説明

自動車の電気式補助暖房装置

【課題】加熱される空気の温度のオーバーシュートが、高い信頼性で回避される電気式補助暖房装置を提供する。
【解決手段】暖房装置に流れ込む空気の温度を求め、好ましくは所望の吐出温度に応じて加熱出力に変換することにより、加熱素子を制御する。この変換は、格納されている特性フィールドを通じて行うことが好ましく、特性フィールドによって、複数の車両パラメータ(例えば、車両速度、コンバーチブルトップの開放状態)を容易に考慮に入れることができる。このようにして、使い勝手のよい電気式暖房装置を極めて容易に達成することができる。この暖房装置は、車両内で局所的に、例えば、車両のシート、あるいは車室の後部などにおいて、使用することができる。自動車の運転条件がたとえ動的に変化する場合においても、加熱された空気の温度変動を容易かつ高い信頼性で回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の電気式補助暖房装置に関する。具体的には、本発明は、加熱素子に加えて、加熱素子によって発生させなければならない加熱出力を調整する制御ユニットも備えている補助暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房装置は、自動車における快適性を向上させる目的で、すでにかなり長い間使用されている。これらの暖房装置においては、ブロアに吸い込まれて吐き出される空気は、エンジンの廃熱または追加の暖房モジュールを利用して暖められ、車両の車室に送られる。車両の取り付け具、シート、またはその他の部分に取り付けられているこのような暖房装置の加熱出力は、通常ではユーザによる手操作によって決定されるが、ユーザは、吐き出される空気の正確な温度を細かく操作することはない。
【0003】
通常では、加熱出力または加熱出力段階を指定することができるにすぎないため、車室内の所望の室温を達成することは必ずしも容易ではない。暖房の初期段階では、例えばエンジンが冷えているため、利用可能な加熱出力が極めて小さいことがしばしばある。したがって、ユーザは最初に極めて高い加熱出力を選択する、または、電気式補助暖房装置を利用する。しかしながら、エンジンの温度が上昇すると、車室に送り込まれる空気は、乗員が望む温度よりもずっと高い温度となり、したがって、補助暖房装置の加熱出力または選択されている出力段階を後から下げる。しかしながら、ほとんどの場合、車室の温度が低くなりすぎる程度まで加熱出力が下げられ、加熱出力をもう一度高めなければならない。
【0004】
上の例から理解できるように、場合によっては、車室内の目的の温度を達成するまでに非常に長い時間を要する。この状況は、加熱された空気がブロアによって車室に送り込まれることによって、さらに悪くなっている。選択されている加熱出力に加えて、ブロアの強さも、車室に流れ込む空気の温度に影響する。ユーザは走行中にブロアの強さをしばしば変えるため、結果として、暖房装置の中を流れる空気量が変化し、これにより温度がさらに変動する。これにより、目標温度を達成することがさらに難しくなる。
【0005】
特許文献1には、自動車の空気供給手段が開示されており、この手段の場合、空気ダクトに配置されている加熱素子と空気吐出口との間に温度センサーが設けられている。温度センサーによって測定された温度を考慮して、加熱出力を単純に変化させる。すなわち、測定温度が高すぎる場合には加熱出力を下げ、測定温度が低すぎる場合には加熱出力を高める。しかしながら、この特許文献1に記載されている加熱出力制御では、吐き出される空気の温度変動が生じ、特に、吐き出される空気のめざす目標温度よりも行き過ぎてしまい、乗員にとって不快である。
【0006】
特許文献1に記載されている空気供給手段のもうひとつの欠点は、吐き出される空気の温度を測定するために個別の温度センサーが要求されることである。このような温度センサーによって、製造工程における余分なコストが生じ、故障が起こりやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第10317512号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、温度制御が単純であり極めて使い勝手のよい電気式補助暖房装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。本発明の都合の良いさらなる特徴を備えた有利な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0010】
本発明の具体的な方法においては、暖気温度ではなく、入ってくる冷気の温度を検出する。本発明によると、電気式補助暖房装置は、補助暖房装置の中を流れる空気を加熱する少なくとも1つのPTC加熱素子と、加熱素子によって発生する加熱出力を調整する制御ユニットとを備えている。加熱される空気の温度に加熱出力を適合させるため、温度判定ユニットが、冷気温度を判定する。制御ユニットは、確定された冷気温度に基づいて、加熱素子によって発生させる加熱出力を決定する。
【0011】
加熱される入ってくる空気の温度(以下では「冷気温度」と称する)を求めることにより、発生させる加熱出力を、入ってくる空気の特性に正確に適合させることができる。このようにして、動的な動作条件の場合に、やがて起こる温度変動をより効果的に検出することができ、加熱出力を適合させることによって十分早期に補正することができる。例えば、加熱される空気が非常に冷たい場合、この空気を加熱するためには、より高い加熱出力が必要であるのに対し、さほど冷たくない空気を加熱するためには、より低い加熱出力で十分である。補助暖房装置から吐き出される空気の温度は、冷気温度と加熱出力とに依存するため、吐き出される空気の温度をずっと効果的に制御することができ、したがって、吐出温度の変動を回避することができる。
【0012】
温度判定ユニットは、冷気温度を、少なくとも1つの測定温度値を使用して判定することが好ましい。この判定においては、少なくとも1つの補正係数をさらに使用することが好ましい。補正係数を使用することにより、加熱される空気の温度を測定する目的で空気ダクト内、加熱素子の前に配置されるセンサーを使用する必要がなくなる。加熱される空気の温度は、車両の別のコンポーネント(例えば、空調システム)から利用可能である温度値から求めることができる。換気/暖房の内気循環モードにおいては、吸い込まれる空気の温度は、車両の車室内の温度に基づいて容易に求めることができるが、外の新鮮な空気が車両内に流れ込む外気導入モードにおいては、車両の外側温度が、冷気温度の良好な値である。
【0013】
冷気温度を、車両内の別の場所において検出される温度値から求める場合、補正係数を使用することが好ましく、この補正係数は、測定される温度と実際の冷気温度との間の差を補正する。この温度差は、自動車の運転中に一定ではないことがしばしばある。この時間的変動を考慮するため、さらなる有利な実施形態によると、温度判定ユニットは、測定される温度値に対する、冷気温度の時間的変動を補正する補正係数を使用する。
【0014】
コンバーチブルトップが開いた状態、または窓が開いた状態で車両が走行しているときには、加熱される冷気の温度に外側の温度が大きく影響するため、車両の内側温度および車両の外側温度の重み付き組合せに基づいて、冷気温度を求めることが好ましい。
【0015】
あるいは、本発明による温度判定ユニットは、ブロアと加熱素子との間の空気取り入れセクションに配置されている温度センサーを使用して、冷気温度を測定する。冷気温度は、加熱素子のすぐ前で測定されないことがしばしばあるため、冷気温度は、温度を測定してから空気を加熱するまでにおそらくはわずかに変化する。したがって、測定値からのずれを考慮する追加の補正係数を使用することが好ましい。
【0016】
加熱出力をユーザの希望に最適に適合させる目的で、制御ユニットは、あらかじめ固定的に決められている、または、ユーザによって自由に選択することのできる、暖気の目標温度をさらに考慮する。加熱出力は、段階的に、または連続的に選択することができる。暖気の目標温度の値は、走行中に車両が閉じているか開いているかに依存することが好ましい。暖気の目標温度は、開いたコンバーチブルトップ、または開いた窓に起因する動的な運転状況に容易に適合させることができる。暖気の目標温度は、外側温度に依存してさらに調整されることが好ましく、なぜなら、コンバーチブルトップが開いているときには、外側温度が車両の車室内の温度に大きく影響するためである。このことは、特に、乗員の首領域において補助暖房装置を使用しているときに有利である。後流(slipstream)の影響、例えば、乱流に起因する影響をさらに考慮する場合、制御ユニットは、暖気の目標温度を好ましくは車速に依存して調整する。車速が上がった場合には暖気の目標温度を連続的または段階的に上げ、車速が低下したときには目標温度を下げることが好ましい。
【0017】
冷気温度および暖気の目標温度に加えて、空気流量、すなわち、加熱素子の中を流れる空気の量も、発生させる加熱出力に影響する。具体的には、空気流量が大きければ、その空気流量を所定の目標温度まで加熱できるように、より高い加熱出力が必要である。これらの状況を考慮する目的で、制御ユニットでは、発生させる加熱出力を調整するため、加熱素子の中を流れる空気量をさらに考慮することが好ましい。空気流量は段階的または連続的に選択することができる。空気流量の値は、走行中に車両が閉じているか開いているかに応じて自動的に調整されることが好ましい。したがって、開いたコンバーチブルトップまたは開いた窓に起因する影響に空気流量を容易に適合させることができる。このことは、特に、乗員の首領域において補助暖房装置を使用しているときに有利である。
【0018】
車両がコンバーチブルトップを開いて走行しているとき、後流によって乱流が生じ、このことは、通常、乗員がブロアの能力を高めることによって補正される。しかしながら、車両が突然に停止すると、選択されているブロアの能力が高すぎて、乗員が望んでいない不快な過度の暖房効果が発生しうる。これを回避する目的で、車両の静止状態を示す信号に基づいて、空気流量を、あらかじめ選択可能な値に調整することが好ましい。
【0019】
車両が走行しているときに後流の影響をさらに考慮する場合、制御ユニットは、空気流量を車速に応じて調整することが好ましい。車速が上がったときに空気流量が増大する一方で、車速が下がったときに空気流量が減少することが好ましい。
【0020】
補助暖房装置の動作中に暖気の目標温度もしくは空気流量、またはその両方が変化する場合、発生させる加熱出力を適合させなければならない。例えば、暖気の目標温度が上がった場合、吐き出される空気をその新しい望ましい目標温度まで加熱するのに必要であると判定される加熱出力は、PTC加熱素子の慣性に起因して、加熱される空気にただちに完全には伝わらない。この慣性効果を補正する目的で、制御ユニットは、暖気の目標温度もしくは空気流量、またはその両方が変化する場合、変化の瞬間から所定の期間にわたり、発生させる加熱出力を過補正する(増大または低減させる)ことが好ましく、すなわち、その所定の期間の間、暖気の目標温度/空気流の変化に応じて、暖気の目標温度/空気流において提供されるはずの値よりも高い、または低い加熱出力を選択する。加熱出力の変化の過補正は、所定の期間にわたり(または、例えば変化の大きさに応じた期間にわたり)実行することが好ましい。連続的な遷移が達成されるように、期間の最後の方向に過補正の程度を減少させることができる。
【0021】
空気の吐出口または吸込口が詰まる、あるいは暖房装置に空気を供給するブロアが故障したときの望ましくない影響を防止する目的で、制御ユニットは、ブロアに印加される電圧を考慮することが好ましい。ブロアに印加される電圧の低下は、空気の吐出口または吸込口が詰まっていることを明らかに示している。したがって、制御ユニットは、電圧が限界値よりも低下した場合、補助暖房装置を通過する空気流量を減少させる。
【0022】
同様に、加熱素子において測定される電流は、空気流の問題を示し、なぜなら、空気流が妨げられると電流値が低下するためである(PTC効果)。したがって、制御ユニットは、加熱素子において測定される電流が所定の限界値よりも低下した場合、加熱素子を作動停止させることが好ましい。
【0023】
発生させる加熱出力を決定するために必要なパラメータ(例えば、加熱素子の加熱特性、車両によって決まる影響)は、理論的には既知でないことがしばしばあるため、補助暖房装置は、これらのパラメータの特性を記述する特性フィールド(characteristic field)を使用することが好ましい。補助暖房装置の制御は、数式と特性フィールドの組合せによって実施することができる。また、制御ユニットは、加熱出力の調整を特性フィールドのみによって実行することもできる。
【0024】
補助暖房装置を車両の別のコンポーネントに接続するための配線コストを低減する目的で、これらのコンポーネントによって供給される信号は、車両におけるバスシステムを介して利用できることが好ましい。
【0025】
本発明を使用すると、電気式補助暖房装置を、自己完結的に動作する補助暖房装置として自動車内の任意の場所において容易に使用することができる。したがって、この補助暖房装置は、局所的な暖房を実施するのに特に適しており、任意の使用場所、例えば、車両のシートの中、車室の後部、フロア空間、車両のBカラムまたはCカラムに取り付けることができる。特に、発生させる加熱出力を正確に決定することによって、乗員のすぐ近傍において補助暖房装置を使用することができる。したがって、シート、乗員の背中、または首領域に暖気を供給する補助暖房装置を、車両のシートに設けることが好ましい。
【0026】
本発明のその他の利点、特徴、および詳細は、好ましい実施形態の以下の説明と図面とから理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による電気式補助暖房装置の概略的な構造設計を示している。
【図2】本発明による電気式補助暖房装置の制御の原理を示している流れ図である。
【図3】ブロアが組み込まれている、本発明による電気式補助暖房装置の構造設計を示している。
【図4】補助暖房装置が取り付けられている車両のシートを示している。
【図5】負荷が変化する場合における、本発明による補助暖房装置の加熱出力の時間に伴う変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明による電気式補助暖房装置の概略的な構造設計を示している。補助暖房装置1は、制御ユニット2と、温度判定ユニット3と、加熱セクションとを備えており、加熱セクションは、1つまたは複数のPTC加熱素子と、自身の中を流れる空気に加熱出力を伝えるラジエータ要素とを備えている。温度判定ユニット3は、制御ユニット2に接続されており、加熱素子4に入る冷気の温度を反映する温度値を制御ユニットに供給する。制御ユニット2は、結果の温度値に基づいて、PTC加熱素子の加熱出力を制御する。
【0029】
補助暖房装置1を車両内の別のコンポーネントに接続するため、補助暖房装置1には端子5a,5bが設けられている。端子5bを使用することにより、例えば、温度判定ユニット3を、車両の内側または外側に設けられている温度センサーに接続することができる。さらに、制御ユニットの挙動を端子5aを介して操作することも可能である。この端子は、例えば、ユーザ定義の所定の指定値、または車両の別のコンポーネントの信号を制御ユニット2に送信する目的に使用することができる。
【0030】
補助暖房装置1は、車両の外部装置にアナログ方式またはデジタル方式において直接接続することができる。しかしながら、この場合には、外部装置それぞれを個別に補助暖房装置1に接続しなければならないため、高いケーブルコストが必要である。この問題を回避する目的で、車両内のバス(例えば、CANバス、LINバス)を使用することがますます一般的になっている。このバスは、複数の装置の信号を1本のラインによって車両の別の装置に送信する。端子5a,5bを使用することにより、補助暖房装置1をそのようなデータバスに容易に接続することができ、補助暖房装置1は、バスを介して受け取る信号をさらに処理する。例えば、温度判定ユニット3は、車両に取り付けられている空調システムの温度値、または空気ダクトに設けられているセンサーの温度値をこのバスを介して受け取り、加熱素子4に入る冷気の温度を求めることができる。
【0031】
同様に、制御ユニット2および温度判定ユニット3を端子5a,5bを介して更新あるいは保守することも可能である。しかしながら、当業者には、上述した端子の用途は一例にすぎず、これらの端子によって、補助暖房装置に対する数多くの操作が可能になることが認識されるであろう。さらには、補助暖房装置に必ずしも2つの個別の端子を設けなくてもよい。補助暖房装置は、例えば、制御ユニット2に接続されている1つの端子5aのみを備えていることができ、この端子5aを通じて制御ユニット2にデータが供給される。この場合、温度判定ユニット3によって要求されるデータは、(必要な場合)制御ユニット2によって温度判定ユニット3に渡される。
【0032】
図2は、補助暖房装置1の制御の基本的な原理を示している流れ図である。最初のステップS1において、加熱される冷気の温度を求める。この判定は、さまざまな方法において達成することができる。冷気温度を判定する最も単純な方法は、入ってくる冷気の位置に配置されているセンサーによって求めることである。ブロアを使用する場合、このセンサーはブロアと加熱素子との間の空気ダクトに配置されていることが好ましい。この方法は、このようなセンサーによって冷気温度を正確に求めることができる限りは有利である。しかしながら、この場合には追加のセンサーが必要であり、これにより補助暖房装置がより高価になる。
【0033】
したがって、車両内ですでに検出されている温度値、例えば、車両の車室内の温度、あるいは空調システムによって測定される温度などに基づいて、冷気温度を求めることが好ましい。この場合、冷気温度を求めるのに追加の温度センサーは必要なく、車両にすでに組み込まれている装置を、余分なコストなしに使用することができる。冷気温度のこのような「間接的な」検出の詳細は、以降の段落において詳しく説明する。
【0034】
ステップS2においては、このようにして確定された冷気温度に基づいて、加熱素子4によって発生させる加熱出力を決定する。この加熱出力は、加熱素子に入る空気の温度に大きく依存する。例えば、冷たい空気を加熱するのに要求される加熱出力は、さほど冷たくない空気を加熱するのに要する加熱出力よりも高い。
【0035】
要求される加熱出力は、さまざまな方法において確定することができる。これは、例えば、冷気温度に対する加熱出力の依存性を記述するアルゴリズムによって(すなわち、数学方程式を解くことによって)、行うことができる。さらに、冷気温度およびそれ以外のパラメータに対する加熱出力の依存性を反映する特性を使用することも可能である。この場合、加熱出力を求める計算処理を回避することができる。しかしながら、必要な加熱出力を求めるための別の可能な方法も存在し、上述した方法が一例にすぎないことが、当業者には認識されるであろう。
【0036】
発生させる加熱出力が確定された時点で、ステップS3において、加熱素子4の加熱出力を調整する。これは、加熱素子(または、好ましくは個別に制御可能な複数のPTC加熱素子)を流れる電流の強さを適切に選択することによって、容易に達成することができる。この目的には、通常では、補助暖房装置の個別に制御可能な加熱段階の数に応じて、電力半導体(各加熱段階に供給される電流を調整する)が使用される。
【0037】
本発明による制御によって、加熱される空気に加熱素子4によって放射される加熱出力を、入ってくる冷気の温度に対して調整する。従来技術の場合とは異なり、たとえ周囲条件が動的に変化する場合においても、不利な制御の行き過ぎなし(control overshoot)に加熱出力を最適に適合させることができる。このようにして、加熱される空気流の不快な過度の温度を高い信頼性において回避することができる。
【0038】
図3は、追加のブロアを備えた、本発明による電気式補助暖房装置を詳しく示しており、ブロアには、本発明の実施形態によると、冷気温度を測定するための温度センサーが設けられている。しかしながら、前述したように、このような温度センサーの使用は、絶対的に必要なわけではない。
【0039】
補助暖房装置1は、加熱素子4が中に並んで配置されている平坦な収納部6と、制御ユニット2および温度判定ユニット3が組み込まれている電子制御部7を有する回路基板と、ラジアルブロア8と、温度センサー10とから構成されている。収納部6の外周には、複数の取付け連結部9がさらに設けられており、これらの取付け連結部9は、収納部6を車両の支持体における相補的な連結部に結合するために使用される。温度センサー10は、冷気のセクションに設けられており、電子制御部7に接続されている。さらに、電子制御部7は、車両の配線系統、ラジアルブロア8、または適切な制御要素(シートまたは取付具の領域に設けられていることが好ましい)に、ライン(詳しくは図示していない)を介して接続されている。これらの制御要素は、例えば、暖気温度もしくはブロアの回転速度、またはその両方を、互いに独立して調整する目的で使用することができる。さらには、制御部7を、温度センサー10に加えて、または温度センサー10の代わりに、車両のバスに接続することができ、このバスは、車両において利用可能な周囲パラメータ、例えば、内側温度、外側温度、車両速度、コンバーチブルトップの状態(開/閉)などを、制御部7に供給する。
【0040】
図3は、本発明の多数の可能な使用方法を明確に示している。図3に示したタイプの補助暖房装置は、車両内の多数の場所において使用される。補助暖房装置は、例えば、ダッシュボード、シートの表面域、車両のシートの背もたれおよびネックレストに取り付けられる。さらに、最近の車両は、快適性を高めるため複数のブロアまたは暖房モジュールを備える。本発明では、車両に組み込まれる個々の加熱素子それぞれについて、吸い込まれる空気の温度を個別に求めることから、加熱素子それぞれが自己完結的に動作することができ、したがって、局所的に使用することができる。
【0041】
図4は、車両のシートを暖房する目的で、本発明による補助暖房装置を使用する1つの可能な実施形態を示している。車両のシートは、通常の場合におけるように、シートクッション部12および背もたれ13を備えている。シートクッション部12および背もたれ13の両方は、本質的に支持体から構成されており、この支持体は、硬質発泡体(例えば、ポリウレタン)から作成されていることが特に有利であるが、スプリング入りシートとして支持体を実施することもでき、支持体には必要な固定レールおよびフレームが組み込まれている。硬質発泡体の表面には、例えば編地14が接着されており、その上に外側カバー15(例えば、ベロア、レザー)が載っている。
【0042】
図4に示した実施形態においては、硬質発泡体には空気流路16が形成されており、この空気流路16は、端部がチャンバ状であり、その全長にわたり編地14の方向に開いている。シートクッション部および背もたれ13の背面には、配置目的で形成されている開口に補助暖房装置6が配置されている。補助暖房装置によって加熱された空気は、空気流路16を通じて乗員に送られる。図4はシートクッション部およびシートの背もたれ部の暖房装置を示しているのみであるが、本発明による補助暖房装置は、乗員の首領域を暖めるための空気流路(または複数の空気流路)を含んでいるシートにおいても、同じように使用することができる。この場合、1つのみの補助暖房装置ではなく、例えば3つの補助暖房装置を使用することができ、各補助暖房装置が、シート、シートに着座している人の背中、または首領域に、暖気を供給する。
【0043】
しかしながら、車両において複数の補助暖房装置を使用するときには、個々の加熱素子4それぞれに電子制御部7を設ける必要はない。コストを低減するため、例えばバスを介して、またはアナログ方式で個々の加熱素子に接続されている1つのみの電子制御部を、車両に設けることができ、この電子制御部は、加熱素子それぞれによって発生させる加熱出力を個々に調整する。
【0044】
さらに、個々の加熱素子それぞれが個別のブロア8に接続されている必要もない。コストおよび車両重量を低減するため、複数の加熱素子を1つのブロア8に接続することができ、このブロア8が各加熱素子に空気を供給する。本発明による補助暖房装置は、例えば、中央のブロアからの空気を、車両のそれより後部に配置されている吹出口に導くために使用される空気ダクトに配置することができる。そのような場合、個々のブロアは必要ない。さらには、車両のシートは、外部ブロアに接続されている1本のみ、または複数の空気ダクトを備えていることができ、これらのダクトに、本発明による1つまたは複数の補助暖房装置を設ける。暖房装置に供給される冷気流のパラメータは、例えば中央の空調システムによって提供することができる。
【0045】
前述したように、発生させる加熱出力は、加熱素子4に入る冷気の温度に大きく依存する。発生させる加熱出力は、さまざまな方法、例えば、制御量として冷気温度を含んでいる数学方程式によって、決定することができる。特性または特性フィールドを使用するときには、この数学的な計算処理を回避することができる。後者の方法で加熱出力を求める場合、冷気温度に対する加熱出力の依存性を反映する特性が、例えば、補助暖房装置における測定値によって実験的に求められ、この特性を通じて、動作時に加熱出力を最適に調整することができる。
【0046】
温度の判定を向上させるため、2つの判定方法を組み合わせることもできる。例えば、数学的計算の個々の側面(例えば、パラメータの温度依存性)を特性フィールドによって容易に表すことができる。これにより、計算処理が大幅に減少し、なぜなら、パラメータの特性の正確な式がしばしば存在しないためである。特性を使用する場合、必要であれば特性を更新できるという利点もある。改良された測定方法を使用する場合、特性を決定しなおすことによって、例えば、冷気温度の判定を最適化することが可能である。これにより、さらに、補助暖房装置の変化する特性、例えば、補助暖房装置に生じうる汚れ(soiling)に、加熱出力の制御を適合させることができる。
【0047】
前述した機能を実行するため、例えば、制御ユニット2もしくは温度判定ユニット3、またはその両方は、温度判定と加熱素子の制御を定義する制御プログラム、機能ルーチン、または特性を含んでいるメモリユニット(図示していない)を備えていることができる。さらに、制御ユニット2もしくは温度判定ユニット3、またはその両方は、この場合、メモリユニットに格納されているプログラムを実行するプロセッサを含んでいる。メモリユニットに含まれているデータは、端子5a,5bを介して容易に更新することもできる。しかしながら、当業者には、補助暖房装置の機能を実行するための別の実現方法も可能であることが認識されるであろう。
【0048】
以下では、発生させる加熱出力を計算する数学的方法について、最初に説明する。この方法の基礎となるのは、次の式である。
【0049】
【数1】


【0050】
補助暖房装置の最も単純な実施形態においては、発生させる加熱出力が、ほとんどの場合に変化する冷気温度のみに依存するように、暖気の目標温度および空気流量は固定の所定値である。中を流れる空気が熱エネルギを取り込む効率を考慮する場合、効率係数αをさらに考慮することができる。この場合、加熱出力を計算する式は次のようになる。
【数2】

【0051】
加熱出力を計算するうえで必要な冷気温度は、いくつかの方法において求めることができる。これを達成する最も簡単な方法は、加熱素子に入る空気の温度を測定する温度センサーとして、ブロアと加熱素子との間に配置されている温度センサーを使用することである。しかしながら、必ずしもこのようなセンサーを使用する必要はなく、なぜなら、車両に取り付けられている多数の装置が車両の内側または外側の温度を測定しており、冷気温度を求めるのにこれらを使用できるためである。例えば、車両に取り付けられている空調システムは、車室内の温度の推定値を導くことのできる温度を測定する。補助暖房装置に空気を供給するブロアが、例えば内気循環モードにおいて車両の車室から空気を吸い込むとき、空調システムによって測定される温度は、冷気温度の良好な値である。空気供給器が外気導入モードで動作しているときには、吸い込まれる空気は、車両内側からの空気ではなく、外側からの新鮮な空気である。この場合、車両に設けられている温度センサーによって測定される外側温度が、冷気温度の良好な尺度である。これらに基づいて、本発明では、車両の内側または外側の温度センサーによって測定される周囲温度Tambientを使用して冷気温度を求める。
【0052】
(車両の内側または外側の)周囲温度は、通常では冷気温度(吸い込み温度)に正確には対応していないため、例えばバスによって提供される温度(例えば、内側温度または外側温度)のクォリティを評価する係数Fを、さらに計算に導入することができる。例えば、バスによって提供される温度を適合させる必要がない場合、F=1を選択することができる。例えば、測定温度と冷気の実際の温度との温度差を反映するクォリティ係数を使用して、冷気温度が得られるように周囲温度を補正する。
【数3】

【0053】
式(iii)においては、周囲温度と冷気温度の間の比を係数として求めることができるものと想定している。しかしながら、このような無条件の依存性がつねに与えられるわけではない。冷気温度がつねに特定の差異値だけ周囲温度と異なっていることもあり得る。周囲温度と冷気温度との間のそのような関係を考慮する場合、本発明では、上式に代えて、次式に示した加算補正係数fを使用する。
【数4】

【0054】
冷気温度に対する周囲温度の偏差の時間的な変動をさらに考慮する場合、補正係数を時間依存とすることもできる。例えば、周囲温度が、極めて短い時間内に特定の温度まで加熱される例えばダッシュボードあるいは中央コンソールにおいて測定されるのに対し、例えば車室の床付近において空気が吸い込まれる(この空気の温度は、コンソールの温度までゆっくりと上昇する)場合に、このような時間依存性が生じる。さらに、補正係数Fおよびfを組み合わせることによって、冷気温度を次のように求めることもできる。
【数5】

【0055】
ここまでは、車両の内側または外側において測定される1つのみの温度に基づいて冷気温度を求めた。しかしながら、冷気温度の判定は、複数の温度を使用することによって改良することができる。
【0056】
複数の温度から冷気温度を求める場合、冷気温度に対する個々の温度の影響を表す加重係数もしくは相関係数、またはその両方を使用する。これらの係数の合計は1であることが好ましい。これらの相関係数は、時間的に一定である、あるいは時間的に変化することができる。これにより、車両によって提供される値のクォリティを評価することができる。
【0057】
以下では、相関/加重について、測定される車室温度と外側温度の組合せに基づいて例示的に説明する。
【0058】
車両を始動させる、もしくは暖房モジュールのスイッチをオンにする、またはその両方を行ったとき、通常では、内部温度と外部温度の間に調整を行う。例えば、コンバーチブルトップまたは窓が閉じている状態で、車両内の車室温度が18℃であるのに対し、外側温度が10℃である場合、コンバーチブルトップまたは窓を開けたときには、これら2つの温度の間の値に温度を調整し、その温度値を評価する。
【0059】
加熱される空気の温度は、次式によって求めることができる。
【数6】

【0060】
式から明らかであるように、外部温度および内部温度の影響は、上の例における時間依存の適切な補正係数を選択することによって考慮されている。さらに、さらなる変動を反映する加算補正係数を追加することができる。
【0061】
上述した一連の式は、数学的に記述するための多数の補正係数を含んでいるが、これら記述の正確な関数は既知ではないことが多い。具体的には、補正係数の正確な値は車両に固有であり、車両および補助暖房装置の年式に伴って変化しうる。このような変化にもかかわらず補正係数として正確な値または係数の時間依存性を使用するためには、温度判定ユニット3は、個々の係数の依存性を表す特性(characteristics)を格納していることが好ましい。これらの特性または特性フィールドは、一連の測定値によって実験的に求められる。したがって、車両の型式ごとに個々の値を求めることができ、これにより、加熱出力の制御を最適に車両に適合させることができる。
【0062】
式(i)から明らかであるように、発生させる加熱出力は、冷気温度のみならず暖気温度にも依存し、暖気温度は、補助暖房装置1の最も単純な実施形態においては一定である。しかしながら、このような補助暖房装置は、乗員の快適性のニーズを満たすには十分でないことが多い。具体的には、乗員にとって、暖房装置から吐き出される空気の温度を、自身が求める快適さに適合させ得ることが重要である。
【0063】
この要求を満たす目的で、本発明のさらなる実施形態によると、補助暖房装置の制御ユニットは、目標温度値をさらに考慮し、この目標温度値は、外部の入力ユニットから端子5aを介して受け取る値に基づいて確定される。
【0064】
目標温度値は、受け取った信号からさまざまな方法において求めることができる。最も単純には、外部装置によって送信される値は、ユーザが入力する正確な温度値である。この場合、温度を変更することができ、乗員によって絶えず調整される。しかしながら、多くの場合、乗員は目標温度を正確に指定するのではなく、特定の温度に対応する快適性段階(comfort stage)を選択するにすぎない。この場合、制御ユニットに送信される温度値は、おそらくは正確な温度値ではなく、選択された快適性段階を反映する値にすぎない。送信された値から暖気の目標温度を求める目的で、受け取る信号に依存する個々の目標温度を含んだテーブルを、制御ユニットのメモリに格納しておくこともできる。
【0065】
冷気温度および暖気の目標温度に加えて、加熱素子の中を流れる空気流量も、発生させる加熱出力にとって重要である。補助暖房装置の最も単純な実施形態においては、この空気流量は一定値として選択されるが、このような実施形態は、乗員が求める快適性を満たすには十分ではないことが多い。
【0066】
この要求を満たす目的で、本発明のさらなる実施形態によると、補助暖房装置1の制御ユニット2は、外部の入力ユニットから端子5aを介して受け取る値に基づいて確定される空気流量を考慮する。
【0067】
空気流量の正確な値は乗員にとってあまり意味がないため、乗員は空気流量を正確に選択するのではなく、特定の空気流量に対応する快適性段階を調整するにすぎない。暖気の目標温度を選択する場合と同じように、この場合、制御ユニット2に送信される値は、おそらくは空気流量の正確な値ではなく、選択された快適性段階を反映する値にすぎない。この値は、例えば、ブロア8から、またはユーザが操作するコントローラから直接取得することができる。補助暖房装置1を流れる空気流量の確定は、送信される値の精度に応じて行う。正確な値が送信される場合、その値を式(i)に直接挿入することができる。しかしながら、送信される値が、選択される快適性段階を表しているにすぎない場合、あるいはブロアの回転速度を示している場合、制御ユニットのメモリに格納されているテーブル(受け取る信号に対する空気流量の依存性が記述されている)を用いて、送信される値から空気流量を確定する。
【0068】
しかしながら、暖気の目標温度および空気流量を求めるうえで、ユーザ定義の快適性段階のみならず、車両速度や外側温度などのパラメータも考慮することが有利である。これらのパラメータは、オープンカー(例:カブリオレ)において、あるいは窓もしくはサンルーフが開いているときには、非常に重要である。
【0069】
コンバーチブルトップまたは窓が開いている状態においては、車室内において後流に起因して乱流が発生する。この乱流は、暖房装置によって吐き出される暖気流に悪影響を及ぼす。後流は、吐き出される空気の速度に影響を与え、その一方で、吐き出される空気が冷たい風によって冷やされる。いずれの影響も、主として車両の速度に依存する。
【0070】
以下では、車室が閉じていない状態において後流の影響を考慮する、本発明の2つの実施形態について説明する。
【0071】
前述したように、後流により、補助暖房装置から吐き出される空気が冷える。したがって、この空気が乗員に達するとき、もはや所望の温度ではない。このような温度低下に対処する目的で、本発明では、好ましい実施形態によると、暖気の目標温度を車両の速度に応じて変化させる。この変化は、後流に起因する温度低下が補正されるように選択する。
【0072】
車両速度が増すほど風が冷たくなるため、暖気の目標温度は、車両速度が増すにつれて高くなるように選択されることが好ましい。同様に、車両速度が低下するにつれて暖気の目標温度を下げる。これを達成する最も容易な方法は、車両速度に対する暖気の目標温度の線形依存性を適用することであるが、車両速度に対する暖気の目標温度の非線形依存性を使用することもできる。暖気温度は、車両の速度に応じて連続的に変化させることに加えて、段階的に変化させることもできる。
【0073】
暖気の目標温度を変化させる場合、各車両速度に、絶対温度値ではなく適切な温度補正を割り当てることも可能である。この割り当ては、例えば、選択される暖気の目標温度を上げる、または下げる程度を示す数学関数を使用することによって、行うことができる。あるいは、車両の速度および快適性段階に依存する仮想の暖気の目標温度を含んでいる特性フィールドを制御ユニットに格納することも可能である。表1は、例示的な特性フィールドを示しており、このフィールドには、3つの快適性段階および4つの異なる速度に対する暖気の目標温度が挿入されている。車両の静止状態における暖気の目標温度の値は、車両の速度に依存して適合化されるいわば基本値とみなすことができる。
【0074】
【表1】

【0075】
後流の「冷たさ」は外側温度にも依存するため、本発明のさらなる実施形態においては、外側温度が低いとき、高い暖気の目標温度が自動的に選択されるように、暖気の目標温度をさらに外側温度にも適合させる。外側温度に依存する暖気の目標温度は、絶対温度値によって示すことができる。しかしながら、所定の暖気の目標温度を外側温度に依存して補正する程度を示す相対温度値を使用することも可能である。この点において、暖気の目標温度をさまざまなパラメータに同時に適合させることができるように、さまざまな温度補正(例えば、暖気の目標温度を車両の速度または外側温度に適合化させる)を互いに組み合わせ得ることを考慮すべきである。
【0076】
後流によって、暖房装置から吐き出される空気の温度が下がるのみならず、吐き出される空気の強さも減少する。この空気流の変化に対処する目的で、乗員は、通常では、車両速度が上がったとき空気流の強さを増大させる。しかしながら、速度が急激に低下する場合、運転者は、十分に短い時間内に空気流を低減させることができず、したがって、運転者の首に吹きつける空気流が強くなりすぎる。車両が突然に停止するときに起こりうるこの不快な結果を防止するため、本発明では、車両が静止していることを示す停止信号に応じて、空気流の強さを低減させる。しかしながら、必ずしも、車両が完全に停車した場合のみに停止信号を生成する必要はなく、車両速度が特定の限界値未満であり、したがって、やがて車両が停止することを予期すべきであることを、停止信号が示すこともできる。
【0077】
さらに、車両が走行している間の空気流のこのような変化に対処する目的で、車両速度に応じて空気流量を変化させることが好ましい。この変化の選択は、車両速度が上がったときに空気流量が増大し、車両速度が下がったときに空気流量が減少するように、ブロアの回転速度を変化させることによって、後流に起因する変化が補正されるように行う。車両が走行している間、空気流量が車両速度に適合化されるため、この場合、車両が停止していることを示す信号を使用する必要がない。空気流量の適合化は制御ユニット2によって実行することができ、制御ユニット2は、さらに、発生させる加熱出力を変化した空気流量に自動的に適合させる。しかしながら、車両における何らかの別の制御ユニットが、車両速度に応じてブロアの回転速度を変化させ、制御ユニット2がこの適合化に従って加熱出力を自動的に適合させることも可能である。
【0078】
回転速度は、さまざまな方法において変化させることができる。例えば、車両速度にブロアの回転速度それぞれを割り当てる(回転速度に基づいて空気流量を計算できる)、線形または非線形の連続的な数学関数を使用することによって、変化をあらかじめ定義しておくことができる。連続的に変化させる代わりに、空気流量を車両速度に段階的に適合させることもできる。あるいは、車両速度および快適性段階に依存する回転速度を含んでいる特性フィールドを、制御ユニットに格納することができる。表2は、例示的な特性フィールドを示しており、3つの快適性段階と4つの異なる車両速度に対するブロアのさまざまな回転速度がリストされている。
【0079】
【表2】

【0080】
表2に示した特性フィールドは、ブロアの回転速度の段階的な変化を反映しているが、ブロアの回転速度を車両速度に連続的に適合させるには、例えば、格納されている値の間での補間によって達成することができる。なお、この点において、回転速度が外側温度に依存することを考慮すべきである。
【0081】
さらに、ブロアの回転速度の絶対値の代わりに補正値を使用することも可能であり、この補正値は、事前に選択されたブロアの回転速度を車両速度に応じて変化させる程度を示す。
【0082】
ここまで、暖気の目標温度を速度に依存して適合させる方法について個別に説明したが、前述したように、加熱出力を決定するとき、補助暖房装置は、暖気の目標温度を変化させることと、ブロアの回転速度を変化させることの両方を考慮することが有利である。しかしながら、両方の補正を実行することが絶対的に必要なわけではない。
【0083】
場合によっては、上述した数学関数または特性フィールドを理論的に求めることができないことがあり、その場合、これらを実験的に求めなければならない。また、数学関数と、格納されている特性フィールドの組合せを使用して、暖気の目標温度を適合させることもできる。
【0084】
上述したいずれの実施形態においても、暖気の目標温度とブロアの回転速度は、車両速度によって明確に求められる。車両速度はさまざまな方法において求めることができる。例えば、回転速度計の信号を制御ユニット2に供給することができる。あるいは、車輪速度またはギアの回転速度に基づいて、またはアンチロックブレーキシステムに基づいて、車両速度を求めることもできる。さらには、制御ユニット2は、正確な速度値を示す信号、あるいは、例えば速度を示す値であって、制御ユニット2に格納されているテーブル、または関数によって車両速度が導かれる値、を示す信号を受け取ることができる。さらには、速度に依存するパラメータ(例えば、車輪速度)から、必ずしも速度を明示的に求めなくてもよい。また、発生させる加熱出力とパラメータとの間の直接的な依存関係を記述する関数または特性フィールドを使用することも可能である。
【0085】
上述した実施形態および式から明らかであるように、快適性段階および車両速度の変化によって、発生させる加熱出力が、それぞれに対応して変化するが、PTC素子の慣性に起因して、加熱出力が変化しても、吐き出される空気の温度にただちには反映されない。
【0086】
例えば、加熱される空気量が減少する(例えば、ブロアの回転速度が低下する)と、PTCセラミックの一般的な挙動に起因して、加熱素子の表面温度が急激に上昇する。この結果として、乗員によって望まれていない不快な「過度の暖房効果」が生じる。このことは、特に、補助暖房装置が頭部空間の暖房として使用されているときには、回避すべきである。さらには、通常では、加熱素子の不可避の熱慣性のため、加熱される空気の温度変化が遅れる。
【0087】
この慣性および過度な暖房効果を補正する目的で、本発明のさらなる好ましい実施形態においては、加熱素子によって発生させる加熱出力が変化するとき、最初の特定の期間において、加熱素子4によって発生させる加熱出力が、計算された目標値からずれるように制御する。
【0088】
図5は、空気流の強さが増し、発生させる加熱出力がその結果として増大する場合における、加熱素子4によって発生させる加熱出力の、例示的な時間依存の特性を示している。吐き出される空気をより急速に加熱する目的と、加熱素子の慣性を補正する目的で、負荷の正の変化(例えば、より高い快適性段階が選択される)に応答して、現在の車両速度に関連付けられる加熱エネルギよりも高い加熱エネルギを、一時的に加熱素子に供給する。より高い加熱出力を選択することによって、慣性にもかかわらず、望んだとおりに空気が加熱されることが達成される。
【0089】
同様に、制御ユニット2は、負荷の負の変化(例えば、より低い快適性段階が選択される)に応答して、加熱素子に選択される加熱エネルギが、各車両速度に対して設定されている加熱エネルギよりも低くなるように、構成されている。より低い加熱出力がこのように選択されることにより、吹き出し温度の上昇(空気流量が少ないことと、加熱素子の熱質量に蓄えられているエネルギとによって生じうる)が防止される。したがって、負荷の負の変化の場合には発生させる加熱出力を減少させることにより、吹き出し温度のオーバーシュートと、結果としての過度な暖房効果とが回避される。
【0090】
1つまたは複数の加熱素子は、パルス幅変調(PWM)によって制御されることが好ましい。加熱出力はデューティサイクルを介して調整される。負荷の変化が起きたとき、このデューティサイクルを、短い期間について、増大させる(負荷の正の変化の場合であり、より高い快適性段階への切り替えが行われるとき)、または減少させる(負荷の負の変化の場合、すなわち、より低い快適性段階への切り替えが行われるとき)。しかしながら、デューティサイクルの一時的な増大または低減の正確な制御を、理論的に求めることは困難である。したがって、満たすべき要求条件に応じて、車両に依存する値として実験的に求めることが好ましい。
【0091】
図5に示した動作開始時のオーバーシュート(switch-on overshoot)では、選択されている期間の間、一定の値を想定しているが、必ずしもこのように選択する必要はない。時間とともに変化する、動作開始時の増加した加熱出力として、初期値から開始して、計算される目標加熱出力まで連続的または段階的に減少する増加した加熱出力を使用することも可能である。同様に、動作開始時の減少した加熱出力の場合、一定の値、または、時間とともに変化して初期値から目標加熱出力まで増大する値を選択することができる。
【0092】
上述した好ましい実施形態から理解できるように、補助暖房装置の加熱特性を正確または完全に数学的に記述することは不可能であることが多く、したがって、おそらくは、実験的に求められる特性フィールドを使用する必要がある。しかしながら、適切な特性フィールドを選択することによって、補助暖房装置を制御するための数学的記述をまったく必要としないようにすることもできる。
【0093】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、制御ユニットのメモリまたは温度判定ユニットのメモリに、1つまたは複数の特性フィールドが格納されており、これらの特性フィールドは、暖房装置から吐き出される空気が特定の暖気の目標温度を有するように、上述したパラメータ(例えば、冷気温度、車両速度)に応じて加熱素子によって発生させなければならない加熱出力を示す。
【0094】
特性フィールドを決定する場合、加熱される空気を目標温度まで加熱するために加熱素子によって発生させなければならない加熱出力を実験的に求めることができるように、多数の入力パラメータ(例えば、冷気温度、空気流量の大きさ、窓およびコンバーチブルトップの開放状態、暖気の目標温度)について、一連の測定を実行する。個々の車両それぞれ、または車両の形式それぞれにおいて求められる特性に基づいて、補助暖房装置の制御を、個々の車両それぞれ、または車両の形式それぞれに正確に適合させることができる。
【0095】
特性フィールドの決定は、個別のセクションに分けることもできる。例えば、補助暖房装置の製造業者が、暖房装置の特性を工場において実験的に求め、それらを第1の特性フィールドに格納する一方で、その後に、自動車の製造業者が、第2の特性フィールド(車両の部分に対する影響によって式が定まる)を求める。
【0096】
さらに、個々の車両それぞれについて特性フィールドを求める必要もない。1つの型式の車両または1つの型式の補助暖房装置の中では、極めてわずかな特性の差異が生じるのみであるため、通常では、特定の型式の車両のうちの1つの車両のみについてと、特定の型式の補助暖房装置のうちの1つの補助暖房装置のみについて、特性フィールドを求めれば十分である。
【0097】
さらに、特性フィールドによって制御することにより、制御ユニットもしくは温度判定ユニット、またはその両方を単純に修正することができ、なぜなら、これらのモジュール/メモリユニットに格納されているデータを端子5a,5bを介して容易に更新できるためである。
【0098】
自動車の暖房装置が通常では車両の空気ダクトに収容されており、ブロアによって新鮮な空気が供給されることを考えたとき、空気の吸込口または吐出口が詰まった場合、あるいはブロアが故障した場合、過度な暖房が起こりうる。これらの場合、加熱素子内において空気流量が減少する、あるいは空気が逆流するため、加熱出力が変更されないままであると、空気ダクトに含まれている空気が非常に高い温度まで加熱される。したがって、特定の状況下では、吐き出される暖気の温度が60℃を超えることがある。
【0099】
空気流の障害による問題を回避する目的で、さらなる好ましい実施形態によると、制御ユニットは、エラー認識を実行する。この実施形態においては、制御ユニットは、ブロアの実際の回転速度と、ブロアの制御入力に印加されている電圧とを比較する適正電圧チェック機能(plausibility check)を備えている。例えば、空気の吸込口が詰まることによって、ブロアによって運ばれる空気流量が減少すると、その影響として、特定の回転速度に達するために要求される電圧が低くなることを考えたとき、この電圧値は、空気ダクトにおける問題の好適なインジケータである。
【0100】
したがって、特定の速度に調整されるように、電圧(おそらくは許容限界値(指定する必要がある)を減じた電圧)を余分に下げなければならない場合、制御ユニット2は、より低い空気流量値を使用する。減少した空気流量が補正されるように、例えば、1つの(快適さ)段階だけ弱まる方向に、加熱出力を切り替えることができる。空気流量値を小さくして加熱出力を減少させても依然として適正電圧チェックに合格しない場合、考慮した空気流量値をさらに減少させる。この操作を、暖房モジュールが完全にオフになるまで続けることができる。
【0101】
しかしながら、空気ダクト内の動作障害は、加熱素子において直接的に検出することもできる。PTC加熱素子は、加熱素子の温度が上昇するにつれて増大する温度依存のオーム抵抗を有する。したがって、加熱素子を流れる電流は、電圧が一定のままであるとき、加熱素子の温度が上昇すると減少する。加熱素子に結合されているラジエータ要素の中を空気が流れるとき、その空気が加熱素子から熱を取り出し、加熱素子が冷える。これにより、加熱される空気に加熱出力が伝わるが、加熱素子の電気抵抗は一定のままである。したがって、PTC素子における連続的な空気流の場合、PTC素子を流れる電流は、特定の値(指定する必要がある)より高くなければならない。例えば、詰まりによって、あるいはブロアの故障によって、空気流が妨げられると、電流値は、指定されている限界値より下がる(PTC効果)。結果として、加熱素子が作動停止する。
【0102】
上述したPTC効果によって加熱素子が受動的に作動停止しても、吐き出される暖気は、この作動停止より前に、おそらくは、乗員にとって不快あるいは煩わしい温度まで加熱されている。これを回避する目的で、加熱素子における電流を測定することが好ましい。信号の値が所定の値よりも下がった場合、制御ユニットによって加熱素子4を作動停止する。
【0103】
ここまで、好ましい実施形態に基づいて本発明について説明してきたが、個々の実施形態は、互いに独立した例としてみなされるものではない。そうではなく、個々の実施形態は、本発明の副態様を説明しており、必要であればそれぞれの特徴を互いに組み合わせることができる。
【0104】
上述した実施形態による補助暖房装置1は、温度判定ユニット3および制御ユニット2が個別のコンポーネントであるように実施されているが、この特殊な実施形態は、本発明による補助暖房装置1にとって必須ではない。あるいは、それぞれの機能を、例えば、メモリおよびプロセッサを備えている1つのコンポーネントに統合することもでき、このコンポーネントは、メモリに格納されている制御プログラムを使用して温度を求め、制御ルーチンを使用して加熱素子を制御する。
【0105】
後流の影響を求めるうえで、コンバーチブルトップの状態または窓の開放程度に関する情報を含んでいる信号を制御ユニット2に供給することも可能である。制御ユニット2は、コンバーチブルトップまたはサンルーフが閉じているか開いているか、あるいは、どの窓が開いているか、およびどの程度開いているかを、この信号によって認識することもできる。
【0106】
要約すれば、本発明は、加熱される空気の温度のオーバーシュートが高い信頼性で回避される電気式補助暖房装置を開示する。これを目的として、暖房装置に流れ込む空気の温度を求め、好ましくは所望の吐出温度に応じて加熱出力に変換することにより、加熱素子を制御する。この変換は、格納されている特性フィールドを通じて行うことが好ましく、特性フィールドによって、複数の車両パラメータ(例えば、車両速度、コンバーチブルトップの開放状態)を容易に考慮に入れることができる。入ってくる空気の温度は、車両においてすでに利用可能である温度値から導くことができる。このようにして、使い勝手のよい電気式暖房装置を極めて容易に達成することができる。この暖房装置は、車両内で局所的に、例えば、車両のシート、あるいは車室の後部などにおいて、使用することができる。自動車の運転条件がたとえ動的に変化する場合においても、加熱された空気の温度変動を容易かつ高い信頼性で回避することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の電気式補助暖房装置であって、
前記補助暖房装置の中を流れる空気を加熱する少なくとも1つのPTC加熱素子(4)と、
前記少なくとも1つの加熱素子(4)の加熱出力を調整する制御ユニット(2)と、
前記加熱素子(4)によって加熱される前記空気の冷気温度を判定する温度判定ユニット(3)、
を備えており、
前記制御ユニット(2)は、前記加熱素子(4)によって発生させる前記加熱出力を、判定された前記冷気温度に依存して調整する、
電気式補助暖房装置。
【請求項2】
前記温度判定ユニット(3)は、前記冷気温度を、少なくとも1つの測定される温度値に基づいて判定する、請求項1に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項3】
前記温度判定ユニット(3)は、前記冷気温度を、前記測定される温度値の少なくとも1つの補正係数に基づいて判定する、請求項2に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項4】
前記補正係数は、前記測定される温度と、判定される前記冷気温度との間の差を補正する、請求項3に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項5】
前記補正係数は、前記測定される温度値に対する、前記冷気温度の時間的変動を補正する、請求項3または請求項4に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項6】
前記測定される温度値は、前記車両の内側の温度、もしくは、前記車両の外側の温度、またはその両方である、請求項2から請求項5のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項7】
前記冷気温度は、前記車両の内側の温度および前記車両の外側の温度の重み付き組合せから判定される、請求項6に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項8】
前記測定される温度値は、前記自動車の空調システムによって提供される、請求項2から請求項7のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項9】
前記温度を測定するために使用されるセンサー(10)であって、加熱される前記空気を供給するブロア(8)と前記加熱素子(4)との間に配置されている、前記センサー(10)、を備えている、請求項2または請求項3に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項10】
前記制御ユニット(2)が、発生させる前記加熱出力を調整するため、事前に選択可能な、暖気の目標温度をさらに考慮する、請求項1から請求項9のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項11】
前記暖気の目標温度は、前記車両の開/閉状態に依存して自動的に調整される、請求項10に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項12】
前記暖気の目標温度は、前記外側温度に依存して自動的に調整される、請求項11に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項13】
前記暖気の目標温度は、前記車両速度に依存して自動的に調整される、請求項9または請求項12に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項14】
前記制御ユニット(2)は、
前記車両の開放状態、前記外側温度、前記車両速度、のうちの少なくとも1つに対する、前記暖気の目標温度の依存性、を示す特性フィールド、を含んでいるメモリ、
を備えている、請求項11から請求項13のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項15】
前記制御ユニット(2)は、発生させる前記加熱出力を調整するため、前記補助暖房装置を通る事前に選択可能な空気流量をさらに考慮する、請求項1から請求項14のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項16】
前記空気流量は前記車両の前記開/閉状態に依存して自動的に調整される、請求項15に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項17】
前記空気流量は、前記車両の静止状態を示す停止信号に基づいて、事前に選択可能な値に自動的に調整される、請求項16に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項18】
前記空気流量が前記車両速度に依存して自動的に調整される、請求項16に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項19】
前記制御ユニット(2)は、
前記車両の開放状態、前記停止信号、前記車両速度、のうちの少なくとも1つに対する、前記空気流量の依存性、を示す特性フィールド、を含んでいるメモリ、
を備えている、請求項16から請求項18のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項20】
発生させる前記加熱出力が変化するとき、前記制御ユニット(2)が、前記変化の後、所定の時間期間にわたり、前記変化に従って前記加熱出力をさらに増大または低減させる、請求項1から請求項19のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項21】
発生させる前記加熱出力の前記増大または低減が、前記所定の時間期間の間、前記制御ユニット(2)によって一定に維持される、請求項20に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項22】
前記制御ユニット(2)が、発生させる前記加熱出力の前記増大または低減を、前記所定の時間期間の間に、連続的に、または段階的に、0まで減少させる、請求項20に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項23】
前記制御ユニット(2)が、入力値に対する、発生させる前記加熱出力の依存性、を記述する特性フィールド、を備えており、発生させる前記加熱出力が、前記特性フィールドの値に従って調整される、請求項1から請求項22のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項24】
前記加熱素子(4)において測定される電流が所定の限界値より低下した場合に、前記制御ユニット(2)が前記加熱素子(4)を作動停止させる、請求項1から請求項23のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項25】
前記空気流を発生させるブロア(8)に印加される電圧が限界値より低下した場合に、前記制御ユニット(2)が、前記加熱素子(4)によって発生する前記加熱出力を低減させる、請求項1から請求項24のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項26】
前記測定される温度値、または、前記ブロア(8)に印加される前記電圧が、車両のバスを通じて利用可能である、請求項2から請求項25のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項27】
加熱される前記空気を前記加熱素子(4)に供給するブロア(8)を備えている、請求項1から請求項26のいずれかに記載の電気式補助暖房装置。
【請求項28】
自動車のシートであって、
前記シートの上側領域に形成されており、乗員の頭、肩、および首の領域に空気を供給するために使用される少なくとも1つの空気吐出口、を含んでいる空気ダクト、
を備えており、
請求項1から請求項27のいずれかに記載の電気式補助暖房装置、
をさらに含んでいる、自動車のシート。
【請求項29】
自動車において使用される電気式補助暖房装置によって発生させる加熱出力を調整する方法であって、前記電気式補助暖房装置が、前記補助暖房装置の中を流れる空気を加熱する少なくとも1つのPTC加熱素子(4)を備えており、
前記加熱素子に入る空気の冷気温度を判定するステップ(S1)と、
前記加熱素子(4)によって発生させる前記加熱出力を、判定された前記冷気温度に依存して調整するステップ(S2,S3)と、
を含んでいる、方法。
【請求項30】
前記冷気温度が、少なくとも1つの測定される温度値に基づいて判定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記冷気温度が、前記測定される温度値の少なくとも1つの補正係数に基づいて判定される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記測定される温度値が、前記車両の内側の温度、もしくは、前記車両の外側の温度、またはその両方を表してる、請求項30または請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記補正係数が、前記温度測定の位置と、判定される前記冷気温度との間の差を補正する、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記補正係数が、前記測定される温度値に対する、前記冷気温度の時間的変動を補正する、請求項31から請求項33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記冷気温度が、前記車両の内側の温度および前記車両の外側の温度の重み付き組合せから判定される、請求項31から請求項34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記冷気温度が、ブロア(8)と前記加熱素子(4)との間に配置されているセンサー(10)によって測定される、請求項30または請求項31に記載の方法。
【請求項37】
発生させる前記加熱出力を決定するため、事前に選択可能な、暖気の目標温度、がさらに考慮される、請求項29から請求項36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記暖気の目標温度が、前記車両の開/閉状態に依存して自動的に調整される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記暖気の目標温度が、前記外側温度に依存して自動的に調整される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記暖気の目標温度が、前記車両速度に依存して自動的に調整される、請求項38または請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記車両の開放状態に対する、前記暖気の目標温度の依存性、を示す特性フィールドが、前記暖気の目標温度を調整するために使用される、請求項38または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
発生させる前記加熱出力を調整するとき、前記加熱素子(4)によって加熱される事前に選択可能な空気流量がさらに考慮される、請求項29から請求項41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記空気流量が前記車両の前記開/閉状態に依存して自動的に調整される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記空気流量が、前記車両の静止状態を示す停止信号に基づいて、事前に選択可能な値に自動的に調整される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記空気流量が前記車両速度に依存して自動的に調整される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記車両の開放状態、前記停止信号、前記車両速度、のうちの少なくとも1つに対する、前記空気流量の依存性、を示す特性フィールドが、前記空気流量を調整するために使用される、請求項33から請求項45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
発生させる前記加熱出力が変化するとき、前記変化の後、所定の時間期間にわたり、前記変化に従って前記加熱出力がさらに増大または低減する、請求項29から請求項46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
発生させる前記加熱出力の前記増大または低減が、前記所定の時間期間の間、一定に維持される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
発生させる前記加熱出力の前記増大または低減が、前記所定の時間期間の間に、連続的に、または段階的に、0まで減少する、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
発生させる前記加熱出力の前記増大または低減の依存性を記述する特性フィールドが、発生させる前記加熱出力を増大または低減させるために使用される、請求項47から請求項49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
発生させる前記加熱出力が、入力値に対する、発生させる前記加熱出力の依存性、を記述する前記特性フィールドの値に従って調整される、請求項29から請求項50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記加熱素子(4)において測定される電流が所定の限界値より低下した場合に、前記加熱素子(4)を作動停止させるステップ、
をさらに含んでいる、請求項29から請求項51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記空気流を発生させるブロア(8)に印加される電圧が限界値より低下した場合に、前記加熱素子(4)によって発生する前記加熱出力を低減させるステップ、
をさらに含んでいる、請求項29から請求項52のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−173273(P2009−173273A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−10150(P2009−10150)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(501324823)エーベルスパッヒャー・カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】