパアーム32のアーム長がロアアーム33のアーム長に対して短くなるように構成されている。なお、図12,図13に示すように、上述のアッパアーム32はリヤサイドフレーム7と干渉しないように下方に窪む湾曲形状に形成されている。
また、この実施例では前側のアッパアーム32と前側のロアアーム33とが平面視において車幅方向に略並行に延びており、横力を車幅方向に延びる前側クロスメンバ部23で受けるので、該前側クロスメンバ部23の前後曲げモーメントを抑制することができる。
【0043】
<同相横力入力時の説明>
次に、図12を参照して旋回時等において同相横力(左右の後輪48,48が同じ側に倒れる横力)が入力した場合について説明する。
左右の後輪48,48に同相の横力a,bが入力すると、左側ロアアーム33(図12は正面図であって図示の右側が車両左側に相当するので、左側ロアアーム33は図示右側のアーム33である)には引く力cが作用し、左側アッパアーム32には押す力dが作用し、右側ロアアーム33には押す力eが作用し、右側アッパアーム32には引く力fが作用する。
正面図で示す図12から明らかなように、車両の右側上部から左側下部にかけて各要素30,23S,23Cとブラケット31の下辺とが略直線状に連結されており、車両の左側上部から右側下部にかけて、各要素30,23S,23Cとブラケット31の下辺とが略直線状に連結されていて、これによりタスキ掛けに近似した構造となっているので、ブラケット30,31を備えた前側クロスメンバ部23には図12に矢印で示す力c´,d´,e´,f´が作用し、左側の引く力c´と右側の引く力f´とで荷重が打ち消され、右側の押す力e´と左側の押す力d´とで荷重が打ち消されて、同相横力が相殺できる。
なお、図12にタスキ掛けの理想的な構造を仮想線αで示す。
【0044】
<異相横力入力時の説明>
次に、図13を参照して、轍や凹凸路(凸凹道)を走行する時のように左右の後輪48,48に異相横力が入力した場合について説明する。
左右の後輪48,48に異相の横力g,hが入力すると、左側ロアアーム33と右側ロアアーム33とには、それぞれ引く力i,jが作用する。
正面図で示す図13から明らかなように、前側クロスメンバ部23の中央部23Cは、同図に距離L2で示すようにアッパアーム支持部28とロアアーム支持部29との間において、ロアアーム支持部29側に近い位置に配置しており、中央部23Cとロアアーム支持部29との上下方向オフセット量(距離L2)が小さく、また、前側車体取付部25とアッパアーム支持部28との上下方向距離L3、並びに直線距離L4を何れも小さくし、ブラケット30,31を備えた前側クロスメンバ部23の剛性を確保しているので、左右のアッパアーム32,32に入力される荷重よりも、その荷重が大きい左右のロアアーム33,33のそれぞれの引く力i,jが互に打ち消す方向に作用して、異相横力が相殺される。
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Rは車両の後方を示す。
【0045】
このように、図1〜図13で示した自動車の後部車体構造は、左右のサイドメンバ部22,22と、クロスメンバ部23とを有するサブフレーム21を備えた自動車の後部車体構造であって、上記サイドメンバ部22は車体取付部25,26を備え、平面視で前側車体取付部25近傍(近傍とは、側面視で、フランジ部30a,34aと車体取付部25とが重複する位置のこと)に、該前側車体取付部25よりも上方のアッパアーム支持部28と、サイドメンバ部22から下方に離間したロアアーム支持部29とが設けられ、これら両アーム支持部28,29と上記クロスメンバ部23とが前後に重なる位置に配置されており、該クロスメンバ部23は、上記左右サイドメンバ部22,22からそれぞれ車幅方向内側下方に延びる左右の車幅方向側部23S,23Sと、これら両車幅方向側部23S,23Sを連結する中央部23Cを有するパイプ材から形成された部位を有し、アッパアーム支持部28とロアアーム支持部29との上下方向間において、上下方向中央(図7の仮想ラインL1参照)よりも上方で上記サイドメンバ部22がアッパアーム支持部28にブラケット30を介して連結され、上記ロアアーム支持部29よりも上方で、かつ上下方向中央よりも下方に、上記中央部23Cの位置が設定され、上記ロアアーム支持部29は、上記中央部23Cまたは該中央部23Cに隣接した車幅方向側部23Sの中央部23C隣接部位にブラケット31を介して連結されたものである(図4,図7参照)。
【0046】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、前側車体取付部25近傍にアッパアーム支持部28とロアアーム支持部29とが設けられており、各アーム支持部28,29と前側車体取付部との車幅方向距離の短縮を図ることができるので、アーム支持部28,29が車体に対して強固に取付けられ、アーム支持剛性と軽量高剛性化との両立を図ることができる。
また、両アーム支持部28,29とクロスメンバ部23とが平面視(図6参照)で前後方向に重なる位置に配置されるので、前後位置が異なるものと比較して、横力によるサイドメンバ部22への車幅方向曲げモーメントを抑制することができ、好ましくないジオメトリ変化を防止することができる。
さらに、ロアアーム支持部29はサイドメンバ部22から下方に離間しているが、クロスメンバ部23の側部23Sにおける中央部23C隣接位置または中央部23Cに取付けられており、横方向の荷重(横力)は中央部23Cを介して反対側に伝えられるので、剛性を確保することができる。
【0047】
加えて、クロスメンバ部23の中央部23Cは、ロアアーム支持部29よりも上方に設定されているので、図12に示すように、旋回時等に入力される同相横力は、右上アッパアーム32と左下ロアアーム33との間、左上アッパアーム32と右下ロアアーム33との間で、タスキ掛け状に荷重相殺でき、また左右反対側のサイドメンバ部22へ略直線的に荷重伝達でき、剛性の向上を図ることができると共に、上述のクロスメンバ部23をパイプ材で構成したので、周波数300H前後での面共振をなくすことができる。
しかも、クロスメンバ部23の中央部23Cは、アッパアーム支持部28とロアアーム支持部29との上下方向間における中央(図7の仮想ラインL1参照)よりも下方に設定されており、アッパアーム支持部28に対して作用する横力よりも大きい横力が作用する左右のロアアーム支持部29,29とクロスメンバ部23の中央部23Cとの上下距離L2(図13参照)短縮を図っているので、図13に示す異相横力(左右輪が異なる側に倒れる時に入力される力)を、上述の中央部23Cで水平方向に相殺することができる。
要するに、同相横力に対する剛性の確保のみならず、異相横力に対しても剛性を確保することができ、加えて、周波数300H前後の面共振をなくすことができるものである。
また、上記サイドメンバ部22は、パイプ材から形成されると共に、上記ロアアーム支持部29と連結されたものである(図4参照)。
【0048】
この構成によれば、サイドメンバ部22を、捻りに強いパイプ材で形成し、上記ロアアーム支持部29を、クロスメンバ部23のみならず、サイドメンバ部22にも支持させたので、横力に対してさらに軽量高剛性化を図ることができる。
さらに、上記アッパアーム支持部28は、上記サイドメンバ部22におけるクロスメンバ部23の延長方向と反対側の部位に連結されたものである(図4参照)。
【0049】
この構成によれば、左右同相の横力(図12参照)に対し、アッパアーム32と反対側のロアアーム33の横力相殺量を増加することができ、また、両アーム支持部をサイドメンバ部下方に設ける構造に対して、両アーム支持部28,29とサイドメンバ部22や車体取付部25との距離を短縮することで、軽量高剛性化を図ることができる。
加えて、上記サブフレーム21は、上記ロアアーム支持部29から後方向に離間した位置で後側ロアアーム37を支持する後側クロスメンバ部24を有し、該後側クロスメンバ部24の左右両側部は、後側ロアアーム支持部38から前後方向に分岐して上記サイドメンバ部22に連結されたものである(図4参照)。
【0050】
この構成によれば、後側クロスメンバ部24の左右側部を分岐(前方傾斜部位24F、後方傾斜部位24R参照)してサイドメンバ部22に連結したので、分岐した部分とサイドメンバ部22とでトラス構造を形成することができ、後側クロスメンバ部24の前後左右方向の剛性向上を図ることができ、このような構成の後側クロスメンバ部24と、パイプ材にて形成した前側クロスメンバ部23とにより、サブフレーム21を平面視で平行四辺形的な変形荷重に対して高剛性化することができる。
また、後側ロアアーム支持部38の前後剛性も向上させることができる。
【0051】
さらに、上記実施例で開示したように、左右のサイドメンバ部22,22と、前後のクロスメンバ部23,24とを有するサブフレーム21を備えた自動車の後部車体構造において、上記左右のサイドメンバ部22,22の後部(後側車体取付部26参照)がそれぞれ左右のリヤサイドフレーム7,7に取付けられ、左右のサイドメンバ部22,22の前部(前側車体取付部25参照)が、上記左右のリヤサイドフレーム7,7間に掛け渡される車体クロスメンバ10のリヤサイドフレーム7よりも内側に取付けられる構造を採用すると(図1参照)、左右のサイドメンバ部22,22の前部が、左右のリヤサイドフレーム7,7間に掛け渡される車体クロスメンバ10のリヤサイドフレーム7よりも内側に取付けられるので、前側車体取付部をリヤサイドフレームに取付ける構造に対して、アーム支持部(特に、前側ロアアーム支持部29参照)と前側車体取付部25との間の左右距離を短縮することができ、これにより、アーム長(アッパアーム32およびロアアーム33のアーム長参照)を確保しつつ、サブフレーム21を軽量高剛性化することができ、また、上述のリヤサイドフレーム7後部が受けた後突荷重を、サイドメンバ部22を介して車体クロスメンバ10に伝達し、この車体クロスメンバ10からリヤサイドフレーム7以外のフロアパネル等の部材に分散して、後突荷重の分散を図ることができるので、サブフレーム21の前進や、その前方に位置する車体の変形を抑制して、後突安全性の向上を図ることができる。
【0052】
図14,図15は自動車の後部車体構造の他の実施例を示し、図14はサブフレームの平面図、図15は図14のC‐C線矢視断面図である。
この実施例では、サイドメンバ部22および前側クロスメンバ部23に加えて、後側クロスメンバ部24もパイプ部材により構成したものである。
すなわち、後側クロスメンバ部24の中央部24Cの左右両端部に、該両端部から前方外側に傾斜して延びる前方傾斜部位24F,24Fを、同一のパイプ部材にて一体形成すると共に、これら両者24C,24Fと別体のパイプ部材にて後方傾斜部位24Rを形成し、前方傾斜部位24Fの前端部をサイドメンバ部22に連続溶接にて固定し、後方傾斜部位24Rの車幅方向内端部を前方傾斜部位24Fの基部、または中央部24Cの端部に連続溶接にて固定すると共に、該後方傾斜部位24Rの車幅方向外端部をサイドメンバ部22の後端部に連続溶接にて固定したものである。
また、上述の中央部24Cと、前方傾斜部位24Fと、後方傾斜部位24Rとが平面視でY字状に交わる部位には、これらを外面側から覆う断面略C字形状のブラケット51を設け、このブラケット51の車幅方向内端51aの周縁と中央部24Cとを連続溶接にて接合固定し、ブラケット51の車幅方向外端前部51bの周縁と前方傾斜部位24Fとを連続溶接にて接合固定し、さらに、ブラケット51の車幅方向外端後部51cの周縁と後方傾斜部位24Rとを連続溶接にて接合固定している。
上述のブラケット51は、図15に示すように、その下部から下方に延びる前後一対の後側ロアアーム支持片51d,51dを一体に備えたもので、前後一対の後側ロアアーム支持片51d,51d間に補強部材としてのスティフナ41を配置して、該スティフナ41と後側ロアアーム支持片51d,51dとを溶接固定すると共に、スティフナ41の取付片を含んで前後一対の後側ロアアーム支持片51d,51d間には、後側ロアアーム支持ピン52を横架して、この後側ロアアーム支持ピン52に図1で示した後側ロアアーム37のサブフレーム側枢支部を支持させるように構成している。
【0053】
このように、図14,図15で示した実施例においては、上記後側クロスメンバ部24は、上記中央部24Cと前方傾斜部位24Fと後方傾斜部位24Rとが、それぞれパイプ状に形成されたものである(図14参照)。
【0054】
この構成によれば、上述の中央部24C、前方傾斜部位24F、後方傾斜部位24Rを、それぞれパイプ状に形成したので、軽量高剛性化のさらなる向上と、荷重分散促進性のさらなる向上とを達成することができる。
図14,図15で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図14,図15において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0055】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤサブフレームは、実施例のサブフレーム21に対応し、
以下同様に、
車体取付部は、前側車体取付部25、後側車体取付部26に対応し、
クロスメンバ部は、前側クロスメンバ部23に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、左右のサイドメンバ部と、クロスメンバ部とを有するリヤサブフレームを備えた自動車の後部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0057】
21…サブフレーム(リヤサブフレーム)
22…サイドメンバ部
23…前側クロスメンバ部(クロスメンバ部)
23S…車幅方向側部
23C…中央部
24…後側クロスメンバ部
25…前側車体取付部(車体取付部)
26…後側車体取付部(車体取付部)
28…アッパアーム支持部
29…ロアアーム支持部
30,31…ブラケット
37…後側ロアアーム
38…後側ロアアーム支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドメンバ部と、クロスメンバ部とを有するリヤサブフレームを備えた自動車の後部車体構造であって、
上記サイドメンバ部は車体取付部を備え、
平面視で前側車体取付部近傍に、該前側車体取付部よりも上方のアッパアーム支持部と、
サイドメンバ部から下方に離間したロアアーム支持部とが設けられ、
これら両アーム支持部と上記クロスメンバ部とが前後に重なる位置に配置されており、
該クロスメンバ部は、上記左右サイドメンバ部からそれぞれ車幅方向内側下方に延びる左右の車幅方向側部と、
これら両車幅方向側部を連結する中央部を有するパイプ材から形成された部位を有し、
アッパアーム支持部とロアアーム支持部との上下方向間において、上下方向中央よりも上方で上記サイドメンバ部がアッパアーム支持部にブラケットを介して連結され、
上記ロアアーム支持部よりも上方で、かつ上下方向中央よりも下方に、上記中央部の位置が設定され、
上記ロアアーム支持部は、上記中央部または該中央部に隣接した車幅方向側部の中央部隣接部位にブラケットを介して連結されたことを特徴とする
自動車の後部車体構造。
【請求項2】
上記サイドメンバ部は、パイプ材から形成されると共に、上記ロアアーム支持部と連結された
請求項1記載の自動車の後部車体構造。
【請求項3】
上記アッパアーム支持部は、上記サイドメンバ部におけるクロスメンバ部の延長方向と反対側の部位に連結された
請求項1または2記載の自動車の後部車体構造。
【請求項4】
上記リヤサブフレームは、上記ロアアーム支持部から後方向に離間した位置で後側ロアアームを支持する後側クロスメンバ部を有し、
該後側クロスメンバ部の左右両側部は、後側ロアアーム支持部から前後方向に分岐して上記サイドメンバ部に連結された
請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−103540(P2013−103540A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247000(P2011−247000)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】