説明

自動車の車体構造

【課題】上下方向に延び、上端部がフロントピラーの下端部に接合され、下端部がサイドシルの前端部に接合されたヒンジピラーと、車両前後方向に延び、後端部が前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接続されたフロントサイドフレームとを有する自動車の車体構造において、フロントサイドフレームが接続されるヒンジピラーの車幅方向内側の面の変形を抑制することにより、フロントサイドフレームからヒンジピラーに入力される衝撃荷重をフロントピラー及びサイドシルに良好に伝達可能な車体構造を提供する。
【解決手段】ヒンジピラー3におけるフロントサイドフレーム9が接続される部位の内部にボックス形状部材34を設けると共に、ヒンジピラー3の車幅方向内側の壁部31aの内面に、ボックス形状部材34の上方及び下方において、補強部材35,36を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体構造を検討する上では、車両前方から加わる衝撃荷重を如何に車体の各部に分散させるかが重要であり、例えば、特許文献1には、車両前後方向に延びるフロントサイドフレームの後端部をヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接続することにより、フロントサイドフレームに前方から加わった衝撃荷重を該ヒンジピラーを介して、その上端部に接続されたフロントピラーや、下端部に接続されたサイドシルに伝達するようにしたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平1−149874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のもののように、フロントサイドフレームをヒンジピラーの車幅方向内側の面に接続すると、フロントサイドフレームに前方からの衝撃荷重が加わったときに、この接続部を中心として前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部が変形し、衝撃荷重をフロントピラー及びサイドシルに十分に伝達できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、フロントサイドフレームが接続されるヒンジピラーの車幅方向内側の壁部の変形を抑制することにより、フロントサイドフレームからヒンジピラーに入力される衝撃荷重をフロントピラー及びサイドシルに良好に伝達可能な車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、上下方向に延び、上端部がフロントピラーの下端部に接合され、下端部がサイドシルの前端部に接合されたヒンジピラーと、車両前後方向に延び、後端部が前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接続されたフロントサイドフレームとを有する自動車の車体構造であって、前記ヒンジピラーには、前記フロントサイドフレームが接続される部位の内部にボックス形状部材が設けられていると共に、前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部の内面には、前記ボックス形状部材の上方と下方との少なくとも一方において、補強部材が接合されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の車体構造において、前記補強部材は、ヒンジピラーの前記車幅方向内側の壁部と車両後方側の壁部とに亘って設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車の車体構造において、前記ヒンジピラーの内部には、前記補強部材に対して上下方向で反ボックス形状部材側において、ヒンジピラーの内部を上下に仕切る節部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動車の車体構造において、前記フロントサイドフレームの後端側が下方に拡大されて、ヒンジピラーの下部に接合されていると共に、前記補強部材は、前記ボックス形状部材の下方に設けられて、上部がフロントサイドフレームの前記拡大部に重合され、下部がサイドシルに接合されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動車の車体構造において、前記フロントピラーの下部側が前後に二股状に分岐して、後側のピラー部が前記ヒンジピラーの上端部に接続され、前側のピラー部が前記ヒンジピラー前方の車体側壁部の上端部に接続されており、該前側のピラー部の下部における車幅方向内側の壁部に、第2の補強部材が接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について説明する。
【0013】
まず、請求項1に記載の発明によれば、前記ヒンジピラーには、前記フロントサイドフレームが接続される部位の内部にボックス形状部材が設けられているから、ヒンジピラーにおけるフロントサイドフレームが接続される部位の剛性が向上する。また、前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部の内面には、前記ボックス形状部材の上方と下方との少なくとも一方において、補強部材が接合されているから、ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部におけるボックス形状部材の上方と下方とのうちの補強部材が接合された部位の剛性も向上することとなる。したがって、フロントサイドフレームに前方から衝撃荷重が加わったときに、ヒンジピラーの前記車幅方向内側の壁部の変形が抑制され、該荷重がヒンジピラーを介してフロントピラー及びサイドシルに良好に伝達されることとなる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記補強部材は、ヒンジピラーの前記車幅方向内側の壁部と車両後方側の壁部とに亘って設けられているから、両壁部に亘って剛性が向上することとなる。その場合に、この両壁部は、フロントサイドフレームから加わる衝撃荷重の負荷の大きい部位であるが、このように補強されることにより、両壁部の境界の稜線部の折れが防止されることとなる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記ヒンジピラーの内部には、前記補強部材に対して上下方向で反ボックス形状部材側において、ヒンジピラーの内部を上下に仕切る節部材が設けられているから、この節部材が設けられた部位を中心として断面剛性が向上する。したがって、フロントサイドフレームから衝撃荷重が加わって断面が変形しようとしたときに、節部材が設けられた部位で変形が阻止されることとなり、その結果、ヒンジピラーの断面が上下方向全体にわたって崩れるのが防止されることとなる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記フロントサイドフレームの後端側が下方に拡大されて、ヒンジピラーの下部に接合されているから、フロントサイドフレームに加わった衝撃荷重がヒンジピラーへ一層良好に伝達されることとなる。その場合に、前記補強部材は、前記ボックス形状部材の下方に設けられて、上部がフロントサイドフレームの前記拡大部に重合され、下部がサイドシルに接合されているから、フロントサイドフレームからヒンジピラーの下部に入力された衝撃荷重が、補強部材を介してサイドシルに確実に伝達されることとなる。
【0017】
ところで、前記フロントピラーに三角窓を設けるために、前記フロントピラーの下部側を前後に二股状に分岐し、後側のピラー部を前記ヒンジピラーの上端部に接続し、前側のピラー部を前記ヒンジピラー前方の車体側壁部の上端部に接続する場合があるが、このようにすると分岐した前側ピラー部が細くなってその剛性が低下しやすくなる。そして、ヒンジピラーに衝撃荷重が作用したときに、該ヒンジピラーがフロントサイドフレームの接続部を起点として後方に折れ曲がろうとする力により、車体側壁部を介して前側ピラー部の下端部が後方下方に引っ張られ、前側ピラー部が折れる虞がある。しかし、請求項5に記載の発明においては、該前側のピラー部の下部における車幅方向内側の壁部に、第2の補強部材が接合されているから、該前側ピラー部の下部の剛性が向上し、折れが抑制されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車の車体構造について説明する。
【0019】
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る自動車1の側部の前部には、乗降用開口2が設けられていると共に、該乗降用開口2の前縁に沿って、上下方向に延びるヒンジピラー3が設けられている。ヒンジピラー3の上端部には、フロントピラー4の下端部が接合され、下端部には、前後に延びるサイドシル5の前端部が接合されている。なお、図1、図2においては、自動車1の右側部側のみを図示しているが、左側部側はほぼ左右対称な構成とされており、説明は省略する。なお、本実施の形態においての前後とは、車両の前後方向をいう。
【0020】
左右のヒンジピラー3,3の間には、エンジンルーム6と車室7と仕切るダッシュパネル8が配設されている。なお、このダッシュパネル8の左右の側端部は後述する左右のフロントサイドフレーム9,9に接合されている。
【0021】
また、左右のヒンジピラー3,3の間には、ダッシュパネル8の上方において、カウル10が設けられている。
【0022】
ヒンジピラー3の前方には、車体側壁としてサイドエプロン11が設けられていると共に、該エプロン11の下部側でヒンジピラー3から車両前方にエプロンレインフォースメント12が延びている。
【0023】
エプロンレインフォースメント12の車幅方向内方には、サスペンションタワー13が設けられている。
【0024】
サスペンションタワー13の車幅方向内方には、車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム9が設けられており、その後端部がヒンジピラー3の車内側の壁部に接合されている。
【0025】
このフロントサイドフレーム9は、車幅方向外側に膨出する断面ハット状の外側部材21と、該部材21と車両側面視でほぼ同形状で、車幅方向内側に膨出する断面ハット状の内側部材22とを有し、上下のフランジが接合された閉断面構造とされている。
【0026】
その場合に、このフロントサイドフレーム9の外側部材21及び内側部材22は、後部側においてそれぞれ上下に扇状に徐々に拡大した形状とされており、これにより、これらの部材21,22により形成されるフロントサイドフレーム9の閉断面も後部側が徐々に上下に拡大している。そして、このように上下に拡大していることにより、フロントサイドフレーム9のヒンジピラー3への接合領域は、上下方向ほぼ中央から下端近傍までの広い領域に亘っている。ここで、フロントサイドフレーム9のこの拡大した後部側を拡大部9Aという。
【0027】
なお、フロントサイドフレーム9の前記閉断面は、その後部側の拡大部9Aにおいては上下方向中間部分の車幅方向の厚みが小さくてなっている。すなわち、この閉断面は、後部側では上下に概ね二股状に分岐している。そして、この二股状の閉断面のうち下部側の閉断面を有する下部フレーム部9aの前部側には、ダッシュパネル8の前傾する前面(下面)、及びフロアパネル14の下面に沿って前後方向に延びるサイドフレーム15の前端部が接合されている。また、下部フレーム部9aの後端部は、ヒンジピラー3の下端部の車内側の面(後述するヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32a)に接合されている(図3参照)。一方、上部側の閉断面を有する上部フレーム9bは、ヒンジピラー3に向かって車幅方向外方後方へ斜めに延び、その後端部が、ヒンジピラー3の車内側の面における上下方向ほぼ中央に接続されている。なお、上部フレーム9bの後部側の内側部材22には、該内側部材22とで閉断面を形成することにより、上部フレーム9bとヒンジピラー3との接続部を補強する補強部材23が接合されている。
【0028】
ここで、ヒンジピラー3には、このようにフロントサイドフレーム9が接合されることに伴って種々の補強構造が設けられており、以下、詳しく説明する。
【0029】
まず、補強構造を説明する前に、ヒンジピラー3の本体の構造について説明しておくと、図3、図4に示すように、このヒンジピラー3の本体は、ヒンジピラー3の車外側の面を構成して車幅方向外方に膨出する断面ハット状のキャブサイドアウタパネル31と、ヒンジピラー3の車内側の面を構成して、車幅方向内方に膨出する断面ハット状のヒンジピラーインナパネル32と、両パネル31,32の間に設けられ、概ねキャブサイドアウタパネル31の内面に近接または当接するように形成されたヒンジピラーレインフォースメント33とを有し、これらのパネル31,32,33の前後端部のフランジの全てあるいはいずれか2つ、並びに上下端部のフランジの全てあるいはいずれか2つが接合されることにより、上下に延びる中空の閉断面構造体を構成している。
【0030】
そして、1つ目の補強構造について説明すると、図1〜図3に示すように、ヒンジピラー3には、前記フロントサイドフレーム9が接続される上下方向ほぼ中央部分の内部にボックス形状部材34が設けられている。
【0031】
詳しくは、このボックス形状部材34は、図4に示すように、ヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32a、前壁部32b、後壁部32cの内面に沿うように形成され、これらの壁部32a,32b,32cにそれぞれ接合された内側壁部34a、前壁部34b、後壁部34cと、図3に示すように、内側壁部34aの上端及び下端からヒンジピラーレインフォースメント33の外側壁部33aに向かってほぼ水平に延びる上壁部34d及び下壁部34eと、これらの壁部34d,34eの外端から下方及び上方に延び、これらの壁部34d,34eに接合されたフランジ部34f,34gとを有し、車幅方向外側の面が開口したボックス形状体とされている。
【0032】
そして、図4における上下位置においては、フロントサイドフレーム9の内側部材22の後端部のフランジ22aがヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32aに接合され、外側部材21の後端部のフランジ21aがヒンジピラーインナパネル32の前壁部32bに接合されている。
【0033】
なお、左右のヒンジピラー3,3におけるこのボックス形状部材34が配設された部位の間には、車幅方向に延びる中空円筒状のインストルメントパネルメンバ16が配設され、該メンバ16の左右の端部が左右のヒンジピラー3の内側壁部32aにボルト・ナットにより固定されている。このような構造によれば、左右のヒンジピラー3,3にフロントサイドフレーム9から衝撃荷重が入力されたときに、これらのヒンジピラー3,3がそれぞれ車幅方向外方に開こうとするのが阻止される。つまり、ヒンジピラー3,3の変形が抑制されることとなる。
【0034】
次に、2つ目の補強構造について説明すると、図1〜図3に示すように、ヒンジピラー3の内部には、前記ボックス形状部材34の上方及び下方のそれぞれにおいて、補強部材35,36が設けられている。
【0035】
詳しくは、上側の補強部材35は、図5に示すように、ヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32a、後壁部32cの内面に沿うように形成された側壁部35a、後壁部35cを有し、水平断面がL字状とされている。
【0036】
そして、図5における上下位置においては、フロントサイドフレーム9の後部上縁部に沿うように設けられ、前端部がサスペンションタワー13の後部周壁部に接合されたエプロンパネル18の後端部のフランジがヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32aに接合されている。なお、図5において、ヒンジピラー3の前方に配設され、ヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32a及びキャブサイドアウタパネル31の外側壁部31aに後端部が接合され、前端部のフランジ同士が接続されることにより閉断面を構成しているのは、前記エプロンレインフォースメント12の基部を構成するエプロンレインインナパネル41及びエプロンレインアウタパネル42である。
【0037】
下側の補強部材36は、図6に示すように、ヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32a、後壁部32cの内面に沿うように形成された側壁部36a、後壁部36cを有し、水平断面がL字状とされている。
【0038】
そして、図6における上下位置においては、フロントサイドフレーム9の内側部材22の後端部のフランジ22aがヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32aに接合され、外側部材21の後端部のフランジ21aがヒンジピラーインナパネル32の前壁部32bに接合されている。その場合に、下側補強部材36の側壁部36aの前端部と内側部材22のフランジ22aとはヒンジピラーインナパネル32を挟んで重合接合されている。
【0039】
また、下側補強部材36は、図1、図2からわかるように、サイドシル5の下端近傍まで上下方向に延びて、図7に示すように、ヒンジピラーインナパネル32におけるサイドシル5の前端部の車内側の壁部を構成する部位に接合されている。なお、サイドシル5の前端部の車外側の壁部は、前記キャブサイドアウタパネル31の下部により構成されている。キャブサイドアウタパネル31とヒンジピラーインナパネル32との間に設けられているのは、車両前後方向に延びるサイドシルレインフォースメント43である。
【0040】
次に、3つ目の補強構造について説明すると、図1〜図3に示すように、ヒンジピラー3の内部には、上側補強部材35の上端部側,及び下側補強部材の下端部側36に、節部材37,38が設けられている。
【0041】
上側節部材37は、ヒンジピラー3の水平閉断面形状とほぼ同形状でほぼ水平な本体部37aと、該本体部37aの車幅方向内側に設けられ、前記上側補強部材35の側壁部35a及びヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32aに重合接合される内側壁部37bと、本体部37aの車幅方向外側に設けられ、前記ヒンジピラーレインフォースメント33及びキャブサイドアウタパネル31の外側壁部33a,31aに重合接合される外側壁部37cとを有し、ボック形状部材34上方のヒンジピラー3内の内部空間を上下に仕切っている。
【0042】
下側節部材38は、ヒンジピラー3の水平閉断面形状とほぼ同形状でほぼ水平な本体部38aと、該本体部38aの車幅方向内側に設けられ、前記下側補強部材36の側壁部36a及びヒンジピラーインナパネル32の内側壁部32aに重合接合される内側壁部38bと、本体部38aの車幅方向外側に設けられ、前記ヒンジピラーレインフォースメント33及びキャブサイドアウタパネル31の外側壁部33a,31aに重合接合される外側壁部38cとを有し、ボックス形状部材34下方のヒンジピラー3の内部空間を上下に仕切っている。なお、図3からわかるように、内側壁部38bは、フロントサイドフレーム9の内側部材22のフランジ22aとも重合されている。
【0043】
ここで、前記フロントピラー4は、図1、図2からわかるように、下部側が前後に二股状に分岐して、前側ピラー部50と、後側ピラー部60とを有し、後側ピラー部60が前記ヒンジピラー3の上端部に接合され、前側ピラー部50がヒンジピラー3前方のサイドエプロン11(車体側壁部)の上端部に接合されている。そして、これらの部位により、三角窓部70が形成されている。
【0044】
その場合に、前側ピラー部50は、図8に示すように、車外側の壁部が前記キャブサイドアウタパネル31により構成されると共に、車内側の壁部を構成する前側ピラーインナパネル51と、これらのパネル31,51の間に設けられた前側ピラーレインフォースメント52とを有し、これらのパネルにより閉断面構造が形成されている。また、前側ピラー部50の下部側の内部には、下部補強部材53が配設され、その前端側が前側ピラーインナパネル51の前後方向中央部に接合され、後端部のフランジが前側ピラーインナパネル51及び前側ピラーレインフォースメント52の前側フランジと共に重合接合されている。
【0045】
次に、本実施の形態に係る車体構造の作用及び効果について説明する。
【0046】
まず、ヒンジピラー3には、フロントサイドフレーム9が接続される部位の内部にボックス形状部材34が設けられているから、ヒンジピラー3におけるフロントサイドフレーム9が接続される部位の剛性が向上する。また、ヒンジピラー3の車幅方向内側の壁部32aの内面には、ボックス形状部材34の上方及び下方において、補強部材35,36が接合されているから、車幅方向内側の壁部32aにおけるボックス形状部材34の上方及び下方の部位の剛性も向上することとなる。したがって、フロントサイドフレーム9に前方から衝撃荷重が加わったときに、ヒンジピラー3の車幅方向内側の壁部32aの変形が防止され、該荷重がヒンジピラー3を介してフロントピラー4及びサイドシル5に良好に伝達されることとなる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、フロントサイドフレーム9が上部フレーム部9bと下部フレーム部9aとに分岐し、下部フレーム部9aはサイドフレーム15に接続されているので、フロントサイドフレーム9に前方から後ろ向きの衝撃荷重が作用すると、下部フレーム9aを介して車体下部にも該衝撃荷重が分散して伝達されることとなる。
【0048】
また、上側及び下側補強部材35,36は、ヒンジピラー3の車幅方向内側の壁部32aと車両後方側の壁部32cとに亘って設けられているから、両壁部32a,32cに亘って剛性が向上することとなる。その場合に、この両壁部32a,32cは、フロントサイドフレーム9から加わる衝撃荷重の負荷の大きい部位であるが、このように補強されることにより、両壁部32a,32cの境界の稜線部の折れが防止されることとなる。
【0049】
また、ヒンジピラー3の内部には、補強部材35,36に対して上下方向で反ボックス形状部材34側において、ヒンジピラー3の内部を上下に仕切る節部材37,38が設けられているから、この節部材37,38が設けられた部位を中心として断面剛性が向上する。したがって、フロントサイドフレーム9から衝撃荷重が加わって断面が変形しようとしたときに、節部材37,38が設けられた部位で変形が阻止されることとなり、その結果、ヒンジピラ3ーの断面が上下方向全体にわたって崩れるのが防止されることとなる。
【0050】
また、フロントサイドフレーム9の後端側が下方に拡大されて、ヒンジピラー3の下部に接合されているから、フロントサイドフレーム9に加わった衝撃荷重がヒンジピラー3へ一層良好に伝達されることとなる。その場合に、ボックス形状部材34の下方に設けられた下側の補強部材36は、上部がフロントサイドフレーム9の前記拡大部9Aに重合され、下部がサイドシル5に接合されているから、フロントサイドフレーム9からヒンジピラー3の下部に入力された衝撃荷重が、下側補強部材36を介してサイドシル5に確実に伝達されることとなる。
【0051】
ところで、フロントピラー4に三角窓を設けるために、フロントピラー4の下部側を前後に二股状に分岐し、後側のピラー部60をヒンジピラー3の上端部に接合し、前側のピラー部50をヒンジピラー3前方のサイドエプロン11(車体側壁部)の上端部に接続する場合があるが、このようにすると分岐した前側ピラー部50が細くなってその剛性が低下しやすくなる。そして、ヒンジピラー3に衝撃荷重が作用したときに、該ヒンジピラー3がフロントサイドフレーム9の接続部を起点として後方に折れ曲がろうとする力により、サイドエプロン(車体側壁部)11を介して前側ピラー部50の下端部が後方下方に引張され、前側ピラー部50が折れる虞がある。しかし、本実施の形態においては、該前側ピラー部50の下部における車幅方向内側の壁部51に、補強部材53(第2の補強部材)が接合されているから、該前側ピラー部50の下部の剛性が向上し、折れが抑制されることとなる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、補強部材53は、ボックス形状部材34の上方及び下方の両方に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、フロントサイドフレーム9が本実施の形態よりも上方でヒンジピラー3に接合される場合は上方の補強部材35を省略してもよく、下方で接合される場合は下方の補強部材36を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、上下方向に延び、上端部がフロントピラーの下端部に接合され、下端部がサイドシルの前端部に接合されたヒンジピラーと、車両前後方向に延び、後端部が前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接続されたフロントサイドフレームとを有する自動車の車体構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車の前後方向縦断面図である。
【図2】図1と同部位の車内側後方斜め上方からの斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】図1のC−C断面図である。
【図6】図1のD−D断面図である。
【図7】図1のE−E断面図である。
【図8】図1のF−F断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 自動車
3 ヒンジピラー
4 フロントピラー
5 サイドシル
9 フロントサイドフレーム
32a 内側壁部(ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部)
32c 後壁部(ヒンジピラーの車両後方側の壁部)
34 ボックス形状部材
35 上側補強部材(ボックス形状部材の上方でヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接合された補強部材)
36 下側補強部材(ボックス形状部材の下方でヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接合された補強部材)
37 上側節部材(節部材)
38 下側節部材(節部材)
50 フロントピラーの前側ピラー部
53 補強部材(第2の補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延び、上端部がフロントピラーの下端部に接合され、下端部がサイドシルの前端部に接合されたヒンジピラーと、
車両前後方向に延び、後端部が前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部に接続されたフロントサイドフレームとを有する自動車の車体構造であって、
前記ヒンジピラーには、前記フロントサイドフレームが接続される部位の内部にボックス形状部材が設けられていると共に、
前記ヒンジピラーの車幅方向内側の壁部の内面には、前記ボックス形状部材の上方と下方との少なくとも一方において、補強部材が接合されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の車体構造において、
前記補強部材は、ヒンジピラーの前記車幅方向内側の壁部と車両後方側の壁部とに亘って設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車の車体構造において、
前記ヒンジピラーの内部には、前記補強部材に対して上下方向で反ボックス形状部材側において、ヒンジピラーの内部を上下に仕切る節部材が設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動車の車体構造において、
前記フロントサイドフレームの後端側が下方に拡大されて、ヒンジピラーの下部に接合されていると共に、
前記補強部材は、前記ボックス形状部材の下方に設けられて、上部がフロントサイドフレームの前記拡大部に重合され、下部がサイドシルに接合されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動車の車体構造において、
前記フロントピラーの下部側が前後に二股状に分岐して、後側のピラー部が前記ヒンジピラーの上端部に接続され、前側のピラー部が前記ヒンジピラー前方の車体側壁部の上端部に接続されており、
該前側のピラー部の下部における車幅方向内側の壁部に、第2の補強部材が接合されていることを特徴とする自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−239129(P2008−239129A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86679(P2007−86679)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】