説明

自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造

【課題】後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMラジオ放送波用のアンテナを有し、ルーフ部の開口面積が大きいサンルーフ窓を有する場合であっても、前記アンテナの受信性能に悪影響を及ぼさない車体構造を提供する。
【解決手段】車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部を有するルーフパネルを設け、該ルーフパネルの外周形状と一致する金属製の枠形状のガラス支持パネル上の上部全面にルーフガラスを重ねて固定した後、ガラス支持パネルを前記ルーフパネル枠上に重ねて連結固定すると共にアースし、前記ルーフパネル、またはガラス支持パネルの最後部側の外周枠の内側端部から、後部窓ガラスのフランジ枠の内側上端までの金属部分の幅を300mm以上、400mm以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にアンテナを有し、ルーフ部の開口面積が大きい、または複数のサンルーフ窓を有する自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の屋根部に開放感を与えるための開口部としてガラスパネルを用いたサンルーフが普及しつつある。サンルーフは、開閉できない嵌め殺し窓タイプのものや、前後方向にサンルーフ窓ガラスをスライド移動させて開放できるようにしたもの、さらに窓部の一部を上方に持ち上げてチルトアップするもの等が知られているが、サンルーフ窓の開口部の面積が大きくなると、より開放感が得られるため、大面積化の傾向にある。
【0003】
一方、自動車の後部窓ガラスには中央部の主領域に防曇用加熱線条が設けられ、さらにその余白部にアンテナパターンが設けられることが多いが、特に、AM/FMラジオ放送波受信用のアンテナを設ける場合には、受信特性上有利な上部余白部に用いられるのが一般的である。
【0004】
サンルーフのルーフ開口部が前後方向に2箇所設けられた特許文献の例としては、例えば、特開2002−127752号公報に、前席側にチルトアップ式サンルーフ、後部座席側にスライド式サンルーフとが前後に連設されたツインタイプのサンルーフが開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−127752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された発明については、開放感はあるものの、開口部を除いた後部窓側の金属製のルーフパネル幅が狭いために車両がFM帯の電波を十分に受信できなくなり、後部窓ガラスのデフォッガの上部に設けたAM/FMアンテナの受信性能が低下してしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわち、後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMラジオ放送波用のアンテナを有し、ルーフ部の開口面積が大きい、または前後方向に複数のサンルーフ窓を有する場合に、デフォッガの上部余白部に設けた前記自動車用ガラスアンテナの受信性能に悪影響を及ぼさない車体構造を提供する。
【0007】
すなわち、本発明は、後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMアンテナと、ルーフ部にサンルーフ窓を有する自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造において、車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部を有するルーフパネルを設け、該ルーフパネルの上部全面にルーフガラスを重ねて固定し、前記ルーフパネルの最後部側の外周枠部の内側端部から、後部窓ガラスのフランジ枠の内側上端までの金属部分の幅を300mm以上400mm以下としたことを特徴とする自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0008】
あるいはまた、本発明は、前記ルーフパネルの後部側の開口部の4辺の長さの合計に相当する波長の周波数がFM放送波帯の波長の範囲外とし、該開口部がアンテナとして作用しFM放送波帯の電波に共振して電波を吸収しないようにしたことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0009】
あるいはまた、本発明は、前記ルーフパネルの上部に配設するルーフガラスを各開口部を覆うように開口部毎に複数枚並設し、前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスを連続したガラス面状となるように並設し、ルーフパネル上にルーフガラスを固定したことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0010】
あるいはまた、本発明は、前記前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスの各ガラス板間にガラス板と同厚みの狭幅の樹脂パネルまたは樹脂モールを介して並設したことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0011】
あるいはまた、本発明は、後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMアンテナと、ルーフ部にサンルーフ窓を有する自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造において、車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部を有するルーフパネルを設け、該ルーフパネルの外周形状と一致する金属製の枠形状のガラス支持パネル上の上部全面にルーフガラスを重ねて固定した後、ガラス支持パネルを前記ルーフパネル枠上に重ねて連結固定すると共にアースし、前記ルーフパネル、またはガラス支持パネルの最後部側の外周枠の内側端部から、後部窓ガラスのフランジ枠の内側上端までの金属部分の幅を300mm以上、400mm以下としたことを特徴とする自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0012】
あるいはまた、本発明は、前記ガラス支持パネルの後部側の開口部の4辺の長さの合計に相当する波長の周波数がFM放送波帯の波長の範囲外とし、該開口部がアンテナとして作用しFM放送波帯の電波に共振して電波を吸収しないようにしたことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0013】
あるいはまた、本発明は、前記ガラス支持枠の上部に配設するルーフガラスを各開口部を覆うように開口部毎に複数枚並設し、前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスを連続したガラス面状となるように並設し、ガラス支持枠上にルーフガラスを固定したことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0014】
あるいはまた、本発明は、前記前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスの各ガラス板間にガラス板と同厚みの狭幅の樹脂パネルまたは樹脂モールを介して並設したことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0015】
あるいはまた、本発明は、前記ガラス支持パネルと前記ルーフパネルとのアース位置を、ガラス支持パネルの最後部側の外周枠コーナー部としたことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0016】
あるいはまた、本発明は、前記ガラス支持パネルに2つの開口窓を設け、前側の開口部を可動式の開閉窓とし、後側の開口部を固定式の嵌め殺し窓としたことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0017】
あるいはまた、本発明は、前記可動式のルーフガラスを前後に駆動するモーターをガラス支持パネルの最後部の枠部の下面に取り付けた場合に、前記ルーフパネルの最後部の枠部の前端を下方、かつモーターを覆うように折り曲げた断面L字形状の遮蔽部を備えたことを特徴とする上述の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMラジオ放送波用のアンテナを有する場合に、開口部を除いた後部窓側の金属製のルーフパネル幅を広く確保するようにしたので、前記デフォッガの上部余白部に設けたAM/FMラジオ放送波の受信性能に悪影響を及ぼさず、受信性能の低下を防止することができる。
【0019】
さらに、ルーフ窓ガラスを自動で開閉させるためのモーターをガラス支持パネルの後部窓ガラスに近い位置に取り付けた場合に、該モーターを覆うようにルーフパネルの端部を折り曲げることにより、あるいはルーフパネルに遮蔽板を取り付けて前記モーターを覆うようにしたことによって、モーターから発生する輻射ノイズを遮蔽して、後部窓ガラスのアンテナの受信特性に悪影響を及ぼさないようにすることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、図1、図7に示したように、後部窓ガラス3のデフォッガ4の上部余白部にAM/FMアンテナ5と、ルーフ部にサンルーフ窓を有する自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造である。
【0021】
第1の実施の形態は、図4、図5に示したように、車体ボディに連結された金属製のルーフパネル10に、サンルーフのルーフガラス板を直接取り付けるようにした場合の構成である。
【0022】
すなわち、車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部21を有するルーフパネル10を設け、該ルーフパネル10の各開口部21を覆うようにその上部全面に複数枚のルーフガラスをルーフ上面の略全体面を覆うように並設して、ルーフパネル10上に固定し、前記ルーフパネル10の最後部側の外周枠部の内側端部から、後部窓ガラス3のフランジ枠6の内側上端までの金属部分の幅を300mm以上400mm以下としたものである。
【0023】
これによって、ルーフパネル10の開口面積を広く維持しつつ、後部窓ガラス3に設けたFM放送波用のガラスアンテナ5の受信性能に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0024】
また、前記ルーフパネル10の後部側に設けた開口部の内側の4辺の合計長さに相当する波長となる周波数が76MHz〜108MHzのFM放送波帯の波長である2780〜3950mmの範囲外、すなわち少しマージンを考慮して2700mm以下、かつ4030mm以上とした。
【0025】
このように開口部の4辺の長さを制限し、調整することによって閉ループ形状となる該開口部がFM放送波帯の電波に共振せず、開口部によって電波が吸収されてしまわないようにすることができる。
【0026】
さらに、図4に示したように、本発明の車体構造は、前記ルーフパネル10の各開口部を覆うようにその上部に複数枚のルーフガラスをルーフ上面の略全体面を覆うように並設して、ルーフパネル10上に固定し、並設した複数枚のルーフガラスの前方側に前部窓ガラス2、後方側に後部窓ガラス3をそれぞれ並設して、ガラス面が連続面状となるように設けるようにした。
【0027】
さらにまた、前部窓ガラス2とルーフガラス間、ルーフガラスと後部窓ガラス3間にガラス板と同厚みの狭幅の樹脂パネルまたは樹脂モールを介して各ガラス板を並設するようにすることもできる。
【0028】
第2の実施の形態は、図1〜図3に示したように、上面にルーフガラスを重ねて接着し一体化したガラス支持パネル20を、車体ボディに連結された金属製のルーフパネル10上に重ねて連結固定した場合の構成である。
【0029】
すなわち、車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部を有するルーフパネル10を設け、該ルーフパネル10の最外周形状と略一致する金属製の枠形状のガラス支持パネル20上の上部全面にルーフガラスを重ねて固定した後、ガラス支持パネル20を前記ルーフパネル10枠上に重ねて連結固定すると共にアースし、前記ルーフパネル10、またはガラス支持パネル20の最後部側の外周枠の内側端部から、後部窓ガラス3のフランジ枠の内側の上端までの金属部分の幅を300mm以上、400mm以下としたものである。
【0030】
これによって、ガラス支持パネル20の開口面積を広く維持しつつ、後部窓ガラス3に設けたFM放送波用のガラスアンテナ5の受信性能に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0031】
また、前記ガラス支持パネル20の後部側に設けた開口部の内側の4辺の合計長さに相当する波長となる周波数が76MHz〜108MHzのFM放送波帯の波長である2780〜3950mmの範囲外、すなわち少しマージンを考慮して2700mm以下、かつ4030mm以上とした。
【0032】
このように開口部の4辺の長さを制限し、調整することによって閉ループ形状となる該開口部がFM放送波帯の電波に共振せず、開口部によって電波が吸収されてしまわないようにすることができる。
【0033】
さらに、前記ガラス支持枠の上部に配設するルーフガラスを各開口部を覆うように開口部毎に複数枚並設し、前部窓ガラス2、ルーフガラス、後部窓ガラス3をほぼ連続したガラス面状となるように並設して、ガラス支持パネル20上に複数枚のルーフガラスを固定し、ガラス面が連続面状となるように設けた。
【0034】
また、前記前部窓ガラス2、ルーフガラス、後部窓ガラス3の各ガラス板間にガラス板と同厚みの狭幅の樹脂パネルまたは樹脂モールを介して並設した。
【0035】
さらに、図6に示すように、前記ガラス支持パネル20と前記ルーフパネル10との連結によるアース位置を、ガラス支持パネル20の最後部側の外周枠コーナー部とし、アース位置を最後部側の外周枠の両コーナー部の2箇所に設けるのが最も好ましいが、さらに追加してアース位置を設けることもできる。
【0036】
さらにまた、図1に示すように、前記ガラス支持パネル20に2つの開口窓を設け、前側の開口部を可動式の開閉窓とし、後側の開口部を固定式の嵌め殺し窓とした。可動式の開口窓ガラスはルーフの上を後方にスライド移動させるものであるが、ルーフの下部側をスライド移動させるようにすることもできる。
【0037】
前記可動式の開口窓ガラスは、手動にて開閉するものと、モーターを使って開閉するものとがあり、モーターによって開閉させる場合においてモーターの取付位置が前方、後方の二通りあり、スライド移動する窓ガラス等の重量や、モーターの性能等による負荷によって、複数個のモーターを使用する場合もある。
【0038】
図3に示すように、前記可動式のルーフガラスを前後に駆動するモーター7をガラス支持パネル20の最後部の枠部の下面に取り付けた場合に、前記ルーフパネル10の最後部の枠部の前端を下方、かつモーター7を覆うように折り曲げるか、あるいは前記ルーフパネル10の最後部の枠部の前端に、断面L字形状の遮蔽部11を設けるようにした。これによって、モーター7から発生する輻射ノイズを遮蔽して後部窓のアンテナ5に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0039】
前記ルーフパネル10、またはガラス支持パネル20の最後部側の外周枠の内側端部から、後部窓ガラス3のフランジ枠6の内側の上端までの金属部分の幅を300mm以上としたのは、従来の通常の幅のルーフ長さのアンテナ利得から1dB下がった位置までを実用レベルと考えると、図8に示すグラフの300mm以上あれば良いことになる。
【0040】
一方、400mm以下としたのは、図6において、後部窓側の前記ガラス支持パネル20の後部側に設けた開口部21の内側の4辺b、c、d、eの合計長さに相当する波長となる周波数が、76MHz〜108MHzのFM放送波帯の波長の範囲外とするためである。
【0041】
すなわち、FMラジオ放送波の国内、国外帯域76〜108MHzにおいて、後部窓側の開口部21の4辺の長さの合計長さを該範囲の波長の範囲である2780〜3950mmの範囲内に入らないように、該開口部21の4辺の長さを調整する必要があるためである。これによって閉ループ形状となる該開口部21がFM放送波帯の電波に共振せず、該開口部21によって電波が吸収されてしまわないようにすることができる。
【0042】
尚、後部側に設けた開口部21の4辺の長さの合計長さが、前記範囲外に少しマージンを考慮して設けた2700mm以下、かつ4030mm以上とすると、4030mm以上の場合は、一般的な自動車のルーフ全体の寸法からみて該開口部の面積が大きすぎて非現実的であり、実用的ではない。
【0043】
さらに、後部側に設けた開口部の4辺の長さの合計長さが2700mm以下の場合においても、該開口部21の面積をできる限り大きくするためには、該開口部の4辺の長さの合計長さを2700mm以下で維持しつつ、該開口部の前後方向(縦方向)の長さcと幅方向(横方向)の長さbの比b/cが1〜2.5程度とするのが望ましい。
【0044】
例えば、前後方向の長さが500mmであれば、幅方向の長さは850mmとなり、前後方向の長さが600mmであれば、幅方向の長さは750mmとなる。
【実施例】
【0045】
図7は、後部窓ガラス3にデフォッガ4を有し、その上部余白部にはAMラジオ兼FMラジオ放送波を受信するAM/FMアンテナ5が設けられるとともに、ルーフ部には2つの開口部21、21を設けた本発明の車体構造を有する自動車の全体斜視図である。
【0046】
[実施例1]
本発明の車体構造は、図1〜図3に示したように、2つの開口部を有する枠状のガラス支持パネル20の上面に可動ルーフガラス1と固定ルーフガラス1’を並べてガラス支持パネル20上に重ねて配置し、該ガラス支持パネル20を、車体ボディに連結された金属製のルーフパネル10上に重ねて連結固定した場合の構成である。
【0047】
すなわち、車体ボディに連結された金属製ルーフに矩形の開口部を有するルーフパネル10を設ける。該ルーフパネル10は、左右一対の側部パネルの頂辺部同士を連結し固定する。
【0048】
該ルーフパネル10の最外周形状と略一致し、2つのルーフ用の開口部を有する金属製の枠形状のガラス支持パネル20を用意する。該ガラス支持パネル20の上部に前部窓ガラス2側より狭幅の固定ガラス1”、可動式サンルーフ用の可動ルーフガラス1、固定ルーフガラス1’を順次並べて配設した後、前記ガラス支持パネル20を前記ルーフパネル10枠上に重ねて連結固定するとともに、ガラス支持パネル20を車体ボディと一体となったルーフパネル10にアースする。
【0049】
図2の寸法aに示したように、前記ガラス支持パネル20の最後部側の外周枠の内側端部から、後部窓ガラス3のフランジ枠6の内側の上端までの金属部分の幅aを300mmとした。
【0050】
前記アース位置22は、図3、図6に記載されている通りのガラス支持パネル20の最後部側の外周枠コーナー部であり、ガラス支持パネル20とルーフパネル10の2枚の金属製のパネルを重ね、ボルトとナットの締付けによって行った。
【0051】
固定ガラス板1’、1”、および可動ガラス板1は、その周端エッジ部を樹脂製モールによって保護し、可動ガラス板1については、図示しないが樹脂モールやスライド移動機構等が設けられている。
【0052】
前記ガラス支持パネル20の後部側の開口部21の4辺b、c、d、eの各辺の長さは、それぞれ800mm、550mm、800mm、550mmの合計2700mmとしたので、この長さに相当する波長の周波数111.1MHzがFM放送波帯の波長の範囲外となり、該開口部21がFM放送波帯の電波と共振せず、開口部21によって電波が吸収されることがない。
【0053】
また、前記ガラス支持枠は2つの開口部21、21を有するが、前席側の開口部の上部に配設するルーフガラスは、該開口部を覆うように図示しないスライド移動機構によってスライド移動可能に構成されている。
【0054】
一方、後部座席側の上部位置の開口部を覆う固定ルーフガラス1’は、可動ルーフガラス1の後端辺から後部窓ガラス3の上端辺近傍まで配設固着されて、前記閉じられた状態の可動ガラス板1と前部窓ガラス2間には、狭幅の固定ルーフガラス1”を配設固着したので、前部窓ガラス2から後部窓ガラス3まで、連続したガラス面状となり、上部全面が一種の全面ガラス張り状態となる。
【0055】
勿論、前記前部窓ガラス2、ルーフガラス、後部窓ガラス3の各ガラス板の周端縁には、必要箇所に樹脂モールを設け、ガラス板の端部の保護を図った。
【0056】
尚、前記ガラス支持パネル20のスライド移動自在な前部側の開口部の4辺b’、c’、d’、e’の各辺の長さは、それぞれ600mm、800mm、600mm、800mm、前部側の可動ルーフガラス1の寸法は縦650mm、横850mmとして、前部側の開口部と後部側の開口部間の間隔を150mmとした。
【0057】
また、可動ルーフガラス1と前部窓ガラス2間に設けた狭幅の固定ルーフガラス1”の寸法を、縦250mm、横850mmとした。
【0058】
さらに、図3に示すように、前記可動式のルーフガラス1を前後に駆動するモーター7をガラス支持パネル20の最後部の枠部の下面に取り付け、前記ルーフパネル10の最後部の枠部の前端を下方、かつモーター7を覆うように断面L字形状に折り曲げた遮蔽部10’とし、該遮蔽部によってモーター7から発生する輻射ノイズを遮蔽して後部窓のアンテナ5に悪影響を及ぼさないようにした。
【0059】
これによって、ガラス支持パネル20の開口面積を広く維持しつつ、後部窓ガラス3に設けたFM放送波用のガラスアンテナ5の受信性能に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0060】
[実施例2]
図4、図5に示すように、車体ボディに連結された金属製のルーフパネル10に、サンルーフのルーフガラス板を直接取り付けた嵌め殺しタイプの車体構造である。
【0061】
すなわち、車体ボディに連結された金属製ルーフパネル10の中央に2つの開口部を設け、該ルーフパネル10の前部側開口部を覆う前部側の固定ルーフガラス1’と、後部側開口部を覆う後部側の固定ルーフガラス1’を、金属製ルーフパネル10の上面側の略全面を覆うように前後方向に並設して固定した。
【0062】
前部側の固定ルーフガラスは、前部窓ガラス2の上端辺と樹脂モール材を介してほぼ当接状態にあり、後部側の固定ルーフガラス1’についても、後部窓ガラス3の上端辺と樹脂モールを介してほぼ当接状態にあり、さらにルーフパネル10上の2枚のガラス板間に樹脂モールを介して配設した。
【0063】
さらにまた、前記ルーフパネル10の最後部側の外周枠部の内側端部から、後部窓ガラス3のフランジ枠6の内側上端までの金属部分の幅、及び前記ガラス支持パネル20の2つの開口部の寸法は、それぞれ実施例1と同一である。
【0064】
これによって、ルーフパネル10の開口面積を広く維持しつつ、後部窓ガラス3に設けたFM放送波用のガラスアンテナ5の受信性能に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0065】
また、前記ルーフパネル10の後部側に設けた開口部の内側の4辺の合計長さに相当する波長となる周波数が実施例1と同様に、76MHz〜108MHzのFM放送波帯の波長の範囲外となるので、閉ループ形状となる該開口部がFM放送波帯の電波に共振せず、開口部によって電波が吸収されないようにすることができる。
【0066】
[比較例1]
従来の自動車のルーフパネル10に大きな開口部を設けた例であり、開口部の後部側の枠の内側先端から、後部窓ガラス3のフランジ枠6の内側上端までの距離aが200mmである。
【0067】
このとき後部窓ガラス3のデフォッガ4の上部余白部に設けたAM/FMアンテナ5の受信利得は、図8に示したように垂直偏波で−2.2dB、水平偏波で−10.9dBとなり、標準的なサンルーフを有する自動車と比べて垂直偏波、水平偏波共に3dB以上の降下が見られ、実用レベルでないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
後部窓ガラス3のデフォッガ4の上部余白部にAM/FMラジオ放送波用のアンテナ5を有する自動車であって、車内にいても開放感を大幅に向上させるために、ルーフ部の開口面積を大きくしたり、あるいは、前後方向に複数のサンルーフ窓を設けたりしても、前記デフォッガ4の上部余白部に設けたAM/FMラジオ放送波の受信性能に悪影響を及ぼさず、受信性能を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例1を示す平面図。
【図2】本発明の実施例1を示すA−A視の側断面図。
【図3】本発明の実施例1を示すB−B視の側断面図。
【図4】本発明の実施例2を示す平面図。
【図5】本発明の実施例2を示すA−A視の側断面図。
【図6】ガラス支持パネルとアース位置を説明する図
【図7】本発明の車体構造を用いた自動車の全体斜視図。
【図8】ガラス支持パネルの最後部の開口部内側前端から後部窓のフランジ上端までの金属部分の幅aとアンテナ利得の関係。
【符号の説明】
【0070】
1 可動ルーフガラス
1’、1” 固定ルーフガラス
2 前部窓ガラス
3 後部窓ガラス
4 デフォッガ
5 AM/FM用アンテナ
6 後部窓フランジ枠
7 モーター
10 ルーフパネル
11 遮蔽部材
20 ガラス支持パネル
21 開口部
22 アース位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMアンテナと、ルーフ部にサンルーフ窓を有する自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造において、
車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部を有するルーフパネルを設け、該ルーフパネルの上部全面にルーフガラスを重ねて固定し、前記ルーフパネルの最後部側の外周枠部の内側端部から、後部窓ガラスのフランジ枠の内側上端までの金属部分の幅を300mm以上400mm以下としたことを特徴とする自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項2】
前記ルーフパネルの後部側の開口部の4辺の長さの合計に相当する波長の周波数がFM放送波帯の波長の範囲外とし、該開口部がアンテナとして作用しFM放送波帯の電波に共振して電波を吸収しないようにしたことを特徴とする請求項1記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項3】
前記ルーフパネルの上部に配設するルーフガラスを各開口部を覆うように開口部毎に複数枚並設し、前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスを連続したガラス面状となるように並設し、ルーフパネル上にルーフガラスを固定したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項4】
前記前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスの各ガラス板間にガラス板と同厚みの狭幅の樹脂パネルまたは樹脂モールを介して並設したことを特徴とする請求項3記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項5】
後部窓ガラスのデフォッガの上部余白部にAM/FMアンテナと、ルーフ部にサンルーフ窓を有する自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造において、
車体ボディに連結された金属製ルーフの中央に少なくとも1つ以上の開口部を有するルーフパネルを設け、該ルーフパネルの外周形状と一致する金属製の枠形状のガラス支持パネル上の上部全面にルーフガラスを重ねて固定した後、ガラス支持パネルを前記ルーフパネル枠上に重ねて連結固定すると共にアースし、前記ルーフパネル、またはガラス支持パネルの最後部側の外周枠の内側端部から、後部窓ガラスのフランジ枠の内側上端までの金属部分の幅を300mm以上、400mm以下としたことを特徴とする自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項6】
前記ガラス支持パネルの後部側の開口部の4辺の長さの合計に相当する波長の周波数がFM放送波帯の波長の範囲外とし、該開口部がアンテナとして作用しFM放送波帯の電波に共振して電波を吸収しないようにしたことを特徴とする請求項5記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項7】
前記ガラス支持枠の上部に配設するルーフガラスを各開口部を覆うように開口部毎に複数枚並設し、前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスを連続したガラス面状となるように並設し、ガラス支持枠上にルーフガラスを固定したことを特徴とする請求項5または6に記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項8】
前記前部窓ガラス、ルーフガラス、後部窓ガラスの各ガラス板間にガラス板と同厚みの狭幅の樹脂パネルまたは樹脂モールを介して並設したことを特徴とする請求項7記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項9】
前記ガラス支持パネルと前記ルーフパネルとのアース位置を、ガラス支持パネルの最後部側の外周枠コーナー部としたことを特徴とする請求項5乃至8のいづれかに記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項10】
前記ガラス支持パネルに2つの開口窓を設け、前側の開口部を可動式の開閉窓とし、後側の開口部を固定式の嵌め殺し窓としたことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。
【請求項11】
前記可動式のルーフガラスを前後に駆動するモーターをガラス支持パネルの最後部の枠部の下面に取り付けた場合に、前記ルーフパネルの最後部の枠部の前端を下方、かつモーターを覆うように折り曲げた断面L字形状の遮蔽部を備えたことを特徴とする請求項10記載の自動車用ガラスアンテナ性能を考慮した車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−274608(P2009−274608A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128220(P2008−128220)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】