説明

自動車用オープニングトリムウェザストリップ

【課題】乗員の昇降時の接触によっても、中空シール部が磨耗し難く、中空シール部の柔軟性を確保することができるオープニングトリムウエザストリップを提供する。
【解決手段】オープニングトリムウエザストリップ10は、車体開口部周縁6に設けられているフランジ7に取付けられる取付基部20と、取付基部20に一体的に設けられ、ドアに当接してドアと車体開口部周縁6との間をシールする中空シール部30を有する。
車体開口部周縁6のリヤ側縦辺部に取付けられる中空シール部30は、スポンジ材で形成された中空シール本体部38と、中空シール本体部の表面にソリッド材で形成された中空シール表皮層39を有し、中空シール表皮層の肉厚は、0.3mm〜0.5mmであることを特徴とする自動車用オープニングトリムウエザストリップである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールする自動車用のオープニングトリムウェザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のドアと車体側の開口部であるドア開口部の周縁との間のシールは、ドアのドアフレームの外周に設けられたドアウエザストリップと、ドアフレーム等の内周のチャンネルに取付けられるガラスランと、ドア開口部周縁のフランジに取付けられたオープニングトリムウェザストリップとによりなされる。
【0003】
図7に示すように、オープニングトリムウェザストリップ110は、車体のドア開口部周縁6のほぼ全周に取付けられて、ドアを閉めると、ドアフレーム2及び又はドアパネルの外周に当接してシールする。
図9に示すように、ドア開口部周縁にはフランジ7が設けられ、フランジ7は、インナーパネル8とアウターパネル9の先端が溶接により固着されて形成されている。
【0004】
オープニングトリムウェザストリップ110は、断面略U字形の取付基部(トリム部)120により上記のフランジ7に取付けられ、トリム部120の車外側側壁から車外側へ突出する中空シール部130がドアフレームの膨出部(図示せず)に当接してシールする。このトリム部120は、フランジ7を把持する力を増加させるために、金属インサート等の芯材127が埋設され、車内側側壁121、車外側側壁122及び底壁123から断面略U字形に形成されている。
【0005】
図9に示すように、車内側側壁121および車外側側壁122の断面略U字形のそれぞれの内面には、フランジ7を把持するために、車外側保持リップ124と車内側保持リップ125が形成されている。フランジ7がトリム部120に挿入されると、車外側保持リップ124と車内側保持リップ125の先端が撓んで、フランジ7のそれぞれの側面に圧接されてフランジ7を保持し、オープニングトリムウェザストリップ110を取付けることができる。
【0006】
オープニングトリムウェザストリップ110は、図8に示すように、押出成形により1本の押出品として形成され、接続部111で環状に接続される。そして、ドア開口部周縁に取付けられる。このオープニングトリムウェザストリップ110の中空シール部130は、ドアに当接するために、取付基部120の車外側側壁122の車外側面から車外側方向に膨出しており、乗員の自動車への乗降時に乗員の背中、腰、頭等が中空シール部130に接触し、その接触により中空シール部130の表面が、磨耗して、中空シール部130が破れるという問題があった。
【0007】
このため、図9に示すように、中空シール部130の膨出部分(図9のXで示す部分)にソリッドゴムの皮膜139を形成したものがある(例えば、特許文献1〜3参照。)。
この場合、ソリッドゴムの皮膜139は薄い方が、軽量化の要請にかなうがソリッドゴムの皮膜139が薄いと、長時間の使用により皮膜139が磨耗により破れ易くなり、皮膜139が破れると中空シール部130の本体の気泡が露出することとなる。
【0008】
一方、ソリッドゴムの皮膜139を厚くすると、その重量が増すとともに中空シール部130の剛性が高くなり、ドア開口部周縁6のコーナー部に取付けたときに、コーナー追従性が悪くなる。また、中空シール部130の屈曲の内周側でしわが発生する。さらに、中空シール部130の撓み荷重が高くなり、ドア閉時のドア閉力が増加する。
【0009】
また、図10に示すように、トリム部220と中空シール部230を有するオープニングトリムウェザストリップ210において、中空シール部230の表面にソリッドゴムの皮膜231を形成するとともに、トリム部220と中空シール部230の境界部分の凹部240をソリッドゴムで埋めるものがある。これにより、乗員の車室内への乗降時に中空シール部230と接触したとしても中空シール部230が引っ張られないようにして中空シール部230の破れを防止したものもある(例えば、特許文献4参照。)。
また、中空シール部の断面方向の一部にソリッドゴム薄膜を形成したものがある(例えば、特許文献5参照。)。
しかしこの場合でも、中空シール部230のソリッドゴムの皮膜231の厚さの関係において、薄くすると中空シール部が破れ易く、厚くするとドア閉時のドア閉力が増加してしまうという上記と同様な問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−174196号公報
【特許文献2】特開平8−118956号公報
【特許文献3】特開平9−2072号公報
【特許文献4】特開2007−283851号公報
【特許文献5】特開平11−301274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このため、本発明は、乗員の車室内への乗降時の接触によっても、中空シール部が磨耗し難く、かつ、全体の中空シール部の柔軟性を確保することができるオープニングトリムウェザストリップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車のドアと自動車の車体開口部周縁との間をシールし、車体開口部周縁に設けられているフランジに取付けられる取付基部と、取付基部に一体的に設けられ、ドアに当接してドアと車体開口部周縁との間をシールする中空シール部を有する自動車用オープニングトリムウェザストリップにおいて、
車体開口部周縁のリヤ側縦辺部に取付けられる中空シール部は、スポンジ材で形成された中空シール本体部と、中空シール本体部の表面にソリッド材で形成された中空シール表皮層を有し、中空シール表皮層の肉厚は、0.3mm〜0.5mmであることを特徴とする自動車用オープニングトリムウェザストリップである。
【0013】
請求項1の本発明では、オープニングトリムウェザストリップは、車体開口部周縁に設けられているフランジに取付けられる取付基部と、取付基部に一体的に設けられ、ドアに当接してドアと車体開口部周縁との間をシールする中空シール部を有する。このため、取付基部がフランジに取付けられると、中空シール部が確実にドアに当接して車体開口部周縁とドアとの間をシールすることができる。
【0014】
車体開口部周縁のリヤ側縦辺部に取付けられる中空シール部は、スポンジ材で形成された中空シール本体部と、中空シール本体部の表面にソリッド材で形成された中空シール表皮層を有し、中空シール表皮層の肉厚は、0.3mm〜0.5mmである。このため、中空シール部の柔軟性を阻害することなく、シール性を確保するとともに、中空シール表皮層の耐摩耗性を向上させることができる。また、自動車の乗員の車室内への乗降時に中空シール部と接触しても、充分な耐摩耗性を有して、中空シール表皮層が破れることがなく、美観に優れている。
【0015】
車体開口部周縁のリヤ側縦辺部に取付けられる中空シール部の中空シール表皮層の肉厚を、0.3mm〜0.5mmにした。このため、自動車の乗員の車室内への乗り降時に中空シール部と最も接触しやすい部分のみのソリッド材による中空シール表皮層の肉厚を厚くすることができ、耐摩耗性を向上させ、この部分の中空シール部を破れ難くすることができた。そして、車体開口部周縁の他の部分の中空シール部には、影響を与えず、その部分での中空シール部の剛性を上げることがないため、ドア閉時のドア閉力を上げることがなく、コーナー部への追従性も良く、コーナー部に取付けた中空シール部の屈曲内周側にしわが生じることがない。
なお、中空シール表皮層が0.3mm未満では、充分な耐磨耗性が得られなく、0.5mmを超える場合には、ソリッド材による中空シール部の剛性が大きくなり、ドア閉時のドア閉力を増加させてしまうこととなる。
【0016】
請求項2の本発明は、車体開口部周縁のリヤ側縦辺部以外の他の部分に取付けられる中空シール部の中空シール表皮層の肉厚は、0.2mm以下である自動車用オープニングトリムウェザストリップである。
【0017】
請求項2の本発明では、車体開口部周縁のリヤ側縦辺部以外の他の部分に取付けられる中空シール部の中空シール表皮層の肉厚を、0.2mm以下とすることにより、中空シール部の剛性を従来と同じように低く設定することができる。このため、自動車の乗員の車室内への乗降時に接触する可能性の低い部分では、中空シール部の表面ソリッド材による中空シール表皮層の肉厚を薄くする、又はソリッド材の存在をなくすことができる。その結果、ドア閉時にドア閉力を上げることがなく、コーナー部への追従性も良い。また、コーナー部に取付けた中空シール部の屈曲内周側にしわが生じることがない。
【0018】
請求項3の本発明は、中空シール表皮層は、中空シール部の断面において、少なくとも円弧状の突出頂部に形成されている自動車用オープニングトリムウェザストリップである。
【0019】
請求項3の本発明では、中空シール表皮層が、中空シール部の断面において、少なくとも円弧状の突出頂部に形成されているため、自動車の乗員の車室内への乗降時に、接触し易い中空シール部の円弧状の突出頂部を比較的に厚肉にソリッド材で覆うことができ、耐摩耗性を向上させることができる。円弧状の突出頂部のみにソリッド材を形成した場合には、中空シール部の他の部分の剛性が、それ程向上することなく、中空シール部全体の柔軟性を確保することができる。
【0020】
請求項4の本発明は、中空シール部の断面において、中空シール本体部の表面に、円弧状の突出頂部に形成された中空シール表皮層と同一の材料で形成されるとともに中空シール表皮層から連続して形成され、中空シール表皮層から離れるにつれて肉厚が徐々に減少する肉厚変化部が形成されている自動車用オープニングトリムウェザストリップである。
【0021】
請求項4の本発明では、中空シール本体部の表面に、円弧状の突出頂部に形成された中空シール表皮層と同一の材料で形成されるとともに中空シール表皮層から連続して形成され、中空シール表皮層から離れるにつれて肉厚が徐々に減少する肉厚変化部が形成されている。このため、肉厚変化部を介して中空シール表皮層と連続して成形することにより、押出成形時において、ソリッド材の押出量を精密に制御しなくても良く、ソリッド材で形成された中空シール表皮層と肉厚変化部を成形することが容易となる。
中空シール表皮層と中空シール本体部の表面との間に段差がなく、シール性を向上させることができる。
【0022】
請求項5の本発明は、t取付基部又は中空シール部には、車内に取付けられた内装部材の先端を覆うカバーリップが形成された自動車用オープニングトリムウェザストリップである。
【0023】
請求項5の本発明では、取付基部又は中空シール部には、車内に取付けられた内装部材の先端を覆うカバーリップが形成されたため、内装部材の先端をカバーリップで覆い、中空シール部の表皮層とカバーリップで車体開口部周縁のフランジ部分を覆い、見栄えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
自動車の乗員の車室内への乗降時に、最も接触し易い部位である車体開口部周縁のリヤ側縦辺部に取付けられるオープニングトリムウェザストリップの中空シール部は、スポンジ材で形成された中空シール本体部と、中空シール本体部の表面にソリッド材で形成された中空シール表皮層を有している。そして、この中空シール表皮層の肉厚を、0.3mm〜0.5mmと比較的厚肉に形成したため、この部位における中空シール表皮層の耐摩耗性を向上させることができる。また、車体開口部周縁のリヤ側縦辺部以外の他の部分の中空シール表皮層の肉厚をリヤ側縦辺部の肉厚に比べて0を含む0.2mm以下としたため、ドア閉時にオープニングトリムウェザストリップが環状に形成されたとしても、ドア閉力を上げることがなく、コーナー部への追従性も良く、コーナー部に取付けた中空シール部にしわが生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるオープニングトリムウェザストリップの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態であるオープニングトリムウェザストリップの中空シール部の中空シール表皮層が厚肉に形成された部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態であるオープニングトリムウェザストリップの中空シール部の中空シール表皮層が薄肉に形成された部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態であるオープニングトリムウェザストリップの中空シール部の中空シール表皮層がなく、中空シール本体部のみが形成された部分の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態であるオープニングトリムウェザストリップの断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態であるオープニングトリムウェザストリップの断面図である。
【図7】自動車のドアを開いた状態における後方から見た斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態であるドアオープニングトリムウエザストリップの正面図である。
【図9】従来のドアオープニングトリムウエザストリップを自動車の開口部周縁に取付けた状態における断面図である。
【図10】従来のドアオープニングトリムウエザストリップを自動車の開口部周縁に取付けた状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を、図1〜図8に基づき説明する。
図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態であり、図5は、本発明の第2の実施の形態であり、図6は、本発明の第3の実施の形態である。まず、本発明の第1の実施の形態を説明し、その後、本発明の第2と第3の実施の形態を説明する。
【0027】
図7に示すように、自動車の車体1は、ドア開口部を有し、そのドア開口部は、開閉部材であるドアにより開閉される。ドア開口部の周囲は、ドア開口部周縁6を形成し、ドア開口部周縁6は、車体1を構成するアウターパネル9とインナーパネル8等の先端が溶接されたフランジ7(図1参照)によって区画されている。フランジ7は、車体1のドア開口部周縁6の部位により、溶接されるパネルの数が2枚〜8枚程度まで変化する。
【0028】
このフランジ7にドア開口部周縁6とドアとの間をシールするトリムウエザストリップ10が装着される。トリムウエザストリップ10は、フロント側のドア開口部周縁6のみならず、リヤ側のドア開口部周縁6にも装着される。本発明の実施の形態においては、フロント側に取付けられたトリムウエザストリップ10について説明するが、リヤ側に取付けられたトリムウエザストリップ10についても同様である。
【0029】
トリムウエザストリップ10は、押出成形により直線状に成形される。この直線状に形成された1本のトリムウエザストリップ10は、図8に示すように、ドア開口部周縁の形状に沿って、環状とされ、フランジ7に装着される。装着は、トリムウエザストリップ10の一方の端末から順次、フランジ7に装着され、装着が完了すると、他方の端末がこの一方の端末と接合することとなる。この端末は、接続部11により型接合されて環状に形成されていてもよい。このように、直線状に形成されたトリムウエザストリップ10をドア開口部周縁6のコーナー部に沿って取付けるため、コーナー部においてトリムウエザストリップ10が曲げられてしわが発生しやすくなる。
また、トリムウエザストリップ10の端末同士を装着前に接着剤で接着して環状にしてもよい。
【0030】
次に、図1〜図4に基づき、本発明の第1の実施の形態のトリムウエザストリップ10の断面形状について説明する。
図1に示すように、トリムウエザストリップ10は、フランジ7に取付けられる、断面略U字形のトリム部(取付基部)20と、トリム部20から車外方向に一体的に形成され、ドアのドアフレーム膨出部と当接して、ドアとドア開口部周縁の間をシールする中空状の中空シール部30を有する。中空シール部30については後述する。
【0031】
トリム部20は、車外側側壁21、車内側側壁22と底壁23からなり、断面略U字形に形成されている。トリム部20の内部には、フランジ7を把持する強度を増加させるために、インサート部材27が埋設されている。インサート部材27は、板金や硬質樹脂で形成され、コーナー部に取付けられるときの柔軟性を確保するため、梯子状や、魚の骨状、ジグザグ状、骨片状等に形成されている。トリム部20はソリッド材、微発泡材又はスポンジ材で形成されている。
【0032】
車外側側壁21と車内側側壁22の内面にはそれぞれ長手方向に延設され、フランジ7を挟持する車外側保持リップ24と車内側保持リップ25が形成される。このため、車外側保持リップ24と車内側保持リップ25のそれぞれの先端がフランジ7の両側の側面にそれぞれ当接して、フランジ7を強固に保持する。このため、トリム部20が倒れることがなく、中空シール部30がドアフレーム2等に確実に当接して、シール性を確保することができる。
【0033】
本実施の形態における車外側保持リップ24は、押出成形後では、3本短く形成され、車内側保持リップ25は、長く1本で断面略U字形の内部に斜め方向に突出形成されている。このため、フランジ7は車外側側壁21の内面側に位置して、3本の車外側保持リップ24で安定して保持されている。さらに、車内側保持リップ25により、フランジ7が車外側側壁21側に押圧されて、フランジ7を安定して保持することができる。また、フランジ7の凹凸や曲がりに対しても確実に追従しフランジ7に当接し、シール性を確保することができる。
【0034】
トリム部20の底壁23の外面から車内方向にカバーリップ28が延設されている。カバーリップ28は、車内に取付けられた内装部材の先端を覆うことができ、内装部材とトリムウエザストリップ10との間の隙間を覆っている。なお、カバーリップ28は、後述する第2の実施の形態において、図5に示すように、中空シール部30側に設けても良い。この場合、ドア開口部周縁のフランジ7部分は、トリム部20の底壁23で覆い、その上部に位置する内接部材の端末をこのカバーリップ28で覆うことができ、見栄えを向上させることができる。また、カバーリップ28は、トリム部20と同様にソリッド材で形成してもよく、さらに、中空シール部30と同様にスポンジ材で形成してもよい。なお、トリム部20からカバーリップ28を延設した場合には、カバーリップ28の表面に、内装部材と対応した装飾シート29を設けてもよい。
【0035】
車外側側壁21の外面には、断面円弧状の中空シール部30が一体的に形成されている。中空シール部30は、第1側部シール壁31、第2側部シール壁32と当接部シール壁33から構成されている。第1側部シール壁31と第2側部シール壁32は、ソリッド材で一体的にトリム部20から車外方向に突出して形成されており、当接部シール壁33は、第1・第2側部シール壁31、32の先端を連結するように断面円弧状に突出して形成され、スポンジ材で形成されている。
【0036】
ドア閉時に当接部シール壁33は、ドアフレーム2及びドアパネルに当接してドア開口部周縁6とドアとの間をシールする。第1側部シール壁31と第2側部シール壁32は、ソリッド材で形成されているため、中空シール部30がドアの外周部に当接したときに、異常変形を防止して、シール性を確保できる。また、ドア開口部周縁6のコーナー部に対応させて、トリムウエザストリップ10を曲げた場合にも、中空シール部30がつぶれ変形することを防止することができる。
【0037】
ドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部に取付けられる中空シール部30の当接部シール壁33は、図2に示すように、スポンジ材で形成された中空シール本体部38と、中空シール本体部38の表面にソリッド材で形成された中空シール表皮層39から構成されている。 また、図3に示すようにドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部以外の部位に取付けられる中空シール部30も、スポンジ材で形成された中空シール本体部38と、その表面に上記したものよりも薄肉のソリッド材で形成された中空シール表皮層39を備えている。このため、トリムウエザストリップ10は全長にわたって中空シール部30の表面を平滑なソリッド層で覆うことができ、車外側からの見栄えを良くすることができる。また、ドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部の中空シール表皮層39の肉厚を他の部位に取付けられるものよりも厚肉にして耐摩耗性を向上させることができる。
【0038】
ドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部に取付けられる中空シール部30の中空シール表皮層39の肉厚は、0.4mmであり、ドア開口部周縁6の他の部分に取付けられる中空シール表皮層39の肉厚の0.2mmよりも厚肉に形成されている。図7において、フロント側のドア開口部周縁6ではBの部分、リヤ側のドア開口部周縁6ではCの部分の中空シール表皮層39の肉厚がそれぞれ0.4mmである。なお、それら厚肉部分の中空シール表皮層39の肉厚は0.3mm〜0.5mmで設定することができる。
【0039】
この部分は、乗員が自動車に乗降する際に、乗員の胴体(背中、腰)と頭部の部分が中空シール部30と接触し易い部分である。このBとCの部分の中空シール表皮層39の肉厚を0.4mmにすることで、乗員の乗降時に、接触し易い中空シール部30の部分をソリッド材の厚肉部分で覆うことができ、中空シール部30の耐摩耗性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記のように、厚肉部分の中空シール表皮層39の肉厚は、0.3mm〜0.5mmにすることができ、自動車の乗員の乗降時に中空シール部30と接触したとしても、充分な耐摩耗性を有して、中空シール表皮層39が破れることがなく、美観を維持することができる。なお、肉厚が0.3mm未満では、長時間の使用における充分な耐磨耗性が得られなく、肉厚が0.5mmを超える場合には、中空シール部30の剛性が大きくなり、ドア閉力を増加させることとなる。
【0041】
中空シール部30の厚肉の部分は、中空シール部30の断面において、当接部シール壁33の少なくとも円弧状の突出頂部(図1においてAで示す部分)に形成されている。当接部シール壁33の円弧状の突出頂部であるため、自動車の乗員の乗降時に、接触し易い中空シール部30の部分をソリッド材の厚肉部分で覆うことができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0042】
ドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部以外の他の部分の中空シール部30の中空シール表皮層39の肉厚は0.2mmと厚くないため、中空シール部30の1本分の長さ方向全体の剛性を上げることがない。このため、ドア閉力を上げることがなく、また、中空シール部30がドア開口部周縁6のコーナー部への追従性も良く、コーナー部に取付けた中空シール部30の屈曲内周側部分にしわが生じることがない。
【0043】
ドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部以外の他の部分に取付けられる中空シール部30の中空シール表皮層39の肉厚は、0を含む0.2mm以下に設定される。図3は、中空シール表皮層39の肉厚が0.2mmの場合の中空シール部30の拡大断面図であり、図4は、中空シール表皮層39の肉厚が0の場合、すなわち、ソリッド材が存在しない場合で、直接中空シール本体部38の表面が存在する場合の中空シール部30の拡大断面図である。
【0044】
自動車の乗員が乗降時に接触する可能性の低い部分であるドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部以外の他の部分の中空シール部30の中空シール表皮層39の肉厚を図3に示すように0.2mmにした場合には、中空シール部30の全体の剛性を上げることがなく、ドア閉力を上げることがない。また、コーナー部への追従性も良く、コーナー部に取付けた中空シール部30の屈曲内周側部分にしわが生じることがない。なお、ドア開口部周縁6のリヤ側縦辺部以外の他の部分の中空シール表皮層39を図4に示すようになくすことも可能であるが、0.1mm〜0.2mm程度に設定したほうがトリムウエザストリップ10の中空シール部30の全体に亘る見栄えを良くするとともに、遮音性の点で優れている。
【0045】
トリムウエザストリップ10において、中空シール部30は、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマーのスポンジ材で形成され、トリム部20の硬質材の部分は、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマーのソリッド材または微発泡材で形成されると、耐候性のよい製品を得ることができる。また、この場合は、トリムウエザストリップ10は全体としてオレフィン系でありそのまま一緒に粉砕等を行い、リサイクルして使用することができる。
【0046】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、トリム部20にインサートが埋設されているものを示したが、第2の実施の形態では、図5に示すように、トリムウエザストリップ10において、中空シール部30とトリム部20を有し、トリム部20にインサートを埋設せずに、フランジ7に両面接着テープで車外側側壁21を取付けたものである。第2の実施の形態のトリムウエザストリップ10では上記したようにカバーリップ28が中空シール部30側に設けられている点も上記の実施の形態と異なるが、中空シール部30の構成と、中空シール表皮層39の肉厚の寸法関係は上記の実施の形態と同じである。
【0047】
次に、第3の実施の形態について図6に基づき説明する。第3の実施の形態は、中空シール部30の表面の形状が異なるので、異なる部分のみ説明し、同様な部分の説明は省略する。
第3の実施の形態においては、中空シール本体部38の表面に、中空シール表皮層39が形成されている点は第1の実施の形態と同様であるが、断面形状において、中空シール表皮層39から連続して中空シール本体部38の表面に肉厚変化部40が形成されている点が異なる。
【0048】
肉厚変化部40は、中空シール表皮層39と同一の材料であるソリッド材で形成されている。肉厚変化部40は、中空シール表皮層39の両方の端部から、図6に示すように、中空シール部30の根元部分である第1側部シール壁31と第2側部シール壁32の方向に延設され、さらに、肉厚変化部40の両方の端部に連続して、中空シール表皮層39と同一の材料であるソリッド材で形成された薄肉部41が形成されている。
【0049】
図6において、中空シール表皮層39が形成されている部分をaで示し、肉厚変化部40が形成されている部分をbで示し、薄肉部41が形成されている部分をcで示す。そして、ソリッド材で覆われている部分の全体をAで示す。このようにして、中空シール本体部38の表面の外側から見える部分をソリッド材で覆うことができる。なお、薄肉部41は省略することもできる。
【0050】
肉厚変化部40は、中空シール表皮層39との連続部分から、薄肉部41の連続部分にかけて徐々に肉厚が減少して形成されている。例えば、中空シール表皮層39は、肉厚が0.4mmで形成され、薄肉部41は、肉厚が0.2mmで形成され、肉厚変化部40は、肉厚が0.4mmから0.2mmに変化している。
【0051】
このため、中空シール表皮層39と、肉厚変化部40と、薄肉部41(形成しない場合もある)とを連続して成形することにより、押出成形時において、ソリッド材の押出量を精密に制御しなくても良く、ソリッド材で形成された中空シール表皮層39と、肉厚変化部40と、薄肉部41とを成形することが容易となる。
また、中空シール表皮層39と中空シール本体部38の表面との間に段差がなく、シール性を向上させることができる。
【0052】
次に、トリムウエザストリップ10の製造方法を説明する。
このトリムウエザストリップ10は、押出成形により成形され、トリム部20を構成するソリッドゴム、インサート部材27と中空シール部30を構成するスポンジゴムを押出成形機で一体に押出すことができる。
【0053】
中空シール部30の中空シール表皮層39の肉厚を変化させるには、ソリッドゴムを押出しする押出成形機のダイス部分において、スライドダイスを使用してソリッドゴムが流出する開口部の大きさを変化させて、所定の部分の中空シール表皮層39の肉厚を厚く形成し、さらに肉厚変化部40と、薄肉部41とを形成している。
その後、通常の方法により加硫を行い、形状が安定した状態で1本分の所定長さに切断されてトリムウエザストリップが製造される。
【符号の説明】
【0054】
6 ドア開口部周縁
7 フランジ
10 ドアオープニングトリムウエザストリップ
20 トリム部(取付基部)
21 車外側側壁
22 車内側側壁
23 底壁
30 中空シール部
38 中空シール本体部
39 中空シール表皮層
40 肉厚変化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアと自動車の車体開口部周縁との間をシールし、上記車体開口部周縁に設けられているフランジに取付けられる取付基部と、該取付基部に一体的に設けられ、上記ドアに当接して上記ドアと上記車体開口部周縁との間をシールする中空シール部を有する自動車用オープニングトリムウエザストリップにおいて、
上記車体開口部周縁のリヤ側縦辺部に取付けられる上記中空シール部は、スポンジ材で形成された中空シール本体部と、該中空シール本体部の表面にソリッド材で形成された中空シール表皮層を有し、該中空シール表皮層の肉厚は、0.3mm〜0.5mmであることを特徴とする自動車用オープニングトリムウエザストリップ。
【請求項2】
上記車体開口部周縁のリヤ側縦辺部以外の他の部分に取付けられる上記中空シール部の中空シール表皮層の肉厚は、0.2mm以下である請求項1に記載の自動車用オープニングトリムウエザストリップ。
【請求項3】
上記中空シール表皮層は、上記中空シール部の断面において、少なくとも円弧状の突出頂部に形成されている請求項1又は請求項2に記載の自動車用オープニングトリムウエザストリップ。
【請求項4】
上記中空シール部の断面において、上記中空シール本体部の表面に、円弧状の突出頂部に形成された上記中空シール表皮層と同一の材料で形成されるとともに上記中空シール表皮層から連続して形成され、上記中空シール表皮層から離れるにつれて肉厚が徐々に減少する肉厚変化部が形成されている請求項3に記載の自動車用オープニングトリムウエザストリップ。
【請求項5】
上記取付基部又は上記中空シール部には、車内に取付けられた内装部材の先端を覆うカバーリップが形成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用オープニングトリムウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−149838(P2010−149838A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167571(P2009−167571)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】