説明

自動車用後方観察装置

【課題】カーナビ用や専用のディスプレイ等、費用のかかる表示機能を持たない自動車でも、後方監視が可能で、ユーザによる取り付け、取り外しも容易な自動車用後方観察装置を実現する。
【解決手段】自動車の後方を撮影するリアカメラ部15と、リアカメラ部による撮影画像を投射するプロジェクタ部17と、リアカメラ部およびプロジェクタ部を制御する制御手段16と、プロジェクタ部および制御手段を一体として保持するケーシング100と、ケーシングを、自動車内部の取り付け可能領域内の任意の位置に着脱自在に取り付ける着脱手段104と、を有し、リアカメラ部15の撮影方向とプロジェクタ部17の投射方向とが、独立に調整可能で、プロジェクタ部17が、リアカメラ部15による撮影画像を、運転席2の前方に設定可能な画像投射部に撮影画像を投射表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車用後方観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の、バック時における車両後方の障害物の有無の確認や、駐車時の後方確認を行なうのに、車両後方をリアカメラにより撮影し、撮影された画像を、ダッシュボードに設置したディスプレイに表示して、後方の視認を可能にしたバックモニタシステムが知られている。
【0003】
従来知られているバックモニタシステムでは、リアカメラの撮影画像の表示を行なうディスプレイとして、カーナビ用の液晶ディスプレイ、または専用のディスプレイを使用するため、システム導入にはカーナビ用または専用のディスプレイを用いる必要があり、導入時の費用が高くなる問題があった。
【0004】
また、リアカメラはディスプレイとの専用の配線が必要な事から、リアカメラの設置はディーラや用品販売店等「配線の設備を持った工場」で行う必要があり、リアカメラ設置をユーザが自分で行なうことが困難である問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上述した事情に鑑み、カーナビ用や専用のディスプレイ等、費用のかかる表示機能を持たない自動車でも、後方監視が可能で、ユーザによる取り付け・取り外しも容易な自動車用後方観察装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の自動車用後方観察装置は、リアカメラ部と、プロジェクタ部と、制御手段と、ケーシングと、着脱手段と、を有する。
「リアカメラ部」は、自動車の後方を撮影する部分である。
「プロジェクタ部」は、リアカメラ部による撮影画像を投射する部分である。
「制御手段」は、リアカメラ部およびプロジェクタ部を制御する手段である。制御手段には電源回路が含まれる。
【0007】
「ケーシング」は、リアカメラ部およびプロジェクタ部および制御手段を一体として保持する。
「着脱手段」は、ケーシングを、自動車内部の取り付け可能領域内の任意の位置に着脱自在に取り付ける手段である。
【0008】
請求項1記載の自動車用後方観察装置は、以下の特徴を有する。
リアカメラ部の撮影方向とプロジェクタ部の投射方向とが、独立に調整可能である。
プロジェクタ部は、リアカメラ部による撮影画像を「運転席前方に設定可能な画像投射部」に撮影画像を投射表示する。
【0009】
請求項1記載の自動車用後方観察装置における「リアカメラ部」は、広角撮影可能であることが好ましい(請求項2)。
【0010】
請求項1または2記載の自動車用後方観察装置は「自動車内部の運転席前方に着脱可能なスクリーン部材を有する」ことができる(請求項3)。
【0011】
上記の如く、リアカメラ部とプロジェクタ部および制御手段は、同一のケーシングにより保持され、ケーシングは「自動車内部の取り付け可能領域内の任意の位置」に着脱自在に取り付けられる。
【0012】
ケーシングは着脱手段により自動車内部に取り付けられるが、取り付ける位置は、ケーシング内に保持されたリアカメラ部により「自動車の後方」を撮影できなければならないので、ケーシングの取り付け位置は「全く任意」と言うわけではない。
【0013】
また、プロジェクタ部は、リアカメラ部による撮影画像を「運転席前方に設定可能な画像投射部」に撮影画像を投射表示するので、画像投射部への投射が可能でなければならない。
【0014】
即ち、ケーシングを取り付ける位置は、リアカメラ部により自動車後方を撮影可能で、且つ、プロジェクタ部により撮影画像を「運転席前方に設定可能な画像投射部」に投射可能でなければならない。このような条件を満足する領域が「自動車内部の取り付け可能領域」である。このような領域は、必ずしも広い領域と言うわけではないが、自動車内の所定の位置に限られると言うわけではなく、ある程度の自由度を持つ。
【0015】
また、リアカメラ部の撮影方向とプロジェクタ部の投射方向とが、独立に調整可能であるので、例えば、自動車内の運転席前方に画像投射部を設定し、設定された画像投射部に対して投射可能な位置にケーシングを取り付けて、プロジェクタ部と画像投射部の位置関係を定め、この状態で、リアカメラ部の撮影方向を「自動車の後方を撮影できる方向」に設定することができる。請求項2のように、リアカメラ部を広角撮影可能とすれば、リアカメラ部の撮影方向の設定の自由度が大きくなる。
【0016】
画像投射部は、専用のスクリーン部材を、例えばダッシュボードに「起伏自在」に設け、後方観察を行なう場合に、ダッシュボードに対して立て、スクリーン上に撮影画像を投射するようにすることができる。
【0017】
また、このようにする代わりに、例えば、自動車の運転席前方に予め設けられている部材、例えば、サンバイザや、バックミラーをスクリーン部材として利用できる。
【0018】
サンバイザをスクリーン部材として利用する場合ならば、サンバイザを使用状態にし、自動車内部を向く面を「投射面(スクリーン)」として画像投射を行なうことができる。
【0019】
バックミラーを利用する場合であれば、後方観察を行なうときに、別個に用意したスクリーン部材をバックミラーのミラー面に取り付けて画像投射を行なうことができる。
【0020】
上記専用のスクリーン部材や、サンバイザ、バックミラー等の向きを調整して見やすい状態とし、この状態で、画像投射が行なわれるようにプロジェクタ部の取り付け位置・投射方向を定めることができる。
【0021】
上記のように、この発明の自動車用後方観察装置では、リアカメラ部とプロジェクタ部とが、ケーシングにより一体化されているが、電子カメラとプロジェクタとを一体とした装置は、特許文献1により知られており、リアカメラ部とプロジェクタ部の組み合わせ部分に利用することができる。
【0022】
また、自動車内にプロジェクタを用いる装置は特許文献2に記載されているが、同文献記載のものでは、自動車後方の観察はできない。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、この発明の自動車用後方観察装置は、カーナビ等の液晶ディスプレイを搭載することなく、後方観察を行なうことができる。また、リアカメラ部とディスプレイの間の配線が不用となり、観察装置の設置が容易である。
ケーシングは自動車本体に対して着脱自在であるので、不使用時には、ケーシングを取り外してダッシュボード内に格納することにより盗難を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動車用後方観察装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】ケーシングを説明するための図である。
【図3】自動車用後方観察装置のシステムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、自動車用後方観察装置の実施の1形態を説明するための図である。
図1において、符号1は「自動車用後方観察装置を用いる自動車本体」を示す。
符号2は「運転席」、符号3は「運転者」を示す。
【0026】
符号10は「自動車用後方観察手段」を示し、符号11はサンバイザ、符号12はリモートコントローラ、符号Obは自動車本体1の後方にある障害物(図では子供)を示している。
ケーシング10内には、リアカメラ部とプロジェクタ部と制御手段が格納されている。
【0027】
図2は、自動車用後方観察手段10の「外部構造」を説明するための図である。
【0028】
符号100で示す「ケーシング」は、U字状の保持部材101に保持され、角度調整摘み102の調整により、図2(a)に示す仰角・俯角を調整できるようになっている。
【0029】
保持部材101は脚部103により吸盤104に取り付けられており、保持部材101は脚部103に対して、客部103を軸として回動自在となっている。
【0030】
従って、ケーシング100には、脚部103を軸とする回転の自由度と、角度調整摘み102を軸とする回転の自由度が与えられ、これにより「広い範囲の向き」を取ることができる。
【0031】
ケーシング100には、リアカメラ部とプロジェクタ部とが内装されており、リアカメラ部はケーシング100に対して態位を調整可能で、この態位調整により「撮影方向の調整」を行なえるようになっている。
【0032】
一方、プロジェクタ部はケーシング100に一体化され、ケーシング100に対して、前述の回転調整を行なうことにより、投射方向を調整できるようになっている。
【0033】
図1に示すように、ケーシング100は吸盤104により自動車本体1内のリアガラス面に取り付けられている。ケーシング100の上記回転調整により、プロジェクタ部の投射方向をサンバイザ11に向け、サンバイザ11に画像を投射できるようになっている。
勿論、後方観察が可能であれば、ケーシング100の設置位置は天井部などでも良い。
【0034】
図1において、リアカメラ部は、ケーシング100に対する態位調整により、自動車本体1の後方を俯瞰して撮影できるようになっている。
【0035】
リアカメラ部は、運転者3によりリモートコントローラ12で電源をオン状態にされると、自動車後方の画像を撮影し、リアカメラ部により撮影された障害物Obがプロジェクタ部によりサンバイザ11上に投射される。
即ち、投射画像は、運転者3から視認可能なサンバイザ11に表示され、運転者3は座席2に座したままで「後方の死角となる部分」の画像を視認出来る。
【0036】
なお、リモートコントローラ12により電源がオンにされると、一定時間経過後に自動で電源をオフとし消費電力を低減するようにすることができる。
【0037】
図3に示すシステム図において、符号15はリアカメラ部、符号16はメイン制御回路、符号17はプロジェクタ部、符号18は電源回路、符号19はリモートコントローラ12からの信号を受信する「リモコン受信部」を示す。
【0038】
リアカメラ部15は「撮像レンズとイメージセンサ」で構成される。イメージセンサとしてはCCDやCMOS等を用いる。
【0039】
撮像レンズにより自動車後方の状態をイメージセンサの受光面状に結像させる。
メイン制御回路部16は、マイコン、DSP、ASIC等のプロセッサ161と、ROM162、RAM163、その他の周辺回路(図示されず)により構成され、リアカメラ部からの画像データの入力を受けて、画像データ処理を行い、プロジェクタ部17に「投射すべき画像データ」を送信すると共に、制御信号によりプロジェクタ部17を制御する。
【0040】
プロジェクタ部17は、メイン制御回路16により駆動される「LEDや陰極管」などの光源171と、液晶などの画像表示部172、画像を投射する投射レンズ173とを有する。
【0041】
リアカメラ部15内の各モジュールには、バッテリと電源ICにより構成される電源回路18から電源供給を行なう。
【0042】
リモコン受信部19は、リアカメラ部15のON/OFF信号の通信を行う。この通信は赤外線通信や近距離無線等で行なう。
【0043】
メイン制御回路16と電源回路18、リモートコントローラ12およびリモコン受信部19は「制御手段」を構成する。
ケーシング100は、吸盤104により自動車本体への着脱を行なうので、取り付け・取り外しが容易である。従って、乗車中は自動車用後方観察装置を取り付けて「バックモニタ」として使用し、降車の際にケーシングを自動車本体から取り外し、ダッシュボード等に格納する事が出来、車上荒らしなどの盗難から装置を守ることが出来る。
【符号の説明】
【0044】
1 自動車本体
2 座席
3 運転者
10 自動車用後方観察装置
15 リアカメラ部
16 メイン制御回路部
17 プロジェクタ部
100 ケーシング
104 吸盤(着脱手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2006−180154号公報
【特許文献2】特開2008−174212号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の後方を撮影するリアカメラ部と、
このリアカメラ部による撮影画像を投射するプロジェクタ部と、
これらリアカメラ部およびプロジェクタ部を制御する制御手段と、
これらリアカメラ部およびプロジェクタ部および制御手段を一体として保持するケーシングと、
このケーシングを、自動車内部の取り付け可能領域内の任意の位置に着脱自在に取り付ける着脱手段と、を有し、
上記リアカメラ部の撮影方向とプロジェクタ部の投射方向とが、独立に調整可能であり、上記プロジェクタ部が、上記リアカメラ部による撮影画像を、運転席前方に設定可能な画像投射部に撮影画像を投射表示することを特徴とする、自動車用後方観察装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動車用後方観察装置において、
リアカメラ部が、広角撮影可能であることを特徴とする自動車用後方観察装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車用後方観察装置において、
自動車内部の運転席前方に着脱可能なスクリーン部材を有することを特徴とする自動車用後方観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56480(P2012−56480A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202447(P2010−202447)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】