説明

自動車用ウエザーストリップ

【課題】 水が室内へ侵入するのを防止するシール材としてEPDM高発泡スポンジ材を備えた自動車用のウエザーストリップにおいて、そのスポンジ材に押出成形時の成形バラツキが発生しても、取付け姿勢が設定位置からずれず、優れたシール性と外観性を発揮することのできる製品を提供する。
【解決手段】 水の室内への侵入を防止するために取付パネル10に弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材2を具備する自動車用のウエザーストリップにおいて、EPDM高発泡スポンジ材を、筒壁と中空部とで構成される中空状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が室内へ侵入するのを防止するためのシール材としてEPDM高発泡スポンジ材を備えた自動車用のウエザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1乃至図3を参照して説明する。従来、自動車用のウエザーストリップには、例えば、図2および図3の想像線で示すような、取付基部3、中空シール部4、シールリップ部6、メインシール部7および小リップ部5等を備えるドアウエザーストリップ20において、水の侵入(くぐり水)を防止するためにEPDM高発泡スポンジ材21(比重0.05〜0.4)を設けたものがある。
【0003】
このEPDM高発泡スポンジ材21は、通常のスポンジ材より比重が小さく柔軟性に富むため取付パネル10(ドアパネルD)に対する密着性に優れ、従って、通常は、メインシール部7および小リップ部5で防ぐことができなかった水のそれ以上の侵入を防止することができるといった優れた効果を発揮する。
【0004】
なお、これまでに、水の侵入を防止するために低密度スポンジ製(比重0.15〜0.35)のスポンジ材を取付基部の下端部に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−198031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のウエザーストリップ20に設けられたEPDM高発泡スポンジ材21は、特許文献1に記載のものを含め、そのスポンジ材21の反力の影響によってウエザーストリップ20の取付パネル10に対する取付け姿勢が設定位置からずれてしまうといった問題がある。
【0006】
これは、従来のEPDM高発泡スポンジ材20は無垢状(中実状)であり、また、押出成形によって形成される際に、高発泡であるために成形のバラツキが通常のスポンジ材と比べて大きいことに起因するものである。
【0007】
すなわち、成形のバラツキによって、断面形状が設定寸法より大きくなった場合には、取付フランジ10bに取付けた際に、図2および図3の実線で示すように、その反力によってウエザーストリップ20がいわゆる転んだ状態となる。その結果、EPDM高発泡スポンジ材21の取付パネル10(取付フランジ10b)に対するラップ量が減少してシール性が低下し、水Wが室内へ侵入してしまう(図3参照)。
【0008】
また、シールリップ部(見切りリップ)6がめくれた状態となって弾接パネル11(ボディパネルB)との間に隙間Gが形成され、外観性も損なってしまう(図2参照)。
【0009】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、水が室内へ侵入するのを防止するシール材としてEPDM高発泡スポンジ材を備えた自動車用のウエザーストリップにおいて、当該スポンジ材に押出成形時の成形にバラツキが発生しても、ウエザーストリップの取付け姿勢が設定位置からずれず、よって、優れたシール性と外観性を発揮することのできる製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
EPDMはエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体よりなるゴムのことである。図1および図4乃至図7を参照して説明する。請求項1に記載の自動車用ウエザーストリップ1は、 水の室内への侵入を防止するために取付パネル10に弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材2を具備するものである。そして、前記EPDM高発泡スポンジ材2を、筒壁2aと中空部2bとで構成される中空状に形成したことを特徴とするものである。
【0011】
なお、「取付パネル10」とは、ウエザーストリップ1が取付けられるドアパネル(ドアサッシュを含む)DやボディパネルBなどのパネルを言う(以下同じ)。
【0012】
請求項2に記載の自動車用ウエザーストリップ1は、水の室内への侵入を防止するために取付パネル10であるドアパネルDに弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材2を具備するものである。
【0013】
そして、前記ウエザーストリップ1を、取付基部3と中空シール部4を備え、前記ドアパネルDの取付部10aに取付けられるドアウエザーストリップ1aとしている。また、前記EPDM高発泡スポンジ材2を、前記取付基部3の車外側下端部に位置する小リップ部5に隣接して、その室内側に設けられ、かつ、筒壁2aと中空部2bとで構成される中空状に形成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の自動車用ウエザーストリップ1は、水の室内への侵入を防止するために取付パネル10であるボディパネルBに弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材2を具備するものである。
【0015】
そして、前記ウエザーストリップ1を、断面略U字状の取付基部3と中空シール部4を備え、トランクルームを形成する前記ボディパネルBの取付フランジ10bに取付けられるトランクルームウエザーストリップ1bとしている。また、前記EPDM高発泡スポンジ材2を、前記取付基部3の車外側壁3aと、その車外側壁3aからボディパネルBに向けて斜めに突設され、比重が0.4〜0.8である通常スポンジ材8との間に設けられ、かつ、筒壁2aと中空部2bとで構成される中空状に形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の自動車用ウエザーストリップ1は、水の室内への侵入を防止するために取付パネル10に弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材2を具備するものにおいて、EPDM高発泡スポンジ材2を、筒壁2aと中空部2bとで構成される中空状に形成したので、当該ウエザーストリップ1の取付け姿勢を安定させて、良好なシール性と外観性を得ることができる。
【0017】
すなわち、取付パネル10に弾接するEPDM高発泡スポンジ材2を中空状としたので、当該EPDM高発泡スポンジ材2は無垢状のものと比較して柔軟性に富み、容易に弾性変形することができる。従って、ウエザーストリップ1を取付パネル10に取付けた際のEPDM高発泡スポンジ材2に作用する反力は、当該EPDM高発泡スポンジ材2が柔軟に弾性変形して効果的に吸収することができる。
【0018】
これにより、ウエザーストリップ1の取付け姿勢を当初の設定通りに保つことができる。また、これに伴い、EPDM高発泡スポンジ材2の取付パネル10に対するラップ量を設定通りに維持することができるので、シール性を良好に保つことができ、水Wの侵入を確実に防止することができる(図6参照)。また、シールリップ部6を弾接パネル11に、両者間に隙間Gを形成することなく弾接させることができるので、外観性も設定通りに良好に保つことができる(図4参照)。
【0019】
請求項2に記載の自動車用ウエザーストリップ1は、請求項1に記載の発明と同様に、EPDM高発泡スポンジ材2を中空状としたので、ウエザーストリップ1を取付パネル10に設定通り取付けることができる。また、それに伴い、取付パネル10(ドアパネルD)とのラップ量を設定通りとすることができるので優れたシール性を確保することができると共に、設定通りの良好な外観性を確保することができる。
【0020】
また、この自動車用ウエザーストリップ1は、ドアウエザーストリップ1aであり、EPDM高発泡スポンジ材2を小リップ部5に隣接して、その室内側に設けているので、メインシール部7および小リップ部5で阻止することのできなかった水(くぐり水)のそれ以上の侵入を防止することができる。これにより、水がドアパネルDとドアウエザーストリップ1aとの間から室内へ侵入するのを確実に防止することができる。また、ドアウエザーストリップ1aの取付け姿勢を設定通りに良好に維持して、優れた外観性を保つことができる。
【0021】
請求項3に記載の自動車用ウエザーストリップ1は、請求項1に記載の発明と同様に、EPDM高発泡スポンジ材2を中空状としたので、ウエザーストリップ1を取付パネル10に設定通りの姿勢で取付けることができる。これに伴い、EPDM高発泡スポンジ材2と取付パネル10(ボディパネルB)のラップ量を設定通りに保つことができるので、優れたシール性を維持することができ、水(くぐり水)の侵入を防止することができる。また、ウエザーストリップ1の取付け姿勢を設定通りとして、外観性を良好に保つことができる。
【0022】
このウエザーストリップ1はトランクルームウエザーストリップ1bであり、EPDM高発泡スポンジ材2を、車外側壁3aと通常スポンジ材8との間に設けているので、通常スポンジ材8で阻止することのできなかった水の侵入を、EPDM高発泡スポンジ材2で防止することができる。これにより、水が、ボディパネルBと取付基部3との間をくぐって室内へ侵入するのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る自動車用ウエザーストリップ1の第一実施形態を、図1および図4乃至図6に示す。このウエザーストリップ1は、ドアパネルD(取付パネル10)に取付けられるドアウエザーストリップ1aである。このドアウエザーストリップ1aは、ドアパネルDの外周縁部に沿って形成された取付部10aに組付く取付基部3と、その取付基部3に一体成形された中空シール部4を備える。
【0024】
また、取付基部3から車外側に立設されボディパネルB(弾接パネル11)に弾接するシールリップ部(見切りリップ)6と、ドアパネルDに弾接するメインシール部7を備える。さらに、取付基部3の車外側下端部に、ドアパネルDに弾接する小リップ部5を備える。またさらに、小リップ部5の室内側に二つの弾接リップ12を有する。
【0025】
そして、取付基部3の下面に、小リップ部5に隣接してそれより室内側に、水の室内への侵入を防止するために、ドアパネルDの取付部10aに弾接するEPDM高発泡スポンジ材2(比重:0.25程度)を固着している。このEPDM高発泡スポンジ材2は、断面閉曲面形状の筒壁2aと、その内部に形成される中空部2bとで構成した中空状としている。なお、EPDM高発泡スポンジ材2は、比重が0.05〜0.4の範囲内のものを使用することができる。
【0026】
本実施形態に係る自動車用ウエザーストリップ1は、ドアパネルDに弾接するEPDM高発泡スポンジ材2を中空状としているので(図4および図5参照)、無垢状(中実状)のものと比較して柔軟性に富み、容易に弾性変形する(図6参照)。従って、ウエザーストリップをドアパネルDの取付部10aに取付けた際にEPDM高発泡スポンジ材2に作用する反力は、当該EPDM高発泡スポンジ材2が柔軟に弾性変形することによって効果的に吸収する。
【0027】
これにより、ウエザーストリップはその取付け姿勢を当初の設定通りに保つことができる。また、それに伴い、EPDM高発泡スポンジ材2の取付パネル10に対するラップ量を当初の設定通りに維持することができるので、メインシール部7および小リップ部5で阻止することのできなかった水(くぐり水)Wのそれ以上の侵入を防止することができる(図6参照)。
【0028】
これにより、水がドアパネルDとドアウエザーストリップ1aとの間から室内へ侵入するのを確実に防止することができる。さらに、ウエザーストリップ1はその取付位置がずれないので、シールリップ部6も弾接パネル11(ボディパネルB)に隙間Gを形成することなく弾接することができ、よって、外観性も当初の設定通りに良好に保つことができる(図4・図2参照)。
【0029】
本発明に係る自動車用ウエザーストリップ1の第二実施形態を、図1および図7に示す。このウエザーストリップ1は、トランクルームを形成するボディパネルB(取付パネル10)の取付フランジ10bに取付けられるトランクルームウエザーストリップ1bであり、取付フランジ10bに組付く断面略U字状で芯材S(金属製または硬質樹脂製)を埋設した取付基部3と、それに一体成形され、トランクリッドT(弾接パネル11)に弾接する中空シール部4を備える。
【0030】
また、取付基部3の車外側壁3aからボディパネルBに向けて斜めに突設され、比重が0.4〜0.8である通常スポンジ材8を備える。この通常スポンジ材8は、その先端部がボディパネルBに弾接してシール性を発揮する。さらに、取付基部3には、取付フランジ10bに組付く複数の組付リップ9を設けている。
【0031】
そして、車外側壁3aと通常スポンジ材8との間に、EPDM高発泡スポンジ材2(比重:0.25程度)を固着している。このEPDM高発泡スポンジ材2は、断面閉曲面形状の筒壁2aと、その内部に形成される中空部2bとで構成している。
【0032】
本実施形態に係るウエザーストリップ1も、第一実施形態と同様に、EPDM高発泡スポンジ材2を中空状に形成しているので、ボディパネルBの取付フランジ10bに取付けた状態で、当該EPDM高発泡スポンジ材2がボディパネルBからの反力を効果的に吸収することができる。
【0033】
従って、ウエザーストリップ1を取付フランジ10bに、当初の設定通りの姿勢で正確に取付けることができる。それに伴い、EPDM高発泡スポンジ材2のボディパネルBに対するラップ量を当初の設定通りに保つことができ、優れたシール性を確保することができる。また、取付フランジ10bの取付け姿勢がずれないので、外観性も当初の設定通りに良好に維持することができる。
【0034】
このウエザーストリップ1は、通常スポンジ材8をボディパネルBに弾接させているので、当該通常スポンジ材8とEPDM高発泡スポンジ材2の両方によって、水が、取付基部3(組付リップ9)と取付フランジ10bとの間を通過して室内へ侵入するのを確実に防止することができる。
【0035】
従って、従来、水の浸入を防止するために、予めウレタンシーラー等を取付基部3の内部に配置しておき、取付フランジ10bに取付けた時に、該取付フランジ10bの先端縁付近を覆うようにするところの前記ウレタンシーラー等を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ウエザーストリップを取付けた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である(EPDM高発泡スポンジ材が弾性変形する前の状態を示す)。
【図6】図5に示すEPDM高発泡スポンジ材が弾性変形した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るウエザーストリップを示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ウエザーストリップ
1a ドアウエザーストリップ
1b トランクルームウエザーストリップ
2 EPDM高発泡スポンジ材
2a 筒壁
2b 中空部
3 取付基部
3a 車外側壁
4 中空シール部
5 小リップ部
6 シールリップ部
7 メインシール部
8 通常スポンジ材
9 組付リップ
10 取付パネル
10a 取付部
10b 取付フランジ
11 弾接パネル
12 弾接リップ
20 ドアウエザーストリップ
21 EPDM高発泡スポンジ材
B ボディパネル
D ドアパネル
G 隙間
S 芯材
T トランクリッド
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の室内への侵入を防止するために取付パネル(10)に弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材(2)を具備する自動車用のウエザーストリップであって、前記EPDM高発泡スポンジ材を、筒壁(2a)と中空部(2b)とで構成される中空状に形成したことを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。
【請求項2】
水の室内への侵入を防止するために取付パネル(10)であるドアパネル(D)に弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材(2)を具備する自動車用のウエザーストリップであって、前記ウエザーストリップを、取付基部(3)と中空シール部(4)を備え、前記ドアパネルの取付部(10a)に取付けられるドアウエザーストリップ(1a)とし、前記EPDM高発泡スポンジ材を、前記取付基部の車外側下端部に位置する小リップ部(5)に隣接して、その室内側に設けられ、かつ、筒壁(2a)と中空部(2b)とで構成される中空状に形成したことを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。
【請求項3】
水の室内への侵入を防止するために取付パネル(10)であるボディパネル(B)に弾接し、比重が0.05〜0.4であるEPDM高発泡スポンジ材(2)を具備する自動車用のウエザーストリップであって、前記ウエザーストリップを、断面略U字状の取付基部(3)と中空シール部(4)を備え、トランクルームを形成する前記ボディパネルの取付フランジ(10b)に取付けられるトランクルームウエザーストリップ(1b)とし、前記EPDM高発泡スポンジ材を、前記取付基部の車外側壁(3a)と、該車外側壁からボディパネルに向けて斜めに突設され、比重が0.4〜0.8である通常スポンジ材(8)との間に設けられ、かつ、筒壁(2a)と中空部(2b)とで構成される中空状に形成したことを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137634(P2010−137634A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314204(P2008−314204)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】