説明

自動車ホイール用表面保護フィルム

【課題】
優れた耐侯性を有し、自動車の走行中にホイールから剥がれること、剥がした時にホイールの表面に糊残りが発生することを防止することができるような自動車ホイール用表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】
オレフィン系フィルム層及び粘着剤層を有する自動車ホイール用表面保護フィルムであって、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有するものである自動車ホイール用表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ホイール用表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアルミホイール等の自動車ホイールには、自動車が需要者に引き渡すまでの輸送の段階で、ホイールの表面に汚れが付着していること、傷が付いていること等の防止を目的として、ホイール表面に表面保護フィルムが貼り付けられている。
【0003】
自動車ホイールに用いられる表面保護フィルムは、需要者に自動車が納車されるまでホイールに貼り付けられた状態を維持して表面を保護し、フィルムをきれいに剥がして納車することになる。このため、自動車ホイール用の表面保護フィルムとしては、納車前での自動車の走行中に表面保護フィルムが剥がれることがないこと、フィルムを剥がした時にホイール表面に糊残りが発生することがないこと等の性能を有することが必要とされている。
【0004】
このような自動車ホイール用の表面保護フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の基材フィルムに、アクリル系又はゴム系の粘着剤からなる粘着剤層が設けられたフィルム等が使用されている。
【0005】
しかし、表面保護フィルムをホイールに貼り付けた状態で長期間保管していた場合、粘着力が低下してしまうことによって、自動車の走行中に表面保護フィルムがホイールから剥がれたり、また、剥がした時にホイールの表面に糊残りが発生したりするという問題がある。
【0006】
表面保護フィルムとして、特許文献1には、二量体化されたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含有するポリオレフィン系支持体と、ヒンダードアミン系光安定剤を含有する粘着剤層を含んでなる表面保護フィルム、特許文献2には、天然樹脂系の粘着付与剤と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系陰イオン塩界面活性剤及びポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリブデンのうち少なくとも一つを主成分とした粘着剤層をポリオレフィン系の支持基材に設けてなる表面保護フィルムが開示されている。
【0007】
これらに開示されている表面保護フィルムは、耐侯性に優れたフィルムとして、又は、表面を塗装処理したカラー鋼板や自動車ボディーに用いられ、剥離時に接着跡が残存しないフィルムとして開示されているものであり、アルミホイール等の自動車ホイールに用いる表面保護フィルムとして、詳細に検討されているものではない。
【0008】
特許文献3には、円環状の貼着シートをホイールの表面に貼着するホイール用シート貼付装置が開示されている。ここでは、効率的に貼着シートをホイール表面に貼り付けることができるシート貼付装置が開示されており、アルミホイール等の自動車用の表面保護フィルムの構成について詳細に検討されているわけではない。
【0009】
従って、表面保護フィルムをホイールに貼り付けた状態で長期間保管していた場合に、粘着力が低下してしまうこと等によって自動車の走行中にホイールからフィルムが剥がれてしまうこと、剥がした時にホイールの表面に糊残りが発生してまうこと等の不具合を充分に防止することができるアルミホイール等の自動車ホイール用の表面保護フィルムの開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開平8−325537号公報
【特許文献2】特開2000−119613号公報
【特許文献3】特開2004−67341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた耐侯性を有し、自動車の走行中にホイールから剥がれること、剥がした時にホイールの表面に糊残りが発生することを防止することができるような自動車ホイール用表面保護フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、オレフィン系フィルム層及び粘着剤層を有する自動車ホイール用表面保護フィルムであって、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有するものであることを特徴とする自動車ホイール用表面保護フィルムである。
【0013】
上記オレフィン系フィルム層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
【0014】
上記粘着付与剤は、ロジン系樹脂、芳香族石油樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
上記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物を含有するものであることが好ましい。
【0015】
上記光安定剤は、ヒンダードアミン系化合物を含有するものであることが好ましい。
上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、更に、剥離シートを有するものであることが好ましい。
【0016】
上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、アルミホイール用表面保護フィルムであることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の自動車ホイール用表面保護フィルム(以下、単に「表面保護フィルム」ともいう)は、アルミホイール等の自動車ホイールに好適に適用することができるものであり、これを用いることによって、自動車が需要者の手に渡るまでにおいて、フィルムの剥離が防止されているため、ホイールの表面に傷が付くことや汚れが付着することを防止することができる。また、自動車ホイール用表面保護フィルムを剥がした際に、糊残りが発生することも防止することができる。
【0018】
上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、オレフィン系フィルム層と、アクリル系粘着剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有する粘着剤層とを有するものである。上記表面保護フィルムは、このような構成からなるものであって、優れた耐侯性を有するものであるため、自動車が完成してから納車まで長期間保管されるような場合であっても、粘着力の低下を充分に防止することができる。このため、上記表面保護フィルムを貼り付けてから長期間保管した後に納車する場合、自動車の走行中に表面保護フィルムがホイールから剥がれることを充分に防止することができる。そして、その結果、納車時まで長期間保管する場合であっても、ホイール表面に傷が付くこと、汚れが付着することを充分に防止することができる。
【0019】
また、上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、優れた耐侯性を有するものであるため、紫外線、温度上昇、酸性雨等の原因で発生すると推察されるフィルムを剥がした際における糊残りの発生を充分に防止することができる。このため、納車時まで長期間保管する場合であっても、フィルムを剥がした際の糊残りの発生を充分に防止することができる。
【0020】
上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、オレフィン系フィルム層を有するものである。
上記オレフィン系フィルム層としては特に限定されず、表面保護フィルムに使用されている従来公知のオレフィン系の基材フィルムを使用することができるが、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
【0021】
上記オレフィン系フィルム層がポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを含有する場合は、より曲面追従性に優れたフィルムを得ることができるため、表面保護フィルムをアルミホイール等の自動車ホイールに適用する際に、ホイールに対する密着性をより向上させることができる。
【0022】
ポリエチレンのみを含有させると、フィルムが柔らかくなりすぎるが、上記オレフィン系フィルム層中にポリプロピレン系樹脂を含有させることにより、貼り加工を修繕することができる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、単独重合ポリプロピレン(h−PP)、ランダム共重合ポリプロピレン(r−PP)、ブロック共重合ポリプロピレン(b−PP)等を挙げることができる。なかでも単独重合ポリプロピレンは、融点が高すぎてカレンダー加工では溶融不足となるおそれがあり、ブロック共重合ポリプロピレンを用いたフィルムは、折り曲げたときに白化するおそれがあるため、ランダム共重合ポリプロピレンが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0023】
上記ポリプロピレン系樹脂は、また、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgf)が0.3〜15g/10分であるものが好ましい。0.3g/10分未満であると、粘度が高く、フィルムへの成型が困難となるおそれがある。15g/10分を超えると、樹脂の溶融張力が低いのでフィルムを安定して引き取ることができなくなるおそれがある。上記下限は、1.0〜5.0g/10分であることがより好ましい。
【0024】
上記ポリプロピレン系樹脂の市販品としては、例えば、WT2002(ポリプロピレン樹脂、日本ポリプロピレン社製)、チッソポリプロF8577、F3020、F8090、XF9520(ポリプロピレン樹脂、チッソ社製)、ジェイアロマーPB222A(ポリプロピレン樹脂、日本ポリオレフィン社製)等を挙げることができる。
【0025】
上記ポリエチレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等を挙げることができる。なかでも、曲面への追従性により優れたフィルムを得ることができる観点から、低密度ポリエチレンが好ましい。上記ポリエチレン系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0026】
上記ポリエチレン系樹脂は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgf)が0.03〜3g/10分であるものが好ましい。0.03g/10分未満であると、粘度が高く、フィルムへの成型が困難となるおそれがある。3g/10分を超えると、樹脂の溶融張力が低いのでフィルムを安定して引き取ることができなくなるおそれがある。0.5〜5g/10分であることがより好ましい。
【0027】
上記ポリエチレン系樹脂の市販品としては、例えば、KF−280(低密度ポリエチレン樹脂、日本ポリプロピレン社製)、ハイゼックス8200B、6300M(三井化学社製)、カーネルKS−340、KS−560、KS−570(日本ポリケム社製)等を挙げることができる。
【0028】
上記オレフィン系フィルム層中にオレフィン系熱可塑性エラストマーを含有させることにより、従来から使用されている塩化ビニル樹脂のような優れた柔軟性と伸縮性を得ることができる。
【0029】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、TPOともいう)としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、エチレン−プロピレン共重合体成分及び/又はポリブチレン成分と、ポリプロピレン成分とを有する共重合体であることが好ましい。このような共重合体は、ハードセグメントとなる結晶性のポリプロピレン樹脂とソフトセグメントとなるエチレン−プロピレンゴム成分やブチルゴム成分とからなるものであり、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合を調節することによって、種々の物性のものを得ることができる。上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0030】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、上記ハードセグメントとソフトセグメントに必要に応じて架橋剤や可塑化オイル等を混合し、押出機を用いて溶融混練し、架橋させるような従来から用いられている方法の他、近年、上記ハードセグメントとソフトセグメントとを重合反応によって直接に製造する方法も知られており、特に、後者の方法によるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で製造するオレフィン系熱可塑性エラストマーという趣旨から、リアクターTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー )と呼ばれている。
【0031】
上記リアクターTPOは、JIS K 7210で規定されるメルトフローレート(リアクターTPOのメルトフローレートの測定は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfの条件下で行うものとする。以下、同じ。)が0.45〜20g/10分の範囲内にあるものが好ましい。0.45g/10分未満であると、得られるフィルムの表面の平滑性が劣るおそれがある。20g/10分を超えると、粘度が低すぎて、カレンダー加工する際に、ロールへのべたつきを生じて、フィルム加工が困難となるおそれがある。0.5〜3.0g/10分であることがより好ましい。
【0032】
上記リアクターTPOとしては、市販品を好適に用いることができる。このようなリアクターTPOの市販品の具体例として、例えば、トクヤマ社製のP.E.R R210E、P.E.R T310J、P.E.R R110E(いずれもメルトフローレートは1.5g/10分)や、Montell−JPO社製のキャタロイ KS−353P(メルトフローレート0.45g/10分)、出光社製のR−110E等を挙げることができる。
【0033】
上記オレフィン系フィルム層は、上記ポリプロピレン系樹脂、上記ポリエチレン系樹脂、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーのほかに、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、改質剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、粘着付与剤、充填剤、防カビ剤等、一般に樹脂に添加される公知の添加剤を適量添加してもよい。
【0034】
上記紫外線吸収剤、光安定剤を含有させることにより、本発明の効果をより発現させることができる。上記紫外線吸収剤、光安定剤としては、例えば、後述する粘着剤層中で使用することができるものと同様のものを使用することができる。
【0035】
上記滑剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属石鹸;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、エルカ酸アミド等の酸アミド;種々のワックス類等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリオクチルホスファイト、トリストリデシルホスファイト等の有機ホスファイト系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記オレフィン系フィルム層は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、押し出し成型、カレンダー成型等により製造することができる。
上記オレフィン系フィルム層がカレンダー成型により得られるものである場合、フィルムを構成するオレフィン系樹脂組成物は、メルトフローレート(230℃、37.3N)が15g/10分以下であることが好ましい。これにより、150〜200℃の範囲内における溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物の粘度を、混練効率が良くかつバンクの回転を良好なものにすることができる。従って、ポリ塩化ビニル樹脂用のカレンダー加工設備を用いて、上記ポリオレフィン系樹脂組成物をカレンダー加工することにより、均質な薄いフィルムを得ることができる。
【0038】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、メルトフローレート(230℃、37.3N)が1〜15g/10分の範囲内であることがより好ましい。メルトフローレートを1g/10分以上とすることにより、ポリ塩化ビニル樹脂用のカレンダー加工設備を用いてカレンダー加工をする際に、ポリオレフィン系樹脂組成物の粘度が高すぎることによるカレンダー加工性の低下を防止することができる。上記カレンダー加工に用いられるカレンダー形式は、特に限定されないが、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等を挙げることができる。
【0039】
上記オレフィン系フィルム層は、厚さが0.010〜0.5mmであることが好ましい。0.010mm未満である場合や0.5mmを超える場合には、貼り付けが困難になるおそれがある。0.020〜0.200mmであることがより好ましい。
【0040】
上記オレフィン系フィルム層は、上記オレフィン系樹脂組成物を用いて得られたフィルムの一方の面に表面活性化処理を施したものであることが好ましい。上記表面活性化処理とは、処理の前後で、処理される表面の化学構造に変化を生ずるものを意味する。上記表面活性化処理としては、例えば、コロナ処理(コロナ放電処理)、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理(電子線放射処理)等を挙げることができる。
【0041】
上記コロナ処理は、例えば、公知のコロナ放電処理器を用い、不活性気体中で発生させたコロナ雰囲気に処理すべき層(オレフィン系フィルム層)を通過させることにより行うことができる。上記コロナ処理の際におけるコロナ放電密度は、通常、10W・分/m以上、好ましくは30〜300W・分/mである。上記不活性気体としては、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、窒素、これらの2種類以上混合気体を挙げることができる。なかでも、工業的には窒素が好ましい。上記不活性気体は、気体中の酸素濃度が1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下、より好ましくは0.01容量%以下の範囲内で、酸素を含有していてもよい。
【0042】
上記プラズマ処理には、低圧プラズマ処理と大気圧プラズマ処理とを挙げることができる。上記低圧プラズマ処理は、例えば、0.1〜5Torrの低圧状態で200〜1000Wの出力で上述した不活性気体をプラズマジェットで電子的に励起させた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性気体を処理すべき層(オレフィン系フィルム層)と接触させることにより行うことができる。低圧プラズマ処理時間は、10〜60秒であることが好ましく、20〜40秒であることがより好ましい。
【0043】
上記大気圧プラズマ処理は、上述した不活性気体中、電極間に3〜5kHz、2〜3000Vの交流電流を印加し、低圧プラズマ処理と同様の励起不活性気体を発生させた後、励起不活性気体を処理すべき層(オレフィン系フィルム層)と接触させることにより行うことができる。大気圧プラズマ処理時間は、10〜60秒であることが好ましく、20〜40秒であることがより好ましい。
【0044】
上記電子線処理は、電子線加速器を備えた電子線照射装置を使用し、処理すべき層(オレフィン系フィルム層)の表面に、電子線加速器により発生させた電子線を照射することにより行うことができる。上記電子線照射装置としては、例えば、線状のフィラメントからカーテン状に均一な電子線を照射できる装置(例えば、エレクトロカーテン型の装置)等を使用することができる。電子線照射線量は、通常、5kGy以上、好ましくは15kGy以上、更に好ましくは30kGy以上である。電子線照射線量は、電子線照射装置の入口側における基材のライン速度に対して設定され、その上限は特に限定されるものではないが、通常200kGy程度である。
【0045】
上記紫外線処理は、例えば、200〜400μmの波長の紫外線を処理すべき層(オレフィン系フィルム層)の表面に照射することにより行うことができる。紫外線処理時間は、10〜60秒であることが好ましく、20〜40秒であることがより好ましい。
【0046】
上記表面活性化処理のなかでも、簡便に充分な処理効果を得ることができる点から、コロナ処理を施すことがより好ましい。
上記コロナ処理を施したオレフィン系フィルム層は、濡れ指数が40dyn以上であることが好ましい。40dyn未満であると、フィルム層と粘着剤層との密着性が低いため、剥がした時に糊残りが生じる可能性がある。好ましくは45dyn以上である。
【0047】
上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、アクリル系粘着剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有する粘着剤層を有するものである。上記表面保護フィルムにおいて、上記粘着剤層は、通常、上記オレフィン系フィルム層の片面上に形成される層である。上記成分を含有する粘着剤層を有するものであるため、表面保護フィルムをホイールに貼り付けた状態で長期間保管していた場合であっても、粘着力が低下することを防止することができる。このため、長期間保管後の自動車の走行中において、ホイールから表面保護フィルムが剥がれることを充分に防止することができる。また、上記成分を含有するものであるため、表面保護フィルムに優れた耐侯性を付与することができる。このため、長期間保管後に表面保護フィルムを剥がした時において、ホイールの表面に糊残りが発生することを充分に防止することができる。
【0048】
上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含む粘着剤である。これにより、表面保護フィルムに優れた耐侯性を付与することができ、自動車の走行中の剥がれ、糊残りを充分に防止することができる。
【0049】
上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又はこれらの共重合体等を挙げることができる。
上記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上の割合で重合した重合体が好ましい。特に、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜98質量%と、1種又は2種以上の共重合性単量体2〜50質量%を共重合して得られる共重合体が好ましい。
【0050】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が2〜18、好ましくは4〜12の一級〜三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸とから得られるエステル等を挙げることができる。
【0051】
上記共重合性単量体としては、共重合反応に関与する不飽和二重結合を分子内に少なくとも1個有すると共に、カルボキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等〕やヒドロキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル等〕、スルホキシル基〔例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等〕、アミノ基〔例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステル等〕、アミド基〔例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等〕、アルコキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等〕等の官能基を側鎖に有する単量体を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
これら以外に共重合できる単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記共重合性単量体は、1種又は2種以上を共重合することができるが、粘着特性としての接着性や凝集性の点から、カルボキシル基含有単量体やヒドロキシル基含有単量体の少なくとも1種を必須成分として1〜50質量%、好ましくは3〜20質量%の範囲で共重合し、必要に応じて上記に例示の他の単量体、例えば、酢酸ビニルやN−ビニル−2−ピロリドン等のビニル系単量体を40質量%以下、好ましくは30質量%以下の範囲で共重合することが好ましい。
【0054】
上記アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートと2−メトキシエチルアクリレートと酢酸ビニルとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートと2−メトキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとアクリル酸とからなる共重合体等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記アクリル系粘着剤の市販品としては、SKダイン1604N(綜研化学社製)、SKダイン1222H(綜研化学社製)、AS−375(一方社油脂工業製)等を挙げることができる。
【0056】
上記粘着剤層は、イソシアネート系硬化剤を含有するものであることが好ましい。これにより、オレフィン系フィルム層と、アルミホイール等の自動車ホイールとの接着性をより向上させることができるため、表面に傷がつくこと、汚れが付着することを好適に防止することができる。
【0057】
上記イソシアネート系硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物を用いることができ、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添トリレンジイソシアネート、2,4又は2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート化合物;2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記粘着剤層がアクリル系粘着剤及びイソシアネート系硬化剤を含有する場合、上記イソシアネート系硬化剤の含有量は、上記アクリル系粘着剤中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、オレフィン系フィルム層と粘着剤層との接着強度の向上が見られないおそれがある。5質量部を超えると、接着強度の向上が止まり、平衡状態となるばかりでなく、接着力、密着性が低下し、経済性も悪くなるおそれがある。0.5〜3.0質量部であることがより好ましい。
【0059】
上記粘着付与剤としては特に限定されず、従来から粘着剤に用いられているものを使用することができ、例えば、キシレン樹脂、ロジンや重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル等の変性ロジン系樹脂;テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;脂肪族系、芳香族系及び脂環式系石油樹脂;クマロン樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂等を挙げることができる。なかでも、アルミホイール等の自動車ホイールとの接着性に優れる点から、ロジン系樹脂、芳香族石油樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記粘着付与剤の市販品としては、例えば、スーパーエステルA−115(ロジンエステル系樹脂、荒川化学社製)、テルタック80(テルペンフェノール樹脂、日本テルペン化学社製)、日石ネオポリマーグレード130S(芳香族系石油樹脂、新日本石油化学社製)
等を挙げることができる。
【0061】
上記粘着剤層において、上記粘着付与剤の含有量は、上記粘着剤層中に含まれるアクリル系粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、粘着剤層の接着力が不充分となるおそれがある。100質量部を超えると、自動車ホイールから表面保護フィルムを剥がす際に、ホイールからフィルムをきれいに剥離させることができず、ホイール上に糊が残ってしまうおそれがある。5〜50質量部であることがより好ましい。
【0062】
上記紫外線吸収剤及び光安定剤を粘剤層に含有させることにより、耐侯性を向上させることができる。このため、本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムをホイールに貼り付けた場合において、紫外線吸収剤及び光安定剤のブリードを防止することができるため、ブリードによる粘着物性への影響を低減することができる。また、表面保護フィルムを貼り付けた状態での長期間保管後において、フィルムの剥がれ、糊残りを防止することができる。
【0063】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0064】
上記紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール)]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリチレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記紫外線吸収剤のなかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いる場合には、耐侯性をより向上させることができるため、紫外線吸収剤のブリードによって、粘着力が低下してしまうことをより防止することができる。そして、その結果、表面保護フィルムをホイールに貼り付けた後、長期間保管した場合であっても、粘着力を充分に保持することができるため、粘着力の低下によって走行中にホイールからフィルムが剥がれることを充分に防止することができる。また、長期間保管後の糊残りを充分に防止することができる。
【0066】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、バイオソーブ520、バイオソーブ550、バイオソーブ580、バイオソーブ100、バイオソーブ105、バイオソーブ910、バイオソーブ930(共同薬品社製)等を挙げることができる。
【0067】
上記粘着剤層において、上記紫外線吸収剤の含有量は、上記粘着剤層中に含まれるアクリル系粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して、0.05〜0.4質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、耐侯性を向上させる効果を得ることができないおそれがある。0.4質量部を超えると、紫外線吸収剤がブリードするおそれがある。0.1〜0.3質量部であることがより好ましい。
【0068】
上記光安定剤としては、従来公知のものを使用することができるが、ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合には、耐侯性をより向上させることができるため、光安定剤のブリードによって、粘着力が低下してしまうことをより防止することができる。そして、その結果、表面保護フィルムをホイールに貼り付けた後、長期間保管した場合であっても、粘着力を充分に保持することができるため、粘着力の低下によって走行中にホイールからフィルムが剥がれることを充分に防止することができる。また、長期間保管後の糊残りを充分に防止することができる。
【0069】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、[コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン]縮合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−トリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5,5]ウンデカンとブタンテトラカルボン酸とのエステル等を挙げることができる。これらの光安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
上記ヒンダードアミン系光安定剤の市販品としては、例えば、バイオソーブ03、04(共同薬品社製)、チマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル社製)、アデカスタブLA−63(旭電化工業社製)等を挙げることができる。
【0071】
上記粘着剤層において、上記光安定剤の含有量は、上記粘着剤層中に含まれるアクリル系粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、耐侯性を向上させる効果を得ることができないおそれがある。0.5質量部を超えると、光安定剤がブリードするおそれがある。0.1〜0.3質量部であることがより好ましい。
【0072】
上記紫外線吸収剤、上記光安定剤は、比較的少ない添加量で、本発明の効果を発揮させることができるため、紫外線吸収剤、光安定剤のブリードによる粘着物性の影響を低減することができ、また、コスト面からも好ましい。
【0073】
上記粘着剤層は、上述した成分の他に、アミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、フェノール系、亜リン酸エステル等の老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤等の従来公知の添加剤を含有するものであってもよい。
【0074】
上記粘着剤層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の塗工方法によって形成することができる。
上記粘着剤層は、厚さが3〜50μmであることが好ましい。これにより、粘着剤層と自動車用ホイールとの密着性及び接着力を向上させることができる。3μm未満であると、充分な密着性及び接着力を得ることができないおそれがある。50μmを超えても、効果の向上は望めず、経済的に不利となるおそれがある。5〜30μmであることがより好ましい。
【0075】
上記表面保護フィルムは、JIS Z0237に規定される貼り付けてから23℃、相対湿度65%で24時間保持した後の粘着力が、4〜20N/25mmであることが好ましい。これにより、表面保護フィルムを自動車ホイールに貼り付けて走行した場合に、フィルムが剥がれることを防止することができる。4N/25mm未満であると、走行中に剥がれるおそれがある20N/25mmを超えると、剥がしづらくなる又は糊残りが発生する可能性がある。5〜15N/25mmであることがより好ましい。
【0076】
上記表面保護フィルムは、JIS Z0237に規定される貼り付けてから60℃、相対湿度65%で7日間後の粘着力が、4〜20N/25mmであることが好ましい。これにより、表面保護フィルムを自動車ホイールに貼り付けて長期間保管した後に走行した場合に、フィルムが剥がれることを防止することができる。4N/25mm未満であると、走行中に剥がれるおそれがある。20N/25mmを超えると、剥がしづらくなる又は糊残りが発生する可能性がある。5〜15N/25mmであることがより好ましい。
【0077】
上記表面保護フィルムは、上記オレフィン系フィルム層及び上記粘着剤層に加えて、更に、剥離シートを有するものであってもよい。上記剥離シートは、自動車ホイールに貼り付ける際に、剥離するシートである。上記剥離シートは、粘着剤層において、オレフィン系フィルム層が貼り付けられている側と反対側の表面に、積層されることになる。
【0078】
上記剥離シートとしては、例えば、粘着剤層に貼着される面に、離型処理が施されたフィルムを用いることができる。
上記離型処理が施されたフィルムの材質としては、オレフィン系樹脂フィルムであることが好ましい。これにより、平滑性に優れた剥離シートを形成することができ、上記剥離シートの剥離後の粘着剤層表面をより平滑にすることができる。また、剥離シートとしてPETや紙を用いると、雰囲気温度の変化によりカールが発生すること、作業性を損なうこと、外観状態も悪くなること等の不具合が生じるおそれがあるが、オレフィン系樹脂フィルムを用いることにより、このような不具合を充分に防止することができる。
【0079】
上記オレフィン系樹脂フィルムのなかでも、ポリプロピレン系樹脂フィルムであることがより好ましい。これにより、製品の状態でカールが発生することをより防止することができる。
【0080】
上記離型処理を施す際に使用する離型剤としては、シリコーン系のものが好適に用いられる。上記剥離シートの厚さは、粘着剤層との組み合わせ、又は、目的や用途等に応じて設定すればよい。
【0081】
上記自動車ホイール用表面保護フィルムの製造方法は、オレフィン系フィルム層に、粘着剤層と、必要に応じて、剥離シートとを積層することができる方法であれば特に限定されず、例えば、剥離シートに粘着剤を塗布して粘着剤層を形成した後、粘着剤層をオレフィン系フィルム層に貼着(積層)する方法が好適である。
【0082】
上記自動車ホイール用表面保護フィルムを貼り付ける自動車ホイールの素材としては、ホイールの素材として用いられているものであれば特に限定されず使用することができる。なかでも、貼り付けた状態で長期間保管した後において、粘着力が比較的大きく、糊残りを充分に防止することができる点から、アルミホイールであることが好ましい。
【0083】
本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムの例を図1及び図2として示した。
図1、2は、本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムの概略図の一例を示した図である。図1で示された表面保護フィルムは、オレフィン系フィルム層1及び粘着剤層2が積層されているものである。図2で示された表面保護フィルムは、オレフィン系フィルム層1、粘着剤層2及び剥離シート3が積層されているものである。図1、2で示された表面保護フィルムは、自動車ホイールに貼り付けた状態で長期間保管した後において、自動車の走行中にシートが剥がれること、糊残りが発生することを充分に防止することができる。
【0084】
本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムは、オレフィン系フィルム層及びアクリル系粘着剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有する粘着剤層を有するものであるため、優れた耐侯性を有するものである。このため、表面保護フィルムをアルミホイール等の自動車ホイールに貼り付けた状態で長期間保管していた場合に、粘着力が低下することが抑制され、その結果、自動車の走行中にホイールから剥がれること、剥がした時にホイールの表面に糊残りが発生することを充分に防止することができる。従って、上記自動車ホイール用表面保護フィルムは、納車までに長期間を要した場合であっても、ホイールの表面に傷がつくこと、汚れが付着することを充分に防止することができ、アルミホイール等の自動車ホイールに対して好適に適用することができるものである。
【発明の効果】
【0085】
本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムは、上述した構成よりなるので、優れた耐侯性を有するものであり、長期間保管後におけるフィルムの剥がれ、糊残りを充分に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0087】
実施例1
(オレフィン系フィルム層の作製)
ポリプロピレン樹脂(商品名、「WT2002」、日本ポリプロピレン社製)40質量部に対して、オレフィン系熱可塑性エラストマー(商品名、「R−110E」、出光社製)40質量部、低密度ポリエチレン樹脂(商品名、「KF−280」、日本ポリプロピレン社製)20質量部、酸化防止剤(商品名、「イルガノックス1076」、チバスペシャリティーケミカル社製)0.2質量部、滑剤としてステアリン酸カルシウム0.2質量部、紫外線吸収剤(商品名、「バイオソーブ520」共立薬品社製)0.2質量部、光安定剤(商品名、「バイオソーブ04」共立薬品社製)0.2質量部を混合し、バンバリーミキサーを用いて150〜180℃の温度で溶融混練し、得られた樹脂組成物を4本逆L字ロール型24インチカレンダーに供給し、ロール温度160〜190℃で0.07mmの厚みに圧延し、フィルムを得た。このフィルムの片面(粘着加工面)にコロナ処理を行い、濡れ指数56dynのフィルムを得た。なお、ポリプロピレン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、低密度ポリエチレン樹脂の配合量は、樹脂固形分の質量である。
【0088】
(粘着剤の作製)
アクリル系粘着剤(商品名、「SKダイン1604N」、綜研化学社製)100.0質量部、イソシアネート硬化剤(商品名、「L−45」、綜研化学社製)1.8質量部、ロジンエステル系樹脂(商品名、「スーパーエステルA−115」、荒川化学社製)20.0質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名、「バイオソーブ520」、共同薬品社製)0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(商品名、「バイオソーブ04」、共同薬品社製)0.2質量部を混合し、撹拌機で分散状態に均一にして粘着剤を作製した。なお、アクリル系粘着剤、イソシアネート硬化剤、ロジンエステル系樹脂の配合量は、樹脂固形分の質量である。
【0089】
(表面保護フィルムの作製)
剥離シートとして、両面ポリラミ離型紙「SLK−80W」(カイト化学社製、厚み120μm、シリコン系の離型剤で表面処理)を用い、離型剤処理面に乾燥後の粘着剤層の厚み15μmとなるように、上記粘着剤の作製で得られた粘着剤を塗工して粘着剤層を形成し、乾燥したものを、上記オレフィン系フィルム層の作製で得られたフィルムと貼り合わせることによって、表面保護フィルムを得た。
【0090】
実施例2〜3、比較例1〜2
粘着剤の配合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、表面保護フィルムを作製した。なお、使用したテルペンフェノール樹脂は、「テルタック80(商品名、日本テルペン化学社製)」であり、芳香族系石油樹脂は、「日石ネオポリマーグレード130S、(商品名、新日本石油化学社製)」である。配合量は、樹脂固形分の質量部である。
【0091】
〔評価〕
実施例、比較例で得られた表面保護フィルムを試験試料とし、それぞれに対して、次の評価を行い、結果を表1に示した。
【0092】
(初期粘着力、糊残り)
JIS Z0237に準じて測定した。各試験試料を幅25mm×長さ150mmに断裁後、剥離シートを剥がし、得られた粘着フィルムをアルミニウム板(JIS規格 A5052)に貼付して、温度23℃で24時間放置した。得られた各被着体から各試験試料を引張速度300mm/分、引張角度180度の下で引き剥がした時の粘着力(N/25mm)を測定した。また、剥がした後の糊残りを以下の基準で判断した。
【0093】
(経時粘着力、糊残り)
JIS Z0237に準じて測定した。各試験試料を幅25mm×長さ150mmに断裁後、剥離シートを剥がし、得られた粘着フィルムをアルミニウム板(JIS規格 A5052)に貼付して、温度60℃で7日間放置した。得られた各被着体から各試験試料を引張速度300mm/分、引張角度180度の下で引き剥がした時の粘着力(N/25mm)を測定した。また、剥がした後の糊残りを以下の基準で判断した。
【0094】
(耐侯性試験後の粘着力、糊残り)
JIS Z0237に準じて測定した。各試験試料を幅25mm×長さ150mmに断裁後、剥離シートを剥がし、得られた粘着フィルムをアルミニウム板(JIS規格 A5052)に貼付して得られた各被着体に対して、サンシャイン・ウエザオメーターで400時間照射した。得られた各被着体から各試験試料を引張速度300mm/分、引張角度180度の下で引き剥がした時の粘着力(N/25mm)を測定した。また、剥がした後の糊残りを以下の基準で判断した。
【0095】
(糊残り)
以下の基準で評価した。
○:糊残りなし。
△:わずかに糊残りが発生した(全体の5%未満)。
×:糊残りが発生した。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から、実施例で得られた表面保護フィルムは、初期粘着力、経時粘着力、耐侯性試験後の粘着力に優れており、また、糊残りの発生も充分に防止されているものであることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムは、アルミホイール等の自動車ホイールの表面保護フィルムとして好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムの概略図の一例である。
【図2】本発明の自動車ホイール用表面保護フィルムの概略図の一例である。
【符号の説明】
【0100】
1 オレフィン系フィルム層
2 粘着剤層
3 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系フィルム層及び粘着剤層を有する自動車ホイール用表面保護フィルムであって、
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有するものである
ことを特徴とする自動車ホイール用表面保護フィルム。
【請求項2】
オレフィン系フィルム層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである請求項1記載の自動車ホイール用表面保護フィルム。
【請求項3】
粘着付与剤は、ロジン系樹脂、芳香族石油樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである請求項1又は2自動車ホイール用表面保護フィルム。
【請求項4】
紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物を含有するものである請求項1、2又は3記載の自動車ホイール用表面保護フィルム。
【請求項5】
光安定剤は、ヒンダードアミン系化合物を含有するものである請求項1、2、3又は4記載の自動車ホイール用表面保護フィルム。
【請求項6】
更に、剥離シートを有するものである請求項1、2、3、4又は5記載の自動車ホイール用表面保護フィルム。
【請求項7】
自動車ホイール用表面保護フィルムは、アルミホイール用表面保護フィルムである請求項1、2、3、4、5又は6記載の自動車ホイール用表面保護フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−35914(P2006−35914A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214925(P2004−214925)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】