説明

自動車玩具

【課題】起伏の大きい路面走行の場合でも前輪及び後輪の接地性の良い自動車玩具を提供する。
【解決手段】前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とは、車幅方向に延在する回動軸44を中心に回動可能に連結され、回動によって、前輪20及び後輪30を該前輪用シャーシ22及び該後輪用シャーシ32の下面側で近接させる屈曲状態と該前輪20及び該後輪30を該前輪用シャーシ22及び該後輪用シャーシ32の下面側で離間させる伸張状態とを取り得るように構成され、前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とには、伸張状態側から近接状態側に向けて付勢し、常態で、屈曲状態に保持する捻りばね43が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、無線で操作する自動車玩具は、凹凸路面を走行する際に前輪を介してボディに加わる衝撃を緩和するため、サスペンション装置を備えている。このサスペンション装置は、シャーシに対して例えば前輪を上下動可能に設け、前輪をそれぞれ1つのコイルばねによってシャーシに対して下方に付勢する構造となっており、走行時において前輪を介してボディに加わる衝撃を該コイルばねによって緩和させるようになっている。
【0003】
ところで、このような自動車玩具にあっては、前輪車軸及び後輪車軸を支持するシャーシの下面はフラットであり、このフラットのシャーシにボディが係止された構造となっている。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−329372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、起伏の小さな路面を走行する場合は問題がないが、起伏の大きな路面を走行する場合には、シャーシの下面が路面に擦れてしまい、前輪及び後輪のいずれかの接地が弱まり、特に駆動輪の接地が弱まった場合には、走行に困難を来すという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、起伏の大きい路面走行の場合でも前輪及び後輪の接地性の良い自動車玩具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
前輪用車軸を支持する前輪用シャーシと、後輪用車軸を支持する後輪用シャーシとを備えた自動車玩具において、
前記前輪用シャーシと前記後輪用シャーシとは、車幅方向に延在する回動軸を中心に回動可能に連結され、回動によって、前輪及び後輪を該前輪用シャーシ及び該後輪用シャーシの下面側で近接させる屈曲状態と該前輪及び該後輪を該前輪用シャーシ及び該後輪用シャーシの下面側で離間させる伸張状態とを取り得るように構成され、
前記前輪用シャーシと前記後輪用シャーシとの間には、常態で、付勢力によって該前輪用シャーシと該後輪用シャーシとを屈曲状態に保持するばねが設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車玩具であって、
前記ばねは捻りばねであり、前記捻りばねは前記回動軸に巻回され、該捻りばねの一端は前記前輪用シャーシに係止され他端は前記後輪用シャーシに係止されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自動車玩具であって、
前記前輪用シャーシと前記後輪用シャーシとは車幅方向に離れた2箇所で連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車玩具であって、
無線コントローラからの無線信号を受信する受信装置と、車軸を回転させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、前輪用シャーシと後輪用シャーシとは、車幅方向に延在する回動軸を中心に回動可能に連結され、回動によって屈曲状態と伸張状態とを取り得るように構成され、前輪用シャーシと後輪用シャーシとには、これら前輪用シャーシと後輪用シャーシとを伸張状態側から近接状態側に向けて付勢し、常態で、付勢力によって該前輪用シャーシと該後輪用シャーシとを屈曲状態に保持するばねが設けられていることにより、当該ばねは前後輪が接地する方向へ両シャーシを付勢するため、起伏の大きい路面走行の場合でも前後輪の強いグリップ力が得られる。また、両シャーシは常態で屈曲状態に保持されるため、車体の全長を短くすることができる。更に、ばねがショックアブソーバとして機能し、走行時の上下方向の振動を吸収するため、車輪又は車軸個別のサスペンション装置を備える必要なく車体への衝撃を緩和できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記ばねは捻りばねであり、前記捻りばねは前記回動軸に巻回され、該捻りばねの一端は前記前輪用シャーシに係止され他端は前記後輪用シャーシに係止されていることにより、ショックアブソーバとしての当該ばねは、1つだけで充分に車体への衝撃を緩和でき、シャーシ内側に他の部品のためのスペースを確保することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前輪用シャーシと後輪用シャーシとが車幅方向に離れた2箇所で連結されていることにより、両シャーシがこの連結部分で互いに捻れることを抑制し、回動軸の回動が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1に、本実施の形態におけるオフロード用のリモコン玩具1の外観図を示す。リモコン玩具1は、本発明に係る自動車玩具2と、この自動車玩具2を無線で操作するリモコン3とからなり、平地だけでなく、砂利や土などの非舗装路面で自動車玩具2を走行させて遊ぶことのできる玩具である。
【0014】
図2及び図3に、自動車玩具2からボディ11を取り外した状態の上面図及び側面図を示す。自動車玩具2は、左右の前輪20,20を繋ぐ前輪用車軸21が軸支される前輪用シャーシ22と、左右の後輪30,30を繋ぐ後輪用車軸31が軸支される後輪用シャーシ32とを備える。この前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とは、両側面の2箇所に設けられた連結部40によって両車軸の中途部で連結されている。なお、この「両車軸の中途部」とは、シャーシの前後方向における前輪用車軸21と後輪用車軸31との間の位置を意味している。
【0015】
前輪用シャーシ22は、前輪用車軸21と連結部40との間に収納スペースを有し、この収納スペースには、リモコン3からの無線信号を受信する受信装置50と、受信した無線信号により各部を制御する制御部51と、制御部51からの指令で前輪を操舵するステアリング装置(図示せず)とが配設されている。また、制御部51と収納スペース底面との間には、電力を供給する電池(図示せず)が収納されている。そして、この前輪用シャーシ22にはボディ11が係止されている。
【0016】
後輪用シャーシ32は、後輪用車軸31を介して後輪30を駆動するモータ53を備えている。モータ53は、前輪用シャーシ22に配設された制御部51及び図示しない電池から、連結部40を介して駆動指令及び電力供給を受ける。
【0017】
2箇所の連結部40は、図2に示すように、車幅方向に延在する回動軸44を中心に回動可能に連結している。この2箇所の連結部40は互いに車幅方向に離れているので、両シャーシがこの連結部40で捻れることを抑制し、回動軸44の回動を安定させる。
【0018】
また、図3に示すように、この連結部40における前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32との回動範囲はAストッパ面41,41及びBストッパ面42,42によって規制される。具体的には、連結部40の下方寄りの前輪用シャーシ22側と後輪用シャーシ32側には、それぞれAストッパ面41,41が形成されている。このAストッパ面41,41は、図3(a)に示すように、互いに当接することで連結部40が路面から離間する方向への回動を制限する。同様に、連結部40の上方寄りの前輪用シャーシ22側と後輪用シャーシ32側には、それぞれBストッパ面42,42が形成されている。このBストッパ面42,42は、図3(b)に示すように、互いに当接することで連結部40が路面へ接近する方向への回動を制限する。
【0019】
なお、Aストッパ面41,41の当接位置は、両シャーシの傾斜がオフロード用の自動車としての外観を損ねない程度であるように設定され、Bストッパ面42,42の当接位置は、シャーシ底面が路面と接触しないように設定される。
【0020】
連結部40の一方(図2における下方側,図3における手前側)には、捻りばね43が配設されている。この捻りばね43はシャーシの片側において回動軸44に巻き掛けられ、その一端が前輪用シャーシ22に他端が後輪用シャーシ32に係止されている。この捻りばね43はシャーシの外側に設けられることが好ましい。シャーシの外側に捻りばね43を設けることとすれば、シャーシ内側に他の部品のためのスペースを確保することができる。
捻りばね43は、連結部40が水平路面上で両車軸に対して上方に位置する状態、すなわち、図3(a)の状態になるよう当該連結部40を付勢する付勢手段として機能する。また、捻りばね43は、自動車玩具2に加わる上下方向への振動を吸収するショックアブソーバとして機能する。したがって、自動車玩具2は複雑なサスペンション装置を備える必要がない。更に、この捻りばね43は両シャーシが屈曲状態となるように付勢するので、自動車玩具2の全長を短くすることができる。
【0021】
なお、ボディ11は前輪用シャーシ22のみに固定されるため連結部40の回動を阻害することはない。加えて、ボディ11の後輪部のフェンダー12(図4参照)と後輪30とは、Bストッパ面42,42が当接する(図3(b))状態においても両者が接触しないようクリアランス設定されるが、捻りばね43に付勢される通常(図3(a))の状態では両シャーシが上方に向かって連結されているので、前輪用シャーシ22に固定されるボディ11の後輪側は上方へ持ち上げられ、フェンダー12と後輪30とのクリアランスを容易に確保できる。
また、例えば、ボディ11を前輪用ボディと後輪用ボディとに分割して、シャーシと同様に互いに回動可能に連結しておくなど、この前輪用ボディと後輪用ボディとを、連結部40の回動を阻害しないよう前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とにそれぞれ固定するようにしてもよい。
【0022】
続いて、本実施の形態におけるリモコン玩具1の概略動作を説明する。
【0023】
リモコン玩具1は、リモコン3を操作することによって自動車玩具2を思いのままに走行させることができる。まず、リモコン3からは操作に応じた無線信号が発せられ、この無線信号が自動車玩具2の受信装置50で受信される。そして、その無線信号を受けた制御部51からの指令により、ステアリングサーボ52又はモータ53等が操舵動作又は後輪30の駆動動作等をすることによって、自動車玩具2をリモコン3の操作通りに走行させることができる。
【0024】
続いて、凹凸路面走行時における自動車玩具2の動作を詳細に説明する。
【0025】
図4に、凸部を有する路面の走行時における自動車玩具2の側面図を示す。
自動車玩具2が凸部を有する路面を走行する際は、まず、前輪20が凸部を乗り越える。このとき、捻りばね43によって両シャーシが屈曲状態に付勢されているため、前輪20は強いグリップ力で凸部を乗り越えることができる。また、自動車玩具2に上下方向への振動が加わるが、捻りばね43がショックアブソーバとして働き、この振動を吸収するため、自動車玩具2への衝撃が緩和される。更に、フェンダー12と後輪30とのクリアランスは充分に確保できているため、自動車玩具2が上下に振動したときでも、両者が接触することはない。
【0026】
次に、図4に示すように、前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とが凸部を跨ぐ。このとき、前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とが、前後輪の車軸間で路面から離間するよう上方に凹部を形成して連結されているので、路面の凸部と両シャーシの腹部とが接触することなく走行できる。
【0027】
最後に、後輪30が凸部を乗り越える。このとき、捻りばね43によって両シャーシが屈曲状態に付勢されているため、後輪20は強いグリップ力で凸部を乗り越えることができる。また、自動車玩具2に上下方向への振動が加わるが、捻りばね43がショックアブソーバとして働き、この振動を吸収するため、自動車玩具2への衝撃が緩和される。更に、フェンダー12と後輪30とのクリアランスは充分に確保できているため、自動車玩具2が上下に振動したときでも、両者が接触することはない。
【0028】
以上のように、本発明に係るリモコン玩具1によれば、捻りばね43が両シャーシを屈曲状態に付勢するので、起伏の大きい路面走行の場合でも前後輪の強いグリップ力が得られる。また、両シャーシは常態で屈曲状態に保持されるため、自動車玩具2の全長を短くすることができる。
【0029】
また、捻りばね43がショックアブソーバとして働き、自動車玩具2に加わる上下方向の振動を吸収するため、複雑なサスペンション装置を備える必要なく自動車玩具2への衝撃が緩和できる。
【0030】
また、捻りばね43はシャーシの片側において回動軸44に巻き掛けられ、その一端が前輪用シャーシ22に他端が後輪用シャーシ32に係止されているので、捻りばね43は1つだけでショックアブソーバとして車体への衝撃を緩和できる。更に、この捻りばね43はシャーシの外側に設けられているので、シャーシ内側に他の部品のためのスペースを確保することができる。
【0031】
また、前輪用シャーシ22と後輪用シャーシ32とを連結する2箇所の連結部40は互いに車幅方向に離れているので、両シャーシがこの連結部40で捻れることを抑制し、回動軸44の回動を安定させる。
【0032】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態におけるリモコン玩具の外観図である。
【図2】本発明に係る自動車玩具からボディを取り外した状態の上面図である。
【図3】(a)本発明に係る自動車玩具からボディを取り外した状態のAストッパ当接時の側面図である、(b)Bストッパ当接時の側面図である。
【図4】本発明に係る自動車玩具の凸部を有する路面走行時の側面図である。
【符号の説明】
【0034】
2 自動車玩具
3 リモコン(無線コントローラ)
21 前輪用車軸
22 前輪用シャーシ
31 後輪用車軸
32 後輪用シャーシ
43 捻りばね
44 回動軸
50 受信装置
51 制御部
53 モータ(駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪用車軸を支持する前輪用シャーシと、後輪用車軸を支持する後輪用シャーシとを備えた自動車玩具において、
前記前輪用シャーシと前記後輪用シャーシとは、車幅方向に延在する回動軸を中心に回動可能に連結され、回動によって、前輪及び後輪を該前輪用シャーシ及び該後輪用シャーシの下面側で近接させる屈曲状態と該前輪及び該後輪を該前輪用シャーシ及び該後輪用シャーシの下面側で離間させる伸張状態とを取り得るように構成され、
前記前輪用シャーシと前記後輪用シャーシとの間には、常態で、付勢力によって該前輪用シャーシと該後輪用シャーシとを屈曲状態に保持するばねが設けられていることを特徴とする自動車玩具。
【請求項2】
前記ばねは捻りばねであり、前記捻りばねは前記回動軸に巻回され、該捻りばねの一端は前記前輪用シャーシに係止され他端は前記後輪用シャーシに係止されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車玩具。
【請求項3】
前記前輪用シャーシと前記後輪用シャーシとは車幅方向に離れた2箇所で連結されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車玩具。
【請求項4】
無線コントローラからの無線信号を受信する受信装置と、車軸を回転させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−442(P2009−442A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166745(P2007−166745)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】