説明

自動車塗膜補修方法

【課題】貯蔵安定性を低下させることなく、耐水劣化後の密着性に優れた自動車塗膜補修方法を提供する。
【解決手段】基材に対して、水性プライマーサーフェーサーを塗布してプライマーサーフェーサー塗膜を形成する工程(1)および上記工程(1)において得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に、上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成する工程(2)を含む多層塗膜の形成方法であって、上記水性プライマーサーフェーサーが、1級水酸基および水和可能な官能基含有アクリル樹脂水分散体(a)、ポリイソシアネート化合物水分散体(b)および顔料(c)を含む水性プライマーサーフェーサーであって、さらに、1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体(d)を含んでいることを特徴とする自動車塗膜補修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車塗膜の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車補修分野における下塗り塗料としては、従来、速乾性、密着性等の観点から、有機溶剤型のラッカー系塗料や2液のウレタン硬化系塗料が用いられてきたが、近年、環境配慮の観点から、水性塗料化が急務となってきている。
【0003】
ここで、アクリル樹脂エマルションおよび水分散型ポリイソシアネートを被膜形成成分とし、さらに特定量の顔料を含んだ水性のプライマーサーフェーサーが開示されている。(例えば、特許文献1参照のこと)。しかしながら、このような水性プライマーサーフェーサーは、水溶化に必要なカルボキシル基や水酸基等の親水性官能基を多量に有しているため、これらの官能基が水分を保有して離さず、耐水劣化後の下地との密着性に劣るという問題があった。
【0004】
一方、耐水劣化後の下地との密着性の改良手段として、比較的水遮断性が良いとされるエポキシ樹脂エマルションを塗料に配合することが試みられている。しかしながら、エポキシ樹脂エマルションを塗料に配合すると、耐水劣化後の下地との密着性は向上するものの、塗料としての貯蔵安定性が著しく低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2001−262053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、貯蔵安定性を低下させることなく、耐水劣化後の密着性に優れた自動車塗膜補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材に対して、水性プライマーサーフェーサーを塗布してプライマーサーフェーサー塗膜を形成する工程(1)および上記工程(1)において得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に、上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成する工程(2)を含む多層塗膜の形成方法であって、上記水性プライマーサーフェーサーが、1級水酸基および水和可能な官能基含有アクリル樹脂水分散体(a)、ポリイソシアネート化合物水分散体(b)および顔料(c)を含む水性プライマーサーフェーサーであって、さらに、1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体(d)を含んでいることを特徴とする自動車塗膜補修方法である。
【0007】
ここで、工程(1)と工程(2)との間に工程(1)で得られたプライマーサーフェーサー塗膜を研磨する処理を含んでいることが好ましい。ここで、変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、2級水酸基当量が50〜200であることが好ましい。また、変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、エポキシ樹脂にアクリル樹脂を反応させて得られるものであることが好ましく、エポキシ樹脂/アクリル樹脂の固形分質量比は、5/5〜9/1であることが好ましい。ここで、例えば、水性プライマーサーフェーサーの顔料体積濃度は20〜60%である。
【0008】
また、例えば、工程(2)は、ベース塗料を塗布してベース塗膜を形成する段階(1−1)およびクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成する段階(1−2)からなるものである。ここで、ベース塗料は、水性型塗料であることが好ましい。また、基材は、旧塗膜を有していることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記の自動車塗膜補修方法によって得られることを特徴とする多層塗膜である。
【0010】
さらに、本発明は、上記の自動車塗膜補修方法に用いられることを特徴とする水性プライマーサーフェーサーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車塗膜補修方法は、上述の成分を含んでいるので、貯蔵安定性を低下させることなく、耐水劣化後の密着性にも優れた多層塗膜を得ることができる。これは含まれる変性エポキシ樹脂水分散体が2級水酸基を有していることに起因すると考えられる。すなわち、この2級水酸基は反応性が低いため硬化反応によって消費されずに塗膜中に残存し、基材との間に水素結合を形成するため、密着性を向上させることができると考えられる。また、エポキシ基を含有しないため、貯蔵安定性が低下しないと考えられる。
【0012】
本発明の自動車塗膜補修方法を用いることによって、オール水性塗装系と呼ばれる水性プライマーサーフェーサー、水性ベースおよび水性クリヤーの自動車補修用塗装系を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の自動車塗膜補修方法は、基材に対して、水性プライマーサーフェーサーを塗布してプライマーサーフェーサー塗膜を形成する工程(1)および上記工程(1)において得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に、上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成する工程(2)を含むものである。
【0014】
工程(1)
本発明の自動車塗膜補修方法における工程(1)は、基材に対して、水性プライマーサーフェーサーを塗布してプライマーサーフェーサー塗膜を形成するものである。上記基材としては特に限定されず、主に、自動車車体および部品等を挙げることができ、材質としては、例えば、金属系基材やプラスチック系基材等を挙げることができる。上記金属系基材やプラスチック系基材は、表面に旧塗膜を有していてもよい。また、必要に応じて上記基材をサンドペーパー等で研磨処理し、パテ等の当業者によってよく知られている充填材で充填した後、上記工程(1)を行うことが好ましい。
【0015】
上記塗布方法としては特に限定されず、回転霧化式塗装およびスプレー塗装等、当業者によってよく知られている方法を挙げることができる。塗布後、常温にて放置または強制的に加熱を行い乾燥させてプライマーサーフェーサー塗膜を得ることができる。なお、塗布膜厚および乾燥時間は、水性プライマーサーフェーサーの種類や適用する基材に応じて任意に設定することができ、例えば、乾燥膜厚で30〜100μm、上記乾燥時間としては常温で8〜24時間または50〜80℃の乾燥温度で10〜60分間である。
【0016】
本発明の自動車塗膜補修方法において用いられる水性プライマーサーフェーサーは、1級水酸基含有アクリル樹脂水分散体(a)、ポリイソシアネート化合物水分散体(b)および顔料(c)を含む水性プライマーサーフェーサーであって、さらに、1級水酸基および2級水酸基含有エポキシ樹脂水分散体(d)を含んでいる。
【0017】
上記1級水酸基および水和可能な官能基含有アクリル樹脂水分散体(a)はバインダー成分として機能するものである。上記アクリル樹脂水分散体(a)は、1級の樹脂固形分水酸基価が60〜200mgKOH/gであることが好ましい。上記1級の樹脂固形分水酸基価が60mgKOH/gを下回ると架橋が不充分になり、特に、得られる塗膜を研磨処理する場合、研磨性が低下する恐れがあり、200mgKOH/gを超えると得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがある。
【0018】
また、上記アクリル樹脂水分散体(a)は、水への分散安定性の観点から、水和可能な官能基を有している。上記アクリル樹脂水分散体(a)としては、上記樹脂固形分官能基価が10〜50mgKOH/gであることが好ましい。上記樹脂固形分官能基価が10mgKOH/gを下回ると塗料の安定性が低下する恐れがあり、50mgKOH/gを超えると得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがある。上記水和可能な官能基としては、具体的には、カルボキシル基またはアミノ基を挙げることができる。
【0019】
また、上記アクリル樹脂水分散体(a)としては、ガラス転移温度(Tg)が5〜70℃であることが好ましい。上記Tgが5℃を下回ると得られる塗膜の耐水性や、得られる塗膜を研磨処理する場合、研磨性が低下する恐れがあり、70℃を超えると造膜性が低下する恐れがある。
【0020】
さらに、上記アクリル樹脂水分散体(a)としては、重量平均分子量が5000〜50000であることが好ましい。上記重量平均分子量が5000を下回ると硬化性や、得られる塗膜を研磨する場合、研磨性が低下する恐れがあり、50000を超えると塗料の安定性が低下する恐れがある。
【0021】
このようなアクリル樹脂水分散体(a)は、1級水酸基含有モノマーと水和可能な官能基含有モノマー、および、必要に応じてその他のモノマーからなるモノマー混合液を常法によって重合したものを挙げることができる。
【0022】
上記1級水酸基含有モノマーとしては特に限定されず、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、プラクセルFAシリーズおよびプラクセルFMシリーズ(商品名、ダイセル化学工業社製の水酸基含有モノマー)等、当業者によってよく知られているものを挙げることができる。
【0023】
また、上記水和可能な官能基含有モノマーとしては特に限定されず、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびイタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有モノマーを挙げることができる。
【0024】
さらに、上記その他のモノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の分岐していてもよい直鎖または環構造のアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、スチレン等、当業者によってよく知られているものを挙げることができる。
【0025】
上記1級水酸基含有モノマー、上記水和可能な官能基含有モノマーおよび上記その他のモノマーは、各々単独であってもよいし、各々2種以上組み合わせて用いてもよい。ただし、上記水和可能な官能基含有モノマーを2種以上組み合わせる場合は、カルボキシル基含有モノマーとアミノ基含有モノマーとを組み合わせて用いることはできない。
【0026】
なお、上記アクリル樹脂水分散体(a)は、例えば、上記モノマー混合液を、当業者によってよく知られた乳化剤を用いた乳化重合法によって得られるものであってもよいが、造膜性および得られる塗膜の外観の観点から、有機溶剤存在下において溶液重合した後、含有する水和可能な官能基の種類に応じた酸性化合物または塩基性化合物等の中和化合物を用いて水に分散する後乳化法によって得られるものであることが好ましい。
【0027】
このようなアクリル樹脂水分散体(a)で市販されているものとしては、例えば、バイヒドロールXP2470(バイエル社製)、ウォーターゾールACD−2000(大日本インキ化学工業社製)、マクリナールVSM6299W/42WA(ユーシービー社製)等を挙げることができる。
【0028】
上記ポリイソシアネート化合物水分散体(b)は水性プライマーサーフェーサー中で硬化剤として機能するバインダー成分である。上記ポリイソシアネート化合物水分散体(b)としては、具体的には、イソシアネート基を1分子中に2個以上有し、かつ、親水性基を有するものである。このような水分散体(b)は、例えば、ポリイソシアネート化合物と親水性基を有する界面活性剤とを反応させることによって得ることができる。上記ポリイソシアネ−ト化合物とノニオン性界面活性剤とを反応させる場合、その割合は、例えば、ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基1当量に対して、ノニオン界面活性剤の有する活性水素基が0.01〜0.03当量である。
【0029】
上記ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、および、これらのイソシアヌレート体、ビュレット体等を挙げることができる。
【0030】
上記界面活性剤としては特に限定されず、親水性基とイソシアネート基との反応性基を有するものを挙げることができる。
【0031】
水分散性の観点から、上記親水性基としてノニオン性基を有するものであることが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンモノオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、および、ポリオキシエチレンモノ高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。これらは単独でもまた2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
このようなポリイソシアネート化合物水分散体(b)で市販されているものとしては、例えば、バイヒジュール3100およびバイヒジュールVPLS2336(いずれもバイエル社製)等を挙げることができる。
【0033】
上記1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体(d)はバインダー成分であり、かつ、本発明の効果である得られる塗膜の耐水劣化後の密着性向上に寄与するものである。
【0034】
上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、2級の樹脂固形分水酸基価が50〜200mgKOH/gであることが好ましい。上記2級の樹脂固形分水酸基価が50mgKOH/g未満であると密着性が低下する恐れがあり、200mgKOH/gを超えると得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがある。また、上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)としては、1級の樹脂固形分水酸基価が20〜100mgKOH/gであることが好ましい。上記1級の樹脂固形分水酸基価が20mgKOH/g未満であると架橋が不充分になり得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがあり、100mgKOH/gを超えると得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがある。
【0035】
さらに、上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、水への分散安定性の観点から水和可能な官能基を有している。上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、上記樹脂固形分官能基価が10〜50mgKOH/gであることが好ましい。上記樹脂固形分官能基価が10mgKOH/gを下回ると塗料の安定性が低下する恐れがあり、50mgKOH/gを超えると得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがある。上記水和可能な官能基としては、具体的には、カルボキシル基またはアミノ基を挙げることができる。
【0036】
さらに、上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)としては、重量平均分子量が1000〜50000であることが好ましい。上記重量平均分子量が1000を下回ると密着性が低下する恐れがあり、50000を超えると塗料の安定性が低下する恐れがある。
【0037】
このような変性エポキシ樹脂水分散体(d)としては、例えば、エポキシ基を有するエポキシ樹脂に、エポキシ基と硬化反応可能な基を有するモノマーを予め付加させてマクロモノマーを得た後、このマクロモノマー、1級水酸基含有モノマーおよびその他のモノマーを常法にて溶液重合して得られるもの(イ)、エポキシ基を有するエポキシ樹脂に、エポキシ基と硬化反応可能な官能基を有するモノマー、1級水酸基含有モノマーおよびその他のモノマーを常法にて溶液重合して得られるもの(ロ)、または、エポキシ基を有するエポキシ樹脂に1級水酸基を有するカルボキシル基含有樹脂を反応させて得られるもの(ハ)のそれぞれに対して、水和可能な官能基に応じた酸性または塩基性化合物を加えて、水に分散することによって得るものを挙げることができる。
【0038】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを挙げることができる。このようなエポキシ樹脂として、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型、多価アルコールのポリグリシジルエーテルおよびノボラックフェノール型エポキシ樹脂等、当業者によってよく知られているエポキシ樹脂を挙げることができる。塗料の安定性および得られる塗膜を研磨する場合の研磨性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0039】
上記(イ)および(ロ)において、上記エポキシ基と硬化反応可能な基を有するモノマーとしては特に限定されず、具体的には、上記アクリル樹脂水分散体(a)のところで述べた水和可能な官能基含有モノマーであるカルボキシ基含有モノマーおよびアミノ基含有モノマー等を挙げることができる。また、上記1級水酸基含有モノマーおよび上記その他のモノマーとしては、具体的には、上記水分散体のところで述べたものを挙げることができる。
【0040】
上記マクロモノマーを得るための付加方法としては特に限定されず、当業者によってよく知られた方法を挙げることができる。また、上記溶液重合としては特に限定されず、上記アクリル樹脂水分散体(a)のところで述べた方法を挙げることができる。
【0041】
上記(ハ)において、上記1級水酸基を有するカルボキシル基含有樹脂としては特に限定されず、1級水酸基およびカルボキシル基を有するアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0042】
得られる樹脂の設計の自由度および製造の容易性の観点から、上記(ハ)を利用するのが好ましい。
【0043】
上記エポキシ樹脂に上記アクリル樹脂を反応させ変性する場合、その割合は、上記エポキシ樹脂/上記アクリル樹脂の固形分質量比が5/5〜9/1であることが好ましい。上記割合が上記範囲外の場合、塗料の安定性が低下する恐れがある。さらに好ましくは6/4〜8/2である。
【0044】
上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、例えば、上記エポキシ樹脂に上記アクリル樹脂を反応させて得られる生成物を、生成物の含有する水和可能な官能基の種類に応じた酸性化合物または塩基性化合物等の中和化合物を用いて水に分散する後乳化法によって得られるものであることが好ましい。
【0045】
本発明の自動車塗膜補修方法に用いられる水性プライマーサーフェーサーは、例えば、水性プライマーサーフェーサー中のバインダー成分に含まれる全水酸基と全イソシアネート基との当量比が100:50〜100:200である。
【0046】
上記顔料(c)は特に限定されず、当業者によってよく知られているものであり、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、銅フタロシアニンブルー等の着色顔料、アルミニウム片、マイカ片等の光輝性顔料、炭酸カルシウム、クレー、タルク、バリタ、シリカ等の体質顔料、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等の防錆顔料等を挙げることができる。
【0047】
本発明の自動車塗膜補修方法に用いられる水性プライマーサーフェーサー中の上記顔料(c)の顔料体積濃度は、例えば、20〜60%である。上記顔料体積濃度が20%未満であると、得られる塗膜を研磨処理する場合、研磨性が低下する恐れがあり、60%を超えると塗料の安定性および得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがある。
【0048】
また、本発明の自動車塗膜補修方法に用いられる水性プライマーサーフェーサー中の上記顔料(c)の含有量は、上記アクリル樹脂水分散体(a)および上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)の樹脂固形分100質量部に対して、100〜250質量部であることが好ましく、120〜200質量部であることがより好ましい。上記含有量が100質量部未満であると得られる塗膜を研磨処理する場合の研磨性が低下する恐れがあり、250質量部を超えると造膜性が不充分となる。上記顔料(c)は1種類の顔料からなるものであってもよいし2種以上の顔料を組み合わせて用いてられていてもよい。
【0049】
得られる塗膜の研磨性と造膜性との両立の観点から、上記顔料(c)は上記体質顔料を含んでいて、上記顔料(c)100質量部のうち上記体質顔料が30〜100質量部であることが好ましく、40〜60質量部であることがさらに好ましい。
【0050】
上記水性プライマーサーフェーサーは、上記成分の他、消泡剤、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤および造膜助剤等、当業者によってよく知られた各種添加剤等を含むことができる。
【0051】
上記水性プライマーサーフェーサーは、上記アクリル樹脂水分散体(a)、上記ポリイソシアネート化合物水分散体(b)、上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)および顔料(c)と、必要に応じて上記各種添加剤等とを混合、撹拌することによって得ることができる。上記撹拌、混合する機器としては特に限定されず、例えば、ディスパー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ホモミキサー等の各々単独または組み合わせを挙げることができる。
【0052】
本発明の自動車塗膜補修方法は、上記工程(1)を実施した後、引き続いて後述の工程(2)を実施するものである。ここで、本発明の自動車塗膜補修方法は、上記プライマーサーフェーサー塗膜と後述の工程(2)によって得られる上塗り塗膜との間の付着性を向上させるために、上記工程(1)と後述の工程(2)との間に、上記工程(1)によって得られたプライマーサーフェーサー塗膜を研磨する処理を含んでいることが好ましい。上記研磨処理の方法としては特に限定されず、水研ぎ等、当業者によってよく知られている方法を挙げることができ、例えば、ダブルアクションサンダー等による機械研ぎ等を挙げることができる。
【0053】
工程(2)
本発明の自動車塗膜補修方法における工程(2)は、上記工程(1)において得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に、上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成するものである。上記工程(2)は、目的によって2つに分けることができる。
【0054】
まず1つは、本発明の自動車塗膜補修方法によって得られる塗膜をソリッド塗膜と呼ばれる、上塗り塗膜が1層からなるものを得ることを目的とする場合である。この場合は、上記工程(2)は1段階からなる。すなわち、上記工程(2)は、上記工程(1)において得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に、当業者によってよく知られている補修用ソリッド塗料を塗布してソリッド塗膜を形成するものである。
【0055】
上記補修用ソリッド塗料は、バインダー成分として当業者によってよく知られた樹脂および硬化剤を含んでいる。また、上記補修用ソリッド塗料は、有機溶剤型、水性型および粉体であっても構わないが、環境に対する配慮の観点から、水性型であることが好ましい。
【0056】
上記補修用ソリッド塗料が水性型の場合、上記バインダー成分がエマルション樹脂および/または水性アルキド樹脂を含んでいることが好ましい。上記エマルション樹脂は、含まれる有機溶剤量を最小限にするという観点から、例えば、モノマー混合液を乳化重合することによって得られたものであることが好ましい。
【0057】
上記ソリッド塗料は、さらに、顔料を含んでいる。上記顔料としては特に限定されず、具体的には、上記水性プライマーサーフェーサーのところで述べたものを挙げることができる。
【0058】
上記ソリッド塗料は、上記バインダー成分および上記顔料の他、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤および造膜助剤等、当業者によってよく知られた各種添加剤等を含むことができる。
【0059】
上記補修用ソリッド塗料の塗布方法としては特に限定されず、具体的には、上記工程(1)のところで述べた方法を挙げることができる。塗布後、常温にて放置または強制的に加熱を行い、硬化させて上塗り塗膜を得ることができる。なお、塗布膜厚および硬化条件は、補修用ソリッド塗料の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができ、上記塗布膜厚としては、例えば、乾燥膜厚で10〜30μm、上記硬化条件としては常温で10〜20分間または50〜80℃の温度で5〜10分間である。
【0060】
次に、本発明の自動車塗膜補修方法によって得られる塗膜をメタリック塗膜と呼ばれる、上塗り塗膜が2層以上からなるものを得ることを目的とする場合である。この場合は、上記工程(2)は2段階からなる。すなわち、上記工程(2)は、上記工程(1)で得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に補修用ベース塗料を塗布して補修用ベース塗膜を形成する段階(1−1)および補修用クリヤー塗料を塗布して補修用クリヤー塗膜を形成する段階(1−2)の2つの段階からなるものである。
【0061】
上記段階(1−1)は、上記工程(1)で得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に補修用ベース塗料を塗布して補修用ベース塗膜を形成するものである。上記補修用ベース塗料は特に限定されず、具体的には、上記補修用ソリッド塗料のところで述べたものを挙げることができる。
【0062】
上記補修用ベース塗料の塗布方法としては、具体的には、上記工程(1)のところで述べた方法を挙げることができる。塗布後、次の段階に進むが、上記補修用ベース塗料が水性型である場合は、常温にて放置または強制的に加熱を行い、乾燥させた後に進むことが好ましい。なお、塗布膜厚および乾燥条件は、補修用ベース塗料の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができる。上記塗布膜厚としては、例えば、乾燥膜厚で10〜30μmである。また、上記乾燥時間としては、例えば、常温で10〜20分間または50〜80℃の乾燥温度で5〜10分間である。
【0063】
また、上記段階(1−1)で得られる補修用ベース塗膜の塗色がパール系と呼ばれる塗色である場合、上記段階(1−1)は、さらに、補修用カラーベース塗料を塗布して補修用カラーベース塗膜を形成した後、得られた補修用カラーベース塗膜上に補修用マイカベース塗料を塗布して補修用マイカベース塗膜を形成するものであってもよい。この場合、得られた補修用ベース塗膜は2層からなる。
【0064】
上記補修用カラーベース塗料および補修用マイカベース塗料としては特に限定されず、上記補修用ソリッド塗料のところで述べたもののうち、上記補修用カラーベース塗料としては、含まれる顔料の主成分が着色顔料であるものを、上記補修用マイカベース塗料としては、含まれる顔料の主成分が光輝性顔料であるものを挙げることができる。
【0065】
上記補修用カラーベース塗料の塗布方法および補修用マイカベース塗料の塗布方法としては、具体的には上記補修用ベース塗料のところで述べたものを挙げることができる。
【0066】
上記段階(1−2)は、上記段階(1−1)の後、さらに補修用クリヤー塗料を塗布して補修用クリヤー塗膜を形成するものである。上記補修用クリヤー塗料は特に限定されず、具体的には、上記補修用ソリッド塗料から、顔料を除いたものを挙げることができる。
【0067】
上記補修用クリヤー塗料の塗布方法としては、具体的には、上記工程(1)のところで述べた方法を挙げることができる。塗布後、常温にて放置または強制的に加熱を行い硬化させてクリヤー塗膜を得ることができる。なお、塗布膜厚および硬化条件は、補修用クリヤー塗料の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができ、上記塗布膜厚としては、例えば、乾燥膜厚で30〜80μm、上記硬化条件としては常温で16〜24時間または50〜80℃の温度で20〜60分間である。
【0068】
なお、本発明の自動車塗膜補修方法は、自動車塗膜の部分補修に用いてもよいし、全塗装と呼ばれる自動車塗膜全体の再塗装に用いてもよい。
【0069】
本発明の多層塗膜は、上述の自動車塗膜補修方法によって得られるものであり、プライマーサーフェーサー塗膜および上塗り塗膜からなる。ここで、上記上塗り塗膜は補修用ソリッド塗膜のみからなる場合と、補修用ベース塗膜と補修用クリヤー塗膜とからなる場合がある。本発明の多層塗膜の膜厚としては、例えば、70〜200μmである。本発明の多層塗膜は、上述の自動車塗膜補修方法によって得られるので、耐水劣化後の密着性に優れている。
【0070】
本発明の水性プライマーサーフェーサーは、上述の自動車塗膜補修方法に用いられているものであり、上記1級水酸基および水和可能な官能基含有アクリル樹脂水分散体(a)、ポリイソシアネート化合物水分散体(b)、顔料(c)および1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体(d)を含むものである。上記アクリル樹脂水分散体(a)、上記ポリイソシアネート化合物水分散体(b)、顔料(c)および上記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、具体的には、各々上述したものを挙げることができる。本発明の水性プライマーサーフェーサーは、上述の自動車塗膜補修方法に用いられているものであるので、貯蔵安定性の低下がない。
【0071】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下において「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0072】
製造例1 1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体
反応容器に、アラルダイト6099(日本チバガイギー社製エポキシ樹脂、エポキシ当量2450)300部とブチルカルビトール200部を仕込み、120℃で加熱溶解した後、空気を反応容器中に吹き込みながら撹拌し、メタアクリル酸5.27部、ハイドロキノン0.1部を添加した。10分間撹拌後、トリフェニレンフォスフィン0.07部を加え125〜130℃で4時間保った。次に常法により酸価を測定し、0になっていることを確認するまで保持した後に別の容器に取り出し常温まで冷却し、60.5%芳香族系エポキシ不飽和カルボン酸エステルモノマーのブチルカルビトール溶液を得た。
【0073】
別の反応容器にアラルダイト6099を140部とn−ブチルアルコール40部、ブチルセロソルブ55部、得られた芳香族系エポキシ不飽和カルボン酸エステルモノマーのブチルカルビトール溶液11.57部を仕込み、加熱溶解し、撹拌しながら温度を115℃に保った。
【0074】
さらに別の容器にメタアクリル酸27部、スチレン16部、アクリル酸エチル17部およびベンゾイルパーオキサイド0.84部、ブチルセロソルブ5部を入れて均一に混合溶解した。このモノマー溶液を、上記のエポキシ樹脂溶液を収容している反応容器に120分にわたって一定速度で徐々に加え、温度を114〜116℃に保ち3時間撹拌した後80℃まで冷却した。
【0075】
次に、20部の2−ジメチルアミノエタノールと40部の水を加えて30分間保持し、水を317.59部加えて60℃で均一になるまで撹拌し、常温まで冷却して固形分30%の、1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体を得た。
【0076】
実施例1
製造例1で得られた、1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体8.1部、ウォーターゾールACD−2000(大日本インキ化学工業社製アクリル樹脂水分散体、固形分酸価20mgKOH/g、1級水酸基価56mgKOH/g、ガラス転移温度10℃、重量平均分子量40000)16.0部、バイヒドロールXP2470(バイエル社製アクリル樹脂水分散体、固形分酸価21mgKOH/g、1級水酸基価130mgKOH/g、ガラス転移温度50℃、重量平均分子量15000)9.0部、タイペークR−820(石原産業社製二酸化チタン)5.0部、NK−64(富士タルク社製タルク)32.0部、三菱カーボンブラックMA−100(三菱化学社製カーボン)0.59部、BYK−190(ビックケミー社製顔料分散剤)2.0部、および、BYK−307(ビックケミー社製表面調整剤)0.5部を充分に撹拌混合した後、水を加えてプライマーサーフェーサー1を得た。
【0077】
150mm×70mm×0.8mmの脱脂した自動車用鋼板に対して、岩田NK#2カップにて25秒(20℃)となるように水希釈したプライマーサーフェーサー1を、乾燥膜厚60μmとなるようにスプレー塗装して、プライマーサーフェーサー塗膜を得た。60℃で20分間乾燥させた後、サンドペーパー#600(住友スリーエム社製)にて、プライマーサーフェーサー塗膜が平滑になるように当てゴムを用いて、水を塗膜表面に流しながら研磨した後、再度脱脂した。
【0078】
次に、岩田NK#2カップにて20秒(20℃)となるように水希釈したオーデベースメタリックベース(日本ペイント社製水性ベース塗料)を、乾燥膜厚15μmとなるようにスプレー塗布して、ベース塗膜を得た。
【0079】
さらに、20℃で10分間乾燥させた後、岩田NK#2カップにて20秒(20℃)となるように水希釈したSIKKENS AUTOCLEAR WB(アクゾ・ノーベル社製水性クリヤー塗料)を、乾燥膜厚60μmとなるようにスプレー塗装して、クリヤー塗膜を得た後、60℃で40分間乾燥させて、多層塗膜を形成した試験板を得た。
【0080】
<評価試験>
(1)一次密着性
得られた試験板の多層塗膜について、JIS K 5600に準じて密着性を評価した。100マス中、剥がれなかった数値を示した。得られた結果は表1に示した。
【0081】
(2)二次密着性
得られた試験板を40℃の恒温水槽に10日間浸漬し、取り出して2時間常温放置した後、JIS K 5600に準じて密着性を、一次密着性評価と同様にして評価した。得られた結果は表1に示した。
【0082】
(3)プライマーサーフェーサーの貯蔵安定性
得られたプライマーサーフェーサーを40℃のインキュベーターに14日間保存した後、増粘の有無を目視にて確認した。得られた結果は表1に示した。
【0083】
(4)塗装作業性
得られたプライマーサーフェーサーをブリキ板上に、乾燥膜厚20μmから150μmまで薄膜から順次厚膜となるように勾配塗装し、10分間のセッティングの後60℃で30分間電気炉を用いて乾燥させて、乾燥膜厚80μm以下におけるピンホールの発生の有無を目視にて評価した。80μm以下の乾燥膜厚でピンホールが発生する場合は×を、80μmを超える乾燥膜厚でピンホールが発生する場合は○とした。
【0084】
比較例1
バーノックWE−301(大日本インキ化学工業社製アクリル樹脂エマルション、1級水酸基価80mgKOH/g、ガラス転移温度35℃、固形分45%)45.0部、BYK−190 5.0部、ノプコNXZ(サンノプコ社製消泡剤)0.5部、タイペークR−820 5.0部、NK−64 33.0部、三菱カーボンブラックMA−100 0.59部、および、BYK−307 0.5部を充分に撹拌混合した後、水を加えてプライマーサーフェーサー2を得た。
【0085】
その後、プライマーサーフェーサー1に代えて、得られたプライマーサーフェーサー2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成した試験板を得て、さらに同様にして評価試験を行った。
【0086】
比較例2
比較例1のバーノックWE−301 45.0部に代えて、バーノックWE−301 32.0部およびWEX−5001(東都レジン化工社製ビスフェノールA型エポキシエマルション、固形分50%)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、プライマーサーフェーサー3を得た。
【0087】
その後、プライマーサーフェーサー1に代えて、得られたプライマーサーフェーサー3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成した試験板を得て、さらに同様にして評価試験を行った。
【0088】
比較例3
ウォーターゾールACD−2000 20.0部、ノプコNXZ0.5部、タイペークR−820 5.0部、NK−64 30.0部、三菱カーボンブラックMA−100 0.59部、バイヒドロールXP2470 20.0部、および、BYK−307 0.5部を充分に撹拌混合した後、水を加えてプライマーサーフェーサー4を得た。
【0089】
その後、プライマーサーフェーサー1に代えて、得られたプライマーサーフェーサー4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成した試験板を得て、さらに同様にして評価試験を行った。
【0090】
比較例4
バイヒドロールXP2470 20.0部を10.0部とし、さらにポリゾール8500(昭和高分子社製2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体、エポキシ部分/アクリル部分の質量比率が7/3、固形分酸価80mgKOH/g、2級水酸基125mgKOH/g、1級水酸基なし、固形分27%)10.0部を追加して用いたこと以外は、比較例1と同様にして、プライマーサーフェーサー5を得た。
【0091】
その後、プライマーサーフェーサー1に代えて、得られたプライマーサーフェーサー5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成した試験板を得て、さらに同様にして評価試験を行った。
【0092】
【表1】

【0093】
表1の結果から明らかなように、本発明の自動車補修塗膜形成方法によって得られた自動車補修塗膜は、一次密着性および二次密着性に優れる。さらに、本発明の自動車補修塗膜形成方法に用いられるプライマーサーフェーサーは、経時安定性に優れ、かつ、塗装作業性に優れていることがわかった。
【0094】
しかしながら、本発明の自動車補修塗膜形成方法に属さない形成方法によって得られた自動車補修塗膜は、二次密着が劣ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、自動車補修塗膜形成方法において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して、水性プライマーサーフェーサーを塗布してプライマーサーフェーサー塗膜を形成する工程(1)および前記工程(1)において得られたプライマーサーフェーサー塗膜上に、上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成する工程(2)を含む多層塗膜の形成方法であって、前記水性プライマーサーフェーサーが、1級水酸基および水和可能な官能基含有アクリル樹脂水分散体(a)、ポリイソシアネート化合物水分散体(b)および顔料(c)を含む水性プライマーサーフェーサーであって、さらに、1級水酸基、2級水酸基および水和可能な官能基含有変性エポキシ樹脂水分散体(d)を含んでいることを特徴とする自動車塗膜補修方法。
【請求項2】
前記工程(1)と前記工程(2)との間に工程(1)で得られたプライマーサーフェーサー塗膜を研磨する処理を含んでいる請求項1に記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項3】
前記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、2級水酸基当量が50〜200である請求項1または2に記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項4】
前記変性エポキシ樹脂水分散体(d)は、エポキシ樹脂にアクリル樹脂を反応させて得られるものである請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂/前記アクリル樹脂の固形分質量比は、5/5〜9/1である請求項4に記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項6】
前記水性プライマーサーフェーサーの顔料体積濃度は、20〜60%である請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項7】
前記工程(2)は、ベース塗料を塗布してベース塗膜を形成する段階(1−1)およびクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成する段階(1−2)からなる請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項8】
前記ベース塗料は、水性型塗料である請求項7に記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項9】
前記基材は、旧塗膜を有している請求項1〜8に記載の自動車塗膜補修方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の自動車塗膜補修方法によって得られることを特徴とする多層塗膜。
【請求項11】
請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の自動車塗膜補修方法に用いられることを特徴とする水性プライマーサーフェーサー。

【公開番号】特開2006−314960(P2006−314960A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142164(P2005−142164)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】