説明

自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト

【課題】フロアスペーサとフロアダクトの床面への配置作業が簡単になり、しかも、フロアスペーサの座屈(部分的な変形)を抑えることができ、かつ、部品点数を削減することができ、また、吸音性を高めることができる自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの提供を目的とする。
【解決手段】合成樹脂製のフロアダクト11は、管状のダクト本体部13の側部17、18から外方へ突出した板状部21、23を備える構成とし、フロアスペーサ31、33は、ダクト本体部13の側部17、18にフロアダクト11と一体に設けた多孔質発泡体で構成し、フロアダクトの板状部21、23をフロアスペーサ31、33内に埋設し、あるいはフロアスペーサ31、33の上面に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアスペーサとフロアダクトが一体となった自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の床面には図13に示すように、フロアパネル51とフロアカーペット55間にフロアスペーサ61とフロアダクト65が別々に配置されている。図14は、従来のフロアスペーサ61とフロアダクト65の一例の斜視図である。前記フロアスペーサ61は、自動車の床面を平坦にするためにフロアパネル51上に載置される板状のものであり、ポリウレタン発泡体等からなる。一方、フロアダクト65は、合成樹脂製の管状体で構成され、一端66が車両のエアコンに接続され、他端67が車内の空気吹き出し口等と接続されて車内の空調用に用いられる。なお、前記フロアダクト65とフロアパネル51間には、自動車の振動等によりフロアダクト65とフロアパネル51が擦れて異音が発生するのを防止するため、あるいはフロアダクト65内を通る温調空気により生じる結露の防止等のためにフェルトやポリウレタン発泡体等の緩衝材68が設けられている。
【0003】
しかし、従来においてはフロアスペーサとフロアダクトは分離した別体で構成されているため、自動車の床面への配置作業が面倒であった。また、ポリウレタン発泡体の単体からなるフロアスペーサは、剛性が低いため、乗員の足で踏まれた際などに座屈(部分的に変形)する問題がある。そこで、ポリウレタン発泡体に樹脂製板状体を積層することにより、耐変形性を高めることが行われている。しかし、ポリウレタン発泡体と樹脂製板状体の積層一体化作業が余分に必要になる問題や、部品点数が増加してコストが嵩む問題がある。また、車外の騒音を車内に伝わり難くするため、フロアスペーサには良好な吸音性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−181468号公報
【特許文献2】特開2007−83904号公報
【特許文献3】特開2002−225538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、自動車の床面へのフロアスペーサとフロアダクトの配置作業が簡単になり、しかも、フロアスペーサの座屈(部分的な変形)を抑えることができ、かつ、部品点数を削減することができ、また、吸音性を高めることができる自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、自動車の床面に配置されるフロアダクトとフロアスペーサとからなり、前記フロアダクトは、管状のダクト本体部の側部から外方へ突出した板状部を備え、前記フロアスペーサは、前記ダクト本体部の側部に前記フロアダクトと一体に設けられた多孔質発泡体からなり、前記フロアダクトの板状部は、前記フロアスペーサ内に埋設され、あるいは前記フロアスペーサの上面に位置することを特徴とする自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトに係る。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記多孔質発泡体がポリウレタン発泡体からなり、前記フロアダクトの板状部に、発泡体侵入用開口を一部に有する係合用中空部が形成され、前記発泡体侵入用開口から前記係合用中空部内に前記フロアスペーサのポリウレタン発泡体が侵入していることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2において、前記フロアダクトの片面に、前記ダクト本体部内と前記係合用中空部内を通じる連通部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記フロアダクトの板状部の片面に、中空室からなる吸音部が形成され、前記吸音部が前記フロアスペーサから露出していることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記ダクト本体部の底部の外面に、多孔質発泡体からなる底部外面部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、フロアスペーサとフロアダクトが一体となっているため、自動車の床面にフロアスペーサとフロアダクトを配置する際の作業を簡単、迅速に行うことができる。しかも、フロアスペーサは、ダクト本体部の側部から外方へ突出した板状部が埋設され、又は上面に位置するため、板状部によってフロアスペーサの座屈を抑えることができる。さらに、フロアスペーサに埋設され、あるいは上面に位置する板状部がダクトの一部であるため、部品点数を削減することができ、製品コストを下げることが可能である。また、フロアスペーサを構成する多孔質発泡体は無数の気泡(セル)を有するため、フロアスペーサの吸音性を良好にすることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、板状部に形成された係合用中空部にフロアスペーサのポリウレタン発泡体が侵入しているため、板状部とフロアスペーサが確実に結合され、フロアスペーサが分離するおそれがない。
【0013】
請求項3の発明によれば、連通部と係合用中空部のポリウレタン発泡体を介してダクト本体部の内外が通じるため、ダクト本体部内を通過する空気による騒音を低減させることができる。なお、ダクトの管壁の一部をポリウレタン発泡体のような多孔質部材で構成して吸音性を高めることは公知の技術である(例えば、特開2001−193587等参照)。
【0014】
請求項4の発明によれば、フロアダクトの板状部の片面に形成された中空室からなる吸音部によって吸音性を良好にできると共に、中空室からなる吸音部の数および大きさを変化させることにより、良好な吸音性が得られる周波数帯を調整することができる。なお、中空室はチャンバーとも称され、吸音効果があることは、既に公知である(例えば、特開2004−168173等参照)。
【0015】
請求項5の発明によれば、ダクト本体部の底部の外面に形成されている多孔質発泡体からなる底部外面部材により、自動車の振動等によりダクト本体部とフロアパネルが擦れて発生する異音を防止することができると共に、ダクト本体部の底部の外面に結露が発生するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの斜視図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】第1実施形態のフロアダクトの一部を示す平面図と裏面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの斜視図である。
【図5】図4の5A−5A、5B−5B断面図である。
【図6】第2実施形態のフロアダクトの一部を示す平面図と裏面図である。
【図7】図6の7A−7A、7B−7B断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの斜視図である。
【図9】図8の9A−9A、9B−9B、9C−9C、9D−9D断面図である。
【図10】第3実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの一部を示す裏面図である。
【図11】第3実施形態のフロアダクトの一部を示す平面図と裏面図である。
【図12】図11の12A−12A、12B−12B、12C−12C、12D−12D断面図である。
【図13】従来のフロアダクトとフロアスペ−サが配置された自動車の床部の断面図である。
【図14】従来のフロアダクトとフロアスペーサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図3に示すように、第1実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10は、フロアダクト11とフロアスペーサ31、33とからなり、図12に示した自動車の床面におけるフロアパネル51とフロアカーペット55間に配置される。
【0018】
前記フロアダクト11は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂で構成され、管状のダクト本体部13と、前記ダクト本体部13の側部17、18から外方へ突出した板状部21、23とよりなる。本実施形態のフロアダクト11は、公知のブロー成形によって形成されている。
前記ダクト本体部13は所定断面形状の管状からなり、一端14側が車両のエアコンに接続され、他端15側が車内の空気吹き出し口等と接続される。
【0019】
前記板状部21、23は、前記フロアスペーサ31、33の補強用に設けられている。図示の例は、前記ダクト本体部13の一側の側部17については、前記フロアスペーサ31の上面に前記板状部21が位置し、一方、反対側の側部18については、前記フロアスペーサ31内に前記板状部23が埋設されている。なお、何れの側部の板状部もフロアスペーサの上面に位置させたり、フロアスペーサに埋設してもよい。前記板状部21、23は、対応するフロアスペーサの上面をほぼ覆うことのできる大きさ、あるいはフロアスペーサのほぼ全体に埋設可能な大きさが好ましい。また、前記板状部21、23は、乗員による押圧で変形し難いように厚みが設定される。前記板状部21、23の厚みの例として3〜5mm程度を挙げる。なお、自動車の床面におけるダクト本体部12の配置位置によっては、ダクト本体部13の一側の側部にのみフロアスペーサが設けられる場合がある。その場合には、フロアスペーサが設けられるダクト本体部の側部のみに前記板状部が形成される。また、一方の板状部21の先端は、下方側へ折れ曲がった折れ曲がり部22となっており、前記折れ曲がり部22によって板状部21とフロアスペーサ31との係合性(一体性)を高めている。なお、符号26、27は、自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10を床面に固定する際に用いられる固定部であり、前記ダクト本体部13から突設されている。
【0020】
また、図示の例では、前記ダクト本体部13の底部19の外面には底部外面部材30が設けられている。前記底部外面部材30は多孔質発泡体からなり、本実施形態では前記フロアスペーサ31、33から延設されている。前記多孔質発泡体としては、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等を挙げることができる。前記底部外面部材30は、自動車の振動等によりダクト本体部13とフロアパネルが擦れて発生する異音を防止すると共に、ダクト本体部13の底部19の外面に結露が発生するのを抑える目的で設けられており、所定の厚み、例えば数2mm〜10mm程度とされる。
【0021】
前記フロアスペーサ31、33は、前記フロアダクト本体部13の側部17、18に設けられ、前記フロアダクト11と一体に形成されている。前記フロアスペーサは、多孔質発泡体からなる。前記多孔質発泡体としては、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等を挙げることができる。特にポリウレタン発泡体は、後述のようにインサート成形によって前記フロアダクトとの一体化が容易なため、好ましいものである。
【0022】
本実施形態では、前記フロアスペーサ31、33は前記フロアダクト11の板状部21、23をインサートとして発泡形成されたポリウレタン発泡体からなる。ポリウレタン発泡体のインサート成形は、ポリウレタン発泡体をモールド成形する際、モールド(型)にインサート(補強部材等)をセットした後、モールドにポリウレタン発泡原料を充填し、発泡させることにより、インサートと一体にポリウレタン発泡体を形成する方法であり、従来より多用されている成形方法である。なお、本実施形態の場合、前記板状部21、23及びダクト本体部13をインサートとしてモールドにセットした後、モールドにポリウレタン発泡原料を充填し、発泡させることにより、前記フロアスペーサ31、33及び底部外面部材30を、前記フロアダクト11と一体に形成することができる。なお、前記フロアスペーサ31、33は、ポリウレタン発泡体の発泡時における接着性によってフロアダクト11と接着することができるが、より確実な一体化を必要とする場合、あるいは前記フロアダクト11がポリウレタン発泡体との接着性に劣る材質からなる場合には、ポリウレタン発泡体を形成するフロアダクト11の表面に、予めプライマーを塗布してポリウレタン発泡体のインサート成形を行うのが好ましい。また、第1実施形態における前記フロアスペーサ31、33は、インサート成形に代えて、別途発泡成形させた多孔質発泡体を接着や融着等の公知の手段によって、フロアダクトに貼り付けてもよい。この場合、フロアダクトをポリプロピレンやポリエチレンで構成した場合には、ポリプロピレンやポリエチレンとの相溶性がよいポリエチレン発泡体でフロアスペーサを構成することでフロアスペーサとフロアダクトとの接合強度を高めることができる。
【0023】
前記フロアスペーサ31、33を構成するポリウレタン発泡体は、密度が低すぎると変形が容易になり、一方、密度が高すぎると自動車の軽量化要求に対して不利になるため、密度(JIS K722)が40〜100kg/mのものが好ましい。また、前記フロアスペーサ31、33の厚みは、自動車の床面に応じて適宜の値、例えば30〜50mm程度とされる。また、本実施形態では、一側のフロアスペーサ31が、他側のフロアスペーサ33よりも薄くなっている。
【0024】
前記第1実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10は、前記フロアスペーサ31、33とフロアダクト11が一体になっているため、自動車の床面にフロアスペーサとフロアダクトを配置する際の作業を、別体のフロアスペーサとフロアダクトを配置するのと比べて簡単、迅速に行うことができる。しかも、前記フロアスペーサ31、33は、前記ダクト本体部13の側部から外方へ突出した板状部21、23が埋設され、又は上面に位置するため、前記板状部21、23によって前記フロアスペーサ31、33が補強され、フロアスペーサ31、33の座屈を抑えることができる。さらに、前記フロアスペーサ31、33に埋設、あるいは上面に位置する前記板状部21、23がフロアダクトの一部であるため、製品の部品点数を削減することができ、製品コストを下げることが可能である。また、前記フロアスペーサ31、33を構成するポリウレタン発泡体は無数の気泡(セル)を有するため、前記フロアスペーサ31、33の吸音性を良好にすることができる。
【0025】
次に、第2実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Aについて説明する。図4から図7に示すように、第2実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Aは、フロアダクト11Aにおける一側の板状部23Aに、発泡体侵入用開口29Aを一部に有する係合用中空部28Aが形成され、前記発泡体侵入用開口29Aから前記係合用中空部28A内にフロアスペーサ33Aのポリウレタン発泡体34Aが侵入している点で第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同様である。符号13Aはダクト本体部、14Aはダクト本体部の一端、15Aは他端、17Aおよび18Aはダクト本体部の側部、19Aはダクト本体部の底部、21A、23Aは板状部、22Aは板状部21Aの先端の折れ曲がり部、26A、27Aは固定部である。また、符号30Aは底部外面部材、31Aおよび33Aはポリウレタン発泡体からなるフロアスペーサである。
【0026】
前記係合用中空部28Aは、一部に発泡体侵入用開口29Aが形成され、前記発泡体侵入用開口29Aを介して前記係合用中空部28Aの内外が通じている。前記係合用中空部28Aは、本実施形態では、前記板状部23Aの先端にダクト本体部13Aの長さ方向に沿って形成された管状部で構成され、前記係合用中空部28Aの中央位置に前記発泡体侵入用開口29Aが形成されている。前記係合用中空部28Aへのポリウレタン発泡体34Aの侵入は、前記板状部23Aをインサートとして前記フロアスペーサ33Aのポリウレタン発泡体を発泡形成する際に、前記発泡体侵入用開口29Aから係合用中空部28A内に前記ポリウレタン発泡原料が侵入して発泡することにより行われる。なお、前記係合用中空部28Aの位置は、フロアスペーサ33A内に埋設される位置とされる。また、前記係合用中空部28Aの大きさは、フロアスペーサ33Aから突出しない大きさとされる。また、前記係合用中空部28Aは、前記ダクト本体部13Aの一側の側部18Aにおける板状部23Aに限られず、他の側部17Aにおける板状部21Aに形成したり、両側の板状部21A、23Aに形成してもよい。
【0027】
第2実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Aにおいては、前記第1実施形態において記載した効果に加えて、以下の効果が得られる。前記第2実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Aは、前記係合用中空部28Aにフロアスペーサ33Aのポリウレタン発泡体34Aが侵入しているため、前記板状部23Aとフロアスペーサ33Aの一体化がより強固になっている。さらに、本実施形態では、前記ダクト本体部13Aの両側のフロアスペーサ31A、33Aが、前記底部外面部材30Aを介して一連となっているため、一側の前記フロアスペーサ33Aのみならず、他側のフロアスペーサ33Aおよび底部外面部材30Aも、前記係合用中空部28Aにおけるポリウレタン発泡体34Aの侵入によって前記フロアダクト11Aと確実に結合し、フロアダクト11Aから分離するおそれがない。
【0028】
次に第3実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Bについて説明する。図8から図12に示すように、第3実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Bは、フロアダクト11Bにおける一側の板状部23Bの片面に、ダクト本体部13内と係合用中空部28B内を通じる連通部25Bと、中空室からなる吸音部24Bが形成されている点で第2実施形態と異なり、他の構成は第2実施形態と同様である。符号13Bはダクト本体部、14Bはダクト本体部の一端、15Bは他端、17Bおよび18Bはダクト本体部の側部、19Bはダクト本体部の底部、21B、23Bは板状部、22Bは板状部21Bの先端の折れ曲がり部、26B、27Bは固定部、28Bは係合用中空部、29Bは発泡体侵入用開口である。また、符号30Bは底部外面部材、31Bおよび33Bはフロアスペーサ、34Bは前記係合用中空部28B内に侵入したポリウレタン発泡体である。
【0029】
前記連通部25Bは、トンネル状の通路で構成され、前記ダクト本体部13Bと前記係合用中空部28B間に形成され、前記ダクト本体部13B内と前記係合用中空部28B内を連通している。前記連通部25Bの断面サイズは、前記ダクト本体部13B内を流れる空気の流量に与える影響を小さくするため、直径6〜10mm程度が好ましい。なお、本実施形態では、前記連通部25Bが2本形成されているが、他の本数であってもよい。
【0030】
前記中空室からなる吸音部24Bは、本実施形態では、ほぼ立方体の部屋で構成されている。前記吸音部24Bの数および大きさを変化させることにより、良好な吸音性が得られる周波数帯を調整することができる。なお、前記吸音部24Bは、前記板状部23Bにおいて前記フロアスペーサ33Bのポリウレタン発泡体から露出するように設けられる。前記吸音部24Bは、前記フロアスペーサ33Bのポリウレタン発泡体から露出していることにより、前記吸音部24Bにおける振動が良好となり、吸音性が向上する。また、前記吸音部24Bは、前記ダクト本体部13Bの一側の側部18Bにおける板状部23Bに限られず、他側の側部17Bにおける板状部21Bに形成したり、両側の板状部21B、23Bに形成してもよい。
【0031】
前記第3実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Bにおいては、前記第1実施形態及び第2実施形態において記載した効果に加えて、以下の効果が得られる。前記第3実施形態の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト10Bは、前記連通部25Bと係合用中空部28B内のポリウレタン発泡体を介してダクト本体部13Bの内外が通じるため、前記ダクト本体部13B内を通過する空気による騒音を低減させることができる。さらに、前記中空室からなる吸音部24Bの数および大きさを変化させることにより、良好な吸音性が得られる周波数帯を調整することができ、自動車に適した吸音性を得ることができる。また、前記第3実施形態では、前記吸音部24Bと前記連通部25Bの両方を設けたが何れか一方のみを設けてもよい。
【0032】
なお、前記第1、第2、第3実施形態において、前記フロアスペーサおよび底部外面部材を構成する多孔質発泡体としてのポリウレタン発泡体を、連通気泡の割合が高いものとすれば、吸音性を一層高めることができ、一方、前記ポリウレタン発泡体を独立気泡の割合が高いものとすれば、断熱性を高めることができる。
【0033】
また、前記の各実施形態では、フロアダクトの一部がポリウレタン発泡体で覆われていない構成となっているが、前記吸音部を除いてフロアダクトの全てがポリウレタン発泡体で覆われた構成であってもよい。さらに、前記の各実施形態における一方の板状部21、21A、21Bには、先端に折れ曲がり部22、22A、22Bを有し、前記折れ曲がり部22、22A、22Bによって板状部21、21A、21Bとフロアスペーサ31、31A、31Bとの係合性(一体性)が高められ、自動車用フロアスペーサ一体フロアダクトの寸法精度を高めているが、前記折れ曲がり部22、22A、22Bに代えて、前記第2実施形態及び第3実施形態における係合用中空部28A、28Bと同様の係合用中空部を設けたり、前記折れ曲がり部22、22A、22Bと前記係合用中空部を組み合わせてもよい。
【0034】
また、前記係合用中空部28A、28Bにおける発泡体侵入用開口29A、29Bは、一つに限られず複数設けてもよい。さらに、前記係合用中空部28A、28Bは、連通(連続)していてもよいし、連通(連続)していなくてもよい。また、前記係合用中空部28A、28Bは、前記板状部23A、23Bの複数位置に形成されて各係合用中空部に発泡体侵入用開口が形成されたものでもよい。
【符号の説明】
【0035】
10、10A、10B 自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト
11、11A、11B フロアダクト
13、13A、13B ダクト本体部
17、17A、17B、18、18A、18B ダクト本体部の側部
19、19A、19B ダクト本体部の底部
21、21A、21B 23、23A、23B 板状部
24B 吸音部
25B 連通部
28A、28B 係合用中空部
29A、29B 発泡体侵入用開口
30、30A、30B 底部外面部材
31、31A、31B、33、33A、33B フロアスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の床面に配置されるフロアダクトとフロアスペーサとからなり、
前記フロアダクトは、管状のダクト本体部の側部から外方へ突出した板状部を備え、
前記フロアスペーサは、前記ダクト本体部の側部に前記フロアダクトと一体に設けられた多孔質発泡体からなり、
前記フロアダクトの板状部は、前記フロアスペーサ内に埋設され、あるいは前記フロアスペーサの上面に位置することを特徴とする自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト。
【請求項2】
前記多孔質発泡体がポリウレタン発泡体からなり、
前記フロアダクトの板状部に、発泡体侵入用開口を一部に有する係合用中空部が形成され、前記発泡体侵入用開口から前記係合用中空部内に前記フロアスペーサのポリウレタン発泡体が侵入していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト。
【請求項3】
前記フロアダクトの板状部の片面に、前記ダクト本体部内と前記係合用中空部内を通じる連通部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト。
【請求項4】
前記フロアダクトの板状部の片面に、中空室からなる吸音部が形成され、前記吸音部が前記フロアスペーサから露出していることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト。
【請求項5】
前記ダクト本体部の底部の外面に、多孔質発泡体からなる底部外面部材が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の自動車用フロアスペーサ一体フロアダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−105115(P2011−105115A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261581(P2009−261581)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】