自動車用フード
【課題】自動車用フードに求められる基本性能を満足すると同時に、歩行者保護性能に優れた自動車用フードを提供する。
【解決手段】アウターパネル2とインナーパネル3とを備える自動車用フード1Aにおいて、インナーパネル3は、アウターパネル2と接合する枠状の第1インナー材3Aと、第1インナー材3Aの枠内側に配置される第2インナー材3Bとからなり、第1インナー材3Aは、外側縁部5aと、空間部4を形成する第1インナー凹状部5と、内側縁部5bとを備え、第2インナー材3Bは、第1インナー材3Aと接合する接合部6を有すると共に、空間部4を形成する第2インナー凹状部7と、パネル中央側となる位置でアウターパネル2に接合するパネル接合部10と、第1インナー凹状部内5に延出してアウターパネル2と接合する延出部8とを備えることを特徴とする。
【解決手段】アウターパネル2とインナーパネル3とを備える自動車用フード1Aにおいて、インナーパネル3は、アウターパネル2と接合する枠状の第1インナー材3Aと、第1インナー材3Aの枠内側に配置される第2インナー材3Bとからなり、第1インナー材3Aは、外側縁部5aと、空間部4を形成する第1インナー凹状部5と、内側縁部5bとを備え、第2インナー材3Bは、第1インナー材3Aと接合する接合部6を有すると共に、空間部4を形成する第2インナー凹状部7と、パネル中央側となる位置でアウターパネル2に接合するパネル接合部10と、第1インナー凹状部内5に延出してアウターパネル2と接合する延出部8とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用フードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車事故における歩行者保護が法規化され、歩行者保護性能が自動車用フードのレーティングの指標としても注目されている。一方で、自動車は、エンジシの高出力化により、エンジンが大型化されると共に、多機能化によりエンジンルーム内の部品も増加するため、歩行者保護に必要なフード下のスペースも小さくなってきている。そのため、スポーティなデザインと歩行者保護性能とを両立するためには、小スペースで効率よく衝突エネルギーを吸収できる自動車用フードの開発が重要である。
【0003】
前記のような自動車用フードとして、特許文献1では、アウターパネルとインナーパネルとを接合したときに両パネルの間に空間部を介した断面構造を備えるフード構造を持った自動車用フードが記載されている。また、前記空間を形成するために、インナーパネルに深さの異なる複数のディンプルを形成したフード構造が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたフード構造と類似したフード構造を持った自動車用フードの例を、図13、図16、図17に示す。
図13(a)〜(c)に示すように、自動車用フード(ビーム型フード構造)21Aは、所定の曲率を有するアウターパネル22と、周縁部に凹状部25を、中央部にパネル平面方向の縦、横、斜め方向に適宜交差またはほぼ平行に、または扇状に延在する複数のビーム26を有すると共に、ビーム26間はトリムされた欠損部26Aを有するインナーパネル23とから構成され、アウターパネル22の周縁部と、インナーパネル23の凹状部25端部をヘム加工によって接合することによって、空間部24を介した断面構造をとっている。また、ビーム26の側壁頂部上に接着部27を所定間隔に配置し、この接着部27を介して、ビーム26とアウターパネル22の裏面とが接着されている。さらに、自動車用フード21Aの補強部材としてのロックレインフォースメント30、ヒンジレインフォースメント31が、凹状部25に接合されている。
【0005】
図16(a)〜(c)に示すように、自動車用フード(コーン型フード構造)21Bは、所定の曲率を有するアウターパネル22と、周縁部に凹状部25を、中央部に規則的な配置で複数のコーン状の凸部28を有するインナーパネル23とから構成され、アウターパネル22の周縁部と、インナーパネル23の凹状部25端部をヘム加工によって接合することによって、空間部24を介した断面構造をとっている。また、凸部28の頂部上に接着部27を配置し、この接着部27を介して、凸部28とアウターパネル22の裏面とが接着されている。さらに、自動車用フード21Bの補強部材としてのロックレインフォースメント30、ヒンジレインフォースメント31が、凹状部25に接合されている。
【0006】
図17(a)〜(c)に示すように、自動車用フード(波状ビード型フード構造)21Cは、所定の曲率を有するアウターパネル22と、周縁部に凹状部25を、中央部に車前後方向に平行な配置で複数の波状ビード29を有するインナーパネル23とから構成され、アウターパネル22の周縁部と、インナーパネル23の凹状部25の端部をヘム加工によって接合することによって、空間部24を介した断面構造をとっている。また、波状ビード29の頂部上に接着部27を所定間隔に配置し、この接着部27を介して、波状ビード29とアウターパネル22の裏面とが接着されている。さらに、自動車用フード21Cの補強部材としてのロックレインフォースメント30、ヒンジレインフォースメント31が、凹状部25に接合されている。
【0007】
また、自動車用フードの歩行者保護性能は、一般には頭部傷害値(以下HIC値と略す)により評価され、HIC値は、下式(1)(任意時間内の平均加速度の2.5乗と発生時間の積の最大値)で与えられる。そして、HIC値が小さいほど、歩行者保護性能が優れている。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、aは頭部重心における3軸合成加速度(単位はG)、t1、t2は0<t1<t2となる時間tでHIC値が最大となる時間で、計算時間(t2−t1)は15msec以下と決められている。
【0010】
図14(a)は、従来の自動車用フード(ビーム型フード構造21A、図13(a)〜(c)参照)の頭部衝突を模式的に示す説明図であり、図14(b)は、頭部衝突の際の加速度aと時間tとの関係を示す説明図であり、図14(c)は、加速度aとストローク(頭部衝突の際のエンジンルーム内への頭部侵入変位量)Sとの関係を示す説明図である。図14(b)、(c)に示すように、歩行者の頭部が自動車用フードに衝突するときの加速度は、通常、頭部が自動車用フードに衝突して発生する1次衝突加速度と、その後、自動車用フード21Aがエンジンルーム内の内蔵部品に接触して発生する2次衝突加速度に大別できる。なお、図16(a)〜(c)の自動車用フード(コーン型フード構造)21B、図17(a)〜(c)の自動車用フード(波状ビード型フード構造)21Cにおいても、1次衝突加速度と2次衝突加速度の大小関係に差異はあるが、図14(b)、(c)と同様な加速度aと時間tとの関係、および加速度aとストロークSとの関係を示す。
【0011】
一方、自動車用フードは、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性など、従来から求められる基本性能も満足しなければならない。張り剛性は、ワックスがけや自動車用フードをロックする際に押込む時の弾性変形を抑制するために必要であり、アウターパネルのヤング率と板厚、および、アウターパネルとインナーパネルの接合位置(図13、図16、図17では接着部27の接着位置)により決定される。耐デント性は、飛石などにより残留する塑性変形を抑制するために必要で、アウターパネルの耐力と板厚に影響を受ける。曲げ剛性は、自動車用フードをロックする際の引込み力と、クッションゴム、ダンパーステイ、シールゴムなどの反力により発生する自動車用フード周縁部の弾性変形を抑制するために必要であり、自動車用フード周縁部のインナーパネルおよびレインフォースメントの形状(断面2次モーメント)、ヤング率に影響される。ねじり剛性は、自動車用フード周縁部の曲げ剛性と、インナーパネル中央部の板厚および形状に影響される。
【特許文献1】特開2000−168622号公報(請求項1、図1〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
自動車用フードは、これらの基本性能と歩行者保護性能の両方を満足しなければならないが、自動車用フードとエンジン等の構造物との間となる自動車用フード下方のスペースが制限されるため、基本性能だけを満足するように材質、板厚、形状を設計したフードでは歩行者保護性能を満足できない場合が多い。
【0013】
そして、前記した従来の自動車用フード21A、21B、21Cにおいては、自動車用フード下のスペースが小さい場合には、図14(b)、(c)に示すように、1次衝突よりも2次衝突の方が発生する加速度が大きく、継続時間も長くなるため、2次衝突の加速度が上式(1)で計算されるHIC値に悪影響を与える(HIC値が満足するレベルに達しない)。また、特に曲げ剛性が要求される自動車用フード21A、21B、21Cの周縁部では、インナーパネル23の凹状部25およびレインフォースメント30、31の断面2次モーメントを大きくしなければならず、また、張り剛性も確保する必要があるために、凹状部25がつぶれ変形しにくい。そのため、2次衝突の際の加速度を低減できず、歩行者保護性能を向上させることできないという問題がある。
【0014】
この問題を自動車用フードのフード構造で解決するための1つの対策は、1次衝突の際のエネルギー吸収量を十分に確保して2次衝突の加速度を軽減することである。これを実現するための方法として、板厚増加が考えられるが、図15(a)に示すように、アウターパネル22の板厚を増加すると、ヘム加工時のヘム部22Aに割れが発生すると共に、ヘム部22AのRが大きくなり見栄えが悪化するなどの問題がある。
【0015】
一方、図15(b)に示すように、インナーパネル23の周縁部(凹状部25)の板厚を増加すると、つぶれ変形荷重が増大するため、エンジン等の構造物である内蔵部品との2次衝突Gが増大し、結果的にHIC値が逆に悪化する。特に、周縁部の凹状部25は、高い曲げ剛性が要求されるため、板厚を増大した場合であっても、凹状部25の断面高さhを減少できないため、図15(c)、(d)に示すように、1次衝突の際のエネルギー吸収量は増加するが、2次衝突の際の加速度の立上りが急激となり、ストロークが減少して、HIC値の悪化につながるという問題がある。なお、図15(c)、(d)において、破線は、周縁部(凹状部25)の板厚を増加していないインナーパネルを使用した自動車用フードを使用した場合のものである。
【0016】
歩行者保護性能を向上するための別の対策は、1次衝突の際のエネルギー吸収量を保持または増大すると同時に、フードのつぶれ変形荷重を低下させ、2次衝突の際の加速度を低減することにある。これを実現するためには、図15(e)に示すように、インナーパネル23の周縁部(凹状部25)の形状をつぶれやすい形状にする方法、具体的には、インナーパネル23の凹状部25の形状をダラす(凹状部25の側壁の傾斜角度θ1、θ2を緩やかにする)方法が考えられる。しかしながら、この方法においても、自動車用フードの曲げ剛性を確保するためには、凹状部25の断面を小さくできないので、アウターパネル22とインナーパネル23とを接合(接着)する間隔Lが広がり、アウターパネル22の弾性変形量Dが大きくなるため、アウターパネル22の張り剛性が不足するという問題がある。
【0017】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、自動車用フード、特に自動車用フードの周縁部に求められる基本性能を満足すると同時に、歩行者保護性能に優れた自動車用フードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部と接合する枠状で断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材の枠内側に配置され、一側で当該第1インナー材に接合し、他側で前記アウターパネルに接合する第2インナー材とからなり、前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備える自動車用フードとして構成したものである。
【0019】
このように構成すれば、インナーパネル(第1インナー材)の第1インナー凹状部の断面2次モーメント(断面の大きさ)を従来の自動車用フードと同等にすることで曲げ剛性が確保される。その際、第1インナー凹状部をダレた形状にできる。そのため、頭部衝突の際、1次衝突でのエネルギー吸収量が増大し、また、フードのつぶれ変形荷重が小さくなりストロークも確保されるため、2次衝突加速度が低減される。さらに、第1インナー凹状部内に延出された第2インナー材の延出部とアウターパネルとが接合されていることにより、アウターパネルの周縁部において、アウターパネルとインナーパネル(第2インナー材)とを接合(接着)する間隔が広がらず、アウターパネルの張り剛性も確保される。
【0020】
また、請求項2に係る発明は、アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材よりパネル中央側に配置され当該第1インナー材および前記アウターパネルと接合する第2インナー材とからなり、前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記第2インナー凹状部と連続して形成され前記アウターパネルの他の残りの周縁部と接合する縁部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備える自動車用フードとして構成したものである。
【0021】
このように構成すれば、前記請求項1の作用に加えて、インナーパネルを作製する際に、第1インナー材を枠状に形成する必要がなく、部材使用量が低減し、軽量化される。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、前記第2インナー材は、延出部が前記接合部から所定幅で延出する自動車用フードとして構成したものである。
このように構成すれば、第2インナー材の延出部の面積が小さくなり、第2インナー材が軽量化される。
【0023】
また、請求項4に係る発明は、前記第2インナー材は、前記延出部から所定角度に立ち上げて連続して形成され、前記アウターパネルの周縁部側に延出するフランジ部を備える自動車用フードとして構成したものである。
このように構成すれば、頭部衝突の際、1次衝突でのエネルギー吸収量がより一層増大するため、2次衝突加速度がより一層低減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1に係る自動車用フードによれば、インナーパネルを枠状の第1インナー材と第2インナー材との2部品から構成し、第1インナー材が第1インナー凹状部を備え、第2インナー材が第2インナー凹状部と、パネル結合部および延出部を備えるため、自動車用フードとしての基本性能(張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性など)を満足すると同時に、自動車用フードの中央部および周縁部において、HIC値が小さくなり、歩行者保護性能に優れる。また、第1インナー材とは別に、第2インナー材の材質、板厚を自動車用フードの必要性能に応じて決定できるため、歩行者保護性能を最適にするための設計自由度が増す。
【0025】
また、請求項2に係る自動車用フードによれば、第1インナー材が枠状に形成されず、第1インナー材の材料無駄がなくなるため、前記請求項1の効果と併せて、自動車用フードの製品コストが低下する。
【0026】
また、請求項3に係る自動車用フードによれば、第2インナー材の延出部が所定幅で構成され、その面積が小さくなるため、前記請求項1の効果と併せて、自動車用フードが軽量化されると共に、製品コストが低下する。
【0027】
さらに、請求項4に係る自動車用フードによれば、第1インナー材が延出部から延出されたフランジ部を備えるため、HIC値がより一層小さくなり、歩行者保護性能がより一層優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[第1実施形態]
本発明に係る自動車用フードの第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は自動車用フードの構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図、図2は図1の自動車用フードの分解斜視図、図3(a)は図1の第1インナー凹状部の拡大端面図、(b)は図1の第2インナー凹状部の拡大端面図、図4(a)は第1、2インナー材の模式的な平面図、(b)は他の第1インナー材の模式的な平面図、図5(a)は延出部の形態を示す図1(a)のB−B線における部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。なお、前記図面の一部では、アウターパネルおよびインナーパネル(第1、2インナー材)の厚みを記載せず、線で示した。
【0029】
図1、図2に示すように、本発明に係る自動車用フード1Aは、アウターパネル2とインナーパネル3とを接合すると共に、両パネル2、3が接合したときに両パネル2、3の所定位置の間に空間部4を介した断面構造を備える。
【0030】
<アウターパネル>
アウターパネル2は、所定の曲率を有し、軽量で高張力な金属製板材で構成され、金属は鋼、または、3000系、5000系、6000系または7000系のアルミニウム合金であることが好ましい。また、アウターパネル2の板厚は、例えば、鋼板では1.1mm以下、アルミニウム合金板では1.5mm以下が好ましい。なお、アウターパネル2は、樹脂製、カーボンファイバー製の板材で構成されていてもよい。
また、アウターパネル2は、その周縁部において、ヘム加工等による嵌合、接着、ろう付け等によって後記するインナーパネル3の周縁部と接合され、アウターパネル2とインナーパネル3との間に空間部4を介した断面構造をとる。
【0031】
<インナーパネル>
インナーパネル3は、アウターパネル2の周縁部と接合する枠状で断面形状が凹状の第1インナー材3Aと、第1インナー材3Aの枠内側に配置され、一側で第1インナー材3Aに接合し、他端でアウターパネル2に接合する第2インナー材3Bとからなる。第1インナー材3A、第2インナー材3Bは、軽量で高張力な金属製板材で構成され、金属は鋼、または、3000系、5000系、6000系または7000系のアルミニウム合金であることが好ましい。
【0032】
(第1インナー材)
図1、図3(a)に示すように、第1インナー材3Aは、アウターパネル2の周縁部2aと接合する外側縁部5aと、外側縁部5aに連続して形成されアウターパネル2との間に空間部4を形成する第1インナー凹状部5と、第1インナー凹状部5に連続して形成され、後記する第2インナー材3Bに接合する内側縁部5bとを備える。ここで、周縁部2aと外側縁部5aの接合は、機械的接合、例えば、ヘム加工によって接合することが好ましいが、溶接、樹脂層等による接着等でもよい。また、内側縁部5bと第2インナー材3B(接合部6)との接合は、溶接による接合が好ましいが、機械的接合、樹脂層等による接着等でもよい。
【0033】
図3(a)に示すように、第1インナー材3Aの板厚T1は、特に自動車用フード1Aが使用される自動車の車種によって決定されるアウターパネル2の曲げ剛性によって選択され、その適正値はアルミニウム合金板の場合には0.7〜1.5mm、鋼板の場合には0.5〜1.1mmが好ましい。板厚T1が下限値未満であると、自動車用フードの曲げ剛性が不足しやすく、板厚T1が上限値を超えると、つぶれ変形荷重が増大するため、歩行者保護性能が低下しやすい。なお、第1インナー材3Aだけで曲げ剛性を確保して、ロックレインフォースメント30(図1(a)、(b)参照)を省略することも可能であるが、この場合の板厚T1は、前記よりもさらに増大させた板厚が好ましく、アルミニウム合金板では1.5〜3.5mm、鋼板では1.1〜2.5mmが好ましい。
【0034】
第1インナー材3Aの第1インナー凹状部5の形状は、自動車用フード1Aの剛性、歩行者保護性能に影響し、また、第1インナー凹状部5の形状を決定する断面高さH1、H2の適正値は、5mm<H1<60mm、10mm<H2<80mm、20mm<H1+H2<120mmが好ましい。断面高さH1、H2が下限値以下では、自動車用フード1Aの曲げ剛性が不足しやすい、断面高さH1、H2が上限値以上では、第1インナー材3Aがエンジン等の構造物である内蔵部品に接触するタイミングが早いため、2次衝突加速度が増大してHIC値が大きくなりやすい(歩行者保護性能が低下しやすい)。また、第1インナー凹状部5の形状は、後記する第2インナー材3Bに延出部8を設け、アウターパネル2へ接合することにより、同等の断面2次モーメントを有する第1インナー凹状部5であっても、凹状部の高さが小さく、斜面(側壁)の傾斜角度が小さい、すなわち、ダレた形状をとることが可能となる。
【0035】
第1インナー材3Aは、図4(a)に示すように、板材の中央部に欠損部を持った枠状の板材で構成されている。そして、欠損部の面積S1は、第2インナー材3Bの面積S2よりも小さい面積で形成される。その結果、欠損部の部材を第2インナー材3Bとして使用することができず、欠損部の部材が無駄になる。このような問題を解決するため、図4(b)に示すように、第1インナー材3Aとして、4つの部材3a、3b、3c、3dを溶接等で接合したテーラドブランク材を使用することが好ましい。テーラドブランク材の使用により、無駄となる欠損部の発生がなくなり、製造コストを低下させることが可能となる。
【0036】
(第2インナー材)
図1、図3(a)、(b)、図5(a)に示すように、第2インナー材3Bは、第1インナー材3Aの内側縁部5bと溶接等で接合する接合部6を有すると共に、アウターパネル2との間に空間部4を形成する第2インナー凹状部7と、接合部6よりパネル中央側となる位置でアウターパネル2に接合するパネル接合部10と、接合部6に連続して形成され第1インナー凹状部5内に延出してアウターパネル2と接合する延出部8とを備える。
【0037】
第2インナー凹状部7は、第2インナー材3Bの表面に縦、横、斜め方向に適宜交差またはほぼ平行に延在する凹状のビームにより形成され、ビームの間にはトリム(肉抜き)された欠損部10A(図1(a)参照)が形成されている。そして、第2インナー凹状部7(凹状のビーム)の端面には、パネル接合部10となるリブ部が形成されている。また、パネル接合部10は、後記する延出部8と共に、樹脂層等で構成された接着部9を介して、アウターパネル2に接着(接合)され、アウターパネル2と第2インナー材3Bとの間に空間部4を形成する。接合方法は、接着部9を介する接着に限定されず、機械的接合、溶接等による接合でもよい。さらに、第2インナー材3Bでのビームの形成形態(欠損部10Aの形状)は、図1(a)に記載された形成形態に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0038】
第2インナー材3Bが延出部8を備え、その延出部8が、接合部6に連続して形成され第1インナー凹状部5内に延出してアウターパネル2と接着部9を介して接着(接合)されることにより、アウターパネル2の張り剛性を向上させると共に、第1インナー凹状部5の形状を、必要な曲げ剛性を有し、かつ、つぶれ変形荷重が低減された歩行者保護性能に優れたダレた形状に設計することを可能にする。また、延出部8の接着(接合)位置、すなわち、アウターパネル2の周縁部2aからの間隔L(図3(a)参照)は、自動車用フード1Aが使用される車種によって異なるアウターパネル2の張り剛性によって選択され、その適正値は250mm以下が好ましい。さらに、図5(a)に示すように、延出部8は、接合部6から第1インナー凹状部5内に所定角度で延出する傾斜面に凸状のビード部8aを所定間隔で設けてもよく、アウターパネル2と接着する平面に凹状の段差部8bを接着部9間に設けてもよい。このようなビード部8a、段差部8bを設けることによって、延出部8の形状凍結性が向上すると共に、頭部衝突の際の変形荷重をコントロールしやすくなる。
【0039】
図3(b)に示すように、第2インナー材3Bの板厚(第2インナー凹状部7の板厚T2)、形状(第2インナー凹状部7の高さH3)は、頭部衝突の際の頭部と自動車用フードの相対速度差により発生する慣性力に影響を与える。そのため、板厚、形状を適正化することにより、1次衝突の際の加速度が大きくなり、十分なエネルギー吸収量が確保され、自動車用フードの歩行者保護性能を向上させることが可能となる。
【0040】
第2インナー材3B(第2インナー凹状部7)の板厚T2の適正値は、第2インナー材3Bがアルミニウム合金板の場合には、0.3〜2.7mmであり、鋼板の場合には、0.4〜1.0mmである。板厚T2が、下限値未満であると第2インナー材3Bのプレス成形または圧延が困難になりやすく、上限値を越えると1次衝突でのHIC値が基準値(HIC値=1000)をオーバーしやすい。なお、第2インナー材3Bをアルミニウム合金、鋼以外の金属で作製する場合には、板厚T2の上限値を、使用する金属の比重に反比例して決定する。
【0041】
第2インナー材3Bの形状(第2インナー凹状部7の凹状部の断面高さH3)の適正値は、第2インナー材3Bがアルミニウム合金製板材、鋼製板材の場合には、3〜30mmである。断面高さH3が、下限値未満であると前記板厚T2を上限値に設定しても、第2インナー凹状部7による剛性の向上効果が小さくなりやすい。その結果、頭部衝突の際に、衝突位置の近傍だけが変形して、衝突位置の周囲に応力が伝播しないため、第2インナー材3Bの質量が慣性力として有効に作用しにくく、1次衝突の際に十分なエネルギー吸収量が確保されずHIC値が悪化しやすい。また、断面高さH3が、上限値を越えると、自動車用フード下方のスペースにもよるが、第2インナー材3Bがエンジン等の構造物である内蔵部品に衝突するタイミングが早くなりやすく、2次衝突加速度が増大してHIC値が悪化しやすい。
【0042】
第2インナー材3Bの板厚T2、断面高さH3の両方が上限値に近い場合には、第2インナー凹状部7の斜面の傾斜角度でつぶれ変形荷重を調整することにより、HIC値の悪化を防止できるが、アウターパネル2とインナーパネル3(第2インナー材3B)との接合(接着)間隔Lが広がりやすく、アウターパネル2の張り剛性を確保しにくくなる。したがって、板厚T2、高さH3のいずれか一方が上限値に近い値である場合には、他方は上限値に遠くなる値に設定されることが好ましい。
【0043】
前記したように、本発明に係る自動車用フード1Aは、アウターパネル2の周縁部2aとインナーパネル3の周縁部5aとを接合することにより、両パネル2、3の所定位置の間に、第1インナー凹状部5(第1インナー材3A)および第2インナー凹状部7(第2インナー材3B)から形成された空間部4を形成すると共に、この第2インナー凹状部7の端面に形成されたパネル接合部10と、第2インナー材3Bの周縁部に形成された延出部8とをアウターパネル2に接着部9を介して接着(接合)した断面構造を備える(図1(b)、(c)、図5(a)参照)。
【0044】
(歩行者保護性能向上の機構)
自動車用フード1Aでは、前記のような断面構造を備えることにより、頭部衝突の際の加速度は、図5(b)の実線に示すような加速度推移をとる。図5(b)に示すように、自動車用フード1Aでは、従来の自動車用フード21Aに比べて、1次衝突の際の加速度が増大し、1次衝突の際のエネルギー吸収量が増大する。また、自動車用フード1Aのつぶれ変形量が増大してつぶれ残りが小さくなり、ストロークが増大する。その結果、2次衝突の際の加速度が減少する。このような加速度推移から、前記した数式(1)によって計算された歩行者保護性能の指標となるHIC値は、任意時間内の平均加速度が減少することにより、小さいものとなる。したがって、自動車用フード1Aは歩行者保護性能が向上することがわかる。
【0045】
(剛性確保の機構)
図1(b)、(c)に示すように、自動車用フード1Aでは、第1インナー材3Aの第1インナー凹状部5および第2インナー材3Bの延出部8により形成された空間部4により、フードの断面部面積が確保されるため、フードとして必要される曲げ剛性、ねじり剛性が得られる。それと共に、インナーパネル3(第2インナー材3B)の延出部8が接着部9を介してアウターパネル2に接合(接着)し、その接合(接着)位置がアウターパネル2の外周側に配置されていることにより、フードとして必要とされる張り剛性、耐デント性が得られる。
【0046】
次に、本発明に係る自動車用フード1Aの変形例について、図面を参照して説明する。図6(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、図7(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図、図8(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、図9(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は(a)の頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図、図10〜11(a)は自動車用フードの他の形態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。なお、前記図面の一部において、アウターパネル、インナーパネル(第1、2インナー材)の厚みを記載せず、線で示した。
【0047】
(延出部の変形例)
自動車用フード1Aの延出部8は、図5(a)では、第2インナー材3B(接合部6)の周縁部の全周に連続して形成された例を示したが、周縁部の全周に形成された形態に限定されず、例えば、周縁部のコーナー部には延出部が形成されない形態でもよい。また、例えば、自動車用フード下のスペースが十分確保されている場合には、図6(a)に示すように、第2インナー材3Bの接合部6から所定幅(接着部9を確保できる所定幅La、例えば15mm)で延出した延出部8を所定間隔Lb(例えば、100〜300mm)で周縁部の全周に備える自動車用フード1Bであってもよい。この自動車用フード1Bにおいては、図6(b)に示すように、フード下のスペースが十分確保されているため、頭部衝突の際のストロークSが十分確保され、2次衝突加速度を低く維持できる。その結果、HIC値も低くなる。また、自動車用フード1Bにおいても、延出部8が接着部9を介してアウターパネル(図示せず)に接合(接着)されているため、アウターパネルの張り剛性も十分確保される。
【0048】
逆に、自動車用フード下のスペースが小さく、頭部衝突の際の2次加速度が増大しやすい場合には、図7(a)に示すように、第2インナー材3Bの延出部8から所定角度に立ち上げて形成され、アウターパネル(図示せず)の周縁部側、すなわち、アウターパネル周縁部と接合する第1インナー材3Aの外側縁部5a側に延出するフランジ部11を備える自動車用フード1Cが好ましい。ここで、フランジ部11の形状は、頭部衝突における変形時に第1インナー材3Aと干渉しない形状に形成されることが好ましい。この自動車用フード1Cにおいては、図7(b)、(c)の実線に示すように、頭部衝突の際、フランジ部を備えていない自動車用フード1Aに比べて、1次衝突でのエネルギー吸収量が増大し、2次衝突加速度が低減され、HIC値も低くなる。また、フランジ部11または延出部8は、その端面から部分的に車幅方向または車前後方向に延出し、第1インナー材3A(第1インナー凹状部5)と接合(接着)する脚部11aまたは脚部11bを有していてもよい。このような脚部11a、11bを有することによって、第2インナー材3Bの組付け性が向上すると共に、フランジ部11がアウターパネル(図示せず)の内面側に当たってアウターパネルに傷がつくのを防ぐことができる。
【0049】
(第2インナー材の板厚の変形例)
本発明に係る自動車用フードは、第2インナー材3Bの板厚T2(図3(b)参照)を、第1インナー材とは別に、自動車用フードの必要性能に応じて決定したものであってもよい。例えば、自動車用フード下(インナーパネル下)のスペースSPが十分に確保できる場合には、図8(a)に示すように、第2インナー材3B(第2インナー凹状部7)の板厚を減少(図示しない第1インナー材の板厚よりも減少)させた自動車用フード1Dが好ましい。この自動車用フード1Dにおいては、図8(b)の実線に示すように、頭部衝突の際に、前記した自動車用フード1Aに比べて、第2インナー凹状部7のつぶれ変形荷重が小さくなるため、フード変形量が大きくなり、ストロークも大きくなる。その結果、2次加速度が増加せず、HIC値も悪化しない。加えて、板厚減少により、自動車用フード1Dを軽量化することができる。
【0050】
逆に、図9(a)に示すように、自動車用フード下のスペースSPが小さい場合には、第2インナー材3B(第2インナー凹状部7)の板厚を増加(図示しない第1インナー材板厚よりも増加)すると共に、第2インナー凹状部7の高さを小さくして、凹状部の斜面の傾斜角度を緩やかにした(形状をダラした)自動車用フード1Eが好ましい。この自動車用フード1Eにおいては、図9(b)、(c)の実線に示すように、頭部衝突の際に、前記した自動車用フード1Aおよび従来例21Aに比べて、1次衝突でのエネルギー吸収量が増大する。そして、第2インナー凹状部7の形状をダラすことにより、つぶれ変形荷重が小さくなると共に、インナーパネル(第2インナー材3B)が内蔵部品に衝突するタイミング(P1、P2、P3)が遅くなる。その結果、ストロークが増大するため、2次加速度が低減され、HIC値も低くなる。
【0051】
(第2インナー凹状部の変形例)
本発明に係る自動車用フードは、図10(a)〜(c)に示すように、第2インナー材3Bの表面に、多数のコーン状の凸部(円錐台状、底面の直径60〜180mm)を所定間隔(80〜210mm)で配置させ、その凸部の間に形成された凹部を第2インナー凹状部7とした自動車用フード1Fとしてもよい。自動車用フード1Fの凸部の高さは、3〜30mmが好ましい。凸部底面の直径、凸部間隔、凸部高さが前記範囲外であると、自動車用フード1Fの剛性、歩行者保護性能が低下しやすくなる。
【0052】
また、自動車用フード1Fの剛性、歩行者保護性能が満足できるレベルであれば、フード下のスペース、または、フード下に配置される内蔵部品の剛性に対応して、大小数種類の高さを有する凸部を使用してもよい。また、凸部の直径(底面の直径)、凸部間隔も、同一直径、同一間隔だけでなく、異なる直径、間隔を設定してもよい。
【0053】
そして、自動車用フード1Fにおいては、凸部の頂部をパネル接合部12とし、そのパネル接合部12上に樹脂層等の接着部9を配置して、その接着部9を介して、アウターパネル2と第2インナー材3B(インナーパネル3)を接合(接着)することにより、両パネル2、3の間に空間部4を形成している。
【0054】
本発明に係る自動車用フードは、図11(a)〜(c)に示すように、第2インナー材3Bの表面に、第2インナー材3B(インナーパネル3)の車前後方向(A−A線方向)に向かう複数本の波状ビード(凸部)を互いに略平行に配置させ、その波状ビード(凸部)の間に形成された凹部を第2インナー凹状部7とした自動車用フード1Gであってもよい。そして、波状ビード(凸部)と第2インナー凹状部7とによって、車幅方向(B−B線方向)にサイン波状またはサインn乗波状に連続する断面形状を有することが好ましく、その波の高さは3〜30mm、波長は80〜220mmが好ましい。波の高さ、波長が前記範囲外であると、自動車用フード1Gの剛性、歩行者保護性能が低下しやすくなる。
【0055】
また、自動車用フード1Gの剛性、歩行者保護性能が満足できるレベルであれば、波状ビードの配置方向は、車前後方向(A−A線方向)に対して平行に限らず、例えば、斜めであってもよいし、第2インナー材3Bの略中心に対して楕円状などを含む同心円状であってもよい。さらに、2種の波状ビードを、車前後方向または車幅方向に互いに平行、直交、または、V字状(U字状)に配置して、2重波状となるようにしてもよい。さらに、波状ビードの幅(波長)も図11(a)においては、所定範囲内で変化させているが、同一幅で形成してもよい。
【0056】
そして、自動車用フード1Gにおいては、波状ビードの頂部をパネル接合部13とし、そのパネル接合部13上に樹脂層等の接着部9を配置して、その接着部9を介して、アウターパネル2と第2インナー材3B(インナーパネル3)を接合(接着)することにより、両パネル2、3の間に空間部4を形成している。
【0057】
前記した自動車用フード1F(図10(a)〜(c)参照)または自動車用フード1G(図11(a)〜(c)参照)において、第2インナー材3Bは、吸音のための孔が多数設けられた多孔板で構成されていてもよい。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る自動車用フードの第2実施形態について、図面を参照して説明する。図12(a)は自動車用フードの他の形態を模式的に示す平面図、(b)〜(h)はインナーパネルの他の形態を模式的に示す平面図、(i)は(a)のC−C線断面図、(j)は(a)のD−D線断面図である。なお、既に説明した同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
図12(a)、(i)、(j)に示すように、本発明に係る自動車用フード1Hは、第1実施形態と同様に、アウターパネル2とインナーパネル(第1インナー材3A、第2インナー材3B)とを接合すると共に、両パネルが接合したときに所定位置の間に空間部4を介した断面構造を備える。
【0060】
<アウターパネル>
アウターパネル2は、その周縁部において、ヘム加工等による嵌合によって後記するインナーパネルの周縁部と接合され、アウターパネル2とインナーパネルの所定位置の間に空間部4を介した断面構造をとる。ここで、アウターパネル2の材質、板厚は前記第1実施形態と同様である。
【0061】
<インナーパネル>
インナーパネルは、アウターパネル2の周縁部の一部(図12(a)では一辺)と接合する断面形状が凹状の第1インナー材3A(図12(a)では、車前後方向の前方側に配置される)と、第1インナー材3Aよりパネル中央側に配置され、第1インナー材3Aに接合されると共に、アウターパネル2(図12(a)では、アウターパネル2のパネル中央部および周縁部の残りの三辺)と接合する第2インナー材3Bとからなる。ここで、インナーパネルの材質、板厚は前記第1実施形態と同様である。
【0062】
(第1インナー材)
第1インナー材3Aは、アウターパネル2の周縁部2aの一部(図12(a)では、一辺)と接合する外側縁部5aと、外側縁部5aに連続して形成されアウターパネル2との間に空間部4を形成する第1インナー凹状部5と、第1インナー凹状部5に連続して形成され第2インナー材3Bに接合する内側縁部5bとを備える。ここで、周縁部2aと外側縁部5aとの接合、内側縁部5bと第2インナー材3B(接合部6)との接合、第1インナー材3Aの板厚、第1インナー凹状部5の形状(断面高さ)は、前記第1実施形態と同様である。
【0063】
(第2インナー材)
第2インナー材3Bは、前記第1インナー材3Aの内側縁部5bと接合する接合部6を有すると共に、アウターパネル2との間に空間部4を形成する第2インナー凹状部7と、第2インナー凹状部7と連続して形成されアウターパネル2の他の残りの周縁部2a(図12(a)では、第1インナー材3Aが接合されていない周縁部の三辺)と接合する縁部10aと、接合部6よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネル2に接合するパネル接合部(図示せず、第1実施形態と同様であるので、図1(c)、図10(c)、図11(c)参照)と、接合部6に連続して形成され第1インナー凹状部5内に延出してアウターパネル2と接合する延出部8とを備える。
【0064】
ここで、アウターパネル2の周縁部2aと縁部10aとの接合は、機械的接合、例えば、ヘム加工によって接合することが好ましいが、溶接、樹脂層等による接着等でもよい。また、パネル接合部、延出部8とアウターパネル2との接合、延出部8の接着位置、第2インナー材3Bの板厚、第2インナー凹状部7の形状(断面高さ)は、前記第1実施形態と同様である。さらに、第2インナー凹状部7としては、第1実施形態で記載した、凹状ビーム、コーン状凸部、波状ビードで形成された凹状部のいずれでもよい(図1、図10、図11参照)。
【0065】
前記したように、自動車用フード1Hにおいては、インナーパネルを構成する第1インナー材3Aと第2インナー材3Bとが、両インナー材3A、3Bの周縁部の両者でアウターパネル2の周縁部と接合するように接合配置され、第1インナー材3Aが枠形状を有しないことに特徴がある。前記第1実施形態の自動車用フード1A〜1Gでは、枠形状の第1インナー材3Aのみがアウターパネル2の周縁部と接合している。
【0066】
このような両インナー材3A、3Bの接合配置としては、図12(a)で記載した接合配置に限定されず、以下のような接合配置をとることが可能である。図12(b)〜(h)はインナーパネル(第1インナー材3A、第2インナー材3B)の変形例であって、アウターパネル2の記載は省略した。
【0067】
図12(b)は、車前後方向の後方側(運転席側)に配置された短冊状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の一辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の三辺に第2インナー材3Bが接合する。
【0068】
図12(c)、(d)は、車前後方向の前後側、または、車幅方向の両側に配置された2つの短冊状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の二辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の二辺に第2インナー材3Bが接合する。
【0069】
図12(e)、(f)は、車前後方向の前方側または後方側に配置されたコ字状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の三辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の一辺に第2インナー材3Bが接合する。また、コ字状の第1インナー材3Aとして、3つの短冊状の第1インナー材を溶接等で接合したテーラドブランク材を使用してもよい。
【0070】
図12(g)、(h)は、車前後方向の前方側または後方側、および車幅方向の両側に配置された3つの短冊状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の三辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の一辺に第2インナー材3Bが接合する。
【0071】
自動車用フード1Hは、前記第1実施形態と同様に、所定幅の延出部8(図6(a)参照)を備える自動車用フードであってもよい。また、延出部8から立ち上げて形成されたフランジ部11(図7(a)参照)を備える自動車用フードであってもよい。さらに、第2インナー材3Bの板厚を第1インナー材3Aの板厚と異なるものとした自動車用フードであってもよい。なお、複数の第1インナー材3A(図12(c)、(d)、(g)、(h)参照)を使用する場合には、それぞれの板厚が異なるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a)は自動車用フードの構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図2】図1の自動車用フードの分解斜視図である。
【図3】(a)は図1の第1インナー凹状部の拡大端面図、(b)は図1の第2インナー凹状部の拡大端面図である。
【図4】(a)は第1、2インナー材の模式的な平面図、(b)は他の第1インナー材の模式的な平面図である。
【図5】(a)は延出部の形態を示す図1(a)のB−B線における部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。
【図6】(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。
【図7】(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図である。
【図8】(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。
【図9】(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は(a)の頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図である。
【図10】(a)は自動車用フードの他の形態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図11】(a)は自動車用フードの他の形態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図12】(a)は自動車用フードの他の形態を模式的に示す平面図、(b)〜(h)はインナーパネルの他の形態を模式的に示す平面図、(i)は(a)のC−C線端面図、(j)は(a)のD−D線端面図である。
【図13】(a)は従来の自動車用フードの構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図14】(a)は従来の自動車用フードの頭部衝突を模式的に示す説明図であり、(b)は頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図であり、(c)は加速度aとストロークとの関係を示す説明図である。
【図15】(a)、(b)は従来の自動車用フードの対策例を示す第1インナー凹状部の端面図であり、(c)は(b)の自動車用フードにおける頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図、(d)は(b)の頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図であり、(e)は従来の自動車用フードの他の対策例を示す第1インナー凹状部の端面図である。
【図16】(a)は従来の自動車用フードの他の形態の構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図17】(a)は従来の自動車用フードの他の形態の構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【符号の説明】
【0073】
1A 自動車用フード
2 アウターパネル
3 インナーパネル
3A 第1インナー材
3B 第2インナー材
4 空間部
5 第1インナー凹状部
5a 外側縁部
5b 内側縁部
6 接合部
7 第2インナー凹状部
8 延出部
10 パネル接合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用フードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車事故における歩行者保護が法規化され、歩行者保護性能が自動車用フードのレーティングの指標としても注目されている。一方で、自動車は、エンジシの高出力化により、エンジンが大型化されると共に、多機能化によりエンジンルーム内の部品も増加するため、歩行者保護に必要なフード下のスペースも小さくなってきている。そのため、スポーティなデザインと歩行者保護性能とを両立するためには、小スペースで効率よく衝突エネルギーを吸収できる自動車用フードの開発が重要である。
【0003】
前記のような自動車用フードとして、特許文献1では、アウターパネルとインナーパネルとを接合したときに両パネルの間に空間部を介した断面構造を備えるフード構造を持った自動車用フードが記載されている。また、前記空間を形成するために、インナーパネルに深さの異なる複数のディンプルを形成したフード構造が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたフード構造と類似したフード構造を持った自動車用フードの例を、図13、図16、図17に示す。
図13(a)〜(c)に示すように、自動車用フード(ビーム型フード構造)21Aは、所定の曲率を有するアウターパネル22と、周縁部に凹状部25を、中央部にパネル平面方向の縦、横、斜め方向に適宜交差またはほぼ平行に、または扇状に延在する複数のビーム26を有すると共に、ビーム26間はトリムされた欠損部26Aを有するインナーパネル23とから構成され、アウターパネル22の周縁部と、インナーパネル23の凹状部25端部をヘム加工によって接合することによって、空間部24を介した断面構造をとっている。また、ビーム26の側壁頂部上に接着部27を所定間隔に配置し、この接着部27を介して、ビーム26とアウターパネル22の裏面とが接着されている。さらに、自動車用フード21Aの補強部材としてのロックレインフォースメント30、ヒンジレインフォースメント31が、凹状部25に接合されている。
【0005】
図16(a)〜(c)に示すように、自動車用フード(コーン型フード構造)21Bは、所定の曲率を有するアウターパネル22と、周縁部に凹状部25を、中央部に規則的な配置で複数のコーン状の凸部28を有するインナーパネル23とから構成され、アウターパネル22の周縁部と、インナーパネル23の凹状部25端部をヘム加工によって接合することによって、空間部24を介した断面構造をとっている。また、凸部28の頂部上に接着部27を配置し、この接着部27を介して、凸部28とアウターパネル22の裏面とが接着されている。さらに、自動車用フード21Bの補強部材としてのロックレインフォースメント30、ヒンジレインフォースメント31が、凹状部25に接合されている。
【0006】
図17(a)〜(c)に示すように、自動車用フード(波状ビード型フード構造)21Cは、所定の曲率を有するアウターパネル22と、周縁部に凹状部25を、中央部に車前後方向に平行な配置で複数の波状ビード29を有するインナーパネル23とから構成され、アウターパネル22の周縁部と、インナーパネル23の凹状部25の端部をヘム加工によって接合することによって、空間部24を介した断面構造をとっている。また、波状ビード29の頂部上に接着部27を所定間隔に配置し、この接着部27を介して、波状ビード29とアウターパネル22の裏面とが接着されている。さらに、自動車用フード21Cの補強部材としてのロックレインフォースメント30、ヒンジレインフォースメント31が、凹状部25に接合されている。
【0007】
また、自動車用フードの歩行者保護性能は、一般には頭部傷害値(以下HIC値と略す)により評価され、HIC値は、下式(1)(任意時間内の平均加速度の2.5乗と発生時間の積の最大値)で与えられる。そして、HIC値が小さいほど、歩行者保護性能が優れている。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、aは頭部重心における3軸合成加速度(単位はG)、t1、t2は0<t1<t2となる時間tでHIC値が最大となる時間で、計算時間(t2−t1)は15msec以下と決められている。
【0010】
図14(a)は、従来の自動車用フード(ビーム型フード構造21A、図13(a)〜(c)参照)の頭部衝突を模式的に示す説明図であり、図14(b)は、頭部衝突の際の加速度aと時間tとの関係を示す説明図であり、図14(c)は、加速度aとストローク(頭部衝突の際のエンジンルーム内への頭部侵入変位量)Sとの関係を示す説明図である。図14(b)、(c)に示すように、歩行者の頭部が自動車用フードに衝突するときの加速度は、通常、頭部が自動車用フードに衝突して発生する1次衝突加速度と、その後、自動車用フード21Aがエンジンルーム内の内蔵部品に接触して発生する2次衝突加速度に大別できる。なお、図16(a)〜(c)の自動車用フード(コーン型フード構造)21B、図17(a)〜(c)の自動車用フード(波状ビード型フード構造)21Cにおいても、1次衝突加速度と2次衝突加速度の大小関係に差異はあるが、図14(b)、(c)と同様な加速度aと時間tとの関係、および加速度aとストロークSとの関係を示す。
【0011】
一方、自動車用フードは、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性など、従来から求められる基本性能も満足しなければならない。張り剛性は、ワックスがけや自動車用フードをロックする際に押込む時の弾性変形を抑制するために必要であり、アウターパネルのヤング率と板厚、および、アウターパネルとインナーパネルの接合位置(図13、図16、図17では接着部27の接着位置)により決定される。耐デント性は、飛石などにより残留する塑性変形を抑制するために必要で、アウターパネルの耐力と板厚に影響を受ける。曲げ剛性は、自動車用フードをロックする際の引込み力と、クッションゴム、ダンパーステイ、シールゴムなどの反力により発生する自動車用フード周縁部の弾性変形を抑制するために必要であり、自動車用フード周縁部のインナーパネルおよびレインフォースメントの形状(断面2次モーメント)、ヤング率に影響される。ねじり剛性は、自動車用フード周縁部の曲げ剛性と、インナーパネル中央部の板厚および形状に影響される。
【特許文献1】特開2000−168622号公報(請求項1、図1〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
自動車用フードは、これらの基本性能と歩行者保護性能の両方を満足しなければならないが、自動車用フードとエンジン等の構造物との間となる自動車用フード下方のスペースが制限されるため、基本性能だけを満足するように材質、板厚、形状を設計したフードでは歩行者保護性能を満足できない場合が多い。
【0013】
そして、前記した従来の自動車用フード21A、21B、21Cにおいては、自動車用フード下のスペースが小さい場合には、図14(b)、(c)に示すように、1次衝突よりも2次衝突の方が発生する加速度が大きく、継続時間も長くなるため、2次衝突の加速度が上式(1)で計算されるHIC値に悪影響を与える(HIC値が満足するレベルに達しない)。また、特に曲げ剛性が要求される自動車用フード21A、21B、21Cの周縁部では、インナーパネル23の凹状部25およびレインフォースメント30、31の断面2次モーメントを大きくしなければならず、また、張り剛性も確保する必要があるために、凹状部25がつぶれ変形しにくい。そのため、2次衝突の際の加速度を低減できず、歩行者保護性能を向上させることできないという問題がある。
【0014】
この問題を自動車用フードのフード構造で解決するための1つの対策は、1次衝突の際のエネルギー吸収量を十分に確保して2次衝突の加速度を軽減することである。これを実現するための方法として、板厚増加が考えられるが、図15(a)に示すように、アウターパネル22の板厚を増加すると、ヘム加工時のヘム部22Aに割れが発生すると共に、ヘム部22AのRが大きくなり見栄えが悪化するなどの問題がある。
【0015】
一方、図15(b)に示すように、インナーパネル23の周縁部(凹状部25)の板厚を増加すると、つぶれ変形荷重が増大するため、エンジン等の構造物である内蔵部品との2次衝突Gが増大し、結果的にHIC値が逆に悪化する。特に、周縁部の凹状部25は、高い曲げ剛性が要求されるため、板厚を増大した場合であっても、凹状部25の断面高さhを減少できないため、図15(c)、(d)に示すように、1次衝突の際のエネルギー吸収量は増加するが、2次衝突の際の加速度の立上りが急激となり、ストロークが減少して、HIC値の悪化につながるという問題がある。なお、図15(c)、(d)において、破線は、周縁部(凹状部25)の板厚を増加していないインナーパネルを使用した自動車用フードを使用した場合のものである。
【0016】
歩行者保護性能を向上するための別の対策は、1次衝突の際のエネルギー吸収量を保持または増大すると同時に、フードのつぶれ変形荷重を低下させ、2次衝突の際の加速度を低減することにある。これを実現するためには、図15(e)に示すように、インナーパネル23の周縁部(凹状部25)の形状をつぶれやすい形状にする方法、具体的には、インナーパネル23の凹状部25の形状をダラす(凹状部25の側壁の傾斜角度θ1、θ2を緩やかにする)方法が考えられる。しかしながら、この方法においても、自動車用フードの曲げ剛性を確保するためには、凹状部25の断面を小さくできないので、アウターパネル22とインナーパネル23とを接合(接着)する間隔Lが広がり、アウターパネル22の弾性変形量Dが大きくなるため、アウターパネル22の張り剛性が不足するという問題がある。
【0017】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、自動車用フード、特に自動車用フードの周縁部に求められる基本性能を満足すると同時に、歩行者保護性能に優れた自動車用フードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部と接合する枠状で断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材の枠内側に配置され、一側で当該第1インナー材に接合し、他側で前記アウターパネルに接合する第2インナー材とからなり、前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備える自動車用フードとして構成したものである。
【0019】
このように構成すれば、インナーパネル(第1インナー材)の第1インナー凹状部の断面2次モーメント(断面の大きさ)を従来の自動車用フードと同等にすることで曲げ剛性が確保される。その際、第1インナー凹状部をダレた形状にできる。そのため、頭部衝突の際、1次衝突でのエネルギー吸収量が増大し、また、フードのつぶれ変形荷重が小さくなりストロークも確保されるため、2次衝突加速度が低減される。さらに、第1インナー凹状部内に延出された第2インナー材の延出部とアウターパネルとが接合されていることにより、アウターパネルの周縁部において、アウターパネルとインナーパネル(第2インナー材)とを接合(接着)する間隔が広がらず、アウターパネルの張り剛性も確保される。
【0020】
また、請求項2に係る発明は、アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材よりパネル中央側に配置され当該第1インナー材および前記アウターパネルと接合する第2インナー材とからなり、前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記第2インナー凹状部と連続して形成され前記アウターパネルの他の残りの周縁部と接合する縁部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備える自動車用フードとして構成したものである。
【0021】
このように構成すれば、前記請求項1の作用に加えて、インナーパネルを作製する際に、第1インナー材を枠状に形成する必要がなく、部材使用量が低減し、軽量化される。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、前記第2インナー材は、延出部が前記接合部から所定幅で延出する自動車用フードとして構成したものである。
このように構成すれば、第2インナー材の延出部の面積が小さくなり、第2インナー材が軽量化される。
【0023】
また、請求項4に係る発明は、前記第2インナー材は、前記延出部から所定角度に立ち上げて連続して形成され、前記アウターパネルの周縁部側に延出するフランジ部を備える自動車用フードとして構成したものである。
このように構成すれば、頭部衝突の際、1次衝突でのエネルギー吸収量がより一層増大するため、2次衝突加速度がより一層低減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1に係る自動車用フードによれば、インナーパネルを枠状の第1インナー材と第2インナー材との2部品から構成し、第1インナー材が第1インナー凹状部を備え、第2インナー材が第2インナー凹状部と、パネル結合部および延出部を備えるため、自動車用フードとしての基本性能(張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性など)を満足すると同時に、自動車用フードの中央部および周縁部において、HIC値が小さくなり、歩行者保護性能に優れる。また、第1インナー材とは別に、第2インナー材の材質、板厚を自動車用フードの必要性能に応じて決定できるため、歩行者保護性能を最適にするための設計自由度が増す。
【0025】
また、請求項2に係る自動車用フードによれば、第1インナー材が枠状に形成されず、第1インナー材の材料無駄がなくなるため、前記請求項1の効果と併せて、自動車用フードの製品コストが低下する。
【0026】
また、請求項3に係る自動車用フードによれば、第2インナー材の延出部が所定幅で構成され、その面積が小さくなるため、前記請求項1の効果と併せて、自動車用フードが軽量化されると共に、製品コストが低下する。
【0027】
さらに、請求項4に係る自動車用フードによれば、第1インナー材が延出部から延出されたフランジ部を備えるため、HIC値がより一層小さくなり、歩行者保護性能がより一層優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[第1実施形態]
本発明に係る自動車用フードの第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は自動車用フードの構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図、図2は図1の自動車用フードの分解斜視図、図3(a)は図1の第1インナー凹状部の拡大端面図、(b)は図1の第2インナー凹状部の拡大端面図、図4(a)は第1、2インナー材の模式的な平面図、(b)は他の第1インナー材の模式的な平面図、図5(a)は延出部の形態を示す図1(a)のB−B線における部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。なお、前記図面の一部では、アウターパネルおよびインナーパネル(第1、2インナー材)の厚みを記載せず、線で示した。
【0029】
図1、図2に示すように、本発明に係る自動車用フード1Aは、アウターパネル2とインナーパネル3とを接合すると共に、両パネル2、3が接合したときに両パネル2、3の所定位置の間に空間部4を介した断面構造を備える。
【0030】
<アウターパネル>
アウターパネル2は、所定の曲率を有し、軽量で高張力な金属製板材で構成され、金属は鋼、または、3000系、5000系、6000系または7000系のアルミニウム合金であることが好ましい。また、アウターパネル2の板厚は、例えば、鋼板では1.1mm以下、アルミニウム合金板では1.5mm以下が好ましい。なお、アウターパネル2は、樹脂製、カーボンファイバー製の板材で構成されていてもよい。
また、アウターパネル2は、その周縁部において、ヘム加工等による嵌合、接着、ろう付け等によって後記するインナーパネル3の周縁部と接合され、アウターパネル2とインナーパネル3との間に空間部4を介した断面構造をとる。
【0031】
<インナーパネル>
インナーパネル3は、アウターパネル2の周縁部と接合する枠状で断面形状が凹状の第1インナー材3Aと、第1インナー材3Aの枠内側に配置され、一側で第1インナー材3Aに接合し、他端でアウターパネル2に接合する第2インナー材3Bとからなる。第1インナー材3A、第2インナー材3Bは、軽量で高張力な金属製板材で構成され、金属は鋼、または、3000系、5000系、6000系または7000系のアルミニウム合金であることが好ましい。
【0032】
(第1インナー材)
図1、図3(a)に示すように、第1インナー材3Aは、アウターパネル2の周縁部2aと接合する外側縁部5aと、外側縁部5aに連続して形成されアウターパネル2との間に空間部4を形成する第1インナー凹状部5と、第1インナー凹状部5に連続して形成され、後記する第2インナー材3Bに接合する内側縁部5bとを備える。ここで、周縁部2aと外側縁部5aの接合は、機械的接合、例えば、ヘム加工によって接合することが好ましいが、溶接、樹脂層等による接着等でもよい。また、内側縁部5bと第2インナー材3B(接合部6)との接合は、溶接による接合が好ましいが、機械的接合、樹脂層等による接着等でもよい。
【0033】
図3(a)に示すように、第1インナー材3Aの板厚T1は、特に自動車用フード1Aが使用される自動車の車種によって決定されるアウターパネル2の曲げ剛性によって選択され、その適正値はアルミニウム合金板の場合には0.7〜1.5mm、鋼板の場合には0.5〜1.1mmが好ましい。板厚T1が下限値未満であると、自動車用フードの曲げ剛性が不足しやすく、板厚T1が上限値を超えると、つぶれ変形荷重が増大するため、歩行者保護性能が低下しやすい。なお、第1インナー材3Aだけで曲げ剛性を確保して、ロックレインフォースメント30(図1(a)、(b)参照)を省略することも可能であるが、この場合の板厚T1は、前記よりもさらに増大させた板厚が好ましく、アルミニウム合金板では1.5〜3.5mm、鋼板では1.1〜2.5mmが好ましい。
【0034】
第1インナー材3Aの第1インナー凹状部5の形状は、自動車用フード1Aの剛性、歩行者保護性能に影響し、また、第1インナー凹状部5の形状を決定する断面高さH1、H2の適正値は、5mm<H1<60mm、10mm<H2<80mm、20mm<H1+H2<120mmが好ましい。断面高さH1、H2が下限値以下では、自動車用フード1Aの曲げ剛性が不足しやすい、断面高さH1、H2が上限値以上では、第1インナー材3Aがエンジン等の構造物である内蔵部品に接触するタイミングが早いため、2次衝突加速度が増大してHIC値が大きくなりやすい(歩行者保護性能が低下しやすい)。また、第1インナー凹状部5の形状は、後記する第2インナー材3Bに延出部8を設け、アウターパネル2へ接合することにより、同等の断面2次モーメントを有する第1インナー凹状部5であっても、凹状部の高さが小さく、斜面(側壁)の傾斜角度が小さい、すなわち、ダレた形状をとることが可能となる。
【0035】
第1インナー材3Aは、図4(a)に示すように、板材の中央部に欠損部を持った枠状の板材で構成されている。そして、欠損部の面積S1は、第2インナー材3Bの面積S2よりも小さい面積で形成される。その結果、欠損部の部材を第2インナー材3Bとして使用することができず、欠損部の部材が無駄になる。このような問題を解決するため、図4(b)に示すように、第1インナー材3Aとして、4つの部材3a、3b、3c、3dを溶接等で接合したテーラドブランク材を使用することが好ましい。テーラドブランク材の使用により、無駄となる欠損部の発生がなくなり、製造コストを低下させることが可能となる。
【0036】
(第2インナー材)
図1、図3(a)、(b)、図5(a)に示すように、第2インナー材3Bは、第1インナー材3Aの内側縁部5bと溶接等で接合する接合部6を有すると共に、アウターパネル2との間に空間部4を形成する第2インナー凹状部7と、接合部6よりパネル中央側となる位置でアウターパネル2に接合するパネル接合部10と、接合部6に連続して形成され第1インナー凹状部5内に延出してアウターパネル2と接合する延出部8とを備える。
【0037】
第2インナー凹状部7は、第2インナー材3Bの表面に縦、横、斜め方向に適宜交差またはほぼ平行に延在する凹状のビームにより形成され、ビームの間にはトリム(肉抜き)された欠損部10A(図1(a)参照)が形成されている。そして、第2インナー凹状部7(凹状のビーム)の端面には、パネル接合部10となるリブ部が形成されている。また、パネル接合部10は、後記する延出部8と共に、樹脂層等で構成された接着部9を介して、アウターパネル2に接着(接合)され、アウターパネル2と第2インナー材3Bとの間に空間部4を形成する。接合方法は、接着部9を介する接着に限定されず、機械的接合、溶接等による接合でもよい。さらに、第2インナー材3Bでのビームの形成形態(欠損部10Aの形状)は、図1(a)に記載された形成形態に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0038】
第2インナー材3Bが延出部8を備え、その延出部8が、接合部6に連続して形成され第1インナー凹状部5内に延出してアウターパネル2と接着部9を介して接着(接合)されることにより、アウターパネル2の張り剛性を向上させると共に、第1インナー凹状部5の形状を、必要な曲げ剛性を有し、かつ、つぶれ変形荷重が低減された歩行者保護性能に優れたダレた形状に設計することを可能にする。また、延出部8の接着(接合)位置、すなわち、アウターパネル2の周縁部2aからの間隔L(図3(a)参照)は、自動車用フード1Aが使用される車種によって異なるアウターパネル2の張り剛性によって選択され、その適正値は250mm以下が好ましい。さらに、図5(a)に示すように、延出部8は、接合部6から第1インナー凹状部5内に所定角度で延出する傾斜面に凸状のビード部8aを所定間隔で設けてもよく、アウターパネル2と接着する平面に凹状の段差部8bを接着部9間に設けてもよい。このようなビード部8a、段差部8bを設けることによって、延出部8の形状凍結性が向上すると共に、頭部衝突の際の変形荷重をコントロールしやすくなる。
【0039】
図3(b)に示すように、第2インナー材3Bの板厚(第2インナー凹状部7の板厚T2)、形状(第2インナー凹状部7の高さH3)は、頭部衝突の際の頭部と自動車用フードの相対速度差により発生する慣性力に影響を与える。そのため、板厚、形状を適正化することにより、1次衝突の際の加速度が大きくなり、十分なエネルギー吸収量が確保され、自動車用フードの歩行者保護性能を向上させることが可能となる。
【0040】
第2インナー材3B(第2インナー凹状部7)の板厚T2の適正値は、第2インナー材3Bがアルミニウム合金板の場合には、0.3〜2.7mmであり、鋼板の場合には、0.4〜1.0mmである。板厚T2が、下限値未満であると第2インナー材3Bのプレス成形または圧延が困難になりやすく、上限値を越えると1次衝突でのHIC値が基準値(HIC値=1000)をオーバーしやすい。なお、第2インナー材3Bをアルミニウム合金、鋼以外の金属で作製する場合には、板厚T2の上限値を、使用する金属の比重に反比例して決定する。
【0041】
第2インナー材3Bの形状(第2インナー凹状部7の凹状部の断面高さH3)の適正値は、第2インナー材3Bがアルミニウム合金製板材、鋼製板材の場合には、3〜30mmである。断面高さH3が、下限値未満であると前記板厚T2を上限値に設定しても、第2インナー凹状部7による剛性の向上効果が小さくなりやすい。その結果、頭部衝突の際に、衝突位置の近傍だけが変形して、衝突位置の周囲に応力が伝播しないため、第2インナー材3Bの質量が慣性力として有効に作用しにくく、1次衝突の際に十分なエネルギー吸収量が確保されずHIC値が悪化しやすい。また、断面高さH3が、上限値を越えると、自動車用フード下方のスペースにもよるが、第2インナー材3Bがエンジン等の構造物である内蔵部品に衝突するタイミングが早くなりやすく、2次衝突加速度が増大してHIC値が悪化しやすい。
【0042】
第2インナー材3Bの板厚T2、断面高さH3の両方が上限値に近い場合には、第2インナー凹状部7の斜面の傾斜角度でつぶれ変形荷重を調整することにより、HIC値の悪化を防止できるが、アウターパネル2とインナーパネル3(第2インナー材3B)との接合(接着)間隔Lが広がりやすく、アウターパネル2の張り剛性を確保しにくくなる。したがって、板厚T2、高さH3のいずれか一方が上限値に近い値である場合には、他方は上限値に遠くなる値に設定されることが好ましい。
【0043】
前記したように、本発明に係る自動車用フード1Aは、アウターパネル2の周縁部2aとインナーパネル3の周縁部5aとを接合することにより、両パネル2、3の所定位置の間に、第1インナー凹状部5(第1インナー材3A)および第2インナー凹状部7(第2インナー材3B)から形成された空間部4を形成すると共に、この第2インナー凹状部7の端面に形成されたパネル接合部10と、第2インナー材3Bの周縁部に形成された延出部8とをアウターパネル2に接着部9を介して接着(接合)した断面構造を備える(図1(b)、(c)、図5(a)参照)。
【0044】
(歩行者保護性能向上の機構)
自動車用フード1Aでは、前記のような断面構造を備えることにより、頭部衝突の際の加速度は、図5(b)の実線に示すような加速度推移をとる。図5(b)に示すように、自動車用フード1Aでは、従来の自動車用フード21Aに比べて、1次衝突の際の加速度が増大し、1次衝突の際のエネルギー吸収量が増大する。また、自動車用フード1Aのつぶれ変形量が増大してつぶれ残りが小さくなり、ストロークが増大する。その結果、2次衝突の際の加速度が減少する。このような加速度推移から、前記した数式(1)によって計算された歩行者保護性能の指標となるHIC値は、任意時間内の平均加速度が減少することにより、小さいものとなる。したがって、自動車用フード1Aは歩行者保護性能が向上することがわかる。
【0045】
(剛性確保の機構)
図1(b)、(c)に示すように、自動車用フード1Aでは、第1インナー材3Aの第1インナー凹状部5および第2インナー材3Bの延出部8により形成された空間部4により、フードの断面部面積が確保されるため、フードとして必要される曲げ剛性、ねじり剛性が得られる。それと共に、インナーパネル3(第2インナー材3B)の延出部8が接着部9を介してアウターパネル2に接合(接着)し、その接合(接着)位置がアウターパネル2の外周側に配置されていることにより、フードとして必要とされる張り剛性、耐デント性が得られる。
【0046】
次に、本発明に係る自動車用フード1Aの変形例について、図面を参照して説明する。図6(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、図7(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図、図8(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、図9(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は(a)の頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図、図10〜11(a)は自動車用フードの他の形態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。なお、前記図面の一部において、アウターパネル、インナーパネル(第1、2インナー材)の厚みを記載せず、線で示した。
【0047】
(延出部の変形例)
自動車用フード1Aの延出部8は、図5(a)では、第2インナー材3B(接合部6)の周縁部の全周に連続して形成された例を示したが、周縁部の全周に形成された形態に限定されず、例えば、周縁部のコーナー部には延出部が形成されない形態でもよい。また、例えば、自動車用フード下のスペースが十分確保されている場合には、図6(a)に示すように、第2インナー材3Bの接合部6から所定幅(接着部9を確保できる所定幅La、例えば15mm)で延出した延出部8を所定間隔Lb(例えば、100〜300mm)で周縁部の全周に備える自動車用フード1Bであってもよい。この自動車用フード1Bにおいては、図6(b)に示すように、フード下のスペースが十分確保されているため、頭部衝突の際のストロークSが十分確保され、2次衝突加速度を低く維持できる。その結果、HIC値も低くなる。また、自動車用フード1Bにおいても、延出部8が接着部9を介してアウターパネル(図示せず)に接合(接着)されているため、アウターパネルの張り剛性も十分確保される。
【0048】
逆に、自動車用フード下のスペースが小さく、頭部衝突の際の2次加速度が増大しやすい場合には、図7(a)に示すように、第2インナー材3Bの延出部8から所定角度に立ち上げて形成され、アウターパネル(図示せず)の周縁部側、すなわち、アウターパネル周縁部と接合する第1インナー材3Aの外側縁部5a側に延出するフランジ部11を備える自動車用フード1Cが好ましい。ここで、フランジ部11の形状は、頭部衝突における変形時に第1インナー材3Aと干渉しない形状に形成されることが好ましい。この自動車用フード1Cにおいては、図7(b)、(c)の実線に示すように、頭部衝突の際、フランジ部を備えていない自動車用フード1Aに比べて、1次衝突でのエネルギー吸収量が増大し、2次衝突加速度が低減され、HIC値も低くなる。また、フランジ部11または延出部8は、その端面から部分的に車幅方向または車前後方向に延出し、第1インナー材3A(第1インナー凹状部5)と接合(接着)する脚部11aまたは脚部11bを有していてもよい。このような脚部11a、11bを有することによって、第2インナー材3Bの組付け性が向上すると共に、フランジ部11がアウターパネル(図示せず)の内面側に当たってアウターパネルに傷がつくのを防ぐことができる。
【0049】
(第2インナー材の板厚の変形例)
本発明に係る自動車用フードは、第2インナー材3Bの板厚T2(図3(b)参照)を、第1インナー材とは別に、自動車用フードの必要性能に応じて決定したものであってもよい。例えば、自動車用フード下(インナーパネル下)のスペースSPが十分に確保できる場合には、図8(a)に示すように、第2インナー材3B(第2インナー凹状部7)の板厚を減少(図示しない第1インナー材の板厚よりも減少)させた自動車用フード1Dが好ましい。この自動車用フード1Dにおいては、図8(b)の実線に示すように、頭部衝突の際に、前記した自動車用フード1Aに比べて、第2インナー凹状部7のつぶれ変形荷重が小さくなるため、フード変形量が大きくなり、ストロークも大きくなる。その結果、2次加速度が増加せず、HIC値も悪化しない。加えて、板厚減少により、自動車用フード1Dを軽量化することができる。
【0050】
逆に、図9(a)に示すように、自動車用フード下のスペースSPが小さい場合には、第2インナー材3B(第2インナー凹状部7)の板厚を増加(図示しない第1インナー材板厚よりも増加)すると共に、第2インナー凹状部7の高さを小さくして、凹状部の斜面の傾斜角度を緩やかにした(形状をダラした)自動車用フード1Eが好ましい。この自動車用フード1Eにおいては、図9(b)、(c)の実線に示すように、頭部衝突の際に、前記した自動車用フード1Aおよび従来例21Aに比べて、1次衝突でのエネルギー吸収量が増大する。そして、第2インナー凹状部7の形状をダラすことにより、つぶれ変形荷重が小さくなると共に、インナーパネル(第2インナー材3B)が内蔵部品に衝突するタイミング(P1、P2、P3)が遅くなる。その結果、ストロークが増大するため、2次加速度が低減され、HIC値も低くなる。
【0051】
(第2インナー凹状部の変形例)
本発明に係る自動車用フードは、図10(a)〜(c)に示すように、第2インナー材3Bの表面に、多数のコーン状の凸部(円錐台状、底面の直径60〜180mm)を所定間隔(80〜210mm)で配置させ、その凸部の間に形成された凹部を第2インナー凹状部7とした自動車用フード1Fとしてもよい。自動車用フード1Fの凸部の高さは、3〜30mmが好ましい。凸部底面の直径、凸部間隔、凸部高さが前記範囲外であると、自動車用フード1Fの剛性、歩行者保護性能が低下しやすくなる。
【0052】
また、自動車用フード1Fの剛性、歩行者保護性能が満足できるレベルであれば、フード下のスペース、または、フード下に配置される内蔵部品の剛性に対応して、大小数種類の高さを有する凸部を使用してもよい。また、凸部の直径(底面の直径)、凸部間隔も、同一直径、同一間隔だけでなく、異なる直径、間隔を設定してもよい。
【0053】
そして、自動車用フード1Fにおいては、凸部の頂部をパネル接合部12とし、そのパネル接合部12上に樹脂層等の接着部9を配置して、その接着部9を介して、アウターパネル2と第2インナー材3B(インナーパネル3)を接合(接着)することにより、両パネル2、3の間に空間部4を形成している。
【0054】
本発明に係る自動車用フードは、図11(a)〜(c)に示すように、第2インナー材3Bの表面に、第2インナー材3B(インナーパネル3)の車前後方向(A−A線方向)に向かう複数本の波状ビード(凸部)を互いに略平行に配置させ、その波状ビード(凸部)の間に形成された凹部を第2インナー凹状部7とした自動車用フード1Gであってもよい。そして、波状ビード(凸部)と第2インナー凹状部7とによって、車幅方向(B−B線方向)にサイン波状またはサインn乗波状に連続する断面形状を有することが好ましく、その波の高さは3〜30mm、波長は80〜220mmが好ましい。波の高さ、波長が前記範囲外であると、自動車用フード1Gの剛性、歩行者保護性能が低下しやすくなる。
【0055】
また、自動車用フード1Gの剛性、歩行者保護性能が満足できるレベルであれば、波状ビードの配置方向は、車前後方向(A−A線方向)に対して平行に限らず、例えば、斜めであってもよいし、第2インナー材3Bの略中心に対して楕円状などを含む同心円状であってもよい。さらに、2種の波状ビードを、車前後方向または車幅方向に互いに平行、直交、または、V字状(U字状)に配置して、2重波状となるようにしてもよい。さらに、波状ビードの幅(波長)も図11(a)においては、所定範囲内で変化させているが、同一幅で形成してもよい。
【0056】
そして、自動車用フード1Gにおいては、波状ビードの頂部をパネル接合部13とし、そのパネル接合部13上に樹脂層等の接着部9を配置して、その接着部9を介して、アウターパネル2と第2インナー材3B(インナーパネル3)を接合(接着)することにより、両パネル2、3の間に空間部4を形成している。
【0057】
前記した自動車用フード1F(図10(a)〜(c)参照)または自動車用フード1G(図11(a)〜(c)参照)において、第2インナー材3Bは、吸音のための孔が多数設けられた多孔板で構成されていてもよい。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る自動車用フードの第2実施形態について、図面を参照して説明する。図12(a)は自動車用フードの他の形態を模式的に示す平面図、(b)〜(h)はインナーパネルの他の形態を模式的に示す平面図、(i)は(a)のC−C線断面図、(j)は(a)のD−D線断面図である。なお、既に説明した同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
図12(a)、(i)、(j)に示すように、本発明に係る自動車用フード1Hは、第1実施形態と同様に、アウターパネル2とインナーパネル(第1インナー材3A、第2インナー材3B)とを接合すると共に、両パネルが接合したときに所定位置の間に空間部4を介した断面構造を備える。
【0060】
<アウターパネル>
アウターパネル2は、その周縁部において、ヘム加工等による嵌合によって後記するインナーパネルの周縁部と接合され、アウターパネル2とインナーパネルの所定位置の間に空間部4を介した断面構造をとる。ここで、アウターパネル2の材質、板厚は前記第1実施形態と同様である。
【0061】
<インナーパネル>
インナーパネルは、アウターパネル2の周縁部の一部(図12(a)では一辺)と接合する断面形状が凹状の第1インナー材3A(図12(a)では、車前後方向の前方側に配置される)と、第1インナー材3Aよりパネル中央側に配置され、第1インナー材3Aに接合されると共に、アウターパネル2(図12(a)では、アウターパネル2のパネル中央部および周縁部の残りの三辺)と接合する第2インナー材3Bとからなる。ここで、インナーパネルの材質、板厚は前記第1実施形態と同様である。
【0062】
(第1インナー材)
第1インナー材3Aは、アウターパネル2の周縁部2aの一部(図12(a)では、一辺)と接合する外側縁部5aと、外側縁部5aに連続して形成されアウターパネル2との間に空間部4を形成する第1インナー凹状部5と、第1インナー凹状部5に連続して形成され第2インナー材3Bに接合する内側縁部5bとを備える。ここで、周縁部2aと外側縁部5aとの接合、内側縁部5bと第2インナー材3B(接合部6)との接合、第1インナー材3Aの板厚、第1インナー凹状部5の形状(断面高さ)は、前記第1実施形態と同様である。
【0063】
(第2インナー材)
第2インナー材3Bは、前記第1インナー材3Aの内側縁部5bと接合する接合部6を有すると共に、アウターパネル2との間に空間部4を形成する第2インナー凹状部7と、第2インナー凹状部7と連続して形成されアウターパネル2の他の残りの周縁部2a(図12(a)では、第1インナー材3Aが接合されていない周縁部の三辺)と接合する縁部10aと、接合部6よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネル2に接合するパネル接合部(図示せず、第1実施形態と同様であるので、図1(c)、図10(c)、図11(c)参照)と、接合部6に連続して形成され第1インナー凹状部5内に延出してアウターパネル2と接合する延出部8とを備える。
【0064】
ここで、アウターパネル2の周縁部2aと縁部10aとの接合は、機械的接合、例えば、ヘム加工によって接合することが好ましいが、溶接、樹脂層等による接着等でもよい。また、パネル接合部、延出部8とアウターパネル2との接合、延出部8の接着位置、第2インナー材3Bの板厚、第2インナー凹状部7の形状(断面高さ)は、前記第1実施形態と同様である。さらに、第2インナー凹状部7としては、第1実施形態で記載した、凹状ビーム、コーン状凸部、波状ビードで形成された凹状部のいずれでもよい(図1、図10、図11参照)。
【0065】
前記したように、自動車用フード1Hにおいては、インナーパネルを構成する第1インナー材3Aと第2インナー材3Bとが、両インナー材3A、3Bの周縁部の両者でアウターパネル2の周縁部と接合するように接合配置され、第1インナー材3Aが枠形状を有しないことに特徴がある。前記第1実施形態の自動車用フード1A〜1Gでは、枠形状の第1インナー材3Aのみがアウターパネル2の周縁部と接合している。
【0066】
このような両インナー材3A、3Bの接合配置としては、図12(a)で記載した接合配置に限定されず、以下のような接合配置をとることが可能である。図12(b)〜(h)はインナーパネル(第1インナー材3A、第2インナー材3B)の変形例であって、アウターパネル2の記載は省略した。
【0067】
図12(b)は、車前後方向の後方側(運転席側)に配置された短冊状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の一辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の三辺に第2インナー材3Bが接合する。
【0068】
図12(c)、(d)は、車前後方向の前後側、または、車幅方向の両側に配置された2つの短冊状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の二辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の二辺に第2インナー材3Bが接合する。
【0069】
図12(e)、(f)は、車前後方向の前方側または後方側に配置されたコ字状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の三辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の一辺に第2インナー材3Bが接合する。また、コ字状の第1インナー材3Aとして、3つの短冊状の第1インナー材を溶接等で接合したテーラドブランク材を使用してもよい。
【0070】
図12(g)、(h)は、車前後方向の前方側または後方側、および車幅方向の両側に配置された3つの短冊状の第1インナー材3Aに第2インナー材3Bが接合されたインナーパネルであって、アウターパネルの周縁部の三辺に第1インナー材3Aが接合し、残りの周縁部の一辺に第2インナー材3Bが接合する。
【0071】
自動車用フード1Hは、前記第1実施形態と同様に、所定幅の延出部8(図6(a)参照)を備える自動車用フードであってもよい。また、延出部8から立ち上げて形成されたフランジ部11(図7(a)参照)を備える自動車用フードであってもよい。さらに、第2インナー材3Bの板厚を第1インナー材3Aの板厚と異なるものとした自動車用フードであってもよい。なお、複数の第1インナー材3A(図12(c)、(d)、(g)、(h)参照)を使用する場合には、それぞれの板厚が異なるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a)は自動車用フードの構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図2】図1の自動車用フードの分解斜視図である。
【図3】(a)は図1の第1インナー凹状部の拡大端面図、(b)は図1の第2インナー凹状部の拡大端面図である。
【図4】(a)は第1、2インナー材の模式的な平面図、(b)は他の第1インナー材の模式的な平面図である。
【図5】(a)は延出部の形態を示す図1(a)のB−B線における部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。
【図6】(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。
【図7】(a)は延出部の他の形態を示す部分断面斜視図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図である。
【図8】(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける、頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図である。
【図9】(a)は第2インナー材の他の形態を示す部分端面図、(b)は(a)の自動車用フードにおける頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図、(c)は(a)の頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図である。
【図10】(a)は自動車用フードの他の形態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図11】(a)は自動車用フードの他の形態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図12】(a)は自動車用フードの他の形態を模式的に示す平面図、(b)〜(h)はインナーパネルの他の形態を模式的に示す平面図、(i)は(a)のC−C線端面図、(j)は(a)のD−D線端面図である。
【図13】(a)は従来の自動車用フードの構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図14】(a)は従来の自動車用フードの頭部衝突を模式的に示す説明図であり、(b)は頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図であり、(c)は加速度aとストロークとの関係を示す説明図である。
【図15】(a)、(b)は従来の自動車用フードの対策例を示す第1インナー凹状部の端面図であり、(c)は(b)の自動車用フードにおける頭部衝突の際の加速度と時間との関係を示す説明図、(d)は(b)の頭部衝突の際の加速度とストロークとの関係を示す説明図であり、(e)は従来の自動車用フードの他の対策例を示す第1インナー凹状部の端面図である。
【図16】(a)は従来の自動車用フードの他の形態の構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【図17】(a)は従来の自動車用フードの他の形態の構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線端面図、(c)は(a)のB−B線端面図である。
【符号の説明】
【0073】
1A 自動車用フード
2 アウターパネル
3 インナーパネル
3A 第1インナー材
3B 第2インナー材
4 空間部
5 第1インナー凹状部
5a 外側縁部
5b 内側縁部
6 接合部
7 第2インナー凹状部
8 延出部
10 パネル接合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、
前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部と接合する枠状で断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材の枠内側に配置され、一側で当該第1インナー材に接合し、他側で前記アウターパネルに接合する第2インナー材とからなり、
前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、
前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備えることを特徴とする自動車用フード。
【請求項2】
アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、
前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材よりパネル中央側に配置され当該第1インナー材および前記アウターパネルと接合する第2インナー材とからなり、
前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、
前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記第2インナー凹状部と連続して形成され前記アウターパネルの他の残りの周縁部と接合する縁部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備えることを特徴とする自動車用フード。
【請求項3】
前記第2インナー材は、延出部が前記接合部から所定幅で延出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用フード。
【請求項4】
前記第2インナー材は、前記延出部から所定角度に立ち上げて連続して形成され、前記アウターパネルの周縁部側に延出するフランジ部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の自動車用フード。
【請求項1】
アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、
前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部と接合する枠状で断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材の枠内側に配置され、一側で当該第1インナー材に接合し、他側で前記アウターパネルに接合する第2インナー材とからなり、
前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、
前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備えることを特徴とする自動車用フード。
【請求項2】
アウターパネルの周縁部とインナーパネルの周縁部とを接合すると共に、両パネルの周縁部同士が接合したときに両パネルの所定位置の間に空間部を介した断面構造を備える自動車用フードにおいて、
前記インナーパネルは、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する断面形状が凹状の第1インナー材と、前記第1インナー材よりパネル中央側に配置され当該第1インナー材および前記アウターパネルと接合する第2インナー材とからなり、
前記第1インナー材は、前記アウターパネルの周縁部の一部と接合する外側縁部と、前記外側縁部に連続して形成され前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第1インナー凹状部と、前記第1インナー凹状部に連続して形成され前記第2インナー材に接合する内側縁部とを備え、
前記第2インナー材は、前記第1インナー材の内側縁部と接合する接合部を有すると共に、前記アウターパネルとの間に前記空間部を形成する第2インナー凹状部と、前記第2インナー凹状部と連続して形成され前記アウターパネルの他の残りの周縁部と接合する縁部と、前記接合部よりパネル中央側となる位置で前記アウターパネルに接合するパネル接合部と、前記接合部に連続して形成され前記第1インナー凹状部内に延出して前記アウターパネルと接合する延出部とを備えることを特徴とする自動車用フード。
【請求項3】
前記第2インナー材は、延出部が前記接合部から所定幅で延出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用フード。
【請求項4】
前記第2インナー材は、前記延出部から所定角度に立ち上げて連続して形成され、前記アウターパネルの周縁部側に延出するフランジ部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の自動車用フード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−245853(P2007−245853A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70530(P2006−70530)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(592260310)神鋼アルコア輸送機材株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(592260310)神鋼アルコア輸送機材株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]