説明

自動車用手動変速機のシフト装置

【課題】 セレクト操作時の操作荷重のばらつきを低減する自動車用手動変速機のシフト装置を提供する。
【解決手段】 本発明の自動車用手動変速機のシフト装置11は、ケーシングと、ケーシングに回動可能に保持されるシフトレバー2と、シフトレバー2と連動して揺動する保持部材3と、回動可能なローラ41とローラ41を回動可能に保持するロックボールピン本体部43と一端が保持部材3に他端がロックボールピン本体部43に固定され伸縮可能なスプリング42とを有するロックボールピン4と、ローラ41が当接して回動可能なカム面51を有しロックボールピン4と相対揺動可能に固定されるカム部材5と、を有する自動車用手動変速機のシフト装置11であって、スプリング42の伸縮を規制するダンパー6を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用手動変速機のシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車用の手動変速機は、シフト操作性の観点からシフトレバーのセレクト荷重を適正に設定する。適正に設定することで、ニュートラルポジションの明確化やシフト操作のメリハリ感を出し、シフトフィーリングの向上が図られる。また、セレクト荷重によりミスセレクトの防止なども考慮されている。セレクト荷重の構造として、例えば、特許文献1のようなものがある。特許文献1では、シフトレバーと連動するアーム3にスプリング5bが取り付けられており、そのスプリング5bの先端に取り付けられたローラ5dが、カム面8aに当接して回動することで、セレクト荷重が発生する構造が開示されている。特許文献1では、カム面8aを構成するカム面パーツ8が着脱可能で、カム面が異なる多種のカム面パーツを取り替えて用いることができる。
【0003】
例えば、リバースへのミスシフト防止としてヘビーセレクト方式というのがある。リバースセレクト時の荷重を高くすることで、ミスシフトを防止する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−83515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなスプリングとカム面との構成によるヘビーセレクト方式では、運転者のセレクト操作のスピードによって操作荷重のばらつきが大きい。セレクト操作をある速度で行う場合、構成部品の質量と速度によって、運動エネルギーが発生する。この運動エネルギーが操作荷重に加わり、セレクト操作が可能になる。この運動エネルギーは速度の二乗に比例するため、リバースをセレクトする操作速度が速いほど運動エネルギーは大きくなり、操作荷重が小さくなる。一方、速度が遅いときは操作荷重が大きくなる。 本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、セレクト操作時の操作荷重のばらつきを低減する自動車用手動変速機のシフト装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、ケーシングと、
前記ケーシングに回動可能に保持されるシフトレバーと、
前記シフトレバーと連動して揺動する保持部材と、
回動可能なローラと、前記ローラを回動可能に保持する本体部と、一端が前記保持部材に他端が前記本体部に固定され伸縮可能なスプリングとを有するロックボールピンと、
前記ローラが当接して回動可能なカム面を有し、前記ロックボールピンと相対揺動可能に固定されるカム部材と、
を有する自動車用手動変速機のシフト装置であって、
前記スプリングの伸縮を規制するダンパーを有することである。
【0007】
その他に、上記課題を解決するための請求項2に係る発明の構成上の特徴は、ケーシングと、
前記ケーシングに揺動可能に保持されるシフトレバーと、
カム面を有し、前記シフトレバーと連動して揺動するカム部材と、
前期シフトレバー及びカム部材と相対揺動可能に固定される保持部材と、
前記シフトレバーと連動して前記カム面に当接して回動可能なローラと、前記ローラを回動可能に保持する本体部と、一端が前記保持部材に他端が前記本体部に固定され伸縮可能なスプリングとを有するロックボールピンと、
を有する自動車用手動変速機のシフト装置であって、
前記スプリングの伸縮を規制するダンパーを有することである。
【0008】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記ダンパーは、前記スプリングの内側に同軸的に配置されることである。
【0009】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記ダンパーは、伸縮方向の一方が前記保持部材及び前記ロックボールピンの一方に固定されており、自動車の複数の変速段の何れも選択されていないニュートラル時に、他方と前記保持部材及び前記ロックボールピンの他方との間に隙間を設けることである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明は、セレクト操作により回動するシフトレバーと連動して揺動する保持部材に一端が固定され、カム部材のカム面を当接回動するローラを保持する本体部に他端が固定されるスプリングの伸縮を規制するダンパーを有する。ダンパーによりスプリングの伸縮が規制され、操作荷重のばらつきが低減される。
【0011】
請求項2に係る発明は、セレクト操作により回動するシフトレバーと連動して揺動するカム部材と相対揺動可能に固定される保持部材に一端が固定され、カム部材のカム面を当接回動するローラを保持する本体部に他端が固定されるスプリングの伸縮を規制するダンパーを有する。ダンパーによりスプリングの伸縮が規制され、操作荷重のばらつきが低減される。
【0012】
請求項3に係る発明は、スプリングの内側に同軸的にダンパーを配置するため、ダンパーを追加することによるスペースの確保や大きな構造変更を伴わずに、操作荷重のばらつきを低減することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、伸縮方向の一方が保持部材及びロックボールピンの一方に固定されているダンパーが、変速段の何れも選択されていないニュートラル時に、固定されていない他方と保持部材及びロックボールピンの他方との間に隙間が設けられている。隙間を設けることにより、一定のセレクト操作にダンパーの荷重が加わらず、スプリングの荷重だけとする操作荷重の設定が可能である。例えば、ダンパーの荷重がリバースを選択する時だけに加わるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のシフト装置11の構成を一部断面で示す説明図である。
【図2】実施形態1のシフト装置11の構成を一部断面で示す説明図である。
【図3】実施形態1のシフト装置11を搭載する車両で用いられるシフトマップを示す説明図である。
【図4】スプリングの荷重特性を示す説明図である。
【図5】ダンパーの荷重特性を示す説明図である。
【図6】従来のシフト装置のセレクト荷重特性を示す説明図である。
【図7】実施形態1のシフト装置11のセレクト荷重特性を示す説明図である。
【図8】実施形態2のシフト装置12の構成を一部断面で示す説明図である。
【図9】変形形態1のシフト装置13の構成を一部断面で示す説明図である。
【図10】実施形態3のシフト装置14の構成を一部断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図10を参照して説明する。本実施形態に係る自動車用手動変速機のシフト装置(以下、「シフト装置」と称する。)は、車両に搭載される。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態1のシフト装置11は、図1及び図2に示されるように、ケーシング(図示略)と、シフトレバー2と、アーム(保持部材)3と、ロックボールピン4と、カム部材5と、ダンパー6とを有する。
【0017】
シフトレバー2は、ケーシングに回動可能に保持される。シフトレバー2は、自動車の運転者によって変速操作される図示しない変速操作レバーに連動し、セレクト方向の操作に関連して伝達されるセレクト操作力に従って回動中心O回りに回動する。
【0018】
アーム3は、シフトレバー2と連動して揺動し、一体揺動可能にシフトレバー2に係合する係合部31と、後述するロックボールピン4が収納される有底筒状のケース部32とを有する。ケース部32は、係合部31と逆側(シフトレバー2と逆側)が開口している。
【0019】
ロックボールピン4は、ローラ41と、スプリング42と、有底筒状のロックボールピン本体部43とを有する。ロックボールピン本体部43は、アーム3のケース部32の開口側から、自身の開口を対向させた状態でほぼ隙間なく摺動可能に収納され、シフトレバー2側が開口する。ローラ41は、ロックボールピン本体部43の開口していない側の端部の軸部431に、ベアリング432を介して回動可能に係合する。スプリング42は、一端がアーム3のケース部32の底321、他端がロックボールピン本体部43の底433に固定され、シフトレバー2とローラ41とを結ぶ方向(以下、「伸縮方向」と称する。)を伸縮可能に、ロックボールピン本体部43に収納される。ロックボールピン4本体部43は、スプリング42の伸縮に連動して、アーム3のケース部32内を伸縮方向に摺動する。
【0020】
カム部材5は、ロックボールピン4のローラ41が当接して回動する凹凸状のカム面51を有する。そしてカム部材5は、シフトレバー2が相対回転可能に軸方向に挿通する第1取り付け部52と、支持部材100に取り付けられる第2取り付け部53とによって、ロックボールピン4と相対揺動可能に固定される。支持部材100は、ケーシングなどの固定部材に固定される部材である。カム面51のうち、回動中心Oまでの距離が短くなる凸部分51aがリバースをセレクトするセレクト荷重に対応する。
【0021】
ダンパー6は、一端がナット61によりアーム3に固定されて、伸縮方向に伸縮可能にロックボールピン4のスプリング42の内側に同軸的に収容される。ダンパー6とロックボールピン4とは、並列にロックボールピン本体部43内に配置される。
【0022】
本実施形態1のシフト装置11は、運転者が変速操作レバーを操作して、変速操作すると、変速操作レバーの作動に連動してシフトレバー2が回動中心O回りに回動し、アーム3及びロックボールピン4が回動中心Oを揺動中心として矢印Aのように揺動する。アーム3及びロックボールピン4が揺動すると、ロックボールピン4のローラ41がカム部材5のカム面51を転がる。ローラ41はカム面51の形状に沿って回転し、回動中心Oとカム面51との距離が変動する。つまり、ローラ41がカム面51を当接回動すると、ロックボールピン4のスプリング42が伸縮する。
【0023】
変速操作レバーが第1速段あるいは第2速段のセレクト位置にあるシフト装置11の状態を示しているのが図1であり、変速操作レバーがどの変速段も選択されておらずニュートラルの位置にあるシフト装置11の状態を示しているのが図2である。本実施形態1のシフト装置11は、ニュートラルの位置の際、回動中心Oとカム面51との距離が一番遠く設定されている。そして、ダンパー6の他端(伸縮方向においてアーム3に固定されている一端の反対側)とロックボールピン4のロックボールピン本体部43との間に所定幅の隙間αが設けられている。ローラ41がニュートラルに対応する位置からカム面51を当接回動する際、ニュートラル位置からすぐへのセレクト操作には、スプリング42の荷重となり、隙間α分スプリング42が収縮すると、スプリング42の荷重にダンパー6の荷重が加わる。回動中心Oとカム面51との距離が短く設定されているカム面51の凸部分51a(リバース対応箇所)にローラ41が当接回動すると、スプリング42とダンパー6が収縮する。
【0024】
次に、本実施形態1のシフト装置11と従来のシフト装置(シフト装置11からダンパー6のみを取り除いた装置)との操作荷重について、簡単に比較する。まず、本実施形態1のシフト装置11が用いられる車両のシフトマップは、図3に示されるように、セレクト方向の3カ所がシフト方向で1STと2ND、3RDと4TH、5THと6THに対応しており、REV(リバース)のみシフトできるセレクト位置は1STと2NDの隣に配置されている。第1操作は、スピード(V1)が遅くセレクト操作する低速セレクトとして、セレクト位置1ST−2ND(LOW)からREVにセレクト操作する。第2操作は、スピード(V2)が速くセレクト操作する高速セレクトとして、セレクト位置3RD−4THあるいは5TH−6TH(HIGH)からREVにセレクト操作する。セレクト操作の操作速度は、V1<V2となる。
【0025】
一般的に、スプリングの荷重特性は、図4に示されるように、伸縮する速度に関わらず、一定である。図4は、縦軸がスプリングの荷重Fs[N]、横軸がストローク(伸縮長さ)[mm]であり、LOWセレクト位置を基準位置として、基準位置から図示されている。ダンパーは、図5に示されるように、伸縮する速度により荷重特性が異なる。図5は、縦軸がダンパー荷重Fd[N]、横軸がストローク(伸縮長さ)[mm]であり、LOWセレクト位置を基準位置として、基準位置からの図示されている。低速セレクトの場合の荷重が実線、高速セレクトの場合の荷重が点線である。
【0026】
従来装置とシフト装置11の仕事及び運動エネルギーの関係は、ストロークsを、スプリング42及びダンパー6に係る変速操作レバーやシフトレバー2などの質量の合計をmとして、次のように示される。まず、従来装置の第1操作では、変速操作レバーに加わるセレクト荷重をF1として、

F1×s = Fs×s−(1/2)×m×V1 (1)

と表せる。次に、第2操作では、変速操作レバーに加わるセレクト荷重をF2として、

F2×s = Fs×s−(1/2)×m×V2 (2)

と表せる。そして、第1操作と第2操作の荷重について、展開すると、

F1−F2 =((V2−V1)×(1/2)×m)/s (3)

F1 > F2 (4)

となる。よって、図6に示されるように、高速セレクトの第2操作でのリバースにセレクトする際の操作荷重F2は、低速セレクトの第1操作でのリバースにセレクトする際の操作荷重F1より低い。なお、第1操作の操作荷重Fが実線、第2操作での操作荷重Fが点線である。
【0027】
一方、本実施形態1のシフト装置11の第1操作では、変速操作レバーに加わるセレクト荷重をF3、低速セレクトの場合のダンパー6の荷重をFd1として、

F3×s = (Fs+Fd1)×s−(1/2)×m×V1 (5)

と表せる。次に、第2操作では、変速操作レバーに加わるセレクト荷重をF2、高速セレクトの場合のダンパー6の荷重をFd2として、

F4×s = (Fs+Fd2)×s−(1/2)×m×V2 (6)

と表せる。そして、第1操作と第2操作の荷重について、展開すると、

F3−F4 = ((V2−V1)×(1/2)×m)/s−(Fd2−Fd1) (7)
と表せる。そのため、Fd1及びFd2の荷重の設定を適正に行うことで、F3=F4となり、図7に示されるように、第1操作と第2操作とで変速操作レバーに加わる操作荷重が同じになる。よって、リバースにセレクトする際の第1操作での操作荷重と第2操作での操作荷重とは重なるように表している。
【0028】
本実施形態1のシフト装置11によれば、伸縮することで変速操作レバーの操作に連動してセレクト荷重を付加するスプリング42の伸縮を規制するダンパー6を有するため、操作荷重のばらつきを低減できる。ダンパー6は、速度に応じて荷重が大きく異なるため、速度により荷重特性の変わらないスプリング42と並列に配置することで、スプリング42の伸縮を規制する。つまり、スプリング42によるスプリング荷重に、ダンパー6によるダンパー荷重を合成した合成荷重がセレクト荷重となり、操作速度の差による操作荷重のばらつきを低減することができる。ここで、ダンパー6を備えることで、高速操作時の操作荷重の低減を抑制することができるが、ダンパー6の特性としては、速度向上により増加する運動エネルギーを相殺できるように、調節することが好ましい。
【0029】
そして、変速段の何れも選択されていないニュートラル時に、ダンパー6とロックボールピン4のロックボールピン本体部43との間に隙間が設けられているため、ニュートラル位置から所定の位置までセレクト操作する間は、セレクト荷重としてダンパー6の荷重がスプリング42の荷重に追加されない。所定の位置としては、例えば、ニュートラルからLOW、HIGHにセレクトするまでの位置とすることができる。LOW、HIGHに至るまでには、ローラ41をロックボールピン本体部43に当接させないように、隙間αの大きさを調節することで実現できる。本実施形態1のシフト装置11では、リバースをセレクト操作する際に、ダンパー6の荷重がスプリング42の荷重に追加されるようにしているため、図7に示されるように、変速操作の操作速度に関わらず、一定の操作荷重となる。
【0030】
また、ダンパー6をスプリング42の内側に配置しているため、装置の拡大や大きな設計変更もなく、操作荷重のばらつきが低減できるシフト装置を実現することができる。
【0031】
(実施形態2)
実施形態2のシフト装置12は、実施形態1のシフト装置11と基本的には同様の構成及び同様の作用効果を有する。以下、異なる構成を中心に説明する。
【0032】
実施形態2のシフト装置12は、図8に示されるように、カム部材5を回動不能に固定する支持部材がなく、カム部材5はシフトレバー2の回動に連動して、回動中心Oを中心として揺動する(矢印B)。そして、アーム3はシフトレバー2及びカム部材5に対して、相対揺動可能、つまり固定されている。よって、ロックボールピン4も揺動せず、カム部材5の揺動により、ローラ41がカム面51を当接回動する。カム面51をローラ41が当接回動するのは、実施形態1のシフト装置11と同様であるため、ローラ41がカム面51に当接する箇所によりスプリング42が伸縮する。実施形態2のシフト装置12も実施形態1のシフト装置11と同様に、ニュートラルの位置で、ダンパー6の他端をロックボールピン4のロックボールピン本体部43に固定せず、隙間を設けることができる。そして、スプリング42の荷重とダンパー6の荷重とを調整することで、ダンパー6の荷重を一定の操作、例えばリバースをセレクト操作する時、にスプリング42の荷重を追加することができる。
【0033】
本実施形態2のシフト装置12と実施形態1のシフト装置11とは、シフトレバー2の回動に連動する構成部材と連動しない構成部材とを変更した構成であり、作用効果は同様であるため、搭載する車両の条件などに合わせて選択することができる。
【0034】
(変形形態1)
変形形態1のシフト装置13は、実施形態1のシフト装置11と基本的には同様の構成及び同様の作用効果を有する。以下、異なる構成を中心に説明する。
【0035】
変形形態1のシフト装置13は、図9に示されるように、カム部材7の形状が実施形態1のシフト装置11で用いられるカム部材5と異なる。カム部材7は、ロックボールピン4のローラ41を当接回動するカム面71が形成され、ローラ41の回動に支障がない幅のカム通路74を有する。そして、カム部材7は、シフトレバー2が回動可能に軸方向に挿通する第1取り付け部72と、支持部材100に取り付けられる第2取り付け部73とによって、ロックボールピン4と相対揺動可能に固定される。
【0036】
本変形形態2のシフト装置13は、シフトレバー2が回動すると、連動してアーム3及びロックボールピン4が回動中心Oを中心として揺動(矢印C)し、ローラ41はカム面71に当接回動して、カム通路74内を移動する。
【0037】
(変形形態2)
変形形態2のシフト装置は、変形形態1のシフト装置13と基本的に同様の構成及び作用効果を有する。本変形形態2のシフト装置は、シフトレバーの回動に連動して、カム部材が揺動し、アーム及びロックボールピンは揺動しない。
【0038】
(実施形態3)
実施形態3のシフト装置14は、図10に示されるように、ケーシング(図示略)と、シフトレバー2と、カム部材8と、固定部材(保持部材)9と、ロックボールピン4と、ダンパー6とを有する。
【0039】
シフトレバー2は、ケーシングに回動可能に保持される。シフトレバー2は、自動車の運転者によって変速操作される図示しない変速操作レバーと作動的に連動し、セレクト方向の操作に関連して伝達されるセレクト操作力に従って回動中心O回りに回動する。
【0040】
カム部材8は、後述するロックボールピン4のローラ41が当接して回動する凹凸状のカム面81を有する。カム部材8は、シフトレバー2の回動中心Oを揺動の中心として、シフトレバー2と連動して揺動する(矢印D)。
【0041】
固定部材9は、シフトレバー2及びカム部材8と相対揺動可能にケーシングに固定され、シフトレバー2が軸方向に挿通する係合部91と、後述するロックボールピン4が収納されるケース部92と、ケース部92を固定保持する一体部93とを有する。ケース部92は、一体部93に固定保持されているのとは逆側に位置するシフトレバー2及びカム部材8側が開口した形状である。
【0042】
ロックボールピン4は、ローラ41と、スプリング42と、ロックボールピン本体部43とを有する。ロックボールピン本体部43は固定部材9のケース部92に収納され、固定部材9の一体部93側が開口する。ローラ41は、ロックボールピン本体部43の開口していない側に、回動可能にロックボールピン本体部43に係合する。スプリング42は、一端が固定部材9のケース部92、他端がロックボールピン本体部43に固定され、シフトレバー2の回動中心Oと一体部93とを結ぶ方向(以下、「伸縮方向」と称する。)を伸縮可能に、ロックボールピン本体部43に収納される。ロックボールピン4は、スプリング42の伸縮に連動して、一体部93のケース部92内を伸縮方向に移動する。
【0043】
ダンパー6は、一端がナット61により固定部材9の一体部93に固定されて、伸縮方向に伸縮可能にロックボールピン4のスプリング42の内側に収容される。ダンパー6とロックボールピン4とは、並列にロックボールピン本体部43内部に配置される。
【0044】
本実施形態3のシフト装置14は、運転者が変速操作レバーを操作して、変速操作すると、変速操作レバーの作動に連動してシフトレバー2が回動中心O回りに回動し、カム部材8が回動中心Oを中心に揺動する。カム部材8が揺動すると、ロックボールピン4のローラ41がカム部材8のカム面81を転がる。ローラ41がカム面81の形状に沿って回転すると、ローラ41と一体部93との距離が変動する。つまり、ローラ41がカム面81を当接回動すると、ロックボールピン4のスプリング42が伸縮する。
【0045】
ダンパー6は、変速操作レバーのニュートラル位置で、固定されていないシフトレバー2側の他端とロックボールピン本体部43との間に隙間を設けることで、実施形態1のシフト装置11や実施形態2のシフト装置12のような作用効果を持たせることができる。つまり、ローラ41と一体部93との距離が隙間分以上近づく位置に、カム部材8が揺動しなければ、スプリング42の荷重が操作荷重となる。ローラ41と一体部93との距離が隙間分以上近づく位置に、カム部材8が揺動すれば、スプリング42の荷重とダンパー6の荷重との合計が操作荷重となる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リバースを高速と低速でセレクト操作する際のセレクト荷重のばらつきを低減しているが、スプリングとダンパーのそれぞれの荷重を調整して、全操作荷重のばらつきを低減することもできる。
【符号の説明】
【0047】
11,12,13,14 シフト装置、
2 シフトレバー、
3 アーム、 31 係合部、 32 ケース部、
4 ロックボールピン、 41 ローラ、 42 スプリング、
43 ロックボールピン本体部、
5 カム部材、 51 カム面、 52 第1取り付け部、 53 第2取り付け部、
6 ダンパー、 61 ナット、
7,8 カム部材、 71 カム面、 72,73 部、 74 カム通路、
81 カム面、
9 固定部材、 91 係合部、 92 ケース部、 93 一体部
100 支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに回動可能に保持されるシフトレバーと、
前記シフトレバーと連動して揺動する保持部材と、
回動可能なローラと、前記ローラを回動可能に保持する本体部と、一端が前記保持部材に他端が前記本体部に固定され伸縮可能なスプリングとを有するロックボールピンと、
前記ローラが当接して回動可能なカム面を有し、前記ロックボールピンと相対揺動可能に固定されるカム部材と、
を有する自動車用手動変速機のシフト装置であって、
前記スプリングの伸縮を規制するダンパーを有することを特徴とする自動車用手動変速機のシフト装置。
【請求項2】
ケーシングと、
前記ケーシングに回動可能に保持されるシフトレバーと、
カム面を有し、前記シフトレバーと連動して揺動するカム部材と、
前期シフトレバー及びカム部材と相対揺動可能に固定される保持部材と、
前記シフトレバーと連動して前記カム面に当接して回動可能なローラと、前記ローラを回動可能に保持する本体部と、一端が前記保持部材に他端が前記本体部に固定され伸縮可能なスプリングとを有するロックボールピンと、
を有する自動車用手動変速機のシフト装置であって、
前記スプリングの伸縮を規制するダンパーを有することを特徴とする自動車用手動変速機のシフト装置。
【請求項3】
前記ダンパーは、前記スプリングの内側に同軸的に配置される請求項1又は2に記載の自動車用手動変速機のシフト装置。
【請求項4】
前記ダンパーは、伸縮方向の一方が前記保持部材及び前記ロックボールピンの一方に固定されており、自動車の複数の変速段の何れも選択されていないニュートラル時に、他方と前記保持部材及び前記ロックボールピンの他方との間に隙間を設ける請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用手動変速機のシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−40997(P2012−40997A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185440(P2010−185440)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】